【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 有機薄膜太陽電池モジュールの創製に関する研究開発(新構造モジュールの研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記素子部を封止した後、前記封止部の外側に位置する前記光電変換層の一部および前記第3の隔壁部の一部を含むように前記基板の一部を切断する、請求項12に記載の光電変換装置の製造方法。
塗布装置の材料吐出用ヘッドと前記基板との間に前記光電変換層の材料を供給して前記材料からなる液溜まり領域を形成し、前記材料吐出用ヘッドおよび前記基板の少なくとも一方を塗布方向に沿って移動させながら前記材料を塗布することにより、前記光電変換層を形成し、
前記液溜まり領域の塗布方向における幅は、前記隔壁部の延在方向における前記空隙の幅よりも広い、請求項12ないし請求項14のいずれか一項に記載の光電変換装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1ないし
図3は、光電変換装置の構造例を示す模式図であり、
図1は平面図であり、
図2は
図1における線分A1−B1の断面図であり、
図3は
図1における線分A2−B2の断面図である。
【0011】
図1ないし
図3に示す光電変換装置は、基板1と、電極21と光電変換層22と電極23とを有する素子部2と、隔壁部3(3a、3b)と、封止部4と、基板5と、を具備する。なお、
図1では便宜のため基板5を省略している。
【0012】
基板1は、第1の領域1aと、第1の領域1aを囲む第2の領域1bと、第2の領域1bの外側(第1の領域1aとの接触部の反対側)に設けられた第3の領域1cとを有する。第1の領域1aは、素子部2を設けるための領域であり、光電変換に寄与する領域を含む光電変換領域である。第2の領域1bおよび第3の領域1cは、周辺領域である。基板1は、例えば支持基板としての機能を有する。なお、
図1において、第3の領域1cは、第2の領域1bを囲むように設けられているが、例えば第2の領域1bの外側の一部にのみ第3の領域1cを設けてもよい。
【0013】
素子部2は、光電変換セルを有する。例えば、
図2において、電極21と、光電変換層22と、電極23と、の重畳部を一つの光電変換セルとみなしてもよい。このとき、素子部2は、互いに直列接続で電気的に接続された複数の光電変換セル(第1の光電変換セルないし第N(Nは2以上の自然数)の光電変換セル)を有するとみなすことができる。
【0014】
電極21は、第1の領域1a上に設けられる。このとき、電極21は、第2の領域1bまたは第3の領域1cまで延在していてもよい。電極21は、光電変換セルの陽極または陰極の一方としての機能を有する。
【0015】
図1ないし
図3に示す光電変換装置は、基板1上に複数の電極21を具備する。第3の領域1cまで延在する電極21上に電極パッドとなる別の電極を形成してもよい。なお、電極21の数は、特に限定されない。
【0016】
光電変換層22は、電極21上に設けられる。
図1および
図2では、複数の電極21のうち、互いに異なる電極21の上面に接するように複数の光電変換層22が設けられている。光電変換層22は、第2の領域1bおよび第3の領域1cまで延在していてもよい。光電変換層22は、照射される光のエネルギーにより電荷分離を行う機能を有する。
【0017】
光電変換層22は、例えば電極21上に設けられたバッファ層22aと、バッファ層22a上に設けられた光活性層22bと、光活性層22b上に設けられたバッファ層22cと、を有する。バッファ層22aの側面、光活性層22bの側面、およびバッファ層22cの側面は連続していてもよい。これに限定されず、バッファ層22aが電極21の側面に接し、バッファ層22aを挟んで光活性層22bが電極21の側面に重畳していてもよい。また、光活性層22bが電極21の側面に接していてもよい。光活性層22bとバッファ層22cとの間に段差を設けてもよい。さらに、必ずしもバッファ層22aおよびバッファ層22cを設けなくてもよい。
【0018】
バッファ層22aは、電極21と光活性層22bとの間の中間層であり、バッファ層22cは、光活性層22bと電極23との間の中間層である。バッファ層22aおよびバッファ層22cの一方は、正孔輸送層としての機能を有し、他方は電子輸送層(または正孔ブロック層)としての機能を有する。
【0019】
正孔輸送層は、正孔を効率的に輸送する機能や、光活性層22bの界面近傍で発生した励起子の消滅を防ぐ機能を有する。電子輸送層は、正孔をブロックして電子のみを効率的に輸送する機能、および光活性層22bとの界面で生じた励起子(エキシトン)の消滅を防ぐ機能を有する。
【0020】
図1ないし
図3に示す光電変換装置は、複数の電極21のうち、互いに異なる電極21の上面に接するように複数の光電変換層22を具備する。なお、光電変換層22の数は、特に限定されない。
【0021】
電極23は、光電変換層22上に設けられる。電極23は、光電変換セルの陽極または陰極の他方としての機能を有する。
【0022】
図1ないし
図3に示す光電変換装置は、複数の光電変換層22のうち、互いに異なる光電変換層22の上面に接するように設けられた複数の電極23を具備する。このとき、第Nの光電変換セルを構成する電極23は、第1の領域1aから第2の領域1bまで延在していてもよい。また、第N−1の光電変換セルを構成する電極23は、第Nの光電変換セルを構成する電極21に電気的に接続される。第3の領域1cに延在する電極23上に電極パッドとなる別の電極を形成してもよい。なお、電極23の数は、特に限定されない。
【0023】
例えば、電極21が陰極である場合、バッファ層22aは、電子輸送層としての機能を有する。また、電極23が陽極である場合、バッファ層22cは、正孔輸送層としての機能を有する。
【0024】
隔壁部3は、光電変換層22の側面に接して基板1の一方向に延在するように設けられる。隔壁部3の延在方向は、例えば光電変換層22の塗布方向に平行な方向であることが好ましい。また、光電変換セルの並置方向に対して基板1の平面上に沿って垂直な方向に隔壁部3を延在させてもよい。隔壁部3は、第1の領域1aから第3の領域1cまで延在していてもよい。なお、平行とは、平行方向から±10度ずれた状態(略平行)を含んでいてもよい。
【0025】
図1ないし
図3に示す光電変換装置は、互いに異なる光電変換層22の側面に接するように複数の隔壁部3を具備する。換言すると、隔壁部3は、複数の光電変換層22を分断するように設けられる。例えば、隔壁部3は、隔壁部3aおよび隔壁部3bを有する。隔壁部3aは基板1上に接して設けられ、光電変換層22の対向する一対の側面の一方に接する。隔壁部3bは電極21上に接して設けられ、上記一対の側面の他方に接する。なお、隔壁部3の数は、特に限定されず、必ずしも隔壁部3aおよび隔壁部3bの両方を設けなくてもよい。
【0026】
隔壁部3は、第3の領域1cに設けられた一端と、第1の領域1aまたは第2の領域1bに設けられた他端と、を有することが好ましい。すなわち、隔壁部3の一端を第3の領域1cまで延在させ、他端を第3の領域1cまで延在させず、第1の領域1aまたは第2の領域1bまでしか延在させないことにより、基板1と封止部4との固着面積を大きくすることができるため、基板1と封止部4との接着強度を高めることができる。
【0027】
さらに、隔壁部3は、
図3に示すように、第1の領域1a上に設けられた第1の隔壁部31と、第1の隔壁部31から第2の領域1bまで延在する第2の隔壁部32と、第2の隔壁部32から第3の領域1cまで延在する第3の隔壁部33と、を有する。第2の隔壁部32および第3の隔壁部33は、例えば基板1上に設けられる。なお、必ずしも第3の隔壁部33を設けなくてもよい。
【0028】
図4は第2の隔壁部32の拡大図である。
図4に示すように、第2の隔壁部32は、空隙部320を有する。空隙部320において、封止部4は基板1に固着される。よって、基板1と封止部4との接着強度を高めることができる。なお、第2の隔壁部32は、必ずしも空隙部320を挟んで間欠的に設けられていなくてもよく、例えば貫通孔により空隙部320を形成してもよい。
【0029】
隔壁部3の厚さは、例えば光電変換層22の厚さに応じて適宜設定される。隔壁部3の厚さは、例えば光電変換層22の厚さ以上であることが好ましく、電極21の厚さと光電変換層22の厚さとの和以上であることがより好ましい。また、塗布法を用いて光電変換層22を形成する場合、光電変換層22の材料の塗布層は、光電変換層22よりも体積が大きいことが多いため、隔壁部3の厚さは、光電変換層22の厚さよりも厚いことが好ましく、電極21の厚さと光電変換層22の厚さとの和よりも厚いことがより好ましい。
【0030】
隔壁部3の厚さは、例えば0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。また、隔壁部3の上面の高さは、光電変換層22の上面の高さ以上または光電変換層22の上面の高さよりも高いことが好ましい。これにより、光電変換層22の不要な広がりをより効果的に抑制することができる。
【0031】
延在方向に垂直な方向における隔壁部3の幅は、例えば10μm以上1000μm以下であることが好ましい。幅が10μm未満であると、基板1上に隔壁部3を形成する際の歩留まりが悪くなる。また、幅が1000μmを超えると、光電変換領域の面積が小さくなる。また、延在方向における隔壁部3の長さは、光電変換セルの大きさに応じて光電変換セルよりも長くなるように適宜設定される。
【0032】
隔壁部3は、絶縁性を有することが好ましい。これにより、隔壁部3を介する不要な電流漏れを抑制することができる。例えば、隔壁部3の体積抵抗率は、1×10
10Ω以上であることが好ましい。例えば、厚さ1μmの隔壁部3における1cm
2あたりの電気抵抗を1MΩとし、電極21と電極23との間に1Vの電位差を有するとき、1cm
2あたり1μAオーダーの電流が流れることになる。
【0033】
封止部4は、素子部2を封止するように設けられる。例えば、少なくとも電極21と光電変換層22と電極23との重畳部を封止するように封止部4を設ければよい。
図1ないし
図3に示す光電変換装置において、封止部4は、素子部2を囲むように第2の領域1b上に設けられる。これに限定されず、素子部2を覆うように封止部4を設けてもよい。また、封止部4は、空隙部320において第2の領域1bに接するように設けられる。これにより、封止部4と基板1との接着強度を高めることができる。
【0034】
基板5は、素子部2に重畳するように封止部4上に設けられる。基板5は、例えば対向基板としての機能を有する。なお、基板5に凹部を形成し、凹部に素子部2が位置するように基板5を設けてもよい。また、例えば素子部2を覆うように封止部4を形成する場合、必ずしも基板5を設けなくてもよい。
【0035】
以上のように、本実施形態の光電変換装置は、第1の電極、光電変換層、および第2の電極に加え、光電変換層に沿って基板の第1の領域から少なくとも第2の領域まで延在する隔壁部を有する。
【0036】
光電変換装置における光電変換効率の低下の原因としては、例えば開口率の低下が挙げられる。有機薄膜太陽電池に限定されず、透光性を有する電極を備える太陽電池では、例えば10mm以上15mm以下の幅を有する複数の光電変換セルを直列接続または並列接続で電気的に接続することにより光電変換モジュールを構成する。これは、透光性を有する電極の抵抗値が金属からなる電極の抵抗値よりも高くなりやすいためである。また、一辺が10cm以上20cm以下の基板上において、10以上15以下程度の複数の光電変換セルを直列接続で電気的に接続することにより光電変換モジュールを構成する。
【0037】
複数の光電変換セルを直列接続で電気的に接続する際に、透光性を有する第1の電極から最上層の第2の電極まで配線を設ける必要がある。この配線を設けるスペースを設けるために、発電に寄与しない領域が増え、光電変換装置の開口率が低下する。
【0038】
例えば、CIGSやa−Si太陽電池では、スクライビング技術を用いることにより、配線の通り道を形成する。しかしながら、有機薄膜太陽電池では、材料の光吸収特性や剛性等の違いから、スクライビング技術が有効ではない。そのため、有機薄膜太陽電池において、特に高分子有機材料を用いる場合、各光電変換セルにおける光電変換層が離間するように、光電変換層を構成する膜を成膜する。例えば、光電変換層に有機材料を用いる場合、有機材料を溶媒に溶かし、それを塗布法を用いて塗布することにより、光電変換層を形成することができる。
【0039】
上記塗布法を用いた成膜方法は、例えば蒸着法やスパッタリング法等の成膜方法と比較して、真空装置が不要である点から初期コストを抑制できるという利点を有する。しかしながら、複数の光電変換セルを並べて形成する場合、上記塗布技術を用いた成膜方法では、パターニング精度の観点から光電変換セル同士の間隔を広くしなければならない。その結果、塗布技術で作製することが可能な高分子有機材料を用いた太陽電池モジュールは、光電変換セル同士の間隔を広げる必要があり、開口率が低く、光電変換効率が低くなるという難点を有する。
【0040】
これに対し、本実施形態の光電変換装置では、隔壁部を設けることにより、例えば塗布法を用いて光電変換層を形成する場合、光電変換層の塗布層の広がりが抑えられるため、第1の電極、光電変換層、および第2の電極からなる光電変換セル同士の間隔を狭くすることができる。よって、光電変換領域の面積を大きくし、開口率を高め、単位面積あたりの光電変換効率を高めることができる。
【0041】
複数の光電変換セルの間隔、すなわち一の光電変換セルと他の光電変換セルとの間のスペース(非光電変換部)は、例えば4mm未満、2mm未満、さらには1.2mm未満であることが好ましい。また、光電変換装置の開口率は、例えば75%以上、80%以上、さらには90%以上であることが好ましい。
【0042】
また、本実施形態の光電変換装置では、第2の隔壁部の一部に空隙を設け、当該空隙において基板と封止部とを接する構造にすることにより、基板と封止部との接着強度を高めることができる。
【0043】
次に、
図1ないし
図4に示す光電変換装置の製造方法例について
図5ないし
図14を参照して説明する。
図5ないし
図14は、光電変換装置の製造方法例を説明するための平面模式図である。なお、
図1ないし
図4に示す光電変換装置と共通する部分については、上記の
図1ないし
図4に示す光電変換装置の説明を適宜援用することができる。
【0044】
まず、基板1の第1の領域1a上に電極21を形成する。基板1としては、例えば無アルカリガラス、石英ガラス等の無機材料、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック、高分子フィルム等を用いることができる。プラスチックや高分子フィルムの場合、水分や酸素の透過率が高いのでSiO
2等の無機材料をコーティングした複合材料フィルムが用いられている。
【0045】
基板1は、電極の形成が可能であり、熱や有機溶剤によって変質しにくいことが好ましい。基板1を介して光を入射させる場合、基板1は、透光性を有する。また、これに限定されず、例えばステンレス鋼(SUS)、シリコン基板、金属基板等を用いることができる。このとき、基板1の平面の少なくとも一部は、絶縁表面を有することが好ましい。基板1の厚さは、その他の構成部材を支持するために十分な強度を有するのであれば特に限定されない。
【0046】
電極21としては、例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、フッ素を含む酸化錫(Fluorine−doped Tin Oxide:FTO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(NESA等)等の金属酸化物材料や、金、白金、銀、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、錫等の金属材料を用いることができる。基板1を介して光を入射させる場合、電極21は、透光性を有し、特に、ITOまたはFTOを用いることが好ましい。また、電極材料として、有機系の導電性ポリマーであるポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体等を用いてもよい。電極21は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等により上記材料の膜を成膜することにより形成される。
【0047】
電極21の厚さは、ITOの場合、30nm以上300nm以下であることが好ましい。30nmよりも薄くすると、シート抵抗が高くなり、光電変換効率が低下する原因となる。300nmよりも厚くすると、可撓性が低くなり、応力によりひび割れが起こりやすくなる。電極21のシート抵抗は低いことが好ましく、例えば10Ω/□以下であることが好ましい。電極21は、単層であってもよく、異なる仕事関数の材料で構成される層の積層であってもよい。
【0048】
次に、
図6に示すように、第1の隔壁部31と、第2の隔壁部32と、第3の隔壁部33と、を有する隔壁部3を形成する。隔壁部3の延在方向は、後に形成する光電変換層22の材料の塗布方向に応じて予め設定される。
【0049】
第3の隔壁部33は、光電変換層22の材料を塗布する際の助走部としての機能を有する。第3の隔壁部33は、光電変換層22の材料を塗布する際の上流側、すなわち塗布の始点側に延在することが好ましい。塗布法を用いて光電変換層22を形成する際、特に始点付近において塗布幅がずれやすい。よって、塗布の始点側に第3の隔壁部33を設けることにより、光電変換層3の幅を制御しやすくすることができる。よって、光電変換セル同士の間隔を狭くすることができる。
【0050】
第3の隔壁部33は、例えば2cm以上、10cm以上、さらには15cm以上の長さを有することが好ましい。2cm未満であると、第1の領域1aにおいて光電変換層22の材料の塗布幅がずれた領域が形成されてしまう。また、第3の隔壁部33は、光電変換層22の材料を塗布する際の下流側、すなわち塗布の終点側には延在しないことが好ましい。これにより、隔壁部3における封止部4に重なる領域の面積を最小限に抑えることができるため、基板1と封止部4との接着強度の低下を抑制することができる。
【0051】
隔壁部3としては、例えば、感光性のポリイミド材料等の光硬化樹脂、酸化シリコン等を用いることができる。例えば、塗布法等により上記材料を塗布した後、塗布層の一部をエッチングすることにより隔壁部3を形成することができる。光硬化樹脂を用いる場合、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて隔壁部3を形成することができる。また、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等を用いて隔壁部3を形成してもよい。
【0052】
次に、
図7に示すように、第1の隔壁部31ないし第3の隔壁部33に沿うように、第3の領域1cから第1の領域1aに向かって基板1上に光電変換層22の材料を塗布して光電変換層22を形成する。例えば、まずバッファ層22aの材料を塗布してバッファ層22aを形成する。次に光活性層22bの材料を塗布して光活性層22bを形成する。次に、バッファ層22cの材料を塗布してバッファ層22cを形成する。以上により、光電変換層22を形成することができる。
【0053】
正孔輸送層としては、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホネート))等のポリチオフェン系ポリマー、ポリアニリン、ポリピロール等の有機導電性ポリマーを使用することができる。ポリチオフェン系ポリマーの代表的な製品としては、例えば、スタルク社のCleviosPH500、CleviosPH、CleviosPV P Al 4083、CleviosHIL1.1等が挙げられる。また、正孔輸送層として、酸化モリブテンなどの無機材料を用いてもよい。
【0054】
正孔輸送層は、例えばスピンコート法等の塗布法を用いて形成される。例えば、スピンコート法により正孔輸送層に適用可能な材料からなる所望の厚さの塗布層を形成した後、ホットプレート等で加熱乾燥することにより正孔輸送層を形成することができる。例えば、140〜200℃で数分〜10分間程度加熱乾燥することが好ましい。また、塗布する溶液は、予めフィルターでろ過したものを使用することが望ましい。
【0055】
電子輸送層としては、例えば金属酸化物を用いることができる。金属酸化物としては、例えばゾルゲル法を用いてチタンアルコキシドを加水分解して得られるアモルファスの酸化チタンなどが挙げられる。電子輸送層は、例えばスピンコート法等の塗布法を用いて形成される。
【0056】
電子輸送層の材料として酸化チタンを使用する場合、5nm以上20nm以下の厚さにすることが好ましい。厚さが5nm未満の場合、ホールブロック効果が減少してしまうため、発生したエキシトンが電子とホールに解離する前に失活してしまい、効率的に電流を取り出すことができない。厚さが20nmを超える場合、抵抗が大きくなり、発生した電流を制限してしまうため光電変換効率が低下する場合がある。塗布溶液は、あらかじめフィルターで濾過したものを使用することが望ましい。規定の膜厚に塗布した後、ホットプレートなどを用いて加熱乾燥する。50℃以上100℃以下の温度、2分以上10分以下の時間で、空気中で加水分解を促進しながら加熱乾燥する。また、電子輸送層としては、金属カルシウム等を用いてもよい。
【0057】
光活性層22bとしては、例えばバルクへテロ接合型の光活性層を用いることができる。バルクヘテロ接合型の光活性層は、光活性層中で混合されたp型半導体とn型半導体とのミクロ層分離構造を有する。光電変換装置では、混合されたp型半導体とn型半導体が光活性層22b内でナノオーダーのサイズのpn接合を形成し、光が入射することにより接合面で生じる光電荷分離を利用して電流を得ることができる。p型半導体およびn型半導体の少なくとも一方は、有機半導体であってよい。
【0058】
p型半導体は、電子供与性の性質を有する材料で構成される。p型半導体としては、例えばポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体等を用いることができる。また、これらの共重合体を使用してもよく、例えば、チオフェン−フルオレン共重合体、フェニレンエチニレン−フェニレンビニレン共重合体等が用いてもよい。
【0059】
p型半導体としては、例えばπ共役を有する導電性高分子であるポリチオフェンおよびその誘導体を用いることができる。ポリチオフェンおよびその誘導体は、優れた立体規則性を確保することができ、溶媒への溶解性が比較的高い。ポリチオフェンおよびその誘導体は、チオフェン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
【0060】
ポリチオフェンおよびその誘導体の具体例としては、ポリ3−メチルチオフェン、ポリ3−ブチルチオフェン、ポリ3−ヘキシルチオフェン、ポリ3−オクチルチオフェン、ポリ3−デシルチオフェン、ポリ3−ドデシルチオフェン等のポリアルキルチオフェン;ポリ3−フェニルチオフェン、ポリ3−(p−アルキルフェニルチオフェン)等のポリアリールチオフェン;ポリ3−ブチルイソチオナフテン、ポリ3−ヘキシルイソチオナフテン、ポリ3−オクチルイソチオナフテン、ポリ3−デシルイソチオナフテン等のポリアルキルイソチオナフテン;ポリエチレンジオキシチオフェン等が挙げられる。
【0061】
また、カルバゾール、ベンゾチアジアゾールおよびチオフェンからなる共重合体であるPCDTBT(ポリ[N−9”−ヘプタ−デカニル−2,7−カルバゾール−アルト−5,5−(4’,7’−ジ−2−チエニル−2’,1’,3’−ベンゾチアジアゾール)])などの誘導体を用いてもよい。上記誘導体を用いることにより、光電変換効率を高めることができる。
【0062】
これらの導電性高分子は、溶媒に溶解させた溶液を塗布することにより成膜される。従って、安価な設備を用いて低コストでかつ大面積の光電変換装置を製造することができる。
【0063】
n型半導体は、電子受容性の性質を有する材料で構成される。n型半導体としては、例えばフラーレンおよびその誘導体が好適に使用される。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格を有する誘導体であれば特に限定されない。例えば、C60、C70、C76、C78、C84等を基本骨格として構成される誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、フラーレン骨格における炭素原子が任意の官能基で修飾されていてもよく、この官能基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。フラーレン誘導体には、フラーレン結合ポリマーも含まれる。溶剤に親和性の高い官能基を有し、溶媒への可溶性が高いフラーレン誘導体が好ましい。
【0064】
フラーレン誘導体における官能基としては、例えば、水素原子;水酸基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、チエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基等が挙げられる。具体的には、C60H36、C70H36等の水素化フラーレン、C60、C70等のオキサイドフラーレン、フラーレン金属錯体等が挙げられる。上述した中でも、フラーレン誘導体として、60PCBM([6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル)または70PCBM([6,6]−フェニルC71酪酸メチルエステル)を使用することが特に好ましい。
【0065】
未修飾のフラーレンを使用する場合、C70を使用することが好ましい。フラーレンC70は、光キャリアの発生効率が高く、光電変換装置に使用するのに適している。
【0066】
光活性層におけるn型半導体とp型半導体の混合比率(n:p)は、n型半導体の含有率は、p型半導体がP3AT系の場合、およそ1:1であることが好ましい。またp型半導体がPCDTBT系の場合、およそ4:1であることが好ましい。
【0067】
有機半導体を塗布するためには、溶媒に溶解する必要がある。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン、メシチレン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられる。特に、ハロゲン系の芳香族溶剤が好ましい。これらの溶剤を単独、もしくは混合して使用することが可能である。
【0068】
光電変換層13の材料を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、スプレー法、スクリーン印刷、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、グラビア・オフセット印刷、ディスペンサー塗布、ノズルコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法等が挙げられ、これらの塗布法を単独で、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0069】
図8は、塗布装置を用いた塗布法により光電変換層22を形成する場合の模式図である。
図8には、材料吐出用ヘッド60と、基板1および隔壁部3とを示す。材料吐出用ヘッド60は、例えば塗布装置に設けられる。材料吐出用ヘッド60は、塗布材料が供給されるスリット61を有する。なお、材料吐出用ヘッド60をアプリケータともいう。塗布装置としては、ダイコーター等を用いることができる。このとき、材料吐出用ヘッド60をダイヘッドともいい、スリット61をダイスリットともいう。
【0070】
材料吐出用ヘッド60を用いて光電変換層22の材料を塗布する場合、材料吐出用ヘッド60と基板1との間にスリット61を介して光電変換層22の材料を供給し、光電変換層22の材料からなる液溜まり領域70を形成する。液溜まり領域70は、曲面状、いわゆるメニスカス形状の側面71を有する。このとき、光電変換層22の塗布方向における液溜まり領域70の幅は、隔壁部3の延在方向における空隙部320の幅よりも広いことが好ましい。
【0071】
また、隔壁部3の延在方向における空隙部320の周期は1mm以上2mm以下であることが好ましく、光電変換層22の塗布方向における液溜まり領域70の幅は2mm以上4mm以下であることが好ましい。また、上記幅を有する液溜まり領域70に重畳する空隙部320の数を例えば1以上2以下にすることにより、塗布幅のずれを抑制することができる。
【0072】
その後、材料吐出用ヘッド60および基板1の少なくとも一方を塗布方向に沿って移動させながら光電変換層22の材料を塗布して光電変換層22を形成する。
【0073】
次に、
図9に示すように、光電変換層22の上面に接し、かつ光電変換層22を挟んで電極21に重畳するように電極23を形成する。
【0074】
電極23としては、例えば電極21に適用可能な金属または金属酸化物等を用いることができる。基板5を介して光を入射する場合、電極23は透光性を有する。また、電極23が電子輸送層に接する場合、電極23として仕事関数が低い材料を用いることが好ましい。仕事関数の低い材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。具体的には、Li、In、Al、Ca、Mg、Sm、Tb、Yb、Zr、Na、K、Rb、Cs、Ba、およびこれらの合金を挙げることができる。
【0075】
電極23は、単層であってもよく、異なる仕事関数の材料で構成される複数の層の積層であってもよい。また、仕事関数が低い材料のうちの1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫などとの合金でもよい。合金の例としては、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0076】
電極23の厚さは、例えば1nm以上500nm以下、好ましくは10nm以上300nm以下であることが好ましい。1nmよりも薄い場合、電気抵抗が高くなり、発生した電荷が取り出しにくくなる。500nmよりも厚い場合、電極23の成膜に長時間を要するため材料温度が上昇し、光電変換層22にダメージを与え、性能が劣化してしまう。さらに、材料を大量に使用するため、成膜装置を占有する時間が長くなり、コストアップに繋がる。
【0077】
電極23は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法、塗布法等で上記導電性を有する材料を成膜することにより形成される。また、光電変換層22に適用可能な塗布法を用いて電極23を形成してもよい。
【0078】
次に、
図10に示すように、素子部2を封止し、かつ空隙部320において基板1に接するように、封止部4を形成する。
【0079】
封止部4としては、例えばガラスフリットや熱硬化性や光硬化性の樹脂等を用いることができる。また、空隙部320に樹脂等を充填しつつ、封止部4を形成することにより、空隙部320において、基板1と封止部4とを固着することができる。封止部4を設けることにより、不純物である酸素や水分と光電変換層22との接触を抑制することができる。
【0080】
空隙部320を設けずに隔壁部3を形成した場合、封止部4が基板1から剥がれやすくなる。これは隔壁部3と封止部4との接着強度が基板1と封止部4との接着強度よりも低いためである。例えば、光電変換装置に応力が与えられた場合、封止部4が隔壁部3を挟んで基板1から剥がれやすくなる。このため、隔壁部3に空隙部320を設けることにより、基板1と封止部4との接着強度を高めることができる。また、同様な理由により、光電変換層を塗布する際の下流側に隔壁部3を延在させないことにより、基板1と封止部4との接着強度をさらに高めることができる。
【0081】
次に、
図11に示すように、素子部2を覆うように封止部4上に基板5を貼り合わせる。このとき、少なくとも第1の電極21と光電変換層22と第2の電極との重畳部が封止されることが好ましい。基板5としては、例えば基板1に適用可能な材料を用いることができる。なお、基板5を介して光を入射させる場合、基板5は透光性を有することが好ましい。
【0082】
なお、
図12に示すように、素子部2を封止した後、封止部4の外側に位置する光電変換層22の一部および第3の隔壁部33の一部を含むように基板1の一部を切断してもよい。これにより、光電変換装置のサイズを小さくすることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態における光電変換装置の製造方法では、少なくとも一端が光電変換領域から周辺領域まで延在する隔壁部を形成することにより、少なくとも光電変換層を塗布する際の助走部を周辺領域に設ける。その後、周辺領域から助走部を含む隔壁部に沿って光電変換層の材料を塗布することにより、塗布幅が制御されるため、光電変換セル同士の間隔を狭くすることができる。
【0084】
本実施形態の光電変換装置の製造方法例は、
図5ないし
図12を参照して説明した製造方法例に限定されない。
図13および
図14は、光電変換装置の製造方法例を示す平面模式図である。なお、
図5ないし
図12を参照して説明した製造方法例と共通する部分は、上記説明を適宜援用することができる。
【0085】
上記工程と同様に、電極23まで形成した後、
図13に示すように第2の隔壁部32の少なくとも一部に沿って光電変換層22の一部を除去し、基板1の一部を露出させることにより、光電変換層22の一部に空隙部220を形成する。例えば、光電変換層22の材料を塗布後に乾燥させて機械的に剥がす、または粘着テープ等で剥がすことにより空隙部220を形成することができる。
【0086】
その後、
図14に示すように、空隙部220において基板1に接するように封止部4を形成する。その後、上記工程と同様に封止部4に基板5を貼り合わせる。上記工程により、基板1と封止部4との接触面積を増やすことができるため、基板1と封止部4との接着強度を高めることができる。
【0087】
(第2の実施形態)
図15は、横1m×縦1.2mの光電変換パネルの例を示す模式図である。
図15に示す光電変換パネルは、1つあたり20〜30cm角の縦4×横3の合計12個の光電変換モジュール100を具備する。光電変換モジュール100は、第1の実施形態の光電変換装置を複数具備する。複数の光電変換モジュールは、互いに直列接続または並列接続で電気的に接続されていてもよい。
【0088】
図15に示すように、第1の実施形態における光電変換装置を用いて光電変換モジュールを構成することができ、複数の光電変換モジュールを用いて光電変換パネルを構成することができる。上記光電変換モジュールおよび光電変換パネルは、例えば単位面積あたりの光電変換効率が高いため、例えば自動車や住宅用の太陽電池パネルとしても好適である。
【実施例】
【0089】
実施例として、上記実施形態における第1の隔壁部と、第2の隔壁部と、第3の隔壁部とを有する隔壁部を備える光電変換モジュールと、比較例として隔壁部を備えていない光電変換モジュールと、をそれぞれ作製した。実施例の光電変換モジュールにおいて、隔壁部の材料として、感光性ポリイミドを用い、隔壁部の延在方向に垂直な方向の幅を40μm以上400μm以下とし、隔壁部の延在方向における空隙の幅を1mmとし、隔壁部の厚さを1μmとし、第3の隔壁部の長さを3cmとした。また、金属酸化物からなる電子輸送層と、ポリチオフェン系P型材料とフラーレン誘導体を混合した光活性層と、ポリチオフェン系ポリマー材料からなる正孔輸送層とを順に形成することにより、厚さ0.2μmの光電変換層を形成した。
【0090】
隔壁部を備えていない比較例の光電変換モジュールでは、4mmまでしか光電変換セルの間隔を狭くすることができず、開口率も72%と低かった。これに対し、隔壁部を備える実施例の光電変換モジュールでは、1.2mmまで光電変換セルの間隔を狭くすることができ、開口率を91%まで高くすることができた。このことから、隔壁部を設けることにより、光電変換セルを集積化され、光電変換領域の面積が大きくなり、開口率を高めることができることがわかる。