(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)中のm価の有機基が、それぞれm価である、脂肪族炭化水素基、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、ジグリセリン残基、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリグリセリン残基、エリスリトール残基、ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、イソシアヌル酸残基又はビスフェノールA残基である請求項1記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0034】
図1(a)及び(b)に、本発明の一実施形態に係る積層体を斜視図及び正面断面図で示す。
【0035】
図1(a)及び(b)に示すように、積層体1は、樹脂基材2と、樹脂基材2の表面2aに積層された第1の層3と、第1の層3の樹脂基材2に接する一方の面3aとは反対側の他方の面3bに積層された第2の層4とを有する。積層体1は、表面層として、第1,第2の層3,4を有する。
【0036】
第1の層3は、樹脂基材2の一方の主面の全領域に積層されている。ただし、第1の層3は、樹脂基材2の表面2aの少なくとも一部の領域に積層されていてもよく、樹脂基材2の表面2aの全領域に必ずしも積層されていなくてもよい。また、第2の層4は、第1の層3の樹脂基材2に接する一方の面3aとは反対側の他方の面3bの少なくとも一部の領域に積層されていてもよく、第1の層3の表面3bの全領域に必ずしも積層されていなくてもよい。例えば、樹脂基材2の表面2aの耐擦傷性及び耐久性が求められる領域のみに、表面層として第1,第2の層3,4が積層されていてもよい。さらに、樹脂基材2の両側の主面に、表面層として第1,第2の層3,4が積層されていてもよい。
【0037】
樹脂基材2は、樹脂により形成されている。樹脂基材2を形成する樹脂は特に限定されない。樹脂基材2を形成する樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABSなどのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロースなどが挙げられる。なかでも、ポリ(メタ)アクリレート樹脂またはポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。ポリ(メタ)アクリレート樹脂またはポリカーボネート樹脂は、成形加工性に優れている。また、ポリ(メタ)アクリレート樹脂またはポリカーボネート樹脂により形成された樹脂基材は、ガラスと比較して軽い。ポリカーボネート樹脂により形成された樹脂基材は耐衝撃性に優れている。また、ポリ(メタ)アクリレート樹脂又はポリカーボネート樹脂は、エステル結合を有することにより、第1の組成物の硬化物が有するエステル結合との親和性が高まり、第1の層3との密着性が向上する。従って、樹脂基材2は、ポリ(メタ)アクリレート樹脂基材またはポリカーボネート樹脂基材であることが好ましく、ポリカーボネート樹脂基材であることがより好ましい。
【0038】
樹脂基材2の形状は特に限定されず、板状またはフィルム状などを選択できる。
【0039】
第1の層3は樹脂基材2と第2の層4との密着性を高める目的で設けられている。このため、密着性を高めることを目的として、第1の層3の厚みは適宜設定できる。第1の層3の厚みの好ましい下限は1μm、好ましい上限は20μmである。耐擦傷性を充分に高める観点からは、第2の層4の厚みの好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は20μmである。
【0040】
積層体1は、例えば下記のようにして得ることができる。
【0041】
図2(a)に示すように、樹脂基材2の表面2aに、第1の組成物11を塗布し、第1の組成物11の層を形成する。
【0042】
その後、
図2(b)に示すように、第1の組成物11を硬化させる。第1の組成物11は、後述の通り、重合開始剤を含んでいてもよい。ここでは、第1の組成物11が活性エネルギー線重合開始剤を含む場合について説明する。第1の組成物11に活性エネルギー線を照射することにより、第1の組成物11が硬化して、第1の組成物層11Aが形成される。具体的には、第1の組成物11に活性エネルギー線が照射されると、活性エネルギー線重合開始剤が分解してラジカルを生じる。このラジカルが、多官能(メタ)アクリレートと反応して重合反応が開始され、多官能(メタ)アクリレートの重合反応が進行する。その結果、第1の組成物11が、硬化して、第1の組成物層11Aが形成される。
【0043】
第1の組成物11を硬化させる際に照射する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線、赤外線、可視光線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線のなかでも、硬化性に優れ、かつ硬化物が劣化し難いため、紫外線または電子線が好ましい。
【0044】
第1の組成物11を紫外線の照射により硬化させるために、種々の紫外線照射装置を用いることができる。光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプなど用いることができる。紫外線の照射エネルギーは、10mJ/cm
2〜10,000mJ/cm
2の範囲にあることが好ましく、100mJ/cm
2〜5,000mJ/cm
2の範囲にあることがより好ましい。紫外線の照射エネルギーは、例えば、アイグラフィックス社製の紫外線照度計(UV METER
UVPF−A1、受光器フィルタPD−365)を用いて測定することができる。紫外線の照射エネルギーが低すぎると、第1の組成物11が硬化しにくく、第1の層3を含む表面層の耐擦傷性が低くなったり、密着性が悪くなる傾向がある。紫外線の照射エネルギーが高すぎると、第1の層3を含む表面層が劣化したり、第1の層3を含む表面層の透明性が低下したりすることがある。また、紫外線の最大照度は特に限定されず第1の層の硬化状態に応じて適宜設定できるが、好ましくは10mW/cm
2〜500mW/cm
2の範囲で、より好ましくは50mW/cm
2〜400mW/cm
2の範囲である。紫外線の最大照度が低すぎると第1の組成物11が硬化しにくく、第1の層3を含む表面層の耐擦傷性が低くなったり、密着性が悪くなる傾向がある。紫外線の最大照度が高すぎると、第1の層3を含む表面層が劣化したり、第1の層3を含む表面層の透明性が低下したりすることがある。
【0045】
第1の組成物11を電子線などの照射により硬化させるために、種々の電子線照射装置を用いることができる。電子線の照射エネルギーは、0.5Mrad〜20Mradの範囲内にあることが好ましく、1.0Mrad〜10Mradの範囲内にあることがより好ましい。電子線の照射エネルギーが低すぎると、第1の組成物11が硬化しにくく、第1の層3を含む表面層の耐擦傷性が低くなる傾向がある。電子線の照射エネルギーが高すぎると、第1の層3を含む表面層が劣化したり、第1の層3を含む表面層の透明性が低下したりすることがある。
【0046】
次に、
図2(c)に示すように、硬化した第1の組成物層11Aの樹脂基材2に接する一方の面11aとは反対側の他方の面11bに、第2の組成物を塗布し、第2の組成物12の層を形成する。
【0047】
第2の組成物12の層を形成する際の硬化した第1の組成物層11Aの硬化の状態は、硬化した第1の組成物層11Aと第2の組成物12の層との層間が乱れない程度に硬化していればよい。第1の組成物層11Aの硬化が十分に進行していると、得られる積層体1の表面層の耐擦傷性が高くなる。
【0048】
次に、硬化した第1の組成物層11Aの上に、第2の組成物12の層を塗布して、加熱することにより、第1の層3の上に第2の層4を形成する。この加熱によって、第2の組成物12に含まれるアルコキシ基が、縮合重合して、第2の組成物12を硬化させて、第2の層4を形成する。加熱温度は、樹脂基材2の耐熱性の上限にできる限り近い方が良く、80℃〜130℃の範囲にあることが好ましい。加熱温度がこの範囲にあることにより、第1の層3と第2の層4との密着性が高められる。また、第2の層4の硬度が高くなり、積層体1の耐擦傷性を高めることができる。
【0049】
積層体1を構成するための第1の組成物11及び第2の組成物12を塗布する方法は、特に限定されず、例えばスプレーコート法、フローコート法、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、ロールコート法などを用いることができる。
【0050】
以下、第1の層3を形成するための第1の組成物11、及び第2の層4を形成するための第2の組成物12の詳細を説明する。
【0051】
(第1の組成物)
第1の層3を形成するための第1の組成物11は、多官能(メタ)アクリレートを含む。多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される。
【0053】
一般式(1)において、R
0は、m価の有機基である。上記有機基としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素基、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、ジグリセリン残基、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリグリセリン残基、エリスリトール残基、ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、イソシアヌル酸残基又はビスフェノールA残基などの有機基Xが好ましい。m価の有機基が上記有機基Xであれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても良く、分岐鎖状であっても良い。上記脂肪族炭化水素基の炭素数の下限及び上限は、特に限定されないが、2以上であることが好ましく、30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましく、6以下であることが更に好ましい。上記炭素数が上記好ましい下限以上であれば、第1の組成物の取り扱い性が向上する。上記炭素数が好ましい上限以下であれば、第2の組成物に含まれるアルキレンオキシド鎖と親和性を高めることができるので、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記ポリエチレングリコール残基の炭素数の下限及び上限は、特に限定されないが、6以上であることが好ましく、30以下であることが好ましく、24以下であることがより好ましく、12以下であることが更に好ましい。上記炭素数が上記好ましい下限以上であれば、第1の組成物の取り扱い性が向上する。上記炭素数が好ましい上限以下であれば、第2の組成物に含まれるアルキレンオキシド鎖と親和性を高めることができるので、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記ポリプロピレングリコール残基の炭素数の下限及び上限は、特に限定されないが、9以上であることが好ましく、45以下であることが好ましく、36以下であることがより好ましく、18以下であることが更に好ましい。上記炭素数が上記好ましい下限以上であれば、第1の組成物の取り扱い性が向上する。上記炭素数が好ましい上限以下であれば、第2の組成物に含まれるアルキレンオキシド鎖と親和性を高めることができるので、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記ポリグリセリン残基の炭素数の下限及び上限は、特に限定されないが、9以上であることが好ましく、45以下であることが好ましく、36以下であることがより好ましく、18以下であることが更に好ましい。上記炭素数が上記好ましい下限以上であれば、第1の組成物の取り扱い性が向上する。上記炭素数が好ましい上限以下であれば、第2の組成物に含まれるアルキレンオキシド鎖と親和性を高めることができるので、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。
【0054】
R
1は、炭素数1〜6のアルキレン基を示す。上記R
1が、炭素数1〜6のアルキレン基であることにより、上記一般式(1)中の、−O−R
1−がアルキレンオキシド鎖となる。上記アルキレンオキシド鎖を有することにより、下述の第2の組成物に含まれる下記一般式(2)で表わされる繰り返し単位を有する重合体が有するアルキレンオキシド鎖との親和性が高くなり、第1の層3と第2の層4との密着性が向上する。R
2は、水素原子またはメチル基を示す。R
3は、水素原子またはメチル基を示す。nは、1〜9の整数を示し、mは、2以上の整数を示す。
【0055】
一般式(1)において、R
1の炭素数が1〜6であれば、第2の組成物に含まれるアルキレンオキシド鎖と親和性が高くなり、第1の層3と第2の層4との密着性が向上する。第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上することから、上記R
1の炭素数は2又は3であることがより好ましい。
【0056】
第1の組成物11は、一般式(1)において、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとmが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとの両方を含む。第1の組成物11が、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、第1の層3と樹脂基材2との密着性を高めることができる。第1の組成物11が、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、第1の層3と後述の第2の層との密着性を高めることができる。また、第1の組成物11が、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートを含むことにより、未反応の(メタ)アクリレート基が残りにくく、第1の層3を充分に硬化させることができる。第1の組成物11にmが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとmが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとの両方が含まれることにより、それぞれ、第1の層3と樹脂基材2との密着性、第1の層3と後述の第2の層4との密着性、及び第1の層3の耐久性を効果的に高めることができる。これにより、積層体1の耐擦傷性及び耐久性が効果的に高められる。
【0057】
mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートは、水溶性の多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。水溶性の多官能(メタ)アクリレートであることにより、樹脂基材2と第2の層4との密着性をより効果的に高めることができる。本明細書において水溶性の多官能(メタ)アクリレートとは、23℃の蒸留水100質量部に対して、11質量部溶解する多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0058】
mの上限は、特に限定されないが、第1の層3と後述の第2の層4との密着性を、より一層高めることができることから、12以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましい。
【0059】
一般式(1)において、m個のnは、同一の値であっても良く、異なっていても良いが、同一であることが好ましい。また、m個のnの合計の下限及び上限は、30以下であることが好ましく、27以下であることがより好ましく、12以下であることが更に好ましく、2以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。上記m個のnの合計が、上記好ましい下限以上であれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記m個のnの合計が、上記好ましい範囲上限以下であれば、第1の層3と樹脂基材との密着性がより一層向上する。
【0060】
なお、「残基」は、化合物から少なくとも1つの原子又は原子団が除かれたm価の構造である。もっとも、ポリエチレングリコール残基及びポリグリセリン残基の場合には、下記の構造式A及びBの形態で結合されているものであることが好ましい。なお、下記の構造式A及びBにおいて、破線で囲んだ部分が、それぞれポリエチレングリコール残基及びポリグリセリン残基を示す。ただし、kは整数である。kの上限は特に限定されないが、第1の層3と第2の層4との密着性が向上することから、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0063】
(第1の組成物の好ましい態様)
本発明のある特定の局面では、第1の組成物として、以下の好ましい態様のものが好適に用いられる。ここでは、上記一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレートは、以下の構成である。
【0064】
すなわち、一般式(1)において、R
0は、m価の基である。R
0は、炭素数が2〜6の脂肪族炭化水素基、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、ジグリセリン残基、ポリエチレングリコール残基、ポリプロピレングリコール残基、ポリグリセリン残基、エリスリトール残基、ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、イソシアヌル酸残基、またはビスフェノールA残基を示す。R
1は、エチレン基またはプロピレン基を示す。R
2は、水素原子またはメチル基を示す。R
3は、水素原子またはメチル基を示す。nは、1〜9の整数を示す。mは、2以上の整数を示す。
【0065】
さらに、第1の組成物11は、一般式(1)において、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとmが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとの両方を含む。第1の組成物11にmが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとmが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとの両方が含まれることにより、それぞれ、第1の層3と樹脂基材2との密着性、及び第1の層3と後述の第2の層4との密着性を、より効果的に高めることができる。これにより、積層体1の耐擦傷性及び耐久性がより効果的に高められる。
【0066】
mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートは、水溶性の多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。水溶性の多官能(メタ)アクリレートであることにより、樹脂基材2と第2の層4との密着性をより効果的に高めることができる。
【0067】
第1の組成物11中における、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートと、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとの質量比は、特に限定されない。上記質量比は、樹脂基材2と第1の層3との密着性、及び第1の層3と第2の層4との密着性をできる限り高くする一方、第1の組成物11の粘度がコーティング方法に適した粘度範囲になるように適宜調整すればよく、例えば10:90〜90:10の範囲にあることが好ましく、20:80〜80:20の範囲にあることがより好ましい。
【0068】
また、第1の組成物11中の固形分における、一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレートの含有量は、20質量%〜100質量%の範囲であることが好ましく、30質量%〜90質量%の範囲であることがより好ましい。これらの範囲にあることにより、樹脂基材2と第1の層3との密着性、及び第1の層3と第2の層4との密着性をより効果的に高めることができる。
【0069】
mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。2種類以上を用いる場合は、mが2である多官能(メタ)アクリレートと、mが3である多官能(メタ)アクリレートとを用いることが好ましい。また、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0070】
第1の組成物11は、一般式(1)において、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとして、mが3である3官能(メタ)アクリレートと、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとして、mが6〜9である6官能〜9官能(メタ)アクリレートとの両方を含むことがより好ましい。これにより、第1の層3によって、樹脂基材2と第2の層4との密着性を効果的に高めることができる。第1の組成物11は、一般式(1)において、mが2〜4の整数である多官能(メタ)アクリレートとして、mが3である3官能(メタ)アクリレートと、mが6以上の整数である多官能(メタ)アクリレートとして、mが6である6官能(メタ)アクリレートとの両方を含むことがより好ましい。これにより、第1の層3によって、樹脂基材2と第2の層4との密着性をさらにより一層効果的に高めることができる。
【0071】
mが3である3官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0073】
一般式(3)において、3つのR
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、一般式(1)と同じR
1、R
2及びR
3であり、3つのnは、それぞれ独立に、一般式(1)と同じnである。
【0074】
また、mが6である6官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0076】
一般式(4)において、6つのR
7は、それぞれ独立にエチレン基またはプロピレン基を示す。6つのR
8は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。6つのR
9は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示す。6つのnは、それぞれ独立に1〜9の整数を示す。
【0077】
mが6である6官能(メタ)アクリレートの具体例としては、アルキレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートモノマーや、アルキレンオキシド変性ポリエステルアクリレート、アルキレンオキシド変性エポキシアクリレート、アルキレンオキシド変性ウレタンアクリレート、アルキレンオキシド変性ポリオールアクリレート、アルキレンオキシド変性ポリグリセリンアクリレートなどのオリゴマーなどが挙げられる。さらに、アルキレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートモノマーや、アルキレンオキシド変性ポリエステルメタクリレート、アルキレンオキシド変性エポキシメタクリレート、アルキレンオキシド変性ウレタンメタクリレート、アルキレンオキシド変性ポリオールメタクリレート、アルキレンオキシド変性ポリグリセリンメタクリレートなどのオリゴマーなどが挙げられる。
【0078】
mが9である9官能(メタ)アクリレートの具体例としては、アルキレンオキシド変性ポリエステルアクリレート、アルキレンオキシド変性エポキシアクリレート、アルキレンオキシド変性ウレタンアクリレート、アルキレンオキシド変性ポリオールアクリレート、アルキレンオキシド変性ポリグリセリンアクリレートなどのオリゴマーなどが挙げられる。さらに、アルキレンオキシド変性ポリエステルメタクリレート、アルキレンオキシド変性エポキシメタクリレート、アルキレンオキシド変性ウレタンメタクリレート、アルキレンオキシド変性ポリオールメタクリレート、アルキレンオキシド変性ポリグリセリンメタクリレートなどのオリゴマーなどが挙げられる。
【0079】
アルキレンオキシド変性ポリエステルアクリレートのオリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる、末端に6個以上の水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基に両末端に水酸基を有するアルキレンオキシドを反応せしめて変性し、他方の末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することによっても得られる。アルキレンオキシド変性ポリエステルメタクリレートのオリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合によって得られる、末端に6個以上の水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基に両末端に水酸基を有するアルキレンオキシドを反応せしめて変性し、他方の末端の水酸基をメタクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基をメタクリル酸でエステル化することによっても得られる。
【0080】
アルキレンオキシド変性エポキシアクリレートのオリゴマーは、例えば、低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環へ両末端に水酸基を有するアルキレンオキシドを付加し、他方の末端の水酸基と、アクリル酸とのエステル化反応により得られる。アルキレンオキシド変性エポキシメタクリレートのオリゴマーは、例えば、低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環へ両末端に水酸基を有するアルキレンオキシドを付加し、他方の末端の水酸基と、メタクリル酸とのエステル化反応により得られる。
【0081】
アルキレンオキシド変性ウレタンアクリレートのオリゴマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアルキレンオキシド変性アクリレートモノマーとの反応生成物である。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。アルキレンオキシド変性ウレタンメタクリレートのオリゴマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有するアルキレンオキシド変性メタクリレートモノマーとの反応生成物である。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0082】
アルキレンオキシド変性グリセリンアクリレートのオリゴマーは、例えばポリグリセリンの水酸基にアルキレンオキシドの一方の水酸基を反応させ、他方の末端水酸基にヒドロキシアルキルアクリレートを付加させて得られる反応生成物である。またアルキレンオキシド変性グリセリンメタクリレートのオリゴマーは例えばポリグリセリンの水酸基にアルキレンオキシドの一方の水酸基を反応させ、他方の末端水酸基にヒドロキシアルキルメタクリレートを付加させて得られる反応生成物である。上記アルキレンオキシド変性グリセリンアクリレートのオリゴマーとしては、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレートであることが好ましい。
【0083】
第1の組成物11は、重合開始剤を含んでいてもよい。第1の組成物11が重合開始剤を含むことにより、多官能(メタ)アクリレートが重合しやすくなる。重合開始剤としては、光などの活性エネルギー線が照射されることによって、ラジカルを発生する活性エネルギー線重合開始剤などが好ましい。
【0084】
活性エネルギー線重合開始剤の具体例としては、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等のモノアシルフォスフィンオキシド系化合物;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキシド系化合物、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、9,10−フェナンスレンキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(O−エトキシカルボニル)オキシム、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、オルソベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどが挙げられる。
【0085】
活性エネルギー線重合開始剤は、多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.1質量部〜15質量部の範囲で用いることができる。活性エネルギー線重合開始剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0086】
第1の組成物11は、無機ポリマーをさらに含んでいてもよい。無機ポリマーとしては、例えば、下記一般式(6)で表されるシラン化合物を含む無機ポリマー構成成分を加水分解縮合させて得られた無機ポリマーである。
【0087】
Si(R
12)
p(OR
13)
4−p (6)
【0088】
一般式(6)において、R
12は、重合性二重結合を有する炭素数が1〜30の有機基を示す。R
13は、炭素数が1〜6のアルキル基を示す。pは、1または2を示す。pが2であるとき、複数のR
12は同一であってもよく、異なっていてもよい。複数のR
13は同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、本発明において、無機ポリマー構成成分とは、無機ポリマーを得る際に用いられる成分であって、得られた無機ポリマーの骨格の一部を構成する成分を意味する。
【0089】
一般式(6)において、R
12の重合性二重結合としては、炭素−炭素二重結合が挙げられる。R
12の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−(メタ)アクリロキシアルキル基などが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリロキシ基とは、メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を意味する。(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシメチル基、(メタ)アクリロキシエチル基、(メタ)アクリロキシプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、R
12は(メタ)アクリロキシアルキル基であることが好ましい。R
12の炭素数の好ましい下限は2、好ましい上限は30、より好ましい上限は10である。
【0090】
一般式(6)中のR
13の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
【0091】
一般式(6)で表されるシラン化合物の具体例としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。シラン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0092】
無機ポリマー構成成分としては、一般式(6)で表されるシラン化合物以外の他の化合物を含有してもよい。他の化合物は、第1の層3を含む表面層の透明性及び耐擦傷性を低下させない範囲で、一般式(6)で表されるシラン化合物と共重合、またはグラフト重合していてもよい。
【0093】
一般式(6)で表されるシラン化合物を含む無機ポリマー構成成分に、溶媒、水、触媒などを加えて、ゾル−ゲル法により無機ポリマー構成成分を加水分解縮合させた反応溶液から、溶媒、水、縮合により生じたアルコール類などを除去することにより、無機ポリマーを得ることができる。
【0094】
溶媒は、一般式(6)で表されるシラン化合物を溶解する溶媒であれば、特に制限されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール溶剤、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル溶剤、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサンなどの炭化水素溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶剤などが挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、溶媒の揮発が容易であるため、低沸点溶剤が好ましい。低沸点溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール溶剤を用いることが好ましい。
【0095】
加水分解反応に用いる水は、一般式(6)で表されるシラン化合物のアルコキシ基を水酸基に変換するために添加される。加水分解反応に用いる水は、アルコキシ基のモル数に対して、0.1〜10倍当量となるように添加されることが好ましい。加水分解反応に用いる水の添加量が多すぎると、加水分解反応及び縮合反応が十分に進まず、無機ポリマーが得られないことがある。加水分解反応に用いる水の添加量が少なすぎると、無機ポリマーがゲル化することがあるため、反応時間及び反応温度を最適に調整する必要がある。
【0096】
触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、パラトルエンスルホン酸、アクリル酸などの有機酸が挙げられる。なかでも、加水分解反応及び縮合反応を制御しやすいことから、触媒は、塩酸、硝酸、酢酸、またはアクリル酸であることがより好ましい。
【0097】
第1の組成物11中に無機ポリマーが含まれる場合、無機ポリマーは、一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.1質量部〜40質量部含まれることが好ましい。これにより、樹脂基材2と第2の層4との密着性を効果的に高めることができる。
【0098】
無機ポリマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0099】
(第2の組成物)
第2の層4を形成するための第2の組成物12は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体を含む。
【0101】
一般式(2)において、R
4は、炭素数が2〜12の直鎖状アルキレンオキシド鎖、炭素数が3〜12の分岐鎖状アルキレンオキシド鎖又は炭素数が5〜15のシクロアルキレンオキシド鎖を示す。炭素数が2〜12の直鎖状アルキレンオキシド鎖、炭素数が3〜12の分岐鎖状アルキレンオキシド鎖又は炭素数が5〜15のシクロアルキレンオキシド鎖は、環状エーテル基を開環重合して得ることが好ましい。3つのR
5は、それぞれ独立に炭素数が1〜8のアルキル基又は水素を示す。上記R
4が、アルキレンオキシド鎖であることにより、上述の第1の組成物に含まれる上記一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレートが有するアルキレンオキシド鎖との親和性が高くなり、第1の層3と第2の層4との密着性が向上する。
【0102】
上記重合体はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定したスチレン換算の重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、600〜5000であることがより好ましく、1000〜2300であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた重量平均分子量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。ゲル浸透クロマトグラフィー測定装置(Waters社製、2690)と、紫外線検出器(Waters社製、UV Waters 2487)と、2本直列につないだカラム(昭和電工社製、Shodex LF−804)と、校正試料として標準ポリスチレンとを測定に用いる。試料として、孔径0.45μmのフィルターを通過させた0.1質量% 上記重合体/THF溶液50μLを上記カラムに注入し、流量1mL/分及び40℃で測定する方法である。
【0103】
R
4が、炭素数が2〜12の直鎖状アルキレンオキシド鎖又は炭素数が3〜12の分岐鎖状アルキレンオキシド鎖である上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の構造としては、例えば、下記一般式(2b),(2c):
【0106】
で表される構造が好ましい。一般式(2b),(2c)において、R
21はアルキレン基又はエーテル結合を有する有機基を示し、R
22は酸素、アルキレン基又はエーテル結合を有する有機基を示す。一般式(2b)において、R
21及びR
22の炭素数の合計が、1〜11である。また、一般式(2c)において、R
21の炭素数は1〜11である。上記アルキレン基及びエーテル結合を有する有機基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。上記エーテル結合を有する有機基としては、アルキレンオキシドまた、上記アルキレン基及び上記エーテル結合を有する有機基は置換基を有していても良い。上記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基などが挙げられる。また、R
23は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又は水素を示す。
【0107】
上記直鎖状アルキレンオキシド鎖の炭素数が2〜12であれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記直鎖状アルキレンオキシド鎖の炭素数は、3〜10であることがより好ましい。上記分岐鎖状アルキレンオキシド鎖の炭素数が3〜12であれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記分岐鎖状アルキレンオキシド鎖の炭素数は、3〜10であることがより好ましい。上記R
23がアルキル基である場合、炭素数が1以上であれば、充分な耐擦傷性が得られ、8以下であれば、充分な耐久性が得られる。
【0108】
R
4が、炭素数が5〜15のシクロアルキレンオキシド鎖である上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体の構造としては、例えば、下記一般式(2d)〜(2g):
【0113】
で表される構造が好ましい。一般式(2d)〜(2g)において、R
24はアルキレン基又はエーテル結合を有する有機基を示し、R
25は、酸素、アルキレン基又はエーテル結合を有する有機基を示す。上記アルキレン基及び上記エーテル結合を有する有機基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、上記アルキレン基及び上記エーテル結合を有する有機基は置換基を有していても良い。上記置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシ基などが挙げられる。環A1は、3員環〜6員環のシクロアルキレン環を示す。一般式(2d)において、R
24、R
25及び環A1の炭素数の合計が、5〜15である。一般式(2e)において、R
24及び環A1の炭素数の合計が、5〜15である。一般式(2f)において、R
25及び環A1の炭素数の合計が、5〜15である。一般式(2g)において、環A1の炭素数が、3〜6である。また、R
26は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基又は水素を示す。上記シクロアルキレンオキシド鎖の炭素数が5〜15であれば、第1の層3と第2の層4との密着性がより一層向上する。上記シクロアルキレンオキシド鎖の炭素数は、8〜12であることがより好ましい。上記R
26がアルキル基である場合、炭素数が1以上であれば、充分な耐擦傷性が得られ、8以下であれば、充分な耐久性が得られる。
【0114】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、環状エーテル基を有するアルコキシシランを触媒存在下に開環重合することによって得ることが好ましい。本発明において、環状エーテル基とは、エーテル結合を有する環状の有機基をいう。環状エーテル基は、通常、3〜6員環の構造を有し、環構造中にエーテル結合を有する炭化水素基である。中でも、環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い、3員環または4員環の環状エーテル基が好ましく、3員環の環状エーテル基がより好ましい。
【0115】
環状エーテル基の具体例としては、例えば、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、γ−グリシドキシブチル基などの炭素数が4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基などのオキシラン基を持った炭素数が5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などの炭素数が1〜3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持った炭素数が5〜8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0116】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、下記一般式(5)で表されるγ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシランを開環重合して得られるアルコキシシランの開環重合体であることが好ましい。第2の層が上記重合体を含むと、第2の層4と第1の層3との密着性がより高められる。
【0118】
一般式(5)において、R
10は、炭素数が1〜9のアルキレン基を示す。3つのR
11は、それぞれ独立に炭素数が1〜8のアルキル基を示す。上記アルコキシシランの開環重合体は、上記一般式(5)において、R
10が、炭素数が1〜4のアルキレン基を示し、3つのR
11が、それぞれ独立に炭素数が1〜8のアルキル基を示すアルコキシシランの開環重合体であることが好ましい。
【0119】
上記一般式(5)で表されるγ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシランの具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。環状エーテル基を含有するアルコキシシランは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0120】
また、上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する重合体は、上記一般式(5)で表されるγ−グリシドキシアルキルトリアルコキシシランと、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどの他のアルコキシシランとの共重合体であってもよい。
【0121】
(第2の組成物の好ましい態様)
第2の組成物の好ましい態様としては、上記一般式(2)で表わされる繰り返し単位を有する重合体が、アルコキシシランの開環重合体であることが望ましい。一般式(2)において、R
4は、炭素数が2〜6の直鎖状アルキレンオキシド鎖または炭素数が5〜8のシクロアルキレンオキシド鎖であることが好ましい。炭素数が2〜6の直鎖状アルキレンオキシド鎖及び炭素数が5〜8のシクロアルキレンオキシド鎖は、それぞれ、環状エーテル基を開環重合して得られることが好ましい。3つのR
5は、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基であることが好ましい。
【0122】
環状エーテル基の開環重合に用いる触媒は、有機金属化合物であることが好ましい。上記有機金属化合物としては、Ti、Al、Zr、Snなどの金属の金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属エステル化合物、金属シリケート化合物などを用いることが好ましい。
【0123】
金属アルコキシド化合物としては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−n−プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ−n−ラウリルチタネートなどのチタニウムアルコキシド、テトラエチルジルコネート、テトラ−n−プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ−n−ブチルジルコネート、テトラ−sec−ブチルジルコネート、テトラ−tert−ブチルジルコネート、テトラ−n−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ペンチルジルコネート、テトラ−tert−ヘキシルジルコネート、テトラ−n−ヘプチルジルコネート、テトラ−tert−オクチルジルコネート、テトラ−n−ステアリルジルコネートなどのジルコニウムアルコキシド、ジブチル錫ジブトキシドなどの錫アルコキシドなどが挙げられる。
【0124】
金属キレート化合物としては、例えば、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセテート)アルミニウム、トリス(n−ブチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(プロポニルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシプロピオニルアセトナトアルミニウム、アセチアセトナト・ビス(プロピオニルアセトナト)アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム・ジ−sec−ブチレート、メチルアセトアセテートアルミニウムsec−ブチレート、ジ(メチルアセトアセテート)・モノ−tert−ブチレート、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、モノアセチルアセトナ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、トリブトキシ(アセチルアセトナト)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)などが挙げられる。
【0125】
金属エステル化合物としては、例えば、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタニウムエステル化合物、トリブトキシジルコニウムステアレートなどのジルコニウムエステル化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジベンジル錫ジ(2−エチルヘキシレート)、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレートなどの錫エステル化合物などが挙げられる。
【0126】
金属シリケート化合物としては、例えば、ジブチル錫ビストリメトキシシリケート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリメトキシシリケート、ジオクチル錫ビストリエトキシシリケートが挙げられる。
【0127】
これらの触媒の中でも、反応性と貯蔵安定性のバランスから、アルミニウムアルコキシドが好ましく、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドがより好ましい。これらの触媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。開環重合のために用いる触媒の量は、特に限定されないが、環状エーテル基のモル数に対して0.01倍モル等量〜0.5倍モル等量を用いることが好ましく、0.02倍モル等量〜0.4倍モル等量がより好ましい。
【0128】
第2の組成物を充分に熱硬化させる観点からは、第2の組成物中の固形分における、一般式(2)で表される化合物の含有量は、40質量%〜95質量%の範囲にあることが好ましく、50質量%〜80質量%程度の範囲にあることがより好ましい。
【0129】
第2の組成物は、テトラアルコキシシランの加水分解物をさらに含む。テトラアルコキシシランは、下記一般式:
Si(OR
6)
4 (2a)
で表される。
【0130】
一般式(2a)において、4つのR
6は、それぞれ独立に炭素数が1〜8のアルキル基を示す。上記炭素数が1〜8のアルキル基としては、炭素数が1〜6のアルキル基であることが好ましい。
【0131】
(第1の層と第2の層の好ましい組み合わせ)
本発明においては、好ましくは、上記第1の層が、上記一般式(1)中のR
0が、それぞれm価であり、炭素数が2〜6の脂肪族炭化水素基、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、ポリエチレングリコール残基、エリスリトール残基、ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、イソシアヌル酸残基、またはビスフェノールA残基であり、R
1が、エチレン基またはプロピレン基である多官能(メタ)アクリレートを含む第1の組成物を硬化させてなる層であり、上記第2の層が、上記一般式(2)中のR
4が、環状エーテル基を開環重合して得られる、炭素数が2〜6の直鎖状アルキレンオキシド鎖または炭素数が5〜8のシクロアルキレンオキシド鎖であり、R
5が、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基である繰り返し単位を有するアルコキシシランの開環重合体と、上記一般式(2a)中のR
6が、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基であるテトラアルコキシシランの加水分解物とを含む第2の組成物を硬化させてなる層である。
【0132】
このような第1の層と第2の層との組み合わせの場合には、耐擦傷性及び耐久性をより一層高めることが出来る。
【0133】
(第1,第2の組成物に添加され得る他の成分)
第1の組成物は、均一に塗布するために、溶剤により希釈して用いることができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、1種類のみを用いてよく、2種類を用いてもよい。有機溶剤の具体例としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、1−メトキシ−2−エタノールなどのアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル溶剤、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、石油エーテル、石油ナフサなどの石油溶剤などが挙げられる。
【0134】
第2の組成物は、第1の組成物と同様の溶剤により希釈して用いることができる。第2の組成物は、水溶媒中で重合することも可能であり、水を溶媒とした組成物とすることもできる。第2の組成物の主溶媒を水とした場合、組成物の粘度、第1の層3との濡れ性、レベリング性などの必要に応じて、有機溶媒をさらに添加することができる。添加できる有機溶媒としては、水に可溶であることが好ましく、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、1−メトキシ−2−エタノールなどのアルコール溶剤などが適している。
【0135】
第1,第2の組成物は、必要に応じて、レベリング剤、チキソ性付与剤、分散剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。
【0136】
本実施形態において、第1の層3及び第2の層4には、共にアルキレンオキシド鎖が含まれているため、親和性が高く、密着性が高い。
【0137】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0138】
表1に記載の原料を、表3及び表4に記載の配合割合で混合して、実施例1〜13及び比較例1〜6に用いる第1の組成物をそれぞれ調製した。また、表2に記載の原料を用いて、表3及び表4に記載の配合割合で第2の組成物A〜Gを調製した。具体的には、第2の組成物A〜Gは、以下のようにして作製した。また、表1に記載の原料のうち、一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレートである、エトキシ化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業製、A−GLY−9E)、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業製、A−DPH−12E)、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(共栄社化学製、4EG−A)、及び、ポリグリセリンポリエチレングリコールポリアクリレート(新中村化学工業製、NK ECONOMER A−PG5027E)の水溶性を以下の手順によって評価し、表1に記載した。23℃の蒸留水100gに対して、一般式(1)で表される多官能(メタ)アクリレートを混合し、11g溶解した場合を○、11g溶解しなかった場合を×とした。
【0139】
(第2の組成物A)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)118.2g(0.5モル)にアルミニウムトリsec−ブトキシド(ASB)24.6g(0.1モル)と蒸留水209.6gを加え、強く撹拌することで、白濁した溶液を得た。この溶液を60℃のウォーターバス中で30分撹拌することにより、GPTSのエポキシ基を開環重合させ、無色透明な組成物を得た。得られたGPTSの開環重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、測定したところ1000であった。具体的な重量平均分子量の測定方法は、以下である。ゲル浸透クロマトグラフィー測定装置(Waters社製、2690)と、紫外線検出器(Waters社製、UV Waters 2487)と、2本直列につないだカラム(昭和電工社製、Shodex LF−804)と、校正試料として標準ポリスチレンとを測定に用いた。試料として孔径0.45μmのフィルターを通過させた0.1質量% 上記重合体/THF溶液50μLを上記カラムに注入し、流量1mL/分及び40℃で測定した。この組成物を室温まで冷却し、10%に希釈した硝酸を8.8g(0.014モル)滴下した後、テトラエトキシシラン(TEOS)を41.7g(0.2モル)添加し、室温で2時間撹拌することによりコーティング組成物を得た。このコーティング組成物にポリエーテル変性シロキサン(BYK346)0.38gを添加して固形分濃度25質量%の第2の組成物Aとした。なお、固形分濃度は、GPTSが開環重合し、更に加水分解・縮合したときの分子式R−SiO
1.5(R=C
6H
11O
2)の分子量167.24と、ASBが加水分解・縮合したときの分子式AlO
1.5の分子量50.98と、TEOSが加水分解・縮合した時の分子式SiO
2の分子量60.09とを用い、モル比から計算した理論固形分重量を全添加原材料の重量で除することにより求めた。
【0140】
(第2の組成物B)
アルミニウムトリsec−ブトキシド(ASB)の代わりに、チタン(IV)イソプロポキシドを28.4g(0.1モル)用い、蒸留水を217.4g用いたこと以外は、第2の組成物Aと同様にして固形分濃度25質量%の第2の組成物Bを作製した。また、第2の組成物Aと同様に、得られたGPTSの開環重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、測定したところ1200であった。なお、チタン(IV)イソプロポキシドの加水分解・縮合物の分子式はTiO
2、分子量は79.88として固形分濃度を計算した。
【0141】
(第2の組成物C)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)の代わりにβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(EPC6−ETS)を123.2g(0.5モル)用い、蒸留水を222.7gとしたこと以外は、第2の組成物Aと同様にして固形分濃度25質量%の第2の組成物Cを作製した。また、第2の組成物Aと同様に、得られたEPC6−ETSの開環重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、測定したところ2300であった。なお、(EPC6−ETS)の加水分解・縮合物の分子式は、R−SiO
1.5(R=C
8H
12O
1)、分子量は、176.27として固形分濃度を計算した。
【0142】
(第2の組成物D)
テトラエトキシシラン(TEOS)を20.8g(0.1モル)用い、蒸留水を206.4g用いたこと以外は、第2の組成物Aと同様にして固形分濃度25質量%の第2の組成物Dを作製した。
【0143】
(第2の組成物E)
テトラエトキシシラン(TEOS)を62.5g(0.3モル)用い、蒸留水を212.9g用いたこと以外は、第2の組成物Aと同様にして固形分濃度25質量%の第2の組成物Eを作製した。
【0144】
(第2の組成物F)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)の代わりにフェニルトリメトキシシラン(PhTS)を99.1g(0.5モル)用い、蒸留水を152.6g用いたこと以外は、第2の組成物Aと同様にして固形分濃度25質量%の第2の組成物Fを作製した。なお、(PhTS)の加水分解・縮合物の分子式は、R−SiO
1.5(R=C
6H
5)、分子量は、81.10として固形分濃度を計算した。
【0145】
(第2の組成物G)
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)118.2g(0.5モル)にアルミニウムトリsec−ブトキシドを加えずに、蒸留水を213.9g加え、60℃のウォーターバス中で30分撹拌した。この溶液は2層分離していたが、触媒を添加していないため、GPTSのエポキシ基は開環していない組成物を得た。この組成物に室温下にて10%に希釈した硝酸を8.8g(0.014モル)滴下した後、テトラエトキシシラン(TEOS)を41.7g(0.2モル)添加し、室温で2時間撹拌することによりコーティング組成物を得た。このコーティング組成物にポリエーテル変性シロキサン(BYK346 ビックケミー社製)0.38gを添加して固形分濃度25質量%の第2の組成物Gとした。
【0148】
(実施例1〜13及び比較例1〜6)
市販の無色透明なポリカーボネート板(縦10cm×横10cm×厚み4mm)を用意した。このポリカーボネート板上に、スピンコーターを用いて、それぞれ、表3及び表4に示す配合の第1の組成物を均一に塗布し、第1の組成物の層を形成した。第1の組成物の層を室温(25℃)で10分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、3kW高圧水銀灯にて照射エネルギーが3,000mJ/cm
2となるように紫外線を、第1の組成物の層に照射して、第1の組成物の層を硬化させた。
【0149】
次に、硬化した第1の組成物の層上に、スピンコーターを用いて、表3及び表4に示す配合の第2の組成物を均一に塗布し、第2の組成物の層を形成した。第2の組成物の層を室温(25℃)で10分間乾燥した。その後、125℃のオーブン内で2時間、第2の組成物の層を加熱した。このようにして、ポリカーボネート板の上面に、表面層としての第1の層及び第2の層を形成し、実施例1〜13及び比較例1〜6の積層体を得た。
【0150】
【表3】
※1.9ND−Aは、A−NOD−Nを意味する。
【0152】
次に、実施例1〜13及び比較例1〜6で得られた積層体について、それぞれ、以下の(1)〜(11)の項目について評価した。
【0153】
(1)第1の層及び第2の層の厚み
ウルトラミクロトームを用いて積層体の薄片を作製した。透過型電子顕微鏡にて、得られた薄片の断面を観察することにより、第1の層及び第2の層の厚みを評価した。
【0154】
(2)外観
第2の層を形成後の積層体の表面層の状態を目視にて確認し、下記の評価基準で評価した。
【0155】
[外観の評価基準]
○:表面層が無色で均一
△:表面層にむらがあり、透視像がゆがむか、塗膜が白濁する
×:表面層にクラックが生じている
(3)透明性の評価
JIS K7136に準拠して、ヘイズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)により、表面層が形成されたポリカーボネート板のヘイズ値を測定した。なお、ヘイズ値が小さいほど、透明性が高いことを示す。
【0156】
なお、上記表面層が形成されていない上記ポリカーボネート板のヘイズ値を測定したところ、ヘイズ値は0.2%であった。
【0157】
(4)黄色度の評価
JIS K7105に準拠してカラーアナライザー(東京電色社製「TC−1800MK−II」により、黄色度YIを測定した。
【0158】
(5)耐擦傷性の評価
JIS R3212に準拠して、70回/分の速度で回転する水平な回転テーブルと、65±3mmの間隔で固定された円滑に回転する1対の摩耗輪とにより構成された東洋精機社製のテーバー摩耗試験機「ロータリーアブレーションテスタTS」を用いて、耐擦傷性を評価した。なお、摩耗輪はCS−10F(タイプIV)、荷重500gにおける、500サイクル試験後のヘイズと初期ヘイズとのヘイズ差の絶対値(Δヘイズ%)を測定した。
【0159】
なお、上記表面層が形成されていない上記ポリカーボネート板の上記ヘイズ差(Δヘイズ%)を測定したところ、ヘイズ差は48%であった。
【0160】
(6)密着性
耐久性の評価項目として、密着性を評価した。上記密着性は、下述の耐水性の評価、耐温水性の評価、耐湿性の評価及び耐熱性の評価後も維持されることが望ましい。JIS K5600−5−6に準拠して、ポリカーボネート板の表面に形成された表面層に、カッティング治具(BYK社製のクロスカットテスターPE5123、1mm間隔×11)を用いて直角に交差するように縦、横各11本の切り目を入れて、区切られた合計100個の基盤目を形成した。基盤目が形成された表面層に、粘着テープ(スリーエム社製のスコッチ898幅25mm、接着力15.75N/25mm)を十分に圧着させた後、粘着テープを表面層から90度方向に急激に剥がした。合計100個の基盤目のうちの、第1の層及び第2の層の両方がポリカーボネート板から剥離せずに残存している基盤目の数を数えた。
【0161】
(7)耐候性の評価
スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機社製SX75、インナーフィルタ石英、アウターフィルタ#295、照度180W/cm
2(300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃)を用いて、促進試験を行った。1000時間照射後のヘイズ値と黄色度(YI)を測定した。
【0162】
(8)耐水性の評価
32℃の蒸留水に14日間浸漬し、目視による外観検査及び(6)の密着性試験を行った。また、目視による外観検査は、上記外観の評価基準に従い評価した。
【0163】
(9)耐温水性の評価
50℃の蒸留水に24時間浸漬し、目視による外観検査及び(6)の密着性試験を行った。また、目視による外観検査は、上記外観の評価基準に従い評価した。
【0164】
(10)耐湿性の評価
50℃98%の恒温恒湿槽に14日間サンプルを投入し、目視による外観検査と上記(6)の密着性試験を行った。また、目視による外観検査は、上記外観の評価基準に従い評価した。
【0165】
(11)耐熱性の評価
90℃の恒温槽に14日間サンプルを投入し、ヘイズ値、ΔYI及び(6)の密着性試験を行った。
【0166】
これら(1)〜(11)の評価結果を表5及び表6に示す。
【0169】
実施例1〜13で得られた積層体は、比較例1及び2で得られた積層体に比較して耐擦傷性及び密着性が向上することを確認した。また、実施例1〜13で得られた積層体は、比較例3〜6で得られた積層体に比較して耐水性、耐温水性及び耐湿性が向上することを確認した。実施例1〜9で得られた積層体は、比較例4で得られた積層体に比較して、第1の層が充分に硬化し、耐久性が向上したと推察される。なお、ポリカーボネート板の代わりに、ポリ(メタ)アクリレート樹脂として、ポリメチルメタクリレート板を用いた場合も、同様に耐擦傷性及び耐久性の向上効果を示した。