【実施例】
【0086】
実施例1−TTPデータを含む画像のセグメンテーション
素材と方法
モルフォロジー・グレースケール再構成
灌流病変部内のボクセル、いわゆるシード点、を求めることは、肉眼で容易に識別可能であるようだが、画像強度の最大を検索することでは、しばしば、擬似陽性シード点が得られてしまう(たとえば、両眼や脳脊髄液(CSF)のような無関係の領域に対応する画像の領域における高い強度、脳外の強度など)。シード点を自動検出するために、我々は、モルフォロジー・グレースケール再構成を用いて、TTP病変部のエッジを保存しつつ小規模のスパイクを切り詰め、TTPマップの背景を均質化する。従来のたとえばガウシアンカーネルによる平滑化と比較して、モルフォロジー・グレースケール再構成は、スパイクの影響を受けにくいので、シード点検出に適している。この文脈においては、スパイクは、病変部に比して比較的小さく、画像中の平均値に対して病変部のデータ点と同じ方向(たとえば極性など)で異なるような極値を有するデータ点を含む領域と理解される。換言すれば、病変部が明るいピクセルを含む場合に、スパイクとは明るいピクセルの小さな領域として見えるかもしれないものである。
【0087】
連結成分ラベリング
連結成分ラベリング(CCL)アルゴリズムは、ピクセルのクラスターを求めるために画像を検査するものであり、各クラスターのピクセルは所与の連結性パス(the given connectivity path)に順に連結されている。例示的実施形態において、CCLアルゴリズムは、4つのステップを含む。簡潔な記載とするため、4−連結性の検索パスを有するバイナリ画像を検討する。ステップ1:アルゴリズムは、すべてのピクセルにわたり左から右へ走査する。ステップ2:強度=1のピクセル(p)に到達すると、すでに走査済みの(4−連結性[−1,0;0,1]に相当する)隣接部を検査し、i)隣接する両方が=0ならば、pに新しいラベルを割り当て、ii)隣接するうちのひとつ=1ならば、pにそのラベルを割り当て、iii)隣接する両方が=1ならば、pにラベルの内のひとつを割り当てて、いくつかのピクセルに対する等価であることを記録する。ステップ3:等価のペアを等価のクラスターに分類する。ステップ4:CCLアルゴリズムを全ピクセルにわたって実行し、新しいラベルを割り当てる。この研究で、我々は3次元でCCLを実行し、6−連結性のパスを使用している。
【0088】
実施例1によるアルゴリズム
自動生成されたCSFマスクが、TTPマップにおいて脳室を除去する。CSFマスクは、クラスター分析を用いることによって取得される。k平均クラスタリング法への入力画像は、構造画像(T2強調)および拡散強調影像法(見かけの拡散係数、ADC)によって得られた画像により結合された画像である。MNI(Montreal Neurological Institute)テンプレートをPWIマップに位置合わせ(co-registering)することによって、左右の半球マスクが自動的に生成される。脳以外の組織(たとえば眼、骨、空気など)および静脈(横洞およびS状洞)は、PWIボリューム中の低質スライスのノイズ成分をもたらし、擬似陽性率が高くなる。したがって、我々は、この低質スライスを、各スライス毎の強度の分散を分析することによって除去している。
【0089】
TTPマップは、病変部側性およびシード点の自動検出のためモルフォロジー・グレースケール再構成によってフィルタ処理される。フィルタ処理後のTTPマップ上のどちらかの半球の平均強度を評価することによって、TTP病変部の側性が判定される。シード点は、フィルタ処理後のTTPマップ中の最も高い強度を有するボクセルとして定義される。
【0090】
フィルタ処理されていないTTPマップの値は、対側半球における平均TTP遅延について正規化される。対側半球は、影響を受けていない側であり、「正常な」ピーク到達時間を有する。同側性TTPマップは>4秒で閾値化され、CCLアルゴリズムによって連結成分が求められる。連結成分は、シード点を含み、TPP病変部と考えられる。最後に、病変部マスクから小規模物体(<5mL)を除去し、孔を充填(fill)し、病変部境界を平滑化する。
【0091】
実施例1によるTTPセグメンテーションアルゴリズムは、MathWorks(登録商標)によるMatlab(登録商標)R2010aにおいて実装されるが、実施例1によるセグメンテーションアルゴリズムが他のプログラミング言語でも同様に実装可能であることは、当業者であれば理解される。
【0092】
実施例1によるアルゴリズムは、対応する方法により代替可能であると理解される。
【0093】
患者と画像取得
研究調査には119名の患者(女性=49名)が含まれ、患者は4つの異なる国(英国、フランス、ドイツ、デンマーク)の病院に収容されている。これらの病院はI−KNOWコンソーシアムのメンバーである。患者の年齢の中央値は71歳、症状の発現から最初のMRIスキャンまでの時間は中央値で148分である(添付1の表I)。
【0094】
表Iはプールされた患者の特徴を描写するものである。範囲は、第1および第3四分位数を示す。
【0095】
急性TTP病変部は中央値が107mL、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)の中央値は11である。I−KNOWプロトコルでは7つの脳卒中サブタイプを定義しており、そのうち、心臓塞栓源が第一の脳卒中サブタイプであり、それに続くのが、重篤な頸動脈狭窄をともなう大血管疾患および明らかにされていないサブタイプである。標準動的磁化率造影剤MRIを異なるモデルのスキャナー(GE社のSigna Excite 1.5、GE社のSigna Excite 3、GE社のSigna HDx 1.5、シーメンス社のTrioTim 3、シーメンス社のAvanto 1.5、シーメンス社のSonata 1.5、フィリップス社のGyroscan NT 1.5、フィリップス社のIntera 1.5)上で実行する。
【0096】
実施例1によるアルゴリズムとマニュアルでのTTP病変部輪郭描画の比較
豊富な臨床経験をもつ神経放射線科医が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、TTP病変部を半自動的に輪郭描画する。このソフトウェアは、標準閾値化法を利用するものであって、これでTTP病変部をおおまかに特定してから、神経放射線科医が病変部の境界をマニュアル調整することができるが、神経放射線科医は、なんらかの強度スケール等の脳マップを参照することはない。我々は、全データセットに対する二乗誤差の総合計を最小化することによって、現在の神経放射線科医のための最適TTP閾値を推定する最適化実験を実施する。最終的に、標準閾値化法STMを用いても、>4秒のTTP病変部が推定されている。実施例1によるアルゴリズム/STMとマニュアルで輪郭描画した病変部との間の幾何学的かつボリューム上の類似度を定量化するために、我々は、0と1の間の比であるダイス係数を用いる。1という値は、完全に重なることを示しており、0という値は重ならないことを示す。感度と特異性が同側半球上で判定される。
【0097】
結果
ボリューム比較
実施例1によるアルゴリズムの最高のパフォーマンスがTTP>2.8秒で得られる。マニュアルでの輪郭描画および実施例1の手法によるアルゴリズムから得られるTTP病変部ボリューム間のスピアマン相関は、R
2=0.89である。
図2A参照。
【0098】
図2に、最適閾値における、実施例1によるアルゴリズムと、STMと、マニュアル輪郭描画とのボリューム比較を示す。
図2A:現在の神経放射線科医に対するの最適の閾値は>2.8秒(R
2=0.89)と推定された。
図2Aは実施例1によるアルゴリズムに対するデータを示しており、第1軸はマニュアル判定されたマスクボリューム[mL]を示し、第2軸は実施例1によるアルゴリズムで判定された病変部ボリューム[mL]を示す。
【0099】
図2B:STMは、マニュアルでの輪郭描画と比べてTTP病変部を大きく推定している(R
2=0.7)。
図2Bは、STMの手法に対するデータを示しており、第1軸はマニュアル判定されたマスクボリューム[mL]を示し、第2軸はSTM手法により判定された病変部ボリューム[mL]を示す。
【0100】
図2C:実施例1によるアルゴリズムと対比して示したマニュアル手法に対するブランド−アルトマン(Bland-Altman)プロットであり、
図2D:STMと対比して示したマニュアル手法に対するブランド−アルトマン(Bland-Altman)プロットである。実線は、対比されている2つの方法の中央値を示し、破線は、平均差±2標準偏差(SD)を示す。第1軸は平均病変部ボリューム[mL]を示し、第2軸はマニュアル判定されたボリュームと実施例1によるアルゴリズムおよびSTM手法により判定されたボリュームとの差[mL]を、
図2Cおよび
図2Dで、それぞれ示す。
【0101】
最適TTP閾値において、マニュアルでの輪郭描画と実施例1によるアルゴリズムとの平均差は、
図2Cを参照すると、1.6mL(±2SD:74.5mL)である。
【0102】
TTP>4秒において、実施例1によるアルゴリズムは、マニュアルでの輪郭描画に比べて、病変部ボリュームをやや小さく推定している。TTP>4秒におけるマニュアル手法を用いたTTP病変部ボリュームと実施例1によるアルゴリズムを用いたものとの間の相関はR
2=0.87であり、TTP>4秒におけるマニュアルでの輪郭描画と実施例1によるアルゴリズムとの間の平均差は、
図3を参照すると、35.3mL(±2SD:76.1mL)である。
【0103】
図3は、TTP>4秒において、実施例1によるアルゴリズムが、エキスパートと比較して病変部ボリュームを低く推定すること(スピアマン相関R
2=0.87)を示す。
【0104】
TTP>2.8秒におけるSTMは、
図2Bを参照すると、マニュアルでの輪郭描画に比べてTTP病変部ボリュームを大きく推定している。マニュアルでの輪郭描画とSTMとの間の平均差は、
図2Dを参照すると、−47.5mL(±2SD:115mL)であり、相関はR
2=0.70である。
【0105】
図5に、実施例1によるアルゴリズムとSTMにより生成するセグメンテーションの例を示す。上の列にTTPマップを示し、以下の列に、a)マニュアルマスク、b)実施例1によるアルゴリズムから得られたマスク、およびc)STMから得られたマスクをTTPマップ上に重ねて(白)示している。マニュアル以外の2つのマップは、TTP>2.8秒で得られる。一般に、実施例1によるアルゴリズムは、閾値法と比べて、滑らかな曲線として境界を推定する。さらに、実施例1によるアルゴリズムは、擬似陽性病変部を回避することが高い水準で可能である(
図5)。
【0106】
区分のパフォーマンス
最適TTP閾値において、実施例1によるアルゴリズムに対する感度の中央値(中央値:80%、第25〜第75四分位数:64〜88%)はSTMに対する感度の中央値(中央値:74%、第25〜第75四分位数:57〜83%)を上回る幅に有意差はない(p=0.22)が、実施例1によるアルゴリズムとSTMとは特異性に有意差がある(p<0.001)。実施例1によるアルゴリズムに対して、特異性の中央値は95%(第25〜第75四分位数:92〜98%)であり、STMに対しては、特異性の中央値は、91%(第25〜第75四分位数:88〜95%)である。添付1の表II参照。
【0107】
表IIは、最適TTP閾値での、実施例1によるアルゴリズムとSTMに対する、感度と特異性を百分率で表すものである。括弧の中に、第1および第3四分位数が与えられており、さらに、順位和検定からの統計データも与えられている。
【0108】
さらに、ダイス係数分析によって、実施例1によるアルゴリズムが生成するマスク(ダイス係数中央値:0.73)が、STMにより生成されるマスク(ダイス係数中央値:0.57)よりも、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部マスクに対する類似度が有意に(p<0.001)高いことが示されている。
図4参照。
【0109】
図4に、実施例1によるアルゴリズム(Alg.)とSTMに対するダイス係数のボックスプロットを示す。
【0110】
実施例2−MTTデータタイプの画像のセグメンテーション
素材と方法
レベルセット
この手法は、低灌流領域における平均MTT値M
hypoが平均正常MTT値M
normよりも高いという仮説から浮上してきたものである。低灌流エリアにおいて、MTT値は、M
hypo近くで変動するが、正常組織においては、M
normに近くなる。これは、画像MTT値MTT(x,y)とそれぞれの平均値との間の平均二乗誤差が低いことと対応する。そして、虚血病変部のような病変部の特定は、合計変化量(数式(1))を最小化する滑らかな閉じた曲線Cを求めるものとして定式化することができる。
【0111】
虚血領域は必ずしも、たとえば分水界エリアにおいて閉塞が病変部を発現させる場合のように、まとまっているとは限らないので、Cが複数の曲線を表すものとすることができることは重要である。これは、Cを、内在的に、平面各点に値C={φ(x,y)=0}を割り当てる関数φのゼロレベルセットとなるように定義することによって確実に実現可能である。関数φはレベルセット関数と呼ばれる。
【0112】
H(z)を、z≧0の場合以外ゼロとなるヘヴィサイド関数を表すものとし、その導関数をδ(z)=dH(z)/dzとすると、(1)は、次のように記述することができる(数式(2))。
【0113】
最後の項は、輪郭の長さを示すものであり、実質上は平滑度を支配するものである。また、我々は、2つの誤差項の加重値を支配するためのパラメータλ
1およびλ
2を導入した。次の微分方程式(数式(3))を繰り返し解くことによりEを最小化できることを示すことができる。
【0114】
したがって、数式(3)により初期の輪郭を発展させることによって、我々は、MTT画像を2つの均質な領域に分ける滑らかな境界を得る。M
hypoおよびM
normの値は、反復の各回毎の輪郭内外の平均値として適応的に推定される。
【0115】
実施例2によるアルゴリズム
グローバル画像強度の患者間のばらつきを最小化するため、レベルセット手続きを適用する前に画像を標準化しなければならない。このやり方では、我々は、正常に見える白質の小さな対側領域を輪郭描出して、すべてのボクセルから対応する平均MTT値を減算する。脳室の擬似輪郭描画(いくつかの後処理アルゴリズムが、CFSボクセルに対応する長いMTTをもつエリアを生成する)を回避するために、脳卒中プロトコルの一部として取得されたDWIに基づいて画像を自動セグメンテーションする。PWIおよびDWI画像の線形位置合わせに続き、脳室ボクセルが、その見かけの拡散係数(ADC)によって、すなわち、平均正常白質ADCのADC
V=2.9倍を超えるADC値をもつボクセルが正規化されたMTT画像においてゼロにセットされるようにすることで、特定される。実施例2によるレベルセットアルゴリズムで用いる初期病変部推定値は、ADC
Vを下回る相対ADCと1.2を上回る相対MTTを有する領域として定義される。
【0116】
初期(Init.)の評価の後、数式(3−4)の加重パラメータはλ
1=1.0、λ
2=1.25およびα=0.5に固定される。これは、病変部よりも正常組織のMTT異質性に対するペナルティがやや高いことに対応する。加重パラメータの変動に対する感度について以下に説明する(
図6も参照)。
【0117】
図6に、平滑化パラメータαおよび異質性ペナルティλ
2を異なる値にしたときの、数式(3)による発展の間に特定回数の反復(Iter.)で得られた推定病変部境界の例を示す。一番上の列は、この研究調査で使用したパラメータによる発展を示す。初期化時に、正規化されたMTT画像を閾値化し、主たる病変部に孔を生成して多くの小さな「擬似」病変部の特定を得る。10回の反復後および100回の反復後に、研究調査用パラメータを用いて解を導き、輪郭が良好に病変部を近似するものとなる。600回の反復後に観察された輪郭の変化は、ほんのわずかにすぎず、収束を示す。適用した平滑化度が低い場合(α=0.2)には、推定された輪郭は病変部の境界に沿った画像中のでこぼこに対して感度が高いが、境界の長さをさらに制限する(α=0.8)と、より円形に近い輪郭が得られる。λ
2を低くすることで、非病変部ボクセル間の異質性を高めることができ、いくつかの高強度ボクセルが結果としてこのグループに含まれることになり、推定される病変部がより小さなものになるかもしれない(λ
2=1.00)。逆に、値が高い(λ
2=1.50)と、推定される病変部はより大きく、より異質性の高いものとなる。
【0118】
各スライス毎に合計600回の反復が実行される。すべてのアルゴリズムは、MathWorks(登録商標)によるMatlab(登録商標)R2007aの中で実装される。数式(3)の実装形態は、www.shawnlankton.com/2007/05/active-contours/に基づいて適合させている。詳細については、TF チャン(Chan TF)、LA ヴェーゼ(Vese LA)著の参考文献「エッジのないアクティブな輪郭(“Active contours without edges”)」IEEE(米国電気電子技術者学会)画像処理関連紀要、第10巻第2号、266〜277頁、2001年(IEEE Transactions on Image Processing, vol. 10, issue 2, p. 266-277, 2001)にも記載されている。この文献は、ここでその全体を引用することにより補充するものとする。
【0119】
実施例2によるアルゴリズムは、対応する方法により代替可能であると理解される。
【0120】
患者と画像取得
我々は、急性虚血性脳卒中の症状(NIHSS12.5±5.64)を示す14名の患者を有する。標準動的磁化率造影剤MRIを、発症3時間以内に3.0 T MRスキャナー(Signa Excite HDx, 米国ウィスコンシン州ミルウォーキーのジェネラルエレクトリックメディカルシステムズ社製(General Electric Medical Systems, Milwaukee, WI, USA))で実施する。平均通過時間は、灌流分析ソフトウェアPENGUIN(www.cfin.au.dk/software/penguin)を用いて、自動動脈入力関数検索アルゴリズムで、ブロック循環特異値分解(block-circulant singular value decomposition:oSVD)により計算される。ブロック循環SVDは、動脈入力関数の結果を利用してブロック循環(テプリッツ:Toeplitz)行列を形成し、振動指数に基づいて固有値を閾値化することにより進行する(たとえば、次の文献に記載されている。Wu O, Oestergaard L, Weisskoff RM, Benner T, Rosen BR, Sorensen AG. 共著、「ブロック循環逆畳み込み行列での特異値分解を用いたMR灌流強調影像法における流量推定のためのトレーサー到達タイミングの影響を受けない技法(Tracer arrival timing-insensitive technique for estimating flow in mr perfusion-weighted imaging using singular value decomposition with a block-circulant deconvolution matrix.)」医学における磁気共鳴:医学における磁気共鳴学会誌/医学における磁気共鳴学会(Magnetic resonance in medicine : official journal of the Society of Magnetic Resonance in Medicine / Society of Magnetic Resonance in Medicine.)2003年、第50巻、164〜174頁(2003;50:164-174)。この文献は、ここで引用により補充するものとする。)。
【0121】
マニュアルでの病変部輪郭描画
MTTマップ評価で豊富な臨床経験を有する4名の神経放射線科医が、無料で利用可能な画像解析ソフトウェア(Chris Rordenによる”MRIcro”、2005年、www.sph.sc.edu/comd/rorden/mricro.html)を利用して急性MTT病変部をマニュアルで輪郭描画した。読み取り者は、自身の最良の臨床判断に基づいて低灌流組織の範囲を描出するよう要求されている。病変部の描画輪郭が、独立した臨床エキスパート間の「真の」評価者間一致を反映するものとなるように、研究調査に先立って、さらに基準や指示は与えていない。評価者は、好みにしたがい、ウィンドウ/レベル設定を自由に調整することができる。閾値化などの自動前処理は適用しない。読み取り者には、すべての臨床上その他の撮像データは伏せてある。
【0122】
実施例2によるアルゴリズムとマニュアルでの病変部描画輪郭との比較
過去の研究調査で、病変部描画輪郭の評価者間のばらつきが相当あることが示されている。基準となる病変部の輪郭がないので、我々は、提案されている実施例2によるアルゴリズムを、エキスパート間の一致の程度を変えることによって決定した病変部描画輪郭の確実性の程度と比較している。その結果、4つの病変部推定結果が生成され、その最も大きい推定結果は少なくとも一名のエキスパートにより低灌流であると区分されたボクセルに対応するものであり、最も控えめな推定結果はすべてのエキスパートにより低灌流虚血であると区分されたボクセルのみを含むものである。それから、我々は、実施例2によるアルゴリズムにより推定された病変部描画輪郭を、これら4段階の一致度のボリュームと比較している。
【0123】
最後に、我々は、レベルセット法のパフォーマンスを標準的な閾値化法と比較し、MTTが、正常に見える対側の白質における平均値を、2標準偏差以上、上回るものであった場合に、組織ボクセルを虚血とラベリングする。実施例2によるレベルセットアルゴリズムに関しては、この手法は脳室ボクセルを除去するために前処理された関連MTTマップに適用される。
【0124】
結果
収束
図6に、右半球の2つの分水界領域において高いMTTを有する患者の病変部境界に向かって、初期輪郭が収束していくようすを示す。
図6に示す初期推定結果(Init.)は、多数の分離した領域を示しており、基礎となる閾値化法により予想されるように、「正常な」組織の小さなエリアが、拡がる病変部の中にある。10回の反復(Iter.)(0.2秒に対応する)の後、2つの大きな密着した領域が現れる一方で、ほとんどの小さな領域は消失している。さらなる反復の主たる結果は、数式(3)の曲線長ペナルティ項による推定輪郭の平滑化である(100回の反復、1.8秒)。100回の反復と600回の反復(10.0秒)との間で観察されるのは、急速な収束を示す、小さな変化だけである。この研究調査の全患者にわたる、600回の反復による単一スライス計算時間の中央値は10.0秒[9.9,10.1]である。
【0125】
エキスパートとの比較
図7では、レベルセット病変部ボリュームを各エキスパート(Expert)のボリュームと比較しており、マニュアル(Manual)による推定と実施例2のアルゴリズムによるMTT病変部輪郭描画による推定(Estimated)との間で病変部ボリューム(Lesion volumes)の一致を示している。我々は、エキスパートのボリュームに相当のばらつきがあることを確認しているが、一致ラインからの規則性のある偏移は観測されていないので、マニュアルで推定された病変部ボリュームと実施例2のアルゴリズムにより推定された病変部ボリュームとの間に全体として良好な一致がみられることがわかる。エキスパート間においては、評価者2と評価者3が、概して、評価者1と評価者4よりも低灌流ボリュームを小さく輪郭描画する傾向が見られる。
【0126】
図7にも、4名のエキスパートによる推定病変部ボリュームに実質的なばらつきがあることが示されている。すべての患者において、エキスパート推定ボリュームの最大値と最小値の差は平均病変部サイズの10%を上回っており、14ケース中の6ケースにおいては、この差が30%を超えている。このばらつきは、病変部境界輪郭の位置で顕著である。
【0127】
図8に、実施例2によるアルゴリズムによる推定病変部境界の例(赤色輪郭線)が、典型的な病変部を有する6名の患者に対するエキスパート(Nr Exp)間の一致とともに示されている。背側MCA領域にMTT病変部を有する患者が
図8(a)に示されており、
図8(b)には、エキスパートの間および実施例2によるアルゴリズムとエキスパートとの間に良好な一致があることが示されている。
図8(c)には、正常な組織と低灌流組織との間の背側境界の正確な位置を画定することの難しい例が示されている。しかし、実施例2によるアルゴリズムは、エキスパートと、よく一致するエリアの輪郭を描画するものとなった、
図8(d)。また、
図8は、実施例2によるアルゴリズムが、このケースでは中大脳動脈(MCA)領域内に低灌流エリアを有する患者(
図8(e〜f)および前側頸動脈領域内に病変部を有する患者(
図8(g))の、ばらばらに分離した病変部を特定することができることも示している。さらに、
図8(i、k)は、低灌流組織と病変のない組織との間の境界が不明瞭で、その結果、エキスパートの病変部の輪郭描出にばらつきが生じたケースを表している。どちらのケースにおいても、実施例2によるアルゴリズムは、3名以上のエキスパート間で一致した領域に合致している。また、我々は、実施例2によるアルゴリズムが、脳室のMTT高信号強度を正しく回避するものであることを確認している、
図8(d、f、h、j)。すべてのケースについて、実施例2によるアルゴリズムは、境界を滑らかな曲線として推定し、閾値化法を用いた場合に観察される小さな「擬似」病変部の散在(
図6参照)を回避する。我々は、実施例2によるアルゴリズムが、(c−d)、(i−j)、(k−l)のような、低灌流組織と正常組織との間に明瞭な境界がない場合であっても、3名以上のエキスパート間で一致した病変部に合致する境界を特定するものであることを確認している。もっとも、実施例2によるアルゴリズムが脳の境界に沿って小さな病変部を誤検知する場合(j、l)もあるが、それらは、さらに後処理することで除去することができるものである。
【0128】
図9に、実施例2によるアルゴリズムで推定される病変部ボリュームとエキスパート(Exp)の合意に基づく推定病変部ボリュームとの間の相関を示す。推定ボリュームは、少なくとも2名のエキスパート間合意として決定された病変部とよく相関している。大きな病変部において完全なエキスパート合意と比較するといくらか過大な推定が見られる。対照的に、実施例2によるアルゴリズムによって検出された病変部ボリュームは、エキスパートによって輪郭描画されたすべてのボクセルの結合体として画定された病変部よりも小さい。エキスパート一人だけが低灌流部と特定した組織として現れている病変部は、実施例2によるアルゴリズムによって判定したMTT病変部よりも大きい。もっとも、実施例2によるアルゴリズムと、2名以上のエキスパート間の合意として画定された病変部との間には良好な一致が見られる。
【0129】
我々は、マニュアルおよび実施例2によるアルゴリズムで輪郭描出したMTT合意病変部間のボリュームの差を一致の尺度として使用する。表1に、レベルセット技法および閾値化法の両方に対するボリューム差の平均および標準偏差を示す。(マニュアル−実施例2によるアルゴリズム間)差の最小値−9.3±45.2mlは、レベルセット技法と、少なくとも3名のエキスパート間の合意病変部との間にある。閾値化法は、レベルセット技法より偏りが小さいのは病変部が全エキスパートの選択したボクセルの結合体として画定される場合のみだが、すべてのケースで標準偏差は大きい値を示す。添付2の表IIIから各合意度と技法に対して計算された一致度の値が95%一致の範囲を超えているデータ点がひとつある(もっとも、それは異なる患者に対応している)。
【0130】
表IIIに、エキスパート合意病変部およびSTM法および実施例3によるアルゴリズムに対応するレベルセット法の間の平均ボリュームの差(ml)を示す。実施例2によるレベルセット法アルゴリズムは、2名または3名のエキスパート間の合意領域に対して、小さい偏りを示している。STM(閾値化)法は、レベルセット技法より偏りが小さいのは病変部が全エキスパートの選択したボクセルの結合体として画定される場合のみだが、すべてのケースで標準偏差は大きい値を示す。
【0131】
図10に、4名のエキスパート(Exp)の合意病変部と、MTT値が対側の白質における平均値からの2標準偏差を超えるときにボクセルを低灌流と特定するものとした閾値化法(Thr.)との間の相関を示す。閾値化は、規則的に、合意領域と比較して低灌流組織ボリュームを過大に推定することに留意されたい。レベルセット技法(
図9参照)とは対照的に、閾値化法は、エキスパートにより選択された全ボクセルの結合体として得られた病変部と一致するところがあることを示している一方で、一貫して2名以上のエキスパート間の合意領域と比較してボリュームを過大に推定してもいる。
【0132】
実施例2によるアルゴリズムの完全な合意領域を検出する感度の中央値は0.74[0.60;0.89]である。測定値が数値上不安定な小さな病変部において感度は低くなっている。病変部(22ml超)の最大75%を考慮すると、感度は0.82[0.73;0.90]である。
図8(l)に示されているように、実施例2によるアルゴリズムによって、擬似高信号強度が虚血組織として誤検出されている。全体の特異性は、0.95[0.93;0.98]であり、22ml未満の病変部を無視すると、0.96[0.91;0.98]となる。
【0133】
考察
脳室のような人為的に延長されたMTTのエリアは、MTT病変部の全自動輪郭描出に対する決定的な難問を示すものである。我々は、利用者の介在や速度のかたちで余計なコストをかけずにCSFボクセルを除外する便利な手段として並行DWI影像法を利用することを提案する。もう一つの選択肢として、脳室を、初期(無限TR)の未処理T2強調DSC画像上で、あるいは、CBV基準を用いることによって、特定することができるかもしれない。
【0134】
CSFの高MTT値をもつボクセルのほとんどが前処理中に除去されるが、擬似「高MTT」ボクセルが、通常、脳橋近傍および皮質表面に沿って、残存する(cf.
図8(k)おおよび8(l))。このような領域は、提案されている実施例2によるアルゴリズムによって擬似的にセグメンテーションがなされることで、特異性が減少する。たとえば主たる病変部の対側に位置するボクセルを除外するためにさらなる後処理を適用することができるだろう。数式(3−4)のλ
1項を大きくすることによって、低灌流部として輪郭描画されるボクセルのグループが、より小さく、より均質なものになる。これにより擬似陽性比率が最小化され、より多くの微細なMTTの上昇をもつボクセルを外すことができるので、擬似陰性区分比率が増加する。あるいは、隔離された擬似陽性ボクセルが容易に特定され、正確なボリュームの定量化のためにそのような領域を除去するのに一定の限定的なユーザーの介在を必要とする。
【0135】
実施例3−DWIにより取得される画像のセグメンテーション
素材および方法
モルフォロジー・グレースケール再構成
拡散病変部には人為的低信号強度が含まれ、高信号強度は解剖およびノイズ人為結果のせいで画像のいたるところに存在するけれども、DWI病変部は、高信号強度領域として容易に視認できるようにみえる。したがって、画像強度の単純な閾値化によって、
図11Bに示すように、擬似陽性比率および擬似陰性比率がともに高くなる。ガウシアンカーネルによる畳み込みのような、よくある画像のボケ(blurring)が、ある程度は人為結果を除去してくれるが、病変部境界の「移動」のコストが潜在している。モルフォロジー・グレースケール再構成は、カーネルサイズにより決まる密着エリアの元エッジを保存しようとしながら、画像中の高いピークを一意的に切り詰める。我々は、DWI病変部と背景の間のコントラストを強調するためにモルフォロジー・グレースケール再構成を使用する。従来のボケ(blurring)フィルターと比べて、モルフォロジー・グレースケール再構成は、エッジを保存する(
図11Cおよび11D参照)ので、自動DWI病変部セグメンテーションに適している。
【0136】
実施例3によるアルゴリズム
自動生成されたCSFマスクがDWIマップ中の脳室を除去する。CSFマスクは、クラスター分析を用いることによって取得される。k平均クラスタリング法への入力画像は、構造画像(BZERO)および拡散強調画像(見かけの拡散係数、ADC)により結合された画像である。MNI(Montreal Neurological Institute)テンプレートをPWIマップに位置合わせ(co-registering)することによって、左右の半球マスクが自動的に生成される。脳マスクの全体は、閾値化CBV>0により生成され、その全脳マスク中のまばらに連結された島がモルフォロジー的間引きによって除去される。DWIボリュームの低質スライス中の脳以外の組織(たとえば眼、骨、空気など)が、ノイズ成分をもたらし、擬似陽性比率が高くなる。したがって、我々は、この低質スライスを、各スライス毎の強度の分散を分析することによって除去している。
【0137】
TTP病変部マスクは、実施例1によるアルゴリズムを用いて自動生成される。ADCマップは、550mm
2/秒で閾値化され、TTPマスク外のADC病変部が除去される、
図12Aおよび12B参照。さらに、各スライス上のサイズが0.25mL未満の小島を除去する。
【0138】
DWIマップをモルフォロジー・グレースケール再構成を用いてフィルターにかける。ADC病変部が存在していた各スライス毎に、スライス固有のDWI病変部閾値を、対応するADCマスクを用いて決定する、
図12C参照。具体的に、スライス固有の閾値は、ADC病変部マスクのエッジを見つけ、それをグレースケール・モルフォロジー処理されたDWIマップに適用し、ADCマスクのエッジに含まれるDWI強度を平均することによって、決定する。このようにすることの利点としては、DWI閾値のロバストな推定結果が得られることが挙げられる。ADC病変部とDWI病変部は、必ずしも空間的に一致していない。DWI病変部を決定するために、DWIスライスのそれぞれをスライス固有の閾値で閾値化し、連結成分を連結成分ラベリングアルゴリズム(CCL、実施例1において前述)によって求める。TTP病変部に連結していないDWI病変部成分は除去される。不整合(mismatch)は、mismatch=TTP
area−(DWI
area∩TTP
area)のように定義され、結果としてTTP病変部に含まれないDWI病変部は不整合の判定においては無関係とされ、無視される。最後に、DWI病変部の孔を埋めて、境界を平滑化する。実施例3によるセグメンテーションアルゴリズムは、MathWorks(登録商標)によるMatlab(登録商標)R2010aにおいて実装される。
【0139】
実施例3によるアルゴリズムは、対応する方法により代替可能であると理解される。
【0140】
患者と画像取得
実施例1と同様。
【0141】
実施例3によるアルゴリズムとマニュアルでのDWI病変部輪郭描画の比較
豊富な臨床経験をもつ神経放射線科医が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、DWI病変部を半自動的に輪郭描画する。このソフトウェアは、標準閾値化法を利用するものであって、これでDWI病変部をおおまかに特定してから、神経放射線科医が病変部の境界をマニュアル調整することができるが、神経放射線科医は、何らかの強度スケール等の脳マップを参照することはない。マニュアル半影帯マスクは、マニュアルで輪郭描画されたDWI病変部マスクおよびTTP病変部マスクに基づいて決定され、同様に、自動半影帯マスクは、自動生成されたDWI病変部マスクおよびTTP病変部マスクに基づく。半影帯については、感度と特異性は同側半球において判定され、DWI病変部については、感度と特異性はTTP病変部において判定される。
【0142】
結果
実施例3によるアルゴリズムによって輪郭描画されるDWI病変部は、STMによって輪郭描画されたDWI病変部と比べて、マニュアルで輪郭描画されたDWI病変部に、空間的ボリューム的によりよく一致する。実施例3によるアルゴリズムに対する全体のスピアマン相関は、R
2=0.79である、
図13A参照。マニュアル輪郭描画と実施例3によるアルゴリズムとの間の差の中央値は、−1.4mL(±2SD:20mL)である。実施例3によるアルゴリズムで判定される半影帯ボリュームは、マニュアルで輪郭描画される半影帯ボリュームと良好な相関R
2=0.86を有する、
図14A参照。マニュアル輪郭描画と実施例3によるアルゴリズムとの間の半影帯ボリュームの差の中央値は、−0.07mL(±2SD:73.5mL)である。感度の中央値は71%(第25〜第75四分位数:59〜83%)であり、特異性の中央値は95%(第25〜第75四分位数:92〜98%)である。マニュアル輪郭描画とSTMとの間の半影帯ボリュームの差の中央値は、−41.1mL(±2SD:116.2mL)である。感度の中央値は64%(第25〜第75四分位数:49〜77%)であり、特異性の中央値は92%(第25〜第75四分位数:88〜95%)である。最後に、ダイス係数分析によって、実施例3によるアルゴリズムが推定する半影帯(中央値=0.67、第25〜第75四分位数:0.51〜0.75)が、STMが推定する半影帯(中央値=0.46、第25〜第75四分位数:0.27〜0.60)と対比すると、マニュアルで輪郭描画した半影帯に対する類似度が高い(p<0.001)ことが示されている。
【0143】
図11:DWIマップを前処理する。
図11Aに、元のDWIマップを示し、
図11Bに、元のDWIマップにSTMを用いてセグメンテーションを行い、脳の内側部おけるDWI病変部および擬似陽性エリアを描出したものを示す。ガウシアンカーネルによる畳み込みなどのボケフィルターを用いることで、ある程度、人為結果が除去されるが、病変部境界をぼやかすことにもなる(
図11C)のに対して、モルフォロジー・グレースケール再構成が病変部と背景の間のコントラストを鮮明なエッジで強調する(
図11D)。
【0144】
図12:DWI閾値を決定する。
図12A:ADCマップを550mm
2/秒で閾値化処理した。
12B)TTP病変部に含まれていなかったADC病変部を除去した。
図12C:モルフォロジー・グレースケール再構成処理されたDWIマップ上でADCマスクを適用し、スライス固有閾値を決定した。
図12Dは、実施例3によるアルゴリズムによってセグメンテーションされた自動セグメンテーション済DWI病変部を元のDWIマップに重ね合わせて示す図である。
【0145】
図13:実施例3によるアルゴリズム、STM、およびマニュアルでの輪郭描画によってTTP病変部内で推定されたDWI病変部のボリューム比較。実施例3によるアルゴリズムに対する全体のスピアマン相関はR
2=0.79、STMに対してはR
2=0.62であった。細分された下位図面の図示内容:
図13A:DWI病変部のボリューム比較、第1軸はマニュアルで判定されたマスクボリューム(目盛りは0〜120mLの範囲)を示し、第2軸は実施例3によるアルゴリズムにより判定されたボリューム(目盛りは0〜120mLの範囲)を示す、
図13B:DWI病変部のボリューム比較、第1軸はマニュアルで判定されたマスクボリューム(目盛りは0〜120mLの範囲)を示し、第2軸はSTM法により判定されたボリューム(目盛りは0〜120mLの範囲)を示す、
図13C:実施例3によるアルゴリズムにより判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマン(Bland-Altman)プロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜150mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−120〜80mLの範囲)を示す、
図13D:STM法によって判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜150mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−120〜80mLの範囲)を示す。
図13C〜Dにおいて、実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
【0146】
図14:実施例1および実施例3によるアルゴリズム、STM、およびマニュアルでの輪郭描画によって最適閾値で推定された半影帯のボリューム比較。
図14A:現在担当の神経放射線科医に対する最適閾値は、>2.8秒(R
2=0.86)に推定された。
図14B:STMは、マニュアルでの輪郭描画に比べTTP病変部を過大に推定している(R
2=0.62)。
図14C)アルゴリズムと対比して示したマニュアルに対するブランド−アルトマンプロット、そして、
図14D)STMと対比して示したマニュアルに対するブランド−アルトマンプロット。実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
図14A:半影帯のボリューム比較、第1軸はマニュアルで判定されたマスクボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は実施例1によるアルゴリズムにより判定されたボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示す、
図14B:半影帯のボリューム比較、第1軸はマニュアルで判定されたマスクボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸はSTM法により判定されたボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示す、
図14C:実施例1によるアルゴリズムにより判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定した半影帯ボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す、
図14D:STM法により判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定した半影帯ボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す。
図14C〜Dにおいて、実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
【0147】
図15:区分のパフォーマンス。
図15A:実施例1および実施例3によるアルゴリズム、ならびにSTMによる半影帯の区分に対する感度(Sens.)および特異性(Spec.)のプロット。実施例1および実施例3によるアルゴリズムについて、感度の中央値は71%(第25〜第75四分位数:59〜83%)であり、特異性の中央値は95%(第25〜第75四分位数:92〜98%)である。STMに対する感度の中央値は64%(第25〜第75四分位数:49〜77%)であり、STMに対する特異性の中央値は92%(第25〜第75四分位数:88〜95%)である。
図15B:ダイス係数は、STMによって推定された半影帯(中央値=0.46)に比べて、実施例1および実施例3によるアルゴリズムによって推定された半影帯(中央値=0.67)において有意に高い値p<0.001となった
【0148】
図16:a)エキスパート、b)実施例3によるアルゴリズム、およびc)STMによって輪郭描画されたDWI病変部の例。我々は、実施例3によるアルゴリズムで輪郭描画したDWI病変部が、マニュアルで輪郭描画したDWI病変部よりも、より整合性のあるものであると理解している。一方、STMにより推定されたDWI病変部は、よりばらつきが大きく、擬似陽性病変部を含むものである。
【0149】
図17:a)エキスパート、b)実施例1および実施例3によるアルゴリズム、およびc)STMによって輪郭描画された半影帯の例。我々は、実施例1および実施例3によるアルゴリズムで輪郭描画した半影帯が、マニュアルで輪郭描画した半影帯によりよく一致するものであり、密着した(coherent)半影帯を示すものであると理解している。一方、STMにより推定された半影帯は、よりばらつきが大きく、広い擬似陽性半影帯エリアを含むものである。
【0150】
実施例4−TTPデータを含む画像のセグメンテーションの第1代替案
素材および方法
モルフォロジー・グレースケール再構成
実施例1と同様。
【0151】
連結成分ラベリング
実施例1と同様。
【0152】
レベルセット
CCL生成病変部境界は、マニュアルで輪郭描画した経験的事実認識に基づく境界に比べて滑らかでないかもしれない。我々は、経験的事実認識に基づく病変部境界を、滑らかな曲線Cを探索することによって間接的に近似したが、これは、この曲線内外のTTPの変動を最小化する。我々は、チャン−ヴェーゼにより提案されているマンフォード−シャー・エネルギー最小化問題のレベルセット表現を利用した。詳細は、TF チャン(Chan TF)、LA ヴェーゼ(Vese LA)著の参考文献「エッジのないアクティブな輪郭(“Active contours without edges”)」IEEE画像処理関連紀要、第10巻第2号、266〜277頁、2001年(IEEE Transactions on Image Processing, vol. 10, issue 2, p. 266-277, 2001)でも参照可能である。この文献は、ここで引用により補充するものとする。実施例4のレベルセット法は、実施例2のレベルセット法とほぼ同じである。
【0153】
実施例4によるアルゴリズム
−病変部境界を平滑化するステップ
に代えて、
−CCLアルゴリズムによって発生するTTP病変部マスクで開始されるレベルセットアルゴリズムを適用するステップ
があることを除き、実施例1と同様である。
この後者のステップから得られるマスクは、TTP>4秒でソフト閾値化処理されたTTP病変部マスクと考えることができる。
【0154】
実施例4によるTTPセグメンテーションアルゴリズムは、MathWorks(登録商標)によるMatlab(登録商標)R2010aにおいて実装されるが、実施例4によるセグメンテーションアルゴリズムが他のプログラミング言語でも同様に実装可能であることは、当業者であれば理解される。
【0155】
実施例4によるアルゴリズムは、対応する方法により代替可能であると理解される。
【0156】
患者と画像取得
我々は、APSのパフォーマンスを評価するため、168名の急性虚血性脳卒中患者の同齢集団(女性=70名)を利用した。患者は、多施設治験I−KNOWに参加している病院に収容されていた。患者の年齢の中央値は70歳、症状の発現から最初のMRIスキャンまでの時間は中央値で152分であった(表V)。
【0157】
表Vはプールされた患者の特徴を示すものである。範囲は、第1および第3四分位数を示す。
【0158】
急性TTP病変部は中央値が58.2mL、NIHSSの中央値は10であった。I−KNOWプロトコルでは7つの脳卒中サブタイプを定義しており、そのうち、心臓塞栓源が第一の脳卒中サブタイプであり、それに続くのが、明らかにされていないサブタイプおよび重篤な頸動脈狭窄を有する大血管疾患であった。標準動的磁化率造影剤MRIを異なるモデルのスキャナー(GE社のSigna Excite 1.5、GE社のSigna Excite 3、GE社のSigna HDx 1.5、シーメンス社のTrioTim 3、シーメンス社のAvanto 1.5、シーメンス社のSonata 1.5、フィリップス社のGyroscan NT 1.5、およびフィリップス社のIntera 1.5)上で実行した。ガドリニウムベースの造影剤(0.1mmol/kg)を5ml/秒のペースで静脈注射で注入し、同じペースで生理的塩類溶液30mlを注入した後で、PWIシーケンス(TE30〜50ms、TR1500ms、FOV24cm、マトリックス128×128、スライス厚5mm)を得た。得られた信号強度を、時間−濃度曲線に変換し、各時間−濃度曲線に平滑化ガンマ変量フィッティング手続きが適用された。
【0159】
実施例1によるアルゴリズムとマニュアルでのTTP病変部輪郭描画の比較
豊富な臨床経験をもつ4名の評価者(1名の神経放射線科医と3名の放射線科医)が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、TTP病変部をマニュアルで輪郭描画した。評価者が、何らかの強度スケール等の脳マップを参照しないようにしておいた。閾値化法のような自動前処理は適用されない。自動判定されたTTP病変部ボリュームを、1、2、3および4の評価者間一致度ごとに、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部ボリュームと比較した。最後に、>4秒のTTP病変部も、STMを用いて推定され、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部と比較された。この研究調査において、我々は、TTP>4秒でTTP病変部を推定したが、この固有閾値は、梗塞形成リスクのある組織を特定するためのいくつかの研究調査において評価されている(たとえば、Sobesky, J., et al.共著、「どのピーク到達時間閾値が半影帯フローを最も良く特定するか?急性虚血性脳卒中における灌流強調磁気共鳴影像法およびポジトロン放射型断層撮影法の比較(Which time-to-peak threshold best identifies penumbral flow? A comparison of perfusion-weighted magnetic resonance imaging and positron emission tomography in acute ischemic stroke)」Stroke誌、2004年、35(12):2843〜7頁(2004. 35(12): p. 2843-7)。この文献は、ここで引用することにより補充するものとする。)。アルゴリズム/STMおよびマニュアルで輪郭描画された病変部の間の幾何学的かつボリューム上の類似度を定量化するために、我々は、0と1の間の数であるダイス係数(定義:結びつけられたマスクの集合について、2つのマスクの論理積の2倍)を利用する。1は完全に重なること、0(ゼロ)はまったく重ならないことを示す。感度および特異性が、同側半球上で判定される。
【0160】
結果
ボリューム比較
マニュアルでの輪郭描画および実施例4のアルゴリズムによって自動輪郭描画されたTTP病変部間のボリュームの最も良く相関するのは、評価者間一致度が3のときで、スピアマン相関はR
2=0.89であった(
図18A参照)。マニュアルでの輪郭描画(データ省略)に比べると、評価者間一致度が1および2のとき、実施例4のアルゴリズムによる自動手法では、TTP病変部ボリュームを小さく推定したが、評価者間一致度が4のとき、アルゴリズムはTTP病変部ボリュームを過大に推定した。最適ボリューム相関において、マニュアルでの輪郭描画とアルゴリズムとの間の平均差は、−0.26mL(±2SD:33mL)であった(
図18C参照)。
【0161】
TTP>4秒で閾値化処理したTTPマップは、評価者間一致度が3で最良の相関を示した。スピアマン相関はR
2=0.73であった(
図18B参照)。マニュアル輪郭描画とSTMとの間の平均差は、−281mL(±2SD:46.64mL)であった(
図18D参照)。
【0162】
図18に、TTP>4秒での実施例4によるアルゴリズムとSTM、およびマニュアルでの輪郭描画によって推定されるTTP病変部のボリューム比較を示す。
図18Aに、実施例4によるアルゴリズムとマニュアルでの輪郭描画とのボリュームの相関を示す(R
2=0.89)。第1軸(目盛りは0〜400の範囲)はマニュアルで判定されたマスクボリューム[mL]を示し、第2軸(目盛りは0〜400の範囲)は実施例4によるアルゴリズムによって判定された病変部ボリューム[mL]を示す。
図18Bに、STMとマニュアルでの輪郭描画とのボリュームの相関を示す(R
2=0.73)。第1軸(目盛りは0〜400の範囲)はマニュアルで判定されたマスクボリューム[mL]を示し、第2軸(目盛りは0〜400の範囲)はSTM法によって判定された病変部ボリューム[mL]を示す。
図18Cは、実施例4によるアルゴリズムと対比して示したマニュアルでの輪郭描画に対するブランド−アルトマンプロットを示し、
図18Dは、STMと対比して示したマニュアルでの輪郭描画に対するブランド−アルトマンプロットを示す。実線は対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。第1軸(目盛りは0〜500の範囲)は平均病変部ボリューム[mL]を示し、第2軸(目盛りは−250〜400の範囲)はマニュアルで判定されたボリュームと、
図18Cでは実施例4によるアルゴリズム、
図18DではSTM法によってそれぞれ判定されたボリュームとの間の差[mL]を示す。
【0163】
図20に、実施例4によるアルゴリズムおよびSTMによって生成するセグメンテーションの例を示す。上の列にTTPマップを示し、以下の列に、a)マニュアルマスク、b)実施例4によるアルゴリズムから得られたマスク、およびc)STMから得られたマスクをTTPマップ上に重ねて(白)示している。マニュアル以外の2つのマップは、TTP>4秒で得られる。一般に、実施例4によるアルゴリズムは、閾値法と比べて、滑らかな曲線として境界を推定する。さらに、実施例4によるアルゴリズムは、擬似陽性病変部を回避することが高い水準で可能である(
図20)。
【0164】
区分のパフォーマンス
評価者間一致度が3で、実施例4によるアルゴリズムに対する感度の中央値(中央値:79%、第25〜第75四分位数:40〜85%)は、STMに対する感度(中央値:72%、第25〜第75四分位数:40〜85)を上回る幅に有意差はなかった(p=0.22)。対照的に、アルゴリズムに対する特異性の中央値は(95% 第25〜第75四分位数:90〜98%)はSTMの95%(第25〜第75四分位数:87〜96%)と比べて有意に高い(p<0.001)値となった。添付2の表IV参照。さらに、ダイス係数分析によって、アルゴリズムによって推定されるTTP病変部マスク(ダイス係数中央値:0.74、第25〜第75四分位数:0.52〜0.82)が、STMにより生成されるマスク(ダイス係数中央値:0.54、第25〜第75四分位数:0.24〜0.70)よりも、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部マスクに対する類似度が有意に(p<0.001)高いことが示された。
図19参照。
【0165】
表IVは、TTP>4秒での、実施例4によるアルゴリズムとSTMに対する、感度と特異性を百分率で表すものである。括弧の中に、第1および第3四分位数が与えられており、さらに、順位和検定からの統計データも与えられている。
【0166】
図19に、実施例4によるアルゴリズムとSTMに対するダイス係数のボックスプロットを示す。アルゴリズムに対するダイス係数の中央値は0.74(0.52〜0.82)、STMに対しては、ダイス係数中央値は0.54(0.24〜0.70)であった。
【0167】
実施例5−DWIにより得られる画像のセグメンテーションの第1代替案
素材および方法
モルフォロジー・グレースケール再構成
実施例3と同様。
【0168】
レベルセット
病変部と正常な組織との間の画像コントラストは、DWI画像において明瞭に認識可能であり、モルフォロジー・グレースケール再構成によって、さらに強調される。しかし、単純な閾値化法は、個体差を問わず適用可能な確立したDWI閾値が存在せず、DWI画像に固有のノイズに起因する「擬似」病変部が現れるという難点がある。レベルセットアルゴリズムは、DWI病変部境界を、滑らかな曲線Cを探索することによって間接的に推定し、これは、同時に、この曲線内外のDWI強度の変動を最小化する。我々は、チャン−ヴェーゼにより提案されているマンフォード−シャー・エネルギー最小化問題のレベルセット表現を利用した。詳細は、TF チャン(Chan TF)、LA ヴェーゼ(Vese LA)著の参考文献「エッジのないアクティブな輪郭(“Active contours without edges”)」IEEE画像処理関連紀要、第10巻第2号、266〜277頁、2001年(IEEE Transactions on Image Processing, vol. 10, issue 2, p. 266-277, 2001)でも参照可能である。この文献は、ここで引用により補充するものとする。実施例5のレベルセット法は、実施例2のレベルセット法とほぼ同じである。
【0169】
実施例5によるアルゴリズム
自動生成されたCSFマスクがDWIマップ中の脳室を除去する。CSFマスクは、クラスター分析を用いることによって取得される。k平均クラスタリング法への入力画像は、構造画像(BZERO)および拡散強調画像(見かけの拡散係数、ADC)により結合された画像である。MNI(Montreal Neurological Institute)テンプレートをPWIマップに位置合わせ(co-registering)することによって、左右の半球マスクが自動的に生成される。脳マスクの全体は、閾値法CBV>0により生成され、その全脳マスク中のまばらに連結された島がモルフォロジー的間引きによって除去される。DWIボリュームの低質スライス中の脳以外の組織(たとえば眼、骨、空気など)が、ノイズ成分をもたらし、擬似陽性比率が高くなる。したがって、我々は、この低質スライスを、各スライス毎の強度の分散を分析することによって除去している。TTP病変部マスクは、実施例4に記載されているアルゴリズムを用いて自動生成した。
【0170】
レベルセットアルゴリズムは、ADCマップを550mm
2/秒で閾値化することにより導出された初期マスクでスタートされなければならない。ADCマスク内における各スライス上のサイズが0.25mL未満の小島を、モルフォロジー・グレースケール再構成に類似するモルフォロジー・バイナリー再構成の25mLに対応するカーネルサイズを有するものを用いて、除去した。
【0171】
DWI画像をモルフォロジー・グレースケール再構成を用いてフィルターにかけた。レベルセットアルゴリズムは、モルフォロジー・グレースケール再構成処理されたDWI画像とADCマスクで開始された。
【0172】
不整合(mismatch)は、TTP病変部からDWIおよびTTP病変部の交わりをマイナスしたものとして定義される:mismatch=TTP
area−(DWI
area∩TTP
area)。自動半影帯セグメンテーションアルゴリズムは、MatlabR2010a(MathWork社、マサチューセッツ州ネイティック(Natick))において実装される。
【0173】
実施例5によるアルゴリズムは、対応する方法により代替可能であると理解される。
【0174】
患者と画像取得
我々は、APS(automatic penumbra segmentation:自動半影帯セグメンテーション)のパフォーマンスを評価するため、168名の急性虚血性脳卒中患者の同齢集団(女性=70名)を利用した。患者は、多施設治験I−KNOWに参加している病院に収容されていた。患者の年齢の中央値は70歳、症状の発現から最初のMRIスキャンまでの時間は中央値で152分であった(表V)。急性DWI病変部の中央値は2.4mL、NIHSSの中央値は10であった。I−KNOWプロトコルでは7つの脳卒中サブタイプを定義しており、そのうち、心臓塞栓源が第一の脳卒中サブタイプであり、それに続くのが、明らかにされていないサブタイプおよび重篤な頸動脈狭窄を有する大血管疾患であった(表V)。MRIを異なるモデルのスキャナー(GE社のSigna Excite 1.5、GE社のSigna Excite 3、GE社のSigna HDx 1.5、シーメンス社のTrioTim 3、シーメンス社のAvanto 1.5、シーメンス社のSonata 1.5、フィリップス社のGyroscan NT 1.5、およびフィリップス社のIntera 1.5)上で実行した。b値=0およびb値=1.000秒/mm2で、エコープラナー(echoplanar)DWIを取得した。
【0175】
実施例5によるアルゴリズムとマニュアルでのDWI病変部輪郭描画の比較
豊富な臨床経験をもつ4名の評価者(1名の神経放射線科医と3名の放射線科医)が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、DWI病変部をマニュアルで輪郭描画したが、評価者は、何らかの強度スケール等の脳マップを参照しないようにしておいた。閾値化法のような自動前処理は適用されない。自動判定されたDWI病変部ボリュームを、1、2、3および4の評価者間一致度ごとに、マニュアルで輪郭描画したDWI病変部ボリュームと比較した。マニュアル半影帯マスクはマニュアルで輪郭描画されたDWIおよびTTP病変部マスクに基づいて決定され、同様に、自動半影帯マスクは自動生成されたDWIおよびTTP病変部マスクに基づいている。半影帯に対して、同側半球における感度と特異性、およびダイス係数が判定される。
【0176】
結果
ボリューム比較
実施例5によるアルゴリズムおよびマニュアルで輪郭描画されたDWI病変部間のボリュームの最も良く相関するのは、評価者間一致度が3のときであった。スピアマン相関はR
2=0.61、マニュアルとアルゴリズムとの間の平均差は0.23mL((±2SD:25.6mL)となった(
図22Aおよび22C参照)。対照的に、STM病変部ボリュームおよびマニュアルで輪郭描画されたマスクボリューム間では、ボリュームの相関は低かった。スピアマン相関はR
2=0.33、マニュアルと自動化された手法との間の平均差は−124.4mL(±2SD:84.5mL)となった(
図22Bおよび22D参照)。
【0177】
実施例5によるアルゴリズムで判定された半影帯ボリュームは、マニュアルで輪郭描画された半影帯ボリュームと良好な相関R
2=0.84を示した(
図23参照)。マニュアル輪郭描画とアルゴリズムとの間の半影帯ボリューム差の中央値は−2.1mL(±2SD:64.7mL)であった。
【0178】
STM半影帯マスクは、マニュアルで輪郭描画した半影帯マスクと比較して、平均差−15.6mL(±2SD:93.6mL)でR
2=0.62の相関を示した。
【0179】
区分のパフォーマンス
感度およびダイス係数に関して、実施例5によるアルゴリズム(感度:中央値=75%、第25〜第75四分位数:63〜85%;DC:中央値=0.70、第25〜第75四分位数:0.57〜0.78)は、STM(感度:中央値=52%、第25〜第75四分位数:31〜70%;DC:中央値=0.44、第25〜第75四分位数:0.26〜0.60)よりパフォーマンスが優れていた(感度:p<0.001、ダイス係数:p<0.0001)。しかし、これら2つの手法間には、特異性に対するオーダーにおいて何ら有意な差は見られなかった(p=0.22)。
【0180】
図21に、初期マスク(下位図面A)からDWI病変部を囲む最終マスク(下位図面D)への発展を示す。下位図面A、B、CおよびDは、それぞれ、反復回数0、80、160、および200に対応する。
【0181】
図22:TTP病変部内において、実施例5によるアルゴリズム、STMおよびマニュアルでの輪郭描画によって推定されるDWI病変部のボリューム比較。実施例5によるアルゴリズムの、マニュアル輪郭描画と対比したときのスピアマン相関は、R
2=0.61であった。細分された下位図面の図示内容:
図23A:DWI病変部のボリューム比較であり、第1軸はマニュアル判定したマスクボリューム(目盛りは0〜150mLの範囲)を示し、第2軸は実施例5によるアルゴリズムによって判定したボリューム(目盛りは0〜150mLの範囲)を示す、
図22B:DWI病変部のボリューム比較であり、第1軸はマニュアル判定したマスクボリューム(目盛りは0〜250mLの範囲)を示し、第2軸はSTM法によって判定したボリューム(目盛りは0〜250mLの範囲)を示す、
図22C:実施例5によるアルゴリズムにより判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマン(Bland-Altman)プロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す、
図22D:STM法によって判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す。
図22C〜Dにおいて、実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。平均差は0.23mL(±2SD:25.6mL)であった。STMによる輪郭描画は、相対的に好ましくない結果を生んだ。スピアマン相関はR
2=0.33、平均差は−124.4mL(±2SD:84.5mL)であった。
【0182】
図23:実施例4および実施例5によるアルゴリズム、STMならびにマニュアル輪郭描画によって推定された半影帯のボリューム比較。
図23C)アルゴリズムと対比して示したマニュアルに対するブランド−アルトマンプロット、そして、
図23D)STMと対比して示したマニュアルに対するブランド−アルトマンプロット。実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
図23A:半影帯のボリューム比較であり、第1軸はマニュアル判定したマスクボリューム(目盛りは0〜500mL)を示し、第2軸は実施例4によるアルゴリズムによって判定したボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示す、
図23B:半影帯のボリューム比較であり、第1軸はマニュアル判定したマスクボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸はSTM法によって判定した半影帯ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示す、
図23C:実施例4によるアルゴリズムにより判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す、
図23D:STM法によって判定されたボリュームと対比して示したマニュアルで判定したボリュームに対するブランド−アルトマンプロットであり、第1軸は平均病変部ボリューム(目盛りは0〜500mLの範囲)を示し、第2軸は差(目盛りは−250〜150mLの範囲)を示す。
図23C〜Dにおいて、実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。スピアマン相関は、マニュアル輪郭描写に対するアルゴリズムについてR
2=0.84であった。平均差は、−2.1mL(±2SD:64.7mL)であった。STMによる半影帯の輪郭描画は、相対的に好ましくない結果を生む。
【0183】
図24A〜B:区分のパフォーマンス。感度およびダイス係数(DC)に関して計測したアルゴリズムとSTMとの間には有意差があった(感度:p<0.05;DC:p<0.001)が、特異性に対するオーダーにおいて何ら有意な差は見られなかった(p=0.26)。
図24A:実施例4および実施例5によるアルゴリズムならびにSTMによる半影帯の区分に対する感度および特異性のプロット。
図24B:ダイス係数(DC)。
【0184】
図25:a)エキスパート(評価者間一致度は3)、b)実施例4および実施例5によるアルゴリズム、およびc)STMによって輪郭描写された半影帯の例。
【0185】
実施例6−TTPデータを含む画像のセグメンテーションの第2代替案
PWIセグメンテーション
虚血半影帯を特定するために、さまざまなPWI測定基準(たとえば、逆畳み込み曲線のピーク到達時間(T
max)、平均通過時間(MTT)およびピーク到達時間(TTP))が提案されてきたが、これらは、組織濃度曲線から得られるサマリーマップ(たとえば、TTP)と、動脈入力関数を用いた逆畳み込みにより生成されるマップ(たとえば、T
maxおよびMTT)という2つのカテゴリーに分かれる。逆畳み込みマップは生理学的に解釈可能であると仮定されるが、サマリーマップは、必ずしも生理学的な事象を反映するわけではない。対照的に、サマリーマップは、そのより直接的な性質のおかげで、逆畳み込みマップに比べてノイズが少ないので、結果的にセグメンテーションの目的にとっては好都合である。この実施例では、我々は、PWI測定基準としてTTPの正規化バージョンを利用した。低灌流組織を特定するためのいくつかの研究調査においてTTP>4秒と評価されているが、4秒でTTPマップを閾値化すると、多くの分散した擬似陽性病変部、たとえば、脳室、眼、磁化率人為結果が、生ずるだろう。この実施例では、我々は、TTPマップ上で認知境界をもつ密着した低灌流病変部を特定するためのアルゴリズムを提案する。
【0186】
方法
モルフォロジー・グレースケール再構成
実施例1と同様。
【0187】
モルフォロジー再構成
モルフォロジー再構成とは、バイナリー画像変換技法であり、たとえば、L.ヴィンセント(Vincent, L.)著の参考文献「画像解析におけるモルフォロジー・グレースケール再構成:応用例と効率的アルゴリズム(“Morphological Grayscale Reconstruction in Image Analysis: Applications and Efficient Algorithms “)」IEEE(米国電気電子技術者学会)画像処理関連紀要、1993年、第2巻第2号、176〜201頁(IEEE Transactions on Image Processing, 1993. 2(2): p. 176-201)を参照のこと。この文献は、ここでその全体を引用することにより補充するものとし、特に、セクションが参照される。この文脈において、モルフォロジー再構成は、擬似陽性TTP病変部を除去するために使用されている。この技法は、概念的には、TTPマップの閾値化法により得られる初期マスクにより拘束されるシード点(
図26、J、K、Lのラベルが付された画像を含む列4参照)の反復膨張と考えることができる。シード点を拘束していなかったボクセルのクラスターは、再構成マスクには保持されていない。
【0188】
図26に、TTP病変部セグメンテーションアルゴリズムのステップを模式的に示す。各列は、脳以外の組織の除去(列1、画像A、B、Cを含む)、側性マスクの生成(列2、画像D、E、Fを含む)、シード点の検出(列3、画像G、H、Iを含む)、モルフォロジー再構成(列4、画像J、K、Lを含む)、およびレベルセット(列5、画像M、N、Oを含む)に対応する。最初に、元のTTPマップ(A)上に全脳マスク(B)を適用することにより脳以外の組織を除去して、脳以外の組織を除去した画像(C、D)を得る。次に、画像強度値を解析することによって、病変部の側性を決定(E)して、関連する側性のみが残存している画像(F、G)を得る。同側半球上のシード点を検出するために、TTPマップ(G)をモルフォロジー・グレースケール再構成によりフィルタ処理(H)し、最大強度を有する単数または複数のボクセルとしてシード点を定義(I)する。元のTTPマップを閾値化することによって、初期TTP病変部マスクを作成(J)する。初期TTP病変部マスクにより拘束されるシード点を再構成することで、TTP病変部マスクが保持され、擬似陽性病変部が除外される(K)。最後に、TTP病変部マスク境界(L、M)は、レベルセットアルゴリズムを適用することによって調整され(N)、病変部が得られる(O)。
【0189】
レベルセット
自動生成されるTTP病変部は、マニュアルで輪郭描画される病変部と同じ範囲である必要は必ずしもなく、また、境界が、マニュアルで輪郭描画される認知境界と比べて滑らかでなくてもよい。我々は、認知病変部境界を、滑らかな曲線Cを探索することによって間接的に近似したが、これにより、同時に曲線内外のTTPの変動が最小化される。我々は、チャン−ヴェーゼにより提案されているマンフォード−シャー・エネルギー最小化問題のレベルセット表現を利用した。たとえば、T.チャン(Chan, T.)、L.ヴェーゼ(L. Vese)著の参考文献「エッジのないアクティブな輪郭(“Active contours without edges”)」、コンピュータビジョンにおけるScale-space理論、1999年、1682:141〜151頁(Scale-Space Theories in Computer Vision, 1999. 1682: p. 141-151)を参照。この文献は、ここでその全体を引用により補充するものとする。
【0190】
アルゴリズム
全脳マスクおよびCSFマスクにより構成される自動生成される脳マスクが、脳以外の組織、たとえば、脳室、眼等を除去した。全脳マスクは、閾値CBVマップ(CBV>0)により取得された。連結されていない、またはまばらに連結されている、眼や磁化率人為結果などの成分が、モルフォロジー演算を菲薄化(thinning)およびH−ブレーク(H-break)として適用することによって一掃された。R.C.ゴンザレス(Gonzalez, R.C.)、R.E.ウッズ(R.E. Woods)、S.L.エディンズ(S.L. Eddins)共著の参考文献「Matlabを利用したデジタル画像処理(Digital image processing using Matlab)」(2004年)を参照のこと。この文献は、ここで全体を引用することにより補充するものとし、特に、第9章(chapter 9)が参照される。CSFマスクは、高コントラストCSF組織マップ上のボクセル強度のヒストグラム分離により取得された。CSF組織マップは、構造画像(T2)および拡散強調画像(見かけの拡散係数、ADC)を結合することにより取得された、(
図26、A、B、Cのラベルが付された画像を含む列1を参照)。MNI(Montreal Neurological Institute)テンプレートをPWIマップに位置合わせする(co-registering)ことによって、左右の半球マスクが自動生成された(
図26、D、E、Fのラベルが付された画像を含む列2を参照)。脳以外の組織(たとえば、眼、骨、空気など)および静脈(横洞およびS状洞)は、PWIボリューム中の低質スライスのノイズ成分をもたらし、擬似陽性比率が高くなる。したがって、我々は、この低質スライスを、各スライス毎の強度の分散を分析することによって除去した。
【0191】
TTPマップは、病変部側性およびシード点の自動検出に先立ち、モルフォロジー・グレースケール再構成によって、フィルタ処理された。病変部側性の検出は、フィルタ処理後のTTPマップ上の各半球で抽出される3つの特徴に基づいてなされた。各特徴について、「勝利した(winning)」半球には、値1が割り当てられて、究極的には、少なくとも2つの陽性の結果をもつ半球を同側性半球とみなすこととした(
図26、D、E、Fのラベルが付された画像を含む列2を参照)。特徴は、1)左右の半球の平均強度値、2)TTPマップ上の最大強度ボクセルの側性、および3)強度<600*10
−6mm
2/秒を満たすADCボクセルの量とした。シード点は、同側半球上で最大強度を有するボクセル(単数または複数)として定義した;
図26、G、H、Iのラベルが付された画像を含む列3を参照。
【0192】
TTPマップを、対側半球における平均TTP遅延について順に正規化した。初期TTP病変部マスクを、4秒で同側TTPマップを閾値化することによって求め、初期TTP病変部を拘束として利用してシード点を三次元で再構成した(
図26、J、K、Lのラベルを付した画像を含む列4を参照)。最後に、再構成されたTTP病変部マスクでレベルセットアルゴリズムを開始した(
図26、M、N、Oのラベルを付した画像を含む列5を参照)。最終のマスクが、TTP>4秒でソフト閾値化処理されたTTP病変部マスクと考えることができる。
自動TTP病変部セグメンテーションアルゴリズムは、MatlabR2010a(MathWork社、マサチューセッツ州ネイティック)において実装した。
【0193】
患者と画像取得
実施例4と同様。
【0194】
自動とマニュアルでのTTP病変部輪郭描画の比較
神経放射線学分野の豊富な臨床経験をもつ4名の評価者(1名の神経放射線科医と3名の放射線科医)が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、TTP病変部をマニュアルで輪郭描画した。評価者が、何らかの強度スケール等の脳マップを参照しないようにしておいた。自動判定されたTTP病変部ボリュームを、1、2、3および4の評価者間一致度ごとに、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部一致マップと比較した。最後に、>4秒のTTP病変部も、STMを用いて推定され、マニュアルで輪郭描画したTTP病変部と比較された。この実施例では、我々は、TTP>4秒でTTP病変部を推定したが、この固有閾値は、いくつかの研究調査において、梗塞形成リスクのある組織を特定するための最適閾値として評価されているものである。APS/STMおよびマニュアルで輪郭描画された病変部の間の幾何学的かつボリューム上の類似度を定量化するために、我々は、ボリューム相関およびダイス係数(DC)を利用した。DC(定義:結びつけられたマスクの集合について、2つのマスクの論理積の2倍)は、0〜1の間の数であり、1は完全に重なることを、0はまったく重ならないことを示す。区分のパフォーマンスが、感度と特異性について評価され、同側半球上で判定された。
【0195】
結果
ボリューム比較
図27に、TTP>4秒でのアルゴリズムとSTM、およびマニュアルでの輪郭描画により推定されたTTP病変部のボリューム比較を示す。A)アルゴリズムとマニュアル輪郭描画間のボリューム相関(R
2=0.92)(x軸はマニュアルマスクボリューム[mL]を示し、y軸はアルゴリズムマスクボリューム[mL]を示す)。B)STMとマニュアル輪郭描画間のボリューム相関(R2=0.79)(x軸はマニュアルマスクボリューム[mL]を示し、y軸はSTMマスクボリューム[mL]を示す)。C)アルゴリズムと比較したマニュアル輪郭描画のブランド−アルトマンプロット(x軸は平均病変部ボリューム[mL]を示し、y軸は差を示す)であり、D)STMと比較したマニュアル輪郭描画のブランド−アルトマンプロット(x軸は平均病変部ボリューム[mL]を示し、y軸は差を示す)である。実線は、比較されている2つの方法の平均を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
【0196】
マニュアルおよび自動で輪郭描画されたTTP病変部間の最良のボリューム相関、ダイス係数(DC)および感度/特異性は、評価者間一致度が3のときであった。APSに対するスピアマン相関はR
2=0.91であった、
図27A参照。評価者間一致度が1および2のとき、APSは、真のTTP病変部ボリュームを小さく推定したが、一方で、評価者間一致度が4のときは、APSは、マニュアル輪郭描画に比べて、TTP病変部ボリュームを過大に推定した(データ省略)。マニュアル輪郭描画とAPSとの間の平均差は、−2.3mLで、±2SDは63.6mL(p<0.001)であった、
図27C参照。
STMに対するスピアマン相関はR
2=0.78であった、
図27B参照。マニュアル輪郭描画とSTMとの間の平均差は、−22.6mLで、±2SDは85.8mLであった、
図27D参照。
【0197】
幾何学的比較
APSは、マニュアルで輪郭描出されたTTP病変部マスクとの幾何学的一致という観点ではSTMより優れたパフォーマンスを示した。APSに対するDCの中央値は、第25〜第75四分位数間範囲が0.50〜0.81のとき0.74であった(p<0.001)。対照的に、STMに対するDCの中央値は、第25〜第75四分位数間範囲が0.21〜0.68のとき0.53であった、
図28参照。
処理時間の中央値は、患者一人当たり3.4秒(1.9〜4.9)で、もっぱらTTP病変部のボリュームのみによって決定するものであった。
【0198】
図28に、APSおよびSTMに対するダイス係数(DC)のボックスプロットを示す。APSに対するDC中央値は0.74(0.50〜0.81)で、STMに対しては、DC中央値は0.53(0.21〜0.68)であった。
【0199】
区分のパフォーマンス
評価者間一致度が3で、APSは、区分において、STMを有意に上回るパフォーマンスを示した。APSに対する感度の中央値は77%、第25〜第75四分位数間範囲(IQR)は58〜87%(p<0.01)で、特異性の中央値は97%、第25〜第75IQRは95〜100%(p<0.05)であった。STMに対しては、感度の中央値は65%、第25〜第75IQRは38〜80%で、特異性の中央値は95%、第25〜第75IQRは92〜98%であった。
【0200】
表VIに、同側半球上で測定された自動手法に対する感度と特異性を百分率で示す。括弧に、第1および第3四分位数が与えられており、さらに、順位和検定からの統計データも与えられている。
【0201】
検討
本発明で達成可能な利点としては、連結成分ラベリングアルゴリズムおよびマンフォード−シャー・セグメンテーションのレベルセット実装形態を用いて関連するTTPマップ上にTTP病変部を輪郭描画するための時間効率的で全自動のセグメンテーションアルゴリズムが提供されることが挙げられるかもしれない。APSに対するアルゴリズムは、マニュアル輪郭描画された病変部との良好な一致を示し、ボリューム相関、DCおよび感度/特異性に関して、閾値TTP病変マスクよりも有意に優れたパフォーマンスを示した。
【0202】
図29に、APS(列C)およびSTM(列D)により自動生成させたTTP病変部マスクおよびエキスパートによるマニュアル輪郭描画(列B)されたTTP病変部マスクの例をTTPマップ上に重畳させて示す。列A)は、マスクなしのマップを示す。3つの縦列は3つの異なる画像に対応する。
【0203】
脳以外の組織を除外するための適切な脳マスクは、自動化された手法とマニュアルでの輪郭描出との間で良好な一致を得るためには、有益であるといえるかもしれない。良好な脳マスクを使用する効果が
図29の縦列1に示されている。STM病変部マスクは、低灌流エリアの特定については、マニュアルでの輪郭描出と良好な一致を示しているが、適切な脳マスクを用いていないため、擬似陽性比率がAPSと比べて高くなっている。主として脳室に起因するノイズがAPSや他の自動化された手法の最適パフォーマンスを制約している。CSFは、TTPマップ上で過大な強度を発するので、低灌流エリアとしてセグメンテーションされるだろう、
図29、縦列2、STMマスク(列D)参照。APSに対して、我々は、CSFを大幅に取り除く高速な強度ベース脳室セグメンテーションアルゴリズムを開発したが、これはTTP病変部の過大な推定を回避するために有益であろう。テンプレートベースのレジスタード脳室マスクが強度ベースの手法を代替する方法となりうるが、時間効率は劣る。
【0204】
小さなTTP病変部(<3mL)は、眼などのノイズ成分が小さな病変部のボリュームを拡げてしまうので(
図29、縦列1)、特定が困難である。特定の閾値を下回る成分を除去することが提案されているが、この方法だと、ノイズ成分を除去すると同時に低灌流ボクセルも除去してしまうので擬似陰性比率が上昇してしまう。CCLおよびレベルセットのノイズ排除特性を利用する利点は、小さなTTP病変部特定の問題を克服することであるといえるだろう。
【0205】
ここで、我々は、自動セグメンテーション手法のパフォーマンスを評価する追加尺度としてダイス係数を導入した。以前は、評価尺度としてボリューム相関および感度/特異性を使用したが、これらの尺度には、それぞれ異なる落とし穴がある。ボリューム相関係数は、推定されたマスクボリュームとマニュアルで取得されたマスクボリュームとの間の関連付けの優れた一覧を与えてくれるものではあるが、マスク間の幾何学的一致を反映しない。たとえば、
図29、縦列2に示した場合においては、3つの手法でボリュームは非常に類似している(マニュアル:16.5mL、APS:15mL、およびSTM17mL)が、STMに対する病変部ボリュームは多くの擬似陽性ボクセルを含んでいる。
【0206】
区分尺度としての感度は、小さい病変部において、擬似陰性部に対する感度が高く、割り引いて扱うことができるが、特異性は、判定されるエリア(通常は同側性半球である)によって、人為的に強調される、たとえば、
図29、縦列1(特異性APSおよびSTM:0.99および0.99)。DCは、自動セグメンテーション手続きのパフォーマンスを評価する究極の尺度ではない。なぜなら、小さな病変部に対する感度が高い、たとえば、
図29、縦列1(APSおよびSTMに対するDC:0.70および0.19)からである。そのため、我々は、関連研究において、自動セグメンテーションアルゴリズムの異なる側面をもつパフォーマンスをカバーする単一の尺度を手に入れるまでは、再現可能性および準拠標準のため、少なくとも、ボリューム相関(関連性尺度)、感度/特異性(区分尺度)およびDC(一致尺度)を報告することを提案している。
【0207】
この実施例では、我々は、PWI測定基準としてTTPマップを用いたが、梗塞形成リスクのある組織を最も適切に特定するために異なるPWI測定規準を適用することもできると考えられるとともに、この実施例で提案されている方法を、たとえばT
maxマップ、MTTマップおよび第1モーメントマップに拡張することも考えられる。
複数の患者について梗塞形成リスクのある組織を特定するための生理学的に真のTTP閾値が、いくつかの研究で評価されている。TTP>4秒が、急性虚血性脳卒中のMRI−PET研究において認証され、臨床現場で広く受容されている。
【0208】
結論として、実施例6によるアルゴリズムは、低灌流エリア周りの滑らかな境界を検出することができるとともに、エキスパートによる輪郭描画と良好な一致を示すものであった。
【0209】
実施例7−DWIにより得られる画像のセグメンテーションの第2代替案
この実施例では、ADCマップからの同時発生情報を利用してDWI画像上のDWI病変部を自動セグメンテーションするためのアルゴリズムが提供されている。DWI病変部のセグメンテーションのための自動アルゴリズムをPWI病変部のセグメンテーションのための自動アルゴリズムと組み合わせることで、臨床用のツールとなるような、全自動半影帯セグメンテーションツールを提供することができる方法が提供される。
【0210】
モルフォロジー・グレースケール再構成
実施例3と同様。
【0211】
モルフォロジー再構成
モルフォロジー再構成は、バイナリー画像変換技術[10]であり、この文脈においては、DWI画像上の擬似陽性DWI病変部を取り除くために用いられている。この技術は、概念上、DWIマップの閾値化によって得られる初期マスクにより拘束されるシード点(
図30、第5列3060参照)の反復膨張と考えることができる。シード点を拘束していなかったボクセルのクラスターは、再構成マスクには保持されていない。
【0212】
アルゴリズム
全脳マスクおよびCSFマスクにより構成される自動生成される脳マスクが、脳以外の組織、たとえば、脳室、頭骨等を除去した、
図30および第1列3052参照。全脳マスクは、閾値CBVマップ(CBV>0)により取得され、連結されていない、またはまばらに連結されている、眼や磁化率人為結果などの成分が、モルフォロジー演算を菲薄化(thinning)およびH−ブレーク(H-break)として適用することによって一掃された。たとえば、R.C.ゴンザレス(Gonzalez, R.C.)、R.E.ウッズ(R.E. Woods)、S.L.エディンズ(S.L. Eddins)共著の参考文献「Matlabを利用したデジタル画像処理(Digital image processing using Matlab)」(2004年)を参照のこと。この文献は、ここで全体を引用することにより補充するものとする。CSFマスクは、構造画像(T2)とADCとを結合することにより取得された高コントラストCSF組織マップ上のボクセル強度のヒストグラム分離により取得された。MNI(Montreal Neurological Institute)テンプレートをPWIマップに位置合わせする(co-registering)ことによって、左右の半球マスクが自動生成された。DWIボリューム中の低質スライスにおける脳以外の組織(たとえば、眼、骨、空気など)は、ノイズ成分をもたらし、擬似陽性比率が高くなる。そこで、我々は、対象となるDWIスライスを特定するために、実施例6に記載の自動生成TTP病変部マスクを使用した。初期ADCおよびDWIマスクは、ADCマップを600*10
−6mm
2/秒で、DWI画像を対側性平均強度+2標準偏差で、閾値化処理することによって作成された、
図30および第2〜第3列3045〜3056参照。初期マスクの多重化によって、DWI病変部のコアを保持し、擬似陽性病変部(マーカー画像)を一掃する、
図30および第4列3058参照。初期DWI病変部マスクにより拘束されるマーカー画像を再構成することによって、最終DWI病変部マスクが得られる、
図30および第5列3060参照。PWI−DWI不一致は、TTP病変部からDWIおよびTTP病変部の論理積をマイナスしたものとして定義される。自動半影帯セグメンテーションアルゴリズムは、MatlabR2010a(MathWork社、マサチューセッツ州ネイティック)において実装した。
【0213】
図30に、DWI病変部セグメンテーションアルゴリズムのステップを模式的に示す。最初に、元のDWI画像(A)上に全脳マスク(B)を適用することにより脳以外の組織を除去して画像(C)を得る。次に、ADCマップ(D)を600*10−6mm2/秒で閾値化することによって、ADCマスク(E)を作成する。画像(F)は、画像(D)にADCマスク(E)を重畳したものを示している。モルフォロジー・グレースケール再構成したDWI画像(G)を対側性平均強度+2標準偏差で閾値化することによって、DWIマスク(H)を生成する。画像(I)は、画像(G)にマスク(H)を重畳したものを示している。ADCマスク(J)とDWIマスク(K)を多重化する(生成したマスクは、脳の中のADC強度が低くDWI強度が高いエリアを示す)ことにより、マーカー画像(L)を構成する。初期DWIマスク(N)により拘束されるマーカー画像(M)を再構成することで、最終的なDWI病変部マスク(O)が得られる。(R)は、元のDWI画像(P、A)上へDWI病変部マスク(Q)を重畳したものである。
【0214】
患者と画像取得
実施例5と同様。
【0215】
自動とマニュアルでのDWI病変部および半影帯輪郭描画の比較
神経放射線学分野の豊富な臨床経験をもつ4名の評価者(1名の神経放射線科医と3名の放射線科医)が、院内で開発されたソフトウェアを用いて、DWI画像上にDWI病変部をマニュアルで輪郭描画した。評価者が、何らかの強度スケール等の脳マップを参照しないようにしておいた。自動判定されたDWI病変部ボリュームを、そして、評価者間一致度3で、マニュアル輪郭描画されたDWI病変部一致マップと比較した。自動化された手法およびマニュアルで輪郭描画された病変部の間の幾何学的およびボリューム上の類似度を定量化するために、我々は、ボリューム相関およびダイス係数(DC)を利用した。DC(定義:結びつけられたマスクの集合について、2つのマスクの論理積の2倍)は、0〜1の間の数であり、1は2つの同一形状が完全に重なることを、0はまったく重ならないことを示す。マニュアルで輪郭描画されたPWI病変部内でDWI病変部のボリューム上および幾何学的な比較がなされた。区分のパフォーマンスが、感度と特異性について評価され、同側半球上で判定された。
【0216】
結果
ボリューム比較
図31に、自動化された手法およびマニュアル輪郭描画により推定されるDWI病変部のボリューム比較を示す。
【0217】
図32に、自動化された手法とマニュアル輪郭描画により推定される半影帯のボリューム比較を示す。
【0218】
図31〜32の両方について、各下位図面A〜Dの図示内容:A)APSマスクおよびマニュアルでの輪郭描画の間のボリューム相関(x軸はマニュアルマスクボリューム[mL]を示し、y軸はAPSマスクボリューム[mL]を示す)、B)APSと対比して示したマニュアル輪郭描画に対するブランド−アルトマンプロット(x軸は平均病変部ボリューム[mL]を示し、y軸は差を示す)、C)STMとマニュアル輪郭描画の間のボリューム相関(x軸はマニュアルマスクボリューム[mL]を示し、y軸はSTMマスクボリューム[mL]を示す)、D)STMと対比して示したマニュアル輪郭描画に対するブランド−アルトマンプロット(x軸は平均病変部ボリューム[mL]を示し、y軸は差を示す)。実線は、対比されている両方法の間の平均値を示し、破線は、平均差±2SDを示す。
【0219】
自動化された手法およびマニュアル輪郭描画により推定されるDWI病変部のボリューム比較(
図31参照)に関して、マニュアル輪郭描画と対比したときのAPSに対するスピアマン相関はR
2=0.95であった。マニュアルおよびAPSの輪郭描画の平均差は、−1.2mL(±2SD:10.3mL)で、APSがやや過大に推定していることが示されている、
図31および上列(下位図面A〜B)参照。STM技法については、R
2=0.80、マニュアルおよびSTMの輪郭描画の平均差は、−11.6mL(±2SD:37.1mL)で、STMが過大に推定していることが示されている、
図31および下列(下位図面C〜D)参照。
【0220】
自動化された手法およびマニュアル輪郭描画により推定される半影帯のボリューム比較(
図32参照)に関して、マニュアル輪郭描画と対比したAPSについて、スピアマン相関はR
2=0.88であった(
図32および上列(下位図面A〜B)参照)。マニュアルおよびAPSの輪郭描画の平均差は、−0.2mL(±2SD:65.5mL)で、APSが若干過大に推定していることが示されている。STM技法については、R
2=0.67(
図32および下列(下位図面C〜D)参照)、マニュアルおよびSTMの輪郭描画の平均差は、−31.6mL(±2SD:108.2mL)で、STMがかなり過大に推定していることが示されている。
【0221】
ダイス係数および区分のパフォーマンス
APSで生成したDWIマスクに対するDCの中央値は0.65(第25〜第75四分位数:0.44〜0.79)、感度の中央値は0.83(第25〜第75四分位数:0.53〜0.95)、そして特異性の中央値は1(第25〜第75四分位数:100〜1)であった。
STMで生成したDWIマスクに対するDCの中央値は0.24(第25〜第75四分位数:0〜0.51)、感度の中央値は0.96(第25〜第75四分位数:0〜1)、そして特異性の中央値は1(第25〜第75四分位数:1〜1)であった。
【0222】
図33に、半影帯区分についてのパフォーマンスがどの程度かを一覧して示す。APS半影帯マスクに対して、ダイス係数(DC)中央値が0.68(第25〜第75四分位数:0.45〜0.78)で、感度の中央値(Sens.)は0.78(第25〜第75四分位数:0.58〜0.90)、そして、特異性(Spec.)の中央値は0.96(第25〜第75四分位数:0.92〜0.98)であった。
STM半影帯マスクに対して、DCの中央値が0.37(第25〜第75四分位数:0.06〜0.59)で、感度の中央値は0.54(第25〜第75四分位数:0.23〜0.77)、そして、特異性の中央値は0.95(第25〜第75四分位数:0.90〜0.98)であった。患者ごとの処理時間の中央値は、21.4秒(8.9〜33.9)であったが、これは、主に半影帯ボリュームおよび評価対象となるスライスの数により変動するものである。
【0223】
検討
実施例7によるDWI病変部セグメンテーションアルゴリズムで達成可能な利点は、DWI病変部の自動セグメンテーションのためにADCマップおよびDWI画像から同時発生情報を抽出することで、より良好なセグメンテーションが達成できることである。ADCマップ上で低信号強度が、そしてDWI画像上で高信号強度が現れている病変部のみが、DWI病変部としてセグメンテーションされる。この手法によって、アルゴリズムは、通常ならばDWI画像上に高信号強度として現れる「古い」病変部や、普通はADCマップ上で低信号強度として現れる白質構造をセグメンテーションしてしまうことを回避した。
【0224】
結論として、本発明は、生体組織における半影帯の半影帯サイズがどの程度かを推定する方法であって、灌流強調影像法(PWI)および拡散強調影像法(DWI)によりそれぞれ取得される第1画像および第2画像を解析するとともに、第1画像の解析がレベルセット法の適用を含み、第2画像の解析がグレースケール・モルフォロジー演算の適用を含む、方法に関する。本発明のさらなる実施形態において、第1画像および第2画像のいずれか一方に連結成分ラベリングアルゴリズムを適用してもよい。本発明はさらに、システム、コンピュータプログラム製品および対応する方法の使用に関する。
【0225】
本発明は、具体的な実施形態と関連付けて説明してきたが、それは、提示されている実施例にいかなる意味においても限定されるものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項のセットによって記載されている。請求項の文脈において、「有する」または「含む」(“comprising” or “comprises”)という用語は、他の可能な構成要件もしくはステップを排除するものではない。また、「ある」や「ひとつの」など(“a” or “an” etc.)の語の記載は、複数の場合を除外するものと解釈されるべきではない。図面に示されている要素に関連して請求項中の参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項に記載される個々の特徴は、好適に組み合わせることが可能かもしれないし、異なる請求項中のこれらの特徴の記載は、特徴の組み合わせが可能・有益ではない場合を除外するものではない。
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】