特許第6034345号(P6034345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034345
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】セメント質組成物のスランプ維持方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20161121BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20161121BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20161121BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20161121BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B28C7/04
   C04B24/38 Z
   C04B24/26 E
   C04B24/30 D
   C04B28/02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-182180(P2014-182180)
(22)【出願日】2014年9月8日
(62)【分割の表示】特願2008-535691(P2008-535691)の分割
【原出願日】2006年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-223813(P2014-223813A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年9月8日
(31)【優先権主張番号】60/726,540
(32)【優先日】2005年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/729,712
(32)【優先日】2005年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/765,021
(32)【優先日】2006年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150265
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラ・エイ・ジエクナボリアン
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】ダリク・ビー・マグアイア
(72)【発明者】
【氏名】イバナ・ジヨバノビク
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−519406(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/054149(WO,A1)
【文献】 特表2000−502314(JP,A)
【文献】 特開2003−335566(JP,A)
【文献】 特開2010−202512(JP,A)
【文献】 特表2001−509127(JP,A)
【文献】 特開2006−036623(JP,A)
【文献】 特開2004−307590(JP,A)
【文献】 坂田昇,併用系高流動コンクリー トの新しい増粘剤に関する研究,コンクリート工学年次論文集,2001年,Vol.23 No.2,P.997-1002,URL,http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/23/023-01-2167.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和しうるセメント質組成物のスランプ維持を、その初期ワーカビリティーの有意な変化なしに、長い期間にわたって達成する方法であって、
(A)水和しうるセメント質組成物を形成するために水和しうるセメント質結合剤に水を添加する前、添加中、又は添加後に、該水和しうるセメント質結合剤に可変投与量の種々のスランプ制御混合組成物を導入し、そして
(B)該可変投与量の種々のスランプ制御混合組成物の該水和しうるセメント質組成物への投与量を変化させることにより、投与量と関連する初期スランプを75mm(3インチ)以下に向上させ、同時に、向上されたスランプの少なくとも80%を、該セメント質組成物中の成分の分離なしに、少なくとも3時間のあいだ維持させる、
ことから成り、
該可変投与量の種々のスランプ制御混合組成物は、第一及び第二のポリカルボキシレートポリエーテル櫛形ポリマー超可塑剤を含んで成り、該櫛形ポリマーの各々はセメント粒子に固定するためのイオン化性ポリカルボキシレート基を持ったポリアクリレート又はポリメタクリレート基を有しており、かつ、水和しうるセメント質組成物に水を添加して水和したときにセメントを分散させるための非イオン化性ペンダント(ポリ)オキシアルキレン基を更に有しており、ここで、セメントに固定するイオン化性基と分散する非イオン化性基との割合は1:1−20:1であり、該第一及び第二の櫛形ポリマー超可塑剤は9:1−1:9の割合で存在し、該第一の櫛形ポリマー超可塑剤は迅速スランプ向上成分であり、該第二の櫛形ポリマー超可塑剤は第一の櫛形ポリマーよりもイオン化性の低いセメント固定基を有するスランプ維持成分であり、該混合組成物は、更に、グルコン酸ナトリウムから成る緩和剤及びデュータン(Diutan)ガムから成る粘度改変剤を含んでおり、混合組成物中のデュータンガムの濃度は第一及び第二の櫛形ポリマー超可塑剤の重量に基づいて2−3%の範囲であり、緩和剤の量は第一及び第二の櫛形ポリマー超可塑剤の重量に基づいて10−30%である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
該可変投与量の種々のスランプ制御混合組成物が、更に、メラミンスルホネートホルムアルデヒド縮合物を含有している、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤、例えば水和しうるセメント質組成物に対する超可塑剤関し、更に特にコンクリート及びモルタルのより長いスランプ寿命を、安定性を失うことなしに種々の程度で達成する方法に関する。これは2つの混合物系を用いて達成される。第1の混合物系組成物は初期スランプ向上、後期スランプ維持、及び初期スランプの制限を達成するための多成分を有する。第2の混合物は、後期スランプ向上成分を有する。他に、通常の減水剤または超可塑剤を初期に使用し、次いで後期スランプ向上混合物組成物を使用することができる。
【背景技術】
【0002】
セメント分散剤、例えば可塑剤及び超可塑剤をコンクリート及びモルタルに添加して、それをより流動化させ及び/または所望の流動性を得るために必要とされる混合水の量を減じて強度を高めることは普通に行なわれている。しかしながら、分散剤の投与割合を順次高めていくとき、セメント質混合物の初期ワーカビリティーまたは降伏応力(もしくは「スランプ」)の増加が見られることは十分認識されている。更にある種の分散剤を使用すれば、混合物のワーカビリティーの維持はある期間延長される。
【0003】
コンクリートまたはモルタル混合物のワーカビリティーは、術語「スランプ(slump)」で言及される。これは平らな表面上に置かれた逆コーンから型を取ったまたは除去したときにフレッシュコンクリートまたはモルタルが流動する程度で定量的に測定される。
【0004】
普通ある分散剤または超可塑剤の投与量をより長期のスランプ寿命を達成する過度な量まで増大させると、初期ワーカビリティーを、混合物が最早安定でなくなる程度に増大させてしまう。この安定性の消失は、砂及び/または小石骨材成分の、コンクリートまたはモルタル中の湿ったセメントペーストからの深刻な分離を明白に誘発する。更に分散剤のそのような過剰投与は、処理したセメント質混合物の固化時間を不本意に長引かせる。
【0005】
かくして本発明の目的は、コンクリート混合物中の分散剤処方物の投与量を変えること
によって、コンクリートのスランプ寿命を延長させるコンクリート工程を可能にする方法及び組成物を提供することである。この結果、混合物の初期ワーカビリティーは、ある所望のスランプ範囲が達成されると、付随するスランプ維持に対してかなりはるかに小さい程度しか変動せず、かくしてコンクリート成分の分離問題は回避される。
【0006】
本発明の他の目的は、コンクリート混合物の、後期(例えばセメント及び骨材を一緒に混合して水和しうるコンクリートまたはセメント質混合物を形成させた後30分ないし3時間)におけるワーカビリティーまたはスランプ維持を増大させる働きをする分散剤または超可塑剤を種々の量で添加することの可能性を提供することである。
【発明の概略】
【0007】
本発明は、可変投与量の超可塑剤処方物、或いは水和しうるセメント質組成物、例えばコンクリート及びモルタルの初期混合開始後のある期間スランプを維持するのに単独で働く処方物のいずれかを用いて延長されたスランプ寿命を提供するための方法及び組成物に関する。本発明の可変投与量の超可塑剤は、即座のスランプ向上、または初期ワーカビリティー、初期ワーカビリティーの程度に対する上限、並びに延長されたスランプ寿命を提供し、一方で混合物成分の分離及び長引く固化時間の問題を回避する。セメント質組成物の初期混合中に添加されるスランプ維持添加剤は、約30分で始まる予め確立したワーカビリティー値を維持し、その添加後約3時間までの間それを延長せしめる。
【0008】
本発明は、コンクリートまたはモルタル組成物における過度な固化遅延を招いたり、強度を低下させたりすることなしにある期間の間ワーカビリティーまたはスランプ維持を向上させる。
【0009】
本発明の第1の具体例において、可変投与量の、種々のスランプ組成物は、本組成物の投与量を単に変えるだけで、コンクリートまたは石材業者がコンクリートまたは石の初期ワーカビリティーを有意に変えずに、即ちコンクリートまたは石成分の分離問題を回避して、コンクリートまたは石のスランプ寿命を延長せしめうる選択した成分から製造できる。
【0010】
可変投与量の、種々のスランプ組成物は、3種の機能性物質、
(a)初期スランプ向上剤、
(b)初期スランプ向上剤と共用してセメント質混合物に添加したとき、その応答を緩和または制御する試剤、
(c)長期間スランプ維持剤、
を含む。
即ち初期スランプ向上剤及びスランプ緩和剤の組合せは、投与量を増加させたときにコンクリートがあるワーカビリティー値を達成するが、処方物投与量の増加でスランプの向上が見られないように選択される。更に処方物の投与量を増すにつれて、予測できるようにスランプ維持が向上する。
【0011】
本発明の第2の具体例において、初期スランプまたはワーカビリティーに殆どまたは全然影響しない試剤は、種々の量でセメント質混合物に添加できて、固化時間に悪影響を及ぼさずにまたは分離を引き起こさないで、該試剤の添加量に依存して、混合物のワーカビリティーまたはスランプ維持をある期間保持し、「増幅(boost)」し、または向上させる。
【発明の詳細な開示】
【0012】
本発明の、水和しうるセメント質組成物の長期にわたる比較的予測できるスランプ維持を達成するための典型的な方法は、次の混合物系を含んでなる:
(A)セメント質結合剤への水の添加前、中、または後に、可変投与量の、種々のスランプの超可塑剤(VDVSS)混合物組成物を該セメント質結合剤へ導入して、水和しうるセメント質混合物を生成させる。該VDVSS組成物は、該水和しうるセメント質混合物の、ある投与割合Sid1における初期スランプを達成し、ある時間T80,d1にわたって初
期スランプの少なくとも80%を維持する働きをする(図1を参照)。VDVSS組成物の投与割合をd2からdnまで増加させたとき、d1からdnまでの投与量と関連するSiは約3インチ(75mm)変化するにすぎない。しかしながらT80値は混合物成分の分離なしに3時間まで延長でき、固化時間はV DVSS混合物のないセメント質混合物に比べてただx分延長されたにすぎない。
(B)暑い大気条件、長い輸送時間、ゆとりのないスランプ指定のために、改良されたスランプ寿命が所望であるまたは必要である場合に、セメント質混合物のスランプ寿命を改良するまたは「増幅する」「ブースター(booster)」混合物パッケージ、例えば「レディー‐ミックス(ready−mix)」コンクリート。典型的にはこの混合物は、混合物の設計明細、スランプ寿命の必要条件、及び大気及びコンクリートの温度に依存して、約56.80−約170.4g(約2−約6オンス)/セメント重量の範囲で投与される。
【0013】
図1は本発明の可変投与量の、種々のスランプの超可塑剤(VDVSS)活性を例示する。異なる混合物範囲を有する4つの異なる試料のスランプ挙動が分単位の時間関数として示されている。
【0014】
典型的なVDVSS混合物組成物は少なくとも3種の異なる成分を含んでなる。即ち、(i)第1の成分SEは、セメントに固定するイオン化ペンダント基及び分散する非イオン性ペンダント基を有するポリカルボキシレート櫛形ポリマー超可塑剤を含んでなり、但し該セメントに固定するイオン化基の割合が該分散化非イオン性基に関して1:1−20:1である、セメント質混合物の初期スランプを迅速に向上させる働きをする、
(ii)第2成分SCは、該第1成分のスランプ向上効果を緩和する働きをして、メラミンスルホネートホルムアルデヒド縮合剤、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合剤、リグノスルホネート、スルホン酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、硫酸塩、及びグルコン酸塩、糖、糖酸塩、及び炭水化物である、並びに
(iii)第3成分SRは、該水和しうるセメント質混合物のスランプを維持する働きをして、湿ったセメント質混合物に混合された後にSEに比べてより低くイオン化される初期非イオン化セメント固定基及び分散化非イオン性ペンダント基を有するポリカルボキシレート櫛形ポリマー超可塑剤を含んでなる、但し該初期非イオン化セメント固定基の割合が該分散化非イオン性基に関して1:1−20:1である。
【0015】
3種の成分、SE、SC、及びSRは次の範囲で存在することができる。SR/SE比は9/1−1/9であり、SC成分はSE+SR合計の5−50%の範囲であってよい。本発明の混合物のある好適な具体例は、SR/SE比が5/1−1/5であり、SC成分はSE+SR合計の10−30%の範囲であってよいことが特徴である。好適な具体例はSR/SE比が2/1及びSC成分がSE+SR合計の20%である。
【0016】
SEとして機能しうるポリカルボキシレート櫛形ポリマーには、花王からのマイティー(Mighty)21ES及び日本触媒からのHW−1Bが含まれる。SRとして使用するのに適当な所望のスランプ維持性を有するポリカルボキシレート櫛形ポリマーは、マイティー21RS(花王)及びHS(日本触媒)を含む。グルコン酸ナトリウムは好適なスランプ制御成分である。
【0017】
図2は「ブースター」混合物パッケージを使用した場合の、本発明の第2の具体例の活性を例示する。
【0018】
以下の限定を意味しない実施例は本発明を更に例示する。
【実施例1】
【0019】
下記の組成を有するVDVSS組成物を調製し、下記の組成を有するコンクリートミックスに添加した。
ミックスの構成:
‐セメント:普通のポルトランドセメント422.7 kg/m3(708 lbs/yd3
‐水:176.1 kg/m3(295 lbs/yd3
‐砂利:1074.6 kg/m3(1800 lbs/yd3
‐砂:847.7 kg/m3(1420 lbs/yd3
混合物:VDVSSを215.84、244.24及び284.0g(7.6、8.6、及び10.0oz)/cwtで投与。
【0020】
図3は、本発明の好適な具体例の、但し前述した3種の成分SE/SR/SCが1:2:0.6の重量比存在する可変投与量の、種々のスランプの維持性能を概念的に例示する。本具体例において、「SE」は日本触媒から「HW−1B PC」の商品名で市販されているポリカルボキシレート「櫛形」ポリマー超可塑剤である。これはポリアクリレートまたはポリメタクリレート主鎖及びペンダントのポリエーテル基(「櫛」)と多分ペンダントのスルホン酸塩基を有する。「SR」も、「HS1−PC」の名で販売される日本触媒の商品である。これは、主鎖中のカルボキシレート固定基とペンダント基の比がより低い以外、「HW−1B PC」と一般的に同一である。「SC」はグルコン酸ナトリウムである。
【0021】
図3に示すように、初期スランプは約2.54cm(約1インチ)範囲内に見られた。しかしながら、スランプが17.8cm(7インチ)以下に低下すまでの時間に関して、スランプ維持は45分間から丁度2時間以上までで変化した。
【実施例2】
【0022】
下記の組成を有する「ブースター」混合物パッケージを調製し、下記の成分を有するコンクリートミックスに2つの投与量で添加した。このコンクリートミックスは、「ADVATM170」ASTM C 494型F超可塑剤(ADVATMブランドの超可塑剤は、W.R.グレース社(Grace and Co.−Conn, 米国マサチューセッツ州、ケンブリッジ市)から市販されている)の30%水溶液198.8g(7オンス)も予め添加して有した。2つの投与量の成果を、ADVATMブランド超可塑剤だけが存在する同一のコンクリートミックスの構成である「対照」の成果と比較する。
ミックスの構成:
‐普通のポルトランドセメント:422.7 kg/m3(708 lbs/yd3
‐水:180.9 kg/m3(303 lbs/yd3
‐砂利:1074.6 kg/m3(1800 lbs/yd3
‐砂:834.6 kg/m3(1398 lbs/yd3
ブースター混合物:
「マイティー21RS」超可塑剤の30%水溶液及び消泡剤。「マイティー21RS」は、花王からの市販品であり、SEに比べて低くしかまたは全然初期イオン化されてないが、湿ったセメント質混合物中へ混合された後長期にわたってイオン化される、セメント固定基と分散化非イオン性ペンダント基を有する、但し該初期の非イオン化セメント固定基の該分散化非イオン性基に対する割合が1:1−20:1である、ポリカルボキシレート櫛形超可塑剤を含んでなる。
【0023】
図4は、3種の得られるコンクリートの性能を例示する。ブースター混合物の投与量の変化は、固定時間に影響しないで、スランプ維持を延長することができることがわかる。
【0024】
本明細書に使用するような「ポリカルボキシレート櫛形超可塑剤」とは、ポリカルボキシレート主鎖及びペンダントのアルキレンオキシド基、たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシドなど、及びこれらの混合物を有するセメント分散化ポリマー及びコポリマーを意味する。これらの一般の種類のポリマーは、例えば本明細書に参考文献として引用される米国特許第6139623号に記述されているように、不飽和(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メト)アクリル酸またはエステル種のモノマーを(メト)アクリル酸種のモノマーと共重合させることによって製造される。
【0025】
本明細書に使用するような「セメント質組成物」とは、ペースト(またはスラリー)、モルタル、及びグラウト、例えば油性セメント化グラウト、ショトクリート(shotcrete)、及び水硬セメント結合剤を含んでなるコンクリート組成物を含む。術語、「ペースト」、「モルタル」、及び「コンクリート」は技術的用語である。ペーストは水和しうる(または水硬性の)セメント結合剤(他を排除するものではないが、普通ポルトランドセメント、レンガセメント、モルタルセメント、及び/または石膏からなる混合物であり、石灰石、水和された石灰、フライアッシュ、粒状ブラスト炉スラグ、及びシリカヒュームまたはそのようなセメントに通常含まれる他の物質)及び水からなる混合物であり、「モルタル」は細かい骨材(例えば砂)を更に含んでなるペーストであり、そして「コンクリート」は粗い骨材(例えば砕石または小石)を更に含んでなるモルタルである。本発明に記述されるセメント組成物は、特別なセメント質組成物を製造するのに必要とされるように、必要量の材料、例えば水硬性セメント、水、及び細かい及び/または粗い骨材を混合することによって製造される。
【0026】
本発明による添加物処方物は、上述したものの他に、更に随意の、例えば消泡剤、抗菌剤などを含むことができる。
【0027】
本発明の更なる典型的な具体例において、粘度改変剤(「VCM」)は前述したスランプ制御(SC)成分の代わりにまたはその一部として添加剤処方物に混入される。即ちこの具体例は、SE成分及び前述したSR成分、及びSC成分としてまたはSC成分の一部としてVMA成分を含んでなるであろう。SC成分の代替物として単独で使用する場合、VMAの使用量はSE及びSR成分の全使用量の0.1−25%である。粘度改変剤(VMA)は、セメント質混合物に添加したとき、混合物全体に不均一組成をもたらすかもしれない混合物成分の分離傾向を更に最小にするものである。典型的な粘度改変剤は、多糖類に由来するバイオポリマーを含む。好適な例は、S−657(米国特許第6,110,271号を参照)として同定される、更にデュータン(Diutan)ガムとして同定される微生物多糖類である。S−657及びデュータンガムはCPケルコ(Kelco)社から入手できる。
【0028】
粘度剤(viscosifying agent)の濃度範囲はSE+SRの0.1−25重量%であってよい。好適な範囲は2−3%である。粘度改変剤の本発明の混合物への混入とともに、(今や粘度改変剤を含む)混合物のセメント質混合物への添加は、投与量の変化で種々のスランプ応答を可能にするばかりでなく、混合物の初期混合、継続混合、輸送、施工、及び硬化工程中の混合物成分に対して異なる程度の耐分離性及び安定性も可能にする。以下はVMAをSC成分として使用する本発明の混合物の例である。これを「EXP593」として示す。
【実施例3】
【0029】
本発明の典型的な混合物を、粘度改変剤、式EXP593を用いて調製した。図5はス
ランプまたはワーカビリティー維持の向上を投与割合の関数として例示する。このコンクリート混合物は、ポルトランドセメント358.2 kg/m3(600 lbs/yd3及びフライアッシュ89.6 kg/m3(150 lbs/yd3を含む。3つの同定されるコンクリート混合物を、3つの異なる投与量で本発明の混合物により処理した。
【0030】
図6において、コンクリートスランプ‐流動性を種々の含水コンクリートミックスの関数として示す。スランプ流動性維持は、混合物への水24.9 L/m3(5ガロン/yd3の変化に拘らず全く不変であることが示される。バッチからバッチへ水量を変えることはコンクリートの繰り返し製造バッチにとって異常なことではない。本発明の混合物を使用しないと、スランプ流動性の変化は、コンクリートの品質を保証するのに許容される図6に示される5.08cm(2インチ)範囲の変化の少なくとも2倍になるであろう。
【0031】
図7において、順次視覚安定性指数(VSI)を与える視覚検査で示されるようなコンクリート混合物の安定性は、水の添加にも拘らず維持される。2以下のVSI値は、コンクリート混合物が許容できる耐分離性を有し、または混合物の性質の僅かな調整しか必要としないことを示す。このVSI試験はASTM 1611に記述されている。
【0032】
前述した典型的な具体例は、例示の目的だけで示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の典型的な可変投与量の、種々のスランプ超可塑剤(VDVSS)の、コンクリート混合物におけるスランプ活性の経時的変化を示すグラフ。
図2】本発明の他の典型的な具体例の、例えば「ブースター」混合物パッケージを使用したコンクリート混合物におけるその活性を示すグラフ。
図3】本発明の好適なVDVSSのコンクリート混合物、但し3種の成分、即ち第1が迅速スランプ向上成分、第2が初期スランプ向上緩和剤、そして第3がスランプ維持成分の使用されている混合物における効果を示すグラフ。
図4】ブースター混合物の投与量を変えることにより、固化時間に影響しないでスランプ維持が延長される3種のコンクリート混合物試料を示すグラフ。
図5】本発明の典型的なVDVSSを3種の異なる投与量で用いたスランプの向上またはワーカビリティー維持を投与割合の関数として示すグラフ。
図6】付加水を含むコンクリート混合物のスランプ性能を示すグラフ。
図7】水を付加したコンクリートの例示的グラフ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7