(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子キーに設けられた動作検出部の検出信号を基に、車載機器の遠隔操作を目的とした動きが当該電子キーにおいて発生したか否かを判定し、その判定結果を基に前記車載機器を遠隔操作する遠隔操作システムにおいて、
車両から、前記電子キーに応答を返信させるための車両電波を間欠送信させる車両電波送信実行部と、前記車両電波を前記電子キーが受信したとき、又は当該車両電波に応答して前記電子キーが返すキー電波を前記車両が受信したとき、受信電波の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部と、前記遠隔操作の開始と終了との間の受信信号強度の変化量が閾値以内か否かを前記車両において判定する受信信号強度変化量判定部と、前記受信信号強度変化量判定部の判定結果を基に、前記遠隔操作の可否を設定する操作可否設定部とを備え、
前記電子キーは、前記遠隔操作の開始を通知する操作開始通知と、当該遠隔操作の終了を通知する操作終了通知とを、前記車両に送信する操作通知部を備え、
前記受信信号強度変化量判定部は、前記操作開始通知から決定した操作前受信信号強度と、前記操作終了通知を受信した後に前記電子キーから取得する操作後受信信号強度とを基に、前記受信信号強度の変化量を算出する
ことを特徴とする遠隔操作システム。
前記電子キーにおいて前記車両電波を受信した際の応答として前記キー電波を前記車両に送信するとき、当該電子キーで測定した受信信号強度を前記キー電波に含めて前記車両に送信することにより、当該受信信号強度を前記車両に通知する受信信号強度通知部を備え、
前記受信信号強度変化量判定部は、前記電子キーで計測された受信信号強度を基に、当該受信信号強度の変化量の正当性を確認する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の遠隔操作システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の応用例として、例えば、ユーザが身体を使って行う特定の動作を電子キーの加速度センサで検出し、その動作が正当であれば、車両の遠隔操作が許可又は実行される遠隔操作システムが検討されている。この遠隔操作システムにおいては、電子キーに発生する動きが正当であるか否かの判定を、車両側において精度よく行いたいニーズがあった。
【0005】
本発明の目的は、車載機器の遠隔操作時に電子キーに発生する動きを、車両側で精度よく判定することができる遠隔操作システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決する遠隔操作システムは、電子キーに設けられた動作検出部の検出信号を基に、車載機器の遠隔操作を目的とした動きが当該電子キーにおいて発生したか否かを判定し、その判定結果を基に前記車載機器を遠隔操作する構成において、車両から、前記電子キーに応答を返信させるための車両電波を間欠送信させる車両電波送信実行部と、前記車両電波を前記電子キーが受信したとき、又は当該車両電波に応答して前記電子キーが返すキー電波を前記車両が受信したとき、受信電波の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部と、前記遠隔操作の開始と終了との間の受信信号強度の変化量が閾値以内か否かを前記車両において判定する受信信号強度変化量判定部と、前記受信信号強度変化量判定部の判定結果を基に、前記遠隔操作の可否を設定する操作可否設定部とを備え、前記電子キーは、前記遠隔操作の開始を通知する操作開始通知と、当該遠隔操作の終了を通知する操作終了通知とを、前記車両に送信する操作通知部を備え、前記受信信号強度変化量判定部は、前記操作開始通知から決定した操作前受信信号強度と、前記操作終了通知を受信した後に前記電子キーから取得する操作後受信信号強度とを基に、前記受信信号強度の変化量を算出する。
【0007】
本構成によれば、車両から車両電波が間欠送信され、電子キーにおいて車両電波が受信されると、電子キーからキー電波が車両に返信される。車両と電子キーとの通信が確立していれば、この通信が繰り返される。また、この通信において、車両電波→キー電波のやり取りが行われる度、受信電波の受信信号強度が測定される。電子キーは、遠隔操作の開始を検出すると、操作開始通知を車両に送信する。車両は、操作開始通知を受信すると、いま遠隔操作が開始されたことを把握し、判定に使用すべき操作前受信信号強度を決定する。電子キーは、遠隔操作の終了を検出すると、操作終了通知を車両に送信する。車両は、操作終了通知を受信すると、いま遠隔操作が終了したことを把握し、以降の通信において操作後受信信号強度を取得する。
【0008】
ユーザ動作を電子キーの動作検出部で監視することにより車載機器を遠隔操作するにあたり、ユーザ動作が規定の動作をとるか否かを判定するとともに、遠隔操作の開始と終了との間の受信信号強度の変化量が閾値以内となるか否かを判定する。そして、ユーザ動作が遠隔操作の規定の動きをとりつつ、この変化量が閾値以内に収まるときのみ、遠隔操作が許可される。このため、遠隔操作がその場で立ち止まって行われるときのみ、車載機器の遠隔操作が許可されるので、例えば車両に単に近づいたり車両から離れたりするとき、仮にユーザ動作が遠隔操作の規定の動きとなってしまっても、車載機器が作動することはない。
【0009】
また、遠隔操作の開始と終了とを電子キーから車両に通知するので、車両において遠隔操作の開始と終了とを把握することが可能となる。よって、ユーザが身体を使い規定の動作を行った際に電子キーに発生する動きを、車両側において精度よく判定することが可能である。
【0010】
前記遠隔操作システムにおいて、前記車両電波送信実行部は、前記電子キーから前記操作終了通知を受信すると、前記車両電波を直ちに前記電子キーに送信することが好ましい。この構成によれば、遠隔操作の終了後、車両電波を直ぐに電子キーが受信できることになる。よって、受信信号強度の変化量の判定を、早期の段階で完了することが可能となる。
【0011】
前記遠隔操作システムにおいて、前記電子キーにおいて前記車両電波を受信した際の応答として前記キー電波を前記車両に送信するとき、当該電子キーで測定した受信信号強度を前記キー電波に含めて前記車両に送信することにより、当該受信信号強度を前記車両に通知する受信信号強度通知部を備え、前記受信信号強度変化量判定部は、前記電子キーで計測された受信信号強度を基に、当該受信信号強度の変化量の正当性を確認することが好ましい。この構成によれば、車両電波の受信信号強度により、受信信号強度変化の判定を行うので、例えばLF帯の電波など、周波数の低い電波で受信信号強度変化を判定することが可能となる。よって、判定精度の確保に有利となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載機器の遠隔操作時に電子キーに発生する動きを、車両側で精度よく判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、遠隔操作システムの一実施形態を
図1〜
図4に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、電子キー2と無線によりID照合を実行する電子キーシステム3を備える。電子キーシステム3は、車両1からの通信を契機に狭域無線(通信距離:数m)によりID照合を実行するキー操作フリーシステムである。以降、キー操作フリーシステムにおけるID照合の通信を例として「スマート通信」と記し、ID照合を例として「スマート照合」と記す。
【0015】
車両1は、電子キー2との間で各種照合を実行する照合ECU(Electric control unit)4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5と、エンジン7の動作を制御するエンジンECU6とを備える。これらECUは、車内の通信線8を通じて電気接続される。照合ECU4のメモリ9には、車両1に登録された電子キー2の電子キーIDが書き込み保存されている。車両1は、車外の電子キー2に電波を送信する車外送信機10と、車内の電子キー2に電波を送信する車内送信機11と、電子キー2から送信される電波を受信する車両受信機12とを備える。これら無線機は、照合ECU4に接続される。車外送信機10及び車内送信機11が送信する電波は、LF(Low Frequency)帯の電波が好ましい。車両受信機12が受信する電波は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波が好ましい。ボディECU5は、車両ドアを施解錠するドアロック機構13の動作を制御する。照合ECU4には、車両1の電源状態(IGオフ、ACCオン、IGオン、エンジンスタート)を切り替える際に操作するエンジンスイッチ14が接続されている。エンジンスイッチ14は、運転席に配設された例えばプッシュモーメンタリ式スイッチからなる。
【0016】
電子キー2は、電子キー2の動作を制御するキー制御部15と、車両1から送信された電波を受信可能な受信部16と、車両1に電波を送信可能な送信部17とを備える。受信部16及び送信部17は、キー制御部15に接続される。キー制御部15のメモリ18には、キー固有のIDである電子キーIDが書き込み保存されている。
【0017】
車外送信機10がリクエスト信号SrqをLF送信して車両周囲に車外通信エリアを形成するとき、電子キー2が車外通信エリアに進入してリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2は車外におけるスマート通信(車外スマート通信)を開始して、ID信号Sidを車両1にUHF送信する。具体的には、車外送信機10から送信されたウェイク信号を電子キー2が受信すると、電子キー2が起動してアックを返信し、続く通信課程において、車両コード照合、チャレンジレスポンス認証、電子キーID照合等の各種照合を実行する。車両コード照合は、車両1の固有IDである車両コードを電子キー2に送信し、電子キー2に車両コードを認証させる照合である。チャレンジレスポンス認証は、送信の度にコードが毎回変わるチャレンジコードを車両1から電子キー2に送信し、電子キー2においてチャレンジコードを電子キー2の暗号鍵に通してレスポンスコードを演算させて、これを車両1に返信させ、車両1において同様に演算したレスポンスコードにより、電子キー2のレスポンスコードの正当性を確認する照合である。電子キーID照合は、電子キー2に登録された電子キーIDの正当性を確認する照合である。照合ECU4は、これら照合が成立することを確認すると、車外のスマート照合(車外スマート照合)が成立したと判断し、ボディECU5による車両ドアの施解錠を許可/実行する。
【0018】
電子キー2が車内に進入すると、車外送信機10に代えて、今度は車内送信機11がリクエスト信号Srqを送信する。照合ECU4は、車内通信エリアに進入した電子キー2との間で、車外と同様のスマート照合(車内スマート照合)を行い、この照合が成立すれば、運転席に配設されたエンジンスイッチ14による電源遷移操作(エンジン始動操作)を許可する。
【0019】
電子キーシステム3は、電子キー2を携帯したユーザが実行する特定の動き(身体を使った特徴的な動きを伴う操作行為)を、電子キー2に内蔵した動作検出部19で読み取ることにより、車載機器を操作可能とする遠隔操作機能(遠隔操作システム20)を備える。遠隔操作システム20は、車両1(車外送信機10)から送信された車両電波Sviを電子キー2で受信した際の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定し、ユーザの動きを伴う遠隔操作が規定の動作をとりつつ、ユーザ操作の開始と終わりとで車両電波Sviの受信信号強度の変化量Kxが閾値Kr以下であれば、遠隔操作がその場で行われたとして、車載機器の操作を許可する。また、本例の遠隔操作システム20は、受信信号強度の変化量Kxと閾値Krとを比較する受信信号強度判定を車両1側で行うものでもある。
【0020】
ユーザによる特徴的な動きを伴う操作行為は、車両1の近傍において、例えばかかとを上げて地面に落とす行為を、所定時間内に複数(例えば3回)繰り返す操作がある。このときにユーザが行う動きが動作検出部19で監視される。また、遠隔操作の操作対象は、例えば車両1のスライドドア等がある。これは、例えば両手が荷物で塞がっているときには、手でスライドドアを開操作することができないので、手が使えなくてもスライドドアを開操作したいニーズに対応するためである。
【0021】
動作検出部19は、例えば加速度センサ(Gセンサ)であることが好ましい。動作検出部19は、電子キー2に発生する動き(加速度)を常時監視し、検出信号をキー制御部15に出力する。なお、動作検出部19は、例えば通常、スリープしており、加速度の変化量が所定値以上となった際に起動するものでもよい。
【0022】
照合ECU4は、電子キー2の位置を監視するために、車両1(車外送信機10)から車両電波Sviを電子キー2に間欠送信させる車両電波送信実行部21を備える。車両電波Sviは、(a)ウェイク信号のみから構築される信号、(b)ウェイク信号及び車両コードから構築される信号、(c)ウェイク信号、車両コード及びチャレンジコードから構築される信号など、種々の信号が適用可能である。車両電波送信実行部21は、スマート照合が成立していても、車両電波Sviを例えば定期的に継続送信させる。車両電波Sviの送信周期は、ウェイク信号の送信周期と同一でもよいし、又は周期が異なる値(例えば早い周期)をとってもよい。
【0023】
キー制御部15は、動作検出部19からの検出信号を基に、電子キー2を携帯したユーザの動きの正当性を判定するキー動作判定部22と、電子キー2を所持したユーザの遠隔操作が開始されたとき、その旨を通知する操作開始通知Sstを電子キー2から車両1に送信する操作開始通知部23と、電子キー2を所持したユーザの遠隔操作が終了したとき、その旨を通知する操作終了通知Senを電子キー2から車両1に送信する操作終了通知部24とを備える。なお、操作開始通知部23及び操作終了通知部24が操作通知部の一例である。
【0024】
キー制御部15は、受信部16で受信した車両電波Sviの受信信号強度を測定する受信信号強度測定部25と、受信信号強度測定部25が計測した車両電波Sviの受信信号強度(受信信号強度データDrssi)を車両1に通知する受信信号強度通知部26とを備える。受信信号強度測定部25は、車両電波Sviを受信する度、その受信信号強度を測定する。受信信号強度通知部26は、電子キー2が車両電波Sviの受信に対する応答として送信部17からキー電波Skeyを送信するとき、キー電波Skeyに受信信号強度データDrssiを含ませて送信することにより、受信信号強度を車両1に通知する。キー電波Skeyは、例えばUHF電波であり、例としてアック信号、レスポンスコード、電子キーID等の1つ又は複数から構築される信号である。操作開始通知Sst及び操作終了通知Senは、例えばUHF電波で送信される。
【0025】
照合ECU4は、ユーザ操作の開始と終了とにおける車両電波Sviの受信信号強度の変化量Kxを算出し、この変化量Kxの正当性を判定する受信信号強度変化量判定部27と、キー動作判定部22及び受信信号強度変化量判定部27の各判定結果を基に、ユーザの特徴的な動きを伴う操作行為による車載機器の操作可否を設定する操作可否設定部28とを備える。
【0026】
受信信号強度変化量判定部27は、電子キー2から操作開始通知Sstを受信したとき、操作開始通知Sstを受信する直前に電子キー2から得た受信信号強度を、操作開始時受信信号強度として取得する。受信信号強度変化量判定部27は、操作終了通知Senをトリガに車両1から送信された車両電波Sviを電子キー2が受信したときの受信信号強度を、操作終了後受信信号強度として取得する。受信信号強度変化量判定部27は、このようにして取得した受信信号強度に基づき、車両1において遠隔操作の開始と終了との間の受信信号強度の変化量Kxを算出し、変化量Kxの正当性を判定する。
【0027】
次に、
図2〜
図4を用いて、遠隔操作システム20の動作を説明する。
図2に示すように、例えば車両駐車時(車両ドア施錠及びエンジン停止)、車外送信機10が形成する車外通信エリアに電子キー2が進入すると、電子キー2及び照合ECU4の間で車外スマート照合が実行される。電子キー2が正規キーであれば、車外スマート照合が成立する。車両電波送信実行部21は、車外スマート照合成立後も、車両電波Sviの定期送信を継続して実行する。
【0028】
電子キー2は、車外送信機10から送信された車両電波Sviを受信部16で受信したとき、受信電波の受信信号強度を受信信号強度測定部25で測定する。また、電子キー2は、車両電波Sviを受信したとき、その応答としてキー電波Skeyを返信する。このとき、受信信号強度通知部26は、測定された受信信号強度データDrssiをキー電波Skeyに含ませて送信することにより、受信信号強度を車両1に通知する。電子キー2は、車両電波Sviを受信する度、この動作を繰り返す。
【0029】
受信信号強度変化量判定部27は、キー電波Skeyの受信により電子キー2から受信信号強度データDrssiを取得すると、これをメモリ9に記憶する。受信信号強度変化量判定部27は、新たな受信信号強度データDrssiを受信する度、記憶しているデータを新しいものに書き替えて、メモリ9の保持される受信信号強度データDrssiを逐次更新する。
【0030】
図3に示すように、ユーザがその場での身体の動きによってスライドドアを開操作するには、例えばかかとを上げて地面に落とす動作を、規定時間Tr内に複数(例えば3回)繰り返す。足を上げてかかとを地面に落とすと、電子キー2が大きく揺れ、動作検出部19は高い加速度データを検出する。キー動作判定部22は、規定時間Tr内に、動作検出部19のセンサ値が閾値Gk以上となる状態が複数回発生すれば、ユーザの動きがスライドドアを開操作するための規定動作であると判定する。
【0031】
図2に示すように、キー動作判定部22は、動作検出部19のセンサ値が閾値Gk以上に切り替わる1回目の検出時、電子キー2において遠隔操作が開始されたと認識する。操作開始通知部23は、ユーザの動きを伴う遠隔操作が開始されたことを確認すると、操作開始通知Sstを車両1にUHF送信する。受信信号強度変化量判定部27は、操作開始通知Sstを受信すると、メモリ9に保持しておいた受信信号強度データDrssi、つまり遠隔操作が開始される直前に受信した車両電波Svi−aの受信信号強度を、操作開始前の受信信号強度として取得する。
【0032】
操作終了通知部24は、ユーザの動きを伴う遠隔操作が正当に終了したことを確認すると、操作終了通知Senを車両1にUHF送信する。車両電波送信実行部21は、操作終了通知Senを受信すると、直ちに車両電波Svi−bを電子キー2に送信する。電子キー2は、この車両電波Svi−bを受信すると、受信電波の受信信号強度を測定し、この受信信号強度データDrssiを、車両電波Sviの受信に対する応答のキー電波Skeyに付加して、車両1に送信する。受信信号強度変化量判定部27は、操作終了通知Senを受信してから最初に受信する受信信号強度データDrssiを、操作終了後の受信信号強度として取得する。
【0033】
図4(a)に示すように、車両近傍でユーザが立ち止まって車両1を遠隔操作するのであれば、遠隔操作の開始と終了とでは、受信信号強度の変化量Kxが閾値Kr以内に収まるはずである。一方、
図4(b),(c)に示すように、ユーザが単に車両1に近づいたり、車両1から離れたりするのであれば、仮にユーザ動作が正当と判定されたとしても、遠隔操作の開始と終了とでは、受信信号強度の変化量Kxが閾値Krを超える可能性が高い。よって、受信信号強度変化量判定部27は、遠隔操作の開始と終了との間の受信信号強度の変化量Kxが閾値Kr以内となるときのみ、ユーザ動作がその場で実行された操作であると判定する。
【0034】
操作可否設定部28は、ユーザ動作が正当であり、かつ遠隔操作の開始と終了とで受信信号強度の変化量Kxが閾値Kr以内に収まるのであれば、ユーザの遠隔操作を許可する。照合ECU4は、スマート照合が成立することを前提に、操作可否設定部28によりユーザ動作に基づく遠隔操作が許可されれば、例えばボディECU5にスライドドアを開操作させる。よって、ユーザの両手が仮に荷物で塞がっていても、車両1に近づき、その場でかかとを地面に複数回叩きつければ、スライドドアを開作動させることが可能となる。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車載機器を遠隔操作するにあたり、ユーザが身体を使った規定動作を行った際、その動きを電子キー2に内蔵した動作検出部19で検出し、ユーザ動作の正当性を判定する。電子キー2は、車両電波Sviを受信する度、車両電波Sviを受信したときの受信信号強度を測定し、車両電波Sviの応答であるキー電波Skeyを車両1に返信するとき、キー電波Skeyに受信信号強度データDrssiを付加することにより、受信信号強度を車両1に通知する。電子キー2は、遠隔操作開始時に操作開始通知Sstを、遠隔操作終了時に操作終了通知Senを、車両1に各々送信する。車両1は、電子キー2から受信した受信信号強度データDrssiのうち、操作開始通知Sstの受信直前に得た受信信号強度を、操作前受信信号強度として取得する。車両1は、電子キー2から操作終了通知Senを受信すると、車両電波Svi及びキー電波Skeyのやり取りを行い、その際に電子キー2から得た受信信号強度を、操作後受信信号強度として取得する。そして、遠隔操作開始時に車両電波Sviを電子キー2が受信した際の受信信号強度と、遠隔操作終了時に車両電波Sviを電子キー2が受信した際の受信信号強度との変化量Kxを算出し、変化量Kxが閾値Kr以下であれば、遠隔操作を許可する。
【0036】
本例のように、電子キー2の実際の動きと車両電波Sviの受信信号強度とを組み合わせてユーザ動作の判定を行うようにすれば、遠隔操作がその場で立ち止まって行われるときのみ、車載機器の遠隔操作が許可される。このため、例えば車両1に単に近づいたり車両1から離れたりするとき、仮にユーザ動作が規定の遠隔操作の動きをとってしまっても、誤って車載機器が作動することはない。よって、ユーザ動作を電子キー2の動作検出部19で監視して車載機器を遠隔操作するにあたり、車載機器の誤操作を生じ難くすることができる。
【0037】
また、遠隔操作の開始と終了とを電子キー2から車両1に通知するので、車両1において遠隔操作の開始と終了とを把握することができる。よって、ユーザが身体を使い規定操作を行った際に電子キー2に生じる動きを、車両1側において精度よく判定することができる。
【0038】
(2)車両1は、電子キー2から操作終了通知Senを受信すると、操作終了後の受信信号強度を測定するために、直ぐに車両電波Sviを電子キー2に送信する。よって、遠隔操作の終了後、車両電波Sviを直ぐに電子キー2が受信できる。よって、受信信号強度変化の正当性判定を、早期の段階で完了することができる。
【0039】
(3)車両電波Sviで受信信号強度を測定するので、例えばLF等の周波数の低い電波によって、受信信号強度を安定して測定することができる。よって、判定精度の確保に有利となる。
【0040】
(4)照合ECU4においてスマート照合が成立と判定されても、車両電波Sviの定期送信が継続して実行される。よって、受信信号強度変化の正当性の判定に必要な電波を、車両1から継続して出し続けることができる。
【0041】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・車両1は、電子キー2から操作終了通知Senを受信したとき、直ぐに車両電波Sviを電子キー2に送信することに限定されない。例えば、ポーリング周期から決まる定期送信のタイミングで送信されてもよい。
【0042】
・遠隔操作時にユーザに課す規定動作は、足を上げて地面を所定回数叩く操作に限定されない。例えば、身体を左右に所定回数振る、足を上下に所定回数振るなど、他の操作に変更可能である。
【0043】
・遠隔操作の正当性判定は、車外スマート照合時に実行されることに限らず、例えば車内スマート照合時に実行されてもよい。
・車両ドアが開状態のときにユーザの遠隔操作が行われると、車両ドアが閉作動してもよい。
【0044】
・車両ドアが開動作している最中に遠隔操作が実行されたとき、車両ドアが閉作動を反転開始してもよい。また、これとは逆に、車両ドアが閉動作している最中に遠隔操作が実行されたとき、車両ドアが開作動を反転開始してもよい。
【0045】
・スマート通信が確立する前の車両電波Sviのポーリング周期(遅い周期)と、スマート通信確立後の車両電波Sviのポーリング周期(早い周期)とを、各々別の値に切り替えてもよい。
【0046】
・受信信号強度データDrssiは、車両1と電子キー2との間の通信時、常に電子キー2から車両1に送信されることに限定されない。例えば、スマート照合が成立した後の通信のときのみ、受信信号強度データDrssiを車両1に送信してもよい。
【0047】
・車載機器の遠隔操作は、例えば車両ドアの施解錠、ドアミラーの格納など、他に変更可能である。
・車両電波Svi、キー電波Skey、操作開始通知Sst及び操作終了通知Senの周波数は、他の周波数に変更可能である。車両電波Svi及びキー電波Skeyは、同じ周波数の電波でもよい。
【0048】
・受信信号強度の測定は、キー電波Skeyを車両1が受信したときの受信電波によって行ってもよい。
・動作検出部19の検出信号(検出データ)を無線によって車両1に送信し、ユーザ動作の正当性の判定を車両1側で実行してもよい。
【0049】
・操作前受信信号強度は、遠隔操作が開始されたときに受信中の電波の受信信号強度でもよい。また、操作後受信信号強度は、遠隔操作が終了したときに受信中の電波の受信信号強度でもよい。
【0050】
・受信信号強度は、電子キー2から送信されるキー電波Skeyを車両受信機12で受信するときに測定される値でもよい。この例においては、電子キー2がキー動作判定部22、操作開始通知部23及び操作終了通知部24を備え、照合ECU4が車両電波送信実行部21、受信信号強度測定部25、受信信号強度変化量判定部27及び操作可否設定部28を備える。この場合、電子キー2において測定した受信信号強度データDrssiを無線で車両1に通知する必要がないので、電子キー2の処理負荷を軽減することができる。
【0051】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)前記遠隔操作システムにおいて、前記車両電波送信実行部は、前記電子キーとの間でID照合が成立すると判断されても、前記車両電波を定期又は不定期で継続的に送信する。この構成によれば、受信信号強度の変化量の判定に必要な電波を、車両から継続して出し続けることが可能となる。
【0052】
(ロ)前記遠隔操作システムにおいて、前記車両電波は、LF帯の電波である。この構成によれば、受信電波の受信信号強度を安定して測定することが可能となるので、受信信号強度変化量の正当性の判定を精度よく行うのに有利となる。