(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034303
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】止血装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-550617(P2013-550617)
(86)(22)【出願日】2012年1月20日
(65)【公表番号】特表2014-504522(P2014-504522A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】US2012022030
(87)【国際公開番号】WO2012100162
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2015年1月16日
(31)【優先権主張番号】13/010,549
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513184415
【氏名又は名称】クラーク、ティモシー ダブリュー.アイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ティモシー ダブリュー.アイ.
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0217202(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0171192(US,A1)
【文献】
特表2005−521464(JP,A)
【文献】
特開平05−329168(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0280541(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0239092(US,A1)
【文献】
米国特許第06316686(US,B1)
【文献】
米国特許第06068646(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61F 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の創傷部の周囲の皮膚に片手で付着され、当該創傷部に圧力を加えるように構成された装置であって、
底面部と、当該底面部に付着された一若しくはそれ以上の粘着性パッドとを有するフットプレートであって、当該粘着性パッドは、その粘着強度が前記創傷部に対して加えられる圧力よりも高くなるようなサイズに設定されており、当該フットプレートは、前記患者の創傷部の周囲の皮膚に片手で着脱自在に付着されるように構成されているものである、前記フットプレートと、
前記フットプレート上に配置された収容装置と、
中央部と当該中央部の周辺に配設された複数のウィングとを有するプランジャーであって、当該プランジャーは、前記収容装置の内部に配置され、前記片手の指が係合することにより前記収容装置内を前記創傷部に向かって移動し、前記圧力を前記創傷部に加えるように構成されているものである、前記プランジャーと、
前記収容装置と前記複数のウィングとの間に配置された複数の移動制限要素であって、前記収容装置の内部に形成された少なくとも一つの第一ラチェット要素と、前記複数のウィング上に形成された少なくとも一つの第二ラチェット要素とを有し、前記プランジャーが前記収容装置内を移動するとき、当該少なくとも一つの第二ラチェット要素が当該少なくとも一つの第一ラチェット要素と係合して、前記プランジャーが前記患者の皮膚から離れる方向に移動することを制限するものである、前記移動制限要素と、
を有する装置。
【請求項2】
前記フットプレートは安定化手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記安定化手段は前記フットプレートから離れる方向へ延設された少なくとも一つの湾曲突起部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のウィングは、当該複数のウィングがプランジャー中央部に向けて移動されると、当該複数のウィング上の前記少なくとも一つの第二ラチェット要素が前記収容装置の内部に形成された前記少なくとも一つの第一ラチェット要素から係合解除されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の移動制限要素は、前記収容装置の内部に形成された複数のラックと、前記複数のウィング上に形成された複数のラックとを有し、前記プランジャーが前記収容装置内を移動するとき、前記複数のウィング上に形成された少なくとも一つのラックが前記収容装置の内部に形成された少なくとも一つのラックと係合して、前記プランジャーが前記患者の皮膚から離れる方向に移動することを制限することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プランジャーは患者の皮膚を圧迫する圧迫パッドをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
患者の創傷部の周囲の皮膚に片手で付着され、当該創傷部に圧力を加えるように構成された装置であって、
底面部と、当該底面部に付着された一若しくはそれ以上の粘着性パッドとを有するフットプレートであって、当該粘着性パッドは、その粘着強度が前記創傷部に対して加えられる圧力よりも高くなるようなサイズに設定されており、当該フットプレートは、前記患者の創傷部の周囲の皮膚に着脱自在に付着されるように構成されているものである、前記フットプレートと、
前記フットプレート上に配置された収容装置であって、使用者の手の指の少なくとも一つが係合するように構成され、それにより、前記創傷部の周囲の皮膚に前記装置が片手で付着されるものである、前記収容装置と、
中央部と当該中央部の周辺に配設された複数のウィングとを有するプランジャーであって、当該プランジャーは、前記収容装置の内部に配置され、前記使用者の手の別の指が係合するように構成され、それにより、前記創傷部の周囲の皮膚に前記装置が片手で付着されるものであり、当該プランジャーは前記収容装置内を前記創傷部に向かって移動し、前記圧力を前記創傷部に加えるものである、前記プランジャーと、
前記収容装置と前記複数のウィングとの間に配置された複数の移動制限要素であって、前記収容装置の内部に形成された少なくとも一つの第一ラチェット要素と、前記複数のウィング上に形成された少なくとも一つの第二ラチェット要素とを有し、前記プランジャーが前記収容装置内を移動するとき、当該少なくとも一つの第二ラチェット要素が当該少なくとも一つの第一ラチェット要素と係合して、前記プランジャーが前記患者の皮膚から離れる方向に移動することを制限するものである、前記移動制限要素と、
を有する装置。
【請求項8】
前記フットプレートは安定化手段をさらに備えたことを特徴とした請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記安定化手段は前記フットプレートから離れる方向へ延設された一つ以上の湾曲突起部を備えたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のウィングは、当該複数のウィングがプランジャー中央部に向けて移動されると、当該複数のウィング上の前記少なくとも一の第二ラチェット要素が前記収容装置の内部に形成された前記少なくとも一の第一ラチェット要素から係合解除されるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の移動制限要素は、前記収容装置の内部に形成された複数のラックと、前記複数のウィング上に形成された複数のラックとを有し、前記プランジャーが前記収容装置内を移動するとき、前記複数のウィング上に形成された少なくとも一つのラックが前記収容装置の内部に形成された少なくとも一つのラックと係合して、前記プランジャーが前記患者の皮膚から離れる方向に移動することを制限することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記プランジャーは患者の皮膚を圧迫する圧迫パッドをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2011年1月20日付で出願された米国特許出願第13/010,549号を基礎として優先権を主張するもので、その内容はこの参照によってその全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、創傷部止血装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
医療分野においては現在、例えば透析治療による創傷部を止血するために使用される装置及び方法が数多くある。
【0004】
かかる装置及び方法の従来技術には、例えば、創傷部の出血箇所に直接手で当てる不織物のスポンジや、患者の腕に巻き付けるクランプ式の装置のほか、電気タイストラップのように、患者の腕に締め付ける切り込み入り圧迫パッドといったものがある。
【0005】
これら従来技術の装置及び方法はいずれも、医療技術者が患者に対して多くの手間をかけなければならない。例えば、不織物のスポンジの場合、医療技術者は止血が終わるまで創傷部を圧迫しなければならない。また、切り込み入り圧迫装置の場合、医療技術者は、創傷部の圧迫が適切に行われるよう、両手を使って患者の腕(又は足)や体へ装置を巻き付けなければならない。これら従来技術の装置は、医療技術者が、止血が終わる前に患者から離れることができるように、片手で装置を当てることができるものではない。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第7,780,612号明細書
(特許文献2) 米国特許第6,316,686明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、開示された特定のシステム、装置又は手段に限定されるものではなく、それらの多様な形態のものが含まれる。本明細書において使用される用語は、特定のバージョン又は実施例を説明することのみを目的としており、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0007】
本願において、単数形「一つの」又は「該(前記)」等(「a」、「an」及び「the」)は、文脈により別段の意味に解するよう明示的に記載されていない限り、複数形も含むものとする。また、別段の定めがない限り、本願において使用される科学技術用語はすべて、当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。本願においては、本願に実施例が開示されているからといって、先行発明に基づき、優先権を主張することはできない、と自認するように解釈されるような記載は一切ない。本願において使用される「を含む」という用語は「を含むがこれに限定されない」という意味を有する。
【0008】
一つ共通することとして、各実施例は、止血を補助するために、患者の皮膚の創傷部に圧力を加えるように構成された装置を開示するものである。この装置は、フットプレートと、前記フットプレートの上に配設された収容装置と、前記収容装置の中に配設されて移動するよう構成されたプランジャーと、前記収容装置と前記プランジャーとの間に配置された複数の移動制限部であって、前記プランジャーが皮膚に向かって移動すると、前記移動制限部が解除されるまで前記プランジャーの皮膚から離脱する方向への移動が制限されるよう構成された移動制限手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
もう一つ共通することとして、実施例は、止血を補助するために、患者の皮膚の創傷部に圧力を加えるように構成された装置を開示するものである。この装置は、フットプレートと、前記フットプレートの上に配設された収容装置と、前記収容装置の中に配設されたプランジャーであって、患者の皮膚に向かって下向きの力が加えられると、患者の皮膚へ接触するまで前記収容装置と前記フットプレートを通って移動するよう構成されたプランジャーと、前記収容装置と前記プランジャーとの間に配置された移動制限部であって、前記プランジャーが皮膚に向かって移動すると、前記移動制限部が解除されるまで前記プランジャーの皮膚から離脱する方向への移動が制限されるよう構成された移動制限手段と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面について説明する。各図面において同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【
図2】
図1の止血装置における、内側にラチェットされた円筒内にある、使用前のプランジャーを示す図である。
【
図3】
図1の止血装置における、円筒の中で完全に前進させたプランジャーを示す図である。
【
図4】止血装置の第二実施形態を説明する図である。
【
図5】止血装置の第三実施形態を説明する図である。
【
図6】止血装置の第四実施形態を説明する図である。
【
図7A】
図6の止血装置用プランジャーを説明する図である。
【
図7B】
図6の止血装置用プランジャーを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願は、患者の創傷部の出血に対して加圧するように構成された止血装置に関するものである。止血装置は、医療技術者が創傷部周辺に装置を当て、メカニカルプランジャーで創傷部を加圧し、止血が終わるまで止血装置を患者へ当てたままにしておくことができるよう構成されている。止血装置は、患者の前腕、上腕、頭部、胸部、背部、大腿部、下腿部又はその他の体の部位に対して使用できるような大きさ及び構成にされている。本願に記載される止血装置は、透析治療による刺創部に対して当てるものであるが、止血しようとする箇所であればいかなる種類の創傷部に対しても当てることができる。例えば、擦り傷、切り傷、裂傷、剥離、切断又は止血しようとするその他の傷による創傷部に対して当てることができる。
【0012】
実施例の止血装置1は、フットプレート2と、例えばフットプレート2に配設された円筒3のような収容装置と、プランジャー4と、
図1乃至
図3及び
図5の実施例においては、例えばフットプレート2の上にある一つ以上の湾曲腕部5のような、一つ以上の安定化手段と、により構成されている。フットプレート2は、人体の、曲率の異なる様々な部位に応じてフットプレートの外形を調節することができるよう、可撓性のある部材で構成されている。また、収容装置は円筒3として図示されているが、これは一例に過ぎず、プランジャー4を収容することができるのであれば、例えば長方形、正方形、長円形又はその他の幾何学的形状等、その他の形状でも良い。
【0013】
円筒3の中でプランジャー4が係合することにより、プランジャー4は、例えば、ラチェット機構を利用して、円筒3に対して一方向に移動する。一実施例において、プランジャー4の上に配設された一つ以上のラック6は、円筒3の中でのプランジャー4の動きを下方向への動きに制限するよう、円筒3の中に配設された爪部15と係合されている。つまり、プランジャー4を、創傷部に向けて押し下げることができる一方で、プランジャー4の円筒3の中での上向きの動きは一つ以上のラック6と内側に配設された爪部15の組み合わせ及び位置関係による円筒3の中でのラチェット効果により制限される。他の実施例においては、円筒3の上にある一つ以上のラック6は、円筒3の中でのプランジャー4の動きを下向きの動きに制限するよう、プランジャー4の上に配設された爪部と係合されている。また他の実施例においては、プランジャー4の上にある一つ以上のラック6は、円筒3の中でのプランジャー4の動きを下向きの動きに制限するよう、円筒3の中に配設された対応するラック16と係合されている。
【0014】
図1乃至
図5に示した実施例によると、プランジャー4の上部は7及び8で示したように分岐していることから、プランジャー4による部材の弾性によって、分岐部7及び8は、円筒3の内側に対して外向きに押され、その結果プランジャー4の外側ラチェット6が押されて円筒3の内側ラチェットと係合することになる。上記のとおり、このように配置することにより円筒3の中でのプランジャー4の上向きの動きが制限される。
【0015】
プランジャー4の上部にある分岐部7及び8は、最上端部において弓形状9とすることができ、止血装置1の操作時に医療技術者がこれを利用できるよう構成されている。例えば、医療技術者は、指、親指、掌又は体のその他の部位をもって、プランジャー4の上部に当てることで、プランジャーに対して下向きの圧力を加えることができる。
【0016】
プランジャー4の底部は、付着された圧迫パッド11が付着された圧迫面10により構成されている。圧迫パッド11は、アルギン酸カルシウム、酸化再生セルロース、海草海草抽出物、凝固促進ポリマー等の凝血促進コーティング剤、それ以外の凝血促進コーティング剤又はそれら二つ以上を組み合わせたものにより構成されている。圧迫パッド11には、銀又はクロルヘキシジンといった抗菌性コーティングを施すこともできる。
【0017】
両面が粘着面となっている一つ以上のパッド12は、フットプレート2の底部に当てることができるので、止血装置1使用中の操作の際に患者の皮膚13にパッドを付着させることができ、フットプレート2を患者の皮膚に固定することによって、止血装置が使用中に皮膚の上で動くことを防ぐことができる。パッド12の大きさは、創傷部及び/又は止血装置1が当てられた人体の部分に対して止血装置1から加えられる圧力に応じて決めることができる。またパッド12の大きさは、パッド12に使用される粘着剤の種類に応じて決めることもできる。例えば、一つ以上のパッド12から患者の皮膚に働く引張力は、プランジャー4から創傷部へ与えられる圧力よりも大きくなければならない。パッド12の大きさ及び/又は数を増やすことにより皮膚へ接触するパッド12の表面積を増やすか、より粘着強度の高い粘着剤を使用するか、又はそれら二つを組み合わせることによって、創傷部に対してさらに大きな圧力を加えることができる。止血終了のとき、止血装置1を容易に取り外すことができるよう、一般的な医療用粘着剤を使用することもできる。
【0018】
図1乃至
図3に示したとおり、フットプレート2には、湾曲腕部5のような追加事項を備えることもできる。例えば、湾曲腕部5は、止血装置1使用中に医療技術者が親指と中指により操作するものとすることができる。また、湾曲腕部5は、止血装置1使用中に医療技術者の人差指と中指により操作するものとすることもできる。いずれの操作方法も片手で操作する形態であるため、医療技術者は、迅速且つ効率的に止血装置1を当てることができる。
【0019】
フットプレート2には、止血装置1が創傷部の上に適切に位置合わせされるために、創傷部に対するプランジャー4の円形部10及び圧迫パッド11の位置を医療技術者が見て確認できるように、構成・配置された開口部14を備えることもできる。
【0020】
図1乃至
図5に示した止血装置は一例に過ぎず、追加的な特徴を取り入れることもできる。例えば、本願では、円筒3の中でプランジャー4を一方向へ動かすためにラチェット機構のみが開示されているが、ねじ切り盤(図示されていない。)等の係止機構又はその他類似の機構を使用することもできる。同様に、止血装置1は、弾性を有する熱可塑性高分子の射出成形により形成することができるが、その他類似の部材又は方法を使用しても良い。
【0021】
次に、刺創部を止血するための止血装置1を使用した方法について説明する。実際に利用する際、患者の腕の刺創部から針を抜いた後、止血装置1を刺創部の上に位置合わせすると、フットプレート2の開口部14を通じて医療技術者は目視観測をして、プランジャー4の圧迫面10とそれに付着された圧迫パッド11が刺創部の上に位置するようにすることができる。
【0022】
粘着パッド12は、皮膚13の上の所定の位置に止血装置1をしっかりと保持される。医療技術者の指はプランジャー4の弓状部9の上に置かれる。また、2本目の指は湾曲腕部5の一つに置かれ、3本目の指はもう一つの湾曲腕部5に置かれる。1本目の指は、圧迫パッド11が刺創部に対してしっかりと接触するまでプランジャーを押し下げるために使用され、2本目と3本目の指は、湾曲腕部5を挟持し、止血が終わるまで止血装置1をしっかりと所定の位置に保持する。プランジャー4は、円筒3とプランジャー4とのラチェット効果によって刺創部から離脱しないようになっているため、医療技術者は1本目の指を、プランジャー4の弓状部9から離すことができる。同様に、粘着パッド12は、患者の皮膚13へ止血装置を保持することから、プランジャー4が刺創部への圧力を維持するように装置が患者の皮膚に一時的に付着した状態で、医療技術者は、2本目及び3本目の指も外すことができる。
【0023】
止血が終わると、止血装置1は、患者の皮膚13から取り外すことができ、その後、刺創部へ包帯を当てることができる。
【0024】
図4に示した別の実施例においては、湾曲腕部5は省かれている。医療技術者は、二本の指、例えば親指と中指を、円筒3のそれぞれ反対側に当てて、
図1乃至
図3で行ったように機能させることができる。
【0025】
図5に示した別の実施例においては、湾曲腕部5は一つのみ使用されている。医療技術者の二本の指、例えば親指と中指を湾曲腕部5及び湾曲腕部5の反対側の円筒3側に当てることもできる。この実施例において、医療技術者の親指と中指は
図1乃至
図3に示した実施例と全く同じように機能する。
【0026】
図6、
図7a及び
図7bは、止血装置21の別の実施例を示すものである。止血装置1と同様に、止血装置21は、フットプレート22、フットプレート22の中心に位置する円筒23、及びプランジャー24により構成することができる。
図6、
図7a及び
図7bにおいては図示していないが、フットプレート22は、上記の湾曲腕部5のような安定化手段をさらに備えることができる。
【0027】
プランジャー24が円筒23の中で係合することによって、ラチェット機構により円筒23に対してプランジャー24が一方向に動く。
図6、
図7a及び
図7bに示した実施例において、プランジャー24に装着された複数のラック26は、円筒23の中でのプランジャー24の動きを下方向の動きに制限するよう、円筒23の中の対応する爪部又はラック(図示されていない。)と係合する。つまり、プランジャー24は、創傷部に向けて下方向へ押し下げることができるが、ラック26とそれに対応する円筒23の中の爪部又はラックとの組み合わせ及び位置関係によって、円筒23の中での上向きの動きが制限される。別の実施例において、単一ラック26がプランジャー24へ装着されて、円筒23の中の対応する爪部又はラックと係合する。さらに別の実施例において、円筒23に配設された一つ以上のラック26は、円筒23の中でのプランジャー24の動きを下方向の動きに制限するように、プランジャー24に配設された爪部と係合することができる。
【0028】
図7a及び
図7bに示したとおり、プランジャー24は、様々な部材を備える。例えば、プランジャー24は、プランジャーに中央プランジャー部34と、ウィング35a及び35bとを備えるように設計、構成されている。中央プランジャー部34は、医療技術者が加えた下向きの力を受けるように構成されている。ウィング35a及び35bは、医療技術者が中央プランジャー部34に力を加えると、ウィング35a及び35bが円筒23のラック26に対して下向きにラチェットするようにラック26を備えている。ウィング35a及び35bは、プランジャー24により創傷部に対して与えられている圧力を解放する手段を備えることもできる。ウィング35a及び35bは、中央プランジャー部34に向けて圧搾することで、ラック26との係合を解除して、プランジャー24が創傷部から離脱するようにする。これは、止血が終わった時か創傷部に対して加圧し過ぎた場合に行う。
【0029】
同様に、プランジャー24の底部は圧迫パッド3が付着された圧迫面30により構成される。圧迫パッド31は、アルギン酸カルシウム、酸化再生セルロース、海草抽出物、凝固促進ポリマー等の凝血促進コーティング剤、それ以外の凝血促進コーティング剤又はそれら二つ以上を組み合わせたものにより構成されている。圧迫パッド31には、銀又はクロルヘキシジンといった抗菌性コーティングを施すこともできる。
【0030】
粘着面を有する一つ以上の粘着パッド32は、止血装置21使用中の操作の際に患者の皮膚にパッド32が付着するよう、フットプレート22の底部につけることができるので、フットプレート22を患者の皮膚に固定させて、止血装置が使用中に皮膚の上で動かないようになっている。パッド32の大きさは、創傷部及び/又は止血装置21が当てられた人体の部位に対して止血装置21から加えられる圧力に応じて決めることができる。またパッドの大きさは、パッドに使用される粘着剤の種類に応じて決めることもできる。例えば、一つ以上のパッド32から患者の皮膚に働く引張力は、プランジャー24から創傷部へ与えられる圧力よりも大きくなければならない。パッド32の大きさ及び/又は数を増やすことにより皮膚へ接触するパッド32の表面積を増やすか、より粘着強度の高い粘着剤を使用するか、又はそれら二つを組み合わせることによって、創傷部に対してさらに大きな圧力を加えることができる。止血終了の際、止血装置21を容易に取り外すことができるよう、一般的な医療用粘着剤を使用することもできる。
【0031】
止血装置1の操作に関する上記の方法は、止血装置21にも応用することができる。止血装置21は、患者の皮膚の創傷部周辺に置くか、一つ以上の粘着パッド32を介して皮膚に付着される。そしてプランジャー24は、圧迫パッド31によって創傷部に対して適切な圧力が加わるまで下向きに押し下げられる。そして止血装置21はその場に置かれたままになるので、装置を操作する医療技術者は、止血が終わるまで他の作業を行うことができる。
【0032】
上記の構成及び機構は例示のみを目的として示したものであり、止血装置を実施するために使用することのできる構成及び機構はそれ以外にもある。例えば、圧力をフットプレートへ直接加えることもできる。上記のとおり、フットプレートは、患者の皮膚の創傷部近くへ直接付着することができる。膨張可能なブラダー又はその他のメカニカルエキスパンダーは、フットプレートと創傷部との間、又はフットプレートと創傷部に対してフットプレートの遠位側に位置し、各端部にのみフットプレートに装着された第二プレートとの間に配設することができる。ブラダー又はその他のメカニカルエキスパンダは、その後、膨張して、フットプレートに対して圧力を加え、結果として、創傷部に対して圧力を与える。止血が終了したら、ブラダー又はその他のメカニカルエキスパンダを解除して、フットプレートを患者の皮膚から取り外すことができる。使用することのできる別のメカニカルエキスパンダの例として、バネ仕掛けの装置及びネジ式の拡張装置などがある。
【0033】
上記に開示した様々なもの並びにその他の特徴及び機能、又はそれらの代替物を組み合わせることで、多種多様なシステムを構成したり応用することもできる。当業者が、それらに対して、現時点では予想又は予測されない様々な代替、修正、変更又は改善を行うこともあり、そのそれぞれも開示された実施例に包含されるよう意図している。