(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排気ガスが導入される空間の外壁の一部を構成する第1固体電解質と、前記第1固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、を有する酸素ポンプセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第2固体電解質と、前記第2固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、前記空間に接するように配置された方の電極に形成されたSOx吸蔵部と、を有するセンサセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第3固体電解質と、前記第3固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、を有する補正セルと、
前記酸素ポンプセルに電圧を印加し、前記空間内の酸素濃度を調整する第1通電手段と、
前記センサセルに、SOxを分解させる電圧を印加する第2通電手段と、
前記補正セルに、NOxを分解し、かつ、SOxを分解しない範囲の電圧を印加する第3通電手段と、
前記センサセルへの通電を所定時間停止した後、前記第2通電手段により前記センサセルに通電し、前記第3通電手段により前記補正セルに通電した場合の、前記センサセルの出力と前記補正セルの出力とに応じて、前記SOx吸蔵部に吸蔵されたSOx量又は排気ガスのSOx濃度を推定するSOx推定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガス成分検出装置。
排気ガスが導入される空間の外壁の一部を構成する第4固体電解質と、前記第4固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、前記空間に接するように配置された方の電極に形成されたSOx吸蔵部と、を有するセンサセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第5固体電解質と、前記第5固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極を有する補正セルと、
前記センサセルに、SOxを分解する電圧を印加する第4通電手段と、
前記補正セルに、NOxを分解し、かつ、SOxを分解しない範囲の電圧を印加する第5通電手段と、
前記センサセルへの通電を所定時間停止した後、前記第4通電手段によりセンサセルに通電し、前記第5通電手段により前記補正セルに通電した場合の、前記センサセルの出力と前記補正セルの出力とに応じて、前記SOx吸蔵部に吸蔵されたSOx量又は排気ガスのSOx濃度を推定するSOx推定手段と、
を備えることを特徴とする排気ガス成分検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関に供給される燃料中の硫黄成分(以下「SOx」とも称する)による内燃機関本体の劣化や触媒被毒等を抑制するため、排気ガス中のSOxを検出して、内燃機関の故障に対するウォーニングや触媒OBD判定(On-Board Diagnostics)のレベルアップを図ることが考えられている。そのためには、排気ガス中に含まれるSOx濃度を検知できるシステムが必要となる。
【0005】
上記特許文献1の技術によれば、H
2O濃度やCO
2濃度は検出することができる。しかしながらH
2OやCO
2濃度と異なり、排気ガス中のSOx濃度はO
2濃度に比べ桁違いに小さい。このため、上記特許文献1のような排気ガスセンサにおける、排気ガス中のSOx濃度に応じた分解電流は極めて微小な電流となる。従って特許文献1のような従来の排気ガスセンサでは高い精度でSOx濃度を検出することは難しく、より高い精度でSOxを検知できる装置が望まれる。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、排気ガス中のSOxを高精度に検出可能な排気ガス成分検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、排気ガス成分検出装置であって、
排気ガスが導入される空間の外壁の一部を構成する第1固体電解質と、前記第1固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、を有する酸素ポンプセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第2固体電解質と、前記第2固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、前記空間に接するように配置された方の電極に形成されたSOx吸蔵部と、を有するセンサセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第3固体電解質と、前記第3固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、を有する補正セルと、
前記酸素ポンプセルに電圧を印加し、前記空間内の酸素濃度を調整する第1通電手段と、
前記センサセルに、SOxを分解させる電圧を印加する第2通電手段と、
前記補正セルに、NOxを分解し、かつ、SOxを分解しない範囲の電圧を印加する第3通電手段と、
前記センサセルへの通電を所定時間停止した後、前記第2通電手段により前記センサセルに通電
し、前記第3通電手段により前記補正セルに通電した場合の
、前記センサセルの出力
と前記補正セルの出力とに応じて、前記SOx吸蔵部に吸蔵されたSOx量又は排気ガスのSOx濃度を推定するSOx推定手段と、
を備える。
【0008】
第1の発明において、第1固体電解質と第2固体電解質とは別のものであってもよいし、同一の固体電解質の異なる部分であってもよい。また「電極に形成されたSOx吸蔵部」は、該電極内にSOx吸蔵剤を混入させる等により電極内に含まれているものであってもよいし、該電極の表面上に形成されているものであってもよい。
【0010】
第
1の発明において、第3固体電解質は、第1、第2固体電解質とは別のものであってもよいし、第1及び/又は第2固体電解質と同一の固体電解質の異なる部分であってもよい。
【0011】
第
2の発明は、排気ガスが導入される空間の外壁の一部を構成する第4固体電解質と、前記第4固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極と、前記空間に接するように配置された方の電極に形成されたSOx吸蔵部と、を有するセンサセルと、
前記空間の外壁の一部を構成する第5固体電解質と、前記第5固体電解質を挟み、かつ、一方が前記空間に接するように配置された一対の電極を有する補正セルと、
前記センサセルに、SOxを分解する電圧を印加する第4通電手段と、
前記補正セルに、NOxを分解し、かつ、SOxを分解しない範囲の電圧を印加する第5通電手段と、
前記センサセルへの通電を所定時間停止した後、前記第4通電手段によりセンサセルに通電し、前記第5通電手段により前記補正セルに通電した場合の、前記センサセルの出力と前記補正セルの出力とに応じて、前記SOx吸蔵部に吸蔵されたSOx量又は排気ガスのSOx濃度を推定するSOx推定手段と、
を備える。
【0012】
第
2の発明において、第4固体電解質と第5固体電解質とは別のものであってもよいし、同一の固体電解質の異なる部分であってもよい。また「電極に形成されたSOx吸蔵部」は、該電極内にSOx吸蔵剤を混入させる等により電極内に形成されているものであってもよいし、該電極の表面上に形成されているものであってもよい。
【0013】
第
3の発明は、第
1又は第
2の発明において、前記補正セルは、前記一対の電極のうち、前記空間に接するように配置された方の電極に形成されたSOx吸蔵部を有する。ここで、「電極に形成されたSOx吸蔵部」は、該電極内にSOx吸蔵剤を混入させる等により電極内に含まれているものであってもよいし、該電極の表面上に形成されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センサセルへの通電を所定時間停止することで、電極に形成されたSOx吸蔵部にSOxを吸蔵させることができる。従って、その後、センサセルにSOxを分解する電圧を印加することにより、SOx吸蔵部に吸蔵されたSOx量に応じた、大きなセンサ出力を得ることができる。これにより高い精度で、排気ガスに含まれる微量なSOx量又は濃度を検知することができる。
【0015】
また、
本発明によれば、補正セルにはNOxを分解するがSOxを分解しない電圧が印加される。従って、SOx量又は濃度の検出時に、センサセルの出力と共に補正セルの出力が考慮されることで、排気ガス中に混入したNOxの影響を排除することができ、より高い精度でSOx量又は濃度を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0018】
実施の形態1.
[排気ガスセンサの素子部の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の排気ガスセンサの素子部の構成について説明するための図である。
図1に示される素子部を有する排気ガスセンサは、内燃機関の排気通路に設置され、排気ガス中のSOx量又は濃度の検出に用いられる。
【0019】
図1に示されるように素子部は、間隔を空けて平行に配置された平板状のジルコニア10、12を備えている。ジルコニア10、12は酸素イオン導電性を有している。ジルコニア10、12の間には、アルミナ14が配置されている。アルミナ14はその一部に切欠きを有している。ジルコニア10、12の間のアルミナ14の切欠き部に、多孔質拡散層16が配置されている。ジルコニア10、12、アルミナ14、多孔質拡散層16に囲まれて内部空間18(即ちアルミナ14の切欠き部)が形成されており、内部空間18は多孔質拡散層16を介して外部と連通し、多孔質拡散層16を介して内部空間18に排気ガスが導入される。
【0020】
ジルコニア10の、内部空間18に接する面と反対側の面に対向して、ヒータ部20が配置されている。ヒータ部20とジルコニア10との間には、アルミナ22が配置されている。アルミナ22はその一部に切欠きを有している。ジルコニア10、アルミナ22、及びヒータ部20により囲まれた空間(即ち、アルミナ22の切欠き部)は第1大気導入路24となっている。第1大気導入路24には外部から大気が導入される。
【0021】
ジルコニア12の、内部空間18に接する面とは反対側の面側には、切欠きを有するアルミナ26と平板状のアルミナ28とが順に配置されている。ジルコニア12、アルミナ26及びアルミナ28で構成される空間(即ち、アルミナ26の切欠き部)は第2大気導入路30となっている。第2大気導入路30には外部から大気が導入される。
【0022】
素子部はポンプセル40(酸素ポンプセル)とセンサセル50とを有している。ポンプセル40は、ジルコニア10(第1固体電解質)と、ジルコニア10を挟んでその両面に形成された一対の電極42、44とを有する。ポンプセル40の一方の電極42は内部空間18内に配置され、内部空間18内に導入される排気ガスに接する。他方の電極44は第1大気導入路24内に配置されて第1大気導入路24内に導入される大気に接する。ポンプセル40には、ポンプセル40の電極42、44間に電圧を印加するための回路46(第1通電手段)が接続されている。
【0023】
センサセル50は、ジルコニア12(第2固体電解質)と、ジルコニア12を挟んでその両面に形成された一対の電極52、54とを有している。センサセル50の一方の電極52は、内部空間18内に配置されている。電極52には、その表面を覆うようにSOx吸蔵層56(SOx吸蔵部)が形成されている。SOx吸蔵層56は、主にジルコニアで構成されている。電極52及びSOx吸蔵層56は、内部空間18内に導入される排気ガスに接する。他方の電極54は第2大気導入路30に配置され、第2大気導入路30に導入される大気に接する。センサセル50には、センサセル50の電極52、54間に所定の電圧を印加するための回路58(第2通電手段)が接続されている。回路58には、回路58を開回路、閉回路とするスイッチ素子60と、電極52、54間に流れる電流を検出する検出部62が備えられている。
【0024】
[排気ガス成分検出時の動作]
次に、上記のように構成された素子部を有する排気ガスセンサにより、排気ガス中の硫黄成分であるSOx濃度を検出する際の動作について説明する。
【0025】
SOx濃度検出時にはヒータ部20により素子部が所定の温度に加熱される。より具体的には、ヒータ部20に所定の電力が供給され、これによりポンプセル40とセンサセル50とがそれぞれ所定の目標温度に加熱される。
【0026】
ヒータ部20の加熱により、ポンプセル40近傍は、一定の、センサ活性温度(700℃程度に維持される)。被測定ガスである排気ガスは、多孔質拡散層16を介して内部空間18内に導入される。ポンプセル40の電極42、44間には、所定の電圧が印加される。所定の電圧は、NOxを分解するがSOxを分解しない範囲に制御される。その結果ポンプセル40の酸素ポンピング作用により、内部空間18内の酸素が第1大気導入路24側に汲み出される。これにより、内部空間18内の酸素濃度がごく低濃度に調整される。
【0027】
排気ガスセンサのSOx濃度検出をする場合、SOx濃度検出に先立って、センサセル50に接続された回路58のスイッチ素子60を基準時間開いた状態で維持する。即ち、回路58は開回路状態となり、センサセル50が通電されない状態で維持される。このときヒータ部20により、センサセル50の温度は600℃以下に維持される。以下、このように回路58が開回路とされ、センサセル50が600℃以下に制御されている状態を「第1状態」とも称する。第1状態に維持することで、SOx吸蔵層56に排気ガス中のSOxが吸蔵される。第1状態が基準時間維持される。なお、基準時間は、SOx吸蔵層56に、検出に必要な量のSOxを吸蔵させるのに十分な時間であり、検出精度や必要な検出頻度等に応じて適宜設定される。
【0028】
第1状態の継続時間が基準時間を超えた後、スイッチ素子60を閉じ、回路58を閉回路とする。これによりセンサセル50が通電され、SOx濃度の検出が開始される。ここで電極52と電極54との間に印加される電圧は、SOxを分解する電圧である。また、このときヒータ部20により、センサセル50の温度は700℃以上の温度に維持される。以下、このように回路58が閉回路とされ、センサセル50がヒータにより700℃以上に加熱されている状態を「第2状態」とも称する。
【0029】
第1状態から第2状態に切り替えられると、電極52表面のSOx吸蔵層56に吸蔵されていたSOxが電極52上で分解され、酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンはジルコニア12内を伝導し、電極54側にポンピングされる。このときセンサセル50を含む回路58には、ポンピングされた酸素量に比例する電流が流れる。従って、回路58に流れる電流は、分解されたSOx量と相関を有する。従って、第2状態において、回路58に流れる総電流量(電流積算値)を求めることで、SOx吸蔵層56に吸蔵されたSOx量を求めることができる。このSOx量は排気ガス中のSOx濃度と相関を有する。検出されたSOx量と、センサセル50に印加した電圧の大きさ、第1状態の継続維持時間(基準時間)、及び、排気ガス流量等のエンジン情報に応じて、排気ガスのSOx濃度が検出される。
【0030】
なお、本実施の形態1の排気ガスセンサが用いられるシステムは、図示しない制御装置を備えている。排気ガスセンサのポンプセル40及びセンサセル50からの出力信号は、制御装置に取り込まれる。制御装置において、これらの出力(又は出力に基づく電流値)が積算されるなどして、SOx量、SOx濃度等が検出される。また、制御装置は、ポンプセル40の回路46、センサセル50の回路58とスイッチ素子60、及びヒータ部20の回路等に電気的に接続されている。制御装置は、予め記憶された制御プログラムに従って、ポンプセル40への通電や、センサセル50へのスイッチ素子60の開閉状態や、ヒータ部20への電力供給状態を制御する。
【0031】
[本実施の形態の具体的な制御]
図2は、本発明の実施の形態1において制御装置が実行する制御のルーチンについて説明するためのフローチャートである。
図2のルーチンは、一定時間ごとに繰り返し実行されるルーチンである。
図2のルーチンでは、まず、ステップS100において、スイッチ素子60が開いているか否かが判別される。
【0032】
ステップS100においてスイッチ素子60が開いていることが認められると、ステップS102において、センサセル50の温度が600℃に制御される。具体的にはヒータ部20が備えるヒータへの供給電圧が制御され、センサセル50の温度が600℃程度に維持される。
【0033】
次に、ステップS104において、スイッチ素子60の継続開時間が基準時間を超えたか否かが判別される。ここで継続開時間は、スイッチ素子60が開状態にされてからの継続時間である。継続開時間は制御装置に接続されたタイマー等によってカウントされる。また、基準時間は適宜設定され、予め制御装置に記憶された時間である。
【0034】
ステップS104において、スイッチ素子60の継続開時間が基準時間を超えたことが認められない場合、今回の処理は一旦、終了する。一方、ステップS104において、スイッチ素子60の継続開時間が基準時間を超えたことが認められると、次に、スイッチ素子60が閉じられる(S106)。スイッチ素子60は制御装置からの制御信号によって閉じられ、これによりセンサセル50の電極52、54間にSOxを分解する所定の電圧が印加される。
【0035】
ステップS100において、スイッチ素子60が開いていることが認められない場合、又は、ステップS106においてスイッチ素子60が閉じられた場合、次に、ステップS108において、センサセル50の温度が700℃以上に制御される。具体的にはヒータ部20のヒータへの供給電圧が制御され、センサセルの温度が700℃以上に制御される。
【0036】
次に、ステップS110において、センサ電流が積算される。センサ電流積算値は、今回スイッチ素子60が閉じられ、第2状態が維持されている間、回路58に流れたセンサ電流の積算値であり、ステップS110の処理により、前回までのセンサ電流積算値に今回のセンサ電流が加算される。
【0037】
次に、ステップS112において、センサ電流が基準値以下になったか否かが判別される。センサ電流が基準値まで小さくなったことで、SOx吸蔵層56に吸蔵されたSOxが所定量まで分解されたか否かが判別される。従って、基準値はゼロ又はその近傍の値である。具体的な基準値は予め設定され制御装置に記憶されている。ステップS112においてセンサ電流が基準値以下であることが認められない場合、今回の処理は一旦終了する。
【0038】
一方、ステップS112においてセンサ電流が基準値以下となったことが認められると、次に、ステップS114においてSOx濃度が検出される。SOx濃度は、現在までに積算されたセンサ電流積算値に応じて求められる。次に、ステップS116においてセンサ電流積算値がゼロクリアされ、ステップS118においてスイッチ素子60が開かれ、今回の処理が終了する。
【0039】
以上の処理によれば、基準時間の間、SOx吸蔵層56にSOxを吸蔵させた後、センサ電流の積算値を求め、これに応じたSOx量に基づき、排気ガスのSOx濃度が求められる。従って、高い精度で排気ガス中のSOx濃度を求めることができる。
【0040】
図3は、本実施の形態1の排気ガスセンサの出力特性について説明するための図である。
図3において横軸は電圧印加時間、縦軸はセンサセル50の出力電流を表している。
図3に示される例では、スイッチ素子60を開いた状態で、被測定ガスとして、内部空間18にN
2バランスガス中に濃度0ppmでSO
2を含むガスと、N
2バランスガス中に濃度500ppmでSO
2を含むガスとをそれぞれ流通させ、その後、スイッチ素子60を閉じてセンサセル50の電極52、54間に、電圧(ここでは0.7V)を印加したときの、センサ電流を検出している。
図3において、SO
2が0ppmのガスの場合を破線(a)、SO
2が500ppmのガスの場合を実線(b)で表している。
【0041】
図3から、SO
2濃度が500ppmという低濃度のガスを流通させた場合(実線(b))でも、SO
2が0ppmの場合(破線(a))と比較して、大きなセンサ電流を検出されることがわかる。即ち、センサセル50のセンサ電流に基づいて、SOx吸蔵層56に吸蔵していたSOx量を検出することができ、これに基づいて、高い精度で排気ガスのSOx濃度が検出することができる。
【0042】
なお、本実施の形態1では、ポンプセル40、センサセル50の固体電解質として、ジルコニアを用いる場合について説明した。しかし、本発明は、これに限られるものではなく、酸素イオン導電性を有するものであれば、他の固体電解質を用いるものであってもよい。これは、実施の形態2についても同様である。
【0043】
また、本実施の形態1では、異なるジルコニア10、12のそれぞれに、ポンプセル40とセンサセル50とが形成されている場合について説明した。このように固体電解質を異なるものとすることで、センサセルの出力(電流値)のノイズが抑えられる。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、1つの固体電解質の異なる部分に、ポンプセルとセンサセルとが配置されているものであってもよい。また、この場合、2つの大気導入路を有する場合に限らず、共通の1つの大気導入路に、電極44と54とが配置されたものとしてもよい。これは、実施の形態2についても同様である。
【0044】
また、本実施の形態1では、排気ガスセンサがポンプセル40を有する場合について説明した。このようにポンプセル40を有することで、内部空間18内の酸素濃度を一定にすることができるため、高い精度でSOx量又は濃度を検出することができる。しかし、本発明は、これに限られるものではなく、ポンプセル40を有しないものであってもよい。この場合にも、例えば酸素濃度が一定の測定条件下で測定することによりある程度正確に、SOx量又は濃度を検出することができる。これは実施の形態2についても同様である。
【0045】
また、ポンプセル40に印加される電圧がNOxを分解するがSOxを分解しない電圧である場合について説明した。これによりポンプセル40でもある程度のNOxが分解されるため、センサセル50においてSOx量をより正確に検出することができる。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、ポンプセル40に印加される電圧は内部空間18内の酸素濃度を調整するため、酸素をポンピングするのに必要な大きさの電圧であればよい。このような場合であっても、本発明は、SOx吸蔵層56にSOxを吸蔵させた後、吸蔵されたSOxの分解電流を検出するものであるため、NOxの分解電流による出力影響はある程度小さく抑えられる。従って、高い精度でSOxを測定することができる。これは、実施の形態2においても同様である。
【0046】
また、本実施の形態1においてポンプセル40は、酸素を第1大気導入路24側に排出することで、内部空間18内の酸素濃度をごく低濃度に調整する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、ポンプセルは、酸素をポンピングすることで、内部空間18内の酸素濃度を一定範囲の濃度に保つものであればよい。これは実施の形態2においても同様である。
【0047】
また、本実施の形態1において、SOx吸蔵層56は、主にジルコニアで構成されている場合について説明した。しかし、本発明においてSOx吸蔵層56を構成するSOx吸蔵剤は、これに限られるものではなく、SOxを吸蔵する機能がある他の材料を用いてもよい。具体的には、ジルコニアの他、アルミナや硫酸塩が挙げられる。またこれらの吸蔵剤の1又は2以上の材料を混合して用いてもよい。また、本発明は、電極52の表面にSOx吸蔵層56が形成されている場合に限られるものではなく、電極52がSOx吸蔵部を含むものであってもよい。このようなSOx吸蔵部を含む電極は、例えば、電極52の構成材料(例えば白金)のペーストにSOx吸蔵剤を混ぜ、これを焼成する等により形成することができる。これは実施の形態2においても同様である。
【0048】
また、本実施の形態1では、ポンプセル40を700℃とし、かつ、SOx吸蔵層56にSOxを吸蔵させる第1状態では、センサセル50の目標温度を600℃以下とし、吸蔵したSOxを分解することでSOx量を検出する第2状態では、センサセル50の目標温度を700℃以上とする場合について説明した。しかしながら、本発明において目標温度は、これに限られるものではない。
【0049】
例えばSOx吸蔵層56にSOxを吸蔵させる第1状態の場合には、低温であることが好ましいが、本発明は必ずしも600℃以下に限られるものではない。また、SOxを分解する第2状態では、高温であることが望ましく、700℃以上が好適であり、またセンサ出力の信頼性や劣化等を考慮すると800℃以下であることが望ましい。しかしながら、本発明は必ずしもこの温度範囲に限られるものではない。SOx分解時の第2状態の温度は、固体電解質の材料によっても異なるため、その材料に応じて、適正な温度に設定すればよい。また、本発明は、このように第1状態と第2状態との間で目標温度を変更する場合に限られるものでもなく、一定の温度範囲に維持されるものであってもよい。これは実施の形態2においても同様である。
【0050】
また、特に、実施の形態1では限定していないが、SOx濃度の検出精度を高めるためには、SOxの吸蔵とSOx量の検出とを、アイドリング中又は定速走行中に実行することが望ましい。これは実施の形態2においても同様である。
【0051】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2の素子部の構成について説明するための模式図である。
図4の素子部の構成は、センサセル50に隣接して補正セル70が形成されている点を除き、
図1の素子部と同一である。具体的に、
図4の素子部は、ジルコニア12(第2、第3固体電解質)の第2大気導入路30側の面に電極54を有している。一方、ジルコニア12の内部空間18側の面に、電極54と対向するように、センサセル50の一方の電極52が形成されると共に、補正セル70の電極72が形成されている。電極72は、電極52と同様に、SOx吸蔵層74で被覆されている。
【0052】
つまり実施の形態2の排気ガスセンサは、ポンプセル40、センサセル50、補正セル70を備え、センサセル50は一対の電極52、54を有し、補正セル70は一対の電極54、72を有している。内部空間18内に配置されるセンサセル50の電極52と補正セル70の電極72とは同一の材料、同一の形状に形成されている。また、センサセル50のSOx吸蔵層56と補正セル70のSOx吸蔵層74は同一の材料、同一の形状に形成されている。
【0053】
センサセル50の電極52と54との間に電圧を印加するための回路58に並列に、補正セルの電極54と72との間に所定の電圧を印加するための回路76(第3通電手段)が接続されている。回路76には、補正セル70のセンサ電流を検出するための検出部78が設置されている。回路58と回路76においてスイッチ素子60は共有される。即ち、スイッチ素子60が開かれると、回路58、76は共に開回路となり、センサセル50も補正セル70も通電されていない状態となる。また、スイッチ素子60が閉じられると、回路58、76が共に閉回路となり、センサセル50も補正セル70も通電された状態となる。
【0054】
ところで、センサセル50には、SOxを分解する電圧が印加される。SOxを分解する電圧は、NOxをも分解する大きさの電圧であるため、被測定ガス中にSOxとNOxとのいずれもが含まれる場合には、SOx分解電流と共にNOx分解電流が流れる。従って、センサセル50の出力には、SOxの分解電流のみならず、NOxの分解電流が含まれることとなる。
【0055】
図5は、本実施の形態2のセンサセル50の、NO濃度が500ppm、SO
2濃度が500ppmのN
2バランスガスの流通下における電圧―電流特性を示す図である。
図5において横軸は電圧、縦軸はセンサセル50の電流を表している。
図5に示されるように、電極52、54間に印加する電圧を高くしていくと、まず0.3〜0.5V程度の間、1〜2μA程度に電流値が安定し、その後、電流値は上昇し、0.6〜0.8V程度の間、3μA程度に安定する。ここで、0.3〜0.5V程度の間に安定的流れる電流は、NOの分解電流であり、0.6〜0.8V程度の間に安定的に流れる電流は、SO
2との分解電流である。このようにNOxとSOxが存在する環境下では、センサセル50には、SOxの分解電流とNOxの分解電流とが流れるが、NOxとSOxとでは、その分解電流が流れる電圧が異なる。つまり、SOxとNOxとでは、分解に必要な電圧が異なっており、SOxを分解するのに必要な電圧の下限値の方が、NOxを分解するのに必要な電圧の下限値より高い。
【0056】
本実施の形態2では、排気ガスのSOx濃度の検出に際しては、実施の形態1と同様に、上記第1状態を基準時間維持した後、スイッチ素子60が閉じ第2状態に切り替える。第2状態において、センサセル50の電極52と電極54との間に印加される電圧は、NOxとSOxとを共に分解する第1電圧(ここでは0.7V)である。これにより得られるセンサセル50の出力であるセンサ電流は、SOx吸蔵層56に吸蔵されたSOx量と、排気ガスに含まれるNOx量とに応じたものとなる。
【0057】
一方、上記第2状態において、補正セル70の電極54と電極72との間に印加される電圧は、NOxは分解するがSOxは分解しない、第1電圧より低い第2電圧(ここでは0.4V)である。これにより得られる補正セル70の出力電流は、内部空間18内に流入する排気ガス中のNOx量のみに応じた電流値となる。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態2におけるセンサの出力特性について説明するための図である。
図6において横軸は電圧印加時間を表し、縦軸は電流値を表している。また
図5において実線(a)はセンサセル50のセンサ電流、破線(b)は補正セル70のセンサ電流を表している。
【0059】
図6の例では、スイッチ素子60を開いた状態で、SO
2濃度が500ppm、NO濃度が500ppmのN
2バランスガスを10分流通させ、その後、スイッチ素子60を閉じた場合の、センサセル50と補正セル70とに流れるセンサ電流を示している。上記したようにセンサセル50には、吸蔵されたSO
2量と、非測定ガス中のNO量に応じた分解電流が流れる(実線(a)参照)。一方、補正セル70にはNO量のみに応じた分解電流が流れる(破線(b))参照)。
【0060】
ところで、本実施の形態2では、電極は同じ形状に形成されている。従って、センサセル50には補正セル70と同じ量のNOx分解電流が含まれると考えられる。そこで、本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、スイッチ素子60を開いた第1状態で経過時間が基準時間を超えた後、センサセル50に第1電圧、補正セル70に第2電圧を印加し、センサセル50の出力電流の積算値と、補正セル70の出力電流の積算値とを検出する。更に検出されたセンサセル50の電流積算値から、補正セル70の電流積算値を減算することで、センサセル50の電流積算値を補正する。センサセル50の出力から、排気ガス中のNOx量に応じた分解電流分を排除することができる。従って、補正されたセンサセル50の電流積算値により、より正確にSOx濃度又はSOx量を検出することができる。また、補正セル70の電流積算値に基づいて、NOx量又はNOx濃度が求められる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態2によれば、被測定ガスにNOxが含まれる場合にも、NOxの影響を排除してSOx濃度を検出することができる。従って、より高精度にSOx濃度を検知することができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態2によれば、電極54をセンサセル50、補正セル70の共通の電極として用いる場合について説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、センサセル50、補正セル70の大気側の電極が、別々に構成されたものであってもよい。また、センサセル50と補正セル70とは、同一のジルコニア12を固体電解質とする場合について説明した。しかし、本発明においては、これに限られるものではなく、例えば、補正セル70が、ジルコニア10の一部を固体電解質とするものであってもよい。
【0063】
また、本実施の形態2においては、補正セルの電極72上にSOx吸蔵層74を設ける場合について説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、電極72内にSOx吸蔵部を有するものであってもよい。また、補正セルがSOx吸蔵層74を有しないものであってもよい。
【0064】
また、本実施の形態2においては、センサセル50の電極52と補正セル70の電極72とが同一の材料、同一の形状に形成され、かつ、それぞれが同一の材料、同一の形状のSOx吸蔵層56、74に被覆されている場合について説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、それぞれの電極やSOx吸蔵層が異なる材料、異なる形状に形成されたものであってもよい。
【0065】
このように、電極材料やSOx吸蔵層の材料や形状を異なるものとする場合、センサセル50と補正セル70とのそれぞれに流れるNOx分解電流の大きさが異なるものとなる。従って、電極やSOx吸蔵層の材料や形状が異なる場合、NOx分解電流の大きさの差を補正する補正係数を予め設定しておいて、センサセル50の出力を、補正セル70の出力で補正する際に、補正係数を乗じるようにすることが望ましい。
【0066】
具体的に、例えば、電極52と電極72とで電極の表面積を異なるものとしたような場合には、その表面積に比例して、NOx分解電流の大きさが異なる。従って、この表面積の差分を補正する補正係数を設定して、これによりセンサセル50の出力又は補正セル70の出力を補正することにより、センサセル50の出力からNOx分解電流分をより正確に除去することができる。
【0067】
また、センサセル50において、SOxの分解電流は、SOx吸蔵層56に吸蔵されたSOxを分解して生じるものであるが、NOxはSOx吸蔵層56に吸蔵されないため、NOxの分解電流は、内部空間18に流通する排気ガス中のNOxを分解して生じるものである。例えば、
図4に示されるような構成のように、多孔質拡散層16側から排気ガスが導入される構成の場合、その配置位置によって、NOx濃度の異なるガスが、補正セル70とセンサセル50とに届くことが考えられる。このため、補正セル70とセンサセル50との電極52、72やSOx吸蔵層56、74が同一であっても、補正セル70とセンサセル50とに含まれるNOx分解電流が同一でない場合もある。このように配置位置によって分解電流の大きさが異なることが予想される場合には、予め実験やシミュレーション等により、その差を補正する係数を求めておいて、補正セル70の出力又はセンサセル50の出力を補正することにより、センサセル50の出力からNOx分解電流分を、より正確に排除することができる。
【0068】
また、本実施の形態2では、排気ガスセンサが、ポンプセル40、センサセル50、補正セル70の3つのセルを有する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、例えばポンプセル40を有しないものであってもよい。この場合、補正セル70に流れる電流には、O
2濃度に分解電流分も含まれる。従って、補正セル70の出力に応じて、センサセル50の出力を補正することで、O
2及びNOxの影響をある程度排除することができる。従って、SOx量又はSOx濃度を正確に検出することができる。なお、このようにポンプセル40を有しない構成において、ジルコニア12は、本発明の「第4固体電解質」及び「第5固体電解質」に該当し、回路58は「第4通電手段」に該当し、回路76は「第5通電手段」に該当する。
【0069】
また、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。