特許第6034340号(P6034340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034340地震スリップジョイント、地震影響軽減配管システム、および配管システムへの地震の影響を軽減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034340
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】地震スリップジョイント、地震影響軽減配管システム、および配管システムへの地震の影響を軽減する方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20161121BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F16L27/12 E
   F16L21/00 E
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-160995(P2014-160995)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-42902(P2015-42902A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】13/966,519
(32)【優先日】2013年8月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ピー・ローウェン
(72)【発明者】
【氏名】スコット・エル・プファファー
(72)【発明者】
【氏名】マリア・イー・プファファー
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−144855(JP,A)
【文献】 特開2012−167702(JP,A)
【文献】 特公平01−012993(JP,B2)
【文献】 特開2005−061082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/00 − 27/12
F16L 21/00 − 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震スリップジョイント(100)であって、
固定シール面(112)と、
作動停止状態時に前記固定シール面(112)と係合してシール界面を形成するように構成された可動シール面(110)であって、前記シール界面が、前記シール界面を通る流体の通路をはばむ接合部である、可動シール面(110)と、
前記作動停止状態と前記作動状態を切り換えるように構成されたソレノイド装置(102)であって、前記ソレノイド装置(102)がピストン(108)およびばね構造(104)を含み、前記ピストン(108)が前記可動シール面(110)に連結され、前記ばね構造(104)が、前記作動停止状態時に前記ピストン(108)に力を及ぼし、それによって前記可動シール面(110)を前記固定シール面(112)に押圧して前記シール界面を形成し、前記ピストン(108)が、前記作動状態時に前記ばね構造(104)を圧縮し引っ込み、それによって前記可動シール面(110)を前記固定シール面(112)から切り離すように構成される、ソレノイド装置(102)と
を備える地震スリップジョイント(100)。
【請求項2】
前記可動シール面(110)が前記固定シール面(112)と前記ソレノイド装置(102)との間にある、請求項1に記載の地震スリップジョイント(100)。
【請求項3】
前記ばね構造(104)が前記ピストン(108)のまわりに巻き付けられる、請求項1に記載の地震スリップジョイント(100)。
【請求項4】
前記ピストン(108)が、第1の端部と、第2の反対端部と、前記第1の端部と前記第2の反対端部との間のストッパ部(106)と、を含む、請求項1に記載の地震スリップジョイント(100)。
【請求項5】
前記ピストン(108)の前記ストッパ部(106)が前記可動シール面(110)と前記ばね構造(104)との間にある、請求項4に記載の地震スリップジョイント(100)。
【請求項6】
前記ばね構造(104)が前記ピストン(108)の前記ストッパ部(106)に力を及ぼす、請求項1に記載の地震スリップジョイント(100)。
【請求項7】
地震影響軽減配管システムであって、
第1の直径を有する第1のパイプ(114)と、
前記第1の直径より大きい第2の直径を有する第2のパイプ(116)であって、前記第1のパイプ(114)の末端部を取り囲む第2のパイプ(116)と、
前記第1のパイプ(114)の前記末端部および前記第2のパイプ(116)を連結する地震スリップジョイント(100)であって、前記地震スリップジョイント(100)が、固定シール面(112)、可動シール面(110)、およびソレノイド装置(102)を含み、前記固定シール面(112)が前記第1のパイプ(114)上に配置され、前記可動シール面(110)が前記ソレノイド装置(102)に連結され、前記可動シール面(110)が、作動停止状態時に前記固定シール面(112)に係合し、それによって前記第1のパイプ(114)の前記末端部を固定するように構成され、前記ソレノイド装置(102)が、地震活動信号に応答して前記作動停止状態と作動状態を切り換え、それによって前記第1のパイプ(114)の前記末端部を解放するように構成される、地震スリップジョイント(100)と
を備える地震影響軽減配管システム。
【請求項8】
前記固定シール面(112)および前記可動シール面(110)が前記第1のパイプ(114)と前記第2のパイプ(116)との間にある、請求項7に記載の地震影響軽減配管システム。
【請求項9】
前記可動シール面(110)および前記固定シール面(112)が、前記作動停止状態時にシール界面を形成し、前記シール界面が、前記シール界面を通る流体の通路をはばむ接合部である、請求項7に記載の地震影響軽減配管システム。
【請求項10】
前記可動シール面(110)が、前記作動状態時に前記固定シール面(112)から切り離される、請求項7に記載の地震影響軽減配管システム。
【請求項11】
地震事象を検出し、前記地震事象が所定のマグニチュードを超えたときに前記地震活動信号を前記ソレノイド装置(102)に送るように構成された地震活動センサ(118)
をさらに備える、請求項7に記載の地震影響軽減配管システム。
【請求項12】
前記作動状態時に前記ソレノイド装置(102)に電流を供給するように構成された電池(120)
をさらに備える、請求項7に記載の地震影響軽減配管システム。
【請求項13】
配管システムへの地震の影響を軽減する方法であって、
第1のパイプ(114)および第2のパイプ(116)を地震スリップジョイント(100)で連結するステップであって、前記地震スリップジョイント(100)がソレノイド装置(102)を含み、前記ソレノイド装置(102)が、前記第1のパイプ(114)を前記第2のパイプ(116)に固定するばね構造(104)を含む、ステップと、
地震活動センサ(118)から地震活動信号を検出するステップであって、前記地震活動信号が所定のマグニチュードを超える地震事象に応答する、ステップと、
前記地震事象時に前記地震活動信号に応答して前記ソレノイド装置(102)を作動させて前記第2のパイプ(116)から前記第1のパイプ(114)を解放し、それによって前記第1のパイプ(114)および前記第2のパイプ(116)が互いに対して相対的に移動できるようにするステップと、
前記地震事象の停止後に前記ソレノイド装置(102)の作動を停止させて前記第1のパイプ(114)を前記第2のパイプ(116)に再び固定するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記連結するステップが、前記第1のパイプ(114)の小さい末端部を前記第2のパイプ(116)の大きい末端部の中に挿入することであって、前記第1のパイプ(114)の前記小さい末端部および前記第2のパイプ(116)の前記大きい末端部が、前記第1のパイプ(114)の前記小さい末端部と前記第2のパイプ(116)の前記大きい末端部との間に環状空間を画定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記作動させるステップが、前記ソレノイド装置(102)に電流を供給して前記ばね構造(104)の能動圧縮を容易にすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記作動を停止させるステップが、前記ソレノイド装置(102)への電流の供給を中止して前記ばね構造(104)の受動減圧を可能にすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ソレノイド装置(102)の作動を停止させるステップが、前記地震活動信号に続いて所定の時間後に自動的に行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管システム(piping systems)への地震事象(seismic events)の影響を軽減するための装置、アセンブリ、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管システムは1つまたは複数のパイプを含むことができ、パイプの一端は固定基準点およびある共振周波数を有し、パイプの他端は別の固定基準点および別の共振周波数を有する。地震事象(例えば地震)の間、異なる共振周波数が配管システムに比較的大きいひずみ量を引き起こす可能性がある。したがって、配管システムは、地震事象後に一体性の喪失および/または運転の喪失を受ける可能性がある。さらに、原子力発電所の場合、このような損傷は、放射性物質の放出をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0091707号明細書
【発明の概要】
【0004】
地震スリップジョイント(seismic slip joint)は、固定シール面、可動シール面、およびソレノイド装置を含むことができる。可動シール面は、作動停止状態時に固定シール面と係合してシール界面(sealing intarface)を形成するように構成されてもよく、シール界面は、シール界面を通る流体の通路をはばむ接合部である。ソレノイド装置は、作動停止状態と作動状態を切り換えるように構成されてもよく、ソレノイド装置はピストンおよびばね構造を含み、ピストンは可動シール面に連結され、ばね構造は、作動停止状態時にピストンに力を及ぼし、それによって可動シール面を固定シール面に押圧してシール界面を形成し、ピストンは、作動状態時にばね構造を圧縮し引っ込み、それによって可動シール面を固定シール面から切り離すように構成される。
【0005】
地震影響軽減配管システム(seismic−mitigating piping system)は、第1のパイプ、第2のパイプ、および地震スリップジョイントを含むことができる。第1のパイプは第1の直径を有する。第2のパイプは第1の直径より大きい第2の直径を有し、第1のパイプの末端部を取り囲む。地震スリップジョイントは、第1のパイプの末端部および第2のパイプを連結することができ、地震スリップジョイントは、固定シール面、可動シール面、およびソレノイド装置を含み、固定シール面は第1のパイプ上に配置され、可動シール面はソレノイド装置に連結され、可動シール面は、作動停止状態時に固定シール面に係合し、それによって第1のパイプの末端部を固定するように構成され、ソレノイド装置は、地震活動信号に応答して作動停止状態と作動状態を切り換え、それによって第1のパイプの末端部を解放するように構成される。
【0006】
配管システムへの地震の影響を軽減する方法は、連結するステップ、検出するステップ、作動させるステップ、および作動を停止させるステップを含むことができる。連結するステップは、第1のパイプおよび第2のパイプを地震スリップジョイントで連結することを含むことができ、地震スリップジョイントはソレノイド装置を含み、ソレノイド装置は、第1のパイプを第2のパイプに固定するばね構造を含む。検出するステップは、地震活動センサから地震活動信号を検出することを含むことができ、地震活動信号は所定のマグニチュードを超える地震事象に応答する。作動させるステップは、地震事象時に地震活動信号に応答してソレノイド装置を作動させて第2のパイプから第1のパイプを解放し、それによって第1のパイプおよび第2のパイプが互いに対して相対的に移動できるようにすることを含むことができる。作動を停止させるステップは、地震事象の停止後にソレノイド装置の作動を停止させて第1のパイプを第2のパイプに再び固定することを含むことができる。
【0007】
本明細書における非限定的な諸実施形態の様々な特徴および利点は、詳細な説明を添付図面と共に検討したときにより明らかになり得る。添付図面は例示目的で提供されるに過ぎず、特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。添付図面は、特に明記されていない限り原寸に比例して描かれていると考えるべきではない。話を簡単にするために、図面の様々な寸法が誇張されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの概略図である。
図2】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントのより詳細な図である。
図3】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの別のより詳細な図である。
図4】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの正面図である。
図5】例示的な一実施形態による地震影響軽減配管システムの概略図である。
図6】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの固定シール面および可動シール面の概略図である。
図7】例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの別の固定シール面および可動シール面の概略図である。
図8】例示的な一実施形態による配管システム上で地震事象を軽減する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
要素または層が別の要素または層「上にある(on)」、別の要素または層「に連結される(connected to)」、別の要素または層「に結合される(coupled to)」、または別の要素または層「を覆う(covering)」と称されるとき、要素または層は、他の要素または層の直上にある、他の要素または層に連結される、他の要素または層に結合される、または他の要素または層を覆うことができ、あるいは介在する要素または層が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素または層「の直上にある(directly on)」、別の要素または層「に直接連結される(directly connected to)」、または別の要素または層「に直接結合される(directy coupled to」と称されるとき、介在する要素または層は存在しない。本明細書を通じて同じ番号は同じ要素を意味する。本明細書では、「および/または(and/or)」という用語は、1つまたは複数の関連する列挙された項目の任意またはすべての組合せを含む。
【0010】
第1の(first)、第2の(second)、第3の(third)などの用語は、本明細書において、様々な要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するために使用されることがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるべきである。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、または部分と別の領域、層、または部分とを区別するためだけに使用される。したがって、以下で論じる第1の要素、構成要素、領域、層、または部分は、例示的な諸実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または部分と称することができる。
【0011】
空間的に相対的な用語(例えば、「すぐ下に(beneath)」、「下方に(below)」、「下位の(lower)」、「上方に(above)」、「上位の(upper)」など)は、本明細書で説明を簡単にするために、諸図に示されているように、1つの要素または特徴と他の1つまたは複数の要素または特徴との関係を説明するために使用されることがある。空間的に相対的な用語は、諸図に示されている向きに加えて、使用または運転中の装置の様々な向きを包含することを意図していることが理解されるべきである。例えば、図中の装置がひっくり返された場合、他の要素または特徴「の下方に」または「のすぐ下に」と表現されている要素は、他の要素または特徴「の上方に」方向付けられる。したがって、「下方に」という用語は、「上方に」と「下方に」の両方の向きを包含することがある。そうでない場合は、装置は(90度回転されるかまたは他の向きに)方向付けられ、本明細書で使用されそれに応じて解釈される空間的に相対的な記述子でもよい。
【0012】
本明細書で使用される用語は、様々な実施形態を説明するためだけのものであり、例示的な実施形態を限定するものではない。本明細書では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上特に明確に示していない限り、複数形も含むことを意図している。さらに、「含む(includes)」、「含む(including)」、「備える(comprises)」、および/または「備える(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、規定された特徴、完全体、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことが理解されよう。
【0013】
例示的な諸実施形態は、例示的な諸実施形態の理想化された実施形態(および中間構造体)の概略図である断面図を参照して本明細書で説明される。したがって、例えば製造技術および/または製造公差の結果として、説明図の形状からの差異が当然予想される。したがって、例示的な諸実施形態は、本明細書に示されている領域の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば製造に起因する形状の偏差を含むものとする。例えば、矩形として示されている注入領域は、典型的には、その領域の縁部に、注入領域から非注入領域への二元変化ではなく、丸いもしくは湾曲した特徴および/または注入濃度勾配を有する。同様に、注入によって形成される埋込み領域は、埋込み領域と注入がそこから行われる表面との間の領域内にいくらかの注入をもたらし得る。したがって、諸図に示されている領域は本質的に概略的なものであり、領域の形状は、装置の領域の実際の形状を示すものではなく、例示的な諸実施形態の範囲を限定するものでもない。
【0014】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的用語および科学的用を含む)は、例示的な諸実施形態が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。さらに、一般に使用されている辞書に定義されている用語などの用語は、関連する技術分野の状況でのそれらの用語の意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されるべきでないことが理解されよう。
【0015】
図1は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの概略図である。図1を参照すると、地震スリップジョイント100は、第1のパイプ114を第2のパイプ116に連結する。地震スリップジョイント100は、固定シール面112、可動シール面110、およびソレノイド装置102を含む。非限定的な一実施形態では、ソレノイド装置102は、可動金属アーマチュア(例えば、ピストン、スラグ)のまわりに巻かれた誘導コイルを含む電気機械式ソレノイドとすることができる。誘導コイルは、アーマチュアが中心に出入りすることができるように形状を定められる。誘導コイルに電流が供給されると、電磁場が生成される。アーマチュアは、電磁場に応答して、コイルのインダクタンスを増大させる方向に移動する。その結果、アーマチュアは、機械力を与えて所望の動作を行うために使用することができる。
【0016】
固定シール面112および可動シール面110は、第1のパイプ114と第2のパイプ116との間にある。特に、固定シール面112は、第1のパイプ114の外表面上に取り付けられる。ソレノイド装置102は第2のパイプ116を貫通して延び、可動シール面110に連結される。可動シール面110は、固定シール面112とソレノイド装置102との間にある。可動シール面110は、作動停止状態時に固定シール面112に係合してシール界面を形成するように構成される。シール界面は、シール界面を通る流体の通路をはばむ接合部である。その結果、第1のパイプ114および第2のパイプ116を流れる流体は、作動停止状態時に第1のパイプ114および第2のパイプ116の中に閉じ込められる。ソレノイド装置102は、作動停止状態と作動状態を切り換えるように構成される。
【0017】
図2は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントのより詳細な図である。図2を参照すると、ソレノイド装置102はピストン108およびばね構造104を含む。ばね構造104はピストン108のまわりに巻き付けられる。ピストン108は可動シール面110に連結される。ピストン108は、第1の端部と、第2の反対端部と、第1の端部と第2の反対端部との間のストッパ部106と、を含む。ピストン108のストッパ部106は可動シール面110とばね構造104との間にある。ばね構造104は、作動停止状態時にピストン108に力を及ぼし、それによって可動シール面110を固定シール面112に押圧してシール界面を形成する。特に、ばね構造104はピストン108のストッパ部106に力を及ぼす。ピストン108は、作動状態時にばね構造104を圧縮し引っ込み、それによって可動シール面110を固定シール面112から切り離すように構成される。しかしながら、例示的な諸実施形態はばね構造に限定されないことが理解されるべきである。例えば、様々な他の弾力構造および配置が、(第1のパイプ114および第2のパイプ116を解放/開封するために)作動状態時に能動圧縮を伴うように、(第1のパイプ114および第2のパイプ116を再固定/再封止するために)作動停止状態時に受動減圧を伴うように、地震スリップジョイント100に使用されてもよい。
【0018】
地震活動センサ118は、地震事象(例えば地震)を検出し、地震事象が所定のマグニチュードを超えたときに地震活動信号をソレノイド装置102に送るように構成される。電池120は、作動状態時にソレノイド装置102に電流を供給するように構成される。可動シール面110は、作動状態時に固定シール面112から切り離される。その結果、第1のパイプ114は第2のパイプ116に対して移動することができ、それによって地震事象から配管システムへの損傷を軽減または防止する。作動状態時に、第1のパイプ114および第2のパイプ116内の流体は外へこぼれることがあるが、漏れは一時的なものに過ぎず、作動停止状態時にシールが確立されたときに止まる。可動シール面110と界面を形成するように設計されている固定シール面112の面積は、地震事象時に第1のパイプ114および/または第2のパイプ116の潜在的シフトに適合するように、可動シール面110の面積より大きい面積(例えば、2〜10倍の面積)とすることができる。
【0019】
図3は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの別のより詳細な図である。図3を参照すると、可動シール面110は、ピストン108から固定シール面112へ垂直に延びることができる。可動シール面110は、第1のパイプ114と第2のパイプ116との間の環状空間全体に広がることもできる。
【0020】
図4は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの正面図である。図4を参照すると、可動シール面110は、作動停止状態時にシール界面を形成するように固定シール面112に対して着座される。
【0021】
図5は、例示的な一実施形態による地震影響軽減配管システムの概略図である。図5を参照すると、地震スリップジョイント100は、第1のパイプ114の垂直部分または水平部分を第2のパイプ116に連結するために使用することができる。第1のパイプ114および第2のパイプ116は90度の配置で示されているが、例示的な諸実施形態はこの配置に限定されないことが理解されるべきである。例えば、第1のパイプ114および第2のパイプ116は、線形配置、鋭角配置、または鈍角配置を形成しながら、地震スリップジョイント100によって連結されてもよい。第1のパイプ114は第1の直径を有し、第2のパイプ116は第2の直径を有し、第2の直径は第1の直径より大きい。その結果、第2のパイプ116は第1のパイプ114の末端部を取り囲む。第1のパイプ114は第2のパイプ116の中に同軸に配置され、第1のパイプ114の外表面および第2のパイプ116の内表面は、第1のパイプ114の外表面と第2のパイプ116の内表面との間に環状空間を画定することができる。地震スリップジョイント100は、第1のパイプ114の末端部と第2のパイプ116とを連結する。
【0022】
図1および図2に関連して論じたように、地震スリップジョイント100は、固定シール面112、可動シール面110、およびソレノイド装置102を含む。固定シール面112は第1のパイプ114上に配置される。可動シール面110はソレノイド装置102に連結される。可動シール面110は、作動停止状態時に固定シール面112に係合し、それによって第1のパイプ114の末端部を固定するように構成される。ソレノイド装置102は、地震活動信号に応答して作動停止状態と作動状態を切り換え、それによって第1のパイプ114の末端部を解放するように構成される。可動シール面110および固定シール面112の界面形成部分は、図1および図2には平面として示されているが、例示的な諸実施形態は平面に限定されるものではないことが理解されるべきである。可動シール面110および固定シール面112の界面形成部分は、適切なシール界面の形成を容易にする任意の形をとることができる。
【0023】
図6は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの固定シール面および可動シール面の概略図である。図6を参照すると、可動シール面110および固定シール面112は共に、シール界面の形成を容易にするために、交互に配置された歯を有する。あるいは、歯の形状は、円形(半球形)、正方形、または台形でもよい。さらに、歯は、可動シール面110および固定シール面112の一方のシール面上にのみ設けられてもよい。例えば、歯は可動シール面110上にのみ設けられてもよく、固定シール面112は平面形態を有する。
【0024】
図7は、例示的な一実施形態による地震スリップジョイントの別の固定シール面および可動シール面の概略図である。図7を参照すると、可動シール面110と固定シール面112の両方の界面形成部分は波状の形を有し、一方のシール面の突条は他方のシール面の溝に合致する。あるいは、可動シール面110と固定シール面112の一方にのみ波状の形が設けられてもよい。さらに、可動シール面110と固定シール面112の一方または両方の界面形成部分が、波状ではなく(山および谷を有する)角ばった形でもよい。
【0025】
図8は、例示的な一実施形態による配管システム上で地震事象を軽減する方法の流れ図である。図8を参照すると、配管システムへの地震の影響を軽減する方法は、第1のパイプ114と第2のパイプ116を地震スリップジョイント100で連結するステップを含む。連結するステップは、第1のパイプ114の小さい末端部を第2のパイプ116の大きい末端部の中に挿入すること含む。その結果、第1のパイプ114の小さい末端部および第2のパイプ116の大きい末端部は、第1のパイプ114の小さい末端部と第2のパイプ116の大きい末端部との間に環状空間を画定することができる。地震スリップジョイント100はソレノイド装置102を含む。ソレノイド装置102は、第1のパイプ114を第2のパイプ116に固定するばね構造104を含む。特に、ばね構造104によって与えられる弾性力により、地震スリップジョイント100は初期設定の作動停止状態に戻る。
【0026】
方法は、地震活動センサ118から地震活動信号を検出するステップをさらに含む。地震活動信号は、所定のマグニチュードを超える地震事象に応答して、地震活動センサ118によって生成される。原子力発電所が、地震事象が一定のマグニチュードに達したときに運転を停止する自動地震スクラムシステムを既に有していてもよい。地震活動センサ118の設定値は、原子力発電所の自動地震スクラムシステムの設定値と一致していてもよいが、例示的な諸実施形態はその設定値に限定されるものではない。例えば、震動活動信号は、地震事象によって生成される振動が安全停止地震(Safe Shutdwon Earthquake)(SSE)の50%を超えたときに、地震活動センサ118によって生成されてもよい。別の非限定的な実施形態では、震動活動信号は、地震事象によって生成される振動が安全停止地震(SSE)の60%に達するかまたはこれを超えたときに、地震活動センサ118によって生成されてもよい。当業者なら、安全停止地震(SSE)は、(安全上重要な)いくつかの構造、システム、および構成要素が機能を維持しかつ依然として機能するように設計されるための最大地震ポテンシャルであることを理解するであろう。
【0027】
方法は、地震事象時に地震活動信号に応答してソレノイド装置102を作動させて第2のパイプ116から第1のパイプ114を解放し、それによって第1のパイプ114および第2のパイプ116が互いに対して相対的に移動できるようにするステップも含む。作動させるステップは、ソレノイド装置102に電流を供給してばね構造104の能動圧縮を容易にすることを含む。特に、ソレノイド装置102への電流の供給は、ばね構造104を圧縮し、それによって可動シール面110を固定シール面112から切り離す機械的動き(例えば、ピストン108の引き込み)を引き起こす磁場を生成する。ソレノイド装置102の作動は一時的なものであり、地震事象時に配管システムにかかるひずみを緩和する。
【0028】
方法は、地震事象の停止後にソレノイド装置102の作動を停止させて第1のパイプ114を第2のパイプ116に再び固定するステップをさらに含む。作動を停止させるステップは、ソレノイド装置102への電流の供給を中止してばね構造104の受動減圧を可能にすることを含む。特に、磁場(電流の供給で生成される)は電流がなくなると止まり、それによってばね構造104はばね構造104の弾力性によってばね構造104の初期位置に復帰できるようになり、可動シール面110は、固定シール面112に対して着座されてシール界面を形成することになる。したがって、シール界面を回復するために電力は必要ない。地震事象時に行われた可能性がある第1のパイプ114および/または第2のパイプ116の再配置により、可動シール面110は、(ソレノイド装置102を作動させる前の固定シール面112に対する可動シール面110の最初の着座位置と比較して)固定シール面112の別の部分に対して着座されることになり得る。
【0029】
ソレノイド装置102の作動を停止させることは、地震活動信号に続いて所定または所望の時間後に自動的に行われてもよい。例えば、ソレノイド装置102の作動停止をトリガするために内蔵タイマが使用されてもよい。第1の地震活動信号に関連する最初の時間周期の終了前に第2の地震活動信号が検出された場合に新しい時間周期が設定されるように、コントローラが構成されてもよい。あるいは、ソレノイド装置102の作動を停止させることは、地震事象の停止に続いて手動で行われてもよい。
【0030】
本明細書で論じられる地震スリップジョイント、システム、および関連する方法を利用することにより、地震事象時に配管システムの一体性および機能性を保つことができる(あるいは少なくとも損傷を軽減することができる)。例えば、配管の破損を軽減または防止するのに加えて、配管システムの永久変形も軽減または防止することができる。したがって、地震事象後の影響を受けたプラント(例えば、原子力発電所)のより速いかつより良好な復旧が可能となり得る。
【0031】
いくつかの例示的な実施形態について本明細書で論じてきたが、他の変形形態も可能性があることが理解されるべきである。かかる変形形態は、本開示の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者には明らかであるはずのすべてのそのような修正形態が下記の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【符号の説明】
【0032】
100 地震スリップジョイント
102 ソレノイド装置
104 ばね構造
106 ストッパ部
108 ピストン
110 可動シール面
112 固定シール面
114 第1のパイプ
116 第2のパイプ
118 地震活動センサ
120 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8