特許第6034265号(P6034265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ DOWAホールディングス株式会社の特許一覧

特許6034265活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法
<>
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000005
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000006
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000007
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000008
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000009
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000010
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000011
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000012
  • 特許6034265-活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034265
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】活物質複合粉体及びリチウム電池並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20161121BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01M4/36 C
   H01M10/052
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-189489(P2013-189489)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-56307(P2015-56307A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2014年9月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】内山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】三木 成章
(72)【発明者】
【氏名】相木 良明
(72)【発明者】
【氏名】田上 幸治
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−074240(JP,A)
【文献】 特開2009−076402(JP,A)
【文献】 特開2011−065887(JP,A)
【文献】 特開2014−093156(JP,A)
【文献】 特開2009−140787(JP,A)
【文献】 特開2009−193940(JP,A)
【文献】 特開2012−243644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 − 10/0587
H01M 10/36 − 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用の活物質へ、過酸化水素、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する溶液を噴霧し、且つ、これと並行して前記溶液を乾燥する、噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程の後に熱処理する、熱処理工程と、を有し、
前記熱処理の温度が、123℃よりも高く、且つ、350℃未満である、活物質複合粉体の製造方法。
【請求項2】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極に接触する電解質と、を備えるリチウム電池を製造する方法であって、
リチウムイオン二次電池用の活物質へ、過酸化水素、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する溶液を噴霧し、且つ、これと並行して前記溶液を乾燥する、噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程後に123℃よりも高く、且つ、350℃未満で熱処理することにより、活物質複合粉体を作製する、熱処理工程と、
作製された前記活物質複合粉体を含む前記正極又は前記負極を作製する、電極作製工程と、を有する、リチウム電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質とその表面の少なくとも一部に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体、及び、これを用いたリチウム電池、並びに、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性の固体電解質を用いた固体電解質層を有する金属イオン二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等。以下において「全固体電池」ということがある。)は、安全性を確保するためのシステムを簡素化しやすい等の長所を有している。
【0003】
このような全固体電池に関する技術として、例えば特許文献1には、リチウム及びニオブを含有するアルコキシド溶液をLiCoO粉末粒子表面で加水分解する過程を経て、LiCoO粉末の表面にLiNbO被覆層を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ニオブ酸リチウムを含有する被覆層によって表面の一部又は全部が被覆されたリチウム−遷移金属酸化物粒子からなる、炭素含有量が0.03質量%以下であるリチウム−遷移金属酸化物粉体が開示されている。また、非特許文献1には、ニオブ酸リチウムのペルオキソルートによる低温合成に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/004590号
【特許文献2】特開2012−74240号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the Ceramic Society of Japan、Vol.112、No.1307、p.368−372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術では、正極活物質の表面にLiNbO被覆層を形成している。そのため、硫化物系固体電解質と正極活物質との界面にリチウムイオン伝導性酸化物層を介在させることが可能になり、その結果、全固体電池の出力特性を向上させることが期待される。しかしながら、アルコキシド溶液を用いて作製したLiNbO層には、多くの空隙が存在し、この空隙がリチウムイオンの移動を阻害する。すなわち、特許文献1に開示されている技術では、LiNbO被覆層のリチウムイオン伝導度が小さいため、全固体電池の抵抗が増大しやすく、その結果、全固体電池の出力特性を向上させ難かった。この問題は、特許文献1に開示されている技術と、特許文献2や非特許文献1に開示されている技術とを単に組み合わせても、解決することは困難であった。
【0007】
そこで本発明は、電池の反応抵抗を低減することが可能な活物質複合粉体及びこれを用いたリチウム電池、並びに、活物質複合粉体の製造方法及びリチウム電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、BET比表面積が所定の範囲内である、活物質と該活物質の表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体を用いることにより、リチウム電池の反応抵抗を低減することが可能になることを知見した。また、本発明者らは、鋭意検討の結果、ニオブのペルオキソ錯体とリチウムとを含有する溶液を、活物質の表面へ噴霧し、これと並行して乾燥する過程を経て、活物質複合粉体を作製することにより、リチウム電池の反応抵抗を低減し得る活物質複合粉体を得ることが可能になることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、活物質と、該活物質の表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有し、且つ、BET比表面積S[m/g]が、0.93より大きく、且つ、1.44未満である、活物質複合粉体である。
【0010】
活物質複合粉体のBET比表面積を、0.93m/gより大きく、且つ、1.44m/g未満にすることにより、活物質複合粉体を用いたリチウム電池の反応抵抗を低減することが可能になる。なお、特に断らない限り、本発明におけるBET比表面積の値は、小数第3位の値を四捨五入することによって得られる値である。
【0011】
また、上記本発明の第1の態様において、BET比表面積Sが、0.97[m/g]以上であることが好ましい。このような形態にすることにより、活物質複合粉体を用いたリチウム電池の反応抵抗を低減しやすくなる。
【0012】
また、上記本発明の第1の態様において、BET比表面積Sが、1.34[m/g]以下であることが好ましい。このような形態にすることにより、活物質複合粉体を用いたリチウム電池の反応抵抗を低減しやすくなる。
【0013】
また、上記本発明の第1の態様において、大気雰囲気中且つ350℃で、10分間に亘って保持する熱処理を行った後の質量をM1、該熱処理を行う前の質量をM0とするとき、質量比M1/M0が、99.60<100×M1/M0であることが好ましい。このような形態であることにより、リチウムイオンの伝導を阻害する水和水等の不純物の残存量を低減することが可能になるので、活物質複合粉体を用いたリチウム電池の反応抵抗を低減しやすくなる。なお、特に断らない限り、本発明における質量比100×M1/M0の値は、小数第3位の値を四捨五入することによって得られる値である。
【0014】
本発明の第2の態様は、正極と、負極と、正極及び負極に接触する電解質と、を備え、正極及び負極の少なくとも一方に上記本発明の第1の態様にかかる活物質複合粉体が含まれる、リチウム電池である。
【0015】
本発明の第1の態様にかかる活物質複合粉体は、リチウム電池の反応抵抗を低減することが可能である。それゆえ、この活物質複合粉体を、リチウム電池の正極若しくは負極、又は、リチウム電池の正極及び負極に含ませることにより、反応抵抗を低減したリチウム電池を得ることが可能になる。
【0016】
本発明の第3の態様は、活物質へ、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する溶液を噴霧し、且つ、これと並行して前記溶液を乾燥する噴霧乾燥工程と、該噴霧乾燥工程の後に熱処理する熱処理工程と、を有し、熱処理の温度が、123℃よりも高く、且つ、350℃未満である、活物質複合粉体の製造方法である。
【0017】
ペルオキソ錯体を含有する溶液を用いることにより、熱処理時に発生するガスの量を低減することが可能になる。その結果、ニオブ酸リチウムに、リチウムイオンの伝導を阻害する空隙が形成され難くなる。さらに、噴霧乾燥することにより、活物質が溶液によって浸食され難くなるので、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。加えて、熱処理温度を123℃よりも高くすることにより、リチウムイオンの伝導を阻害する水和水等の不純物の残存量を低減することが可能になるので、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。さらにまた、熱処理温度を350℃未満にすることにより、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止することが可能になる。結晶化していないニオブ酸リチウムは結晶化しているニオブ酸リチウムよりもリチウムイオン伝導度が高いので、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止することにより、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。したがって、このような形態にすることにより、リチウム電池の反応抵抗を低減することが可能な、活物質複合粉体を製造することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、正極と、負極と、正極及び負極に接触する電解質と、を備えるリチウム電池を製造する方法であって、活物質へ、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する溶液を噴霧し、且つ、これと並行して前記溶液を乾燥する噴霧乾燥工程と、該噴霧乾燥工程後に、123℃よりも高く、且つ、350℃未満で熱処理することにより、活物質複合粉体を作製する熱処理工程と、作製された活物質複合粉体を含む正極又は負極を作製する電極作製工程と、を有する、リチウム電池の製造方法である。
【0019】
ペルオキソ錯体を含有する溶液を用いることにより、熱処理時に発生するガスの量を低減することが可能になる。その結果、ニオブ酸リチウムに、リチウムイオンの伝導を阻害する空隙が形成され難くなる。さらに、噴霧乾燥することにより、活物質が溶液によって浸食され難くなるので、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。加えて、熱処理温度を123℃よりも高くすることにより、リチウムイオンの伝導を阻害する水和水等の不純物の残存量を低減することが可能になるので、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。さらにまた、熱処理温度を350℃未満にすることにより、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止することが可能になる。結晶化していないニオブ酸リチウムは結晶化しているニオブ酸リチウムよりもリチウムイオン伝導度が高いので、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止することにより、リチウムイオン伝導度を高めやすくなる。したがって、このような形態にすることにより、リチウム電池の反応抵抗を低減することが可能な、活物質複合粉体を作製することができる。そして、作製した活物質複合粉体を含む正極又は負極を作製することにより、反応抵抗を低減することが可能な正極又は負極を作製することが可能になる。したがって、このような形態にすることにより、反応抵抗を低減することが可能な、リチウム電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電池の反応抵抗を低減することが可能な活物質複合粉体及びこれを用いたリチウム電池、並びに、活物質複合粉体の製造方法及びリチウム電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の活物質複合粉体10を説明する図である。
図2】本発明のリチウム電池20を説明する図である。
図3】本発明の活物質複合粉体の製造方法を説明する図である。
図4】ニオブのペルオキソ錯体を説明する図である。
図5】本発明のリチウム電池の製造方法を説明する図である。
図6】反応抵抗とBET比表面積との関係を説明する図である。
図7図6の一部を拡大して示す図である。
図8】反応抵抗と熱処理温度との関係を説明する図である。
図9】反応抵抗と追加の熱処理前後の質量比との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
【0023】
1.活物質複合粉体
図1は、本発明の活物質複合粉体を説明する図である。図1では、1粒の活物質複合粉体10を抽出し、且つ、この活物質複合粉体10を簡略化して示している。便宜上、図1には、1つの活物質1の表面にニオブ酸リチウム2を付着(被覆)させている形態を図示したが、本発明の活物質複合粉体は、当該形態に限定されない。本発明の活物質複合粉体は、複数の活物質が集合した二次粒子の形態である活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着(被覆)させた形態であっても良い。
【0024】
図1に示すように、活物質複合粉体10は、活物質1と、当該活物質1の表面に付着させたニオブ酸リチウム2と、を有している。活物質複合粉体10のBET比表面積Sは、0.93m/g<S<1.44m/gである。
【0025】
活物質複合粉体10は、活物質1の表面にニオブ酸リチウムの前駆体を付着させた後、これを熱処理する過程を経て、製造される。この熱処理温度が所定の温度以下であると、熱処理後に水和水等の不純物が残存している活物質複合粉体が製造されやすく、そのような活物質複合粉体は、BET比表面積の値が小さい。残存した水和水等の不純物はリチウムイオン伝導の妨げになるため、不純物が残存している活物質複合粒子を用いた全固体電池は、反応抵抗が増大しやすい。したがって、反応抵抗を低減するために、本発明では、BET比表面積の値を所定の値よりも大きくする。かかる観点から、活物質複合粉体10のBET比表面積Sは、0.93m/gよりも大きくする。
【0026】
一方、活物質複合粉体10を製造する際の熱処理温度が所定の温度以上であると、活物質の表面に付着しているニオブ酸リチウムに、多くの空隙が形成されやすい。多くの空隙を有するニオブ酸リチウムは、リチウムイオン伝導度が低いため、そのようなニオブ酸リチウムを有する活物質複合粒子を用いた全固体電池は、反応抵抗が増大しやすい。したがって、反応抵抗を低減するために、本発明では、BET比表面積の値を所定の値よりも小さくする。かかる観点から、活物質複合粉体10のBET比表面積Sは、1.44m/g未満にする。
【0027】
本発明において、反応抵抗を低減しやすい形態の活物質複合粉体にする観点からは、BET比表面積Sを0.97m/g以上にすることが好ましい。BET比表面積Sを0.97m/g以上にすることにより、水和水等の不純物の残存量を低減しやすくなるので、反応抵抗を低減しやすくなる。
【0028】
また、本発明において、反応抵抗を低減しやすい形態の活物質複合粉体にする観点からは、BET比表面積Sを1.34m/g以下にすることが好ましい。BET比表面積Sを1.34m/g以下にすることにより、活物質の表面に、空隙の量を低減したニオブ酸リチウムを形成しやすくなるので、反応抵抗を低減しやすくなる。
また、本発明において、反応抵抗を低減しやすい形態の活物質複合粉体にする観点から、活物質に付着させるニオブ酸リチウムは、結晶化していないことが好ましい。BET比表面積Sが1.34m/g以下である活物質複合粉体に備えられているニオブ酸リチウムは結晶化していないと考えられるので、BET比表面積Sを1.34m/g以下にすることにより、反応抵抗を低減しやすくなる。
【0029】
また、本発明において、水和水等の不純物の残存量を低減することによって反応抵抗を低減しやすい形態の活物質複合粉体にする観点からは、大気雰囲気中且つ350℃で、10分間に亘って保持する熱処理を行った後の質量をM1、該熱処理を行う前の質量をM0とするとき、質量比M1/M0が、99.60<100×M1/M0であることが好ましい。反応抵抗をより一層低減しやすい形態の活物質複合粉体にする観点からは、質量比M1/M0が99.89≦100×M1/M0であることがより好ましい。
【0030】
本発明において、活物質1は、リチウムイオン二次電池の電極活物質材料として使用可能な材料であれば、特に限定されない。そのような物質としては、LiCoO、NiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMnO、異種元素置換Li−Mnスピネル(LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Al0.5、LiMn1.5Mg0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5、LiMn1.5Zn0.5)、チタン酸リチウム(例えばLiTi12)、リン酸金属リチウム(LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO)、遷移金属酸化物(V、MoO)、TiS、グラファイトやハードカーボン等の炭素材料、LiCoN、SiO、LiSiO、LiSiO、リチウム金属(Li)、リチウム合金(LiSn、LiSi、LiAl、LiGe、LiSb、LiP)、リチウム貯蔵性金属間化合物(例えばMgSn、MgGe、MgSb、CuSb)等を挙げることができる。ここで、本発明の活物質複合粉体を用いた全固体電池では、例示した上記物質の中から、リチウムイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を正極活物質として、卑な電位を示す物質を負極活物質として、それぞれ用いることができる。このようにすることで、任意の電圧の全固体電池を構成することが可能になる。
【0031】
また、ニオブ酸リチウム2の形態は特に限定されない。ただし、反応抵抗を低減しやすい形態にする観点からは、水和水等の不純物の残存量が少ないことが好ましく、非晶質であることが好ましく、且つ、空隙の数が少ないことが好ましい。このような形態のニオブ酸リチウムは、例えば、活物質複合粉体の製造方法の欄で後述する方法等によって、形成することができる。
【0032】
2.リチウム電池
図2は、本発明のリチウム電池20(リチウムイオン二次電池20)を説明する図である。図2では、リチウム電池20を簡略化して示しており、外装体等の記載を省略している。図1に示した活物質複合粉体10と同様に、活物質及び当該活物質の表面に付着させたニオブ酸リチウムを有し、且つ、そのBET比表面積Sが0.93m/g<S<1.44m/gである物質には、図2で符号10を付して示し、その説明を適宜省略する。
【0033】
図2に示すように、リチウム電池20は、正極21及び負極22と、これらの間に配置された固体電解質層23と、正極21に接続された正極集電体24と、負極22に接続された負極集電体25と、を備えている。正極21は、本発明の活物質複合粉体10と、硫化物固体電解質23aと、導電助剤21aと、バインダー21bと、を有し、活物質複合粉体10は、活物質1(以下において、「正極活物質1」ということがある。)と、当該正極活物質1の表面に付着させたニオブ酸リチウム2と、を有している。また、負極22は、負極活物質22aと、硫化物固体電解質23aと、バインダー22bと、を有している。また、固体電解質層23は、硫化物固体電解質23aを有している。リチウム電池20において、正極活物質1はLiNi1/3Co1/3Mn1/3であり、負極活物質22aはグラファイトである。
【0034】
このように、リチウム電池20は、本発明の活物質複合粉体10を含有した正極21を備えている。上述のように、本発明の活物質複合粉体10は、反応抵抗を低減することが可能である。したがって、この活物質複合粉体10を含有した正極21が備えられる形態とすることにより、反応抵抗を低減することが可能なリチウム電池20を提供することができる。
【0035】
ここで、正極21は、例えば、活物質複合粉体10と、硫化物固体電解質23aと、導電助剤21aと、バインダー21bとを、溶媒に投入した後、これを、超音波ホモジナイザー等を用いて分散させることにより作製したスラリー状の正極組成物を、正極集電体24の表面に塗工し、その後、乾燥する過程を経て、作製することができる。また、負極22は、負極活物質22aと、硫化物固体電解質23aと、バインダー22bとを、溶媒に投入した後、これを、超音波ホモジナイザー等を用いて分散させることにより作製したスラリー状の負極組成物を、負極集電体25の表面に塗工し、その後、乾燥する過程を経て、作製することができる。また、固体電解質層23は、例えば、硫化物固体電解質23aをプレスする等の過程を経て作製することができる。このようにして、正極21、負極22、及び、固体電解質層23を作製したら、図2に示したように、一方から他方へ向かって、負極集電体25、負極22、固体電解質層23、正極21、及び、正極集電体24がこの順で配置されるように、例えば、不活性雰囲気(例えば、アルゴン雰囲気、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気等。)でこれらを積層することにより積層体を形成する。その後、当該積層体をプレスする等の過程を経ることにより、リチウム電池20を作製することができる。
【0036】
本発明のリチウム電池において、正極活物質及び負極活物質は、「1.活物質複合粉体」に関する活物質1の具体例として記載した上記物質の中から、目的の電圧のリチウム電池20を構成できるように、リチウムイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を正極活物質として、卑な電位を示す物質を負極活物質として、それぞれ用いることができる。
【0037】
正極活物質の形状は、例えば粒子状や薄膜状等にすることができる。正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、正極における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
【0038】
また、上述したように、本発明のリチウム電池は、必要に応じて、正極や負極にも、リチウム電池に使用可能な公知の固体電解質を含有させることができる。正極や負極に含有させることが可能な固体電解質としては、例えば、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiO−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P、LiPS等を挙げることができる。本発明のリチウム電池に使用可能な固体電解質の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法で製造した固体電解質を適宜用いることができる。また、固体電解質は、非晶質であっても良く、結晶であっても良い。
【0039】
また、正極には、リチウム電池の正極に含有させることが可能な公知のバインダーを用いることができる。そのようなバインダーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。さらに、正極には、導電性を向上させる導電助剤を含有させることができる。正極に含有させることが可能な導電助剤としては、気相成長炭素繊維、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料のほか、リチウム電池の使用時の環境に耐えることが可能な金属材料を例示することができる。そして、例えば、上記正極活物質、固体電解質、導電助剤、及び、バインダー等を液体に分散して調整したスラリー状の正極組成物を用いて正極を作製する場合、使用可能な液体としてはヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、正極の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、正極はプレスする過程を経て作製することができる。本発明において、正極をプレスする際の圧力は100MPa程度とすることができる。
【0040】
また、負極に含有させる負極活物質の形状は、例えば粒子状、薄膜状等にすることができる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、負極における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
【0041】
また、負極には、負極活物質や固体電解質に加え、必要に応じて、負極活物質や固体電解質を結着させるバインダーを用いることができる。そのようなバインダーとしては、正極に含有させることが可能な上記バインダー等を例示することができる。さらに、負極には、導電性を向上させる導電助剤が含有されていても良い。負極に含有させることが可能な導電助剤としては、正極に含有させることが可能な上記導電助剤等を例示することができる。そして、例えば、負極活物質、固体電解質、導電助剤、及び、バインダー等を液体に分散して調整したスラリー状の負極組成物を用いて負極を作製する場合、使用可能な液体としてはヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、負極の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、負極はプレスする過程を経て作製することができる。本発明において、負極をプレスする際の圧力は200MPa以上とすることが好ましく、400MPa程度とすることがより好ましい。
【0042】
また、固体電解質層に含有させる固体電解質としては、全固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができる。そのような固体電解質としては、正極や負極に含有させることが可能な上記固体電解質等を例示することができる。このほか、固体電解質層には、可塑性を発現させる等の観点から、固体電解質同士を結着させるバインダーを含有させることができる。そのようなバインダーとしては、正極に含有させることが可能な上記バインダー等を例示することができる。ただし、高出力化を図りやすくするために、固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された固体電解質を有する固体電解質層を形成可能にする等の観点から、固体電解質層に含有させるバインダーは5質量%以下とすることが好ましい。また、液体に固体電解質等を分散して調整したスラリー状の固体電解質組成物を基材に塗布する過程を経て固体電解質層を作製する場合、固体電解質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。固体電解質層における固体電解質材料の含有量は、質量%で、例えば60%以上、中でも70%以上、特に80%以上であることが好ましい。固体電解質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるが、例えば、0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0043】
また、負極集電体や正極集電体は、リチウム電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、Inからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。
【0044】
また、図示は省略したが、本発明のリチウム電池は、リチウム電池に使用可能な公知の外装体に収容された状態で使用することができる。そのような外装体としては、公知のラミネートフィルムや金属製の筐体等を例示することができる。
【0045】
3.活物質複合粉体の製造方法
図3は、本発明の活物質複合粉体の製造方法を説明する図である。図3に示した本発明の活物質複合粉体の製造方法は、活物質準備工程(S1)と、噴霧乾燥工程(S2)と、熱処理工程(S3)と、を有している。
【0046】
活物質準備工程(以下において、「S1」ということがある。)は、後述する工程で表面にニオブ酸リチウムが付着される活物質を準備する工程である。S1は、活物質を準備することができれば、その形態は特に限定されない。S1は、活物質を作製することによって、活物質を準備する形態であっても良く、活物質を購入することによって、活物質を準備する形態であっても良い。
【0047】
噴霧乾燥工程(以下において、「S2」ということがある。)は、S1で準備された活物質へ、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する溶液を噴霧し、且つ、これと並行して、活物質へと噴霧した溶液を乾燥する工程である。図4に、ニオブのペルオキソ錯体の構造式を示す。S2で活物質へと噴霧する溶液としては、例えば、過酸化水素水、ニオブ酸、及び、アンモニア水を用いることにより透明溶液を作製した後、作製した透明溶液へリチウム塩を添加することによって得られる水溶液(以下において、当該水溶液を「錯体溶液」ということがある。)等を挙げることができる。S2で使用するニオブ酸の含水率が変わっても、ニオブのペルオキソ錯体を合成可能なので、ニオブ酸の含水率は特に限定されない。また、ニオブのペルオキソ錯体を合成可能であれば、ニオブ酸及びアンモニア水の混合比率は特に限定されない。また、S2で使用可能なリチウム塩としては、LiOH、LiNO、LiSO等を例示することができる。
S2における噴霧により、ニオブ化合物及びリチウム化合物を含有する錯体溶液を活物質の表面に付着させる。そして、S2における乾燥により、活物質の表面に付着させた錯体溶液に含まれている、溶媒や水和水等の揮発成分を除去する。以下において、錯体溶液を乾燥した後の形態を、「ニオブ酸リチウムの前駆体」ということがある。
【0048】
S2では、活物質へ錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して、活物質へ向けて噴霧されて活物質の表面に付着した錯体溶液を乾燥させる。このようなS2は、例えば、転動流動コーティング装置やスプレードライヤー等を用いることにより、行うことができる。転動流動コーティング装置としては、パウレック社製のマルチプレックスや、フロイント産業株式会社製のフローコーター等を例示することができる。S2で転動流動コーティング装置を用いる場合、1つの活物質に着目すると、活物質へ錯体溶液が噴霧された直後に錯体溶液が乾燥され、その後、活物質の表面に付着しているニオブ酸リチウムの前駆体の層の厚さが目的の厚さになるまで、活物質へ向けた錯体溶液の噴霧、及び、活物質へと噴霧された錯体溶液の乾燥が繰り返される。また、S2で転動流動コーティング装置を用いる場合、装置内に存在している複数の活物質に着目すると、錯体溶液が噴霧されている活物質と、表面の錯体溶液が乾燥されている活物質とが混在している。それゆえ、S2は、活物質へ錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して、活物質の表面に付着した錯体溶液を乾燥させる工程、と言うことができる。
【0049】
ここで、錯体溶液に含まれている過酸化水素は、強力な酸化作用を有している。それゆえ、長時間に亘って錯体溶液を活物質に接触させると、過酸化水素によって活物質が浸食される虞があり、浸食された活物質は劣化する。そこで、本発明では、活物質が劣化し難い形態にするため、活物質へ錯体溶液を噴霧することにより錯体溶液を活物質の表面に付着させた直後に、活物質の表面に存在している錯体溶液を乾燥する。このような形態にすることにより、電池の反応抵抗を低減することが可能な活物質複合粉体を製造することが可能になる。
【0050】
また、活物質へ錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して活物質表面の錯体溶液を乾燥させる形態のS2によって、ニオブ酸リチウムの前駆体を活物質の表面に付着させることにより、S2の後に行われる熱処理工程における熱処理温度を低減しても、活物質の表面にニオブ酸リチウムを形成することが可能になる。熱処理温度を低減することによって得られる効果については、後述する。
【0051】
熱処理工程(以下において、「S3」ということがある。)は、S2の後に、123℃よりも高く、且つ、350℃未満の温度で、ニオブ酸リチウムの前駆体を表面に付着させた活物質を熱処理する工程である。S3により、活物質と、該活物質の表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体を得ることができる。S3の熱処理は、大気雰囲気中で行うことができる。
【0052】
S3では、熱処理温度を123℃よりも高くする。このような温度で熱処理することにより、錯体溶液の溶媒や水和水等の不純物(揮発成分)の残存量を低減することができる。水和水はリチウムイオン伝導の妨げとなるため、この残存量を低減することにより、反応抵抗を低減することが可能になる。また、本発明の活物質複合粉体の製造方法によって製造した活物質複合粉体は、例えば、硫化物固体電解質を用いた全固体電池に使用される。硫化物固体電解質は水と反応することによって劣化し、その結果、全固体電池の反応抵抗が増大しやすい。それゆえ、錯体溶液の溶媒の残存量を低減することにより、電池の反応抵抗を低減することが可能になる。
【0053】
また、S3では、熱処理温度を350℃未満にする。S3はS2の後に行われるので、ニオブ酸リチウムの前駆体は、活物質へ錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して活物質表面の錯体溶液を乾燥させる形態のS2によって、活物質の表面に付着されている。このような形態のS2によって、活物質の表面にニオブ酸リチウムの前駆体を付着させることにより、従来よりも熱処理温度を低温にしても、ニオブ酸リチウムを形成することが可能になる。ここで、熱処理温度を高温にすると、ニオブ酸リチウムに多数の空隙が形成されやすく、その結果、活物質複合粉体のBET比表面積が増大しやすい。この空隙は、リチウムイオン伝導を阻害するため、電池の反応抵抗増加の一因になる。電池の反応抵抗を低減するためには、ニオブ酸リチウムの空隙の数を低減することが有効であり、そのためには、熱処理温度を低温にすることが有効である。熱処理温度を350℃未満にすることにより、ニオブ酸リチウムの空隙の数を低減することが可能になるので、反応抵抗を低減することが可能になる。
加えて、熱処理温度を350℃以上にすると、結晶化したニオブ酸リチウムが活物質の表面に形成される。結晶化したニオブ酸リチウムは非晶質のニオブ酸リチウムよりもリチウムイオン伝導度が低いため、電池の反応抵抗増加の一因になる。電池の反応抵抗を低減するためには、ニオブ酸リチウムを結晶化させないことが有効であり、そのためには、熱処理温度を所定温度未満にすることが有効である。熱処理温度を350℃未満にすることにより、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止することが可能になるので、電池の反応抵抗を低減することが可能になる。
【0054】
このように、S2の後に、123℃よりも高く、且つ、350℃未満の温度で熱処理するS3によって、活物質の表面にニオブ酸リチウムを形成することにより、電池の反応抵抗を低減することが可能な、活物質複合粉体を製造することができる。また、従来技術で用いられていたアルコキシド溶液は炭素を多く含んでいるため、熱処理時にニオブ酸リチウムの前駆体から量のガスが発生し、その結果、多数の空隙を有するニオブ酸リチウムが形成されやすかった。これに対し、ニオブのペルオキソ錯体を含有する溶液を用いる本発明の活物質複合粉体の製造方法(及び、後述する本発明のリチウム電池の製造方法。以下において同じ。)によれば、熱処理時にニオブ酸リチウムの前駆体から発生するガスの量を低減することが可能である。その結果、ニオブ酸リチウムの空隙の数を低減することが可能なので、反応抵抗を低減することができる。加えて、本発明の活物質複合粉体の製造方法で使用する錯体溶液は、アルコキシド溶液よりも廉価なので、上記効果に加えて、製造コストを低減することも可能になる。
【0055】
S1乃至S3を経て活物質複合粉体を製造することにより、BET比表面積が、0.93m/gより大きく、且つ、1.44m/g未満である、活物質複合粉体を製造することが可能である。
【0056】
本発明の活物質複合粉体の製造方法において、S3の熱処理温度は123℃よりも高く、且つ、350℃未満であれば良い。ただし、ニオブ酸リチウムの空隙の数を低減しやすい形態にしたり、ニオブ酸リチウムの結晶化を防止しやすい形態にしたりすることによって、電池の反応抵抗を低減しやすい形態にする等の観点からは、熱処理の上限温度を300℃以下にすることが好ましい。より好ましくは、250℃以下である。
【0057】
また、本発明の活物質複合粉体の製造方法において、錯体溶液の溶媒や水和水等の不純物の残存量を低減することによって、電池の反応抵抗を低減しやすい形態にする等の観点からは、熱処理の下限温度を150℃以上にすることが好ましい。
【0058】
4.リチウム電池の製造方法
図5は、本発明のリチウム電池の製造方法を説明する図である。図5において、本発明の活物質複合粉体の製造方法について説明する図3に示した各工程と同様の工程には、図3で使用した符号と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0059】
図5に示した本発明のリチウム電池の製造方法は、活物質準備工程(S1)と、噴霧乾燥工程(S2)と、熱処理工程(S3)と、電極作製工程(S4)と、を有している。S1乃至S3は、「3.本発明の活物質複合粉体の製造方法」で既に説明したため、ここではその説明を省略する。
【0060】
電極作製工程(以下において、「S4」ということがある。)は、S1乃至S3によって作製された活物質複合粉体を含む正極又は負極を作製する工程である。例えば、図2に示したリチウム電池20を製造する場合には、活物質複合粉体10を含む正極21を作製する工程である。S4は、本発明の活物質複合粉体を含む正極又は負極を作製する工程であれば、その形態は特に限定されない。例えば、S4で正極21を作製する場合には、活物質複合粉体10と、硫化物固体電解質23aと、導電助剤21aと、バインダー21bとを、溶媒に投入した後、これを、超音波ホモジナイザー等を用いて分散させることにより作製したスラリー状の正極組成物を、正極集電体24の表面に塗工し、その後、乾燥する過程を経て、正極21を作製する工程、とすることができる。
【0061】
S4により、本発明の活物質複合粉体を含む電極(正極又は負極)を作製したら、当該電極と共に電解質を挟持すべきもう1つの電極(負極又は正極)を作製する。このようにして一対の電極(正極及び負極)を作製したら、その後、正極及び負極の間に電解質を配置する過程を経ることにより、本発明のリチウム電池を作製することができる。
【実施例】
【0062】
[試料の作製]
<実施例1>
(1)活物質の準備
ニオブ酸リチウムを表面に付着させる正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3(日亜化学工業株式会社製)を準備した。
【0063】
(2)錯体溶液の調製
濃度30質量%の過酸化水素水870.4gを入れた容器へ、イオン交換水987.4g、及び、ニオブ酸(Nb・3HO(Nb含水率72%))44.2gを添加した。次に、上記容器へ、濃度28質量%のアンモニア水87.9gを添加した。そして、アンモニア水を添加した後に十分に攪拌することにより、透明溶液を得た。さらに、得られた透明溶液に、水酸化リチウム・1水和物(LiOH・HO)10.1gを加えることにより、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムを含有する錯体溶液を得た。得られた錯体溶液における、Li及びNbのモル濃度は、何れも0.12mol/kgであった。
【0064】
(3)噴霧乾燥
上述の手順により得られた錯体溶液2000g、及び、1000gの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、転動流動コーティング装置(MP−01、パウレック社製)とを用いて、正極活物質へ錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して錯体溶液を乾燥することにより、ニオブ酸リチウムの前駆体を含む層を正極活物質の表面に被覆した。なお、転動流動コーティング装置の運転条件は、吸気ガス:窒素、吸気温度:120℃、吸気風量:0.4m/h、ロータ回転数:毎分400回転、噴霧速度:4.5g/minとした。
【0065】
(4)熱処理
噴霧乾燥により得られた、正極活物質と、該正極活物質の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉体について、大気中にて150℃、5時間の条件で熱処理を行うことにより、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(実施例1の活物質複合粉体)を得た。
【0066】
(5)全固体電池の作製
得られた実施例1の活物質複合粉体と硫化物系固体電解質(LiPS)とを、体積比で活物質複合粉体:硫化物系固体電解質=6:4となるように秤量し、これを、ヘプタンを入れた容器へと投入した。さらに、3質量%となる量の導電助剤(気相成長炭素繊維、昭和電工株式会社製)及び、3質量%となる量のバインダー(ブチレンラバー、JSR株式会社製)を、ヘプタン等を入れた容器へと投入することにより、正極スラリーを作製した。次いで、作製した正極スラリーを超音波ホモジナイザー(UH−50、株式会社エスエムテー製。以下において同じ。)で分散させることにより得た正極組成物を、アルミニウム箔の上面に塗工し、引き続き、100℃30分で乾燥させることにより、アルミニウム箔の上面に正極を形成した。次に、上面に正極が形成されているアルミニウム箔を1cmの大きさに打ち抜くことにより、正極電極を得た。
一方、負極活物質(層状炭素)と硫化物系固体電解質(LiPS)とを、体積比で負極活物質:硫化物系固体電解質=6:4となるように秤量し、これを、ヘプタンを入れた容器へと投入した。さらに、1.2質量%となる量のバインダー(ブチレンラバー、JSR株式会社製)をヘプタンや負極活物質等を入れた容器へと投入することにより、負極スラリーを作製した。次いで、作製した負極スラリーを超音波ホモジナイザーで分散させることにより得た負極組成物を、銅箔の上面に塗工し、引き続き、100℃30分で乾燥させることにより、銅箔の上面に負極を形成した。次に、上面に負極が形成されている銅箔を1cmの大きさに打ち抜くことにより、負極電極を得た。
次に、内径断面積1cmの筒状セラミックスに、硫化物系固体電解質(LiPS)64.8mgを入れ、表面を平滑にしてから98MPaでプレスすることにより、セパレータ層を形成した。その後、このセパレータ層が正極電極と負極電極との間に配置されるように、正極電極及び負極電極を筒状セラミックスに入れ、421.4MPaでプレスした後、正極電極側、及び、負極電極側にステンレス棒を入れ、これを98MPaで拘束することにより、実施例1の全固体電池を作製した。
【0067】
<実施例2>
活物質複合粉体を得るための熱処理の温度を200℃に変更したほかは、実施例1と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(実施例2の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて実施例2の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(実施例2の全固体電池)を作製した。
【0068】
<実施例3>
活物質複合粉体を得るための熱処理の温度を250℃に変更したほかは、実施例1と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(実施例3の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて実施例3の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(実施例3の全固体電池)を作製した。
【0069】
<実施例4>
活物質複合粉体を得るための熱処理の温度を300℃に変更したほかは、実施例1と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(実施例4の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて実施例4の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(実施例4の全固体電池)を作製した。
【0070】
<比較例1>
活物質複合粉体を得るための熱処理の温度を100℃に変更したほかは、実施例1と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(比較例1の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて比較例1の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(比較例1の全固体電池)を作製した。
【0071】
<比較例2>
活物質複合粉体を得るための熱処理の温度を350℃に変更したほかは、実施例1と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(比較例2の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて比較例2の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(比較例2の全固体電池)を作製した。
【0072】
<比較例3>
(1)活物質の準備
ニオブ酸リチウムを表面に付着させる正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3(日亜化学工業株式会社製)を準備した。
【0073】
(2)アルコキシド溶液の調製
アルコキシド溶液は、エトキシリチウム、ペンタエトキシニオブ、及び、脱水エタノールを用いて作製した。エトキシリチウムを、脱水エタノールを入れた容器へと投入することにより溶解させ、これを脱水エタノール中で均一に分散させた。その後、エトキシリチウム及び脱水エタノールを入れた上記容器へ、リチウム及びニオブが元素比(モル比)で1:1になるように、ペンタエトキシニオブを入れた。そして、ペンタエトキシニオブが均一に混合されるまで攪拌することにより、アルコキシド溶液を得た。なお、エトキシリチウムの投入量は、アルコキシド溶液の固形分比率が6.9質量%になるように調整した。
【0074】
(3)噴霧乾燥
上述の手順により得られたアルコキシド溶液680g、及び、1000gの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、転動流動コーティング装置(MP−01、パウレック社製)とを用いて、正極活物質へアルコキシド溶液を噴霧し、且つ、これと並行してアルコキシド溶液を乾燥することにより、ニオブ酸リチウムの前駆体を含む層を正極活物質の表面に被覆した。ここで、転動流動コーティング装置の運転条件は、吸気ガス:窒素、吸気温度:80℃、吸気風量:0.3m/h、ロータ回転数:毎分300回転、噴霧速度:1.5g/minとした。なお、実施例1及び比較例3の、転動流動コーティング装置の運転条件の違いは、使用する溶液の違いに起因している。
【0075】
(4)熱処理
アルコキシド溶液を用いた噴霧乾燥により得られた、正極活物質と、該正極活物質の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉体について、大気中にて350℃、5時間の条件で熱処理を行うことにより、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(比較例3の活物質複合粉体)を得た。
【0076】
(5)全固体電池の作製
実施例1の活物質複合粉体に代えて比較例3の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(比較例3の全固体電池)を作製した。
【0077】
なお、比較例3では、リチウム源としてエトキシリチウムを用いたが、ニオブ酸リチウムを形成するためのアルコキシド溶液を調製可能であれば、他のリチウム源も使用可能である。そのようなリチウム源としては、酢酸リチウム、リチウムのアルコキシド、水酸化リチウム等を例示することができる。また、比較例3では、ニオブ源としてペンタエトキシニオブを用いたが、ニオブ酸リチウムを形成するためのアルコキシド溶液を調製可能であれば、他のニオブ源も使用可能である。そのようなニオブ源としては、ペンタメトキシニオブ、ペンタ−i−プロポキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−i−ブトキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−sec−ブトキシニオブ等を例示することができる。また、比較例3では、エタノールを使用したが、これに代えて、メタノール、プロパノール、ブタノール等を使用しても、ニオブ酸リチウムを形成するためのアルコキシド溶液を調製可能である。また、比較例3では、転動流動コーティング装置を用いて、正極活物質の表面にニオブ化合物及びリチウム化合物を含む層を被覆したが、アルコキシド溶液を用いる場合には、例えば、アルコキシド溶液中に活物質を浸漬した後に溶媒を乾燥する形態や、スプレードライヤーを用いる形態によって、正極活物質の表面にニオブ化合物及びリチウム化合物を含む層を被覆することも可能である。
【0078】
<比較例4>
噴霧乾燥後に、大気中に24時間に亘って曝露することにより、前駆体の加水分解を促進してから、大気中にて350℃、5時間の条件で熱処理を行ったほかは、比較例3と同じ条件で、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(比較例4の活物質複合粉体)を作製した。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて比較例4の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(比較例4の全固体電池)を作製した。
【0079】
<比較例5>
実施例1と同じ方法で調製した錯体溶液20g、及び、10gの正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3を準備し、これらを混合することにより、混合物を得た。そして、得られた混合物を100℃に加熱することにより、粉体を取り出せる状態になるまで水分を蒸発させた後、大気中にて300℃、5時間の条件で熱処理を行うことにより、LiNi1/3Mn1/3Co1/3と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する活物質複合粉体(比較例5の活物質複合粉体)を得た。さらに、実施例1の活物質複合粉体に代えて比較例5の活物質複合粉体を使用したほかは、実施例1と同じ条件で、全固体電池(比較例5の全固体電池)を作製した。
【0080】
[BET比表面積の特定]
上述の方法で作製した実施例1乃至実施例4の活物質複合粉体、及び、比較例1乃至比較例5の活物質複合粉体のそれぞれに対し、比表面積測定装置(トライスター3000、株式会社島津製作所製)を用いて、BET比表面積を測定した。小数第3位を四捨五入することによって得られるBET比表面積の値を、表1に示す。なお、表面にニオブ酸リチウムを付着させていない正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3のBET比表面積は、1.1m/gであった。
【0081】
【表1】
【0082】
[全固体電池の反応抵抗測定]
上述の方法で作製した実施例1乃至実施例4の全固体電池、及び、比較例1乃至比較例5の全固体電池のそれぞれを、電圧4.5Vまで充電し、次いで2.5Vまで放電した後に、3.6Vにおいて交流インピーダンス測定を行った。そして、ナイキストプロット(Nyquistプロット)により得られた円弧から、各全固体電池の反応抵抗[Ω・cm]を特定した。小数第3位を四捨五入することによって得られる反応抵抗の値を、表2に示す。また、反応抵抗とBET比表面積との関係を図6及び図7に、反応抵抗と熱処理温度との関係を図8に、それぞれ示す。図7は、図6から、反応抵抗が8Ω・cm以下であった試料の結果のみを抽出して示す図である。図6及び図7の縦軸は反応抵抗[Ω・cm]であり、横軸はBET比表面積[m/g]である。また、図8の縦軸は反応抵抗[Ω・cm]であり、横軸は熱処理温度[℃]である。なお、実施例1の活物質複合粉体に代えて、表面にニオブ酸リチウムが付着していない正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3を用いたほかは、実施例1の全固体電池と同様の方法で作製した全固体電池の反応抵抗(小数第3位を四捨五入して得られる値)は、843.59Ω・cmであった。
【0083】
【表2】
【0084】
表1、表2、図6、及び、図7に示したように、BET比表面積Sを0.93m/g<S<1.44m/gにすることにより、電池の反応抵抗を小さくすることが可能であった。ここで、図7に示した比較例1の結果と実施例1の結果とを直線で結び、この直線上において反応抵抗を比較例4と同一にしたときのBET比表面積が、0.93m/gである。この0.93m/gは、小数第3位を四捨五入して得られる値である。
また、表1、表2、図6、及び、図7に示したように、BET比表面積Sを0.97m/g≦S<1.44m/gにすることにより、電池の反応抵抗を低減しやすくなり、BET比表面積Sを0.97m/g≦S≦1.34m/gにすることにより、電池の反応抵抗をより一層低減しやすくなることが分かった。
【0085】
また、表2及び図8に示したように、熱処理温度を123℃よりも高く、且つ、350℃未満にすることにより、電池の反応抵抗を小さくすることが可能であった。ここで、図8に示した比較例1の結果と実施例1の結果とを直線で結び、この直線上において反応抵抗を比較例4と同一にすることによって得られる熱処理温度が123℃である。
また、熱処理温度がこの範囲に含まれていても、錯体溶液と正極活物質との混合物を100℃に加熱することにより水分を蒸発させた後、これを大気中にて300℃、5時間の条件で熱処理した比較例5は、電池の反応抵抗が大きかった。これは、錯体溶液に含まれている過酸化水素によって正極活物質が浸食されたことにより、正極活物質が劣化したためであると考えられる。
また、表2及び図8に示したように、熱処理温度を300℃以下にすることにより、電池の反応抵抗を低減しやすくなり、熱処理温度を250℃以下にすることにより、電池の反応抵抗をより一層低減しやすくなることが分かった。さらに、熱処理温度を150℃以上にすることにより、電池の反応抵抗を低減しやすくなることが分かった。
【0086】
[追加の熱処理前後の重量比]
図6乃至図8に示したように、熱処理温度を150℃にした実施例1及び熱処理温度を100℃にした比較例1は、熱処理温度を200℃以上300℃以下にした実施例2乃至実施例4よりも反応抵抗が大きかった。この原因を特定するため、実施例1乃至4及び比較例1の活物質複合粉体のそれぞれについて、大気中にて350℃、10分間の熱処理(追加の熱処理)を行った。追加の熱処理をする前の活物質複合粉体の質量をM0、追加の熱処理をした後の活物質複合粉体の質量をM1とするとき、100×M1/M0で表される質量比と、追加の熱処理をする前の活物質複合粉体を用いて作製した実施例1乃至4及び比較例1の全固体電池の反応抵抗との関係を、図9に示す。また、質量比100×M1/M0の値(小数第3位を四捨五入して得られる値)を表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
図8及び表3に示したように、熱処理温度が実施例2乃至4よりも低かった実施例1及び比較例1は、実施例2乃至4の活物質複合粉体と比較して、質量比100×M1/M0の値が小さかった。実施例1及び比較例1の質量比100×M1/M0の値が小さかったのは、実施例1及び比較例1の活物質複合粉体は、実施例2乃至実施例4の活物質複合粉体よりも、錯体溶液の溶媒や水和水等の不純物が多く残存しており、追加の熱処理によって当該不純物が揮発したためであると考えられる。以上の結果より、質量比M1/M0が、99.60<100×M1/M0であることにより、電池の反応抵抗を低減しやすくなり、99.89≦100×M1/M0であることにより、電池の反応抵抗をより一層低減しやすくなることが分かった。
【0089】
活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着させた実施例1及び比較例1の活物質複合粉体のBET比表面積が、活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着させないときのBET比表面積よりも小さい理由は、次のように考えられる。すなわち、今回使用した、ニオブ酸リチウムが付着される活物質は、1次粒子が集合した2次粒子の形態をしており、ニオブ酸リチウムがその表面に付着されることによって、2次粒子の表面が滑らかになった結果、実施例1及び比較例1の活物質複合粉体は、活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着させないときのBET比表面積よりも小さかったと考えられる。これに対し、実施例2乃至実施例4の活物質複合粉体のBET比表面積が、活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着させないときのBET比表面積よりも大きい理由は、次のように考えられる。すなわち、実施例1や比較例1よりも熱処理温度が高い実施例2乃至実施例4では、熱処理時に、錯体溶液の溶媒や水和水等の不純物が揮発しやすく、この揮発時にニオブ酸リチウム層自体に凹凸が形成された結果、実施例2乃至4の活物質複合粉体は、活物質の表面にニオブ酸リチウムを付着させないときのBET比表面積よりも大きかったと考えられる。ただし、本発明の実施例(実施例1乃至4)ではニオブのペルオキソ錯体を含有する錯体溶液を用いたので、アルコキシド溶液を用いた比較例3よりもニオブ酸リチウム層に空隙が形成され難い。それゆえ、実施例2乃至4の活物質複合粉体は、比較例3の活物質複合粉体よりも、BET比表面積の値が小さかった。なお、比較例4では、前駆体の加水分解を促進することによって、熱処理時にガスが発生し難い状態にした後に熱処理を行ったため、比較例4の活物質複合粉体は、比較例3の活物質複合粉体よりもBET比表面積の値が小さかった。
【0090】
また、上述のように、今回使用した正極活物質LiNi1/3Mn1/3Co1/3のBET比表面積は、1.1m/gであった。したがって、ニオブ酸リチウムを付着させる前の活物質のBET比表面積S0に基づいて、本発明の活物質複合粉体が満たすべきBET比表面積の条件、及び、満たすことが好ましいBET比表面積の条件は、以下のように表現することも可能である。すなわち、本発明の活物質複合粉体のBET比表面積Sは、S0−0.17<S<S0+0.34とする。さらに、本発明の活物質複合粉体のBET比表面積Sは、S0−0.13<Sとすることが好ましい。また、本発明の活物質複合粉体のBET比表面積Sは、S≦S0+0.24とすることが好ましい。ニオブ酸リチウムが表面に付着される活物質が変わっても、表面にニオブ酸リチウムを付着させる方法は上述の方法と同様であるため、使用する活物質が変わっても、S0を用いて表される上記BET比表面積の条件を満たすことにより、電池の反応抵抗を低減することが可能になると考えられる。
【符号の説明】
【0091】
1…活物質
2…ニオブ酸リチウム
10…活物質複合粉体
20…リチウム電池
21…正極
21a…導電助剤
21b、22b…バインダー
22…負極
22a…負極活物質
23…固体電解質層(電解質)
23a…硫化物固体電解質
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図1
図2