(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スケジュール作成部は、前記エネルギー蓄積機器の容量に相当する削減量に達するまで、前記需要予測部によって作成された予測値において最大となるピーク時間帯の需要が、他の時間帯の需要の最大値と一致するようにカットするピークカット処理部と、
前記ピークカット処理部によりカットされた需要量を確保するように、蓄熱槽の蓄熱スケジュールを作成する蓄熱スケジュール作成部及び蓄電池の蓄電スケジュールを作成する蓄電スケジュール作成部と、
を有し、
前記蓄熱スケジュール作成部は、前記蓄電スケジュール作成部に優先して、蓄熱スケジュールを作成することを特徴とする請求項1記載の運転制御装置。
前記スケジュール修正判定部は、前記消費電力短期予測部により予測される消費電力の予測値が、消費電力量の計測周期内において、前記スケジュール作成部が作成した運転スケジュールの最大消費電力量を超えるか否かにより、前記運転スケジュールの修正の要否を判定し、
前記スケジュール修正部は、前記消費電力の予測値が、前記最大消費電力量を超えないように、前記運転スケジュールを修正することを特徴とする請求項4記載の運転制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、エネルギー供給プラントの運転制御装置の実施形態について説明する。
[A.構成]
まず、本実施形態が適用されるシステムの構成を、
図1を参照して説明する。本システムは、エネルギー供給プラント1を制御するシステムであって、監視制御装置2、運転制御装置3を有する。
【0015】
また、運転制御装置3は、インターネット等のネットワーク5を介して、気象情報記憶装置4に接続されている。気象情報記憶装置4は、気象情報を記憶した処理部である。例えば、気象情報を提供しているシステムのサーバにより、気象情報記憶装置4を構成できる。
【0016】
[1.エネルギー供給プラント]
エネルギー供給プラント1は、冷却塔10、水冷冷凍機11、空冷HP(ヒートポンプ)12、蓄熱槽13、蓄電池14、ポンプ15〜18、バルブ19〜21、空調機23、照明24を有する。
【0017】
冷却塔10は、水冷冷凍機11へ供給する水及び水冷冷凍機11から排出された水を冷却する装置である。水冷冷凍機11は、冷却塔10からの水を熱源として、冷媒の相変化により冷水を供給する機器である。冷却塔10及び水冷冷凍機11は熱源機器であり、その運転時には電力を消費する。そして、水冷冷凍機11は、複数のレベルの出力帯による運転が可能である。
【0018】
空冷HP12は、空気を熱源として冷媒の相変化により冷水又は温水を供給する機器である。空冷HP12は熱源機器であり、その運転時には電力を消費する。そして、空冷HP12は、複数のレベルの出力帯による運転が可能である。
【0019】
なお、熱源機器の運転には、後述するポンプ15〜18、バルブ19〜21の作動が必要となり、これらの作動時にも電力を消費する。熱源機器の運転には、ポンプ15〜18、バルブ19〜21の作動も含む。
【0020】
蓄熱槽13は、貯留した熱媒により蓄熱を行う槽である。蓄電池14は、商用電源から受電(図中、「受電」で示す)した電力を充電し、充電した電力を放電可能な二次電池を利用した設備である。蓄熱槽13及び蓄電池14は、エネルギー蓄積機器である。
【0021】
ポンプ15は、水冷冷凍機11と空調機23との間の系統に設けられ、水冷冷凍機11と空調機23との間で冷水を循環させる機器である。ポンプ16は、冷却塔10と水冷冷凍機11との間の系統に設けられ、冷却塔10と水冷冷凍機11との間で冷水を循環させる機器である。
【0022】
ポンプ17は、空冷HP12と空調機23との間の系統に設けられ、空冷HP12と空調機23との間で、冷水又は温水を循環させる機器である。ポンプ18は、蓄熱槽13と空調機23との間の系統に設けられ、蓄熱槽13と空調機23との間で、冷水又は温水を循環させる機器である。
【0023】
水冷冷凍機11、空冷HP12及び蓄熱槽13と空調機23との間の系統の一部は、共通の配管で構成されている。共通化された系統及びこれに接続された蓄熱槽13の系統には、送水系統を切り替えるバルブ19〜21が設けられている。
【0024】
空調機23や照明24は、建物22に設置されたエネルギー消費機器である。空調機23は、上記のように、水冷冷凍機11、空冷HP12、蓄熱槽13からの冷水、受電した電力の供給を受けて、冷房を行う装置である。なお、空調機23は、空冷HP12からの温水、受電した電力の供給を受けて、暖房を行うこともできる装置である。
【0025】
空調機23への冷水供給は、バルブ19〜21を切り替え、水冷冷凍機11、冷却塔10およびポンプ15〜18を適切に運転することにより、水冷冷凍機11及び蓄熱槽13のいずれか一方又は双方から可能である。
【0026】
図2は、バルブ19〜21の開閉及びポンプ15〜18の作動により、水冷冷凍機11及び蓄熱槽13から空調機23へ冷水を供給するパターンの一例を示す。
図2において、「空調通常」は、蓄熱槽13への蓄熱は行わず、水冷冷凍機11からの冷水供給によって、空調機23を作動させる運転モードである。
【0027】
「蓄熱通常」は、空調機23への冷水供給は行わず、水冷冷凍機11からの冷水供給によって、蓄熱槽13へ蓄熱する運転モードである。「放熱通常」は、水冷冷凍機11からの冷水供給は行わず、蓄熱槽13からの冷水供給によって、空調機23を作動させる運転モードである。
【0028】
「空調蓄熱」は、水冷冷凍機11からの冷水供給により、空調機23を作動させるとともに、蓄熱槽13への蓄熱を行う運転モードである。「空調放熱」は、蓄熱槽12への蓄熱は行わず、水冷冷凍機11と蓄熱槽13からの冷水供給によって、空調機23を作動させるモードである。
【0029】
冷却塔10、水冷冷凍機11、空冷HP12、蓄熱槽13、ポンプ15〜18、バルブ19〜21は、運転制御装置3及び監視制御装置2により制御される制御対象機器に含まれる。
【0030】
なお、ここで示した制御対象機器、エネルギー消費機器は一例であり、いずれの制御対象機器、エネルギー消費機器を使用するか若しくは使用しないかは自由である。また、本実施形態は、例示されていない制御対象機器を排除するものではない。
【0031】
[2.監視制御装置]
監視制御装置2は、上記のエネルギー供給プラント1が、正常に動作しているかどうかを監視する装置である。
【0032】
また、監視制御装置2は、後述する運転制御装置3からの運転スケジュールに基づく制御設定値に従って、制御対象機器を制御する。例えば、監視制御装置2は、制御対象機器を、上記のいずれかの運転モードで動作させる。また、監視制御装置2は、蓄電池14の充放電制御を行う。
【0033】
なお、運転スケジュールは、一日の各時間帯における制御対象機器の運転状態を決定する情報である。この運転スケジュールは、運転停止スケジュール、蓄熱スケジュール、蓄電スケジュールを含む。
【0034】
運転停止スケジュールは、熱源機器の運転停止時間及び出力を決定する情報である。蓄熱スケジュールは、蓄熱槽13の蓄熱時間及び蓄熱量を決定する情報である。蓄電スケジュールは、蓄電池14の蓄電時間及び蓄電量を決定する情報である。
【0035】
制御設定値は、運転スケジュールに基づいて、制御対象機器を作動させる設定値である。この制御設定値は、各制御対象機器の起動、作動状態、停止を決定するパラメータである。
【0036】
[3.運転制御装置]
運転制御装置3は、制御対象機器の運転スケジュールに基づく制御設定値を、監視制御装置2に出力することにより、エネルギー供給プラント1の運転を制御する装置である。
【0037】
運転スケジュールの作成には、エネルギー供給プラント1の運用データや、気象データを用いる。気象データは、上記の気象情報記憶装置4から、ネットワーク5を介して取得することができる。
【0038】
このような運転制御装置3は、送受信部31、プロセスデータ取得部32、プロセスデータ記憶部33、モデルデータ入力部34、モデルデータ記憶部35、演算処理部36、演算結果記憶部37、制御設定値出力部45を有する。
【0039】
[3−1.送受信部]
送受信部31は、監視制御装置2との間の情報の送受信を行う処理部である。また、送受信部31は、ネットワーク5を介して、外部との情報の送受信を行うこともできる。
【0040】
[3−2.プロセスデータ取得部]
プロセスデータ取得部32は、送受信部31を介して、プロセスデータを取得する処理部である。プロセスデータは、プラントデータ、気象データを含む。プラントデータは、エネルギー供給プラント1から取得される制御対象機器、エネルギー消費機器等の運用実績を示すデータである。例えば、過去の1日毎の冷水及び電力の需要実績データは、プラントデータに含まれる。
【0041】
気象データは、気象情報記憶装置4から取得される過去の気象に関する実績データ、将来の気象に関する予報データを含む。例えば、過去の1日毎の最高気温、最低気温、天気等は、気象データに含まれる。
【0042】
また、将来の1日毎の予想最高気温、予想最低気温、予想天気等も、気象データに含まれる。プラントデータ、気象データは、それぞれ日付、曜日に関するデータと関連付けて記憶されている。
【0043】
[3−3.プロセスデータ記憶部]
プロセスデータ記憶部33は、プロセスデータ取得部32が取得したプロセスデータを記憶する処理部である。
【0044】
[3−4.モデルデータ入力部]
モデルデータ入力部34は、エネルギー供給プラント1のモデルデータを入力する処理部である。モデルデータは、エネルギー供給プラント1の構成を示す情報である。
【0045】
例えば、エネルギー供給プラント1のプラントモデルやモデルパラメータを含むデータである。プラントモデルは、エネルギー供給プラント1の構成機器及び接続関係を示すデータである。
【0046】
モデルパラメータは、エネルギー供給プラント1の構成機器の特性を示すパラメータである。例えば、モデルパラメータは、制御対象機器の定格、出力帯、容量等、それぞれの機器に応じて定まる各種のパラメータを含む。
【0047】
[3−5.モデルデータ記憶部]
モデルデータ記憶部35は、モデルデータ入力部34が入力したモデルデータを記憶する処理部である。
【0048】
[3−6.演算処理部]
演算処理部36は、プロセスデータ及びモデルデータに基づいて、エネルギー供給プラント1の運転スケジュール及び制御設定値を求める処理部である。
【0049】
この演算処理部36は、開始指示部38、需要予測部39、スケジュール作成部40、制御設定値作成部41、消費電力短期予測部42、スケジュール修正判定部43、スケジュール修正部44を有する。
【0050】
[3−6−1.開始指示部]
開始指示部38は、あらかじめ設定されたタイミングで、演算処理部36による需要予測、スケジュール作成、制御設定値作成等の実行を開始させる処理部である。例えば、実行日の前日にスケジュールを作成する場合、1日のうちの所定時間を設定タイミングとすることが考えられる。これを毎日にするか、何日おきにするか、何時にするかは、自由に設定可能である。
【0051】
[3−6−2.需要予測部]
需要予測部39は、プロセスデータ記憶部33に記憶された過去の所定期間の気象データ及びプラントデータに基づいて、エネルギー供給プラント1の所定期間の需要を予測する処理部である。ここでいうエネルギー需要には、例えば、エネルギー供給プラント1の冷水需要及び電力需要を含む。所定期間は、本実施形態では、1日としているが、数日、1時間又は数時間、1週間又は数週間、1ヶ月又は数ヶ月とする等、自由に設定可能である。この予測の期間は、後述のスケジュールの作成のためのものであるため、スケジュールを作成する期間も、これと同様に設定可能である。また、需要予測部39による予測は、新たなスケジュールを作成するために繰り返し行われるという意味で、予測される所定期間は、所定の周期と捉えることもできる。
【0052】
[3−6−3.スケジュール作成部]
スケジュール作成部40は、制御対象機器の運転スケジュールを作成する処理部である。スケジュール作成部40は、
図3に示すように、運転停止スケジュール作成401、ピークカット処理部402、蓄熱スケジュール作成部403、蓄電スケジュール作成部404を有する。
【0053】
(1)運転停止スケジュール作成部
運転停止スケジュール作成部401は、蓄熱槽13及び蓄電池14を用いない場合に、冷水需要を満たすように、各時刻において熱源機器を運転及び停止させる運転停止スケジュールを作成する処理部である。この運転停止スケジュール作成部401は、
図4に示すように、優先順位決定部401a、運転停止決定部401b、冷水出力決定部401cを有する。
【0054】
(優先順位決定部)
優先順位決定部401aは、熱源機器である水冷冷凍機11及び空冷HP12を作動させる優先順位を決定する処理部である。この優先順位の決定は、例えば、
図5に示すように、モデルパラメータとして記憶された冷水製造単価表に基づいて行われる。
【0055】
冷水製造単価表は、各熱源機器が定格で運転された場合に、冷水の単位熱量[kWh]を製造するために必要な燃料あるいは電力の価格を示す表である。
図5は、水冷冷凍機11及び空冷HP12が、いずれも電動式であるため、単位冷水熱量を製造するために必要な電力価格となっている。
【0056】
(運転停止決定部)
運転停止決定部401bは、優先順位決定部401aにより決定された優先順位に基づいて、冷水需要を満たすように、各時刻における熱源機器の運転及び停止に関する運転停止スケジュールを決定する処理部である。
【0057】
(冷水出力決定部)
冷水出力決定部401cは、運転停止決定部401bが決定した運転停止スケジュールにより運転とされた熱源機器について、各熱源機器の冷水出力の配分を最適化して、熱源機器の出力を決定する処理部である。この熱源機器の出力の決定は、例えば、
図6に示すように、モデルパラメータとして記憶された冷水増分単価表に基づいて行われる。
【0058】
冷水増分単価表は、各熱源機器の出力において、冷水出力を単位熱量[kWb]増加するために必要な燃料あるいは電力の価格を示す表である。各熱源機器は、それぞれ複数の出力帯を設定できる。そして複数の出力帯のそれぞれに異なる冷水増分単価を設定できる。
【0059】
ただし、各時刻における冷水増分単価は、出力に対して単調増加でなければならない。これは、通常の熱源機器の特性である。また、各熱源機器の最小の出力帯の冷水増分単価は、0[円/kWh]である。熱源機器は、運転している以上、原理的に出力をゼロにすることはできず、最低の出力が存在する。
【0060】
(2)ピークカット処理部
ピークカット処理部402は、運転停止スケジュールにおいて、需要予測における電力需要を、カットする処理部である。このピークカット処理は、例えば、電力需要が最大となる時間帯の電力需要を、他の時間帯の電力需要の最大値と一致させるように行う。
【0061】
そして、このピークカット処理は、冷水出力の削減量が蓄熱槽13の容量に相当する量に達するまで、又は電力の削減量が蓄電池14の容量に相当する量に達するまで、繰り返し行う。
【0062】
(3)蓄熱スケジュール作成部
蓄熱スケジュール作成部403は、熱源機器による蓄熱槽13への蓄熱運転のスケジュールを作成する処理部である。
【0063】
蓄熱スケジュールは、熱源機器が蓄熱槽13への蓄熱運転を行う時間帯と、各時間帯における熱源機器の出力に関する情報である。この蓄熱スケジュール作成部403は、
図4に示すように、熱持替部403a、蓄熱容量判定部403b、蓄熱運転決定部403cを有する。
【0064】
(熱持替部)
熱持替部403aは、冷水需要を担う機器を、熱源機器の冷水出力と蓄熱槽13の冷水出力との間で持ち替える(置き換える)処理部である。ここで、持ち替えとは、熱源機器が冷水需要を受け持つか、蓄熱槽13が冷水需要を受け持つかを切り替えることをいう。
【0065】
(熱容量判定部)
蓄熱容量判定部403bは、ピークカット処理部402によりピークカットされた冷水出力合計値が、蓄熱槽13の蓄熱容量を超えるか否かを判定する処理部である。
【0066】
(蓄熱運転決定部)
蓄熱運転決定部403cは、蓄熱容量判定部403bの判定結果と、冷水増分単価表に基づいて、熱源機器による蓄熱槽13への蓄熱運転スケジュールを作成する処理部である。
【0067】
(4)蓄電スケジュール作成部
蓄電スケジュール作成部404は、蓄電池14への蓄電運転のスケジュールを作成する処理部である。蓄電運転スケジュールは、蓄電池14が充電を行う時間帯に関する情報である。この蓄電スケジュール作成部404は、電力持替部404a、蓄電容量判定部404b、充電運転決定部404cを有する。
【0068】
(電力持替部)
電力持替部404aは、電力需要を担う電源を、給電と蓄電池13の放電との間で持ち替える(置き換える)処理部である。ここで、持ち替えとは、給電側が電力需要を受け持つか、蓄電池14が電力需要を受け持つかを切り替えることをいう。
【0069】
(蓄電容量判定部)
蓄電容量判定部404bは、ピークカット処理部402によりピークカットされた電力需要の合計値が、蓄電池14の蓄電容量を超えるか否かを判定する処理部である。
【0070】
(充電運転決定部)
充電運転決定部404cは、蓄電容量判定部404bの判定結果と、時間帯毎の電力単価に基づいて、蓄電池14の蓄電スケジュールを作成する処理部である。
【0071】
[3−6−4.制御設定値作成部]
制御設定値作成部41は、上記のように作成された運転スケジュール(運転停止スケジュール、蓄熱スケジュール及び蓄電スケジュール)に基づいて、制御設定値を作成する処理部である。
【0072】
例えば、制御設定値は、運転スケジュールに従ったポンプ15〜18の運転、停止、バルブ19〜21の開閉をさせるパラメータを含む。また、制御設定値は、運転スケジュールに従った熱源機器としての水冷冷凍機11、空冷HP12の出力、負荷率などを決定するパラメータを含む。
【0073】
さらに、制御設定値は、運転スケジュールに従ったエネルギー蓄積機器である蓄熱槽13の蓄熱量及び放熱量、蓄電池14の蓄電量及び放電量などを決定するパラメータを含む。
【0074】
[3−6−5.消費電力短期予測部]
消費電力短期予測部42は、需要予測部39が予測する所定期間よりも短い周期における消費電力量の予測を行う処理部である。例えば、消費電力短期予測部42は、最大消費電力量を計測する周期内の消費電力量を予測する。
【0075】
一般的に、消費電力量の積算の計測スケジュールは30分単位であるため、一例として、周期を30分とすることが考えられる。消費電力短期予測部42による消費電力量の予測は、後述するように、前記周期で計測した最大消費電力量の実績値に基づいて行う。
【0076】
[3−6−6.スケジュール修正判定部]
スケジュール修正判定部43は、運転スケジュールを修正するかどうかを判定する処理部である。スケジュール修正判定部43による判定は、例えば、消費電力短期予測部42による消費電力量の予測値が、運転スケジュールにおける当該周期内の最大消費電力量を超えるかどうかにより行う。
【0077】
[3−6−7.スケジュール修正部]
スケジュール修正部44は、運転スケジュールを修正する処理部である。スケジュール修正部44は、消費電力短期予測部42の消費電力量の予測値が、運転スケジュールの最大消費電力量を超えないように、蓄熱槽13あるは蓄電池14の運転スケジュールを修正する。
【0078】
[3−7.演算結果記憶部]
演算結果記憶部37は、制御設定値作成部41が作成した制御設定値を記憶する処理部である。
【0079】
[3−8.制御設定値出力部]
制御設定値出力部45は、制御設定値作成部41が作成し、演算結果記憶部37に記憶された制御設定値を、監視制御装置2に出力する処理部である。
【0080】
なお、図示はしないが、運転制御装置3は、各種設定を記憶する設定記憶部を有する。例えば、開始指示部38が処理の実行を指示する時刻、需要予測部39が需要を予測し、スケジュール作成部40が運転スケジュールを作成する期間、消費電力短期予測部42が予測を行う周期等を、設定記憶部が記憶している。
【0081】
なお、運転制御装置3、監視制御装置2は、それぞれ独立に又は共通で、各部の処理に必要な情報の入力、処理の選択や指示を入力する入力部、情報入力のためのインタフェース、処理結果等を出力する出力部を有する。
【0082】
入力部としては、キーボード、マウス、タッチパネル、スイッチ等、現在又は将来において利用可能な入力装置を含む。入力部は、上記のプロセスデータ取得部32、モデルデータ入力部34の機能を果たすこともできる。
【0083】
出力部としては、表示装置、プリンタ等、現在又は将来において利用可能なあらゆる出力装置を含む。出力部は、上記の制御設定値出力部45の機能を果たすこともできる。なお、プロセスデータ記憶部33、モデルデータ記憶部35が記憶したデータを、出力部が表示等することにより、オペレータが参照できる。
【0084】
[B.作用]
以上のような本実施形態の動作について、
図7〜
図28を参照して説明する。
【0085】
[1.定時演算処理]
演算処理部36があらかじめ設定された時刻に行う定時演算処理を説明する。以下に説明する処理は、将来の所定の期間における運転スケジュールを作成するものである。例えば、演算処理部36は、1日1回、所定の時刻に、エネルギー供給プラント1の翌日の24時間の運転スケジュールを作成する。
【0086】
[1−1.処理の概要]
定時演算処理の概要を、
図7のフローチャートを参照して説明する。まず、開始指示部38からの開始指示に応じて、需要予測部39は、建物22のエネルギー需要を予測する(ステップ701)。
【0087】
スケジュール作成部40は、需要予測部39によるエネルギー需要予測値に基づいて、制御対象機器の運転スケジュールを作成する(ステップ702)。制御設定値作成部41は、作成された運転スケジュールに基づいて、制御設定値を作成する(ステップ703)。
【0088】
演算結果記憶部37は、作成された制御設定値を記憶する(ステップ704)。制御設定値出力部45は、作成された制御設定値を、監視制御装置2に出力する(ステップ705)。
【0089】
[1−2.需要予測処理]
需要予測部39によるエネルギー需要の予測処理の一例を、
図8のフローチャートを参照して説明する。エネルギー需要には、上記のように、冷水需要及び電力需要が含まれる。
【0090】
予測のための需要実績データとしては、予測するエネルギー需要に応じた冷水需要、電力需要の実績を用いる。また、以下の説明での予測日は、運転スケジュールを作成する対象となる日である。なお、以下の予測処理の手法は例示であり、本実施形態はこれには限定されず、他のあらゆる手法を用いることができる。
【0091】
まず、需要予測部39は、プロセスデータ記憶部33から読み出した需要実績データ、気象データを用いて、次式(1)のような回帰モデルのパラメータa
0、a
1を計算する(ステップS801)。なお、パラメータa
0、a
1は、平日、休日などの曜日モード毎に、最小二乗法により決定する。
【0093】
また、最高・最低気温と最大・最小電力の関係を表すモデルとして、以下の式(2)に示すような重回帰モデルを用いることもできる。この場合のパラメータa
10、a
11、a
12も、平日、休日などの曜日モード毎に、最小二乗法により決定する。
【数2】
【0094】
次に、需要予測部39は、算出した回帰モデルパラメータと、プロセスデータ記憶部33から読み出した気象予報データを用いて、次式(3)(4)のいずれかにより、需要家毎の最大エネルギー需要の予測値を計算する(ステップS802)。この場合のパラメータは、予測日の曜日モードに一致したものが用いられる。
【0097】
また、需要予測部39は、プロセスデータ記憶部33から読み出した気象データ及び気象予報データを用いて、予測日と最も近い日を過去のデータから検索する(ステップS803)。
【0098】
検索は、平日、休日などの曜日モードの一致する日の中から行う。日の近さは、各データの日付順で付与された検索インデックスによって測られ、以下の式(5)で求められる近似の程度を示す指標値I
xが最小となる日が選択される。指標値I
xが最小となる日が複数ある場合は、例えば、予測日に最も近い日を選択すればよい。
【0100】
最後に、需要予測部39は、算出された最大エネルギー需要の予測値と、検索された類似日とを用いて、予測日におけるエネルギー需要予測値Y
tを、次の式(6)によって計算する(ステップS804)。y
tは、類似日の需要実績値である。
【0102】
図9は、需要予測データ作成処理において、各時刻の需要予測値Y
tを計算するための各データの関係を示す図である。つまり、式(6)の通り、各時刻の類似日の需要実績値y
tに、類似日の最大需要実績値y
maxに対する最大需要予測値Y
maxの比率を掛けている。
【0103】
[1−3.運転スケジュール作成処理]
スケジュール作成部40が運転スケジュールを作成する処理について、
図10及び
図11のフローチャート、
図12〜
図24のグラフ、
図25及び
図26の表を参照して説明する。
【0104】
(1)優先順位決定処理
まず、運転停止スケジュール作成部401の優先順位決定部401aが、冷水製造単価表を用いて、熱源機器の起動優先順位を決定する(ステップS1001)。
【0105】
優先順位決定部401aは、冷水製造単価の安い熱源機器から順に起動するように、冷水製造単価の安い熱源機器ほど優先順位を高くする。例えば、
図5に示した冷水製造単価表では、すべての時間帯において、水冷冷凍機11が優先順位1、空冷HP12が優先順位2となる。
【0106】
(2)運転停止決定処理
次に、運転停止スケジュール作成部401の運転停止決定部401bが、決定した起動優先順位に従い、蓄熱槽13及び蓄電池14を用いない場合に、各時刻で必要な熱源機器の運転停止を決定する(ステップS1002)。
【0107】
つまり、運転停止決定部401bは、需要予測部39により予測された冷水需要を満たすように、優先順位に従って、熱源機器の運転、停止を決定する。
【0108】
蓄熱槽13及び蓄電池14を用いない場合の熱源機器の運転停止の一例を、
図12に示す。この例では、冷水需要を2台(水冷冷凍機11、空冷HP12)の熱源機器でカバーできるように運転停止を決定している。
【0109】
冷水需要が、起動優先順位の高い水冷冷凍機11の最大出力600kW以下の場合は、水冷冷凍機11のみで運転する。冷水需要が600kWを超える場合は、水冷冷凍機11と空冷HP12を運転する。
【0110】
(3)冷水出力決定処理
また、運転停止スケジュール作成部401の冷水出力決定部401cは、運転となっている熱源機器について、冷水出力を決定する(ステップS1003)。
【0111】
この冷水出力決定部401cによる冷水出力の決定は、冷水増分単価表を用いて、各熱源機器の冷水出力の配分を最適化することにより行う。例えば、冷水出力決定部401cは、
図6に例示した冷水増分単価表において、熱源機器の冷水増分単価の小さい出力帯から順に、出力を割り当てる。
【0112】
図13に、蓄熱槽13及び蓄電池14を用いない場合の熱源機器の運転停止スケジュールの冷水出力を最適化した一例を示す。この例では、水冷冷凍機11の出力帯は、以下の[1]〜[3]に分かれている。この水冷冷凍機11において、各出力帯[1]〜[3]は、200kWずつレベルが上昇する設定となっている。
【0113】
また、空冷HP12の出力帯は、以下の[1]〜[3]に分かれている。この空冷HP12において、各出力帯[1]〜[3]は、100kWずつレベルが上昇する設定となっている。
【0114】
例えば、
図13の例では、8時には、冷水需要400kWに対して、水冷冷凍機11のみが運転する。このため、この時間は水冷冷凍機11の出力帯[1]+[2]=200kW+200kWの合計400kWを割り当てる。
【0115】
また、10時には、冷水需要700kWに対して、水冷冷凍機11および空冷HP12が運転する。このため、この時間は、水冷冷凍機11の出力帯[1]+[2]+[3]=200kW+200kW+200kW=600kW、空冷HP12の出力帯[1]=100kWの合計700kWを割り当てる。
【0116】
(4)蓄熱・蓄電スケジュール作成処理
以上のように、蓄熱槽13及び蓄電池14を用いない場合の熱源機器の運転停止スケジュールが作成されたので、スケジュール作成部40のピークカット処理部402、蓄熱スケジュール作成部403、蓄電スケジュール作成部404が、蓄熱・蓄電スケジュールを作成する。このような蓄熱・蓄電スケジュールの作成処理について、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0117】
(蓄熱スケジュールの作成)
まず、ピークカット処理部402が、作成された運転スケジュールのピークカット処理を実行する(S1101)。つまり、ピークカット処理部402は、最大電力需要時間帯の電力需要合計値を、他の時間帯の電力需要合計値の最大値と一致させるようにカットする。
【0118】
図14は、電力需要及び熱源機器の動力の一例を示したグラフである。なお、
図14における電力需要は、エネルギー消費機器において必要となる狭義の電力需要である。この狭義の電力需要と熱源機器の動力に要する電力需要を合わせた電力需要合計値は、広義の電力需要である。
【0119】
図14における熱源機器の動力に要する各時間帯の電力需要は、
図13に示した熱源機器の運転スケジュールに対応している。
図14に示す例では、最大電力需要時間帯は14時である。このため、ピークカット処理部402は、14時の電力需要合計値が、他の時間帯の電力需要合計値の最大値である15時と同じになるようにカットする。
【0120】
次に、蓄熱スケジュール作成部403の熱持替部403aは、ピークカット処理によってカットされた電力需要に対応する熱源機器の冷水出力を、蓄熱槽13の冷水出力に持ち替える(ステップS1102)。
【0121】
蓄熱スケジュール作成部403の蓄熱容量判定部403bは、持ち替えられた蓄熱槽13の冷水出力の合計値が、蓄熱槽13の蓄熱容量を超過したかどうかを判定する(ステップS1103)。
【0122】
蓄熱槽13の冷水出力の合計値が、蓄熱槽13の蓄熱容量を超えていなければ(ステップS1103のNO)、再び、ステップS1101に戻って、ピークカット部402がピークカット処理を実行する。
【0123】
このような蓄熱槽13の蓄熱容量に応じたピークカット処理の一例を、
図15〜
図18のグラフに示す。
図15〜
図18は、ピークカットを繰り返すことによる熱源機器の冷水出力の変化を示す。
図15〜
図18における(1)〜(4)は、それぞれ、
図14の(1)〜(4)のピークカットに対応した熱源機器の冷水出力(kWhで示す)の変化を示している。
【0124】
例えば、ピークカット部402が、
図15に示すように、
図14の14時における(1)の出力140kWhの部分をカットする。熱持替部403aは、140kWhの熱源機器の冷水出力を、蓄熱槽13の冷水出力に持ち替える。蓄熱容量判定部403bは、蓄熱槽13の蓄熱容量は2000kWhであるため、冷水出力合計値140kWhが、蓄熱容量を超過しないと判定する。
【0125】
次に、ピークカット部402は、
図14の14時及び15時における(1)+(2)の出力303kWhの部分をカットする。熱持替部403aは、303kWhの熱源機器の出力を、蓄熱槽13の冷水出力に持ち替える。蓄熱容量判定部403bは、蓄熱槽13の蓄熱容量は2000kWhであるため、冷水出力合計値303kWhが、熱容量を超過しないと判定する。
【0126】
引き続き、ピークカット部402は、
図14の13時〜15時における(1)+(2)+(3)の出力1087kWhの部分をカットする。熱持替部403aは、1087kWhの熱源機器の出力を、蓄熱槽13の冷水出力に持ち替える。蓄熱容量判定部403bは、蓄熱槽13の蓄熱容量は2000kWhであるため、冷水出力合計値1087kWhは、熱容量を超過しないと判定する。
【0127】
さらに、ピークカット部402は、
図14の10時〜16時における(1)+(2)+(3)+(4)の冷水出力2130kWhの部分をカットする。熱持替部403aは、2130kWhの熱源機器の出力を、蓄熱槽13の冷水出力に持ち替える。蓄熱容量判定部403bは、蓄熱槽13の蓄熱容量は2000kWhであるため、冷水出力合計値2130kWhは、熱容量を超過すると判定する。
【0128】
蓄熱容量判定部403bが、蓄熱槽13からの冷水出力合計値が蓄熱容量を超過したと判定した場合は(ステップS1103のYES)、熱持替部403aは、超過した冷水出力部分を熱源機器からの冷水出力に戻す(ステップS1104)。この場合、熱持替部403aは、最大電力需要がフラットになるように調整する。
【0129】
熱持替部403aが、蓄熱容量を超過した冷水出力部分を、熱源機器からの冷水出力に戻す処理の一例を、
図19に示す。
図19は、熱源機器の冷水出力を示している。熱持替部403aは、最大電力需要がフラットになるように、超過した130kWhの冷水を10時、11時、13時、16時の4時間の熱源機器の冷水出力に等配分する。
【0130】
この結果得られた電力需要の例を、
図20に示す。
図20では、14時を除き、電力ピークがフラットになっていることが分かる。なお、水冷冷凍機11は、運転している場合には、出力を零に落とすことはできず、必ず出力が存在する。
【0131】
図20の14時の値は、水冷冷凍機11を出力帯[1]で運転する必要があり、運転する場合に必ず出力される最小の出力と、電力需要との合計値となる。このため、14時の値は蓄熱槽13で持ち替えることはできず、他の時間帯より大きな値となっている。
【0132】
以上のように、蓄熱槽13を利用したピークカットを終了する。そして、蓄熱スケジュール作成部403の蓄熱運転決定部403cは、蓄熱運転時に作動させる熱源機器及びその出力について、蓄熱運転スケジュールを作成する(ステップ1105)。この蓄熱運転スケジュールの作成は、冷水増分単価表に従って、冷水増分単価の小さい順に、運転している熱源機器の出力を増加させることにより行う。
【0133】
そして、蓄熱容量判定部403bは、増加させた熱源機器の出力合計値が、蓄熱容量を超過したかどうかを判定する(ステップS1106)。超過していない場合には(ステップS1106のNO)、再びステップS1105に戻って、蓄熱運転決定部403cが、冷水増分単価の小さい順に、運転中の熱源機器の出力を増加させる。
【0134】
この際、熱源機器の出力帯を増加させていくことになるが、増加分は、先詰めや後詰めなどの方法で運転時間帯を決定する。先詰めとは、早い時間帯から先に割り当てることをいう。後詰めとは、遅い時間帯から先に割り当てることをいう。
【0135】
なお、蓄熱運転決定部403cは、運転中の熱源機器の出力増加だけでは、蓄熱槽13の蓄熱容量に満たない場合は、停止中の熱源機器を優先順位に従って起動し、冷水増分単価に従って運転スケジュールを決定する。この際、冷水増分単価が同じ時間帯に対しては、先詰めや後詰めなどの方法で運転時間帯を決定する。
【0136】
蓄熱運転スケジュールの作成処理の一例を、
図21及び
図22を参照して説明する。
図21は、水冷冷凍機11の出力帯[2]による蓄熱運転、
図22は、水冷冷凍機11の出力帯[2]及び[3]による蓄熱運転を示したものである。また、冷水増分単価表は、
図5で例示したものを用いる。
【0137】
運転中の熱源機器の中で、冷水増分単価が一番小さいのは、22時から7時までの水冷冷凍機11の出力帯[2]である。このため、蓄熱運転決定部403cは、この時間帯の水冷冷凍機11の出力帯[2]を最大出力まで増加させる。
【0138】
増加させた冷水出力の合計値は、
図21に示すように、1750kWhである。この値は、蓄熱容量を超過しない。このため、蓄熱運転決定部403cは、水冷冷凍機11の出力帯[3]の出力を後詰めで割り当てる。
【0139】
すなわち、蓄熱運転決定部403cは、水冷冷凍機11の出力帯[3]を、7時、6時、5時、と200kWずつ順に割り当てていき、4時を割り当てると、2550kWhとなって蓄熱容量÷効率0.8=2500kWhを超える。このため、蓄熱運転決定部403cは、4時の割り当てを150kWとして蓄熱運転スケジュール作成処理を終了する。
【0140】
(蓄電運転スケジュールの作成)
まず、ピークカット処理部402は、蓄熱槽13によるピークシフト処理を行った後の電力需要合計値に対して、最大電力需要時間帯のピークカット処理を実行する(ステップS1107)。このピークカット処理の手法は、蓄熱槽13によるピークシフトと同様に、最大電力需要時間帯の電力需要合計値を、他の時間帯の電力需要合計値の最大値と一致させるようにカットする。
【0141】
蓄電スケジュール作成部404の電力持替部404aは、カットした電力を、蓄電池14からの放電電力に持ち替える(ステップS1108)。蓄電容量判定部404bは、蓄電池14からの放電電力の合計値が蓄電池14の容量を超過したかどうかを判定する(ステップS1109)。
【0142】
蓄電池14からの放電電力の合計値が蓄電池14の容量を超過していなければ(ステップS1109のYES)、再び、ステップS1107へ戻って、ピークカット処理部402が、最大電力需要時間帯のピークカット処理を実行する。そして、電力持替部404aは、カットした電力を、蓄電池14からの放電電力に持ち替える(ステップS1108)。
【0143】
ピークカット電力の合計値が、蓄電池容量を超過した場合は(ステップS1109のNO)、電力持替部404aが、電力需要がフラットになるように、超過した電力分を電力需要に戻す(ステップS1110)。このように、蓄電池14を利用したピークカットを終了する。
【0144】
最後に、充電運転決定部404cは、蓄電池14への蓄電スケジュールを作成する。蓄電池14への蓄電スケジュールは、電力単価の小さい時間帯から優先して充電時間に割り当てる(ステップS1111)。
【0145】
そして、蓄電容量判定部404bは、割り当てた充電電力の合計値が、蓄電容量を超過したかどうかを判定する(ステップS1112)。超過していない場合には(ステップS1112のNO)、再びステップS1111に戻って、充電運転決定部404cが、電力単価の小さい時間帯に、充電電力を割り当てる。
【0146】
割り当てた充電電力の合計値が、蓄電池容量を超過した場合は(ステップS1112のYES)、電力持替部404aが、電力需要がフラットになるように、超過した電力分を電力需要に戻す(ステップS1113)。
【0147】
このような蓄電池14への充電運転スケジュールの作成処理の一例を、
図23及び
図24を参照して説明する。
図23の(1)(2)は、蓄熱槽13によるピークカット処理を行った後の電力需要及び熱源機器の動力に、蓄電池14によるピークカット処理を行う部分を示している。また、
図24は、蓄電池14の充放電を追加したものである。この例では、蓄電池容量は200kWhとする。
【0148】
まず、ピークカット処理部402は、
図23における(1)20kWhのピークカットを行う。蓄電容量判定部404bは、電力持替部404aにより持ち替える20kWhの電力は、蓄電池容量を超過しないと判定する。このため、ピークカット処理部402は、次の(2)180kWhのピークカットを行う。
【0149】
次に、充電運転決定部404cは、0時〜3時、22時、23時の6時間において、電力需要合計値190kWが、4時の212.5kWに一致するように22.5kW×6h=135kWhの充電を行う設定をする。
【0150】
135kWhは、蓄電池容量200kWh÷効率0.9=222.2kWhに満たない。このため、充電運転決定部404cは、0時〜4時、22時、23時の7時間における各時間帯の電力需要合計値212.5kWhを、5時の電力需要合計値220kWとする7.5kWh×7h=52.5kWhの充電を設定をする。
【0151】
充電量は、135kWh+52.5kWh=187.5kWhとなる。蓄電容量判定部404bは、まだ蓄電池14の容量に満たないと判定する。このため、充電運転決定部404cは、
図24に示すように、0時〜6時、22時〜0時の最小電力需要220kWが21時の230kWとなる10kWh×9h=90kWhの充電を設定する。
【0152】
これにより、187.5kWh+90kWh=277.5kWhとなる。この充電量の場合、蓄電容量判定部404bは、蓄電池容量を超えると判定する。従って、充電運転決定部404cは、超えた55.3kWhを9hに配分して充電電力より引き、蓄電池14の蓄電スケジュールを決定する。
【0153】
以上のような処理手順によって、スケジュール作成部40が、制御対象機器の運転停止スケジュール、蓄熱槽13の蓄熱スケジュール、蓄電池14の蓄電スケジュールを作成する。
【0154】
[1−4.制御設定値の作成]
制御設定値作成部41は、運転停止スケジュールに応じて、制御対象機器の制御設定値を作成する(ステップS703)。
【0155】
ここで、制御設定値の作成処理について、
図25、
図26を参照して説明する。
図25は、
図2に示した運転モードNo.1〜5と、冷水需要、水冷冷凍機11及び蓄熱槽13の運転状態との関係を示す表である。
図26は、スケジュール作成部40によって作成された運転スケジュールに対応する運転モードを示す表である。
【0156】
例えば、冷水需要がない時間帯に熱源機器が運転し、蓄熱槽13が蓄熱している場合、対応する運転モードは、No.2の蓄熱通常モードである。また、
図26は、熱源機器の運転スケジュールの一例と、対応するエネルギー供給プラント1の運転モードを示す図である。
【0157】
制御設定値作成部41は、
図25の表に従い、
図26の熱源機器の運転スケジュールに対して、エネルギー供給プラント1の運転モードを決定する。これにより、スケジュール作成部40の作成した熱源機器の運転スケジュールを、具体的なエネルギー供給プラント1の運転方法として実現可能となる。
【0158】
[1−5.制御設定値の記憶、出力]
演算結果記憶部37は、作成された制御設定値を記憶する(ステップS704)そして、制御設定値出力部45は、演算結果記憶部37の制御設定値を参照して、現在時刻に対応した指示を監視制御装置2に出力する。
【0159】
以上の処理により、監視制御装置2が、エネルギー供給プラント1に対して、ピーク電力が小さくなる運転を実現することができる。
【0160】
なお、制御設定値の出力タイミングは、種々のものが考えられる。例えば、出力タイミングを、運転スケジュールの実行日の前日とし、監視制御装置2が受信した制御設定値を保持しておく。そして、監視制御装置2が、実行日に制御情報に基づく制御を実行してもよい。
【0161】
[2.スケジュール修正処理]
以上のように、前日に作成された運転スケジュールに基づいて、実行日当日に、エネルギー供給プラント1の制御対象機器が実際の運転を開始する。
【0162】
ここで、制御対象機器が運転している当日に、運転スケジュールを変更する場合の運転制御装置3の動作を、
図27のフローチャートを参照して説明する。なお、スケジュール修正後の基本的な処理は、上記の運転スケジュールを作成する処理と同様であるため、説明は簡略化する。
【0163】
以下に説明する処理は、エネルギー供給プラント1の最大消費電力を計測する周期(例えば、30分)ごとに実行される定周期演算である。この処理は、過去に作成又は修正されたエネルギー供給プラント1の運転スケジュールを、最大消費電力が目標値より大きくならないように修正するものである。
【0164】
まず、消費電力短期予測部42は、最大消費電力を計測する周期内の電力量を予測する(ステップS2701)。この予測は、例えば、次の式7により行う。
【0166】
次に、スケジュール修正判定部43は、運転スケジュールの修正が必要かどうかを判定する(ステップS2702)。スケジュール修正要否の判定は、次回最大消費電力を計測する周期における消費電力予測値が、スケジュール作成部40で作成されたエネルギー供給プラント1の運転スケジュールの最大消費電力量を超えるか否かにより行う。
【0167】
図28に、最大消費電力を計測する周期内で、消費電力量実績値P(t)から予測される消費電力予測値P(チルダ)と、最大消費電力量P(バー)との関係を示す。
【0168】
スケジュール修正判定部43がスケジュールの修正が必要ないと判定した場合(ステップS2702のNO)、修正処理を終了する。スケジュール修正判定部43がスケジュールの修正が必要と判定した場合(ステップS2702のYES)、スケジュール修正部44が運転スケジュールを修正する(ステップ2703)。
【0169】
この修正は、消費電力予測値P(チルダ)が、最大消費電力量P(バー)を超えないように、蓄熱槽13の蓄熱スケジュール及び蓄電池14の蓄電スケジュールの一方若しくは双方を修正することにより行う。
【0170】
また、制御設定値作成部41は、上記の定時刻処理と同様の方法で、エネルギー供給プラント1の制御設定値を作成する(ステップS2704)。つまり、修正された運転スケジュールに基づいて、制御対象機器を運転させるパラメータを作成する。
【0171】
その後の制御設定値の記憶、出力処理は、上記と同様である。つまり、演算結果記憶部37は、新たに作成された制御設定値を記憶する。そして、制御設定値出力部45は、演算結果記憶部37に記憶された制御設定値を参照して、現在時刻に対応した指示を、監視制御装置2に出力する。
【0172】
以上の処理により、監視制御装置2が、エネルギー供給プラント1に対して、実際の運用状態に即して、ピーク電力が小さくなる運転を実現することができる。
【0173】
[C.効果]
以上のような本実施形態によれば、単に電力需要がピークとなる時間帯の消費電力を削減するのではなく、受電電力全体から見て、ピークが最小化するように、運転スケジュールを作成することができる。
【0174】
特に、蓄熱槽13、蓄電池14等のエネルギー蓄積機器の容量に相当するカット量に達するまで、需要が最大となるピーク時間帯から、他の時間帯の需要の最大値と一致するように削減していく。
【0175】
このため、需要の高い時間帯から順次削減されて平坦化されるので、削減する時間帯以外の時間帯において、他の時間帯と比べて高いピークが生じることが防止される。ピーク時間帯及びその周辺の時間帯における需要の集中を緩和することができる。
【0176】
また、一般に、エネルギー供給プラント1では、蓄熱槽13の容量の方が蓄電池の容量より大きい。このため、本実施形態では、まず蓄熱槽13の運転スケジュールを作成し、次に蓄電池14の運転スケジュールを作成している。これにより、主なピークシフト計算を蓄熱槽13で行い、微小な調整を蓄電池14で行うスケジュールを計算することができる。
【0177】
一方、蓄電池14は、出力の変更が容易なので、細かい調整に適している。しかも、蓄電池14は、蓄熱槽13に比べて高価ではあるが、後付が容易なため、既存の設備へ追加しやすい。
【0178】
また、運転させる水冷冷凍機11、空冷HP12等の熱源機器として、冷熱製造単価表に基づいて、熱の製造単価が安いものを優先させる運転スケジュールを作成する。このため、ピーク電力の最小化を図りつつ、運転コストの最小化も図ることができる。
【0179】
また、前日の予測値と当日の制御対象機器の運用状態にずれが生じた場合にも、運転スケジュールを修正することができ、より実体に即した最適な運用が可能となる。
【0180】
特に、運転スケジュールの最大消費電力量を、消費電力の予測値が超えないように修正するため、追加の受電電力等のエネルギー調達を抑えて、効率的な運用が可能となる。さらに、消費電力量の計測周期内という短周期で修正を行うため、予測値と運用状態とのずれを最小限に抑えることができる。
【0181】
なお、本実施形態では、空調機23や照明24等のエネルギー消費機器について消費電力を落とす等の制御は行わない。このため、需要家、利用者等に不便を強いることはなく、ピーク電力の最小化が実現できる。
【0182】
[D.他の実施形態]
本実施形態は、上記の態様に限定されるものではなく、以下に例示する態様も構成可能である。
【0183】
(1)例えば、エネルギー供給プラントにおいて使用される制御対象機器は、上記の実施形態で例示したものには限定されない。例えば、熱源機器としては、CGS(Co-Generation System)、吸収式冷温水器、太陽熱温水器等を利用することもできる。
【0184】
CGSは、内燃機関や外燃機関による発電とともに、その排熱を利用可能なシステムである。このCGSは、ガスをエネルギー源として発電するとともに、排熱を利用可能な熱電併給システムである。熱源として、燃料電池を用いてもよい。
【0185】
吸収式冷温水器は、冷媒の凝縮器と蒸発器との間に、水蒸気の吸収と熱源による再生のプロセスを介在させて、冷水若しくは温水を供給する機器である。熱源のエネルギーとしては、ガスや、CGS、太陽熱温水器等からの排熱を利用できる。
【0186】
太陽熱温水器は、太陽熱を利用して温水を供給する温水器である。上記の空冷HP、水冷冷凍機、蓄熱槽とともに、CGS、吸収式冷温水器、太陽熱温水器は、空調機のための温水、冷水を供給することができる。
【0187】
また、空調機は、CGS、空冷HP、吸収式冷温水器、太陽熱温水器のいずれかで発生する温水により、暖房を行うこともできる。
【0188】
さらに、エネルギー供給プラントへ給電を行う電源としては、CGS、燃料電池、太陽光発電装置、風力発電装置等の各種発電装置を用いることもできる。これにより、受電電力を大幅に低減することができる。
【0189】
(2)本実施形態は、ビル等の所定の建物内に設置された制御対象機器を管理するシステムであるBEMS(Building Energy Management System)に適している。ただし、制御対象機器の設置位置は、単一の建物か複数の建物かには限定されず、屋外を含んでいてもよい。つまり、所定の領域に設置された制御対象機器を制御するEMS(Energy Management System)として、広く適用可能である。
【0190】
(3)運転制御装置、監視制御装置等は、CPU等を含むコンピュータを所定のプログラムで制御することによって実現できる。この場合のプログラムは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで、上記のような各部の処理を実現するものである。
【0191】
上記の各部の処理を実行する方法、プログラム及びプログラムを記録した記録媒体も、実施形態の一態様である。また、ハードウェアで処理する範囲、プログラムを含むソフトウェアで処理する範囲をどのように設定するかは、特定の態様には限定されない。たとえば、上記の各部のいずれかを、それぞれの処理を実現する回路として構成することも可能である。
【0192】
(4)上記の各処理部、記憶部等は、共通のコンピュータにおいて実現してもよいし、ネットワークで接続された複数のコンピュータによって実現してもよい。たとえば、プロセスデータ記憶部、モデルデータ記憶部を、最適化処理部とネットワークで接続されたサーバに構成してもよい。
【0193】
さらに、
図29に示すように、制御対象機器を設置した建物などに設けられた情報通信装置6に、遠隔に設置された運転制御装置3を、ネットワークN2を介して接続した構成とすることも可能である。情報通信装置6は、パーソナルコンピュータ、制御パネル等により構成することができる。
【0194】
情報通信装置6は、たとえば、送受信部61、制御情報出力部62、表示部63、入力部64を有する。送受信部61は、運転制御装置3との情報の送受信を行う処理部である。たとえば、送受信部61は、運転制御装置3からの制御情報を含む運転スケジュールを受信し、運転制御装置3へ、優先順位や運転スケジュールの選択指示を送信することができる。
【0195】
制御情報出力部62は、ネットワークN1で接続された監視制御装置2に制御設定値等の制御情報を出力する処理部である。表示部63は、制御設定値を含む受信した運転スケジュール等を表示する処理部である。入力部64は、優先順位や運転スケジュールの選択指示等を入力する処理部である。表示部63及び入力部64は、上記の出力部、プロセスデータ取得部、モデルデータ入力部としての機能を有する。
【0196】
さらに、需要家側には、運転制御装置3から出力された制御情報を受信する受信部のみが存在して、受信部が受信した制御情報に基づいて、監視制御装置2が制御される構成とすることも可能である。
【0197】
このように、たとえば、クラウドコンピューティングのように、ネットワークN2を介して、制御対象機器から遠隔の地に構成された単一若しくは複数のサーバにより、運転制御装置3を実現する態様も、本実施形態の一態様である。これにより、需要家側の設備を簡略化して、導入コストを節約することができ、普及の促進に繋がる。
【0198】
(5)プロセスデータ記憶部、モデルデータ記憶部、設定記憶部に記憶される各データの記憶領域は、それぞれが各データの記憶部として構成できる。これらの記憶部は、典型的には、内蔵された又は外部接続された各種メモリ、ハードディスク等により構成できる。
【0199】
ただし、記憶部としては、現在又は将来において利用可能なあらゆる記憶媒体を利用可能である。演算に用いるレジスタ等も、記憶部として捉えることができる。記憶の態様も、長時間記憶が保持される態様のみならず、処理のために一時的に記憶され、短時間で消去又は更新される態様も含まれる。
【0200】
(6)実施形態に用いられる情報の具体的な内容、値は自由であり、特定の内容、数値には限定されない。実施形態において、しきい値に対する大小判断、一致不一致の判断等において、以上、以下、として値を含めるように判断するか、より大きい、より小さい、超える、超えない、上回る、下回る、未満として値を含めないように判断するかも自由である。
【0201】
したがって、たとえば、値の設定によっては、「以上」を「より大きい」、「超える」、「上回る」に、「以下」を「より小さい」、「超えない」、「下回る」、「未満」に読み替えても、実質的には同じである。
【0202】
(7)本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。