(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
A.切断とスクライビング
光学的に透明な材料の切断は機械的な方法によって行われることが多い。おそらく、薄く平坦な材料を切断する最も一般的な方法は機械式ダイシングソーを使用することである。これは、シリコンウェハをダイシングするための、マイクロエレクトロニクス業界における標準的な方法である。しかし、この方法は、部品汚染を回避するために、管理されなければならないかなりの廃物を生じ、プロセスの総合コストの増加をもたらす。さらに、マイクロプロセッサ設計に使用される薄いウェハはダイシングソーによって切断されると飛散する傾向がある。
【0004】
これらの問題に対処するために、「スクライブ及び割断(scribe and cleave)」材料を切断するための目下のところ最新のプロセスは、このスクライブに沿って材料を破断させる前に、材料上に表面溝をスクライブするために、種々のタイプのレーザを使用する。例えば、ピコ秒以下のレーザパルスが、シリコン及び他の半導体材料を切断するのに使用されてきた(H.Sawada「Substrate cutting method」米国特許第6,770,544号)。同様に、収束した非点収差レーザビームは材料切断のために単一表面溝を作るのに使用されてきた(J.P.Sercel「System and method for cutting using a variable astigmatic focal beam spot」米国特許出願第20040228004号)。この特許は、非点収差収束幾何学形状を最適化することによって処理速度の向上が達成され得ることを請求している。
【0005】
精密で高品質の割断を達成するために、溝は一定の最小深さでなければならず、その値は用途によって変化する(例えば、100μm厚のサファイアは許容可能な割断のために約15μm深さの溝を必要とする)。溝の深さは走査速度が増すと減るため、最小深さ要件は、レーザスクライビングシステムの最大走査速度、従って総合スループットを制限する。材料切断の代替技術は、透明なターゲット材料のバルク内に単一レーザ修正線フィーチャを形成するために多光子吸収を使用する(F.Fukuyo他「Laser processing method and laser processing apparatus」米国特許出願第20050173387号)。表面溝の場合と同様に、精密で高品質な材料割断をもたらすのに必要とされるサブ表面フィーチャの特定の最小サイズが存在し、材料切断の処理速度に対する制限に匹敵する。
【0006】
「スクライブ及び割断」という材料切断の注目すべき用途は個々の電子デバイス及び/又は光電子デバイスの分離のためのウェハダイシングである。例えば、サファイア・ウェハダイシングは青色発光ダイオードの単一化に使用される。ウェハの単一化は背面レーザアブレーションによって達成されることができ、ウェハの前面上でのデバイスの汚染が最小になる(T.P.Glenn他「Method of singulation using laser cutting」米国特許第6,399,463号)。同様に、アシストガスが、基板をダイシングするレーザビームを補助するために使用され得る(K.Imoto他「Method and apparatus for dicing a substrate」米国特許第5,916,460号)。さらに、ウェハは、最初にレーザを使用して、表面溝をスクライブし、次に、機械的な鋸刃を使用して、切断を完全にすることによってダイシングされ得る(N.C.Peng他「Wafer dicing device and method」米国特許第6,737,606号)。こうした用途は一般に、大容積で実施され、従って、処理速度が特に重要である。
【0007】
1つのプロセスは2つの異なるタイプのレーザを使用し、その一方が材料をスクライブし、他方が材料を破断する(break)(J.J.Xuan他「Combined laser−scribing and laser−breaking for shaping of brittle substrates」米国特許第6,744,009号)。同様のプロセスは、表面にスクライブ線を引くために第1のレーザビームを使用し、非金属材料を別々の小片に割るために第2のレーザビームを使用する(D.Choo他「Method and apparatus for cutting a non−metallic substrate using a laser beam」米国特許第6,653,210号)。スクライビングとクラッキングのための2つの異なるレーザビームはまた、ガラス板の切断に使用されてきた(K.You「Apparatus for cutting glass plate」国際特許公報第WO 2004083133号)。最後に、レーザビームを材料の上部表面近くに収束させ、収束したレーザビームとターゲット材料との間に相対的な横方向運動を与えながら、その焦点を、材料を通って下に底部表面の近くまで移動させることによって、単一レーザビームが材料をスクライブし、割る(crack)のに使用されてきた(J.J.Xuan他「Method for laser−scribing brittle substrates and apparatus therefore」米国特許第6,787,732号)。
【0008】
B.材料接合
ガラス及びプラスチックスなどの2つ以上の光学的に透明な材料の接合は種々の産業の用途にとって有益である。光学的な透明性が機能を可能にするか又は補助する、或いはその他の方法でさらなる(例えば、美的な)価値をもたらす任意のタイプのデバイスの構築は、そのような接合プロセスから利益を得ることができる。一例は、目視検査が必要である(例えば、通信及び生体医療産業)コンポーネントの密閉封止である。
【0009】
一部の用途では、従来の接合プロセス(例えば、接着剤、機械的接合)は不十分である。例えば、多くの接着剤は、生体医療インプラントデバイスの場合に、非生体適合性であることがわかっている。他のデバイスの場合、特定の用途(例えば、高圧シール)について接着力が十分に強くない可能性がある。こうした要求に対して、レーザ溶接は理想的な解を与える。
【0010】
微細流体システムでは、デバイス全体をカバーするキャップ片によって、互いに対して密接な間隔の個々の経路の封止が所望されることになる。異なる微細流体経路間の接触領域が小さいため、他の方法で強くて液密封止接合を行うことは困難であり得る。レーザ溶接は、これらの微細流体経路間に接合領域を精密に位置決めし、液密封止を提供し得る。
【0011】
透明材料のレーザ溶接のための目下の最新の技術は、
(1)その波長(約10μm)が多くの光学的に透明な材料で線形吸収されるCO
2レーザの使用、又は
(2)レーザ放射を吸収し、それにより、材料の加熱、溶融を起こすように特に設計される、透明材料の界面におけるさらなる材料の導入、
からなる。
これらの方法は共に、その機能が制限される、且つ/又はその実施態様が高価である。
【0012】
パルスCO
2スラブレーザは、パイレックス(登録商標)をパイレックス(登録商標)に溶接するため、また、ポリイミド及びポリウレタンをチタン及びステンレス鋼に接合するために使用されてきた(H.J.Herfurth他「Joining Challenges in the Packaging of BioMEMS」Proceedings of ICALEO 2004)。同様に、溶融石英及び他の耐熱(refractory)材料は10.6μmCO
2レーザで溶接されてきた(M.S.Piltch他「Laser welding of fused quartz」米国特許第6,576,863号)。レーザ放射が界面に達する前に吸収されるため、こうしたCO
2レーザの使用は、厚い上部層材料を通してビームを収束させることによって溶接を可能にしない。さらなる欠点は、長い波長はビームを小さなスポットに収束することを可能にせず、それにより、ミクロンスケールで小さな溶接フィーチャを作成するための有用性を制限することである。
【0013】
或いは、人間の目には透明であるポリイミド及びアクリルなどの吸収層が溶接される2つの材料間に設置され得る(V.A.Kagan他「Advantages of Clearweld Technology for Polyamides」Proceedings ICALEO 2002)。線収束を持つダイオードレーザが、その後溶接のために使用されている(T.Klotzbuecher他「Microclear−A Novel Method for Diode Laser Welding of Transparent Micro Structured Polymer Chips」Proceedings of ICALEO 2004)。色素レーザが、そのレーザの波長を吸収するように特に設計される(R.A.Sallavanti他「Visibly transparent dyes for through−transmission laser welding」米国特許第6,656,315号)。
【0014】
ガラスをガラス又は金属に接合するための1つの溶接プロセスは、レーザビームを使用して、溶接される表面間でガラス半田を溶融させる(M.Klockhaus他「Method for welding the surfaces of materials」米国特許第6,501,044号)。同様に、レーザ波長に対して線形吸収性がある中間層を使用することによって2つのファイバが共に溶接され得る(M.K.Goldstein「Photon welding optical fiber with ultra violet(UV) and visible source」米国特許第6,663,297号)。同様に、プラスチックジャケットを有するファイバが、吸収中間層を挿入することによって、プラスチックフェルールにレーザ溶接され得る(K.M.Pregitzer「Method of attaching a fiber optic connector」米国特許第6,804,439号)。
【0015】
吸収材料のさらなる層の使用は著しい欠点を有する。その最も明確なことは、そのプロセスについて適切な材料を購入するか又は作製するコストである。おそらくよりコストがかかる問題は、製造プロセスにこのさらなる材料を組み込むことに伴う処理時間の増加である。生体医療インプラントデバイスの場合にそうであるように、所望の溶接領域のサイズが益々小さくなるため、こうしたコストは劇的に増加することが予想される。中間の光吸収層を使用する別の欠点は、この層が封止される領域に汚染を導入する可能性があることである。微小流体システムの場合、光吸収層はチャネルを通って流れる流体に直接接触する。
【0016】
透明材料を吸収材料に溶接するための1つの方法は透過による溶接と呼ばれる。この方法では、レーザビームは透過材料を通して吸収材料上に収束され、2つの材料の溶接をもたらす(W.P.Barnes「Low expansion laser welding arrangement」米国特許第4,424,435号)。この方法は、上部透明層を通して多色放射を向け、放射を低部吸収層に収束することによってプラスチックを溶接するのに使用されてきた(R.A.Grimm「Plastic joining method」米国特許第5,840,147号;R.A.Grimm「Joining method」米国特許第5,843,265号)。この方法の別の例では、レーザ波長に対して透明なブラックモールド材料が隣接材料に溶接されるか、又は、レーザ波長を吸収するアシスト材料の追加溶接を経て溶接される(F.Reil「Thermoplastic molding composition and its use for laser welding」米国特許第6,759,458号)。同様に、別の方法は、少なくとも一方がレーザ波長の吸収性がある2つの材料を溶接するために、投影マスクと共に少なくとも2つのダイオードレーザを使用する(J.Chen他「Method and a device for heating at least two elements by means of laser beams of high energy density」米国特許第6,417,481号)。
【0017】
別のレーザ溶接法は、溶融と溶接が起こるまで材料を徐々に加熱するため、2つの材料の界面上でレーザビームの連続走査する(J.Korte「Method and apparatus for welding」米国特許第6,444,946号)。この特許では、一方の材料が透明で、他方の材料がレーザ波長に対して吸収性がある。最後に、1つの方法は、2つの材料片を溶かすために、紫外線、レーザ、X線、及びシンクロトロン放射を使用し、その後、溶接するためにそれらを接触させる(A.Neyer他「Method for linking two plastic work pieces without using foreign matter」米国特許第6,838,156号)。
【0018】
2つの基板の間に少なくとも1つの有機材料層が存在する有機発光ダイオードの密閉封止のためのレーザ溶接が開示されている(「Method of fabrication of hermitically sealed glass package」米国特許出願公報20050199599)。
【0019】
「Welding of Transparent Materials Using Femtosecond Laser Pulses」Japanese Journal of Applied Physics,Vol.44,No.22,2005において、Tamaki他は透明材料の接合に1kHzの130−fsレーザパルスの使用を説明している。しかし、低繰返しレート(kHz)超短パルスの材料相互作用は、電子−フォノン結合時定数及び蓄積効果のために、高繰返しレート(MHz)超短パルスと比較して明確に異なることが知られている。
【0020】
C.サブ表面マーキング
サブ表面マークのガラスへのパターニングは、2−Dポートレート及び3−D彫刻作品を作るために芸術家によって適合されてきた。これらのマークは、外部照明を必要とすることなく、広範囲の条件下でよく見えるように設計される。
【0021】
光学的に透明な材料の表面下での厳密収束エネルギーは、目に見える放射状に伝搬するマイクロクラックを生成し得る。通常、これらのマークを作るのに長パルスレーザが使用される。いくつかの特許は、その後のパターンの可視性を制御するために、これらの放射状クラックのサイズ及び密度の変動を説明している(米国特許第6,333,486号、第6,734,389号、第6,509,548号、第7,060,933号)。
【0022】
マークの可視性は、マークのまさにサイズではなく、中心レーザスポットの周りのクラック密度によって制御され得る(米国特許第6,417,485号「Method and laser system controlling breakdown process development and space structure of laser radiation for production of high quality laser−induced damage images」)。
【0023】
米国特許第6,426,480号(「Method and laser system for production of high quality single−layer laser−induced damage portraits inside transparent material」)は、輝度がスポット密度によって制御される平滑なマークの単層を使用する。
【0024】
書き込みレーザ光のパルス継続時間を増加させることは、マークの輝度を増加させることになる(米国特許第6,720,521号「A method for generating an area of laser−induced damage inside a transparent material by controlling a special structure of a laser irradiation」)。
【発明を実施するための形態】
【0061】
1.超短パルスレーザスクライビング
図1は、その後の割断のために透明材料をスクライブする方法である本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、超短レーザパルスのビーム(2)を生成するレーザシステム(1)、所望のレーザビーム強度分布を生成する光学システム(6)、及びレーザパルスの波長に対して透明なスクライブされるターゲット材料(7)を使用する。さらに、Z軸ステージ(8)はビーム焦点位置(深さ)制御のために使用され、自動化されたX−Y軸ステージアセンブリ(9)は加工品(7)を収束したレーザビームに対して横方向に移動させるために必要とされる。或いは、走査ミラー(3)、(4)、及び(5)を使用して固定ターゲット材料に対してレーザビーム(2)が移動し得る。
【0062】
レーザビーム(2)は、所望の3次元強度分布を生成するためにレーザビーム(2)を変換する光学システム(6)を通して向けられる。変換されたレーザビームの特定の領域は、非線形吸収プロセスを介してターゲット材料のアブレーション及び/又は修正を引き起こすのに十分な強度を有する。材料のアブレーションは、一般に強いレーザ照射による材料の蒸発を指す。材料の修正は、照射された材料の物理的構造及び/又は化学的構造の変化をより広く指し、材料を通したクラックの伝搬に影響を及ぼし得る。レーザ修正は一般に、特定の材料の場合、レーザアブレーションより低い光強度を必要とする。
【0063】
変換されたビームは、材料(7)内の、且つ/又は、材料(7)の表面上の複数の所定のロケーションにおいて材料(7)のアブレーション/修正を引き起こすためにターゲット透明材料(7)の方に向けられる。アブレーションされた領域及び/又は修正された領域は、一般に光学伝搬軸に沿う材料(7)内に位置し、材料(7)内で所定の距離だけ分離される。変換されたビーム及びターゲット材料(7)とは、互いに対して移動し、材料(7)内に複数のレーザスクライブフィーチャの同時生成をもたらす。複数のスクライブフィーチャは、適当な力(複数可)を加えることによって材料(7)の割断を可能にする(
図1(b)を参照されたい)。
【0064】
図2は、本発明の別の実施形態を示し、ガウス型空間強度分布を有するレーザビーム(10)が、ターゲット材料(11)の非線形吸収及びその後のアブレーション又は修正のために十分な強度を生成するように収束される。最も厳密な焦点領域は、材料の表面の下で材料(11)のバルク内の選択されたロケーションに位置決めされる。さらに、適した収束光学部品及びレーザパルスエネルギーを使用することによって、材料のアブレーションを引き起こすのに十分な強度の領域が材料(11)の表面上、且つ/又は表面近くに同時に生成される。
【0065】
重要な態様は、(収束ビームウェストが位置する)バルク材料のバルク内だけでなくビームウェスト(12)より前の光学伝搬軸上の(材料のバルク内か又は表面上の)別の地点にもまたアブレーション又は修正を同時に引き起こすのに十分な強度が存在するように、パルスエネルギー及び収束幾何学形状が選択されることである。レーザパルスがターゲット材料(11)に遭遇すると、(放射状ガウス型強度分布の中心近くの)その高強度領域は材料によって非線形吸収され、アブレーション又は修正が起きる。しかし、レーザビームの外側空間領域(ガウス強度分布の外側エッジ)は、材料で吸収されるには強度が低過ぎ、材料のバルク内のもっと先に位置するビームウェストへ伝搬し続ける。ビームウェストロケーションにおいて、ビーム径は、非線形吸収及びその後のレーザ修正が材料のバルク内で起こるのに十分な強度を再度生成するのに十分に小さい。
【0066】
表面アブレーションの直ぐ下の領域は、初期の表面フィーチャ(アラゴのスポット)が生成された後、引き続くパルスの回折的且つ建設的干渉によって修正される可能性がある。比較的に高い繰返しレートのレーザ源は、適度の併進速度でこのプロセスをよりよく可能にする。
【0067】
これらの収束及びパルスエネルギー条件下で、レーザビーム(10)に対する材料(11)の移動は、複数のレーザ修正領域(即ち、表面溝(13)及び1つ以上のバルク修正領域(14)、又は2つ以上のバルク修正領域)の同時生成をもたらし、複数のレーザ修正領域は共に材料の精密な割断を可能にする。
【0068】
図3は、本発明の別の実施形態を示し、アクシコン(円錐形状)レンズ(20)が、複数の内部スクライブ線(21)を生成するために使われる。レーザビーム(22)で照明されると、アクシコンレンズ(20)は0次ベッセルビームとして知られるビームを生成する。伝搬軸に垂直な平面内の光学強度分布の数学的記述が、ビーム中心からの半径方向の位置が独立変数である0次のベッセル関数によって規定されるという事実にこの名前が由来する。従来の収束方法によって生成される類似サイズのスポットの場合よりも、より一層大きな(即ち、従来的に収束されたビームのレーリー範囲より一層長い)距離に対して、同じ小さなサイズで伝搬できる高強度中心ビームスポット(23)を含むという特異な特性をこのビームは有する。中心強度場は、その強度が半径の増加と共に減少する複数の同心円状の光リングによって囲まれる(図示せず)。その伝搬ベクトルの成分が半径方向内向であるため、これらの光リングは、ベッセルビームが伝搬するにつれて、小さな中心ビームスポット(25)を連続して再構成する。従って、ターゲット材料(24)の厚さ全体にわたってその小さな径を維持する小さな高強度中心ビームスポット(23)が生成され得る。厳密ビーム収束の範囲が拡大するため、ベッセルビームは通常、非回折ビームとも呼ばれる。
【0069】
外側のリングが強い中心スポット(23)を再構成するため、中心スポット(23)が、表面(26)において材料のアブレーションを引き起こすのに十分に強い場合、リング(アブレーションした領域より径が大きい)は、後で短い距離だけビームの中心に収斂し、強い中心ビームスポットの再構成をもたらし、その地点で、アブレーション又は材料修正が再び起こり得る。適切な光学システム設計及び十分なパルスエネルギーによって、このアブレーションプロセス及びその後のビーム再構成は透明材料(24)のバルク全体を通して繰り返され得る。分布屈折率レンズ及び回折光学要素などの他の光学コンポーネントもまた、ベッセルビーム生成のために使用され得る。
【0070】
本発明のさらなる実施形態では、当業者によく知られている代替のビーム強度変換技法が、ターゲット材料内に複数のスクライブ線を生成するようにビーム強度を調節するため、本発明の光学システムで採用される。1つのこうした方法は、所定の距離だけ分離された、高い光強度の2つ別個の領域を生成するために、非点収差ビーム収束を利用する。
図4は、収束された非点収差ガウス型ビームの強度分布プロットを示し、図中、X軸及びY軸の焦点面は20μmの距離だけ分離される。2つの別個の高強度領域(一定強度輪郭線によって識別される)の存在に留意されたい。ターゲット材料に向けられると、これらの2つの領域は複数のスクライブフィーチャを生成するために使用され得る。
【0071】
複数のサブ表面修正線(ときに、表面スクライブ線と共に)はサファイア及びガラスのような脆い材料を破断するために使用され得る。これらの複数の線を生成することはレーザビームの複数のパスによって行われ得る。しかし、複数のパスは総合の移動距離及び処理時間を増加させる。
【0072】
図5は、複数の収束ビームによって表面及び/又はサブ表面領域を処理する配置構成を概略的に示す。パルスレーザ装置からの出力は、材料に対して異なる深さに収束された複数の出力ビームを、同時に又は順次に生成する多焦点ビーム発生器によって受信される。一部の実施形態では、ビームは、対応する出力パルス間に時間的な重なりがほとんどないか又は全くない状態で、遅延が長い状態で、或いは、任意の適した組合せの状態で生成されてもよい。出力ビームは約100psより小さくてもよい単一パルスの継続時間を越える時間遅延を有する可能性がある。
【0073】
種々の実施形態では、ターゲット材料及びパルスビームは、例えばターゲット材料及び/又は光学サブシステムの併進によって、互いに対して移動してもよい。配置構成は、任意選択で、1D又は2Dスキャナ及び/又はターゲットポジショナを備えてもよい。例えば、一部の実施形態では、スキャナシステムは、ビームが複数の収束位置に迅速に送出されるテレセントリック光学系(図示せず)によってターゲット材料に走査ビームを送出してもよい。走査機構は、連続した又は離散的な走査運動によって他のターゲットロケーションへ再位置決めされる。
【0074】
多焦点ビーム発生器は、プラズマ及び異なる焦点位置における材料修正が互いに干渉しないように、出力パルス間(及び、対応する収束された複数ビーム間)で十分な時間遅延を生成するように構成されてもよい。好ましくは、パルスビーム発生及び複数の深さにおける収束は、材料とビームとの間のいずれの相対運動よりもずっと高速に起こる。従って、ビーム発生は、特定の時間スケール上でほぼ同時とみなされてもよい。処理スループットは、それにより、1つの深さ方向のロケーションに収束された単一パルスビームを使用した複数パスによって得られる処理スループットに比べて増加する。種々の実施形態では、時間遅延は10ns未満で且つ約100ps〜約1nsの範囲にあってよい。しかし、ある実施形態では、より長い遅延が好ましい場合がある。一部の実施形態では、収束スポットは同時に形成されてもよい。
【0075】
透明材料内に複数のスクライブフィーチャを生成する1つの方法は、ビーム伝搬軸に沿う異なるロケーションに高い光強度の複数の領域を生成するように設計されている回折光学要素(DOE)を採用する。
図5aは、こうしたDOEがどのように機能できるか示す。これらの複数の強度領域は、ターゲット材料に向けられると、材料のその後の割断のための複数のスクライブフィーチャを生成する。
【0076】
一部の実施形態では、複数の共線的ビームが生成され、1つの収束対物レンズ(又は、別法として、スキャナシステム)を通して収束される。各ビームのビーム特性(サイズ、ビームウェスト位置、発散性など)は、各ビームの焦点位置が異なるように変わるが、ビームは同じ送出システムを使用して収束される。
【0077】
共線的多焦点ビーム発生器の一部の実施例を
図5b−1〜5c−3に示す。図は、深さ方向に離間したビームウェストを有する複数の収束ビームを生成するのに適した光学サブシステムを概略的に示す。時間の関数としての光学パワーのプロットは構成に対応する時間変位した出力パルスの実施例を示す。これらの実施例では、マルチビーム発生器はパルスレーザから、パルスビーム、例えば、一連のパルスの単一パルスを受信する。パルス選択器、例えば音響光学変調器(図示せず)は、特定の材料処理要件に基づいてパルスを選択的に送信するためにコントローラによって制御されてもよい。複数ビームは、その後多焦点ビーム発生器によって形成され、少なくとも2つのビームは深さ方向に離間した異なるビームウェスト位置を有する。透明材料処理用のレーザ装置はフェムト秒パルス源、例えば、IMRA Americaから入手可能な市販のファイバベース・チャープパルス増幅(FCPA)システム(例えば、FCPAμJewel)を含んでもよい。モデルD−1000はピコ秒以下のパルス、約100nJ〜10μJの範囲の出力エネルギー、100KHz〜5MHzの可変繰返しレート範囲、及び約1Wの平均パワーを提供する。
【0078】
一部の実施形態は、複数のレーザ源、例えば、特定の材料処理用途に適するパルス特性を提供するピコ秒(ps)及び/又はナノ秒(ns)源を含んでもよい。多くの可能性が存在する。
【0079】
一部の実施形態では、2つの深さ方向に離間した収束ビームが生成され、少なくとも1つのビームが材料内に収束される。第2のビームは、材料の表面に、又は、表面の近くに、材料内に、或いは、材料修正に適する任意の深さ方向ロケーションに収束されてもよい。単一入力レーザビームは、以下でさらに説明されるように、最初に、偏光ビームスプリッタを使用して2つのビームに分割される。2つのビーム間の時間遅延は、ビーム経路長を変更することによって調整され得る。例えば、遅延は、さらなる一連のミラーを一方のビーム経路内に挿入して、移動距離、従って、2つのパルス間の時間遅延を増加させることによって調整され得る。fs又は他の短い(例えば、100ps未満の)パルス幅の使用によって、自由空間光学経路長が短くなり、それにより、小型システムが実現され得る。光学経路はまた、時間的重なりが回避されるときはいつでも、パルス間の時間的重なりを回避するのに十分に長くてもよい。パルス幅より大きい時間的分離はビーム間の光学干渉を回避する可能性があり、時間的分離の増加はプラズマ又はレーザ−材料相互作用の他の生成物との相互作用を回避するように構成されてもよい。
【0080】
図5b−1、5b−2、及び5c−1〜5c−3の実施例では、共線的出力ビームを形成するために入力ビームを分離し、結合するための2つの方法が示される。第1の方法は偏光差を使用し、第2の方法は波長差を使用する。他の実施形態は偏光ベース技法と波長ベース技法の組合せを利用して、パルスレーザから入力ビームを空間的且つ/又は時間的に分離し、複数の収束出力ビームを形成する。
【0081】
図5b−1及び5b−2を参照して、偏光ビームスプリッタはパルスレーザ源からのビームを2つの直交偏光ビームに分割する。
図5b−1では、p偏光ビームは収束用対物レンズで発散し、s偏光ビームはコリメートされる。従って、この実施例では、s焦点は、ターゲット材料に対してp焦点より、ビーム発生器に近く、且つ、深くない。
図5b−2では、p偏光ビームは収束用対物レンズで収斂し、s偏光ビームはコリメートされ、p偏光を有するビームは、s偏光ビームに比べてビーム発生器の近くに、且つ、ターゲット材料に対して浅いところに収束される。或いは、光学システムは、s偏光ビームが焦点分離を増すように収斂するか又は発散するように構成され得る。
【0082】
先の実施例では、2つのビームの偏光は直交する。こうした偏光差がレーザ処理に影響を及ぼし得ることが知られている。
図5b−3はこうした偏光敏感性を示す。シリコン基板の機械加工の結果は線形偏光によって強く影響を受ける。一部の実施形態では、円偏光は、偏光に敏感な作用を回避するか又は低減するために利用されてもよい。1/4波長板(図示せず)はビームが結合した後で使用され得る。1/4波長板を出る線形偏光ビームは円偏光出力になるが、180°位相がずれることになる。
【0083】
種々の実施形態では、基本波長は、例えば高調波発生又は他の波長変換技法によって、1つ以上の変換波長に変換されてもよい。異なる波長を有するビームは、その後結合した後、異なる深さに収束される。
【0084】
図5c−1及び5c−2に示す実施例を参照して、波長差は複数の収束ビームを形成するために使用される。これらの実施例では、1つのビームは分割され(split)、その後、再結合する前に異なる波長に変換される。これらの実施例では、近IR波長は周波数倍加されて緑色波長になり、その後、高調波分離器によって再結合される。先の偏光ベースの実施例の場合と同様に、ビームの一方又は両方の発散/収斂は、2つのビームの焦点位置分離を調整するように制御される。
【0085】
図5c−3に示す別の代替は、分割なしの共線的収束ビームを提供する。周波数変換結晶を通した残留IRの透過が利用される。IRビームが第2高調波(second harmonic)(SHG)に変換されると、IRエネルギーが全て変換されるわけではない。同様に、結晶後のビーム伝搬特性は異なる。実施例によれば、
図5c−3に示す時間特性は、あるフェムト秒パルス幅によって生成され得る、分散媒体中の伝搬を示す出力パルス間のわずかな時間変位(一定の比率の縮尺によらない)を示す。2つのビーム(SHG及び残留IR)は共線的機械加工のために使用され得る。この実施例では、SHGビームエネルギーとIRビームエネルギーとの比は、結晶に入るビームの焦点を調整することによって制御され得る。この焦点調整はまた、2つの出て行くビームの相対的な収斂/発散、従って、焦点位置分離を制御することになる。
【0086】
図5d−1〜5d−3は、共線的多焦点ビーム発生器によって材料上に又は材料内に形成される可能性があるフィーチャの実施例を概略的に示す。これらの実施例では、ビームは、図示する表面にほぼ垂直に(例えば、Z軸に沿って)入射し、材料は種々の横方向(X−Y)位置でフィーチャを形成するように併進する。Z軸に沿うフィーチャの相対位置及び長手方向スパン(即ち、Z軸に沿うフィーチャ長さ)は、種々の焦点設定によって、また、2つのビームのそれぞれの入射ビームパワー/フルエンスによって制御され得る。
図5d−1の実施例では、フィーチャを生成する2つのビームは近IRビーム及びSHGビームにそれぞれ相当する。しかし、共線的多焦点ビーム発生器は、さらなるビームが種々の波長及び/又は偏光で生成されるように構成され得る。
【0087】
長手方向スパンを含むフィーチャ形状は種々の方法で制御されてもよい。例えば、システムは、NIRビーム及びSHGビームが共に対物レンズの大部分を充填するように構成され得る。対物レンズは、ビームを収束させるのに使用される非球面レンズ、レンズの群、又は光学要素の他の適した配置構成であってよい。SHGビームとNIRビームの両方で形成されるフィーチャは、その後、局在化され且つ円対称で現れる可能性がある。実施例によれば、
図5d−1はドット形状を有するフィーチャの側面図を示す略図である。ドット形状フィーチャはほとんどのエネルギーが局所的に吸収される厳密焦点を示す。
図5d−1はまた、フィーチャコントラストが各ビーム内のレーザパワーと共にどのように変わるかを概略的に示す。例えば、示す密なシェーディングは、顕微鏡及び透過照明又は照明及び撮像用の任意の他の適した配置構成を用いて観察されると、高いコントラストを示す。この実施例では、内部フィーチャがSHGビーム(上部列)及びNIRビーム(低部列)によって形成され、SHGパワーは右から左へ、例えば、0mWから300mW(右から左)へ増加する。一定スキャン速度、例えば、約50mm/秒が利用されてもよい。
【0088】
比較的大きな長手方向スパンを有する線形状焦点は、種々のスクライビング用途にとって望ましい場合がある。細長いフィーチャ、例えば、深さと幅の大きなアスペクト比を有する長いフィーチャは、ガラスが所定の圧力下にあると、明瞭で平滑な破断を容易にする。一部の実施形態では、一連のフィーチャは、後の分離を容易にする、経路に沿う穿孔として有効に働く可能性があり、クラックはフィーチャによって規定される方向に実質的に沿って伝搬することになる。フィーチャのアスペクト比は約2:1、3:1,5:1、10:1、又はそれより大きくてもよい。
【0089】
ドット形状を得るために先に使用された厳密焦点配置構成と対照的に、SHG望遠鏡は、ビームが対物レンズを過小充填するように調整されてもよい。対物レンズを過小充填するIRビームとSHGビームの両方によって、機械加工されるフィーチャは線形状によって細長くなる可能性がある。
図5d−2は、こうした細長いフィーチャ形状を有するフィーチャの側面図を示す略図であり、顕微鏡又は他の適した撮像及び照明配置構成によって得られた画像を示す。この実施例では、フィーチャはSHGビーム(低部列)及び近IR(上部列)によって形成されてもよく、SHGパワーは0mWから約200mWまで変わる(左から右へ変わり、フィーチャは0mW又は材料修正のためのエネルギー密度閾値未満である場合、存在しない)。フィーチャのサイズはパワーによって制御されてもよい。例えば、フィーチャの寸法は少なくとも実質的な動作範囲にわたってパワーの増加と共に増加する。
【0090】
所与の材料タイプの場合、長手方向スパンデータは、スクライビング又は他の機械加工プロセス用の適したパラメータを確定するのに有用である。
図5d−3に概略的に示す試験パターンは、ビームの焦点位置、パワー、フルエンス、スキャン速度、又は他のパラメータの調整によって生成されてもよい。フィーチャは、単一スキャン、複数スキャン、又は任意の組合せによって形成されてもよい。フィーチャは、局在化されるか又は細長いか、重なるか又は重ならないか、或いは、所与の用途について適するサイズ、形状、横方向間隔又は深さ方向間隔、又はコントラストの任意の適した組合せであってよい。こうした試験パターンは、特定の基板材料についてプロセス限界を規定するプロセス窓を確定するために有用である。
【0091】
NIRとSHGの両方を有する構成の1つの利点は、一方の波長がガラス表面を蒸散させるのに使用されてもよく、一方、他の波長が、クラックが従うための内部穿孔を形成することである。さらに、種々の材料は効率が変動する状態で異なる波長を吸収する。例えば、522nm光は、IRに比べて、より容易に溶融シリカ内で光導波路を生成することがわかった。いずれにしても、対物レンズに対するNIR収束レンズの距離の調整によって、NIRフィーチャはSHGフィーチャに対して上下に移動し得る。パワー制御によって使用されるこの調整は、機械加工されるフィーチャのサイズ及びその相対距離を制御するのに使用され得る。要素間の間隔はフィーチャの深さ方向分離を増加させる可能性があり、種々の実施形態で望ましい。例えば、深さ方向分離を増加させることは、クラックがガラス内でどのように伝搬するかに影響を及ぼす可能性があり、クラックはガラス内部のフィーチャと共に伝搬し、明瞭な破断を容易にする可能性がある。しかし、一部の実施形態では、レンズ分離は、重なるフィーチャを生成するように構成されてもよい。種々の実施形態では、フィーチャ分離を増加させることは、制御されたクラッキングを容易にする可能性がある。
【0092】
実施例によれば、また、
図5d−3に概略的に示すように、光学システムは、フィーチャが、深さ方向に、互いに対して広く離間する、重なる、又は反転するように調整されてもよい。同様に、フィーチャは、表面で、又は、表面の近くで、且つ/又は、表面の下で形成されてもよい。さらに、3つ以上のビームが利用されてもよい。
【0093】
一部の実施形態では、スクライビング又は他の用途の場合、表面アブレーションと内部フィーチャとの間の良好な均衡が有益である。SHGパワーとIRパワーの比はまた、フィーチャに影響を及ぼし得る。SHGパワーが増加するにつれて、SHGフィーチャサイズは増加するが、NIRフィーチャサイズは減少する。
【0094】
複数の波長を利用する実施形態では、種々のパワーの組合せが、倍加用結晶又は他の周波数変換器上へ入射する角度の調整によって得られる。例えば、SHGパワー及びIRパワーは、ビームに対するSHG結晶の回転及びSHG結晶内部のスポットサイズによって調整され得る。約45°の範囲にわたる調整はSHGを最大にし、IRを最小にすることになる。ほぼ等しいパワーが30°で得られる可能性がある。角度は結晶タイプ及び他のパラメータと共に変わる可能性があるが、種々の組合せがスクライブ−破断プロセスのために使用され得る。
【0095】
図5c−1に示すシステムと同様のシステムは最初の実例において使用された。この実施例では、フェムト秒パルスはIMRA FCPA μJewel D−1000によって生成され、受信されたレーザビームは偏光ビームスプリッタ(PBS)によって2つのビームに分割された。2つのビームのパワー比はPBSの前の1/2波長板によって調整可能である。p偏光された光は望遠鏡で拡大され、オプションのレンズはビームに発散を導入した。s偏光された光はLBOによってその2次高調波発生(SHG)に変換された。2つのビームは高調波分離器(IRを透過させ、SHGを反射する)によって結合され、非球面対物レンズによって収束させられた。その屈折率及び発散/収斂の差のために、SHGはNIRビームより短い距離に(浅いところに)収束された。
【0096】
内部線は、3つの設定、即ち、結合された2つのビーム、NIRだけ、及びSHGだけで書き込まれた。FCPAレーザの繰返しレートは500kHzに設定された。レーザパルス繰返しレートはまた、多焦点発生器が、(全てのパルスが処理のために選択された状態で、アクティブな処理期間中に処理する)深さ方向に離間した複数の収束したビームを生成するレートに相当する。SHGパワーは約100mWであり、NIRパワーは約250mWであった(SHGパワーは1つのミラーからの漏れのために低かった)。対物レンズは40X非球面であり、500mmレンズはコリメートされないビームを形成し、総合焦点長を調整するために使用された。ガラスサンプル(ソーダライム)は5mm/秒及び2mm/秒でそれぞれ走査された。書き込み後に、サンプルはスクライブされ、線方向に垂直に破断された。
【0097】
2つの垂直フィーチャの深さ方向分離は、この実施例では約70μmであった。(浅い焦点によって形成される)上部フィーチャの形成は低部フィーチャに影響を及ぼさず、また、種々の実施形態では、深さ方向フィーチャを独立に形成することが望ましい。
【0098】
マークの第2のセットは、深さの間隔が異なる状態で形成された。500mm集束レンズは取除かれた。ほぼコリメートされたNIRビームは、より深くに収束した。マークの2つのセット間の分離は、ほぼ170μmであると測定された。従って、2つのフィーチャは単一スキャンによって異なる深さに生成された。
【0099】
種々の実施形態では、
図5に示され、また、特定の実施例における多焦点ビーム発生器は、単一スキャンだけによって、2つの深さにマーク又は他のフィーチャを生成するために使用可能である。さらに、フィーチャ間の距離は多焦点ビーム発生器内の光学要素を使用して調整され得る。深さ方向のフィーチャの中心と中心の間隔は、特定のシステム構成に応じて数ミクロン〜数百ミクロンの範囲にあってよい。パラメータの種々の他の選択は特定の材料特性及び処理要件に基づいて選択されてもよい。例えば、収束スポットは円又は非円であってよい。スポット寸法は約数ミクロン〜約100μmの範囲であってよく、フルエンスは材料修正のための閾値フルエンスを基準に決定されてもよい。種々の実施形態では、フルエンスは約1J/cm
2〜100J/cm
2の範囲にあってよい。実施例によれば、ガラス及び/又はサファイアのサブ表面スクライビングは、SHG緑色波長の場合、約10〜50J/cm
2の範囲のフルエンスで、また、IRの場合、50〜150J/cm
2で実施されてもよい。種々のガラス及びサファイア材料サンプルの推定される表面アブレーション閾値は1〜5J/cm
2のおよその範囲である。特定の実施例として、種々のガラスのサブ表面修正は約20J/cm
2SHG及び約100J/cm
2IRによって起こる可能性があり、サファイアのサブ表面修正は約40J/cm
2SHG及び約80J/cm
2IRによって起こる可能性がある。これらの材料の表面修正についての閾値は、ガラスの場合、約2.5J/cm
2SHG及び約3J/cm
2IR、また、サファイアの場合、1.5J/cm
2SHG及び2J/cm
2IRであってよい。
【0100】
約1W未満の平均パワー、例えば、100〜500mWのSHG及び300mW〜1WのIRが、多くの材料を処理するのに適する可能性がある。パルス繰返しレートは、パルスエネルギーがスポット内で約100nJ〜100μJの範囲にある状態で約1KHz〜100MHzの範囲にあってよい。
【0101】
種々の実施形態では、ターゲット材料とパルスレーザビームの相対運動は、処理要件に応じて約1mm/秒〜10m/秒の範囲にあってよい。例えば、収束ビーム及び/又は加工品材料は、数mm/秒から100mm/秒までのレートで、約1m/秒のレートで、また、一部の実施形態では、約5〜10m/秒までのビームスキャナを利用して走査されてもよい。一部の実施形態では、材料は、約10mm/秒〜約100mm/秒の範囲の速度で併進してもよい。多くの他の変形が可能である。
【0102】
さらに、
図5のシステムはまた、単独で又は1D又は2Dビームスキャナ及び/又は空間光変調器と組み合わせて使用される、焦点位置及び/又は材料の動きを調整するダイナミックフォーカス機構(図示せず)を含んでもよい。コントローラは、動的調整、較正、及び他の動作のために多焦点発生器、スキャナ、及び光学部品と通信してもよい。例えば、偏光ベースの方法の場合、パルスレーザ出力は1/2波長板及び偏光ビームスプリッタを使用して2つのビームに分割されてもよい。パワー比は1/2波長板の回転と共に変わってもよい。異なる深さにおける複数のパスが使用される場合、パワー分割比は、両方のビームが材料内に収束される場合と比較して、1つのビームが表面に収束されるときには異なる可能性がある。SHG波長変換が使用される場合、SHG変換効率は、パワー比を調整するために変わり得る。少なくとも1つの実施形態では、調整は、SHG温度結晶の制御によって、又は結晶内のビームの焦点位置によって行われてもよい。本明細書に開示される技法はまた、時間的分離によって又は同時に、3つ以上のビームを生成するように拡張されてもよい。処理時間及びビームの数の種々のトレードオフが特定の加工品処理要件に応じて行われてもよい。
【0103】
先に説明したように、ビームの深さ方向の空間的分離が十分である場合、細長いフィーチャの形状は、近傍のフィーチャが形成されるときに実質的に影響を受けなかったことを、本発明者等の実験もまた示した。速度50mm/秒及び速度100mm/秒で得られるフィーチャは、断面図がほとんど同一であったこともまた観測され、一部の用途では、有意な範囲にわたるスキャン速度の増加が結果に大きな影響を及ぼさない可能性があることを示唆している。
【0104】
干渉及びクロストーク効果もまた、実験において十分に低かった。さらに、
図5b〜5fのシステムによって生成される超短パルスは、試験される条件について、時間的重なり及びプラズマ干渉を回避するのに十分な時間遅延を有する。例えば、約10fs〜数十ピコ秒の範囲の幅を有する重ならないパルスは、
図5のシステムの小型版又は同様な配置構成によって生成され得る。各パルスが異なる深さに収束される状態の一連のパルスは、さらなる光学経路及び/又は光源を有する
図5b〜5cの配置構成の拡張型によって3つ以上のフィーチャを形成するために利用されてもよい。同様に、パルスのバーストはレーザシステムによって生成され、所与の処理ロケーションで材料に印加されて、深さ方向に収束されたビーム及び対応するフィーチャが形成され、例えば、パルスレーザ源は1ns〜10nsの範囲の時間分離を有する2つのパルスを生成してもよく、その後、2つのパルスはそれぞれ、バーストモード構成においてではないが、分割され、結合され、収束されて、先に示したフィーチャを形成する。
【0105】
機械加工するための多くの可能性が、存在し、総合レーザパワー、速度、及び材料処理要件に依存する。これらのマルチビーム技法はまた、切断、溶接、接合、マーキング、又は他の機械加工動作、及び速い機械加工速度が有益である他の用途において利用される可能性がある。一部の実施形態では、近IR最大パワーは非常に低いSHGを用いて約1Wである可能性があり、又は、400mWの最大SHGは非常に低いIRによる可能性がある。処理速度は、パワー要件を決定する可能性があるが、少なくとも一部の結果は、フィーチャ形成に実質的に影響を及ぼすことなく、比較的広い範囲にわたって速度が変化する可能性がある(例えば、50mm/秒及び100mm/秒において2:1)ことを示す。異なるフィーチャ分離を有する処理条件はスキャン速度の増加を実現する可能性がある。異なる材料及び異なるサンプル厚さについて、フィーチャ分離及びパワーの組合せが最適な破断のために調整されてもよい。
【0106】
種々の実施形態では、先の実施例に示すように、収束ビームは共線的であり、且つ、ターゲット材料の表面にほぼ垂直である。他の実施形態では、ビームはオフセットし、且つ、非共線的であり、また、併進速度よりずっと速いレートで動作する高速で狭角のビーム偏向器によって形成されてもよい。一部の実施形態では、光学システムは、オフアクシスの入射角によって、深さ方向に離間した収束ビームを送出するように構成されてもよい。材料表面に対して非垂直方向に沿う長さを有するフィーチャが形成されてもよく、また、ベベルカットを含んでもよい。種々のNIR収束レンズは、種々の基板の処理を最適にするために使用され得る部分的に重なるフィーチャを含む、異なるフィーチャ分離を生成するために使用されてもよい。一部の実施形態では、多焦点発生器は波長及び偏光の両方に基づく分割のために構成されてもよく、また、複数の収束ビーム、例えば、4つの深さ方向に離間したビームを形成してもよい。多焦点発生器は、時間的に順序付けられたシリーズで、例えば、材料に対して深い焦点から浅い焦点へ進む収束ビームを生成するように構成されてもよい。
【0107】
一部の実施形態では、特に厚い透明材料を処理する場合、複数のパスが使用されることができ、少なくとも1つのパスは、深い焦点から浅い焦点へのシーケンスで、又は、他の適したシリーズで、複数の深さ方向に離間した収束ビームの生成を含む。1つのこうした実施例は、フラットパネルディスプレイ又は同様な構造の処理を含む。さらに、本明細書で使用される透明材料は、動作波長においてそれほど放射を吸収しない材料であってよく、従って、目に見えて透明な材料に限定されない。
【0108】
マルチスクライブ・アブレーションフィーチャを生成するために使用される種々のビーム収束法及び/又は強度マッピング法の場合、総合ビーム形状に対して楕円成分を生成するために、さらなる光学コンポーネントが導入され得る。長軸が、ビーム走査方向に平行であるように楕円ビームを向き制御することによって、より速い走査速度が達成され得る。(材料を蒸散させる空間的に分離したパルスから生じるドットスクライブフィーチャと対照的に)平滑で且つ連続したスクライブフィーチャの機械加工のために十分なパルスとパルスとの重なりを、楕円ビーム形状が可能にするため、より速い走査速度が達成され得る。増加したパルスの重なり及び速い走査速度は、大きな円ビームスポットによって達成され得るが、これは、同時に、広いスクライブフィーチャ幅をもたらすことになり、望ましくないことが多い。
【0109】
2.超短パルスレーザ溶接
本発明の別の実施形態は、透明材料のレーザ溶接のためのプロセスに関する。
図6に示すように、本実施形態は、高繰返しレートの超短レーザパルスビーム(51)を生成するレーザシステム(50)、十分な収束パワーの収束要素(55)(例えば、レンズ、顕微鏡対物レンズ)、及び、その少なくとも一方がレーザの波長に対して透明である、一緒に接合される少なくとも2つの材料(56)及び(57)の使用を必要とする。さらに、ビーム焦点ポジショニングステージ(58)はレーザビーム(51)の焦点位置を調整するために使用され、自動化された動きステージアセンブリ(59)は加工品(56)及び(57)を収束されたレーザビームに対して移動するために一般に必要とされる。
【0110】
本実施形態において、レーザ溶接される2つの材料(「上部片」(56)及び「底部片」(57))は、それらの表面間にほとんど隙間がないか又は全く隙間がない状態で界面を生成するために、互いに接触して設置される。レンズ(55)は、その後、高強度レーザ放射の焦点領域を生成するためにレーザビームの経路内に位置決めされる。2つの透明材料(56)及び(57)は、ビーム焦点領域が上部片(56)及び底部片(57)の界面にまたがるように、収束されたレーザビームに対して位置決めされる。十分なレーザ強度によって、材料界面の溶接が起きることになる。ビーム焦点領域に対して透明材料(56)及び(57)を移動させ、同時に材料(56)及び(57)の界面をビーム焦点領域に非常に接近して保つことによって、所定の長さのレーザ溶接が達成され得る。この実施形態の特に特異な用途において、収束されたレーザビームが上部(透明)片(56)を通って移動し、上部片(56)と底部片(57)の界面近くに焦点領域を形成するように、材料(56)及び(57)が位置決めされ、2つの材料の溶接がもたらされ得る。
【0111】
他のレーザ溶接プロセスと違って、本発明のプロセスは線形吸収ではなく主に非線形吸収を利用することによって溶接する。このため、この溶接プロセスには特異な特性が存在する。非線形吸収は強度依存性が強いため、プロセスはレーザビームの焦点に制限され得る。そのため、吸収は、焦点の周りの透明材料内の深いところだけで起きるようにさせられ得る。超短パルスによる典型的に非線形な吸収は、プラズマ形成及び(もしあれば)非常にわずかの熱蓄積をもたらし、従って、超高速レーザによるアブレーションは、非常に小さな熱影響部(heat affected zone)(HAZ)をもたらす。しかし、強度を、非線形吸収が起きるには十分高いがアブレーションが起きないように十分低く保つことによって多少の熱が蓄積される。レーザの繰返しレートが十分に増加すると、熱は材料中に十分蓄積されて溶融をもたらす。
【0112】
レーザシステム(50)は、100kHzと5MHzとの間のパルス繰返しレートで、約200〜900fsの範囲のパルス継続時間及び約1045nmの波長を有するパルスのほぼコリメートされたレーザビーム(51)を放出する。第1のビーム操向ミラー(52)は、レーザビームをパワー調整アセンブリ(53)に向け、アセンブリは、溶接プロセスに使用されるパルスエネルギーを調整するのに使用される。こうした減衰を達成するための特定の方法は、当業者によく知られている。第2のビーム操向ミラー(54)は、ビームをビーム収束対物レンズ(55)に向ける。ビーム収束対物レンズ(55)は、レーザパルスを収束させて、ビーム収束対物レンズ(55)からほぼ距離(F)で最大値を有する、プロセス用の適切なフルエンス(エネルギー/単位面積)を達成する。ビーム焦点ポジショニングステージ(58)は、この最大フルエンス領域がターゲット材料(56)及び(57)の界面に位置するようにビーム収束対物レンズ(55)を併進させる。XYステージアッセンブリ(59)は、収束ビームに対してターゲット材料(56)及び(57)を移動させて、ターゲット材料(56)及び(57)の界面に、直線状溶接フィーチャ又は円状溶接フィーチャのアレイを生成する能力を提供する。
【0113】
図7は、小さな隙間(60)で分離された2つの片の間で溶接が所望される本発明の別の実施形態を示す。第1に、レーザビーム(51)は低部片(57)の表面の下に収束される。パルスエネルギー及び収束条件の適切な制御によって、サンプルがビーム焦点に対して併進するため(又は、ビームがターゲットに対して移動するため)、隆起したリッジ(61)が形成される。この隆起したリッジ(61)は上部ターゲットと底部ターゲットとの間の隙間をブリッジする。隆起したリッジ(61)の上部と上部片(56)との間の界面の近くの高さにビーム焦点が上げられた状態でのレーザ2回目のパスは溶接(62)を形成する。
【0114】
3.可視/不可視レーザマーク
図1aに示す同じシステムが、透明材料内にサブ表面マークを作るために使用され、印加されるレーザビームは透明材料基板の表面の下に収束される。
【0115】
図8は、ガラスなどの透明材料(64)に書き込まれる矢印パターン(63)の平面図である。光源(65)は、パターンを照明するために矢印マーク(63)に光を送出する光導波路(66)に光を注入する。光導波路の出力開口数は所望のソースを効率的に照明するように適切に設計されるべきである。複数の光導波路が、パターンの異なる領域を照明するために使用され得る。異なる照明光源のタイミングを制御することは、異なる装飾的で且つシグナリング的効果を生成し得る。或いは、パターンは、光導波路を使用するのではなく、適切に収束された光源から直接照明され得る。
【0116】
図9(a)は全てが照明光の方向に垂直である平行線でできた矢印マーク(63)の平面図の拡大図を示す。これらの平行線は、材料修正の領域を生成するためにターゲット基板内にレーザ光を厳密に収束させることによって生成される。
図9(b)は矢印マーク(63)の側面図を示す。矢印マークは、異なる深さのマークの群からなる。これらのマークは、光導波路(66)によって送出される光を観察者(67)の方に散乱させる。輝度は、照明光の強度、個々のマークのサイズ、及びマークの密度で制御され得る。
【0117】
図10は、パターンが「ピクセル」(68)からなり、各ピクセルが、基板材料を修正するためにレーザ光を厳密に収束させることによって形成された、異なる深さの平行線の群(69)でできている概念の図を示す。異なる深さにマークを設置することは、エッジ照明されたときの「シャドウイング」を回避するのに役立つ。光源に近いマークは光源から遠くのマークにエッジ照明が当たることを部分的に妨害することになる。
【0118】
先の
図8、9a、及び9bに示す実施例では、矢印マークが示された。
図10は、異なる深さの平行線の群から形成されたピクセルの実施例を提供する。
【0119】
透明材料処理の実施形態は、照明及び観察のための適した条件によって検出可能な多くのタイプのパターンを形成するために使用されてもよい。さらなる実施例及び構成は、多層アイコンディスプレイ、非エッジ照明構成、多層構成、投影スクリーンディスプレイ、又はグレースケールアイコンを含む。
【0120】
基板材料は、ガラスに限定されるのではなく、プラスチック、ポリマー、又は書き込み用レーザの波長及び照明光源の波長に対して透明な任意の適した材料を含んでもよい。一部の例示的な構成及びパターンは次の通りである。
【0121】
可視性及びマーク特性−一般的な説明
フィーチャ、例えば、マークの可視性トレードオフは、一般に、
照明されるとはっきり見える(オン可視性)
照明されないと見るのが難しい(ほとんど見えない)(オフ可視性)
として規定されてもよい。
【0122】
いくつかの因子が可視性に影響を及ぼす可能性がある。因子はマークサイズ及びアスペクト比、線密度、並びに観察角度を含むが、それに限定されない。
【0123】
図11を参照して、マークアスペクト比(例えば、マークの深さと幅の比)の影響が明らかである。マークは広くなればなるほど、エッジ照明されないときによく見える。マークが深くなればなるほど、エッジ照明されると、より多くの光が散乱される。マークは、その後よく見えるようになる。
【0124】
アイコンは、通常、所望の形状を充填するラスター走査線を備える。これらの線は、一般に、最適な散乱のためのエッジ照明方向に垂直であってよい。アイコンは相対的な輝度を制御し、且つ/又は、材料の異なるエッジから異なるセクションを照明するために、異なる方向に向いた線からなり得る。
【0125】
線密度が高くなればなるほど、照明されたときにマークが見易くなる。光を散乱するために、より多くの表面積が利用可能である。しかし、増加した密度はまた、照明されないときの可視性を増加させる。例えば、
図8〜10の矢印マーク及びピクセルは線密度によって影響を受ける可能性がある。
【0126】
図11にも示す観察角度は、一般に、特に複数のアイコン層について又は深い(長い)マークについて可視性に影響を及ぼす。
【0127】
種々の実施形態では、アイコンのマイクロマーク断面は、書き込みレーザ伝搬の方向に沿って高い深さと幅の比、例えば、10:1を有する可能性がある。マイクロマイクロのこの非対称形状は、観察方向に対するアイコンの輝度依存性をもたらす。最小のオフ可視性は、通常、観察方向に平行なマイクロマークによって生成される。
【0128】
図12a及び12bは観察方向が基板表面に垂直でないエッジ照明配置構成の側面図を示す。
図12aでは、マイクロマーク軸は基板表面に垂直であり、作製するのが容易である。エッジ照明方向に垂直なマイクロマーク断面積は最大になるが、観察方向に垂直なマイクロマーク断面積は最小にならず、オフ可視性に影響を及ぼすことになる。
【0129】
図12bでは、マイクロマーク軸は観察方向に平行であり、観察される断面積及びオフ可視性を最小にする。しかし、エッジ照明方向に垂直なマイクロマーク断面積は最大にならず、オフ可視性に影響を及ぼす。
【0130】
マークは異なる深さで作られ得る。マーク又は他のフィーチャはまた、基板の表面上か又は表面内に形成されてもよい。異なる照明構成と組み合わされて、種々の効果が生成され得る。
【0131】
・反射性マーク
図8〜12及び14は透明材料内のサブ表面マークの実施例を示す。サブ表面マークは、マークを形成する局在化したミクロクラックから散乱する光のために見えた。マークは、観察方向に垂直なマークの断面積と比較して、エッジ照明に垂直な方向に実質的に大きな断面積を有する。そのため、マークはエッジ照明によってより明瞭に見え、エッジ照明がない場合、ほとんど見えない。
【0132】
反射性マークも生成されたが、エッジ照明が有ってもなくても、反射性マークは検出するのが難しかった。低い検出感度は、反射性マークを
図8〜12及び14に示す光散乱性マークと識別する。照明角度及び観察角度の種々の組合せによるいくつかの総括的な実験後に、マークが照明光を散乱させるのではなく、反射することを本発明者等は発見した。強いスペキュラー反射は、光散乱マークのように、エッジ照明によってマークがなぜ見えなかったかを説明した。照明光の入射角度は最適な観察角度にほぼ等しかった。可視性の差は、以下で述べる
図13の実施例に示すように、観察方向以外のときと比較して最適な観察方向に沿って観察されると著しい。
【0133】
反射性マークの断面の走査型電子顕微鏡画像は「平面(planar)」クラックが形成され、拡張し且つ連続した反射性領域が生成されたことを示唆した。実施例によれば、クラックの平面は、書き込みレーザビームの軸及び併進方向によって規定され得る。形態は、散乱性マーク内の局在化したミクロクラックと基本的に異なる。
【0134】
任意の特定の理論に賛同することなく、平面クラック形成は、照明角度及び観察角度のいくつかの組合せにおいてマークの高い可視性を生成する反射光についての説明、実験の最初は認識されていない意外な実験結果を提供する。エッジ照明は低いコントラストを生成し、その後の実験は、非エッジ照明が高い可視性を提供することを示した。光導波路に似ている、平滑な溶融線であるように光学顕微鏡下で見える材料修正は、生成されることが多いが、マークの可視性に関連するようには見えない。
【0135】
図13aは、マークの集合体が、所望のパターン例えば2次元アレイを生成する透明材料内の一連のサブ表面マークを概略的に示す。この実施例では、マークは材料表面に垂直である。しかし、マークは材料に関して他の角度で形成され得る。但し、書き込みレーザの入射角度が透明材料の屈折率の関数である臨界角より小さい場合に限る。右側から入ってくる照明光が
図13aに示される。経路(a)に沿って、照明はサブ表面反射性マークによって反射され、入射角度は反射角度にほぼ等しい。パターンを構成する全てのマークによって反射される光は、
図13aに示すロケーションの観察者にパターンを見えるようにする。他の観察位置では、マークされたパターンは、十分な光が反射しないため明瞭には見えない。照明光のある部分は反射性マークに当たらず、材料を通って真っ直ぐに進み、経路(b)及び透過光に相当する。
【0136】
図13b〜13dは反射性マークの照明及び観察を示す実施例である。ガラス内に形成された反射性マークはフラッシュライトで照明され、種々の角度で観察された。
図13bは、ガラス片の表面の下に書き込まれた正方形のパターンのアレイを示し、観察位置は特定の照明角度について最適である。フラッシュライトはマークをガラスの背面から照明するために使用され、観察位置はガラスの前部にある。デジタルカメラが画像を取込んだ。
図13cは同じ照明角度を使用するが、最適観察位置から離れた位置で観察された同じマークのアレイを示す。検出された放射は、迷走光によって生じる低レベル背景を表し、コントラストは、照明の増強された制御によってさらに改善される可能性がある。
図13dは、前の最適な観察位置から観察されたときのものであるが、フラッシュライトの照明がない状態のマークを示す。
【0137】
反射性マスクの用途は(1)製品識別、(2)明瞭で平滑な表面が必要とされる透明材料内のグラデーション及び参照マーク、(3)(警告が必要とされないときに)妨げられない視界(view)が通常所望されるが、状況によっては、可視性が高い警告が必要とされる窓内の切換え可能な警告インジケータ、(4)合法製品(例えば、高価な時計、宝石、高品質レンズ、及び透明コンポーネントを有する他の製品)を偽造品から識別するためのものであるが、通常は見えない偽造防止パターンを含む。
【0138】
・多層アイコンディスプレイ
図14は、2つのアイコンが単一基板に書き込まれる多層アイコンディスプレイの実例を示す。
図14aの緑色矢印は基板の右にある緑色光源によってエッジ照明されている。
図14bの赤色ハザードサインは基板の上部にある赤色光源によってエッジ照明されている。
図14cは両方の光源がオフであるときの基板を示す。両方のアイコンはガラス基板の同じ領域内にあるように見える。個々のアイコンは各光源を切換えることによって選択的に照明され得る。その理由は、レーザ書き込みマークがガラス内の異なる深さにあり、2つの光源が、線焦点の軸がガラス基板の平面に平行である円柱レンズを使用して線収束されるからである。
【0139】
図15は、複数の(この場合、5つの)基板層を有するアイコンの実施例を示す。アレイ内のそれぞれの個々の要素は、照明光源の厳密収束がない状態で他の要素から別々に照明され得る。要素「a」は層1内にあり、光「A」によって照明され得る。要素「a」は別個の層内にあるため、光「A」からの照明は他の要素が照明されないように全反射によって閉じ込められる。同様に、要素「d」は層3内にあり、光「D」によって照明されるだけであり、要素「h」は層5内にあり、光「H」によって照明されるだけである。基板層に対して十分に異なる屈折率を有する微小空気層又は材料の薄層は視覚的に透明でありながら各層を分離する。
【0140】
要素「b」及び「c」は層2内にあり、それぞれ、光「B」及び「C」によって照明される。これらの2つの層は、たとえ同じ層内にあっても、1つの光源によって照明されるだけであるように、十分な空間によって分離される。同様に、要素「f」及び要素「g」は層4内にあり、それぞれ、光「F」及び光「G」によって照明される。この実施例は、英数字ディスプレイ又はデジタルカウンタの1つの文字がどのように設計され得るかを示す。他の多要素ディスプレイも可能である。
【0141】
図15aは、微小マークが、基板の表面において又は表面の近くで作られる配置構成を示す。透明皮膜が、その後表面に塗布される。エッジ照明光は全反射によってこの第2の層内に誘導され、微小マークから散乱する。基板は透明であってもよく、又は、透明でなくてもよい。基板は、透明である場合、全反射にとって十分な透明皮膜からの屈折率差を有するべきである。
【0142】
一部の実施形態では、薄いシートの積重体が
図16に示すように利用されてもよい。エッジ照明光が個々のシートの厚さより大きい場合、光を隣接するシートに結合することもなく、光を特定のシートに別々に結合させることは難しいことになる。これは、要素のアレイ内の1つだけの要素又は1つの基板層の標的型照明を妨げることになる。光源間のある程度のオフセットは異なる光源間の分離を改善し、所望のアレイ要素だけの照明を可能にすることになる。
図16に示す実施例の場合、5つの基板層(1〜5)が存在する。5つの光源(A〜E)、各層について1つの光源がオフセットされ、基板に関してある角度になる。角度は、全反射が光を各層内に含むようなものである。
【0143】
・非エッジ照明
一部の実施形態では、アイコンは非エッジロケーションから照明される。
図17は、基板が、照明及び観察方向に対して直交しないアイコンの非エッジ照明を示す図である。しかし、書き込み方向は基板に対して直交した。
【0144】
図18は、基板が、書き込み、照明、及び/又は観察方向に対して直交しないアイコンの非エッジ照明を示す図である。この配置構成は、基板材料平面が主観察方向に垂直でないときに特に有用である可能性があり、従って、微小マークは材料表面に垂直でない。基板の1つ以上の表面に塗布された反射防止皮膜は迷走反射を低減する。
【0145】
微小マークが材料表面に垂直である場合、作製は、より容易で且つ迅速である可能性がある。しかし、可視性のトレードオフは、この実施形態に関して最適とはいえない可能性がある。
【0146】
・投影スクリーン概念
先の実施例では、グラフィカルパターンはターゲット材料に書き込まれる。これは、後でパターンが変更されるか又は再プログラムされることができないため、ディスプレイの柔軟性を制限する。微小マークの大きく均一なフィールドもまた、スクリーンとして使用されることができ、グラフィクスは、迅速走査ミラー又はLEDのアレイなどの異なる方法を使用して投影される。
【0147】
先の非エッジ照明を示すのに使用された
図17及び18は投影スクリーン概念を示すためにも使用され得る。図は、観察方向及びパターン投影方向が基板表面に垂直でない2つの配置構成の側面図を示す。先の段落に記載したように、照明光は固定であり、基板内のマークパターンを照明するだけである。投影スクリーン概念の場合、照明光がスクリーン上に所望のパターンを投影するために、高速作動システムによって操向されるか、又は、所望のパターンを生成するように設計された光のパターンがスクリーン上に投影される。
【0148】
図17では、微小マークは、容易な作製のために、基板表面に垂直に書き込まれた。しかし、照明光方向に垂直な微小マーク断面は、より良いオン可視性のために最大にならず、観察方向に平行な微小マーク断面は最適なオフ可視性のために最小にならない。
【0149】
図18では、微小マーク軸は観察方向に平行であり、オフ可視性を最小にする。そして、照明光源方向は微小マークに垂直であり、オン可視性を最大にする。
【0150】
許容可能なコントラストは用途依存性がある可能性がある。10:1と100:1との間のコントラストは、通常、観察及び検出システムのタイプに応じて許容可能である。例えば、30:1の範囲は、ディスプレイを用いて観察するのに十分に適切である可能性がある。グレースケール分解能が高い撮像システムが利用される場合、約30:1〜1000:1のコントラスト比が好ましい場合がある。
【0151】
・グレースケールアイコン
種々の実施形態では、アイコンの処理条件は可視性トレードオフについて最適化されてもよい。より速い併進速度又はより低いパルスエネルギーなどの異なる処理条件を使用して、少なく散乱するマークを作ることが可能である。これらのパラメータを制御することによって、「より白い(whiter)」領域が少ない光を散乱し、「より黒い(blacker)」領域がより多くの光を散乱する、又は、その逆である「グレースケール(grayscale)」アイコンを生成することが可能である。
【0152】
例えば、レーザパラメータの組合せは、少なくとも10:1又は30:1から、好ましくは約100:1〜1000:1までの散乱の範囲を生成する可能性がある。観察方向内のコントラストは、一般に、角度分布によって影響を受けることになる。
【0153】
その動作機構を理解することは本発明の実施形態の実施にとって必要ではないが、本発明者等は、2つの基本的な現象、即ち、散乱コントラストと散乱角度を組み合わせることを考えた。微細マークによって散乱コントラストを制御することは、基準C
on≫C
offを満たし、ここで、C
on及びC
offは、それぞれ、人工的な照明が有る場合とない場合の散乱係数である。係数は、さらに、
【数1】
及び
【数2】
によって規定され、式中、sは散乱構造の散乱断面であり、ρはマークの構造の密度であり、κは背景の輝度を示す。Nは人工照明と背景照明との輝度の比である。散乱構造のサイズは、一般に、可視光の波長の約1/10〜1/100の範囲内である。
【0154】
いくつかの実施形態では、デバイス及びプロセスは、散乱角度の制御のために提供されてもよい。背景照明に対する照明角度は、例えば、主背景照明に垂直な光の照明であると考えられてもよい。こうした配置構成は、観察方向に対して垂直に照明される光を用いるアイコンタイプのディスプレイに適用可能である。マークの幾何学的構造及びマークの配置構成もまた考慮されてもよい。(可視光の1/10〜1/1000の範囲の)散乱サイズ制御はミー(Mie)散乱のための1つの基本的な態様である。観測可能角度を拡張し、散乱の角度分布をよりよく利用するために、ガラス表面において全反射を調節することが、別の制御の考えとして使用され得る。
【0155】
種々の実施形態では、パルスエネルギー、併進速度、繰返しレートの適した範囲は基板内での曝露を変動させるために使用される。曝露の増加は、大きな微小マークを生成し、それにより、散乱光が、観察角度に対して増加した角度にわたって放出される。指向性反射が観察角度内で大きい場合、フィーチャは明るく見えることになる。同じ量の光が広い角度に散乱する場合、フィーチャは暗く見えることになる。
【0156】
・代替の材料
一部の実施形態では、ガラス以外の材料の表面及び/又はバルクが修正されてもよい。1つ以上のレーザビームが、照明及び検出のための適した配置構成によって検出可能なフィーチャを形成する可能性がある。
【0157】
ガラスに関する本発明者等の研究中に発見された、いくつかの制限は、比較的遅い処理速度及び比較的高いパルスエネルギーについての要件を含んだ。例えば、200psパルス、50kHz繰返しレート、及び13μJパルスエネルギーがほぼ最適であった。典型的なスポットサイズの場合、約1mm/秒の速度が典型的であった。
【0158】
他の制限は、マーク深さに対するミクロクラック特性の依存性に関連するある程度の性能損失を含み、一方、深さに対する実質的な独立性が一般に好ましい。
【0159】
いくつかの用途についてのなお別の制限は、ガラスの脆弱性及び飛散に対する感受性、一部の環境及び用途にとって有害である可能性がある状況を含む。従って、ガラス処理の用途は束縛される、即ち、制限される可能性がある。一部の用途では、最終製品の要求される強度及び最終製品が使用される環境における安全性に基づいて、基板の特別なハンドリング及び管理が必要とされる可能性がある。1つのオプションは、ガラス基板を2つのポリカーボネート片の間に配設することである。ポリカーボネートはアセンブリに強度を付加し、アセンブリが万一飛散する場合、ガラスを収容することになる。ポリカーボネート層はまた、ガラスの表面汚染を防止し得る。表面汚染は、照明されると、散乱中心を生成し、アイコンのオン可視性コントラストの減少をもたらし得る。
【0160】
一部の実施形態では、ポリカーボネート材料又は他のポリマーが利用されてもよい。例えば、プラスチック、透明ポリマー、及び同様な材料は、いくつかの望ましい特性を有する。いくつかの望ましい材料特性は、減少した重量(ガラスから作られた同様な部品に対して約4分の1)、種々の形状を形成するための基板の曲げを可能にする柔軟性、一定のエッジ照明によって輝度を増加する能力を提供する減少した厚さ、及び飛散に対する感受性が低減された材料強度の増加を含む。
【0161】
以下の章で開示される実験結果は、処理速度の著しい改善及びパルスエネルギーの同時の減少を実証した。
【0162】
ポリカーボネート又は同様な材料の処理は、ガラス処理と比較してパルスエネルギーが実質的に減少した超短パルス継続時間を使用して実施されてもよい。パルス継続時間は、一般に、約10ps未満であってよい。一部の実施形態では、パルス継続時間は、約100fs〜約1psの範囲内、例えば約500fsであってよい。パルスエネルギーは、約100nJ〜1μJの範囲内、例えば約0.5μJであってよい。
【0163】
高い繰返しレート、例えば、少なくとも100kHzは、熱蓄積を誘導するための大幅なパルス重なりを有する高速処理の場合に好ましい。上記パラメータは数ミクロン〜数十ミクロンの典型的な範囲のスポットサイズ及び数十ミクロン/秒〜数十メートル/秒の併進速度にわたって適用可能であってよい。総合パルスエネルギー及びスポットサイズは、収束したスポットロケーションにおけるフルエンスを決定する。上記の例示的な範囲は、スポットサイズ又は他のパラメータ(例えば、レーザ波長)の変動について適切にスケーリングされてもよい。
【0164】
ガラス処理についての一部の実施形態では、パルス幅は10fsから1nsまで、10fs〜500ps、又は100fs〜200psのおよその範囲にあってよい。パルスエネルギーは数十マイクロジュールまで、例えば、約20μJ〜50μJであってよい。いくつかの実施形態では、パルス圧縮器が省略されてもよいが、好ましいファイバベース・チャープパルス増幅システムの他のコンポーネントが利用されてもよい。
【0165】
IMRA Americaから入手可能なFCPA μJewel D−400及びD−1000は、100kHzと5MHzとの間で可変の繰返しレートを有し、約10μJまでの総合エネルギーを有する超短パルス幅を提供する。一部の実施形態では、レーザシステムは、伸張、増幅、及び圧縮のために「全ファイバ(all−fiber)」システムを含んでもよい。
【0166】
切換え可能アイコンの用途は、ヘルメットシールド、スキューバマスク、外科医の眼鏡、安全顔面シールド、飛行機キャノピー、眼鏡、バックミラー、サンルーフ、及びヘッドライトレンズにおいて見出される可能性がある。マークはミラーに書き込まれることができ、これらのマークは周囲光の下では通常見ることが難しい(オフ可視性)が、エッジ照明されると明瞭に識別可能である(オン可視性)。適切なミラーは、一方の表面上に反射性皮膜を有する、ガラス又はポリカーボネートなどの透明基板を使用するミラーである。レーザ処理は、透明媒体内でのフィーチャの形成の場合に好ましい。しかし、他のプロセスが、単独で又はレーザ処理と共に使用されてもよい。例えば、エッチング、リソグラフィ法、化学気相堆積、及びパルスレーザ堆積が利用されてもよい。一部の実施形態では、レーザ処理と非レーザ処理の組合せが実施されてもよい。
【0167】
4.多焦点機械加工
スクライビングに加えて、
図5に示す多焦点機械加工が、切断、溶接、接合、マーキング、又は他の機械加工動作に利用されてもよい。
【0168】
種々の材料は、非可視波長において透明であってもよく、又は、ほぼ透明であってもよい。例えば、シリコンは、約1〜1.1μmにおいて透過性が高く、近IR最大透過率は約1.2μmにある。従って、多焦点微細機械加工は、種々の標準的なレーザ波長を用いて、又は、場合によっては、従来的でない波長で実施されてもよい。処理がバンドギャップの近くで実施される用途では、吸収係数及び温度に伴うその変動が考慮される必要があり得る。例えば、フィーチャは約1.0〜1.1μm、1.2μm、1.3μm、1.55μmなどの考えられる波長でシリコン内に形成されてもよい。一部の実施形態では、従来的でない波長は、標準的な波長を偏移させる波長によって得られてもよい。
【0169】
超短パルスは、ターゲット領域に当たる収束されたスポットの外側の過剰な加熱及び関連する2次的な損傷を回避する可能性がある。超短パルスによる多焦点微細機械加工は半導体基板をスクライブし、ダイシングするのに有利である可能性がある。例えば、複数の細長いフィーチャは、材料内の内部線の1回パス形成によって得られるよりも、ダイの明瞭な分離を実現する可能性がある。
【0170】
実験的に実証された結果
1.超短パルスレーザスクライビング
図19に示すように、レーザビームの1回のパスによって、20X非球面収束対物レンズ(焦点長8mm)を使用して、一対のスクライブ線(表面溝(70)及びサブ表面スクライブフィーチャ(71))が100μm厚サファイアウェハ内に同時に機械加工された。割段小面は良好な品質を示している。走査速度は40mm/秒であった(最適化されていない)。
【0171】
同じレーザパルスエネルギー及び繰返しレートを使用し、且つ、同一の処理条件(周囲の大気環境など)下での表面スクライブ線のみの場合、材料の良好な割段をもたらす最も速いスクライブ速度は約20mm/秒であった。
【0172】
2.超短パルスレーザ溶接
多数のレーザパルスが、溶接される材料の特定の領域内に吸収された後、加熱、溶融、及び材料の混合が起こり、冷却すると別個の材料が一緒に融着される。材料を一緒に溶接するのに必要なパルス数は、他のプロセス変数(レーザエネルギー、パルス繰返しレート、集光幾何学形状など)並びに材料の物理特性に依存する。例えば、高熱伝導率と高融点の組合せを有する材料は、溶接が起きるための照射容積内で十分な熱の蓄積を達成するために、より高いパルス繰返しレート及びより低い併進速度を必要とする。
【0173】
A.ポリカーボネートの溶接
200kHzのパルス繰返しレートで動作し、且つ、1045nmの波長を有する高繰返しレートのフェムト秒パルスレーザ源による実験は2つの光学的に透明な材料のレーザ接合をもたらした。特に、約2μJレーザパルスは、100mm焦点長レンズによって、1/4インチ厚さの透明ポリカーボネート片の上部表面を通り、同じサイズの透明ポリカーボネート片の上部表面と底部表面の界面に収束された。ポリカーボネート片は材料の界面近くへのビーム焦点領域の位置決めを維持しながら、直線的に且つレーザ伝搬方向に垂直な平面内で併進した。2つの片はレーザ照射界面で一緒に融着され、両者を破断させて、互いに自由にするためにかなりの力が必要とされた。
【0174】
B.溶融シリカの溶接
200μm厚溶融シリカ板が、40X非球面レンズと5MHzのレーザ繰返しレートを使用して、1mm厚溶融シリカ板に溶接された。レーザの1/e
2ビーム径は約3.6mmであり、非球面レンズ焦点長は4.5mmであり、約0.37の動作NA(開口数)をもたらした。
図20は、溶融シリカ内の溶接フィーチャを示し、画像は2つのシルカ板を別々に破断する前と後の両方で取得された。最初の画像(a)は平滑な溶融ガラス領域を示す無処置の溶接フィーチャを示し、次の画像(b)及び(c)は溶接が割れた後の2つのガラス表面を示し、割れたガラスの小面を示す。
【0175】
溶接速度は0.1〜1.0mm/秒の範囲にあるが、5mm/秒より速い速度が可能であり、最高速度はパルス繰返しレートの増加と共に増加し得る。このプロセスの公称フルエンスの範囲は5〜15J/cm
2であり、公称パルス継続時間の範囲は10〜1000fsである。これらのフルエンス及びパルス継続時間の範囲内で、公称パルス繰返しレートの範囲は1〜50MHzである。精密なプロセス最適化によって、これらの範囲は、フルエンス、パルス継続時間、及び繰返しレートについて、1〜100J/cm
2、1fs〜500ps、及び100kHz〜100MHzにそれぞれ拡張される可能性がある。高繰返しレートは、溶融シリカの溶融の開始のための十分な熱の蓄積のために好ましい。
【0176】
同じ繰返しレートにおける、より高いエネルギーパルスの利用可能性に関して、必要とされるフルエンスを有する大きな焦点容積を生成するためのゆるい収束が可能である。この溶接焦点容積のサイズ及び形状は、溶接される領域に基づいて調節され得る。
【0177】
3.可視/不可視レーザマーク
図21は、側面から緑色光源によって照明された矢印マークを有するガラスサンプルを示す。ここでは、矢印パターンが明瞭に見える。
図8〜10の図は矢印パターンの詳細を示し、照明光源に垂直な、異なる深さの線(この場合、緑色)はレーザ光を厳密収束させることによって生成された。こうしたマークを形成するために使用されるレーザパラメータ及び走査速度は以下の表に見出され得る。
【0178】
図22は、照明光源オフの状態での同じガラスサンプルを示す。明らかに、矢印パターンが見えない。
【0179】
図23は、
図21の矢印マークを規定するために使用される個々のピクセルの顕微鏡写真を示す。
【0180】
図24(a)はガラス内部の装飾パターンの写真を示し、
図24(b)は個々のマークの顕微鏡画像を示す。
【0181】
図24(b)のマークはサイズが約200μmで且つ非常に粗く、中心から放射状に延びる別個のクラックからなる。
図23のピクセルは一連の平行線で構成され、各線はほぼ10μm幅で且つ250μm長である。線間隔は50μmである。
図23のフィーチャと24(b)のフィーチャとの間のサイズの差及び平滑さの差は、
図21及び22の矢印は見えるために側面照明を必要とするが、
図24(a)のガラス彫刻がほとんどの照明条件で明瞭に見える理由を示している。生成されるフィーチャのサイズ及び平滑さは、レーザのパルスエネルギー、パルス継続時間、及び波長、並びに、ターゲットを通るビームの併進速度によって制御される。最適パラメータは特定のターゲット材料に依存する。
図23のピクセルの可視性は、ピクセルの各線の幅及び長さ、及びピクセル内の線密度、並びに平滑さを制御することによって制御され得る。
【0182】
そのため、透明材料の表面下にレーザ修正フィーチャの可視パターンを生成する1つの方法は、述べたように前記レーザのパラメータを制御することによって、線の粗さを制御しながら、厳密収束した超高速パルスレーザを使用して、材料内の異なる深さに複数の線を最初に形成することによって進む。線は、その後、線にほぼ垂直に伝搬するか又は向けられる光を使用して照明される。こうして形成されたパターンは、垂直方向から照明されると肉眼に明瞭に見えるが、照明されないと、即ち、
図22の場合と同様に通常の周囲光条件下では、肉眼には実質的に見えない。照明は、収束された光源を線上に向けることによって、又は、パターンを効率的に照明するために選択された出力開口数を有する光導波路を介して光を線に向けることによって行われる。
【0183】
前記線のうちの異なる線、例えば、異なるピクセルの線は互いに対して規定された角度にあり、複数の光源がそれぞれ、前記線の部分集合にほぼ垂直な光を向けるように、複数の光源を配列することによって、別々に又は同時に照明され得る。
【0184】
結果はまた、ポリカーボネートサンプルに関して得られ、ガラスと比較された。
図25a及び25bは、ガラスサンプルから得られた断面(左の図a)及びポリカーボネートサンプルから得られた断面(右の図b)をそれぞれ示す。
図24a及び24bはナノ秒パルスによって作られたマークを示し、
図24bは、
図24aのパターンの一部分の拡大図である。画像は明視野照明を有する光学顕微鏡を使用して取得された。ポリカーボネート内のマークは匹敵する深さを有する狭い幅を有し、よりよい可視性トレードオフを示唆している。
【0185】
図25a及び25bのマークを、
図24a及び24bに示す長パルスレーザによって作られた装飾彫刻マークと比較することは有益である。長パルスレーザマークは、ずっと大きく且つ球対称であり、全ての方向からほとんどの照明条件においてマークを明瞭に見えるようにさせる。
【0186】
ポリカーボネートのなお別の利点はレーザ処理パラメータに関連する。
【0187】
ポリカーボネートによって、処理速度の増加が、以下の表に示すようにパルスエネルギーの10分の1以上の減少をもたらした。ポリマーについての材料修正閾値は通常、ガラスについてより低い。興味深い観察結果は、材料修正プロセスが、ガラスとポリカーボネートで異なるように見えることである。ガラスによって、ミクロクラックはミクロ爆発によって生じる可能性が高い。レーザ焦点が表面の近くにあるとき、割れが表面に伝搬し得る。ポリカーボネートによって、割れは、ミクロ爆発プロセスであるように見えないが、より軽い従ってより低いパルスエネルギーが必要とされる。ビームが表面の近くに収束されると、表面修正は存在しない。
【0189】
より短いパルスが少ない散乱をもたらした500fsパルスを使用したガラスに関するデータから判定されるように、ポリカーボネートのために使用される低いフルエンスが、必ずしもより短いパルスに関連しない。約10psより短い超短パルスを使用したガラスの材料修正プロセスが屈折率の変化をもたらし、マイクロクラックに比較してそれほど多くの光を散乱しないことが可能である。いずれにしても、0.5μJへのパルスエネルギーの減少及び対応する速度の増加は、かなりの改善及び適用性を提供する。
【0190】
図13a〜13dに示すマークと同様の反射性マークは、顕微鏡スライドガラス、窓ガラス、及び耐化学性ホウケイ酸ガラスのサンプルで形成された。0.3と0.
5との間の開口数でパルスが表面下に収束された状態で、約300fs〜約25psの範囲のパルス継続時間を有する超短パルスを使用して、反射性マークが形成される可能性があることを本発明者等の試験結果が示した。レーザパルスは50kHz及び100kHzの繰返しレートで生成された。実験における平均パワーは最大1Wであり、レーザ捜査速度は最高200mm/秒であった。
【0191】
反射性マスクを形成するために使用されるレーザパラメータはいくつかの点で散乱性マークパラメータと異なる。比較的短いパルス継続時間、例えば、約300fs〜25psの範囲のパルス継続時間が、反射性マスクを形成するために使用された。ずっと長い、例えば、約200psのパルスは、同じ処理材料、例えば、窓ガラス内にいくつかの散乱マークを作るのに適する。さらに、より広い範囲の速度及びパワーレベルが反射性マスクを作るのに適していることを実験が示した。逆に、低い繰返しレートは減少した、例えば、最高1mm/秒のスキャン速度を用い、ずっと高い平均パワーでガラス内に散乱性マークを生成するのに最適であった。しかし、低いパワー、短いパルスは、プラスチックサンプル内に散乱性マークを作るのに十分であった。
【0192】
4.0 多焦点機械加工の実施例
実験は、
図5cに示した波長結合プロセスを使用して実施され、また、種々の深さにおけるフィーチャ形成を試験し、飛散を回避するようにパラメータを調整する予備的な単一ビーム実験を含んだ。ソーダライムガラス、強化ガラス、及びサファイアサンプルが処理された。1mm厚を有するソーダライムガラス(例えば、顕微鏡スライド)は、その低いレーザ修正閾値及び低コストのために最初に試験された。強化ガラス及びサファイアは広範な工業的使用及びレーザ機械加工に関する潜在的な挑戦のために、かなり重要である。
【0193】
強化ガラスは、引っかき傷耐性、曲げ耐性、及び凹凸のために、多くの工業用途で使用されている。ガラスは、中心に近い材料が引張り応力下にありながら、表面に近い材料が圧縮応力下にあるような、熱的、化学的、又は他のプロセスを通して鍛えられる可能性がある。圧縮応力下にある表面に近い材料は引っかき傷耐性が高い。
【0194】
化学プロセスは、大きなカリウム原子をアルミノシリケートガラス構造内に拡散させることによって、ガラスを鍛えるために使用される。表面強度及び磨耗/引っかき傷耐性を増加させるために、カバーガラスが表面上で化学的に鍛えられてもよい。こうした鍛えるプロセスは、ガラス表面上に圧縮を、また、他のところに張力を導入し、このことは機械加工にとって挑戦的であり得る。
【0195】
超短機械加工の結果が以下に示される。ガラスの表面下に収束された超短パルスビームは、所望の破断又は切断方向に沿って線又は他のフィーチャを生成し得る。応力分布がより対称であるガラスの中心において、且つ、引張り応力下で、切断を始動することによって、表面における切断と比較して、破断アクションのよりよい制御が得られる可能性がある。約10ps未満のパルス幅が適しており、ピコ秒以下のパルスが好ましい。一部の実施形態では、数十ピコ秒のパルス幅が利用されてもよい。
【0196】
複数パスは、強化ガラスを切断するために使用されることができ、初期のパス(複数可)は割れ又は破断を生成しないが、ある程度の材料修正を生成する。レーザのその後のパスは、初期のレーザ修正経路に沿ってクラックを始動させ、伝搬させるために使用され得る。しかし、速度は制限される。
【0197】
化学強化ガラスは、応力分布が乱れる場合、飛散するのが容易であることを一部の実験が示唆した。おそらく、化学強化ガラスの厚さにわたる応力分布は熱強化ガラスと異なる。しかし、多焦点微細機械加工は、表面スクライビングだけに比べて、実際に平滑な破断表面を生成した。
【0198】
A.強化ガラス
強化ガラスをスクライブし、破断する能力が、2波長、複数ビーム処理を含む超短レーザパルスによって試験された。カバーガラス板700μmがこれらの実験で利用された。市販のある強化ガラスは、携帯型電子機器のために、例えば、化学強化表面を有するタッチスクリーンとして使用するために特に設計され、700μm〜2mmの厚さを有する。
【0199】
・種々の深さにおけるスクライビング−複数スキャン
考えられる飛散を回避するために、レーザ曝露線は、サンプルの前部表面の下、約240μmで最初に試験され、次に、表面の上、約120μmまで徐々に上げられた。FCPA μJewel D−1000レーザシステムは、以下のパラメータで、強化ガラスをスクライブするために使用された。
レーザ:IMRA FCPA μJewel D−1000
波長:523nmのSHG
パルス繰返しレート:100kHz
収束レンズ:SHG用にコーティングされた16X非球面
レーザパワー:400mW SHG
スキャン速度:20mm/秒
焦点深さ:−240μm(内部)から+120μm(表面の上)
【0200】
図26−aは上記レーザパラメータによって得られた一連の画像を示し、一部の結果はガラスの上部表面及び底部表面を基準とする焦点位置に対する依存性を示す。第1の列は、サンプル前部表面に対して−240μm(ガラスの内部)から+120μm(ガラスの外側)まで調整されたレーザ焦点による、レーザ曝露線の平面画像に相当する。第2の列は、サンプルがひっくり返され、レーザ焦点がサンプル背部表面に対して−240μm(ガラスの内部)から+80μm(ガラスの外側)まで調整されたときの、同じ条件によるレーザ機械加工線を示す。この実験では、前部表面の近くの又は前部表面上のスクライブ線は背部表面の近くの又は背部表面上のスクライブ線と異なる特性を有する。
図4の実施例を再び参照すると、(例えば、「ダンベル」に似た)軸方向に変動する径を有する凹形状を有する外側輪郭を含む、ビームウェスト近くの例示的なビーム焦点容積一定強度輪郭が示される。異なるレーザパラメータ及び収束条件で異なる材料を処理すると、フルエンスがアブレーション閾値を超えるビーム内の位置は必ずしも焦点にあるのではなく、外側輪郭位置にあり得る。従って、使用される焦点容積の部分に基づいて、異なる修正フィーチャを生成するために異なる深さにビーム焦点を位置決めすることが可能であり、機械加工されるフィーチャの深さに対する改善された制御をもたらす。この実施例では、ビーム焦点が前部表面の近くか又は前部表面上にあったとき、クラックがアブレーション線の近くで認められた。背面側の場合、こうしたクラックは同じ範囲の機械加工条件について起こらなかった。このことは強化ガラス厚にわたる応力分布が対称でないことを示唆する。
【0201】
強化ガラスサンプルはわずかに湾曲していた。前部表面は凹状であり、背部表面は凸状である。これは、ガラスローリングプロセスに導入される応力又はガラスの前部表面と背部表面上の鍛えの程度の不均等によってもたらされる可能性がある。いずれにしても、深さ走査式曝露は、フェムト秒レーザ表面又は内部機械加工すると、強化ガラスが飛散しないことを立証した。意外にも、クラックは、焦点が前部表面の下か又は前部表面の上にあるときに現れるだけであるが、前部表面に収束されると現れない。任意の特定の理論に賛同することなく、ビームが前部表面の下に収束されると、ある程度の材料修正が起こり、その材料修正が引張り力を逃し、クラックを生成することが可能である。その後、表面が蒸散される。+80μmの場合は異なる。種々のパワーによるアブレーション実験は、表面上の焦点がこうしたクラックを決して生成しないことを示した。
【0202】
・スクライブ及び破断
ガラスは、その後、スクライブ及び破断プロセスについて試験された。最初に、20mm/秒のスキャン速度、400mWのSHGパワー、及び−30μmのレーザ焦点によって形成された単一表面アブレーション線が使用された。
図26b−1はクラックのトレース(左)及び表面粗さのトレース(右)に関してガラスの破断小面を示す。
【0203】
クラックは異なる深さにおける複数スキャンによって低減される。
図26b−2は4回のレーザパス(それぞれ、Z=−30μmにおける表面アブレーション及び−700μm、−450μm、−300μmにおける内部マーク)が使用されたときの破断小面を示す。内部修正のトレースは、これらの画像内で検出された。
【0204】
・共線的2波長スクライブ及び破断
共線的2色スクライブもまた、強化ガラスについて試験された。広い範囲のパワーの組合せ(SHG及びIR)が利用された。ガラスは、以下のパラメータによって、明瞭に破断した。
レーザ:IMRA FCPA μJewel D−1000
パルス繰返しレート:100kHz
波長:SHG及びIR
パワー:150mW SHG及び460mW IR
焦点:IRは表面、SHGは、表面の下、約200μm
スキャン速度:20mm/秒
【0205】
図26cは、5X及び50X顕微鏡対物レンズによってそれぞれ取得された、共線的2重プロセス後の明瞭な破断を示す。上部表面損傷は最小であり、クラックの徴候を全く観測することができない(右画像)。予期しない複数の水平線が破断の底部の近くに見える(左画像)が、処理を制限しなかった。明瞭な破断が得られた。
【0206】
基板内に複数のフィーチャを生成し、明瞭な分離が達成されるように強化ガラスを処理するために、共線的超短パルスが、多焦点ビーム発生器と共に使用されてもよいことを結果が示している。さらに、パスの数が減少し、総合速度が上がることもある。
【0207】
B.サファイア
実験はまた、サファイアに関して実施された。2つの別個の基板フィーチャが生成された。しかし、スクライブ線に沿う有効な破断は得られなかった。この試験ウェハの処理は、基板フィーチャのサイズに対して約0.5mmのウェハ厚によって制限される可能性がある。こうした大きな厚さは、生成されるスクライブ修正のサイズについて過剰である可能性がある。
図26dの各深さにおける2つの線は25μmだけ分離されている。異なる深さにおけるさらなる共線的スクライブパスは許容可能な割断結果を提供することが予想される。
【0208】
種々の実施形態及び特徴
こうして、本発明者等は、超短レーザパルスによる透明材料処理のための方法及びシステム並びにそれらから作られる製品を開示した。プロセスは、切断、スクライビング、溶接、マーキング、及び/又は接合を含むが、それに限定されない。空間的及び時間的処理の種々の組合せ、例えば、順次処理又は並列処理が利用されてもよい。
【0209】
少なくとも1つの実施形態は透明材料をスクライブする方法を含む。方法は、材料内の表面溝と材料のバルク内の少なくとも1つの修正領域を同時に生成するために、超短レーザパルスの収束ビームの単一スキャンを使用することを含む。
【0210】
少なくとも1つの実施形態は透明材料をスクライブする方法を含む。その方法は、材料のバルク内に複数の修正領域を同時に生成するために、超短レーザパルスの収束ビームの単一スキャンを使用することを含む。
【0211】
少なくとも1つの実施形態は、超短レーザパルスの収束ビームの単一スキャンによって、透明材料の深さ方向の2つ以上の地点でスクライブされた透明材料を生成する。
【0212】
少なくとも1つの実施形態は透明材料を溶接する方法を含む。その方法は、材料間の界面の近くに超短レーザパルスビームを収束させること、及び、界面における材料の局在化した溶融を誘導するのに十分な、繰返しレート及び1つ以上のフルエンスゾーンで超短レーザパルスを生成することを含む。
【0213】
少なくとも1つの実施形態は透明材料を溶接する方法を含む。その方法は、材料間の界面の近くに超短レーザパルスビームを向け、それにより、ビームの少なくとも1つの高強度領域に近接してエネルギーの非線形吸収を誘導し、材料の局在化した溶融を引き起こすのに十分な反復パルスによってその領域に熱を蓄積することを含む。
【0214】
少なくとも1つの実施形態は溶接だけによってブリッジすることができない隙間を充填するために、溶接される対向する2つの表面間の界面に隆起したリッジを生成する方法を含む。その方法は、リッジを持ち上げるために、リッジがその上に形成される対向する表面の一方又は両方の下に超短レーザパルスを収束させること、及び、その後、持ち上がったリッジと対向する表面又はリッジをレーザ溶接することを含む。
【0215】
少なくとも1つの実施形態は透明材料を溶接する光学システムを含む。そのシステムは、フェムト秒からピコ秒範囲の超短レーザパルスビームを生成するレーザシステム、及び、材料間の界面の近くにビームを収束させる収束要素を含み、レーザシステムはあるパルス繰返しレートを有し、パルスは界面において材料の局在化した溶融を誘導するのに累積的に十分である高フルエンスゾーンを有する。
【0216】
少なくとも1つの実施形態は材料を溶接する光学システムを含む。そのシステムは、超短レーザパルスビームを生成するレーザシステム、及び、材料間の界面の近くにビームを収束させる収束要素を含む。ビームは界面において、材料を蒸散させるのに十分な強度を有するが、レーザシステムは界面において材料の局在化した溶融を累積的に誘導するのに十分に高いパルス繰返しレートを有する。材料のうちの少なくとも1つはレーザシステムの波長に対して透明である。
【0217】
少なくとも1つの実施形態は透明材料を溶接する方法を含む。その方法は、材料間の界面の近くに超短レーザパルスビームを向けること、及び、任意選択で、1つ以上のゾーン内でだけ材料の溶融を誘導するために、材料の本体内での、1つ以上の高強度エリアの形成及び空間的位置を制御することを含む。
【0218】
少なくとも1つの実施形態は透明材料の表面の下にレーザ修正フィーチャのパターンを生成する方法を含む。その方法は、厳密収束超短レーザパルスを使用して、材料内に異なる深さで複数の線を形成すること、レーザのパラメータを制御することによって線の粗さを制御すること、及び、線にほぼ垂直に伝搬する光を使用して線を照明することを含む。
【0219】
種々の実施形態では、パターンは垂直から照明されると肉眼に明瞭に見え、周囲光下では、実質的に肉眼に見えない。
【0220】
照明するステップは、パターンを効率的に照明するために選択された出力開口数を有する光導波路を介して、線上に収束光源を向けることによって、又は、線に光を向けることによって行われる。
【0221】
線のうちの異なる線が、互いに対して規定された角度にあり、照明するステップが、複数の発生源から線に光を向けることによって実施され、複数の発生源の各発生源が線の部分集合にほぼ垂直な方向に光を向ける。
【0222】
超短パルスのパルス幅は約1ns未満であり、透明材料は透明ポリマーを含む。
【0223】
厳密収束超短パルス内の総合エネルギーは約20μJ未満である。
【0224】
制御することは、散乱コントラスト及び散乱角の少なくとも一方を調整することを備える。
【0225】
透明材料はポリカーボネートを含み、厳密収束超短パルスは約1ps未満のパルス幅及び1μJ未満のパルスエネルギーを有する。
【0226】
相対的な動きは超短パルスと前記材料との間で生成され、方法は、パターンの断面積が照射方向に沿うのに比べて観察方向に沿って小さくなるように、前記レーザ及び前記動きのパラメータを制御することによって、前記線の深さと幅のアスペクト比を制御することを含む。
【0227】
少なくとも1つの実施形態は、個々の線の幅、長さ、及び平滑さ、並びにマーキングを構成する線の密度を制御することによって、透明材料内のレーザ誘導サブ表面マーキングの可視性を制御する方法を含む。
【0228】
少なくとも1つの実施形態は、レーザによって形成されたサブ表面マーキングのパターンを有する材料を生成し、マーキングは、材料内の異なる深さの線から形成され、線は、線にほぼ垂直に向けられた光源によって照明されるときだけ、肉眼に実質的に見える。
【0229】
少なくとも1つの実施形態は、制御された照射に応答して検出可能な空間的パターンを生成するデバイスを含む。デバイスは、内部に少なくとも1つのフィーチャを形成されている実質的に透明な媒体を含み、少なくとも1つのフィーチャは、深さ、幅、及び、照射方向に沿って入射する制御された照射に応答して、検出方向に沿って検出可能な放射を生成するための物理的特性を有し、検出可能な放射は空間的パターンを表す。少なくとも光学特性は、好ましくない放射に応答して、検出方向に沿う検出を実質的に制限する。
【0230】
種々の実施形態では、デバイスはパターンに相当する幾何学的形状を充填するフィーチャを備える。
【0231】
デバイスは、1つ以上の検出可能な空間的パターンが、深さ方向に制御された照射に応答して生成され、それにより、切換え可能な空間的パターンが設けられるように、媒体内の異なる深さで形成されたフィーチャを備える。
【0232】
デバイスは透明材料の複数の層を備え、深さ方向に制御された照射は層内の全反射によって閉じ込められて、層内の又は層に近接するフィーチャだけを照射する。
【0233】
制御された照射の少なくとも一部分は、少なくとも第2の方向に沿って入射し、フィーチャは、複数の向きで形成される。
【0234】
デバイスは、制御された照射を生成するために、少なくとも1つの発生源からの放射を受け取り、放射を第1の方向に沿って誘導するように構成されるデバイス内に少なくとも1つの領域を含む。
【0236】
デバイスは、柔軟性がある特性及び実質的に飛散防止性がある特性の少なくとも一方を有する材料を含む。
【0237】
媒体は、2つ以上の異なる透明材料を含み、少なくとも1つの材料は、柔軟性がある特性及び実質的に飛散防止性がある特性の少なくとも一方を有する。
【0238】
デバイスの少なくとも一部分がポリマーを備える。
【0239】
デバイスの少なくとも一部分がポリカーボネートを備える。
【0240】
少なくとも1つのフィーチャは1以上の収束超短レーザパルスを使用して形成される。
【0241】
フィーチャはアレイとして形成され、アレイは、空間的パターンを投影するように、選択的に照射される。
【0242】
フィーチャはアレイを形成し、アレイの要素からの検出可能な放射は照射又は物理的特性の少なくとも一方の結果として変動し、パターンはグレースケールパターンに相当する。
【0243】
少なくとも1つの実施形態は、透明材料の表面下にレーザ修正されたフィーチャパターンを生成するシステムを含む。システムは約10fs〜約500psの範囲のパルス幅を有するパルスを生成するレーザサブシステムを含む。ポジショニングシステムは、材料に対してパルスを位置決めするために含まれ、光学システムは、パルスを収束させ、材料内に少なくとも1つのフィーチャを形成するために含まれる。少なくとも1つのフィーチャは、深さ、幅、及び、第1の照射方向に沿って入射する制御された照射に応答して、検出方向に沿って検出可能な放射を生成するための物理的特性を有する。
【0244】
種々の実施形態では、パルスは約100fs〜200psの範囲のパルス幅を有し、レーザ源はファイバベース・チャープパルス増幅器システムを備える。
【0245】
少なくとも1つの実施形態は、制御された照射に応答して検出可能な空間的パターンを生成するデバイス、及び、少なくとも1つの検出可能な空間的パターンを形成するために、デバイスを選択的に照射する照明器を有するシステムを含む。
【0246】
種々の実施形態では、選択的に照射する手段は複数の放射源を含む。
【0247】
照射する手段は細長いビームを生成し、細長いビームを第1の照射方向に沿って投影するための非球面光学コンポーネントを備える。
【0248】
システムは検出方向に沿って配設された検出システムを含む。
【0249】
照射する手段はデバイスの少なくとも一部分を選択的に照射する走査機構を含む。
【0250】
少なくとも1つの実施形態は透明材料の修正のためのレーザベースシステムを含む。システムは、パルスレーザ出力を生成するパルスレーザ装置、及び、出力を受け取る多焦点ビーム発生器を含む。発生器は出力を使用して複数の収束ビームを形成するように構成され、各収束ビームはビームウェストを有し、ビームウェストは材料に対して深さ方向に離間し、複数の収束ビームの少なくとも1つのビームウェストは材料内にあり、且つ、材料の修正をもたらす。動きシステムは材料と収束ビームとの間に相対的な動きを生成するために含まれる。コントローラはパルスレーザ装置及び動きシステムに結合され、複数の収束ビームが相対的な動きの間に形成されるようにシステムを制御する。
【0251】
種々の実施形態では、多焦点ビーム発生器は波長変換器を備え、収束ビームは複数の波長を備える。
【0252】
第1の波長はIR波長であり、第2の波長は材料の吸収端より長い可視波長又は近UV波長である。
【0253】
多焦点ビーム発生器は偏光要素を備え、収束ビームは複数の偏光を備える。
偏光は円偏光を備える。
【0254】
深さ方向に離間したビームウェストは、収束ビームの伝搬方向に沿う共線的ロケーションに形成される。
【0255】
複数の収束ビームはある照射時間間隔中に形成され、時間間隔中の相対的な動きは収束ビームのほぼビームウェスト径未満の相対的変位を生成する。深さ方向に離間したビームウェストは、表面に垂直方向にほぼ沿って、且つ、表面にほぼ垂直な平面の一部分に相当する局在化領域内に形成される。
【0256】
収束ビームは約10ns未満の照射時間間隔中に形成され、相対的な動きは約1mm/秒〜約10m/秒の範囲の速度を備える。
【0257】
少なくとも1つの生成されたパルス出力は約10fs〜100psの範囲のパルス幅を有するレーザパルスを備える。
【0258】
多焦点ビーム発生器は、複数の光学経路に沿ってビームを伝搬させるように構成されたビームスプリッタ及びビームコンバイナ、並びに、ビームの焦点を制御し、深さ方向に離間したビームウェストを形成するように構成された収束要素を備える。
【0259】
システムはビーム偏向器を含み、材料とビーム偏向器との間に配設されたスキャンレンズを備える。
【0260】
パルスレーザ装置は約10Khz〜100Mhzの範囲の繰返しレートのレーザ出力パルスを生成し、多焦点ビーム発生器はその繰返しレートで複数の収束ビームを形成するように構成される。
【0261】
多焦点ビーム発生器は、少なくとも2つの深さ方向に離間した収束ビーム位置を形成する回折光学要素(DOE)を含む。
【0262】
少なくとも1つの実施形態は材料を修正するためのレーザベース方法を含む。方法は、パルスレーザビームを生成すること、複数の収束パルスビームを形成することであって、各ビームがビームウェストを有し、ビームウェストが材料に対して深さ方向に離間し、ビームウェストの少なくとも1つが材料内にあり、且つ、少なくとも1つのサブ表面フィーチャを生成する材料内の材料修正をもたらす、形成することを含む。方法は、材料と収束ビームとの間の相対的な動きを生成することを含む。方法は、複数の収束パルスビームが、動きの間に形成されるように、形成すること及び動かすことを制御することを含む。
【0263】
種々の実施形態では、少なくとも1つのサブ表面フィーチャが形成され、フィーチャが細長い形状及び円形状の少なくとも一方を備える。
【0264】
フィーチャが、機械的分離プロセス中に材料の明瞭な分離をもたらす深さ方向間隔によって形成される。
【0266】
材料はサファイア又は半導体を備え、収束パルスビームは材料が高い透過性がある波長を備える。
【0267】
材料の表面部分とサブ表面部分の両方を修正するフィーチャが形成される。
【0268】
少なくとも1つの収束パルスビームは約100ps未満のパルス幅を有するパルスを備える。
【0269】
少なくとも1つの収束パルスビームは材料内に約1J/cm
2〜150J/cm
2の範囲のフルエンスを生成する。
【0270】
少なくとも1つの実施形態は材料修正のためのレーザベース方法を含む。方法は、共線的方向に沿って複数のレーザビームを収束させ、送出させ、それにより、パルスと材料との間の制御された相対的な動きの間に、材料に対して深さ方向に空間的配置構成を有する複数のフィーチャを形成することを含む。
【0271】
種々の実施形態では、空間的配置構成は、分離プロセス中に材料の明瞭な分離を提供するように事前選択される。
【0272】
少なくとも1つの実施形態は、レーザベース材料修正の、上記方法によって作られる製品であって、製品の材料部分を得るために、材料を分離するさらなるステップを備える、製品を含む。
【0273】
少なくとも1つの実施形態は材料の修正のためのレーザベースシステムを含む。システムは、パルスレーザビームを生成するパルスレーザ装置、及び、材料に対して深さ方向に離間した複数の収束パルスビームを形成する手段であって、複数の収束パルスビームの少なくとも1つが、材料内に形成されたビームウェストを有し、且つ、少なくとも1つのサブ表面フィーチャを生成する材料内の材料修正をもたらす、形成する手段を含む。システムはまた、材料と収束ビームとの間の相対的な動きを生成する手段を含む。コントローラは、複数の収束パルスビームが動きの間に形成されるように形成すること及び動かすことを制御するために含まれる。
【0274】
種々の実施形態では、複数のビームが同時に形成される。
【0275】
コントローラは、多焦点ビーム発生器、コントローラ及び多焦点ビーム発生器に結合される。コントローラは、偏光、波長、フルエンス、及びビームウェスト位置の少なくとも1つを制御するように構成される。
【0276】
ビームウェストはビームウェスト径より小さい深さ方向分離によって形成される。
【0277】
材料に対して深さ方向に沿って空間的なオーバラップを有する複数のサブ表面フィーチャが形成される。
【0278】
収束させ、送出することは、フィーチャを同時に形成する。
【0279】
少なくとも1つの実施形態では、複数の深さ方向に収束されたビームは、スクライビング及び破断プロセスで利用される。
【0280】
少なくとも1つの実施形態では、複数の深さ方向に収束されたビームは、透明材料作製のためのプロセスで利用される。
【0281】
少なくとも1つの実施形態では、複数の深さ方向に収束されたビームは、溶接又は接合プロセスで使用される。
【0282】
少なくとも1つの実施形態では、多焦点ビーム発生器は、波長変換器及び偏光要素を備え、異なる位置又は深さに収束された複数波長と複数偏光の両方を備える収束ビームを形成するように構成される。
【0283】
少なくとも1つの実施形態は透明材料の表面下にレーザ修正されたフィーチャのパターンを生成する方法を含む。方法は、厳密収束超短レーザパルスを使用して材料内に異なる深さで複数の線を形成すること、及び、少なくとも1つの線が、強いスペキュラー反射成分を有する拡張した平面領域を備えるように、レーザパラメータを制御することを含む。
【0284】
種々の実施形態では、約300fs〜25psの範囲のパルス幅が反射性マスクを形成するために使用される。
【0285】
従って、本発明は、レーザ、例えば、超短パルスレーザによって形成されたサブ表面マーキングのパターンを有する透明材料を提供し、マーキングは材料内の異なる深さの線から形成され、線は、線にほぼ垂直に向けられた光源によって照明されるときだけ、肉眼に実質的に見える。
【0286】
従って、いくつかの実施形態だけが特に述べられたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、実施形態に対して多数の変更が行われてもよいことが理解される。さらに、頭字語は本仕様及び特許請求項の可読性を高めるために使用されるに過ぎない。これらの頭字語は使用される用語の一般性を減じることを意図されず、特許請求項の範囲を本明細書に述べる実施形態に制限すると解釈されるべきでないことが留意されるべきである。