【実施例】
【0134】
実施例1:オリゴヌクレオチドプライマーおよびPCR増幅
オリゴヌクレオチドプライマーは、Isogen Bioscience(Maarssen, The Netherlands)によって合成および定量された。プライマーをH
2Oにおいて100 pmol/μlとなるように溶解して-20℃で保存した。全てのPCRおよびシークエンシングプライマーの概要を以下に与える。PCRに関して、PfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を製造元の説明書に従って用いた。それぞれの反応ミックスは、PCR反応緩衝液(ポリメラーゼと共に供給される)において、全量20μl中に、200μM混合dNTP(Roche Diagnostics, Almere, The Netherlands)、フォワードおよびリバースプライマーを共に6.7 pmol、ゲノムDNA 100 ngまたはプラスミドDNA 1ng、およびPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ1単位を含有した。PCR反応は、TGradient Thermocycler 96 (Whatman Biometra, Goettingen, Germany)によって32サイクルのプログラム:95℃で2分間の変性;95℃で30秒間、60〜70℃勾配(またはもう1つの特異的アニール温度)で30秒間、および72℃で3分間を30サイクル;72℃で10分間の最終伸長を用いて実行した。適当であれば、さらに分析または処理するまでPCR混合物を4℃で保存した。
【0135】
実施例2:アガロースゲル電気泳動
アガロースゲル電気泳動は、Sambrook(Sambrook, Russell et al. 2000 Molecular cloning. A laboratory manual (third edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って、50 mlゲルを用いて1×トリス酢酸EDTA緩衝液において行った。ゲルにエチジウムブロミドを含めることによってDNAを可視化して、UV光の下で観察した。ゲルの画像をCCDカメラおよび画像分析システム(GeneGnome; Syngene, via Westburg B. V., Leusden, The Netherlands)によって記録した。
【0136】
実施例3:PCR産物および酵素消化物の分析および精製
所望のPCR断片の精製は、MinElute PCR精製キット(Qiagen, via Westburg, Leusden, The Netherlands;製品番号28006)を用いて、製造元の説明書に従って実行した。単離されたDNAをUV分光学によって定量して、質をアガロースゲル電気泳動によって査定した。
【0137】
またはPCRもしくは消化産物を、1%トリス酢酸EDTAアガロースゲルを用いるアガロースゲル電気泳動によって分離した(たとえば多数の断片が存在する場合)。所望の断片をゲルから切り出して、QIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen;製品番号20051)を用いて製造元の説明書に従って回収した。
【0138】
実施例4:UV分光学によるDNAの定量
核酸の吸光度をNanoDrop ND-1000分光光度計(Isogen Life Science, Maarssen, The Netherlands)を用いて製造元の説明書に従って決定した。DNA濃度を260 nmでの吸光度(OD)(OD
260 nm 1単位=50μg/ml)の分析によって測定した。全ての試料に関して、核酸を溶解した緩衝液を参照として用いた。
【0139】
実施例5:制限酵素消化
制限酵素および補足物質は、New England Biolabs(Beverly, MA, USA)、またはFermetas(Vilnius, Lithuania)から得て、製造元の説明書に従って用いた。
【0140】
DNA(100 ng)を、適当な緩衝液において最終容積10μl(反応容積は適当に規模拡大することができる)で酵素5単位によって消化した。消化物を推奨される温度で少なくとも60分間インキュベートした。非適合性の緩衝液または温度の必要条件を伴う、制限酵素による2回消化を必要とする断片の場合、消化を連続的に行った。必要であれば、消化産物をアガロースゲル電気泳動およびゲル抽出によって精製した。
【0141】
実施例6:DNA断片のライゲーション
DNA断片のライゲーションは、Quickライゲーションキット(New England Biolabs)によって、製造元の説明書に従って行った。それぞれのライゲーションに関して、ベクターDNAをおよそ3倍モル過剰量のインサートDNAと混合した。
【0142】
実施例7:大腸菌の形質転換
プラスミドDNA(DNA溶液1〜5μl、典型的にDNAライゲーションミックス2μl)を、製造元の説明書に従って熱ショック法を用いて、One Shot DH5α-Tl(登録商標)またはMACH-1 T1(登録商標)コンピテント大腸菌(E. coli)細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands;製品番号12297-016)に形質転換した。次に、細胞を50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまで、プレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0143】
実施例8:PCRによる細菌コロニーのスクリーニング
細菌コロニーをHotStarTaqマスターミックスキット(Qiagen;製品番号203445)、ならびに適当なフォワードおよびリバースプライマーを用いて、コロニーPCRによって所望の配列を含有するベクターの有無に関してスクリーニングした。選択されたコロニーに20μlピペットの先端によって軽く触れて、小規模培養物に関してLB 2 mlにおいて短時間触れた後、PCRミックスに浮遊させた。PCRは、TGradient Thermocycler 96によって、35サイクルプログラム:95℃で15分間の変性;94℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で2分間を35サイクルの後に72℃で10分間の最終伸長段階を用いて行った。適当であれば、アガロースゲル電気泳動による分析までPCR混合物を4℃で保存した。
【0144】
実施例9:大腸菌培養物からのプラスミドDNAの単離
プラスミドDNAを、Qiagen (via Westburg, Leusden, The Netherlands)からの以下のキットを用いて、製造元の説明書に従って大腸菌培養物から単離した。大量のプラスミド調製物(培養物50〜150 ml)の場合、HiSpeed Plasmid Maxiキット(製品番号12663)またはHiSpeed Plasmid Midiキット(製品番号12643)のいずれかを用いた。小規模プラスミド調製物の場合(培養物±2 ml)、Qiaprep Spin Miniprepキット(製品番号27106)用いて、DNAを溶出緩衝液(キットと共に供給される)50μlに溶出した。
【0145】
実施例10:DNAのシークエンシング
プラスミドDNAを当技術分野において公知の標準的な技法を用いてシークエンシングした。配列をVector NTIソフトウェア(Informax, Oxford, UK)を用いて分析した。
【0146】
実施例11:HEK-293F細胞における一過性の発現
Freestyle(商標)293-F(浮遊培養生育および化学的に定義されたFreestyle培地、たとえばHEK-293Fに適合させたHEK-293サブクローン)細胞をInvitrogenから得て、293fectin(Invitrogen)を用いて製造元のプロトコールに従ってトランスフェクトした。
【0147】
実施例12:pTomG4の構築;ヒトIgG4の定常領域を有する可変重鎖領域の発現のためのベクター
ゲノムDNAをボランティアの血液試料から単離して、プライマーIGG4gene2fおよびIGG4gene2r(以下の表を参照されたい)によるPCRにおける鋳型として用いて、IgG4の重鎖の完全なゲノム定常領域を増幅して、哺乳動物発現ベクターpEE6.4(Lonza Biologics)にクローニングするために適した制限部位を導入した。PCR断片を精製してpEE6.4にクローニングした。このためにPCR産物をHindIIIおよびEcoRIによって消化した後、制限酵素を熱不活化した。pEE6.4ベクターをHindIIIおよびEcoRIによって消化した後、制限酵素を熱不活化して、エビアルカリホスファターゼによってベクター断片を脱リン酸化した後、ホスファターゼを熱不活化した。IgG4断片およびpEE6.4HindIII/EcoRI脱リン酸化ベクターをライゲーションして、コンピテントMACH1-T1(登録商標)細胞(Invitrogen)に形質転換した。クローン3個をLBにおいて生育させて、プラスミドDNAを小さい培養物(1.5 ml)から単離した。制限消化によってpEE6.4ベクターにおけるIgG4断片のクローニングに一貫するパターンが明らかとなった。2つのクローンからのプラスミドDNAをDH5α-T1(登録商標)大腸菌に形質転換して、プラスミドDNAを単離して、構築物をインサートの配列分析によってチェックしたところ、クローン1個が、イントロンにおける何らかの軽微な差を別として、GenbankデータベースからのゲノムIgG4クローンと同一であることが見いだされた。これらの差は、おそらくGenbank配列における多形または配列の誤りのいずれかである。プラスミドをpTomG4と名付けた。
【0148】
(表1)プライマーの配列
【0149】
実施例13:マウス抗Bet v 1および抗Feld1抗体の可変領域のクローニング
マウスハイブリドーマ細胞(Betvlに関して:Akkerdaas, van Ree et al. 1995 Allergy 50(3), 215-220からのクローン2H8およびFeld1に関してde Groot et al. 1988 J. Allergy Clin. Immunol. 82, 778からのクローン4F7)0.3×10
5個(Betv1)または0.9×10
5個(Feld1)から、RNeasyキット(Qiagen, Westburg, Leusden, Netherlands)によって製造元のプロトコールに従って総RNAを調製した。
【0150】
RNAの5'-RACE-相補的DNA(cDNA)を、SMART RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech, Mountain View, CA, USA)を用いて製造元のプロトコールに従って総RNAおよそ100 ngから調製した。Betv1およびFeld1抗体のVLおよびVH領域をPCRによって増幅した。これに関してPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ(Stratagene)を製造元の説明書に従って用いた。それぞれの反応ミックスは、PCR反応緩衝液(ポリメラーゼと共に供給される)において200 μM混合dNTP(Roche Diagnostics)、リバースプライマー(VH領域に関してRACEG1mm1およびVL領域に関してRACEKmm1)12 pmol、UPM-Mix(UPM-ミックス:2μM ShortUPMH3および0.4μM LongUPMH3オリゴヌクレオチド)7.2 pmol、先に記述した5'RACE cDNA鋳型0.6μl、およびPfuTurbo(登録商標)Hotstart DNAポリメラーゼ1.5単位を全量30μl中に含有した。
【0151】
PCR反応は、TGradient Thermocycler 96(Whatman Biometra)によって35サイクルプログラム:95℃で2分間の変性;95℃で30秒間、55℃で30秒間、および72℃で1.5分間を35サイクル;72℃で10分間の最終伸長を用いて実行した。反応産物を1%TAEアガロースゲルにおけるアガロースゲル電気泳動によって分離して、エチジウムブロミドによって染色した。正確なサイズのバンドをゲルから切り出して、QiaexIIゲル抽出キット(Qiagen)を用いてDNAをアガロースから単離した。
【0152】
ゲル単離PCR断片を、200μM dATPおよびAmplitaq(Perkin Elmer)2.5単位と共に72℃で10分間インキュベートすることによってAテールを付加して、微小溶出カラム(Qiagen)を用いて精製した。A-テール付加PCR断片をpGEMT easyベクターシステムIIキット(Promega)を用いて、製造元のプロトコールに従ってpGEMTeasyベクター(Promega)にクローニングした。ライゲーション混合物2μlをOneShot DH5αT1Rコンピテント大腸菌(Invitrogen)に形質転換して、LB/Amp/IPTG/Xgalプレートに播種した。VHおよびVL配列のそれぞれに関してインサートを含有する4つの白色コロニーを採取してインサートをシークエンシングした。Betv1のVHおよびVLの推定されるアミノ酸配列をSEQ ID NO:15および16に与え、Feld1の推定アミノ酸配列をSEQ ID NO:17および18に描写する。
【0153】
VH配列Bet v 1(SEQ ID NO:15):
【0154】
VL配列Bet v 1(SEQ ID NO:16):
【0155】
VH配列Feld1(SEQ ID NO:17):
【0156】
VL配列Feld1(SEQ ID NO:18):
【0157】
実施例14:pConG1fBetV1の構築:Betv1-IgG1の重鎖を産生するためのベクター
マウス抗Betv1抗体のV
Hコード領域を、プライマーVHexbetv1forおよびVHexbetv1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)からPCRによって増幅して、pConG1f0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。VH断片をゲル精製して、pConG1f0.4にクローニングした。このために、PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびApaIによって消化して精製した。V
H断片およびpConG1f0.4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、正確な配列を確認した。このプラスミドをpConG1fBetv1と命名した。
【0158】
実施例15:pConKBetv1の構築:Betv1の軽鎖を産生するためのベクター
V
Lコード領域マウス抗Betv1抗体を、プライマーVLexbetv1forおよびVLexbetv1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)から増幅して、pConK0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびBsiWIによって消化して、精製した。V
L断片およびpConKappa0.4HindIII-BsiWI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α T1(登録商標)大腸菌に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpConKBetv1と命名した。
【0159】
実施例16:pTomG4Betv1の構築:Betv1-IgG4の重鎖を産生するためのベクター
Betv1-IgG4を発現させるためのベクターを構築するために、BetV1のVH領域をpTomG4にクローニングした。このため、pTomG4およびpConG1fBetv1をHindIIIおよびApaIによって消化して、意味のある断片を単離した。Betv1 V
H断片およびpTomG4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpTomG4Betv1と命名した。
【0160】
実施例17:pConG1fFeld1の構築:Feld1-IgG1の重鎖を産生するためのベクター
マウス抗Feld1抗体のV
Hコード領域を、プライマーVHexfeld1forおよびVHexfeld1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)からPCRによって増幅して、pConG1f0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。VH断片をゲル精製して、pConG1f0.4にクローニングした。このため、PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびApaIによって消化して精製した。V
H断片およびpConGlf0.4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、正確な配列を確認した。このプラスミドをpConG1fFeld1と命名した。
【0161】
実施例18:pConKFeld1の構築:Feld1の軽鎖を産生するためのベクター
V
Lコード領域マウス抗Feld1抗体を、プライマーVLexfeld1forおよびVLexfeld1revを用いてこの領域を含有するプラスミド(実施例13)から増幅して、pConK0.4にクローニングするための適した制限部位および理想的なコザック配列を導入した。PCR産物およびpConKappa0.4ベクターをHindIIIおよびBsiWIによって消化して精製した。V
L断片およびpConKappa0.4HindIII-BsiWI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)大腸菌に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpConKFeld1と命名した。
【0162】
実施例19:pTomG4Feld1の構築:Feld1-IgG4の重鎖を産生するためのベクター
Feld1-IgG4を発現させるためのベクターを構築するために、Feld1のVH領域をpTomG4にクローニングした。このため、pTomG4およびpConG1fFeld1をHindIIIおよびApaIによって消化して、意味のある断片を単離した。Feld1 V
H断片およびpTomG4HindIII-ApaI消化ベクターをライゲーションして、コンピテントDH5α-T1(登録商標)細胞に形質転換した。正確なインサートサイズを含有するクローンを選択して、配列を確認した。このプラスミドをpTomG4Feld1と命名した。
【0163】
実施例20:2F8-IgG4および7D8-IgG4を発現させるための抗体発現ベクターの構築
HuMab 2F8(IgGl-EGFR)およびHuMab 7D8(IgGl-CD20)を発現させるための発現ベクターを構築した。HuMab 2F8(WO 02/100348)およびHuMab 7D8(WO 04/035607)のVHおよびVLコード領域を、IgG1重鎖を産生するために発現ベクターpConGlf(Lonza Biologies)に、およびκ軽鎖を産生するためにpConKappaにクローニングして、ベクターpConG1f2F8、pConG1f7D8、pConKappa2F8、およびpConKappa7D8を生じた。pConG1f2F8およびpConG1f7D8のVH領域をこれらのベクターからHindIII/ApaI消化によって除去して、HindIII/ApaI消化pTomG4ベクターに挿入してそれぞれ、pTomG42F8およびpTomG47D8を得た。
【0164】
実施例21:HEK-293F細胞における一過性の発現によるBetv1-IgG1、Betv1-IgG4、Feld1 -IgG1およびFeld1-IgG4の産生
293fectinを用いて製造元の説明書に従って、意味のある重鎖および軽鎖ベクターをHEK-293F細胞に同時トランスフェクトすることによって、全ての構築物から抗体を産生した。Betv1-IgGlの場合、pConG1Betv1およびpConKBetv1を同時発現させた。Betv1-IgG4の場合、pTomG4Betv1およびpConKBetv1を同時発現させた。Feld1-IgG1の場合、pConG1Feld1およびpConKFeld1を同時発現させた。Feld1-IgG4に関して、pTomG4Feld1およびpConKFeld1を同時発現させた。IgG1-EGFrに関して、pConG1f2F8およびpConKappa2F8を同時発現させた。IgG4-EGFrに関して、pTomG42F8およびpConKappa2F8を同時発現させた。IgGl-CD20に関して、pConG1f7D8、およびpConKappa7D8を同時発現させた。IgG4-CD20に関して、pTomG47D8およびpConkappa7D8を同時発現させた。
【0165】
実施例22:IgG1およびIgG4抗体の精製
IgG1およびIgG4抗体をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。細胞培養上清を0.20μMデッドエンドフィルターによって濾過した後5 mlプロテインAカラム(rProtein A FF, GE Healthvcare)にローディングして、0.1 Mクエン酸-NaOH、pH 3によってIgGを溶出した。溶出液を2 MトリスHCl、pH 9によって直ちに中和して、12.6 mMリン酸ナトリウム、140 mM NaCl、pH 7.4(B. Braun, Oss, The Netherlands)に対して終夜透析した。透析後、試料を0.20μMデッドエンドフィルターによって濾過滅菌した。精製IgGの濃度を比濁法および280 nmでの吸光度によって決定した。精製タンパク質をSDS-PAGE、IEF、質量分析、および糖分析によって分析した。
【0166】
実施例23:精製IgGのSDS-PAGE分析
精製後、Betv1およびFeld1、IgG1およびIgG4抗体を非還元SDS-PAGEにおいて分析した。用いたビストリス電気泳動法は、Laemmli法(Laemmli 1970 Nature 227 (5259):680-5)の改変であり、試料を中性pHで泳動させた。SDS-PAGEゲルをクーマシーによって染色して、GeneGenius(Synoptics, Cambridge, UK)を用いてデジタル撮像した。
【0167】
図1において認められうるように、Betv1およびFeld1 IgG1は、完全長の4量体(2つの重鎖および2つの軽鎖)Feld1およびBetv1 IgG1分子を表す1つの主要なバンドを示した。Betv1およびFeld1 IgG4は、4量体IgG4分子を表す主要なバンドのほかに、実質的な量の半分子(すなわち、1つの重鎖バンドと1つの軽鎖)を有することを示した。
【0168】
実施例24:マウスにおけるIgG4 Fabアーム交換の評価
6〜8週齢のnu/nu Balb/cマウス5匹を用いて、IgG4半分子の交換を追跡した。マウスをCentral Laboratory Animal Facility(Utrecht, The Netherlands)のバリアユニットに収容して、食餌および水を自由に提供してフィルタートップケージにおいて維持した。実験は全て、Utrecht Universityの動物倫理委員会によって承認された。
【0169】
キメラ抗体を腹腔内に投与した。血液試料(75〜100μl)を投与後4.25時間、24時間、48時間、および72時間に採取した。血液をヘパリン含有バイアルに収集して、10,000 gで5分間遠心して細胞から血漿を分離した。血漿を抗原特異的抗体および二重特異性抗体レベルを決定するために-20℃で保存した。
【0170】
この実験において、キメラIgG4半分子(n=2)の交換をIgG1半分子(n=3)の交換と比較した。Bet v 1およびFel d 1特異的抗体(IgG1またはIgG4)の混合物を600μg(各抗原特異的抗体300μg)の用量で200μl/マウスでマウスに投与した。
【0171】
Bet v 1またはFel d 1結合抗体の血漿濃度を抗原結合試験において測定した。このため、血漿試料を、
125I標識Bet v 1または
125I標識Fel d 1の存在下で、PBS-IAT(1μg/ml IVIg、0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)750μlにおいてプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1またはFel d 1特異的IgGの濃度を精製Bet v 1特異的抗体またはFel d 1特異的抗体を標準として用いて計算した(比濁法によって測定した場合に、試験あたり0〜200 ngの範囲)。二重特異性IgGの濃度を異種クロスリンクアッセイの2つの変化型において測定した。第一のアッセイにおいて、血漿を、PBS-IATにおいて全量300μlでセファロース連結Bet v 1(0.5 mg)と共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I標識Fel d 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Bet v 1-Fel d 1)の濃度は、精製Fel d 1結合rIgGから得たFel d 1結合試験の検量線を用いて計算した。第二のアッセイにおいて、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性を、セファロース連結rFel d 1(0.5 mg)および
125I標識Bet v 1を用いて類似の技法において測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を精製Bet v 1特異的rIgGを標準物質として用いて計算した(Bet v 1結合試験と同じ曲線)。
【0172】
図2において、二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を異なる時点でBet v 1結合IgG濃度に対してプロットする。二重特異性IgGは、IgG4を投与されたマウスとは対照的にIgG1ミックスを投与したマウスでは観察されなかった。24時間後、二重特異性IgG4の生成は最大であり、100%の交換に対応した。
【0173】
図3Aにおいて、二重特異性IgG4の生成を経時的に追跡する。二重特異性抗体は、IgG1ではなくてIgG4の混合物を注射したマウスの血漿において経時的に出現し、二重特異性反応性は1〜2日インキュベートした後にほぼ50%の最大に達した(注意:IgG4-Betv1とIgG4-Feld1の等量が交換されれば、半抗体のランダムおよび完全な交換後に、IgG4-Betv1半抗体の最大の50%が二重特異性分画に組み入れられるであろう)。等量のIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1のあいだのランダムなFabアーム交換は、二重特異性を獲得するIgG4分子のおよそ半数と一貫するであろう。対照として、無関係な抗原に対して向けられる追加のIgG4(抗EGFr抗体2F8から生成されたIgG4)の20倍過剰量をIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1と共にマウスに注射した。過剰量の無関係なIgG4は、Betv1-Feld1-二重特異性IgG4の生成と競合した。
【0174】
もう1つの実験(
図3B)において、同じネズミ血清試料を、放射標識可溶性Fel d 1をセファロース固定Fel d 1にクロスリンクさせることができるか否かに関して試験した。単特異的クロスリンク活性は、IgG4の等量混合物を投与されたマウスでは減少したが、IgG1を投与されたマウスでは減少しないことが見いだされ、単特異的クロスリンク活性が失われたことを示している。約1日後に〜50%の最大低減に達した。無関係なIgG4の追加の過剰量を投与したマウスにおいて、単特異的クロスリンク活性は、類似の速度論によってほぼ完全に消失した。
【0175】
IgG4を投与されたマウスにおいて観察された二重特異活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った(
図4)。この目的のために、血漿試料(t=24時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出され、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンクアッセイは、同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。rIgG1含有血漿において、Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は分画の前に存在しなかった。同様に、溶出した分画において、異種クロスリンク活性は測定されなかった(データは示していない)。
【0176】
実施例25:全血(成分)によるFabアーム交換活性の評価
全血(成分)の交換活性を調べるために、キメラ抗体を、全血、血球、血漿、または血清と混合してその後インキュベートした。
【0177】
この実験において、IgG4の内因性の血漿レベルを比濁法によって測定した(それぞれ、346および554μg/ml)2人の健康な血液ドナーAおよびBからの全血においてIgG4半分子の交換を評価した。TFPI(Chiron Corporation, Emeryville, Californiaからの組織因子経路阻害剤)を最終濃度40μg/mlで補足した真空採血管において全血を得た。全血を遠心することによって、血球および血漿を得た。細胞分画をOptimem(Invitrogen, Breda, The Netherlands)によって3回洗浄した後、Optimemに浮遊させた。全血をガラス製の真空採血管において凝固活性化因子と共に37℃で30分間インキュベートして、その後凝固した血液を遠心することによって血清を得た。IgG4半分子の交換を評価して、IgG1半分子の交換と比較した。対照として、血液試料をまた、キメラ抗体の非存在下でもインキュベートした。以下の抗体混合物をPBSにおいて調製した。
1.Bet v 1特異的IgG4(10μg)とFel d 1特異的IgG4(10μg)
2.Bet v 1特異的IgG1(10μg)とFel d 1特異的IgG1(10μg)
【0178】
これらの抗体混合物を血液、血球、血漿、または血清と共に全量100μl(各抗体の最終濃度は0.1μg/ml)で水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。全血および血球とのインキュベーション混合物における最終的なヘマトクリットは、おおよそ〜40%であった。24時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心器において2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlをPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)500μlに採取した。必要であれば試料を4℃で保存した。
【0179】
二重特異活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで、セファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートし、その後セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0180】
図5において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した、結合した
125I-標識Bet v 1の百分率として表した。二重特異性活性は、IgG4半分子の交換の測定であり、これは全血および全血の細胞分画において主に観察された(
図5a)。細胞分画における二重特異性レベルは、全血よりさらに高かった。これは、細胞分画において、加えたキメラIgG4抗体と交換することができる内因性のIgG4がもはや存在しないという事実によって説明される可能性が最も高い。何らかの二重特異性活性はまた血漿および血清においても観察されたが、この活性は全血において観察された活性よりかなり低く、OptimemにおいてIgG4混合物をインキュベートすることによって得られた1.7%というバックグラウンドレベルよりごくわずかに高かったに過ぎない。IgG1を含有するインキュベーションではいずれにおいても二重特異性活性は観察されなかった(
図5b)。同様に、キメラ抗体を有しない対照インキュベーションにおいても、二重特異性活性は観察されなかった(
図5c)。IgG4ミックスにおいて観察された二重特異性活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。この目的のため、試料(t=24時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出し、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は、同じ分画において検出され、二重特異性活性が単量体IgGに関連することを示している(データは示していない)。
【0181】
実施例26:血球媒介IgG4 Fabアーム交換活性の評価
IgG4交換活性を調べるために、キメラ抗体を3つの異なるタイプのヒト血球(すなわち、単核球(MNC)、赤血球、および血小板)と共に混合した後インキュベートした。
【0182】
匿名のドナーからの全血をヘパリン含有真空採血管に採取した後、Percoll(Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, Sweden)において遠心して、MNCを単離した。単離されたMNCを、使用前にOptimem無血清培養培地(Invitrogen, Breda, The Netherlands)に浮遊させた。新しく精製された赤血球および血小板(the Blood Cell Research Department of Sanquinによって提供)を異なる2人の匿名のドナーから得た。これらの細胞を3回洗浄した後Optimemに浮遊させた。加えて、血小板に10 mMグルコースを補足した。
【0183】
IgG4半分子の交換を評価して、IgG1半分子の交換と比較した。以下の抗体混合物をPBS中で調製した:
−Bet v 1特異的IgG4(10μg)とFel d 1特異的IgG4(10μg)
−Bet v 1特異的IgG1(10μg)とFel d 1特異的IgG1(10μg)
【0184】
これらの抗体混合物を、MNC 1.8×10
4個、赤血球4.0×10
8個、または血小板3.5×10
4個と共に、全量100μl(各抗体の最終濃度は0.1μg/mlであった)で水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。48時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心器において2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlを、PBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)500μlに採取した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0185】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を、異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで、セファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0186】
図6において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した
125I-標識Bet v 1の百分率として示す。3つの細胞タイプは全て、二重特異性活性を誘導することができた。Optimem無血清培地において何らかの二重特異性活性が同様に観察されたが、この活性は血球の存在下で観察された活性よりかなり低かった。試験した細胞はいずれもIgG1半分子を交換することができなかった。
【0187】
実施例27:ヒトおよびネズミ細胞株によるIgG4 Fabアーム交換の評価
IgG4交換活性を調べるために、キメラIgG4抗体を、異なる3つの細胞株(すなわちヒト胎児腎(HEK)細胞、ネズミB細胞、またはハイブリドーマ)と混合した後インキュベートした。
【0188】
細胞株J558(Antigen Presentation Research Group of Sanquinによって提供)をネズミB細胞原として選んだ。抗C1エステラーゼ阻害剤を産生するハイブリドーマをAutoimmune Research Group of Sanquinから得た。浮遊HEK(293F)細胞はInvitrogen, Breda, The Netherlandsから得た。細胞は全て、PBSによって3回洗浄後細胞をPBSにおいて浮遊させた。
【0189】
IgG4半分子の交換を、Bet v 1特異的IgG4(2μg)、およびFel d 1特異的IgG4(2μg)からなるIgG4抗体混合物を前述の細胞と共にインキュベートすることによって評価した。抗体混合物を、全量50μlで(各抗体の最終濃度は80μg/ml)水平のオービタルシェーカー(125 rpm)において、HEK細胞24×10
5個、ネズミB細胞25×10
5個、またはハイブリドーマ21×10
5個と共に37℃でインキュベートした。0時間および24時間後、インキュベーション混合物をEppendorf遠心管において2800 rpmで1分間遠心した後、試料をPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)に採取した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0190】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlでセファロース連結組み換え型Fel d 1 0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0191】
図7において、二重特異性活性を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した
125I-標識Bet v 1の百分率として示す。3つ全ての細胞タイプがIgG4半分子を交換することができた。
【0192】
実施例28:赤血球によるIgG4 Fabアーム交換の評価
IgG4半分子の交換を調べるために、キメラ抗体をヒト赤血球と共に混合した後インキュベートした。赤血球を1人のドナーから精製して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液において4℃で保存した。使用前に細胞をPBSによって3回洗浄した。
【0193】
この実験において、IgG4半分子の交換をIgG1の交換と比較した。同様に、過剰量の無関係なIgG4の存在下でのIgG4の交換を評価した。以下の抗体混合物をPBSにおいて調製した:
− Bet v 1特異的IgG4(4μg)とFel d 1特異的IgG4(4μg)
− Bet v 1特異的IgG1(4μg)とFel d 1特異的IgG1(4μg)
− Bet v 1特異的IgG4(4μg)、Fel d 1特異的IgG4(4μg)、および抗原Xに対して特異的な無関係なIgG4(80 μg)
【0194】
これらの混合物を、0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBSにおいて全量100μl(最終ヘマトクリットはおおよそ〜40%)で赤血球と共にインキュベートした後、水平オービタルシェーカー(125 rpm)において37℃でインキュベートした。指示される時点で、Eppendorf遠心器において赤血球を2800 rpmで1分間遠心した後、試料10μlをPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)500μlに採取した。二重特異性活性、二価性、および抗原結合を測定するまで試料を4℃で保存した。対照として、同じ混合物を同様に赤血球を含まないPBSにおいてもインキュベートした。
【0195】
Bet v 1結合抗体のレベルを抗原結合試験において測定した。このため、試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750 μlにおいて、
125I標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって洗浄し、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、精製Bet v 1特異的抗体を標準物質として(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)用いて計算した。Fel d 1およびBet v 1特異的抗体を用いる実験における二重特異性活性をFeld1-Bet v 1クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、IgG含有試料を、PBS-ATにおいて全量300μlでセファロース連結ネコ抽出物(0.5 mg)と共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Feld1-Betv1)の濃度を、精製IgG1-Bet v 1を標準物質(プロテインGセファロースを用いるBet v 1結合試験において得られた)として用いて計算した。
【0196】
図8において、赤血球媒介交換から得られたデータを提示する。IgG1半分子の交換は赤血球の存在下では観察されなかったが、IgG4半分子の約最大の交換が72時間後に観察された(パネルA)(注意:等量のIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1が交換される場合、半分子のランダムおよび完全な交換後に二重特異性分画に組み入れられるのはIgG4-Betv1半抗体の多くて50%であろう)。過剰量の無関係なIgG4の存在下では、IgG4半分子の交換はほとんど測定されず、これはBet v 1およびFel d 1特異的IgG4と無関係なIgG4との予想される交換と一致している。IgG4ミックスにおいて観察された二重特異活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。この目的のために、血漿試料(t=72時間で採取)をSuperdex200カラムにおいて分画した後、Fel d 1結合IgGおよびBet v 1-Fel d 1クロスリンクIgGを分画において測定した。Fel d 1結合抗体は、保持容量〜12.9 mlで1つのピークに溶出され、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性は、同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している(データは示していない)。
【0197】
理論では、IgG4半分子の交換はまた、二価性の減少にも関連する。これを試験するために、インキュベーション混合物における二価性を測定した。IgG1ミックスにおいてFel d 1二価性の低減はほとんど観察されなかったが、IgG4ミックスでは〜50%の低減が観察された。この低減は、1対1比で混合された異なる2つのIgG4分子の最大交換と一致する。予想されるように、過剰量の無関係なIgG4によるIgG4ミックスにおける二価性の低減はより高く(〜80%)、これは、過剰量の無関係なIgG4半分子の存在下では、2つの相同な半分子(Bet v 1またはFel d 1特異的)が再ハイブリダイゼーションする確率が低いためである。抗原結合は72時間のインキュベーション後ごくわずかに(〜10%)減少したに過ぎなかったことから(データは示していない)、二価性の強い低減は、インキュベーションの際に抗原結合が失われた結果ではなかった。
【0198】
IgG4半分子が自然発生的に交換されうるか否かを調べるために、PBS(0.05%(w/v)NaN
3を補足した)におけるIgGの交換も同様に評価した。この実験の設定は、赤血球を加えなかったことを除き、赤血球の存在下での交換と類似であった。IgG1またはIgG4半分子の自然発生的交換は、
図9Aにおいて証明されるようにPBSにおける37℃でのインキュベーションのあいだ観察されなかった。しかし、IgG4ミックスにおいて何らかのバックグラウンドが観察され、これはまた赤血球とのインキュベーションの際にも存在した。二価性の減少はPBSにおけるインキュベーションの際には観察されなかった(
図9B)。
【0199】
実施例29:赤血球溶解物によるIgG4 Fabアーム交換の評価
キメラIgG4抗体を、希釈倍数が増加する赤血球溶解物と共に混合してインキュベートした。赤血球を健康なドナーから単離して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液において4℃で保存し、ヘマトクリットは60.7%であった。溶解物を得るために、細胞をPBS-アジド(0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって3回洗浄して、保存緩衝液の容量より2倍多い容量の水に浮遊させた。その結果、非希釈赤血球溶解物はヘマトクリット30%と同等であった。
【0200】
IgG4半分子の交換は、Bet v 1特異的IgG4(1μg)およびFeld1特異的IgG4(1μg)からなるIgG4抗体混合物を、新しく調製した溶解物(全量100μlとなるようにPBS/アジドを補足)50μlと共に37℃でインキュベートすることによって評価した。それぞれの抗体の最終濃度は10μg/mlであった。指示される時点で、インキュベーションミックスからPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)に試料を採取して、二重特異性活性を測定した。必要であれば、試料を4℃で保存した。
【0201】
二重特異性活性(すなわち、Bet v 1-Fel d 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlでセファロース連結シラカバ抽出物0.5 mgと共に24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Fel d 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Bet v 1-Fel d 1)の濃度を、精製Fel d 1結合rIgGから得たFel d 1結合試験の検量線から計算した。
【0202】
図10において、二重特異性活性の経時的生成を、異種クロスリンクアッセイにおいて決定した結合した
125I-標識Fel d 1の百分率として示す。これらのデータから、赤血球溶解物が交換活性を含有することは明らかである。最高の交換率は、非希釈溶解物において観察されたが、希釈が高くなると交換率はより低くなった。実際に、PBSにおける対照インキュベーションでは二重特異性活性は観察されなかった。
【0203】
赤血球溶解物によって誘導された二重特異性活性がIgG凝集の結果である可能性を排除するためにサイズ排除クロマトグラフィーを行った(
図11)。この目的のため、Bet v 1結合IgG4 10μg、Fel d 1結合IgG4 10μg、および赤血球溶解物50μlからなるインキュベーション混合物を調製して、これにPBS/アジドを全量100μlとなるように補足した。この混合物を37℃で24時間インキュベートした後、70μlをSuperdex200カラムにおいて分画した。分画において、Bet v 1結合IgGおよびFel d 1-Bet v 1クロスリンクIgGを測定した。Bet v 1結合抗体を抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIg、0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)750μlにおいて、
125I-標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、精製Bet v 1特異的抗体を標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)として用いて計算した。二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共にPBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。その後セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合rIgGから得たBet v 1結合試験において用いられた検量線と同じ検量線を用いて計算した。
【0204】
Bet v 1結合抗体は、保持容量〜12.6 mlで1つのピークで溶出し、これは単量体IgGの保持容量と一致する(
図11)。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は同じ分画において検出され、このことは二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。
【0205】
実施例30:透析した赤血球溶解物におけるIgG4 Fabアーム交換活性の評価
赤血球を健康なドナーから単離して、SAGM(生理食塩液アデニングルコースマンニトール)緩衝液においてヘマトクリット60.7%で4℃で保存した。溶解物を得るために、細胞をPBS-アジド(0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって3回洗浄して、保存緩衝液の容量より2倍大きい容量の水に浮遊させた。それによって、非希釈赤血球溶解物はヘマトクリット30%と同等であった。溶解物の一部を、Pierce(3.5 kDカットオフ)からの透析膜カセットを用いてPBS-アジドに対して透析した。限外濾過液を、Amiconフィルター(3.5 kDカットオフ)における非透析溶解物の遠心によって得た。
【0206】
IgG4抗体混合物(Bet v 1特異的IgG4(0.5μg)、およびFel d 1特異的IgG4(0.5μg))を新しく調製した赤血球溶解物(25μl)または透析した溶解物(25μl)と共に37℃でインキュベートすることによって、IgG4半分子の交換を評価した。各インキュベーションの総容量は50μlであり、それによって各抗体の最終濃度は10μg/mlとなった。以下の補足物質を用いた:Sigmaからの還元グルタチオン(GSH)、グルコース-6-リン酸(G-6-P)、およびNADPH(いずれもRocheから)。これらの化合物を使用前に水に溶解した。24時間インキュベーション後、試料をインキュベーションミックスからPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)に採取して、二重特異性活性を測定した。必要であれば試料を4℃で保存した。
【0207】
二重特異性活性(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料の希釈液をセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共に、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)において全量300μlで24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。
【0208】
交換レベルを、新しく調製した溶解物によって生成された二重特異性活性と比較した(表2)。
(表2)透析した赤血球において二重特異性活性を回復する因子の概要の一覧
透析した赤血球溶解物の交換活性を、新しく調製した溶解物と比較した。透析した溶解物に限外濾過液5 □lを補足した。G-6-P、NADPH、およびGSHの最終濃度はそれぞれ、5 mM、0.1 mM、および0.5 mMであった。
【0209】
これらのデータから、赤血球溶解物の活性が透析後に失われたことは明白である。限外濾過液を加えると、交換を大部分回復した。この結果は、透析の際に、交換反応にとって必須である成分(<3.5 kD)が失われたことを示唆した。IgG4半分子の交換にとってジスルフィド架橋の還元および酸化が必要であることから、そのような成分は酸化還元サイクルに関係する可能性がある。ゆえに、酸化還元サイクルの3つの「共因子」(G-6-P、NADPH、およびGSH)を透析溶解物に加えて、これらの化合物が交換活性を回復できるか否かを調べた。G-6-P、NADPH、およびGSHを共に補足した場合、交換活性は回復されうるであろう。個別の因子の存在下で透析溶解物をインキュベートすると、GSHによって交換活性は回復するが、G-6-PまたはNADPHによって回復しないことが判明した。
【0210】
実施例31:還元グルタチオンによるIgG4半分子交換の評価
IgG4半分子の交換を調べるために、キメラ抗体を還元グルタチオン(GSH)と共に混合した後インキュベートした。GSH(Sigma- Aldrich, St. Louis, MO)を使用前に水に溶解した。
【0211】
この実験において、Bet v 1特異的IgG4(1μg)およびFel d 1特異的IgG4(1μg)からなるIgG4抗体混合物を、GSHを含有するPBS/アジドにおいて37℃でインキュベートすることによってIgG4半分子の交換を評価した。総インキュベーション容量は100μlであり、それによって各抗体の最終濃度は10μg/mlであった。指示される時点で、試料をインキュベーション混合物からPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)に採取した。試料を抗原結合および二重特異性活性の測定のために4℃で保存した。
【0212】
Bet v 1結合抗体のレベルを、抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750μlにおいて
125I標識Bet v 1の存在下でプロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)として精製Bet v 1特異的抗体を用いて計算した。二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を、異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共にPBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。その後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I-標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fe l d-1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合IgGから得たBet v 1結合試験において用いられた検量線と同じ検量線を用いて計算した。
【0213】
図12において、IgG4半分子のGSH媒介交換の時間経過を提示する。これらのデータから、IgG4半分子がGSHの存在下で交換されることは明らかである。この実験において、最適な交換は0.1〜1 mM GSHのあいだで観察され、0.5 mM GSHを用いて24時間後に最高の交換(〜90%)に達した。
【0214】
IgG4のGSH媒介交換後に観察された二重特異性活性がIgGの凝集の結果である可能性を除外するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った(
図13)。この目的のために、Bet v 1結合IgG4およびFel d 1結合IgG4(各抗体10μg)の混合物をPBS/アジドにおいて0.5 mM GSHと共にインキュベートした。この混合物(最終容量100μl)を37℃で24時間インキュベートした後、70μlをSuperdex200カラムにおいて分画した。分画においてBet v 1結合IgGおよびFel d 1-Bet v 1クロスリンクIgGを測定した。Bet v 1結合抗体は、保持容量〜12.6 mlで1つのピークで溶出し、これは単量体IgGの保持容量に対応する。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は同じ分画において検出され、このことは、二重特異性活性が単量体IgGに関連したことを示している。GSHの存在下での二重特異性IgG4分子の生成は、交換が4℃より37℃においてより効率よく起こったことから温度依存的であることが見いだされた(
図14)。
【0215】
実施例32:他の物質の存在下での二重特異性IgGの生成
IgG1-Betv1およびIgG1-Feld1またはIgG4-Betv1およびIgG4-Feld1を、抗体10μg/mlの最終濃度で混合して、全量50μlで還元剤と共にインキュベートした。GSHを別として、以下の物質を試験した(インキュベーション混合物における最終濃度):L-システインをSigmaから得て(100μM)、ジチオスレイトール(DTT)をBioradから得て(50μM)、β-メルカプトエタノール(BME)をBioradから得て(100μM)、および酸化グルタチオン(GSSG、物質のパネルではこの物質は還元性ではないが、他の物質は全て還元剤であることに注意されたい)をSigmaから得た(100μM)。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS/ATに採取し、(二重)特異性IgG濃度を測定した。
図15は、精製IgG4-Betv1およびIgG4-Feld1の混合物にGSHまたは他の還元剤を加えることが(GSSGでは起こらない)、Fabアーム交換および二重特異性IgG4の生成を誘導するために十分であったことを示している。対照的に、対照IgG1混合物では二重特異性反応性は誘導されなかった。
【0216】
実施例33:GSHを用いた完全なヒトIgG4抗体の交換
IgGl-CD20、IgG4-CD20、IgGl-EGFr、およびIgG4-EGFrを、GSHと共に混合して全量1 mlでインキュベートした。各抗体の最終濃度は50μg/mlであった;GSHの最終濃度は0.5 mMであった。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取し、その中で(二重)特異性IgG濃度を測定した。
【0217】
二重特異性活性はサンドイッチELISAを用いて決定した。このアッセイに関して、ELISAプレート(Greiner bio-one, Frickenhausen, Germany)を1μg/ml(100μl/ウェル)EGFRの組み換え型細胞外ドメインのPBS溶液によって4℃で終夜コーティングした。プレートをPBS/0.5%Tween 20(PBT)によって3回洗浄した。試料をPBT/0.2%BSA(PBTB)において希釈して、ELISAプレートに移した(100μl/ウェル)。プレートシェーカー(300 rpm)において室温(RT)で90分間インキュベートした後、試料を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した。次に、マウス抗イディオタイプモノクローナル抗体2F2 SAB1.1(抗CD20抗体7D8に対する;Genmab)100μlをPBTBにおいて2μg/mlで加えて、プレートシェーカー(300 rpm)においてRTで90分間インキュベートした。抗イディオタイプ抗体を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した後、PBTBにおいて1000×希釈してHRP共役ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Westgrove, PA, USA)100μl/ウェルを加えて、RTでプレートシェーカー(300 rpm)において90分間インキュベートした。検出抗体を捨てて、プレートをPBTによって3回洗浄した。ABTS 50 mg錠(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)をABTS緩衝液(Roche)に溶解して、ELISAプレート(100μl/ウェル)に加えた。ELISAプレートを、アルミニウムホイルで覆ったプレートシェーカー(300 rpm)においてRTで30分間(または望ましければそれより長く)インキュベートして、反応をシュウ酸(Riedel de Haen Seelze, Germany)100μl/ウェルによって停止させた。ELISAプレートをRTで10分間放置した後、ELISAプレートリーダーにおいて405 nmでの吸光度を読み取った。
【0218】
図16Aは、IgG4-EGFrおよびIgG4-CD20の混合物をGSHの存在下でインキュベートすると、二重特異性抗EGFR/CD20抗体が形成されたが、非存在下では形成されなかったことを示している。Fabアーム交換は、GSHの存在下または非存在下のいずれにおいても、IgG1抗体の混合物では起こらなかった。
【0219】
IgG4半分子のGSH媒介交換の動的範囲を探索するために、GSH(0.5〜1,000μM)の完全な濃度曲線を用いて交換を分析した。IgG4-CD20およびIgG4-EGFrを混合して、全量1 mlでGSHと共にインキュベートした。各抗体の最終濃度は50μg/mlであった;GSHの最終濃度は
図16Bにおいて表記されるとおりであった。混合物を37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取して、(二重)特異性IgG濃度を測定した。
【0220】
図16Bは、IgG4半分子交換の明らかなGSH用量依存性を示す。反応成分がGSH媒介IgG4半分子交換にどのように影響を及ぼすかを探索するために、PBSにおいて、ならびに無血清および無タンパク質の化学的に定義された培地(Freestyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporation)において交換を試験した。この組織培養培地では、GSH媒介交換はより低いGSH濃度で起こることが見いだされた(
図16C)。同様に、5 mM GSHと共にインキュベートすると0.5 mMの場合より低い交換が明らかに起こったことから、GSH媒介IgG4半分子交換には最適な値が存在することが見いだされた(
図16D)。
【0221】
IgG4-EGFrおよびIgG4-CD20の混合物をGSHの存在下および非存在下で24時間インキュベートして、質量分析(ESI-TOF MS)によって評価した。各抗体200μg/mlを含有する試料50μlをN-グリコシダーゼF(Roche Diagnostics NL BV, Almere, The Netherlands)1μlによって終夜脱グリコシル化した。試料を、BEH C8、1.7μm、2.1×50 mmカラムを備えたAcquity UPLC(商標)(Waters, Milford, USA)において60℃で脱塩した。5μlを注入して5%〜95%溶出剤Bの勾配によって溶出した。溶出剤AはMilliQ水(Millipore Synthesis A10 apparatus)であり、溶出剤BはLC-MS等級のアセトニトリル(Biosolve, Valkenswaard, The Netherlands)であった。いずれの溶出剤も、有機改変剤として0.05%ギ酸(Fluka Riedel-de Haen, Buchs, Germany)を含有した。飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量分析を、micrOTOF(商標)質量分析計(Bruker, Bremen, Germany)において陽イオンモードで作動させてオンラインで記録した。それぞれの分析において、500〜5000 m/zスケールをESチューニングミックス(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)によって内部較正した。質量スペクトルを、DataAnalysis(商標)ソフトウェアv. 3.3(Bruker)を備えた最大エントロピー(Maximum Entropy)アルゴリズムを用いてデコンボリューションした。
【0222】
図16Eは、IgG4-CD20(145.5 kD)およびIgG4-EGFR(145.9 kD)の分子量が、GSHの非存在下では不変のままであったことを示している。しかし、GSHの存在下(
図16F)では、Fabアーム交換分子に対応する質量を有する新しいピークが出現した(145.7 kD)。新規質量は、二重特異性抗EGFR/CD20抗体の予想質量に対応する。その上、MSスペクトルのピークの高さから、二重特異性抗体が、混合物における総抗体質量の50%を表すと推定することができ、このことは、24時間以内に平衡に達するランダムな交換であったことことを示している。
【0223】
実施例34:アカゲザルIVIgは組み換え型ヒトIgG4抗体のFabアーム交換に関与する
2つの組み換え型ヒトIgG4抗体(先に記述したようにIgG4-CD20およびIgG4-EGFr)を、アカゲザルまたはヒトIVIgの存在下または非存在下で、GSHと共に37℃で24時間インキュベートした。Fabアーム交換を通しての二重特異性抗体の形成を、先に記述したようにサンドイッチELISAにおいて測定した。
【0224】
図17は、サルポリクローナルIVIgが、還元グルタチオンの存在下でインビトロで組み換え型抗体のFabアームの交換阻害能に関してヒトポリクローナルIVIgに匹敵することを示す。これは、アカゲザルのIVIgの成分、すなわちアカゲザル免疫グロブリンがFabアーム交換に関与していることを意味している。アカゲザルの免疫グロブリン、おそらくアカゲザルIgG4は、Fabアームを組み換え型ヒトIgG4と交換することができる。
【0225】
実施例35:ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFabアーム交換
3つのIgG1変異体を作出した:IgG4コアヒンジを有するIgG1(IgG1-CPSC)および2つのCH3ドメインスワップ変異体(IgG1-CH3(IgG4)およびIgG1-CPSC-CH3(IgG4))。
【0226】
部位特異的変異誘発を用いて、鋳型としてpEE-G1-wt a Bet v 1を用いてIgG1のヒンジにおいてP228S変異を導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースプライマーをVector NTI Advance 10によって設計した:
【0227】
Quickchange部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いて、pEE-G1-CPSC変異体を作製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ミックスは、pEE-G1 a Betv1 DNA鋳型(〜35 ng)5μl、変異誘発プライマー-フォワード1.5μl(〜150 ng)、変異誘発プライマー-リバース1.5μl(〜150 ng)、dNTPミックス1μl、反応緩衝液(10×)5μl、H
2O 36μl、および最後にPfu Turbo DNAポリメラーゼ1μlからなった。次に、ミックスをPCRに適用した:95℃で30秒、95℃で30秒(変性)、55℃で1分(アニール)、および68℃で17分(伸長)。このサイクルを20回繰り返した。
【0228】
DNA消化およびライゲーションを用いて、CH3ドメインスワップ変異体構築物IgG1-CH3(IgG4)およびIgG1-CPSC-CH3(IgG4)を作製した。CH3ドメインおよびCH3ドメインを有しないベクターを得るための消化反応は以下のとおりであった:DNA(pEE-G1-betv1、pEE-G1-CPSC、およびpEE-G4-betv1)〜1500 ng、BSA 2μl、Neb3緩衝液2μl、SalI 1μl、およびH
2Oを20μlとなるように加えた。37℃で30分間インキュベートした。DNAを精製してH
2O 30μlによって溶出した後、SanDI 1μlおよび万能緩衝液3μlを加えて、37℃で30分間インキュベートした。断片をエチジウムブロミドと共に1%アガロースゲルにおけるゲル電気泳動に供した。断片を紫外光下でゲルから切り出して、DNA精製キット(Amersham)を用いて溶解した。pEE-G4-wt SalI/SanDI(IgG4 CH3ドメインを含有した)断片を、以下の技法を用いてpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSCにライゲーションした:全量20μl中に鋳型DNA(SalI/SanDI消化pEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSC)1μl、SalI/SanDIインサート5μl、Ligate-it緩衝液4μl、H2O 9μl、およびリガーゼ1μl。ライゲーションを5分後に停止させた。
【0229】
DNA消化(ApaIおよびHindIIIを用いて)およびライゲーションを用いて、上記と類似の技法に従って、bet v 1変異体抗体のVHドメインをpEE-G4-a-feld1 wtのVHドメインに置き換えた。
【0230】
同様に、1つのIgG4変異体、IgG4-S228Pnewを作出した。この変異体において、ヒンジは228位でのセリンをプロリンに置き換えることによって安定化された(IgG1コアヒンジ)。QuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を用いて製造元の説明書に従って、部位特異的変異誘発を行った。この方法には、変異誘発の成否に関してスクリーニングするためにサイレントな余分のXmaI部位を導入することが含まれた。簡単に説明すると、10×反応緩衝液5μl、オリゴヌクレオチドS228Pfcorrect(100 pmol/μl)1μl、オリゴヌクレオチドS228Prcorrect(100 pmol/μl)1μl、dNTPミックス1μl、Quicksolution 3μl、プラスミドpTomG42F8HG(50 ng/μl)(2006年11月28日に提出された「組み換え型一価抗体およびその産生法(Recombinant monovalent antibodies and methods for production thereof)」と題するPCT出願公開(RO/DK (Genmab))において記述されている) 1μl、およびPfuUltra HF DNAポリメラーゼ1μlを全量50μlで混合して、TGradient Thermocycler 96(Whatman Biometra, Goettingen, Germany;製品番号050-801)によって18サイクルプログラムを用いて増幅した:95℃で1分間の変性;95℃で50秒、60℃で50秒、および68℃で10分間を18サイクル。PCR混合物をさらに処理するまで4℃で保存した。次に、PCR混合物をDpnI 1μlと共に37℃で60分間インキュベートして、pTomG42F8HGベクターを消化して、さらに処理するまで4℃で保存した。反応混合物を3 M NaAc 5μlおよびエタノール125μlによって沈殿させて、-20℃で20分間インキュベートして、14000×gで4℃で20分間遠心した。DNA沈降物を70%エタノールによって洗浄して乾燥させ、水4μlに溶解した。総4μl反応容量を One Shot DNH5αT1(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands)において製造元の説明書(Invitrogen)に従って形質転換した。次に、細胞を、50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまで、プレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0231】
コロニーPCRによるスクリーニングおよびXmaI(変異誘発によってXmaI部位の喪失が起こる)消化の後、プラスミドを細菌から単離して、DNAシークエンシングにより変異を確認した。望ましくない余分の変異が導入されたか否かをチェックするために、全HCコード領域をシークエンシングしたところ、いかなる追加の変異も含有しなかった。最終構築物を pTomG42F8S228PNewと命名した。
【0232】
これらの構築物からの組み換え型抗体を、3 mlの6ウェルプレート(NUNC)において、または125 mlのアーレンマイヤーフラスコ(Corning)においてトランスフェクション試薬として293 Fectin(Invitrogen)によってHEK293細胞において一過性に発現させた。
【0233】
非精製抗体(Freestyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporation)の以下の混合物を0.1 mM GSHと共に37℃で24時間インキュベートして、試料をPBS-ATに採取し、(二重)特異性IgG濃度を先の実施例において記述されているように測定した:
− IgG4抗feld1 wtとIgG4抗betv1 wt
− IgG1抗feld1 wtとIgG4抗betv1wt
− IgG1抗feld1 CPSCとIgGl抗betv1 CPSC(IgG1 CPSC-IgG1 CPSCとして以下に指示される)
− IgG1抗feld1 CPSCとIgG1抗betv1 CH3(IgG4)(IgG1 CPSC-IgG1 CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSCとIgG1抗betv1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CPSC-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CH3(IgG4)とIgGl抗betv1 CH3(IgG4)(IgG1 CH3(IgG4)-IgG1 CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CH3(IgG4)とIgGl抗betv1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CH3(IgG4)-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSC/CH3(IgG4)と抗betv1 IgG1 CPSC/CH3(IgG4)(IgG1 CPSC/CH3(IgG4)-IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
− IgG1抗feld1 CPSC/CH3(IgG4)とIgG4抗betv1 wt(IgG1 CPSC/CH3(IgG4)-IgG4 wt)
− IgG4抗bet1 S228PnewとIgG4 wt
【0234】
結果は、これらのインビトロ条件において(0.1 mM GSH)、抗体の1つがCPSCヒンジを含有し、および双方の抗体がIgG4様CH3を含有する場合に、半分子交換が起こることを示した。同様に、半分子交換は、IgG1ヒンジを含有するIgG4分子とIgG4 wt分子とのあいだでも起こる。
−=変化なし
+=交換が起こる
±=限られた交換(〜5%)
空欄=試験していない
【0235】
異なる変異体からの半分子の交換に及ぼすGSH濃度の効果を0、0.1、1、および10 mM GSHを用いて試験した。交換を以下の混合物を用いて試験した:
− IgG4 a-feld1 wtとIgG4 a-betv1 wt
− IgG1 a-feld1 wtとIgG4 a-betv1 wt
− IgG1 a-feld1 CPSCとIgG1 a-betv1 CPSC
− IgG1 a-feld1 CH3(IgG4)とIgG1 a-betv1 CH3(IgG4)
− IgG1 a-feld1 CPSC/CH3(IgG4)とa-betv1 IgG1 CPSC/CH3(IgG4))
【0236】
1 mMまでのGSH濃度に関して、結果(
図18)は、先に記述した結果を確認した。10 mM GSHでは、半分子交換はまた、IgG1 a-feld1 CH3(IgG4)およびIgG1 a-betv1 CH3(IgG4)を含有する反応においても認められた。
【0237】
適当なIgG1変異体のGSH媒介交換後に観察された二重特異性活性が、先の実施例において記述されたように、IgG凝集の結果である可能性を除外するために、サイズ排除クロマトグラフィーを行った。異種Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性は、単量体IgGの保持容量に対応する分画において検出された。
【0238】
実施例36:ヒンジ領域および/またはCH3ドメイン変異を有するIgG1およびIgG4抗体の生成
5つのIgG1変異体を作出した:IgG4コアヒンジを有するIgG1(IgG1-P228S)、2つのCH3ドメインスワップ変異体(IgG1-CH3(γ4)およびIgGl-P228S-CH3(γ4))、IgG1の409位(CH3ドメイン内)に存在するリジンがアルギニンに置き換えられている1つのCH3点突然変異体(IgG1-K409R)、ならびにIgG4コアヒンジおよびK409R変異を有する1つのIgG1(IgG1-P228S-K409R)(
図19)。これらの変異体は、Bet v 1またはFel d 1特異性のいずれかを有するように作出された。
【0239】
2つのIgG4変異体を作出した:IgG4の409位に存在するアルギニン(CH3ドメイン内)がリジンに置き換えられている1つのCH3点突然変異体(IgG4-R409K)、および1つのCH3スワップ変異体(IgG4-CH3(γ1))(
図19)。これらの変異体はまた、Bet v 1またはFel d 1特異性のいずれかを有するように作出された。
【0240】
部位特異的変異誘発を用いて、鋳型としてpEE-G1-wt a Bet v 1を用いてIgG1のヒンジにP228S変異を導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースをVector NTI Advance 10によって設計した:
P228S Mutプライマー-F:SEQ ID NO:23:
P228S Meuプライマー-R:SEQ ID NO:24:
【0241】
Quickchange部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いてpEE-G1-CPSC変異体を作製した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ミックスは、pEE-G1 a Betv1 DNA鋳型(〜35 ng)5μl、変異誘発プライマー-フォワード1.5μl(〜150 ng)、変異誘発プライマー-リバース1.5μl(〜150 ng)、dNTPミックス1μl、反応緩衝液(10×)5μl、 H2O 36μl、および最後にPfu Turbo DNAポリメラーゼ1μlからなった。次に、ミックスをPCRに適用した:95℃で30秒、95℃で30秒(変性)、55℃で1分(アニール)、および68℃で17分(伸長)。このサイクルを20回繰り返した。
【0242】
DNAの消化およびライゲーションを用いてCH3ドメインスワップ変異体構築物IgG1-CH3(γ4)およびIgG1-P228S-CH3(γ4)を作製した。CH3ドメインおよびCH3ドメインを有しないベクターを得るための消化反応は、以下のとおりであった:DNA(pEE-G1-betv1、pEE-G1-CPSC、およびpEE-G4-betv1)〜1500 ng、BSA 2μl、Neb3緩衝液2μl、SalI 1μl、およびH
2Oを全量20μlとなるように加えた。37℃で30分間のインキュベーションを行った。DNAを精製してH
2O 30μlによって溶出した後、SanDI 1μlおよび万能緩衝液3μlを加えて、37℃で30分間インキュベートした。断片を、エチジウムブロミドと共に1%アガロースゲルでのゲル電気泳動に供した。断片を紫外光下でゲルから切り出し、DNA精製キット(Amersham)を用いて溶解した。pEE-G4-wt SalI/SanDI(IgG4 CH3ドメインを含有する)断片を、以下の技法を用いてpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSCにライゲーションした:全量20μl中に、鋳型DNA(SalI/SanDI消化pEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSC)1μl、SalI/SanDIインサート5μl、Ligate-it緩衝液4μl、H2O 9μl、およびリガーゼ1μl。ライゲーションを5分後に停止させた。
【0243】
DNA消化(ApaIおよびHindIIIを用いて)およびライゲーションを用いて、上記と類似の技法に従ってbet v 1変異体抗体のVHドメインをpEE-G4-a-feld1 wtのVHドメインに置き換えた。
【0244】
部位特異的変異誘発を用いて、点突然変異(K409RまたはR409K)をpEE-γ4 wt、pEE-γ1、およびpEE-γ1-P228S構築物に導入した。変異誘発プライマー、フォワードおよびリバースをVector NTI Advance 10によって設計した:
G1-K409R Mut-F:SEQ ID NO: 25
G1-K409R Mut-R:SEQ ID NO: 26
G4-R409K Mut-F:SEQ ID NO: 27
G4-R409K Mut-R:SEQ ID NO: 28
【0245】
QuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を用いて、製造元の説明書に従って、変異誘発効率を増加させるために以下に指示されるように変化させて、部位特異的変異誘発を行った。この方法には、変異誘発の成否をスクリーニングするためにサイレントの余分のAccI部位の導入が含まれた。第一に、10×pfu反応緩衝液3μl、dNTPミックス(10 mM)1μl、フォワードまたはリバースプライマー275 ng、鋳型DNA 50 ng、およびPfu turbo hotstartポリメラーゼ0.75μlを含有するプレPCRミックスを用いた。GeneAmp PCRシステム9700(Applied Biosystems)を用いてプレPCRを行った:94℃で5分間の初回変性;94℃で30秒;50℃で1分、および68℃で14分を4サイクル。プレPCRミックスを含有するフォワードプライマー25μlを、プレPCRミックスを含有するリバースプライマー25μlに加えた。Pfu turbo hotstart 0.5μlを加えて、増幅を行った:94℃で1分間の変性;94℃で1分間、50℃で1分間、および68℃で8分間を14サイクル;94℃で30秒、55℃で1分間、および68℃で8分間を12サイクル。
【0246】
PCR混合物をさらに処理するまで4℃で保存した。次に、PCR混合物をDpnI 1μlと共に37℃で60分間インキュベートして、さらに処理するまで4℃で保存した。消化したPCR産物2μlをOne Shot DNH5αT1(登録商標)コンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands)において製造元の説明書(Invitrogen)に従って形質転換した。次に、細胞を50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-Bertani(LB)寒天プレートに播種した。細菌コロニーが明白となるまでプレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。
【0247】
変異誘発の成否をチェックするために、コロニーPCRおよびAccI消化によってスクリーニングした後、プラスミドを細菌から単離して、変異をDNAシークエンシングによって確認した。望ましくない余分の変異が導入されたか否かをチェックするために、全HCコード領域をシークエンシングしたところ、いかなる追加の変異も含有しなかった。
【0248】
これらの構築物からの組み換え型抗体を3 mlの6ウェルプレート(NUNC)または125もしくは250アーレンマイヤーフラスコ(Corning)において、トランスフェクション試薬として293 Fectin(Invitrogen)によってHEK293細胞において一過性に発現させた。
【0249】
実施例37.IgG1およびIgG4ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFabアーム交換
半分子の交換を調べるために、抗体を混合して、還元グルタチオン(GSH)と共にインキュベートした。GSH(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を使用前に水に溶解した。
【0250】
半分子の交換は、Bet v 1特異的抗体(200 ng)およびFel d 1特異的抗体(200 ng)からなる抗体混合物を、GSH(1または10 mM)を含有するPBS/アジドにおいて37℃でインキュベートすることによって評価した。総インキュベーション容量は50μlであった。24時間後、試料を、インキュベーション混合物からPBS-AT(0.3%ウシ血清アルブミン、0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)に採取した。10 mM GSHを含有する試料に関して、GSH活性を阻害する強いアルキル化剤である等モル量のヨウ素-アセトアミドを加えた。試料を、抗原結合および二重特異性活性を測定するために4℃で保存した。
【0251】
Bet v 1結合抗体のレベルを抗原結合試験において測定した。試料を、PBS-IAT(1μg/ml IVIgを補足したPBS-AT)750μlにおいて、プロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)0.75 mgと共に、
125I標識Bet v 1の存在下で24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-T(0.1%Tween-20および0.05%(w/v)NaN
3を補足したPBS)によって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。Bet v 1特異的IgGの濃度を、標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あた0〜200 ngの範囲)として精製Bet v1特異的抗体を用いて計算した。
【0252】
二重特異性IgG(すなわち、Fel d 1-Bet v 1クロスリンク活性)の濃度を異種クロスリンクアッセイにおいて測定した。このアッセイにおいて、試料を、Fel d 1抗原が存在するセファロース連結ネコ抽出物0.5 mgと共に、PBS-IATにおいて全量300μlで24時間インキュベートした。次に、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、
125I標識Bet v 1と共に24時間インキュベートした後、セファロースをPBS-Tによって洗浄して、加えた放射活性の量に対する結合した放射活性の量を測定した。二重特異性IgG(Fel d 1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合IgGから得られた、Bet v 1結合試験において用いられる検量線と同じ検量線を用いて計算した。試験はFreeStyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporationにおいて抗体含有上清を用いて行った。
【0253】
以下の抗体混合物を用いた:
−Betv1-IgG1 wtとFeld1-IgG1 wt(
図20においてIgG1として指示される)
−Betv1-IgG1 P228SとFeld1-IgG1-P228S(
図20におけるIgG1-P228S)
−Betv1-IgG4-CH3(γ1)とFeld1-IgG4-CH3(γ1)(
図20におけるIgG4-CH3(γl))
−Betv1-IgG4-R409KとFeld1-IgG4-R409K(
図20におけるIgG4-R409K)
−Betv1-IgG1-CH3(γ4)とFeld1-IgG1-CH3(γ4)(
図20におけるIgG1-CH3(γ4))
−Betv1-IgG1-K409RとFeld1-IgG1-K409R(
図20におけるIgG1-K409R)
−Betv1-IgG4 wtとFeld1-IgG4 wt(
図20におけるIgG4 wt)
−Betv1-IgG1-P228S-CH3(γ4)とFeld1-IgG1-P228S-CH3(γ4)(
図20におけるIgG1-P228S-CH3(γ4))
−Betv1-IgG1-P228S-K409RとFeld1-IgG1-P228S-K409R(
図20におけるIgG1-P228S- K409R)
【0254】
結果(
図20)は、1 mM GSHで、IgG4 wt、IgG1-P228S-K409R、またはIgG1-P228S-CH3(γ4)抗体のあいだで半分子交換が起こることを示した。これらの条件下では、IgG1 wt、IgG1-P228S、IgG4-CH3(γl)、IgG4-R409K、IgG1-CH3(γ4)、またはIgG1- K409R抗体は、半分子交換を全く示さなかったか、ごくわずかに示したに過ぎなかった。10 mM GSHでは、半分子交換はまた、IgG1-CH3(γ4)またはIgG1-K409R抗体を含有する反応において認められた。
【0255】
実施例38.IVIGの非存在下での無ヒンジIgG4抗体分子の二量体化を安定化させるための追加のCH3変異
無ヒンジIgG4抗体(HG)分子は、低親和性非共有結合相互作用によって二量体を形成する。WO/2007/059782は、この二量体化プロセスが過剰量の無関係な抗体の存在下で、HG IgG4分子を用いて阻害されうることを記述している。WO/2007/059782は、無ヒンジIgG4抗EGFR抗体2F8-HGを記述している。
【0256】
pHG-2F8の構築:2F8-HGの重鎖を発現させるためのベクター。2F8-HGの領域をコードする重鎖cDNAをコドン最適化して、pEE6.4ベクター(Lonza Biologics, Slough, UK)においてクローニングした。得られたベクターをpHG-2F8と命名した。
【0257】
pKappa2F8の構築:2F8抗体の軽鎖を発現させるためのベクター。抗体2F8をコードするVL領域をコドン最適化して、pKappa2F2ベクター(ベクターpEE12.4(Lonza)において抗体2F2(WO2004035607において記述される)のコドン最適化cDNA領域をコードするベクター)においてクローニングして、2F2 VL領域を2F8 VL領域に置き換えた。得られたベクターをpKappa-2F8と命名した。
【0258】
無ヒンジIgG4抗EGFR抗体2F8-HGはWO/2007/059782において記述されている。以下の表において与えられた追加の変異を、部位特異的変異誘発によって無ヒンジIgG4抗体2F8-HGのCH3領域に導入した。
【0259】
KABATは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従うアミノ酸番号付けを示す。EUインデックスは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において概要されるようにEUインデックスに従うアミノ酸番号付けを示す。SEQ ID NO:39、40、41は、本文書のSEQ ID NO:39、40、および41において示されるアミノ酸番号付けを示す。同様に番号付け法の比較のために
図22も参照されたい。
【0260】
CH3変異体を発現させるための構築物を作出するために、以下のプライマーを用いて部位特異的変異誘発を用いて変異をpHG2F8に導入した:
【0261】
構築物を、重鎖および軽鎖コードプラスミドを同時トランスフェクトすることによってHEK-293F細胞において一過性に発現させて、精製EGFrに対する結合を200μg/mlポリクローナルヒトIgG(静脈内免疫グロブリン、IVIg、Sanquin Netherlands)の非存在下および存在下で決定した。
【0262】
精製EGFr(Sigma, St Louis, MO)を96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)に50 ng/ウェルでコーティングしたELISAを用いて、結合親和性を決定した。プレートを0.05%Tween-20および2%ニワトリ血清を補足したPBSによってブロックした。次に、100μg/mlポリクローナルヒトIgG(静脈内免疫グロブリン、IVIG、Sanquin Netherlands)を含有する緩衝液において連続希釈した試料を加えて、室温(RT)で1時間インキュベートした。その後プレートを、検出抗体としてペルオキシダーゼ共役ウサギ抗ヒトカッパ軽鎖(DAKO、Glostrup, Denmark)と共にインキュベートして、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS;Roche, Mannheim, Germany)によって顕色した。マイクロプレートリーダー(Biotek, Winooski, VT)において405 nmで吸光度を測定した。
【0263】
図21は、IVIGの存在下における2F8-HGの結合曲線(■を有する太い破線)が、IVIGを有しない2F8-HGの結合曲線(□を有する太い実線)に対して明らかに右にシフトしていることを示している。EGFrコーティングに対するアビディティのこの差は、IVIGの存在下では2F8-HGが一価で結合するという考えと一貫する。試験された変異2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409A、および2F8-HG-R409KAの結合曲線は、IVIGの付加に対して非感受性となり、IVIGの非存在下での2F8-HGの二価の結合曲線に対して重ね合わせることができた。EGFrコーティングに関するアビディティのこれらの差は、2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409A、および2F8-HG-R409K変異がHG分子の二量体化を安定化させるという考えと一貫する。
【0264】
実施例39.ヒトIgG4抗体の二量体化を安定化させるための追加のCH3ドメイン変異
以下の表において与えられる変異を、部位特異的変異誘発によってIgG4-CD20およびIgG4-EGFrのCH3ドメインに導入した。
【0265】
KABATは、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))に従うアミノ酸番号付けを示す。EUインデックスは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)において概要されるようにEUインデックスに従うアミノ酸番号付けを示す。SEQ ID NO:39、40、41は、本文書のSEQ ID NO:39、40、および41において示されるアミノ酸番号付けを示す。同様に番号付け法の比較のために
図22も参照されたい。
【0266】
IgG1-CD20およびIgGl-EGFr、IgG4-CD20、およびIgG4-EGFr、またはIgG4-CH3変異体-CD20およびIgG4-CH3変異体-EGFrを混合して、先に記述したように0.5 mM GSHと共にインキュベートした。二重特異性活性を実施例33において記述されるように決定した。
【0267】
図23は、二重特異性抗EGFr/CD20抗体が、CH3ドメイン変異体Q355R、E419Q、L445P、およびR409Aの混合物と共にIgG4抗体の混合物において形成されたことを示す。CH3ドメイン変異体R409K、R409M、R409L、およびK370Tの混合物では二重特異性活性は測定されず、これらの変異が、ヒトIgG4抗体の二量体化を安定化させたことを示している。CH3ドメイン変異体R409T、F405A、およびF405Lは、ヒトIgG4抗体の二量体化を部分的に安定化させた。
【0268】
配列表
SEQ ID NO:39:ヒトIgG4の野生型C
H領域のアミノ酸配列
SEQ ID NO:40:ヒトIgG4の野生型C
H領域のアミノ酸配列
SEQ ID NO:41:ヒトIgG4の野生型C
H領域のアミノ酸配列