特許第6034170号(P6034170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034170
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】X線管装置及びX線管装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/04 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   H05G1/04
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-268621(P2012-268621)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-116158(P2014-116158A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀郎
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−257900(JP,A)
【文献】 特開平10−199694(JP,A)
【文献】 特開平06−267690(JP,A)
【文献】 特開2010−211939(JP,A)
【文献】 特表2003−500820(JP,A)
【文献】 特開昭61−171004(JP,A)
【文献】 特開2013−254652(JP,A)
【文献】 国際公開第00/072354(WO,A1)
【文献】 特開昭52−082956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00−2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を放射するX線管と、
前記X線管を収容するハウジングと、
前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填される絶縁油と、
硫黄加硫ゴムで形成され、前記絶縁油の存在する空間に位置したゴム部材と、
前記絶縁油の存在する空間に位置した鉛部材と、
前記鉛部材の表面に設けられ、メルカプトシランカップリング剤で形成され、前記鉛部材と前記ゴム部材から前記絶縁油中に溶出した硫黄成分との反応を抑制する保護膜と、を備えていることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
有機材料で形成され、前記保護膜の表面を被覆する保護皮膜をさらに備えている請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
X線を放射するX線管と、前記X線管を収容するハウジングと、前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填される絶縁油と、硫黄加硫ゴムで形成され、前記絶縁油の存在する空間に位置したゴム部材と、前記絶縁油の存在する空間に位置した鉛部材と、前記鉛部材の表面に設けられ、メルカプトシランカップリング剤で形成され、前記鉛部材と前記ゴム部材から前記絶縁油中に溶出した硫黄成分との反応を抑制する保護膜と、を備えたX線管装置の製造方法において、
前記保護膜を形成する際、
前記メルカプトシランカップリング剤の原液又は前記メルカプトシランカップリング剤が1容量%以上の濃度割合に希釈された混合液を用意し、
前記原液又は混合液を用いて前記鉛部材の表面に保護膜を形成するX線管装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管装置及びX線管装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管装置は、医療診断用途や、非破壊検査用途など、多くの用途に利用されている。X線管装置は、X線管、ハウジング及び絶縁油を備えている。ハウジングは、X線管を収容している。絶縁油は、X線管とハウジングとの間の空間に充填されている。絶縁油は、X線管が発生する熱を吸収し、X線管を冷却している。X線管の発熱量が多い場合、X線管装置は循環冷却システムをさらに備えている場合がある。
【0003】
上記ハウジングは、X線管を収容するための開口部を有している。開口部には、閉塞部材が設けられている。開口部と閉塞部材との間には、Oリングが設けられ、絶縁油を液密にシールしている。ハウジングの開口部を閉塞部材及びOリングで閉塞した後、ハウジング内部に脱気された絶縁油が充填される。
【0004】
また、X線管装置は、鉛を利用したX線遮蔽材を備えている。X線遮蔽材は、ハウジング内部に取付けられ、ハウジング外部への不要なX線の漏洩を遮蔽する。少なくともX線遮蔽材の表面の一部は、絶縁油に浸っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−106790号公報
【特許文献2】米国特許第6062731号明細書
【特許文献3】米国特許第6257762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、X線遮蔽材が絶縁油に浸っている状態にあると、X線遮蔽材を形成している鉛が使用中に徐々に腐食してしまう。これにより、絶縁油中に悪影響を及ぼす異物が形成されてしまう。絶縁油中に鉛を主成分の1つとする浮遊異物が生成されたり、鉛を主成分の1つとする堆積物がX線管の外面の金属表面に形成されたりする。
【0007】
浮遊異物は比較的高いX線吸収率を有している。このため、利用X線束が透過する絶縁油中に浮遊異物が存在すると、X線画像にアーチファクトが生じる恐れがある。その他、X線管やハウジングがベリリウムなどの金属で形成されたX線放射窓を有している場合、X線放射窓に鉛を主成分の1つとする堆積物が形成され易い。このため、利用X線の透過度が低下する恐れがある。堆積物の厚みが不均一である場合にはX線画像にアーチファクトが生じる恐れがある。
【0008】
そこで、上記問題を解決するため、X線遮蔽材の表面に保護皮膜を形成する手法が考えられる。例えば、X線遮蔽材の表面に、硬化剤を作業直前に混合させる2液混合型のエポキシ樹脂塗料等の有機皮膜を厚くコーティングさせることが考えられる。ところで、上記塗料を用いる場合、硬化速度が速く、一度硬化すると溶媒で溶かすことが困難であり、エアスプレー法やエアレススプレー法を採用することが難しく、はけ塗り法が一般的である。
【0009】
しかしながら、上記塗料の粘性が高いため、厚みを均一に塗布することが困難である。作業に時間と熟練が要求されることになるため、製造コストが高くなるという問題がある。また、上記塗料(有機塗料)とX線遮蔽材(鉛)との密着力は一般的に低いため、使用中に有機皮膜が剥離し易くなるという問題(性能上の限界)がある。また、保護効果を高めるために塗膜の厚みを増そうとすると、有機皮膜がさらに剥離し易くなるという問題(ジレンマ)がある。X線遮蔽材に下地塗装を行うことにより、X線遮蔽材に対する有機皮膜の密着性を高めることは可能であるが、製造コストがさらに高くなるという問題がある。
【0010】
その他、上記問題を解決するため、X線遮蔽材の両面に錫などを利用して予め電気メッキを施し、X線遮蔽材をハウジング内面に接着させる技術が、例えば上記特許文献2及び3に開示されている。上記技術は上記問題を解決する手法の一つではあるが、X線遮蔽材の切り口に鉛が露出してしまう問題がある。また、製造コストが高くなってしまう問題がある。
【0011】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、絶縁油中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低コストで低減又は防止することができ、長期にわたって高い信頼性を維持することができるX線管装置及びX線管装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係るX線管装置は、
X線を放射するX線管と、
前記X線管を収容するハウジングと、
前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填される絶縁油と、
硫黄加硫ゴムで形成され、前記絶縁油の存在する空間に位置したゴム部材と、
前記絶縁油の存在する空間に位置した鉛部材と、
前記鉛部材の表面に設けられ、メルカプトシランカップリング剤で形成され、前記鉛部材と前記ゴム部材から前記絶縁油中に溶出した硫黄成分との反応を抑制する保護膜と、を備えている。
【0013】
また、一実施形態に係るX線管装置の製造方法は、
X線を放射するX線管と、前記X線管を収容するハウジングと、前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に充填される絶縁油と、硫黄加硫ゴムで形成され、前記絶縁油の存在する空間に位置したゴム部材と、前記絶縁油の存在する空間に位置した鉛部材と、前記鉛部材の表面に設けられ、メルカプトシランカップリング剤で形成され、前記鉛部材と前記ゴム部材から前記絶縁油中に溶出した硫黄成分との反応を抑制する保護膜と、を備えたX線管装置の製造方法において、
前記保護膜を形成する際、
前記メルカプトシランカップリング剤の原液又は前記メルカプトシランカップリング剤が1容量%以上の濃度割合に希釈された混合液を用意し、
前記原液又は混合液を用いて前記鉛部材の表面に保護膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、両面(全面)に保護膜が設けられたX線遮蔽部がハウジングに取り付けられている状態を示す図である。
図2図2は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す図であり、ハウジング本体と蓋部との間に設けられた被シール部がゴム部材でシールされている状態を示す図である。
図3図3は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の図であり、ハウジング本体と蓋部との間に設けられた被シール部がゴム部材の周縁部でシールされている状態を示す図である。
図4図4は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の図であり、ハウジング本体とX線放射窓との間に設けられた被シール部がゴム部材でシールされている状態を示す図である。
図5図5は、図1に示したX線管を示す断面図である。
図6図6は、図1に示したX線管装置の一部を拡大して示す他の図であり、筒部とリセプタクルとの間に設けられた被シール部がゴム部材でシールされている状態を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、両面(全面)に保護膜が設けられたX線遮蔽部がハウジングに取り付けられ、X線遮蔽部が保護皮膜で被覆されている状態を示す図である。
図8図8は、第3の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、ハウジングに取り付けられたX線遮蔽部の片面(ハウジングに取り付けられる面の反対側の面)に保護膜が設けられている状態を示す図である。
図9図9は、第4の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、ハウジングに取り付けられたX線遮蔽部の片面(ハウジングに取り付けられる面の反対側の面)に保護膜が設けられ、保護膜が保護皮膜で被覆されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
始めに、本願発明者は、絶縁油に接する鉛部材に腐食が生じ、絶縁油中に異物が形成される原因について鋭意調査研究を進めた。本願発明者は、調査研究を進めた結果、上記原因がハウジング中で絶縁油に接する硫黄加硫ゴムから溶け出した加硫剤(未反応の遊離硫黄または硫黄化合物)または加硫促進剤(硫黄化合物)に起因していることをつき止めた。 硫黄加硫ゴム材料は安価であるため、一般的に使用されている。
【0016】
従来、絶縁油中の鉛部材に生じる腐食は、絶縁油の硫黄成分、絶縁油に溶存した酸素や水、又は熱やX線による絶縁油の劣化生成物が原因であろうと考えられてきた。しかしながら、実際には、上記のように絶縁油に接する硫黄加硫ゴムが存在しない場合、問題となる腐食が発生しないことを確かめた。
【0017】
鉛腐食に伴って生成された浮遊異物は、鉛と硫黄(加硫ゴムから溶け出した硫黄、または硫黄化合物を起源とする硫黄)とを主成分とする針状もしくは繊維状の反応物であった。この反応物が部分的に集合して綿状の集合体となって浮遊異物を構成していることが分かった。
【0018】
そこで、本願発明者は、ゴム部材から絶縁油中へ溶け出した硫黄成分(遊離硫黄や硫黄化合物)と鉛との反応を抑制(又は防止)する手段として、絶縁油中に位置する鉛部材の表面にメルカプトシランカップリング剤を利用した保護膜を形成することが有効であることを実証した。
【0019】
次の(1)乃至(4)に実証結果を示す。
【0020】
(1)メルカプトシランカップリング剤を利用した保護膜は、耐油性、及び耐熱性が高い。
【0021】
(2)メルカプトシランカップリング剤を利用した保護膜は、鉛部材に対する密着性が良い。
【0022】
(3)鉛部材の表面に設けられメルカプトシランカップリング剤を利用した保護膜は、絶縁油中に溶け出した硫黄成分と鉛の反応を抑制(又は防止)するバリア膜としての機能を有する。
【0023】
(4)メルカプトシランカップリング剤の原液自体が低粘度液体である。メルカプトシランカップリング剤の原液又はメルカプトシランカップリング剤が希釈された混合液を使用することにより、作業性が非常に優れたコーティングを実施することができる。
【0024】
次に、硫黄加硫ゴムから溶け出した硫黄成分と鉛部材との反応を抑制又は防止する(絶縁油中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低減又は防止する)対策を例示的に列挙する。
対策1:鉛部材の全面に、メルカプトシランカップリング剤で形成された保護膜を設ける。保護膜により、鉛部材と絶縁油中に溶出した硫黄との反応を抑制(又は防止)する。なお、本対策は後述する第1の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法で採っている。
【0025】
対策2:上記対策1を採った上でさらに、保護膜の表面を有機材料で形成された保護皮膜で被覆する。なお、本対策は後述する第2の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法で採っている。
【0026】
対策3:絶縁油に面する鉛部材の表面にのみ、メルカプトシランカップリング剤で形成された保護膜を設ける。保護膜により、鉛部材と絶縁油中に溶出した硫黄との反応を抑制(又は防止)する。なお、本対策は後述する第3の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法で採っている。
【0027】
対策4:上記対策3を採った上でさらに、保護膜の表面を有機材料で形成された保護皮膜で被覆する。なお、本対策は後述する第4の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法で採っている。
【0028】
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法について詳細に説明する。始めに、X線管装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、両面(全面)に保護膜が設けられたX線遮蔽部がハウジングに取り付けられている状態を示す図である。
【0029】
図1に示すように、X線管装置10は、大まかにハウジング20と、ハウジング20内に収納された回転陽極型のX線管30と、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された絶縁油7と、高電圧絶縁部材6と、回転駆動部としてのステータコイル9と、リセプタクル300、400とを備えている。
【0030】
X線管装置10は、図示しない循環冷却システムをさらに備えていてもよい。この場合、ハウジング20には、図示しない絶縁油7の導入口及び排出口が形成されている。循環冷却システムは、例えば、ハウジング20内の絶縁油7を放熱及び循環させる冷却器と、冷却器をハウジング20の導入口及び排出口に液密及び気密に連結する導管(ホースなど)とを備えている。冷却器は、循環ポンプ及び熱交換器を有している。循環ポンプは、ハウジング20側から取り入れた絶縁油7を熱交換器に吐出し、絶縁油7の流れをハウジング20内に作り出す。熱交換器は、ハウジング20及び循環ポンプ間に連結され、絶縁油7の熱を外部に放出する。
【0031】
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部(側板)20f、20g、20hとを有している。ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hは、金属材料又は樹脂材料で形成されている。この実施形態において、ハウジング本体20e、蓋部20f、20g、20hはアルミニウムを用いた鋳物で形成されている。樹脂材料を使用する場合は、ネジ部など強度を必要とする個所や、樹脂の射出成形で成形し難い個所、またハウジング20の外部への電磁気ノイズの漏洩を防止する図示しない遮蔽層など、部分的に金属を併用しても良い。
【0032】
後述する高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部には、環状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、環状の溝部が形成されている。X線管装置の管軸に沿った方向において、蓋部20fの周縁部はハウジング本体20eの段差部に接触している。ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20iが嵌合されている。
【0033】
C形止め輪20iは、管軸に沿った方向における、ハウジング本体20eに対する蓋部20fの位置を規制している。この実施形態において、蓋部20fのがたつきを防止するため、蓋部20fの位置は固定されている。高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20f及びC形止め輪20iなどにより液密に閉塞されている。
【0034】
図2は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す図であり、ハウジング本体20eと蓋部20fとの間に設けられた被シール部1aがゴム部材2aで液密にシールされている状態を示す図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、ハウジング20は、被シール部1aを有している。この実施形態において、被シール部1aは、ハウジング本体20eと蓋部20fとの間に設けられている。被シール部1aは、環状である。
【0036】
ゴム部材2aは被シール部1aを液密にシールしている。この実施形態において、ゴム部材2aはOリングで形成されている。ゴム部材2aはハウジング本体20eと蓋部20fとの間に設けられている。ゴム部材2aは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。なお、絶縁油7は、蓋部20fの周縁部とハウジング本体20eの段差部との間の隙間から被シール部1aに流出し得る。
【0037】
ゴム部材2aは絶縁油7の存在する空間に位置し、絶縁油7に接している。ゴム部材2aは硫黄加硫ゴムで形成されている。ゴム部材2aは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を保持することができる。
【0038】
後述する高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部の内周面には、環状の溝部が形成されている。蓋部20gはハウジング本体20eの内部に位置している。蓋部20hは蓋部20gに対向している。蓋部20gは、絶縁油7が出入りする開口部20kを有している。蓋部20hには、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20mが形成されている。
【0039】
ハウジング本体20eの上記溝部にはC形止め輪20jが嵌合されている。C形止め輪20jは、蓋部20hがゴム部材2bの周縁部(シール部)へ応力を加えている状態を保持している。ゴム部材2bのシール部はOリングのように形成されている。上記のことから、高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20eの開口部は、蓋部20g、蓋部20h、C形止め輪20j及びゴム部材2bなどにより液密に閉塞されている。
【0040】
図3は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の図であり、ハウジング本体20eと蓋部20gと蓋部20hとの間に設けられた被シール部1bがゴム部材2bの周縁部でシールされている状態を示す図である。
【0041】
図1及び図3に示すように、ハウジング20は、被シール部1bを有している。この実施形態において、被シール部1bは、ハウジング本体20eと蓋部20gと蓋部20hとの間に設けられている。被シール部1bは環状である。
【0042】
ゴム部材2bのシール部は、被シール部1bを液密にシールしている。ゴム部材2bのシール部は、ハウジング本体20eと蓋部20gと蓋部20hとの間に設けられている。ゴム部材2bは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。なお、ゴム部材2bは絶縁油7の存在する空間に位置している。
【0043】
この実施形態において、ゴム部材2bはゴムベローズ(ゴム膜)であり、絶縁油7に接している。ゴム部材2bは、ハウジング20内において、蓋部20g及び蓋部20hで囲まれた領域を、第1空間と、第2空間とに仕切っている。第1空間は、開口部20kと繋がった空間であり、絶縁油7が存在する空間である。第2空間は、通気孔20mと繋がった空間であり、外気が存在する空間である。ゴム部材2bは、絶縁油7の体積変化を吸収し、絶縁油7の圧力調整を行っている。ゴム部材2bは硫黄加硫ゴムで形成されている。
【0044】
図4は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の図であり、ハウジング本体20eとX線放射窓20wとの間に設けられた被シール部1cがゴム部材2cでシールされている状態を示す図である。
【0045】
図1及び図4に示すように、ハウジング本体20eは、X線透過領域R1に対向したX線放射口20oを有している。X線放射口20oは、ハウジング本体20eの一部を貫通して形成されている。ハウジング20は、X線放射窓20wを有している。X線放射窓20wは、X線を透過しハウジング20外部に放射する。
【0046】
なお、後述するX線遮蔽部520及び540は、X線放射口20oにおけるハウジング20外部へのX線の放射を妨げることのないように設けられている。このため、X線遮蔽部540は、X線放射口20oの側縁に設けられている。
【0047】
X線放射窓20wは、ハウジング20の外側に位置している。X線放射窓20wは、機械的強度の高い材料を利用して形成することができる。この実施形態において、X線放射窓20wは、アルミニウムを利用して形成されているが、他の金属材料や樹脂などを利用して形成することも可能である。X線放射窓20wは凹型形状を有し、X線管30とX線放射窓20wとの間隔の低減を図っている。
【0048】
X線放射窓20wに対向したハウジング本体20eの外壁には、取付け面が形成されている。X線放射口20oを囲むようにハウジング本体20eの取付け面には枠状の溝部が形成されている。X線放射窓20wは、上記取付け面に対向した状態で、上記取付け面に接触され、締め具としてのねじ20sによりハウジング本体20eに締め付けられている。ねじ20sは、X線放射窓20wに形成された貫通孔を通り、ハウジング本体20eに形成されたねじ穴に締め付けられている。X線放射窓20wはX線放射口20oを閉塞している。
【0049】
ハウジング20は、被シール部1cを有している。この実施形態において、被シール部1cは、ハウジング本体20eとX線放射窓20wとの間に設けられている。被シール部1cは、枠状である。
【0050】
ゴム部材2cは被シール部1cを液密にシールしている。この実施形態において、ゴム部材2cはOリングで形成されている。ゴム部材2cは、ハウジング本体20eの取付け面に形成された溝部に設けられている。ゴム部材2cは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。なお、絶縁油7は、ハウジング本体20eとX線放射窓20wとの間の隙間から被シール部1cに流出し得る。ゴム部材2cは絶縁油7の存在する空間に位置している。ゴム部材2cは硫黄加硫ゴムで形成されている。
【0051】
図5は、図1に示したX線管30を示す断面図である。
図1及び図5に示すように、X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、真空容器32を有している。真空容器32は、例えば、ガラス、又は銅、ステンレス及びアルミニウム等の金属で形成されている。この実施形態において、真空容器32はガラスで形成されている。なお、真空容器32を金属で形成する場合、真空容器32は、X線透過領域R1に対向した開口を有している。そして、真空容器32の開口は、X線を透過する材料としてのベリリウムで形成されたX線透過窓で気密に閉塞されている。真空外囲器31の一部は、高電圧絶縁部材50で形成されている。本実施形態において、高電圧絶縁部材50は、電気絶縁性のセラミクスで形成されている。
【0052】
X線管30は、陽極ターゲット35及び陰極36を有している。
陽極ターゲット35は、真空外囲器31内に設けられている。陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられた傘状のターゲット層35aを有している。ターゲット層35aは、陰極36から照射される電子が衝突されることによりX線を放出する。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。
【0053】
陽極ターゲット35の外側面や、陽極ターゲット35でのターゲット層35aとは反対側の表面には、黒色化処理が施されている。ターゲット層35aは、モリブデン、モリブデン合金、タングステン合金等の金属で形成されている。陽極ターゲット35は、管軸を中心に回転自在である。このため、陽極ターゲット35の軸線は、管軸と平行である。
【0054】
陰極36は、真空外囲器31内に設けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に照射する電子を放出する。陰極36には相対的に負の電圧が印加される。低膨張合金であるKOV部材55は、真空外囲器31内で高電圧供給端子54を覆っている。ここでは、高電圧供給端子54と高電圧絶縁部材50の間と、KOV部材55と高電圧絶縁部材50の間は、それぞれろう付けされている。KOV部材55には、陰極支持部材37が取付けられている。陰極36は、陰極支持部材37に取付けられている。
【0055】
高電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。高電圧供給端子54は、陰極36に相対的に負の電圧を印加するともに陰極36の図示しないフィラメント(電子放出源)にフィラメント電流を供給するものである。
【0056】
X線管30は、固定軸11、回転体12、軸受け13及びロータ14を備えている。固定軸11は、円柱状に形成されている。固定軸11の外周の一部には突出部が形成され、突出部は真空外囲器31に気密に取付けられている。固定軸11には、高電圧供給端子44が電気的に接続されている。固定軸11は回転体12を回転可能に支持する。回転体12は、筒状に形成され、固定軸11と同軸的に設けられている。回転体12の外面にロータ14が取り付けられている。回転体12には、陽極ターゲット35が取付けられている。軸受け13は、固定軸11と回転体12の間に形成されている。回転体12は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。高電圧供給端子44は、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に相対的に正の電圧を印加する。この実施形態において、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54は、金属端子である。
【0057】
X線管30の固定軸11は高電圧絶縁部材6にも固定されている。高電圧絶縁部材6はハウジング20に、直接又はステータコイル9などを介して間接的に固定されている。高電圧絶縁部材6は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材6は、固定軸11と、ハウジング20及びステータコイル9との間を電気的に絶縁するものである。
【0058】
図1及び図4に示すように、X線管装置10は、鉛で形成されたX線遮蔽部510、520、530、540をさらに備えている。これらのX線遮蔽部は、少なくとも鉛を含むX線不透過材で形成されていればよく、鉛合金等で形成されていてもよい。
【0059】
図1に示すように、X線遮蔽部510は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向したハウジング20の一端側に設けられている。X線遮蔽部510は、ターゲット層35aから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部510は、第1遮蔽部511及び第2遮蔽部512を有している。
【0060】
第1遮蔽部511は、管軸に沿った方向にターゲット層35aと対向した側の蓋部20gに貼り付けられている。第1遮蔽部511は、蓋部20g全体を覆っている。第1遮蔽部511は、開口部20kと対向した個所が開口して形成され、開口部20kによる絶縁油7の出入りを維持している。
【0061】
保護膜3aは、第1遮蔽部511の表面に設けられ、絶縁油7に接している。この実施形態において、保護膜3aは、第1遮蔽部511の表面全体(両面)に設けられ、第1遮蔽部511を完全に覆っている。保護膜3aは、第1遮蔽部511の上記開口の状態が損なわれないように形成されている。保護膜3aは、メルカプトシランカップリング剤で形成されているため、第1遮蔽部511の鉛と、絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制(又は防止)することができる。
【0062】
保護膜3aは第1遮蔽部511(鉛)に対する高い密着性を有し、保護膜3aの膜厚は10μm以下と薄い。このため、予め保護膜3aが形成された第1遮蔽部511をハウジング20の内面(蓋部20g表面)に沿わせて貼り付ける作業を行っても、保護膜3aが剥離する恐れはない。
【0063】
メルカプトシランカップリング剤の例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズのA−189(メルカプトプロピルトリメトキシシラン)を挙げることができる。上記メルカプトシラン系カップリング剤を利用することにより、強固な保護膜3aを形成することができる。これは、メルカプトシラン系カップリング剤に含まれるメルカプト基が第1遮蔽部511の鉛と反応するためであり、反応物により連続性の保護膜が形成されるためである。
【0064】
第2遮蔽部512は、第1遮蔽部511上に設けられている。第2遮蔽部512は、開口部20k付近からハウジング20の外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
【0065】
保護膜3bは、第2遮蔽部512の表面に設けられ、絶縁油7に接している。この実施形態において、保護膜3bは、第2遮蔽部512の表面全体(両面)に設けられ、第2遮蔽部512を完全に覆っている。保護膜3bは、メルカプトシランカップリング剤で形成されているため、第2遮蔽部512の鉛と、絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制(又は防止)することができる。
【0066】
保護膜3bは第2遮蔽部512(鉛)に対する高い密着性を有し、保護膜3bの膜厚は10μm以下と薄い。このため、予め保護膜3bが形成された第2遮蔽部512を第1遮蔽部511に貼り付ける作業を行っても、保護膜3bが剥離する恐れはない。
【0067】
X線遮蔽部520は円筒状に形成されている。X線遮蔽部520の一端部は、第1遮蔽部511に近接している。このため、X線遮蔽部510及びX線遮蔽部520間の隙間から出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0068】
X線遮蔽部520は、筒状に形成され、管軸に沿って第1遮蔽部511から陽極ターゲット35(ターゲット層35aの表面の延長線上)を越える位置まで延出している。この実施形態において、X線遮蔽部520は、第1遮蔽部511からステータコイル9の手前まで延出している。X線遮蔽部520は、必要に応じてハウジング20に固定されている。ここでは、X線遮蔽部520は、ハウジング本体20eの内壁に形成された突出部に固定されている。なお、上記突出部は、X線遮蔽部520の位置決めにも利用されている。
【0069】
保護膜3cは、X線遮蔽部520の表面に設けられ、絶縁油7に接している。この実施形態において、保護膜3cは、X線遮蔽部520の表面全体(両面)に設けられ、X線遮蔽部520を完全に覆っている。保護膜3cは、メルカプトシランカップリング剤で形成されているため、X線遮蔽部520の鉛と、絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制(又は防止)することができる。
【0070】
保護膜3cはX線遮蔽部520(鉛)に対する高い密着性を有し、保護膜3cの膜厚は10μm以下と薄い。このため、予め保護膜3cが形成された筒状のX線遮蔽部520をハウジング本体20e内に挿入してもよいが、予め保護膜3cが形成された鉛部材をハウジング本体20eの内面に沿わせて貼り付ける作業を行い、保護膜3cが形成されたX線遮蔽部520を形成してもよい。保護膜3cが剥離する恐れがないためである。
【0071】
X線遮蔽部530は、筒状に形成され、ハウジング20の筒部20r内に設けられている。X線遮蔽部530の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部530は、必要に応じて筒部20rに固定されている。ここでは、X線遮蔽部530は、筒部20rの内壁に形成された突出部に固定されている。なお、上記突出部は、X線遮蔽部530の位置決めにも利用されている。このため、筒部20rから出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
【0072】
保護膜3dは、X線遮蔽部530の表面に設けられ、絶縁油7に接している。この実施形態において、保護膜3dは、X線遮蔽部530の表面全体(両面)に設けられ、X線遮蔽部530を完全に覆っている。保護膜3dは、メルカプトシランカップリング剤で形成されているため、X線遮蔽部530の鉛と、絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制(又は防止)することができる。
【0073】
保護膜3dはX線遮蔽部530(鉛)に対する高い密着性を有し、保護膜3dの膜厚は10μm以下と薄い。このため、予め保護膜3dが形成された筒状のX線遮蔽部530を筒部20r内に挿入してもよいが、予め保護膜3dが形成された鉛部材を筒部20rの内面に沿わせて貼り付ける作業を行い、保護膜3dが形成されたX線遮蔽部530を形成してもよい。保護膜3dが剥離する恐れがないためである。
【0074】
X線遮蔽部540は、枠状に形成され、ハウジング20のX線放射口20oの側縁に設けられている。X線遮蔽部540の一端部は、X線遮蔽部520に近接している。X線遮蔽部540は、必要に応じてX線放射口20oの側縁に固定されている。
【0075】
保護膜3eは、X線遮蔽部540の表面に設けられ、絶縁油7に接している。この実施形態において、保護膜3eは、X線遮蔽部540の表面全体(両面)に設けられ、X線遮蔽部540を完全に覆っている。保護膜3eは、メルカプトシランカップリング剤で形成されているため、X線遮蔽部540の鉛と、絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制(又は防止)することができる。
【0076】
保護膜3eはX線遮蔽部540(鉛)に対する高い密着性を有し、保護膜3eの膜厚は10μm以下と薄い。このため、予め保護膜3eが形成された枠状のX線遮蔽部540をX線放射口20oの側縁に貼り付ける作業を行っても、保護膜3eが剥離する恐れはない。
【0077】
図1及び図5に示すように、X線管30とハウジング20との間に保持部材8、及びゴム部材2d、2eが設けられている。X線管装置10は、複数のゴム部材2d、2eを有している。この実施形態において、X線管装置10は、3個のゴム部材2dと3個のゴム部材2eとを有している。ゴム部材2dは等間隔に位置し、ゴム部材2eも等間隔に位置している。
保持部材8は、環状に形成され、X線管30及びハウジング20にそれぞれ離間して位置している。保持部材8は、機械的強度の高い樹脂材料で形成されている。
【0078】
ゴム部材2dは、保持部材8に取付けられ、ハウジング20の内壁に接触している。この実施形態において、ゴム部材2dはX線遮蔽部520に接触している。ゴム部材2eは、保持部材8に取付けられ、X線管30(真空外囲器31)の外面に接触している。保持部材8及びゴム部材2d、2eは、管軸に直交した方向におけるハウジング20に対するX線管30の位置ずれを防止している。ゴム部材2d、2eは、X線管30に生じる振動のハウジング20への伝達量を軽減する。ゴム部材2d、2eは絶縁油7の存在する空間に位置している。ゴム部材2d、2eはそれぞれ硫黄加硫ゴムで形成されている。
【0079】
ステータコイル9は、複数個所でハウジング20に固定されている。ステータコイル9は、高電圧絶縁部材6に対してX線管30の反対側に位置している。ステータコイル9は、ロータ14の外面に対向して真空外囲器31の外側を囲んでいる。
【0080】
ステータコイル9は、ロータ14、回転体12及び陽極ターゲット35を回転させるものである。ステータコイル9に所定の電流が供給されることでロータ14に与える磁界を発生するため、陽極ターゲット35などが所定の速度で回転される。
絶縁油7は、X線管30が発生する熱の少なくとも一部を吸収するものである。
【0081】
X線管装置10は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。リセプタクル300は、ハウジング20の筒部20qの内部に位置し、筒部20qに取付けられている。リセプタクル400は、ハウジング20の筒部20rの内部に位置し、筒部20rに取付けられている。
【0082】
リセプタクル300は、電気絶縁部材としてのハウジング301と、高電圧供給端子としての端子302とを有している。
ハウジング301は、筒部20q(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング301は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング301のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0083】
ハウジング301の開口側の端部において、ハウジング301の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング301は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子302は、ハウジング301の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。端子302は絶縁被覆配線を介して高電圧供給端子44と接続されている。
【0084】
筒部20qの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット310は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット310は、筒部20qの段差部に締め付けられ、ハウジング301を押圧している。
【0085】
リセプタクル300及びリセプタクル300に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、プラグから端子302に高電圧(例えば、+70〜+80kV)が供給される。
【0086】
リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。
リセプタクル400は、電気絶縁部材としてのハウジング401と、高電圧供給端子としての端子402とを有している。
【0087】
ハウジング401は、筒部20r(ハウジング20)の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング401は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング401のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
【0088】
ハウジング401の開口側の端部において、ハウジング401の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング401は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子402は、ハウジング401の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。端子402は絶縁被覆配線を介して高電圧供給端子54と接続されている。
【0089】
筒部20rの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット410は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット410は、筒部20rの段差部に締め付けられ、ハウジング401を押圧している。
【0090】
リセプタクル400及びリセプタクル400に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル400に連結した状態で、プラグから端子402に高電圧(例えば、−70〜−80kV)が供給される。
【0091】
図6は、図1に示したX線管装置10の一部を拡大して示す他の図であり、筒部20qとリセプタクル300との間に設けられた被シール部1fがゴム部材2fでシールされている状態を示す図である。
【0092】
図1及び図6に示すように、被シール部1fは、筒部20qとリセプタクル300との間に設けられている。被シール部1fは、枠状である。ゴム部材2fは被シール部1fを液密にシールしている。この実施形態において、ゴム部材2fはOリングで形成されている。ゴム部材2fは、ハウジング20外部への絶縁油7の漏れを防止する機能を有している。なお、絶縁油7は、ハウジング301と筒部20qとの間の隙間から被シール部1fに流出し得る。ゴム部材2fは絶縁油7の存在する空間に位置している。ゴム部材2fは硫黄加硫ゴムで形成されている。
【0093】
なお、ゴム部材2gは、ゴム部材2fと同様に硫黄加硫ゴムで形成されている。ゴム部材2gは、筒部20rとリセプタクル400との間に設けられた被シール部を液密にシールしている。
上記のように本実施形態に係るX線管装置が形成されている。
【0094】
このように構成されたX線管装置では、ステータコイル9に所定の電流を印加することでロータ14が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、リセプタクル300、400に所定の高電圧を印加する。
【0095】
リセプタクル300に印加された高電圧は、高電圧供給端子44、固定軸11、軸受け13及び回転体12を介して陽極ターゲット35に供給される。リセプタクル400に印加された高電圧は、高電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
【0096】
これにより、陰極36から放出された電子は陽極ターゲット35のターゲット層35aに衝突し、陽極ターゲット35からX線が放射される。X線は、真空容器32(又はX線透過窓)及びX線放射窓20wを通ってハウジング20の外部へ放射される。
【0097】
次に、本実施形態に係るX線管装置の製造方法について説明する。ここでは、上記保護膜3a、3b、3c、3d、3eの製造方法について説明する。
保護膜を形成する際、メルカプトシランカップリング剤の原液を用意する。原液自体が低粘度の液体だからである。または、メルカプトシランカップリング剤がイソプロピルアルコール等で希釈された混合液を用意してもよい。製造コストを抑制できるためである。上記混合液としては、メルカプトシランカップリング剤が1容量%以上の濃度割合に希釈された液体を用意することが望ましい。1容量%より小さい濃度であると保護膜の厚みにムラが生じ、保護効果のない厚みが薄い個所が形成され易いためである。
【0098】
次いで、メルカプトシランカップリング剤の原液又は混合液を用いてX線遮蔽部(鉛部材)の表面に保護膜を形成する。これにより、保護膜が完成する。上記のように、メルカプトシランカップリング剤の原液及び混合液は低粘度液体であるため、作業性に非常に優れたコーティングを実施することができる。
【0099】
コーティングを実施する際、X線遮蔽部(鉛部材)の表面に上記原液又は混合液をはけで塗布する方法を採用したり、上記原液又は混合液にX線遮蔽部を浸漬して引き上げる方法を採用したり、上記原液又は混合液をX線遮蔽部にかけ流す方法を採用したり、上記原液又は混合液をX線遮蔽部にスプレーする方法を採用したりすることができる。
【0100】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置10及びX線管装置10の製造方法によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、絶縁油7と、絶縁油7に接する鉛部材と、ゴム部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2gと、保護膜3a、3b、3c、3d、3eと、を備えている。鉛部材としては、X線遮蔽部510、520、503、540を挙げることができる。
【0101】
ゴム部材は、硫黄加硫ゴムで形成され、絶縁油7の存在する空間に位置し、絶縁油7に浸り又は接している。ゴム部材から絶縁油7中へ硫黄成分が溶け出すため、上記溶け出した硫黄成分と鉛部材(X線遮蔽部)とが反応し、鉛部材が腐食し、絶縁油7中に浮遊異物が生成されることが懸念される。
【0102】
しかしながら、この実施形態において、X線遮蔽部の表面に保護膜3a、3b、3c、3d、3eが設けられている。保護膜をX線遮蔽部の表面に比較的短時間で設けることができ、また、保護膜が剥離する恐れはない。保護膜は、X線遮蔽部と絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制又は防止することができる。
【0103】
絶縁油7中に硫黄成分が溶け出す硫黄加硫ゴムを使用する場合であっても、保護膜により、硫黄成分と鉛との反応を防止することができる。これにより、絶縁油7に接する(浸る)X線遮蔽部の腐食を防止することができる。絶縁油7中に鉛を主成分の1つとする浮遊異物が生成されたり、鉛を主成分の1つとする堆積物が金属部材に形成されたりすることを防止できる。このため、X線画像へのアーチファクトの発生や、利用X線の透過度の低下を防止することができる。
【0104】
また、部品数の面において、鉛部材の個数はゴム部材の個数より少ない。本実施形態では相対的に部品数の少ない鉛部材に上記反応を防止する対策を施すことができるため、ゴム部材に上記反応を防止する対策を施す場合に比べて作業効率の向上を図ることができる。
【0105】
上記のことから、絶縁油7中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低コストで低減又は防止することができ、長期にわたって高い信頼性を維持することができるX線管装置10及びX線管装置10の製造方法を得ることができる。
【0106】
次に、第2の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上述した第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図7は、第2の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、両面(全面)に保護膜が設けられたX線遮蔽部がハウジングに取り付けられ、X線遮蔽部が保護皮膜で被覆されている状態を示す図である。
【0107】
図7に示すように、本実施形態において、保護膜だけでなく、保護皮膜4も利用している。保護皮膜4は、有機材料で形成され、保護膜3a、3b、3c、3d、3eの表面を被覆している。保護膜が絶縁油7に接する(浸る)ことがないように、保護皮膜4が形成されている。保護皮膜4は、保護膜が形成されたX線遮蔽部をハウジング20内に取り付けられた状態で形成することができる。または、X線遮蔽部をハウジング20内に取り付ける前に、保護膜が形成されたX線遮蔽部に、予め保護皮膜4を形成することもできる。保護皮膜4の膜厚は20μm以下とした方が好ましい。膜厚が20μmを超えると、ハウジング20内に取付ける際の曲げ変形によって剥離する恐れが高くなるためである。
【0108】
保護皮膜4に利用する有機材料としては、エポキシシランカップリング剤を挙げることができる。エポキシシランカップリング剤の例としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズのエポキシシラン系カップリング剤であるA−187を挙げることができる。
【0109】
また、従来のような2液混合型の高粘度塗装液ではなく、1液型で、低粘度の塗装液を使用することにより作業性を改善することができる。例えば、塗装液としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズのエポキシ樹脂コーティング剤であるME151を使用することができる。
【0110】
ME151はアルコールで稀釈した低粘度液体であるため、保護膜3a、3b、3c、3d、3eの表面にME151をはけで塗布する方法を採用したり、ME151に保護膜が形成されたX線遮蔽部を浸漬して引き上げる方法を採用したり、ME151を保護膜にかけ流す方法を採用したり、ME151を保護膜にスプレーする方法を採用したりすることができる。
【0111】
保護膜3a、3b、3c、3d、3eのみを用いた場合におけるバリア層の機能に比べ、保護膜3a、3b、3c、3d、3eと保護皮膜4とを併用した場合におけるバリア層の機能を高めることができる。また、X線遮蔽部の表面に、直接、2液混合型のエポキシ樹脂塗装を行う場合に比べて、より密着性の高い保護皮膜4を得ることができる。
【0112】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置10及びX線管装置10の製造方法によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、絶縁油7と、絶縁油7に接する鉛部材と、ゴム部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2gと、保護膜3a、3b、3c、3d、3eと、保護皮膜4と、を備えている。
【0113】
この実施形態において、X線遮蔽部の表面に保護膜3a、3b、3c、3d、3e及び保護皮膜4が二重に設けられている。保護膜及び保護皮膜4は、X線遮蔽部と絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を一層抑制又は防止することができる。
【0114】
上記のことから、絶縁油7中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低コストで低減又は防止することができ、長期にわたって高い信頼性を維持することができるX線管装置10及びX線管装置10の製造方法を得ることができる。
【0115】
次に、第3の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上述した第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図8は、第3の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、ハウジングに取り付けられたX線遮蔽部の片面(ハウジングに取り付けられる面の反対側の面)に保護膜が設けられている状態を示す図である。
【0116】
図8に示すように、第1遮蔽部511は、接着剤により蓋部20gに貼り付けられている。第2遮蔽部512は、接着剤により第1遮蔽部511上に直に取り付けられている。第1遮蔽部511が蓋部20gに貼り付けられ、第2遮蔽部512が第1遮蔽部511上に設けられている状態で、第1遮蔽部511は保護膜3aで覆われ、第2遮蔽部512は保護膜3bで覆われている。
【0117】
この実施形態において、保護膜3a及び保護膜3bは、同一材料で同時に形成することができる。保護膜3a及び保護膜3bは、第1遮蔽部511の表面及び第2遮蔽部512の表面のうち少なくとも絶縁油7に接する恐れのある領域に設けられていればよい。
【0118】
X線遮蔽部520は、接着剤によりハウジング本体20eに貼り付けられている。X線遮蔽部530は、接着剤によりハウジング20の筒部20rに貼り付けられている。図示しないが、X線遮蔽部540は、接着剤によりX線放射口20o(図4)の側縁に貼り付けられている。X線遮蔽部520、X線遮蔽部530及びX線遮蔽部540がハウジング20に貼り付けられている状態で、X線遮蔽部520は保護膜3cで覆われ、X線遮蔽部530は保護膜3dで覆われ、X線遮蔽部540は保護膜3eで覆われている。
【0119】
この実施形態において、保護膜3c、保護膜3d及び保護膜3eは、同一材料で同時に形成することができる。保護膜3c、保護膜3d及び保護膜3eは、X線遮蔽部520の表面、X線遮蔽部530の表面及びX線遮蔽部540の表面のうち少なくとも絶縁油7に接する恐れのある領域に設けられていればよい。
【0120】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管装置10及びX線管装置10の製造方法によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、絶縁油7と、絶縁油7に接する鉛部材と、ゴム部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2gと、保護膜3a、3b、3c、3d、3eと、を備えている。鉛部材としては、X線遮蔽部510、520、503、540を挙げることができる。
【0121】
この実施形態において、X線遮蔽部の絶縁油7に面する表面に保護膜3a、3b、3c、3d、3eが設けられている。保護膜は、X線遮蔽部のうち少なくとも絶縁油7に接する恐れのある領域に設けられているため、X線遮蔽部と絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を抑制又は防止することができる。
【0122】
上記のことから、絶縁油7中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低コストで低減又は防止することができ、長期にわたって高い信頼性を維持することができるX線管装置10及びX線管装置10の製造方法を得ることができる。
【0123】
次に、第4の実施形態に係るX線管装置及びX線管装置の製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上述した第2及び第3の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図9は、第4の実施形態に係るX線管装置を概略的に示す断面図であり、ハウジングに取り付けられたX線遮蔽部の片面(ハウジングに取り付けられる面の反対側の面)に保護膜が設けられ、保護膜が保護皮膜で被覆されている状態を示す図である。
【0124】
図9に示すように、本実施形態において、保護膜だけでなく、保護皮膜4も利用している。保護皮膜4は、有機材料で形成され、保護膜3a、3b、3c、3d、3eの表面を被覆している。保護膜が絶縁油7に接する(浸る)ことがないように、保護皮膜4が形成されている。保護皮膜4は、X線遮蔽部がハウジング20に取り付けられ、保護膜がX線遮蔽部に形成された状態で形成することができる。
【0125】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線管装置10及びX線管装置10の製造方法によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、絶縁油7と、絶縁油7に接する鉛部材と、ゴム部材2a、2b、2c、2d、2e、2f、2gと、保護膜3a、3b、3c、3d、3eと、保護皮膜4と、を備えている。
【0126】
この実施形態において、X線遮蔽部の表面に保護膜3a、3b、3c、3d、3e及び保護皮膜4が二重に設けられている。保護膜及び保護皮膜4は、X線遮蔽部と絶縁油7中に溶出した硫黄成分との反応を一層抑制又は防止することができる。
【0127】
上記のことから、絶縁油7中に置かれる鉛部材の腐食に伴う異物発生を低コストで低減又は防止することができ、長期にわたって高い信頼性を維持することができるX線管装置10及びX線管装置10の製造方法を得ることができる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0129】
例えば、鉛部材やゴム部材は、上述した例に限定されるものではない。絶縁油7に接する各種の鉛部材が上述した対策1、2、3、4の何れかを採ることにより、上述した効果を得ることができる。
本発明の実施形態は、上述したX線管装置10に限定されるものではなく、固定陽極型のX線管装置など、各種のX線管装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0130】
2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g…ゴム部材、3a,3b,3c,3d,3e…保護膜、4…保護皮膜、7…絶縁油、10…X線管装置、20…ハウジング、20e…ハウジング本体、20f,20g,20h…蓋部、20w…X線放射窓、20r,20q…筒部、30…X線管、510,520,530,540…X線遮蔽部、511…第1遮蔽部、512…第2遮蔽部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9