特許第6034295号(P6034295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034295コーティングシステム、その使用、およびそのようなコーティングシステムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034295
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】コーティングシステム、その使用、およびそのようなコーティングシステムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20161121BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B05D7/00 G
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-538678(P2013-538678)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公表番号】特表2013-544182(P2013-544182A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】NL2011050729
(87)【国際公開番号】WO2012074380
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年9月3日
(31)【優先権主張番号】2005685
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513116841
【氏名又は名称】フィスケル・ベヘール・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】VISKER BEHEER B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィスケル,アントニウス・コルネリス・ヘンドリクス・マリア
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−255138(JP,A)
【文献】 特開昭58−015534(JP,A)
【文献】 特開平11−140777(JP,A)
【文献】 特開2000−024589(JP,A)
【文献】 特開2006−143856(JP,A)
【文献】 特開2001−303477(JP,A)
【文献】 特開平05−263397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
C08J 5/04−5/10、5/24
B29B 11/16、15/08−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層を基板に直接適用するためのコーティングシステムであって、硬化ポリエステルおよび硬化ポリアクリレートの材料に基づくコーティング層を備え、前記コーティング層の第1の側の前記コーティング層の前記材料に、織り繊維または不織繊維を含む持物が組込まれる、コーティングシステム。
【請求項2】
前記硬化ポリエステルおよび/または硬化ポリアクリレートは、電子放射によって硬化される、請求項1に記載のコーティングシステム。
【請求項3】
前記支持物にバインダを含浸させる、請求項1または2に記載のコーティングシステム。
【請求項4】
前記コーティング層は、前記コーティング層の第2の側に取外し可能な保護層を備え、前記保護層は、前記コーティング層と向かい合う側にレリーフを備える、請求項1から3のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項5】
前記コーティング層の前記第1の側に接着剤層が塗布される、請求項1から4のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項6】
前記コーティング層の前記第1の側は、前記コーティング層から取外すことができるキャリア層も備える、請求項1から5のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項7】
前記コーティング層は染料または顔料を含む、請求項1から6のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項8】
前記コーティング層は不織繊維または織り繊維を含む、請求項1から7のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項9】
前記コーティング層は弾性増大添加剤を含む、請求項1から8のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項10】
前記コーティング層の表面側にスペーサが設けられる、請求項1から9のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項11】
前記コーティング層は、0.01〜0.1mmの厚みを有する、請求項1から10のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項12】
帯状片の形態の、請求項1から11のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項13】
巻きの形態の、請求項1から12のいずれかに記載のコーティングシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のコーティングシステムの使用であって、
前記コーティング層を基板に直接適用するステップを備える、使用。
【請求項15】
前記コーティング層を前記基板に適用する前に、接着剤層を前記基板に塗布するステップをさらに備える、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から13のいずれかに記載のコーティングシステムの製造方法であって、
織り繊維または不織繊維を含む持物を設けるステップと、
ポリエステルおよび/またはポリアクリレートからなるプレポリマーを前記支持物に塗布するステップと
記プレポリマーを硬化させるステップとを備える、方法。
【請求項17】
前記プレポリマーを塗布するステップが実行される前に、前記支持物にバインダを含浸させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プレポリマーの上に保護層を配置するステップをさらに備え
前記保護層は、前記プレポリマーに塗布される側にレリーフを備える、請求項16または17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記プレポリマーは電子放射によって硬化される、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項16から19のいずれかに記載の方法によって得られるコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層を基板に直接塗布することに関し、特にラッカー層または塗料層を塗布することに関する。本発明はさらに、この目的に適したコーティングシステム、およびそのようなコーティングシステムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラッカー層または塗料層を表面に(本願では、より一般的にそれぞれコーティング層および基板と呼ぶ)塗布する目的で、液体塗料およびラッカーなどのある程度粘性のある液体原料が一般に用いられる。しかし、これらの原料には相当数の欠点がある。
【0003】
まず第一に、ほとんどの塗料およびラッカーでは有機溶剤が使用される。これらの溶剤は、このような塗料およびラッカーを扱う仕事をしている人々の健康に害を及ぼし、そのため特別な予防措置が必要である。また、有機溶剤の使用は環境にも有害である。
【0004】
これらの液体原料の別の欠点は、コーティング層の塗布が労力を要するものであるということである。さらに、塗布される層の厚みを正確に判断することがここでは困難である。
【0005】
また、表面に塗布された層が硬化するまでに比較的長い時間がかかり、最適な結果を得るために必要な時間は約3日である。このため、木材加工業界では、木製物体をコーティングするまたは木製物体にラッカーを塗るステップはしばしば省略され、エンドユーザに委ねられる。このようにして、製造プロセスにおいて貴重な時間を節約する。
【0006】
乾燥プロセスの直近のタイムロスに加えて、関連するいくつかの欠点についても言及することができる。
【0007】
基板に新たに塗布されたコーティング層は粘性があるため、表面に合った形状になることができるが、木材の場合、表面はわずかに多孔質であり得る。木材の孔の位置では、塗布されたコーティング層に気泡(また、「クレータ」)が生じる恐れがある。これらの気泡は、コーティング層の保護効果を弱める。
【0008】
新たに塗布されたコーティング層の乾燥プロセスの別の公知の欠点は、湿潤状態ではコーティング層が粉塵、砂、雨または露水分などのあらゆる種類の汚染物質を周囲空気から吸収する恐れがあるということである。したがって、優れた最終結果を得るために、乾燥プロセス中はコーティング層を保護しなければならない。
【0009】
乾燥プロセスのさらなる欠点は、コーティング層に人が触れるのが早過ぎると、または、コーティング層が塗布された製品が完成するのが早過ぎると、コーティング層に染みが残る恐れがあるということである。
【0010】
このように、多くの条件が、硬化したラッカー層または塗料層から得られる最終結果の品質に影響を及ぼす。その結果、最終結果は大きく変動し、これは多くの場合において望ましくない。さらに、重大な欠点は、効率の観点から、木材加工業界は多くの場合、コーティングされていないままの木材製品を製造せざるを得ないということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の欠点のうちの1つ以上を減らすまたは無くすことである。また、本発明の目的は、時間のかかるさらなるフォローアップ処理なしにコーティング層を基板に直接塗布できるコーティングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の局面によれば、本発明はこの目的で、コーティング層を基板に直接塗布するためのコーティングシステムであって、硬化ポリエステルおよび硬化ポリアクリレートの材料に基づくコーティング層を備え、コーティング層の第1の側のコーティング層の材料に支持織物が組込まれる、コーティングシステムを含む。
【0013】
硬化ポリアクリレートおよびポリエステルは、完全に反応した材料、すなわち十分に重合した材料を意味するものと理解される。したがって、この材料に基づくコーティング層は、ばらばらにすることができない1つの完全体を形成するという重要な特徴を有する。硬化は、考えられるいかなる態様でも、例えば空気乾燥によって、IR放射によって、またはUV光下で行なうことができる。代替的に、温度が上昇すると融解して層を形成し、次いで硬化してコーティング層を形成するポリマーが、層として粉末の形態で(「粉末ラッカー」)塗布されてもよい。このように、硬化したコーティング層は、安定した一体構造を形成し、実際に、その後さらなる乾燥またはさらなる処理が不要な、所期の基板に塗布するだけでよい、すぐに使用できるコーティング層である。
【0014】
このように、本発明に係るコーティングシステムでは、コーティング層を基板に直接塗布することができ、さらなる溶剤がコーティング層から放出されることはなく、コーティング層の乾燥および硬化のさらなる仕上げ処理は不要である。
【0015】
驚くべきことに、硬化ポリエステルおよびポリアクリレートはコーティング層として十分な多孔性を有しており、コーティング層の塗布中に基板とコーティング層との間に封入され得る空気および水分のための通路を提供することがさらに分かった。この多孔性は、(例えば硬化可能なポリマーに基づく)接着剤層が基板とコーティング層との間に塗布され、当該接着剤層が空気中で依然として乾いた状態でなければならない場合に、特に有利である。基板へのコーティング層の塗布のさらなる詳細については、コーティングシステムの使用に関する本発明の第2の局面の文脈の中で説明する。
【0016】
なお、比較の目的で、例えば硬化ポリウレタンからなるコーティング層は必要な程度の多孔性を有しておらず、そのため、十分に多孔質の特性を有するコーティング層を得るためには貫通孔または穿孔の形態のさらなる変形構造が必要である。
【0017】
本発明に係るコーティング層は、さもなければ、多孔性を増大させるためにさらなる貫通孔または穿孔を備えていてもよい。
【0018】
本発明に係るコーティング層は支持織物も備えており、当該支持織物は、コーティング層の第1の側のコーティング層の材料に組込まれた状態で存在している。支持織物は、織られたタイプのものであってもよく、または不織タイプのものであってもよく、ポリエステル繊維などの一般的な繊維が用いられる。
【0019】
支持織物は、材料に組込まれた状態で存在している。すなわち、支持織物の繊維と繊維との間の開放空間は、コーティング層の硬化材料で充填される。このように、コーティング層および支持織物は1つの完全体を形成する。支持織物がコーティング層の第1の側に存在しているので、この側は、支持織物が大きく寄与する表面上に所定の特徴を有する。
【0020】
支持織物は、一方ではコーティング層の完全性を向上させ(それによって望ましくない裂けを防ぎ)、他方では基板への接着塗布を向上させることが分かった。この後者の場合の要因は、コーティング層の第1の側が支持織物の構造によって特徴付けられ、表面上では、繊維と繊維との間の開放空間の一部がコーティング層の材料で完全には充填されないようになっているということである。それによって、コーティング層の第1の側では、基板とコーティング層との間に塗布された接着剤層がコーティング層の第1の側に適切に入り込むことができる。
【0021】
また、支持織物により、でこぼこの表面特徴を有する基板にコーティング層を簡単に塗布することができる。表面がさまざまな木片から組み立てられる木製基板の場合、表面構造は木片ごとに変化することになる。基板の表面全体にわたってコーティング層の優れた接着を確保するためには、一般に特別な事前処理が必要である。実際、基板の表面構造はここでは水平にしなければならない。しかし、支持織物がコーティング層の第1の側に存在する場合には、この特別な事前処理はもはや必要ないことが分かった。
【0022】
支持織物は、一旦基板に塗布されると、一般にコーティング層に対して水平化効果がある。
【0023】
最後に、本発明に係るコーティングシステムは、コーティング層がすでに硬化しているためにコーティングシステムがもはや反応しないので、その運搬および保管に関して特別な規定を設定する必要がないという利点を有する。これは、有害物質として指定されているためにその保管および運搬に対して法的規定が課されている多くの従来の塗料とは対照的である。
【0024】
本発明に係るコーティングシステムのコーティング層は、好ましくは、電子放射によって硬化される硬化ポリエステルおよび硬化ポリアクリレートを含む。
【0025】
電子放射によるポリマーの硬化は、当該分野では電子ビーム硬化(electron beam curing:EBC)とも呼ばれる。このように硬化されるポリマーの利点は非常に多い。
【0026】
まず第一に、得られたコーティング層の硬度が、空気中での乾燥により基板上で硬化する、従来の態様で塗布された塗料層よりも実質的に高い。EBCにより硬化されるコーティング層によって達成可能な高光沢品質についても同様のことが言える。
【0027】
特に耐引っかき性、耐変色性および耐候性に関しても、得られたコーティング層の耐久性は高められる。このさらなる利点は、コーティング層も、それが塗布される基板の耐久性を実質的に高めるということである。このように、耐久性が比較的低い(例えば所定のタイプの木材からなる)基板の品質を向上させることができる。
【0028】
さらなる実用上の利点は、得られたコーティング層を容易に摩耗させることができ、上塗りすることができることである。
【0029】
EBC硬化コーティング層は、最適に架橋されて稠密なネットワーク構造を形成するポリマーからなる。コーティング層に組込まれた支持織物の有利な効果がさらに関連しているのはまさにこのようなコーティング層であり、EBC硬化コーティング層は、硬いことに加えてわずかに脆くもあり、このことは層の完全性に悪影響を及ぼし得る。硬度も、接着剤層がコーティング層に接着する能力に悪影響を及ぼし得る。支持織物は、これら2つの欠点が生じないことを保証する。
【0030】
本発明に係るコーティングシステムでは、より好ましくは、支持織物にバインダを含浸させる。
【0031】
有利に、支持織物に、アクリル樹脂の分散体などのバインダを含浸させる。これにより、一方では支持織物とコーティング層の材料との一体化が向上し、他方では基板へのコーティング層の第1の側の接着塗布が向上する。
【0032】
本発明に係るコーティングシステムのコーティング層は、好ましくは、コーティング層の第2の側に取外し可能な保護層を備える。
【0033】
したがって、コーティング層のこの側は、直接触れることなく処理することができる。第2の側は、目に見える側、すなわち、基板に塗布された後に目に見えるコーティング層の側である。保護層は、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンからなる好適な(透明な)膜から製造でき、コーティング層から取外し可能である。さらに、コーティング層と向かい合う膜の側の表面粗さは、全体が基板に塗布されて保護層が最終的にそこから取外された時のコーティング層の光沢品質に影響を及ぼす。保護層の粗さが非常に低い場合には、高光沢ラッカー層の外観を有するコーティング層が得られる。粗さが増すにつれて、まず半艶消しの光沢が得られ、続いて艶消しの光沢が得られる。
【0034】
特にコーティング層が電子ビーム硬化によって硬化される場合に本発明によって達成可能な高光沢ラッカー層の程度は、湿潤状態で基板に塗布される高光沢品質の従来の塗料によって達成されるものよりも高い。
【0035】
また、取外し可能な保護層は、コーティングシステムでコーティングされた製品をその運搬中に保護し、使用時に保護層を取外すだけでよいという点で第2の利点を有する。
【0036】
保護層は、有利に、コーティング層と向かい合う側にレリーフを備える。したがって、以下で説明するように、塗布すべきコーティング層は、対向レリーフを備えていてもよい。このようなレリーフは、例えば塗布されたコーティング層が滑り防止特性を有していなければならない場合に望ましいであろう。
【0037】
本発明に係るコーティングシステムでは、コーティング層の第1の側に必要に応じて接着剤層が塗布される。この接着剤層は、コーティングシステムを基板に接着させる働きをする。したがって、本発明の第2の局面の文脈の中でさらに以下で説明するように、別個のステップにおいて接着剤層を塗布する必要なく、コーティングシステムを基板に接着塗布することができる。
【0038】
本発明に係るコーティングシステムの第1の側は、好ましくは、コーティング層から取外すことができるキャリア層を備える。
【0039】
このようなキャリア層のために、硬化したコーティング層の第1の側を直接触れることなく処理することができ、それによってその品質が確保される。これは、基板への接着に有利である。キャリア層は、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンからなる(透明な)膜であってもよい。
【0040】
キャリア層および保護層の代替的な材料は、対応する利点を有する生物学的に分解可能なでんぷんベースのポリマーである。
【0041】
特に好ましくは、本発明に係るコーティングシステムは、コーティング層の以下のさらなる特徴を備える。
【0042】
コーティング層は染料または顔料を含む。これは、特定の色、特定の色パターンまたは所定の画像をコーティング層に与える選択肢を提供する。
【0043】
染料または顔料がない場合、ラッカー層は好ましくは透明である。
コーティング層は不織繊維または織り繊維を含む。このようなコーティング層は強度が高く、これはキャリア層または保護層を取外した時、および、基板に塗布された後のコーティング層の強度に有利である。特に、コーティング層の完全性は、ポリアミド、例えば「ダイニーマ(Dyneema)」繊維などの超強繊維をその中に組入れることによってさらに向上させることができる。必要に応じて、これらの超強繊維は支持織物の一部を形成する。
【0044】
コーティング層は弾性増大添加剤を含む。コーティング層を基板に塗布する際、好適な弾性および可撓性を有することが有利である。これは、さらに、キャリア層または保護層を取外した時にばらばらにならない安定したすぐに使用できるコーティング層に寄与する。このように、弾性増大添加剤は、好適な可撓性を設定する選択肢を提供する。
【0045】
さらに、殺虫剤または香料などの所定の機能性物質が恐らくコーティング層に組入れられる。また、対応する機能をコーティング層に付け加えるLEDまたは所定のチップなどの電子部品をコーティング層に組入れることもできる。
【0046】
コーティング層の表面側にスペーサが設けられる。この利点は、コーティング層を基板に塗布した時に、コーティング層が基板の表面全体にわたって同じ距離のところに位置することである。これにより、得られる美的結果が向上する。スペーサは、好ましくは、コーティング層とともに完全体を形成する。これを達成可能な1つの方法は、コーティング層の側にレリーフパターンを設けることによるものである。
【0047】
コーティング層は、好ましくは0.0010〜0.400mmの厚み、より好ましくは0.010〜0.100mmの厚みを有する。このような厚みは、所望の用途に非常に適していることが分かる。
【0048】
本発明に係るコーティングシステムは帯状片の形態で設けられることがさらに推奨される。このような実施例により、コーティング層を帯状片状に塗布することができ、これは壁およびドアなどの大きな表面のコーティングに実用上の利点を提供する。
【0049】
本発明に係るコーティングシステムは、より好ましくは、巻きの形態で設けられる。このような形態により、大面積のコーティング層のサイズを保管および運搬のために大幅に小さくすることができる。さらに、特にキャリア層を同時に取外さなければならない場合には、巻きの形態が基板への塗布に特に適している。
【0050】
第2の局面によれば、本発明は、本発明に係るコーティングシステムの使用であって、コーティング層を基板に直接塗布するステップを備える、使用に関する。
【0051】
このようにして、本発明の所期の目的、すなわち、単一の動作で基板に塗布できる、すぐに使用できるコーティング層が、時間のかかるさらなる処理なしに達成される。
【0052】
このような塗布方法は、手動式の塗布にも機械式の塗布にも適している。したがって、本発明により、例えば木材加工業界が、コーティング層を乾燥させるために生じるタイムロスなしに、コーティング層を備えた木製製品を機械的に提供することが可能になる。
【0053】
本発明に係る使用は、好ましくは、コーティング層を基板に塗布する前に、接着剤層を基板に塗布するステップも備える。接着剤層は、有利に、その硬化後に、コーティング層を基板に接着させる中間層を形成するプライマまたは下塗りなどの完全には硬化していないバインダを含む。このようにして、基板へのコーティング層の優れた耐久性のある接着が得られる。例えば、任意にポリウレタンで強化されたアクリレートの分散体がプライマとして用いられる。
【0054】
上記のように接着剤層を基板に塗布する代替的な方法として、コーティング層を基板に塗布する前にコーティングシステムの支持織物に接着剤層を塗布することができる。
【0055】
なお、接着剤層の硬化は一般に15分〜数時間かかる。したがって、塗布直後、例えば塗布が所望のごとく行なわれなかった時には、コーティングシステムの位置は依然として変更可能である。
【0056】
コーティング層を基板に塗布する際、以下の点も接着剤層のタイプの選択に関係がある:
ペースト状の接着剤層を用いる場合、比較的平滑な表面を有する支持織物が好ましくはコーティング層に塗布される。粘性のある液体接着剤層を用いる場合、わずかに容積の大きな「けば立った」支持織物が好ましくはコーティング層に塗布される。
【0057】
第3の局面によれば、本発明は、コーティングシステムの製造方法であって、
支持織物を設けるステップと、
ポリエステルおよび/またはポリアクリレートからなるプレポリマーを支持織物の側に塗布するステップと、
プレポリマーの上に保護層を配置するステップと、
プレポリマーを硬化させるステップとを備える、方法に関する。
【0058】
このようにして、上記の利点を提供するコーティングシステムが本発明に従って製造される。プレポリマーという用語は、まだ硬化していないか、または不十分に硬化した重合可能な混合物を意味するものと理解される。
【0059】
なお、明確にするために、プレポリマーの硬化後に、支持織物が組込まれたポリマー層が得られる。
【0060】
本発明に係る第1の好ましい方法に従って、上記のステップは、示された順序で連続的に行なわれる。保護層を配置するステップは、任意に省略可能である。
【0061】
上記の方法における追加的なステップとして、後に支持織物が配置されるキャリア層が上記のステップより前に設けられる。
【0062】
上記の方法におけるさらなる追加的なステップとして、接着剤層がプレポリマーの硬化後にコーティング層の第1の側に塗布される。
【0063】
本発明に係るコーティングシステムの製造方法は、さらに、
保護層を設けるステップと、
ポリエステルおよび/またはポリアクリレートからなるプレポリマーの層を保護層に塗布するステップと、
プレポリマーの層の上に支持織物を配置するステップであって、当該支持織物はプレポリマーの層に組入れられ、
プレポリマーを硬化させるステップと、
を連続的に実行することによって変形可能である。
【0064】
上記の方法における追加的なステップとして、後に支持織物が配置されるキャリア層が上記のステップより前に設けられる。
【0065】
上記の方法におけるさらなる追加的なステップとして、接着剤層がプレポリマーの硬化後にコーティング層の第1の側に塗布される。
【0066】
本発明に係る方法では、好ましくは、プレポリマーを塗布するステップが実行される前に、支持織物にバインダを含浸させる。好ましくは、含浸はここではバインダ、例えばアクリル樹脂の分散体により行なわれる。
【0067】
本発明に係る方法では、保護層は、より好ましくは、プレポリマーに塗布される側にレリーフを備える。これにより、製造プロセス中に保護層のレリーフがプレポリマーに押し込まれて、この層の対向レリーフにより跡を残すことが達成される。これは、プレポリマーが定義によればまだ硬化していないために変形可能な物質であるので、可能である。
【0068】
本発明に係る方法では、ポリエステルおよび/またはポリアクリレートは、特に好ましくは「電子ビーム硬化」(EBC)、すなわち電子放射を用いた硬化によって硬化される。このような材料は本発明の利点を達成し、硬化方法のエネルギコストは比較的低いことが分かった。
【0069】
第4の局面では、本発明は、本発明の第3の局面に係る方法によって得られるコーティングシステムに関する。
【0070】
ここで、添付の図面を参照して、以下で本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の第1の実施例に係るコーティングシステムの概略断面図である。
図2】基板に塗布されるコーティング層の概略断面図である。
図3】本発明に係るコーティング層が塗布される基板の三次元図である。
図4】基板に塗布される、スペーサを有するコーティング層の断面図である。
図5】本発明の第2の実施例に係るコーティングシステムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1は、ポリアクリレートベースの硬化塗料からなるコーティング層3をその上に有する平坦な可撓性のあるキャリア層2を備えたコーティングシステム1を示す。キャリア層2およびコーティング層3の分離を容易にするために、キャリア層2は塗料をはじく特性を有している。
【0073】
図2は、図1に従ったコーティングシステムを使用してコーティング層3を基板5に塗布する方法を示す。右から左への動きで、キャリア層2がコーティング層3からここで分離され、解放されたコーティング層はその後、接着剤層6に対して(縦向きの太矢印の方向に)押し付けられる。接着剤層6は前もって基板5に塗布されている。
【0074】
図3は、巻きの形態を有するコーティングシステム14からコーティング層12が塗布される基板11を示す。この巻き14では、コーティング層13が依然としてキャリア層16上にある。コーティング層12を基板11に塗布する際に、図2の図と類似の態様でコーティング層12がキャリア層16から分離される。接着剤層13は前もって基板11に塗布されている。図3は、特にコーティングシステム14が巻きの形態で実施される場合に基板11への帯状コーティング材料12の塗布をいかに容易に行なうことができるかを示している。
【0075】
図4は、スペーサ18を備えるコーティング層17を示す。スペーサ18は、コーティング層17とともに完全体を形成し、まるでコーティング層の一方の側のレリーフパターンであるかのようである。接着剤層20が塗布された基板19にコーティング層17が塗布される。スペーサ18により、コーティング層17の上側が基板19の表面全体にわたって同じ距離のところに位置する。このようにして、美的観点から魅力的な最終結果が得られる。
【0076】
図5は、ポリアクリレートベースの硬化塗料からなるコーティング層3と、不織ポリマー繊維の形態の支持織物30とをその上に有する平坦な可撓性のあるキャリア層2を備えたコーティングシステム1であって、織物30にはアクリル樹脂の分散体に基づくバインダを含浸させる、コーティングシステム1を示す。支持織物30は、明確にするために、別個の層として示されているが、支持織物はコーティング層3とともに統合体を形成する、すなわちコーティング層3に組込まれることを理解しなければならない。ポリエチレンからなる保護膜32がコーティング層3の上側に配置される。
【0077】
なお、完全を期すために、本発明に係るコーティングシステムは、キャリア層が存在する図1図5中のシステムに限定されない。なお、特に、図5に示されるシステムではキャリア層を省略可能であるため、本願の請求項1に係るコーティングシステムが示される。したがって、このような実施例も本発明の好ましい実施例である。
図1
図2
図3
図4
図5