(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スタートアップ触媒(S/C、スタートアップコンバータなどとも称される)とアンダーフロア触媒(UF/C、アンダーフロアコンバータ、床下触媒などとも称される)を組み合わせた二触媒からなる排ガス浄化システムが多く採用されている。そのような二触媒システムにおいては、S/Cは内燃機関の直下に取り付けられるため高温の排ガスに晒されるが、UF/CはS/Cの下流に設けられるため、流入する排ガスの濃度は薄く、その温度も比較的低くなり、機能発現に必要となる温度が高かった従来のOSC材では十分な酸素吸放出機能を発揮することが難しかった。また、UF/CにはS/Cが劣化や故障などにより十分に機能しなくなった場合には、それ単独で十分な排ガス浄化能を発揮することも求められる。特にUF/Cにおいては、酸素吸放出機能とNOx浄化性能は背反する性能であり、従来材料では両立が困難であった。そこで、本発明は酸素吸放出機能とNOx浄化性能を両立した高性能な排ガス浄化触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上述したような問題を検討した結果、新たに開発した、所定の追加元素を含むパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物を、触媒コーティングの排ガス上流側の領域に含有させることにより、酸素吸放出機能とNOx浄化性能を両立した高性能な排ガス浄化触媒を提供可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)基材と、該基材上に形成された触媒コーティング層を有する排ガス浄化触媒であって、
前記触媒コーティング層は、前記触媒の排ガス上流側の端部から前記基材の全長の40〜60%までの範囲を占める排ガス上流側の領域と、前記触媒コーティング層の残りの範囲である下流側の領域とで異なる組成を有し、
前記上流側の領域は、担体と、前記担体に担持された少なくともPtまたはPdを含む貴金属触媒と、パイロクロア型の規則配列構造を有するセリア−ジルコニア系複合酸化物とを含有し、
前記下流側の領域は、担体と、前記担体に担持された少なくともRhを含む貴金属触媒とを含有し、
前記セリア−ジルコニア系複合酸化物は、プラセオジム、ランタンおよびイットリウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加元素を、全陽イオン合計量に対して0.5〜5.0モル%含有し、かつ(セリウム+前記追加元素):(ジルコニウム)のモル比が43:57〜48:52の範囲内である、前記排ガス浄化触媒。
(2)前記セリア−ジルコニア系複合酸化物が含有する追加元素がプラセオジムである、(1)に記載の排ガス浄化触媒。
(3)前記上流側の領域が、セリア−ジルコニア系複合酸化物を基材容量に対して1〜20g/Lの量で含有する、(1)または(2)に記載の排ガス浄化触媒。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化触媒によれば、所定の追加元素を含むパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物を触媒コーティングの排ガス上流側の領域に含有させたことにより、触媒内における雰囲気変動を緩和して下流側の領域に含有されるRhの劣化を抑制することにより、高い酸素吸放出機能とNOx浄化率を両立することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の排ガス浄化触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コーティング層を有し、前記触媒コーティング層が、排ガス上流側の領域と下流側の領域とで異なる組成を有し、該上流側の領域に、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1種の追加元素を有し、かつパイロクロア型の規則配列構造を有するセリア−ジルコニア系複合酸化物を含有することを特徴とする。
【0012】
(触媒コーティング層の上流側の領域に含まれるセリア−ジルコニア系複合酸化物)
本発明の排ガス浄化触媒の触媒コーティング層の上流側の領域に含まれるセリア−ジルコニア系複合酸化物は、パイロクロア型の規則配列構造を有し、プラセオジム、ランタンおよびイットリウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加元素を、全陽イオン合計量に対して0.5〜5.0モル%、より好ましくは1.0〜3.0モル%含有し、かつ(セリウム+前記追加元素):(ジルコニウム)のモル比が43:57〜48:52の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
該セリア−ジルコニア系複合酸化物は、本発明者らが開発した新規なOSC材であり、熱による劣化が抑制されているとともに、約400℃という低温から十分な酸素吸放出能を発揮できるという特徴を有する。また、酸素吸放出容量が大きい一方で酸素吸放出速度は比較的遅い、比表面積および嵩密度がいずれも低いという特徴も併せ持つ。該セリア−ジルコニア系複合酸化物の比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いて算出したBET比表面積が0.1〜2m
2/gの範囲、特に0.2〜1m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0014】
ここで、一般に、セリア−ジルコニア系複合酸化物において「パイロクロア型の規則配列構造を有する」とは、セリウムイオンとジルコニウムイオンとによるパイロクロア型の規則配列構造を有する結晶相(パイロクロア相)が構成されていることを意味する。パイロクロア相の配列構造は、CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.5°、28°、37°、44.5°及び51°の位置にそれぞれピークを有することにより特定することができる。ここで、「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。また、回折線強度を求める際には、各回折線強度の値から、バックグラウンド値として2θ=10〜12゜の平均回折線強度を差し引いて計算する。
【0015】
パイロクロア型の規則配列構造を有するセリア−ジルコニア系複合酸化物において、X線回折パターンのピーク強度比により求められる全結晶相に対するパイロクロア型に規則配列した結晶相の含有比率は50%以上、特に80%以上であることが好ましい。パイロクロア型の規則配列構造を有するセリア−ジルコニア系複合酸化物の調製方法は当業者に公知である。
【0016】
セリア−ジルコニア系複合酸化物のパイロクロア相(Ce
2Zr
2O
7)は酸素欠陥サイトを有し、そのサイトに酸素原子が入り込むとパイロクロア相はκ相(Ce
2Zr
2O
8)に相変化する。一方、κ相は酸素原子を放出することによりパイロクロア相に相変化することができる。セリア−ジルコニア複合酸化物の酸素貯蔵能は、パイロクロア相とκ相との間で相互に相変化して酸素を吸放出することによるものである。
【0017】
セリア−ジルコニア系複合酸化物の結晶相のCuKαを用いたX線回折(XRD)測定において、2θ=14.5°の回折線は規則相(κ相)の(111)面に帰属する回折線であり、2θ=29°の回折線は規則相の(222)面に帰属する回折線とパイロクロア相を有しないセリア−ジルコニア固溶体の(111)面に帰属する回折線とが重なったものであるため、両者の回折線の強度比であるI(14/29)値を規則相の存在率を示す指標とすることができる。また、2θ=28.5゜の回折線はCeO
2単体の(111)面に帰属する回折線であるため、2θ=28.5゜の回折線と2θ=29゜の回折線の強度比であるI(28/29)値を、複合酸化物からCeO
2が分相している程度を示す指標とすることができる。なお、κ相のPDFカード(PDF2:01−070−4048)およびパイロクロア相のPDFカード(PDF2:01−075−2694)に基づき、完全なκ相のI(14/29)値は0.04、完全なパイロクロア相のI(14/29)値は0.05と計算することができる。
【0018】
本発明で用いるパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物が、プラセオジム、ランタンおよびイットリウムからなる群から選択される少なくとも1種の追加元素を含有することにより上述したような特性を有するようになる理由は、以下のように推察される。プラセオジムは、式:Pr
6O
11→3Pr
2O
3+O
2で表される還元反応のΔG(ギブズの自由エネルギー)が負であるため、ΔGが正である、式:2CeO
2→Ce
2O
3+0.5O
2で表されるCeO
2の還元反応を起こりやすくするものと考えられる。また、ランタンおよびイットリウムは+3価が安定であるため、電荷補償の原理により結晶内の酸素欠陥を安定させるものと考えられる。
【0019】
本発明で用いるパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物の耐久性は、大気中、1100℃の温度条件で5時間加熱後、CuΚαを用いたX線回折測定により得られるI(14/29)値が0.02以上であり、かつI(28/29)値が0.08以下であることにより特徴づけることができる。
【0020】
(触媒コーティング層の上流側の領域)
本発明の排ガス浄化触媒において、触媒コーティング層の上流側の領域は貴金属触媒としてPtまたはPdを含む。貴金属触媒は、Ptのみ、Pdのみ、またはPtとPdの混合物のみからなっていてもよい。PtおよびPdは主としてCOおよびHCの酸化浄化に寄与する。貴金属触媒は担体に担持された状態で含まれている。担体は、特に限定されず、一般に触媒担体として用いられる任意の金属酸化物、例えばアルミナ(Al
2O
3)、セリア(CeO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)またはそれらの組み合わせなどを用いることができる。触媒コーティング層の上流側の領域のPtまたはPdを含む貴金属触媒の担体としてはアルミナが好ましい。アルミナ担体はランタナ添加アルミナ担体であってもよい。
【0021】
触媒コーティング層の上流側の領域には、上述のとおりプラセオジム(Pr)、ランタン(La)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1種の追加元素を有し、かつパイロクロア型の規則配列構造を有するセリア−ジルコニア系複合酸化物が含まれる。該セリア−ジルコニア系複合酸化物は、その特性を十分発揮させるためには、基材容量に対して1g/L以上、特に2g/L以上、とりわけ3g/L以上の量で触媒コーティング層の上流側の領域に含まれることが好ましい。触媒に流入する排ガスに最初に接触する上流側の領域に該セリア−ジルコニア系複合酸化物が含まれていることにより、該セリア−ジルコニア系複合酸化物の特性が表れやすくなり、下流側の領域に含まれるRhへのダメージ低減効果も大きくなる。なお、該セリア−ジルコニア系複合酸化物は、その使用量と効果のバランスの観点から、基材容量に対して20g/L以下、特に15g/L以下、とりわけ10g/L以下の量で触媒コーティング層の上流側の領域に含まれることが好ましい。典型的には、該セリア−ジルコニア系複合酸化物は基材容量に対して1〜20g/Lの量で触媒コーティング層の上流側の領域に含まれることが好ましい。
【0022】
触媒コーティング層の上流側の領域には、さらに、OSC材として、セリア−ジルコニア複合酸化物、特にセリアに対するジルコニア含有量が多いセリア−ジルコニア複合酸化物(ZC)が含まれていることが好ましい。ここで「セリアに対するジルコニア含有量が多い」とは、複合酸化物に含まれるジルコニアの重量比がセリアの重量比よりも高いことを意味する。ZC材におけるセリア:ジルコニアの存在比は、重量比で1:1.1〜1:5、特に1:1.5〜1:3の範囲であることが好ましい。ZC材は、CZ材と比較して酸素吸放出効率が高く、貴金属活性に与える影響も小さいという特性を有する。
【0023】
(触媒コーティング層の下流側の領域)
本発明の排ガス浄化触媒において、触媒コーティング層の下流側の領域は貴金属触媒としてRhを含み、さらにPtまたはPdを含んでいてもよい。貴金属触媒は、Rhのみ、RhとPtの混合物のみ、RhとPdの混合物のみ、あるいはRhとPtとPdの混合物のみからなっていてもよい。Rhは主としてNOxの還元浄化に寄与する。上流側の領域と同様に、貴金属触媒は担体に担持された状態で含まれている。担体は、例えばアルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)またはそれらの組み合わせなどを用いることができる。触媒コーティング層の下流側の領域のRhを含む貴金属触媒の担体としては、比熱が小さく暖まりやすいジルコニアが好ましい。また、担体とは別に耐熱性の高いアルミナを触媒コーティング層に混合することで、触媒コーティング層の耐久性を向上させることができる。
【0024】
(基材および触媒コーティング)
本発明の排ガス浄化触媒に用いる基材は、特に限定されず、一般的に用いられている多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができ、その材質としては、コージェライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素などの耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼などの金属箔からなるメタル材料が挙げられる。基材への触媒コーティング層の形成は、公知の手法により、例えば、各材料を蒸留水およびバインダーに懸濁して調製したスラリーを基材に流し込み、ブロアーで不要分を吹き払うなどして行うことができる。
【0025】
図1は、本発明の排ガス浄化触媒の触媒コーティング層の構造の一態様を示す模式的な断面図である。これまで述べたとおり、本発明の排ガス浄化触媒の触媒コーティング層は、排ガス上流側の領域と下流側の領域とに分かれており、それぞれ異なる組成を有する。上流側の領域には、上述のとおり所定の追加元素を含むパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物が含有されている。大容量の酸素貯蔵容量を有する該セリア−ジルコニア系複合酸化物は、触媒内のリッチ−リーン間の雰囲気変動を緩和し、下流側の領域に含有されるRhの劣化を抑制する。触媒コーティング層の上流側の領域は、触媒の排ガス上流側の端部から前記基材の全長の40〜60%までの範囲、特に45〜55%までの範囲(
図1中のa)を占めるものであり、下流側の領域は触媒コーティング層のその他の残りの範囲(
図1中のb)であることが好ましい。
【0026】
(本発明の排ガス浄化触媒の特性)
本発明の排ガス浄化触媒は、スタートアップ触媒(S/C)とアンダーフロア触媒(UF/C)を組み合わせた二触媒システムにおいて、UF/Cとして用いるのに特に適している。本発明の排ガス浄化触媒は、所定の追加元素を含むパイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物を触媒コーティング層の上流側の領域に含むことにより、低温でも十分な酸素貯蔵能を発揮し、触媒内のリッチ−リーン間の雰囲気変動を緩和し、下流側の領域に含有されるRhの劣化を抑制する。その結果、UF/Cとして設置した際でも、高い排ガス浄化性能を発揮することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
1.Pr添加パイロクロアZCの調製
まず、CeO
2換算で28質量%の硝酸セリウム水溶液442gと、ZrO
2換算で18質量%のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液590gと、Pr
6O
11換算で1.2gとなる量の硝酸プラセオジムを含む水溶液100gと、含有されるセリウムの1.1倍モル量の過酸化水素を含む水溶液197gとを、中和当量に対して1.2倍当量のアンモニアを含有する水溶液1217gに添加し、共沈物を生成し、得られた共沈物を遠心分離し、イオン交換水で洗浄した。得られた共沈物を110℃で10時間以上乾燥した後、400℃で5時間大気中にて焼成してセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの固溶体(CeO
2−ZrO
2−Pr
6O
11固溶体)を得た。得られた固溶体を粉砕機(商品名:ワンダーブレンダー、アズワン社製)を用いて篩で粒径が75μm以下となるように粉砕して、セリア−ジルコニア−プラセオジミア固溶体粉末を得た。
【0029】
次に、得られた固溶体粉末20gを、ポリエチレン製のバッグ(容量0.05L)に詰め、内部を脱気した後、前記バッグの口を加熱してシールした。続いて、静水圧プレス装置(商品名:CK4−22−60、日機装社製)を用いて、前記バッグに対して静水圧プレス(CIP)を2000kgf/cm
2の圧力(成型圧力)で1分間行って成型し、セリア−ジルコニア−プラセオジミア固溶体粉末の成型体を得た。成型体のサイズは、縦4cm、横4cm、平均厚み7mm、重量約20gとした。
【0030】
次いで、得られた成型体(2枚)を、活性炭70gを充填した坩堝(内容積:直径8cm、高さ7cm)内に配置し、蓋をした後、高速昇温電気炉に入れ、昇温時間1時間で1000℃まで加熱した後、昇温時間4時間で1700℃(還元処理温度)まで加熱して5時間保持し、その後冷却時間4時間で1000℃まで冷却した後、自然放冷で室温まで冷却して還元処理品を得た。得られた還元処理品を大気中、500℃の温度条件で5時間加熱して酸化し、複合酸化物におけるセリウムとジルコニウムとプラセオジムとの含有比率が、セリウム:ジルコニウム:プラセオジムのモル比で45:54:1である、プラセオジム添加パイロクロア型セリア−ジルコニア系複合酸化物(Pr添加パイロクロアZC)を得た。得られたPr添加パイロクロアZCは篩で75μm以下に粉砕した。
【0031】
得られたPr添加パイロクロアZCを、大気中1100℃で5時間加熱した後(高温耐久試験)、パイロクロア構造が維持されているかどうかを確認するため、処理後の結晶相をX線回折法により測定した。X線回折装置として理学電機社製の商品名(RINT−2100)を用い、CuKα線、40KV、30mA、2θ=2゜/分の条件でX線回折パターンを測定し、I(14/29)値及びI(28/29)値を求めた。
【0032】
上記と同様にして、セリウム:ジルコニウム:プラセオジムのモル比が異なるA〜EのPr添加パイロクロアZCを調製し、高温耐久試験の後、X線回折パターンを測定してI(14/29)値及びI(28/29)値を求めた。表1に結果をまとめた。
【0033】
【表1】
【0034】
2.触媒の調製
(1)比較例1
(a)Fr−Pt層(Pt(0.2)/Al
2O
3(25)+ZC(30))
1質量%のLa
2O
3を含有するAl
2O
3担体と硝酸白金とを用い、含浸法によりAl
2O
3に担持されたPt材料(材料1)を調製した。次に、材料1、セリウム:ジルコニウムのモル比が46:54であるセリア−ジルコニア複合酸化物(ZC)およびAl
2O
3系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリー1を調製した。
【0035】
コージェライト製のハニカム構造基材にスラリー1を流し込み、ブロアーで吸引して、基材壁面をコーティングした。コーティングは、基材の排ガス流れ方向の上流側(Fr側)から行い、上流側の端から基材の全長の50%までの範囲に形成されるようにした(
図1参照、a=50%)。また、コーティングには、基材容量に対して材料1が25g/L(うちPtが0.2g/L)およびZCが30g/L含まれるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行った。
【0036】
(b)Rr−Rh層(Rh(0.12)/ZrO
2(40)+Al
2O
3(20))
ZrO
2担体と硝酸ロジウムとを用い、含浸法によりZrO
2に担持されたRh/ZrO
2材料(材料2)を調製した。次に、材料2、Al
2O
3およびAl
2O
3系バインダーを蒸留水に撹拌しながら加えて懸濁し、スラリー2を調製した。
【0037】
上記(a)によりコーティングを施したハニカム構造基材にスラリー2を流し込み、ブロアーで吸引して、基材壁面をコーティングした。コーティングは、基材の排ガス流れ方向の下流側(Rr側)から行い、下流側の端から基材の全長の50%までの範囲に形成されるようにした(
図1参照、b=50%)。また、コーティングには、基材容量に対して材料2が40g/L(うちRhが0.12g/L)およびAl
2O
3が20g/L含まれるようにした。コーティング後、120℃の乾燥機で2時間水分を除去した後、500℃の電気炉で2時間の焼成を行った。
【0038】
(2)実施例1〜4
スラリー1の調製時に、さらにセリウム:ジルコニウム:プラセオジムのモル比が45:54:1であるPr添加パイロクロアZC(表1のA)を添加した以外は、比較例1と同様にして触媒を調製した。コーティングにおけるPr添加パイロクロアZCの含有量は、基材容量に対して、実施例1で5g/L、実施例2で10g/L、実施例3で15g/Lおよび実施例4で20g/Lとなるようにした。
【0039】
表2に、実施例1〜4および比較例1の触媒におけるFr−Pt層およびRr−Rh層のそれぞれの構成をまとめた。
【0040】
【表2】
【0041】
3.評価
(1)耐久試験
触媒をV型8気筒4.3Lガソリンエンジンの排気系に装着し、触媒床温950℃で、1分間にフィードバック、フューエルカット、リッチ、リーンを含む条件で50時間の耐久試験を施した。
(2)Rh粒子径評価
COパルス吸着法により、耐久試験後のRr−Rh層に含まれるRhの粒子径D90(粒度分布における累積質量が90%となる粒子径)を算出した。
(3)酸素吸放出能評価
耐久試験後の触媒をエンジンに取り付け、入りガス温度を400℃に設定し、入りガス雰囲気のA/Fをリッチ−リーン間で周期的に振幅させ、その際の触媒の排出側に取り付けたO
2センサーの挙動遅れから酸素吸放出量を算出した。
(4)NOx浄化能評価
耐久試験後の触媒をエンジンに取り付け、入りガス温度を400℃に設定し、入りガス雰囲気のA/Fをリッチ−リーン間で周期的に振幅させた際のNOx排出量を測定した。
【0042】
4.結果
図2は、Pr添加パイロクロアZCのFr−Pt層への添加量とRhのD90粒子径の関係を示すグラフである。Pr添加パイロクロアZCの添加量の増加とともに、Rh粒子の粒子径増大が抑制されていることがわかる。
【0043】
図3は、Pr添加パイロクロアZCのFr−Pt層への添加量と触媒の酸素吸放出量の関係を示すグラフである。Pr添加パイロクロアZCの添加量の増加とともに、触媒の酸素吸放出能が向上していることがわかる。
【0044】
図4は、Pr添加パイロクロアZCのFr−Pt層への添加量と触媒からのNOx排出量の関係を示すグラフである。Pr添加パイロクロアZCの添加量が10g/Lまでの範囲で特にNOx排出量が大きく低下しており、これは酸素吸放出能の向上とRh粒子の粒子径増大が抑制された結果であるものと推察された。