特許第6034435号(P6034435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034435
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】免疫グロブリン配列を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20161121BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20161121BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20161121BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   !C12N15/00 A
   !C12P21/08
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】205
(21)【出願番号】特願2015-76148(P2015-76148)
(22)【出願日】2015年4月2日
(62)【分割の表示】特願2011-541503(P2011-541503)の分割
【原出願日】2009年12月21日
(65)【公開番号】特開2015-155429(P2015-155429A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2015年4月30日
(31)【優先権主張番号】61/203,188
(32)【優先日】2008年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505166225
【氏名又は名称】アブリンクス エン.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ラーエマンス,トーン
(72)【発明者】
【氏名】ストルテレルス,カテリネ
(72)【発明者】
【氏名】ノルテ,フリードリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】アスンカオ,ジョアナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ロンバエイ,フィリップ
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/043145(WO,A1)
【文献】 Cellular Immunology,2005年,Vol.236,p.72-77
【文献】 THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2001年,Vol.276, No.26,p.23262-23267
【文献】 Blood,1998年,Vol.92, No.10,p.3521-3528
【文献】 The FASEB Journal,2007年,Vol.21,p.3490-3498
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P2X7と特異的に結合できるナノボディであって、
該ナノボディは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とからなり、
該相補性決定領域は、
CDR1が配列番号233CDR2が配列番号397、CDR3が配列番号561と、
CDR1が配列番号244、CDR2が配列番号408、CDR3が配列番号572と、
CDR1が配列番号245、CDR2が配列番号409、CDR3が配列番号573と、
CDR1が配列番号254、CDR2が配列番号418、CDR3が配列番号582と、
CDR1が配列番号255、CDR2が配列番号419、CDR3が配列番号583と、
CDR1が配列番号263、CDR2が配列番号427、CDR3が配列番号591と、
CDR1が配列番号274、CDR2が配列番号438、CDR3が配列番号602と、
CDR1が配列番号276、CDR2が配列番号440、CDR3が配列番号604と、
CDR1が配列番号279、CDR2が配列番号443、CDR3が配列番号607と、
CDR1が配列番号281、CDR2が配列番号445、CDR3が配列番号609とからなる群から選択される、
ナノボディ
【請求項2】
請求項1記載のナノボディであって、
該ナノボディは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とからなり、
該相補性決定領域は、
CDR1が配列番号279CDR2が配列番号443、CDR3が配列番号607と、
CDR1が配列番号274、CDR2が配列番号438、CDR3が配列番号602と、
CDR1が配列番号233、CDR2が配列番号397、CDR3が配列番号561とからなる群から選択される、
請求項1記載のナノボディ
【請求項3】
請求項1又は2記載のナノボディであって、
該ナノボディは、P2X7と特異的に結合でき、
ナノボディは、配列番号732、743、744、753、754、762、773、775、778及び780の少なくとも1つのナノボディと、少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する、
請求項1又は2記載のナノボディ
【請求項4】
請求項1又は2記載のナノボディであって、
該ナノボディはP2X7と特異的に結合でき、
該ナノボディは、配列番号732、773及び778の少なくとも1つのナノボディと、少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する、
請求項1又は2記載のナノボディ。
【請求項5】
請求項1記載のナノボディであって
バットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ又は複数が表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
請求項1記載のナノボディ
【請求項6】
請求項記載のナノボディであって、
前記ナノボディは、
配列番号732、743、744、753、754、762、773、775、778及び780からなる群から選択される、
P2X7と特異的に結合できる、請求項4記載のナノボディ
【請求項7】
配列番号732、773及び778からなる群から選択される、
P2X7と特異的に結合できる請求項4記載のナノボディ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか記載のナノボディを含む、ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれか記載のナノボディの少なくとも2つを含むポリペプチド。
【請求項10】
配列番号789〜791の1個以上と少なくとも9%のアミノ酸同一性を有する、請求項記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号790、789及び791からなる群から選択される、請求項8ないし10のいずれか記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞関連抗原、より具体的には膜に固定された抗原に対する免疫グロブリン配列を生成する方法に関する。本発明は、本発明の方法により取得可能な免疫グロブリン配列も提供する。具体的には本発明は、DNAワクチン接種の使用による免疫グロブリン配列の生成に関する。より具体的には本発明は、DNAワクチン接種による、好ましくは細胞関連抗原、特にGPCR及びイオンチャネルを含む多重膜貫通ドメインを有する抗原に指向性を有する免疫グロブリン配列のラクダ科動物における生成に関する。さらには本発明は、細胞関連抗原、より具体的には例えばGPCR及びイオンチャネル等の膜に固定された抗原、より好ましくはイオンチャネルに対する上記免疫グロブリン配列に関する。
【0002】
細胞関連抗原、より具体的には単一又は複数の膜貫通ドメインを有する細胞関連抗原は、その未変性の(native)立体構造において精製するのが困難である。in vivoでの標的の機能を変えることができる未変性エピトープに対する抗体(又はナノボディ等の抗体断片)を同定するためには、ラクダ科動物に標的抗原をその未変性の立体構造で投与することが極めて重要である(非特許文献1)。これらの細胞関連抗原の精製された未変性タンパク質がない場合、ほとんどの適用される免疫付与戦略は、選択した抗原を機能的に発現する全細胞の一定間隔での反復注射からなる。かかる免疫付与戦略が首尾よく実行されている(すなわちin vivoで成熟した中和ナノボディの同定をもたらす)標的の例は特許文献1及び特許文献2)に記載されている。しかしながら、標的発現細胞の反復ブースター(booster)注射では多くの場合、特に標的の発現レベルが低く宿主細胞バックグラウンドが高度に免疫原性である場合には、標的特異的な免疫応答は弱くなるか又は検出不能となる。ラマに対する免疫原性が低いラクダ科動物起源の細胞株を使用することにより、標的に対する体液性応答にさらに焦点を当てることができる。それにもかかわらず(擬似(quasi))自己表面マーカーの反復注射であっても、ラクダ科動物の細胞株の表面マーカーに対する応答が起こる。
【0003】
GPCR、イオンチャネル又は任意の他のタイプの多重貫通細胞表面マーカーに対する(中和)選択的抗体の同定は、i)ほとんどの場合で、未変性タンパク質は免疫付与又はその後の抗体同定に利用可能ではなく、ii)多重貫通因子(multispanners)が多くの場合、低い免疫原性を示し(細胞外表面に曝されるアミノ酸残基の数がほとんどの単一の膜貫通受容体に比べて限定されるため)、iii)多重貫通表面分子が多くの場合、低い密度で発現するため、困難である(非特許文献2)。
【背景技術】
【0004】
免疫グロブリン配列、例えばそれらに由来する抗体及び抗原結合断片は、調査及び治療用途においてそれぞれの抗原を特異的に標的化するのに広く用いられている。通常、抗体の生成は、実験動物の免疫付与、ハイブリドーマを作出するための抗体産生細胞の融合、及び所望の特異性に関するスクリーニングを含む。代替的に、抗体をナイーブ(naive)ライブラリ又は合成ライブラリのスクリーニングにより、例えばファージディスプレイにより生成することができる。
【0005】
免疫グロブリン配列、例えばナノボディの生成は、様々な刊行物において広範に説明されており、その中でも特許文献3、非特許文献3及び非特許文献4を例として挙げることができる。これらの方法では、上記標的抗原に対する免疫応答を誘導するためにラクダ科動物に標的抗原を免疫付与する。標的抗原と結合するナノボディに関して、上記免疫付与により得られるナノボディのレパートリーをさらにスクリーニングする。
【0006】
これらの例では、抗体の生成には、免疫付与及び/又はスクリーニングのために精製抗原が必要となる。抗原を天然の供給源から、又は組換え体産生の過程で精製することができる。
【0007】
有望な治療標的の重要なクラスは、細胞関連抗原、例えば膜貫通抗原、特に多重膜貫通ドメインを有する膜貫通抗原である。しかしながら細胞関連抗原、特に膜結合抗原は、細胞膜内に包埋されているか又は細胞膜に固定されているため、その天然の立体構造において得るのが困難である。しかしながら、in vivoで存在する、その天然の立体構造で存在するエピトープ、すなわち立体構造エピトープに対する免疫グロブリン配列を得るためには、正しい立体構造で標的抗原を免疫付与することが極めて重要である。かかる立体構造エピトープは、薬学的に活性のある免疫グロブリン配列を作出するのに最も重要である。例えば、イオンチャネルの孔領域と特異的に相互作用する免疫グロブリン配列はその伝導性に影響を与え、それにより薬理学的効果がもたらされる。
【0008】
免疫付与及び/又は免疫グロブリン配列に関するスクリーニングを、かかる抗原のペプチド断片を用いて行うことができる。しかしながら、かかるアプローチは、短い合成ペプチドでは立体構造依存性エピトープを再産生することができないため、かかるエピトープに対する抗体をもたらさない。
【0009】
そのため、これらの細胞関連抗原に関して、抗原を保有する全細胞による免疫付与、及びその後の細胞関連抗原と結合するナノボディに関するこのように誘導されたナノボディのレパートリーのスクリーニングは、任意のものである(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献4、特許文献5、特許文献6で行われたように)。しかしながら、かかる細胞が多くの抗原を発現し、これにより主として対象ではない抗原に対する抗体応答が生じる。したがって、このアプローチにより獲得可能な抗体応答は、低い特異性、特に生成する全ての抗体中における対象となる抗体の発生頻度が非常に低いことを特徴とする。そのためこのアプローチは、対象となる標的抗原に対する抗体の効率的な生成を妨げる。
【0010】
したがって従来技術では、立体構造エピトープ、特に膜関連抗原の立体構造エピトープに対する好適な幅の特異的な抗体応答を生じる満足のいく方法は提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第05/044858号
【特許文献2】国際公開第07/042289号
【特許文献3】国際公開第94/04678号
【特許文献4】国際公開第2008/074839号
【特許文献5】国際公開第2009/068625号
【特許文献6】国際公開第2009/138519号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Dormitz et al. (2008). Trends in Biotechnology 26: 659-667
【非特許文献2】Michel et al. (2009).Naunyn-Schmied Archives Pharmacology 379:385-388
【非特許文献3】Hamers-Casterman etal. 1993
【非特許文献4】Muyldermans et al.2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、当該技術分野のこれらの欠点を克服することである。特に本発明の目的は、立体構造エピトープを示す細胞関連抗原のような複雑な抗原に対する免疫グロブリン配列を作出する方法を提供することである。
【0014】
上述の課題が本発明により克服される。遺伝子ワクチン接種が、その天然の立体構造の立体構造エピトープに対して、すなわち細胞関連抗原に対して良好な特異性及び許容可能な幅の抗体応答をもたらし得ることが見出されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下のことに関する:
細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を生成する方法であって、
a)非ヒト動物に、上記細胞関連抗原、又は上記細胞関連抗原のドメイン若しくは特定部分をコードする核酸を遺伝子ワクチン接種する工程、並びに
b)任意で、細胞関連抗原を発現する天然細胞若しくはトランスフェクト細胞を含む細胞、細胞由来の膜抽出物、豊富な抗原を内包する小胞若しくは任意の他の膜誘導体、リポソーム、又は細胞関連抗原を発現するウイルス粒子から選択される天然の立体構造で上記抗原を動物に追加免疫する(boosting:ブーストする)工程、
c)上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関して、上記非ヒト動物に由来する免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程、
を含む、方法。本発明の特定の実施の形態では、上記細胞関連抗原は、膜貫通抗原、多重貫通ドメインを有する膜貫通抗原、例えばGPCR又はイオンチャネルから選択される。本発明によれば、上記非ヒト動物は、脊椎動物、サメ、哺乳動物、トカゲ、ラクダ科動物、ラマ、好ましくはラクダ科動物及びラマから選択され得る。
【0016】
本発明の1つの実施の形態において、免疫グロブリン配列は、軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)、又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)であり、より具体的には免疫グロブリン配列は、従来の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0017】
本発明によれば、免疫グロブリン配列は、ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むが、これに限定されない)であってもよく、好ましくはナノボディである。
【0018】
本発明によれば、ワクチン接種を、無針ジェット注射により、バリスティック法(ballistic method)により、タトゥーのような針による注射(needle-mediatedinjections)により、パッチによる皮膚上へのDNAの局所適用により、又は任意のこれらの投与方法、その後のin vivoエレクトロポレーションにより行うことができ、さらにDNAの皮内投与、筋肉内投与又は皮下投与により行われるワクチン接種を含む。
【0019】
免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリを、上記非ヒト哺乳動物の血液から得ることができる。
【0020】
本発明では、上記細胞関連抗原を、その未変性の立体構造の抗原の発現を可能にする任意の細胞バックグラウンドで発現させることができる。かかる細胞バックグラウンドの例は、Cho、Cos7、Hek293、又はラクダ科動物起源の細胞である。好ましくは、上記細胞関連抗原は、CXCR7、CXCR4及びP2X7から選択される抗原を含むが、これらに限定されない膜貫通抗原である。
【0021】
免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリを細胞又はウイルスのセット、コレクション又はサンプルで発現させることができ、細胞又はウイルスの上記セット、コレクション又はサンプルを上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を発現する細胞又はウイルスに関してスクリーニングし、より具体的には上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列を細胞又はウイルスから精製及び/又は単離した後、上記免疫グロブリン配列を発現させることができる。
【0022】
本発明によれば、免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリを核酸配列のセット、コレクション又はライブラリによりコードすることができ、核酸配列の上記セット、コレクション又はライブラリを上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列に関してスクリーニングし、より具体的には上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列を精製及び/又は単離した後、上記免疫グロブリン配列を発現させることができる。
【0023】
本発明によれば、上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を、精製及び/又は単離することができる。
【0024】
本発明は、本明細書に記載の方法により取得可能な免疫グロブリン、及び上記免疫グロブリン配列を含む組成物に、より具体的にはイオンチャネル及びGPCRに指向性を有する(本明細書で規定のように)免疫グロブリン配列にも関する。
【0025】
特に本発明は、1つ又は複数のこのような免疫グロブリン配列を含むか又はこれから本質的になる、イオンチャネルに指向性を有する(本明細書で規定のように)免疫グロブリン配列に、並びに化合物又は構築物、特にタンパク質及びポリペプチド(それぞれ、本明細書で「本発明の免疫グロブリン配列」、「本発明の化合物」及び「本発明のポリペプチド」とも称される)に関する。本発明は、このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドをコードする核酸(本明細書で「本発明の核酸」又は「本発明のヌクレオチド配列」とも称される)に;このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドを調製する方法に;このような免疫グロブリン配列若しくはポリペプチドを発現する又は発現することが可能である宿主細胞に;このような免疫グロブリン配列、ポリペプチド、核酸及び/又は宿主細胞を含む組成物、特に薬学的組成物に;並びに特に予防目的、治療目的又は診断目的、例えば本明細書で言及される予防目的、治療目的又は診断目的のための、このような免疫グロブリン配列若しくはポリペプチド、核酸、宿主細胞及び/又は組成物の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1.1A】PigJet(パネルB)又はタトゥー法(パネルC)による遺伝子ワクチン接種後のラマにおける体液性免疫応答の動態。血清は400倍希釈で試験した。矢印はジェット免疫付与の瞬間を示し、タトゥー短間隔計画を星印によって示す。
図1.1B】PigJet(パネルB)又はタトゥー法(パネルC)による遺伝子ワクチン接種後のラマにおける体液性免疫応答の動態。血清は400倍希釈で試験した。矢印はジェット免疫付与の瞬間を示し、タトゥー短間隔計画を星印によって示す。
図1.1C】PigJet(パネルB)又はタトゥー法(パネルC)による遺伝子ワクチン接種後のラマにおける体液性免疫応答の動態。血清は400倍希釈で試験した。矢印はジェット免疫付与の瞬間を示し、タトゥー短間隔計画を星印によって示す。
図1.2】単回HBsAgタンパク質追加免疫後にDNAワクチン接種したラマにおいて観察された強い二次血清応答。
図1.3】タンパク質免疫付与(ラマ32及びラマ33)に対する、「DNA」初回刺激−「タンパク質」追加免疫プロトコル(ラマ124、ラマ160、ラマ117、ラマ203)によって得られた体液性免疫応答。
図1.4】HBsAg(ラマ124)に対する重鎖抗体(IgG2及びIgG3)媒介性抗体応答。
図2.1】pVAX−hCXCR4トランスフェクション後のHEK293細胞、及びpcDNA3.1−hCXCR4トランスフェクション後のラクダ科動物細胞のCXCR4特異的染色。
図2.2A】遺伝子免疫付与によるラマにおけるCXCR4特異的血清変換。パネルA:「DNA」初回刺激−「細胞」追加免疫プロトコル;パネルB:「細胞」追加免疫プロトコルのみ。
図2.2B】遺伝子免疫付与によるラマにおけるCXCR4特異的血清変換。パネルA:「DNA」初回刺激−「細胞」追加免疫プロトコル;パネルB:「細胞」追加免疫プロトコルのみ。
図2.3】「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー又は「細胞」レパートリーからのhCXCR4特異的ナノボディ発見効率(ライブラリの数)。
図2.4】遺伝子免疫付与(DNA)及び単回細胞追加免疫(PB)後に得られた相補的な標的特異的ナノボディレパートリー。レパートリー特異的ナノボディファミリーの数が示される。
図2.5A】遺伝子免疫付与の後(「DNA」)、続く単回細胞追加免疫の後(「PB」)又は完全細胞免疫付与の後(「細胞」)に同定された、一次スクリーニング後のCXCR4特異的ナノボディレパートリーのFACS(パネルA)又はELISA(パネルB)によって求められた平均結合効力(個々のナノボディの数)。
図2.5B】遺伝子免疫付与の後(「DNA」)、続く単回細胞追加免疫の後(「PB」)又は完全細胞免疫付与の後(「細胞」)に同定された、一次スクリーニング後のCXCR4特異的ナノボディレパートリーのFACS(パネルA)又はELISA(パネルB)によって求められた平均結合効力(個々のナノボディの数)。
図3.1】遺伝子免疫付与によるラマにおけるmP2X7特異的血清変換。
図3.2】ヒトmP2X7及びマウスmP2X7の配列アライメント。
図3.3】遺伝子カクテル免疫付与によるラマにおけるmP2X7特異的血清変換。
図3.4A】予め吸着させた免疫血清は遺伝子免疫付与後にmP2X7特異的重鎖抗体を含有する。パネルA:抗ラマIgG−1;パネルB:抗ラマIgG−2/3。
図3.4B】予め吸着させた免疫血清は遺伝子免疫付与後にmP2X7特異的重鎖抗体を含有する。パネルA:抗ラマIgG−1;パネルB:抗ラマIgG−2/3。
図3.5】「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー又は「細胞」レパートリーからのmP2X7特異的ナノボディ発見効率(ライブラリの数)。
図3.6】mP2X7に対する一次スクリーニング後に同定されたナノボディの配列多様性。DNA:DNA免疫付与;PB:DNA免疫付与、その後ポスト追加免疫(post boost:ポストブースト)。
図3.7】mP2X7発現Hek293細胞及び対照のWT Hek293細胞との結合について抗Myc抗体とのプレインキュベーションを行った、及び行っていないクローン2C4及びクローン5A1のペリプラズム抽出物の代表例。
図3.8】mP2X7−Cho細胞との結合についての、24個の異なるファミリーに由来するナノボディの滴定曲線。
図3.9】mP2X7を発現するYac−1細胞に対するナノボディによるリガンド誘導性CD62Lシェディング(shedding)の用量依存的阻害。
図3.10A】固定濃度のナノボディ(2μM)でのmP2X7媒介性CD62L細胞外ドメインシェディングにおけるヌクレオチドの滴定。パネルA/パネルB:ナノボディ14D5、13G9、7H6、13B5、ナノボディなし(no nb)、Art2.2ナノボディ;パネルC/パネルD:4B4、7D6、13A7、8G11、8F5、8G12、ナノボディなし、無関連ナノボディ、Art2.2ナノボディ。
図3.10C】固定濃度のナノボディ(2μM)でのmP2X7媒介性CD62L細胞外ドメインシェディングにおけるヌクレオチドの滴定。パネルA/パネルB:ナノボディ14D5、13G9、7H6、13B5、ナノボディなし(no nb)、Art2.2ナノボディ;パネルC/パネルD:4B4、7D6、13A7、8G11、8F5、8G12、ナノボディなし、無関連ナノボディ、Art2.2ナノボディ。
図3.11A】13A7(細胞)、8G11(PB)及び14D5(DNA)の二価ナノボディは、mP2X7機能の遮断又は増強において効力の増強を示す。パネルA/パネルB:ナノボディ又はナノボディ構築物:8G11、13A7−35GS−13A7、13A7、8G11−35GS−8G11、無関連ナノボディ;パネルC/パネルD:ナノボディ又はナノボディ構築物:14D5、14D5−35GS−14D5、無関連ナノボディ。
図3.11C】13A7(細胞)、8G11(PB)及び14D5(DNA)の二価ナノボディは、mP2X7機能の遮断又は増強において効力の増強を示す。パネルA/パネルB:ナノボディ又はナノボディ構築物:8G11、13A7−35GS−13A7、13A7、8G11−35GS−8G11、無関連ナノボディ;パネルC/パネルD:ナノボディ又はナノボディ構築物:14D5、14D5−35GS−14D5、無関連ナノボディ。
図3.12】遺伝子免疫付与の後(「DNA」)、続く単回細胞追加免疫の後(「PB」)又は完全細胞免疫付与の後(「細胞」)に同定された、mP2X7特異的ナノボディレパートリーのELISAにより求められた平均結合効力(特有のナノボディの数)。
図3.13A】ヒト生殖細胞系列配列VH3−23/JH5に対する、84個の非冗長mP2X7選択性ナノボディの配列アライメント。
図3.13B】ヒト生殖細胞系列配列VH3−23/JH5に対する、84個の非冗長mP2X7選択性ナノボディの配列アライメント。
図4.1】遺伝子銃遺伝子免疫付与によるラマにおけるCXCR7特異的血清変換。白色又は黒色のバーは、CXCR7トランスフェクト又は非トランスフェクトHEK293 WT細胞に対して得られたMCF値を表す。
図4.2】「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー又は「細胞」レパートリーからのCXCR7特異的ナノボディ発見効率(ライブラリの数)。
図4.3】遺伝子免疫付与(DNA)及び単回細胞追加免疫(PB)後に得られた相補的な標的特異的ナノボディレパートリー。レパートリー特異的ナノボディファミリーの数が示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、添付の特許請求の範囲の主題を包含するが、これに限定されない。
【0028】
A)定義
特に他に指示又は規定がなければ、使用される全ての用語は、当業者にとって明らかな、当該技術分野における通常の意味を有する。例えば標準的なハンドブック(例えばSambrook et al, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual"(2nd.Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring HarborLaboratory Press(1989)、F.Ausubel et al, eds., "Current protocols in molecular biology", GreenPublishing and Wiley Interscience, New York(1987)、Lewin, "Genes II", John Wiley & Sons, New York, N.Y.,(1985)、Old et al., "Principles of GeneManipulation: An Introduction to Genetic Engineering", 2nd edition,University of California Press, Berkeley, CA(1981)、Roitt et al., "Immunology"(6th. Ed.), Mosby/Elsevier, Edinburgh(2001)、Roitt et al., Roitt's Essential Immunology, 10th Ed.Blackwell Publishing, UK(2001)、及びJaneway et al., "Immunobiology"(6thEd.), Garland Science Publishing/Churchill Livingstone,New York(2005))、並びに本明細書で言及される包括的な背景技術を参照する。
【0029】
特に他に指示がなければ、「免疫グロブリン配列」という用語は、本明細書で重鎖抗体を表すのに使用されるのか又は通常の四本鎖抗体を表すのに使用されるかに関係なく、全長抗体、その個々の鎖、及びその全ての部分、ドメイン又は断片(これらに限定されないが、それぞれVHHドメイン又はV/Vドメイン等の抗原結合ドメイン又は断片を含む)の両方を含む一般的な用語として使用される。「抗原結合分子」又は「抗原結合タンパク質」という用語は、免疫グロブリン配列と区別なく使用され、ナノボディを含む。
【0030】
本発明の一実施形態では、免疫グロブリン配列は、軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)、又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)であり、より具体的には免疫グロブリン配列は、通常の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0031】
本発明によれば、免疫グロブリン配列は、ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むが、これに限定されない)であってもよく、好ましくはナノボディである。
【0032】
本発明で与えられる免疫グロブリン配列は、(本明細書で規定のように)本質的に単離形態であるか、又は(本明細書で規定のように)本発明のタンパク質若しくはポリペプチド(1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列を含むか又はこれから本質的になっていてもよく、任意でさらに1つ又は複数のさらなる免疫グロブリン配列(全て任意で1つ又は複数の好適なリンカーを介して連結される)を含んでもよい)の一部を形成するのが好ましい。例えば、これに限定されないが、1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列は、全て本明細書に記載される一価、多価、又は多重特異性の本発明のポリペプチドをそれぞれ提供するように、このようなタンパク質又はポリペプチド(任意で(すなわち細胞関連抗原以外の1つ又は複数の他の標的に対する)結合単位としての役割を果たし得る1つ又は複数のさらなる免疫グロブリン配列を含有し得る)における結合単位として使用してもよい。このようなタンパク質又はポリペプチドは、(本明細書に規定のように)本質的に単離形態でもあり得る。
【0033】
本発明は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダ科動物の免疫グロブリン配列を含む異なる起源の免疫グロブリン配列を含む。本発明は、完全にヒトの、ヒト化した、又はキメラの免疫グロブリン配列も含む。例えば本発明は、ラクダ科動物の免疫グロブリン配列、及びヒト化したラクダ科動物の免疫グロブリン配列、又はラクダ化ドメイン抗体、例えばWard et al(例えば特許文献3及びDavies and Riechmann(1994 and 1996)を参照されたい)により記載されたようなラクダ化Dabを含む。さらに本発明は、例えば多価及び/又は多重特異性の構築物を形成する融合免疫グロブリン配列(1つ又は複数のVHHドメインを含有する多価及び多重特異性のポリペプチド、並びにそれらの調製物に関しては、Conrath et al., J. Biol. Chem., Vol. 276, 10. 7346-7350, 2001、並びに例えば国際公開第96/34103号及び国際公開第99/23221号も参照する)、及び本発明の免疫グロブリン配列から誘導される、タグ又は他の機能的部分、例えばトキシン、標識、放射性化学物質等を含む免疫グロブリン配列を含む。
【0034】
免疫グロブリン配列及び免疫グロブリン配列、特にナノボディの構造は、これらに限定されないが、4つのフレームワーク領域すなわち「FR」(当該技術分野及び本明細書中でそれぞれ、「フレームワーク領域1」すなわち「FR1」、「フレームワーク領域2」すなわち「FR2」、「フレームワーク領域3」すなわち「FR3」及び「フレームワーク領域4」すなわち「FR4」と称される)から構成されると考えることができ、このフレームワーク領域の間には、3つの相補性決定領域すなわち「CDR」(当該技術分野でそれぞれ、「相補性決定領域1」すなわち「CDR1」、「相補性決定領域2」すなわち「CDR2」及び「相補性決定領域3」すなわち「CDR3」と称される)が挿入される。
【0035】
ナノボディにおけるアミノ酸残基の総数は、110〜120の範囲内であってもよく、好ましくは112〜115であり、及び最も好ましくは113である。しかし、ナノボディの部分、断片、類似体又は誘導体(本明細書中にさらに記載されたように)は、このような部分、断片、類似体又は誘導体が本明細書に概説されるさらなる要求を満たし、また好ましくは本明細書に記載の目的に好適であれば、その長さ及び/又はサイズに関して特に限定されないことに留意すべきである。
【0036】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン配列」という用語は、免疫グロブリン分子をコードする核酸配列及び免疫グロブリンポリペプチド自体の両方を表す。任意のより限定的な意味は特定の文脈から明らかになる。
【0037】
これらの分子は全て、「本発明のポリペプチド」とも称され、これは本発明の「免疫グロブリン配列」と同義である。
【0038】
さらに、(例えば「免疫グロブリン配列」、「抗体配列」、「可変ドメイン配列」、「VHH配列」又は「タンパク質配列」のような用語における)「配列」という用語は本明細書で使用される場合、文脈からより限定的な解釈が要求されない限り、関連の免疫グロブリン配列及びこれをコードする核酸配列又はヌクレオチド配列の両方を含むことが一般的に理解されるものとする。
【0039】
以下において、本発明の「核酸分子」に対する言及は、特定の文脈から明らかなように、遺伝子ワクチン接種のための核酸、又は本発明の免疫グロブリン配列をコードする核酸、又はその両方のいずれかに関し得る。
【0040】
特に他に指示がなければ、具体的に詳しく説明されていない全ての方法、工程、技法及び操作を実施することができ、当業者にとって明らかなそれ自体が既知の方法で実施している。同様に例えば、標準的なハンドブック、及び本明細書で言及される包括的な背景技術、並びに本明細書で引用されるさらなる参考文献、並びに例えば以下のレビュー、Presta, Adv. Drug Deliv. Rev. 2006, 58 (5-6): 640-56、Levin and Weiss, Mol. Biosyst.2006, 2(1): 49-57、Irving et al., J.Immunol. Methods, 2001, 248(1-2), 31-45、Schmitzet al., Placenta, 2000, 21 Suppl. A, S106-12、Gonzaleset al., Tumour Biol., 2005, 26(1), 31-43(これらは、親和性成熟等のタンパク質工学技法、及び免疫グロブリン等のタンパク質の特異性及び他の所望の特性を改善する他の技法を記載している)を参照する。
【0041】
本発明は、本明細書で規定のように抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関する。本発明との関連では、或る特定の抗原「と結合する及び/又はこれに対する親和性を有する」とは例えば抗体及びそれらのそれぞれの抗原との関連で理解されるような当該技術分野での通常の意味を有する。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、「と結合する及び/又はこれに対する親和性を有する」という用語は、免疫グロブリン配列が抗原と特異的に相互作用することを意味し、該用語は上記抗原「に対する」免疫グロブリン配列と区別なく使用される。
【0043】
「特異性」という用語は、特定の免疫グロブリン配列、抗原結合分子又は抗原結合タンパク質(例えば本発明のナノボディ又はポリペプチド)が結合することができる、様々なタイプの抗原又は抗原決定基の数を表す。抗原結合タンパク質の特異性は、親和性及び/又は結合活性に基づき決定することができる。親和性(抗原と抗原結合タンパク質との解離に関する平衡定数(K)によって表される)は、抗原決定基と抗原結合タンパク質上の抗原結合部位との間の結合力の評価基準であり、K値が小さくなれば、抗原決定基と抗原結合分子との間の結合力が大きくなる(代替的に、親和性は、1/Kである親和定数(K)としても表すことができる)。(例えば本明細書中のさらなる開示に基づき)当業者にとって明らかなように、対象となる特異的な抗原に応じて、それ自体が既知の方法で親和性を決定することができる。結合活性は、抗原結合分子(例えば本発明のナノボディ又はポリペプチド)と関連抗原との間の結合力の評価基準である。結合活性は、抗原決定基と抗原結合分子上のその抗原結合部位との間の親和性、及び抗原結合分子上に存在する関連結合部位の数の両方に関係する。
【0044】
典型的に、本発明の免疫グロブリン配列(例えば本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ及び/又はポリペプチド)が、10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で(すなわち10L/モル〜1012L/モル以上、及び好ましくは10L/モル〜1012L/モル以上、及びより好ましくは10L/モル〜1012L/モルの結合定数(K)で)それらの抗原と結合する、並びに/又は
10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)のkon速度で本明細書に規定の細胞関連抗原と結合する、並びに/又は
1s−1(t1/2=0.69s)〜10−6−1(t1/2が数日である略不可逆的な複合体の場合)、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)のkoff速度で本明細書に規定の細胞関連抗原と結合する。
【0045】
10−4モル/Lより大きい任意のK値(すなわち10−1(L/モル)よりも小さい任意のK値)は一般的に非特異的な結合を示すと考えられる。
【0046】
好ましくは、本発明の一価の免疫グロブリン配列は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で所望の抗原と結合する。
【0047】
抗原結合タンパク質と抗原又は抗原決定基との特異的な結合は、それ自体が既知の任意の好適な方法(例えばスキャッチャード解析及び/又は競合的結合アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ)を含む)及び当該技術分野でそれ自体が既知の様々なその変更方法、並びに本明細書で言及される他の技法で求めることができる。
【0048】
当業者にとって明らかなように、解離定数は実際又は見掛けの解離定数であってもよい。解離定数を決定する方法は、当業者にとって明らかであり、例えば本明細書で言及される技法が含まれる。これに関して、10−4モル/L又は10−3モル/Lより大きい(例えば10−2モル/Lの)解離定数を測定することが不可能であり得ることも明らかである。任意で、また当業者にとって明らかなように、(実際又は見掛けの)解離定数は、その関係性(K=1/K)から(実際又は見掛けの)結合定数(K)に基づき算出することができる。
【0049】
親和性は、分子相互作用の強さ又は安定性を示す。一般的に親和性はKすなわち解離定数として与えられ、その単位はモル/L(又はM)である。親和性は、1/Kに等しい結合定数Kとも表すことができ、その単位は(モル/L)−1(又はM−1)である。本明細書では、2つの分子(例えば本発明の免疫グロブリン配列、免疫グロブリン配列、ナノボディ又はポリペプチドと、その目的とする標的との)間の相互作用の安定性は主に、これらの相互作用のK値で表され、K=1/Kの関係性を考慮して、K値による分子相互作用の強さの特定を、対応するK値を算出するのに利用することもできることは、当業者にとって明らかである。K値は、DG=RT.ln(K)(等しくはDG=−RT.ln(K))(式中、Rは気体定数に等しく、Tは絶対温度に等しく、lnは自然対数を示す)の既知の関係性から、結合の自由エネルギー(DG)に関連するので、熱力学的意味でも分子相互作用の強さを特徴付ける。
【0050】
有意(例えば特異的)と見なされる、生物学的相互作用、例えば本発明の免疫グロブリン配列と本明細書に規定の細胞関連抗原との結合に関するKは典型的に、10−10M(0.1nM)〜10−5M(10000nM)の範囲内である。相互作用が強くなれば、そのKは低くなる。
【0051】
は、(K=koff/kon及びK=kon/koffのように)複合体の解離速度定数(koffと称される)と、その結合速度(konと称される)との比としても表すことができる。解離速度(off-rate)koffの単位は、s−1(sは秒のSI単位表記である)である。結合速度(on-rate)konの単位は、M−1−1である。
【0052】
本発明の免疫グロブリン配列に関して、結合速度は、二分子相互作用に関する拡散律速結合速度定数に近づきながら10−1−1〜約10−1−1の間で変化し得る。解離速度は、t1/2=ln(2)/koffの関係性から所定の分子相互作用の半減期に関連する。本発明の免疫グロブリン配列の解離速度は、10−6−1(t1/2が数日である略不可逆的な複合体)〜1s−1(t1/2=0.69s)の間で変化し得る。
【0053】
2つの分子間の分子相互作用の親和性は、それ自体が既知の様々な技法(例えば既知の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサ技法(例えばOber et al., Intern. Immunology, 13, 1551-1559, 2001を参照されたい)(ここで、1つの分子がバイオセンサーチップ上に固定化され、もう1つの分子が、kon、koff測定値、及びしたがってK(又はK)値が得られるフロー条件下で固定化分子上を通る)で測定することができる。例えば、既知のビアコアの機器を使用してこれを実施することができる。
【0054】
測定プロセスが、例えば1つの分子のバイオセンサ上でのコーティングに関するアーチファクト(artefacts:人工産物)によって、示唆した分子の固有の結合親和性に幾らか影響を与える場合、測定されたKは見掛けのKに対応し得ることも、当業者にとって明らかであろう。また、1つの分子が、もう1つの分子に対して2つ以上の認識部位を含有する場合、見掛けのKを測定することができる。このような状況下で、測定された親和性は、2つの分子による相互作用の結合活性により影響され得る。
【0055】
親和性を評価するのに使用することができる別のアプローチは、Friguet et al.(J. Immunol. Methods, 77,305-19, 1985)の2段階ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)法である。この方法によって、溶液相の結合平衡測定が確立され、プラスチック等の支持体上での分子の1つの吸着に関連すると考えられ得るアーチファクトが避けられる。
【0056】
しかし、Kの正確な測定はかなりの労力を要する可能性があり、結果として2つの分子の結合力を評価するのに、見掛けのK値を求めることが多い。全ての測定が一貫した方法で(例えばアッセイ条件を一定にして)行われていれば、見掛けのK測定値は真のKの近似値として使用することができ、したがって本明細書で、K及び見掛けのKは、等しい重要性又は関連性があるとして処理されるべきであることに留意すべきである。
【0057】
最後に、多くの状況下で経験豊かな科学者は、幾つかの参照分子と比較して結合親和性を決定することが都合がよいと判断することができることに留意すべきである。例えば、分子Aと分子Bとの間の結合力を評価するために、例えば分子Bと結合することが知られており、かつELISA若しくはFACS(蛍光活性化細胞選別)での検出を容易にするためのフルオロフォア基若しくはクロモフォア基、若しくは他の化学部分(例えばビオチン)、又は他のフォーマット(蛍光検出用フルオロフォア、吸光検出用クロモフォア、ストレプトアビジン媒介性ELISA検出用ビオチン)で好適に標識される参照分子Cを使用することができる。典型的に、参照分子Cは固定濃度に維持し、分子Aの濃度は、分子Bの所定の濃度又は量に対して変化させる。結果として、分子Aの非存在下で分子Cについて測定されたシグナルが半分になる分子Aの濃度に対応して、IC50値が得られる。参照分子のKであるKDref及び参照分子の総濃度crefが既知であれば、以下の式:K=IC50/(1+cref/KDref)からA−B相互作用に対する見掛けのKを得ることができる。cref<<KDrefの場合、K≒IC50であることに留意されたい。IC50の測定が、比較される結合因子に関して一貫した方法で(例えばcrefを固定して)実施されれば、IC50によって分子相互作用の強さ又は安定性を評価することができ、この測定値は、本明細書を通してK又は見掛けのKと同等であると判断される。
【0058】
本発明との関連では、「立体構造依存性エピトープ」又は「立体構造エピトープ」は、抗原の一次配列の単一の連続ストレッチ内にないアミノ酸を含むエピトープを示す。言い換えると、タンパク質標的の二次構造及び/又は三次構造のために、一次配列において離れた位置にあり得るアミノ酸が互いに近づくことにより、エピトープの形成に関与する。例えば抗原が3つのアミノ酸ループを含む場合、これらのループのそれぞれ1つにおける残基が単一のエピトープの形成に関与し得る。同じことが2つ以上のドメイン又はサブユニットを含む抗原にも当てはまる。この場合、エピトープは異なるドメイン又はサブユニット上のアミノ酸により形成され得る。また適切な条件によるタンパク質の完全な又は部分的な変性、すなわち二次構造及び/又は三次構造の部分的な又は完全な破壊が立体構造エピトープを部分的に又は完全に破壊する。当業者は、立体構造エピトープがタンパク質を変性させることにより破壊される正確な条件はタンパク質の性質及び特定の状況に応じて変わることを理解するだろう。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明は立体構造エピトープに対する免疫グロブリン配列に関する。特に本発明は、好ましくはラクダ科動物の免疫グロブリン配列(ナノボディを含む)であり得る、本明細書で規定のような細胞関連抗原上の立体構造エピトープに対する免疫グロブリン配列に関する。
【0060】
本発明との関連では、「細胞関連抗原」は、細胞の膜(細胞内コンパートメント及びオルガネラの膜を含む)にしっかりと固定される、又は細胞の膜内に位置する抗原を意味し、単一又は複数の膜貫通領域を有する抗原を含む。言い換えると、この用語は、膜依存性の立体構造エピトープを示す抗原を表す。特にこの用語は、本明細書で規定のような立体構造エピトープを有する抗原を表す。この用語は、膜貫通抗原、GPCR又はイオンチャネル等の多重膜貫通ドメインを有する膜貫通抗原を包含する。これらの全ての抗原の中で、当業者には、本発明の好ましい細胞関連抗原を表す、広範な新薬開発のための(druggable)標的抗原が知られている。本発明は特に、立体構造依存性のエピトープが膜での正しい固定及び/又は位置に依存する細胞関連抗原に関する。このため本発明は、このような立体構造依存性のエピトープに対する免疫グロブリン配列を提供する。
【0061】
好ましい実施形態では本発明は、1つ又はより好ましくは複数の膜貫通ドメインを有する内在性膜タンパク質である抗原に関する。これらの抗原は細胞の原形質膜、並びに/又は細胞内コンパートメント及びオルガネラの膜に存在するか、又はこれらの膜内で機能する。多くの膜貫通タンパク質、例えば膜貫通受容体は、互いに機能的に相互作用する、2つ以上のサブユニット又はドメインを含む。
【0062】
内在性膜タンパク質は、3つの異なる部分又はドメイン、すなわち細胞外(又はコンパートメント外)ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内(又はコンパートメント内)ドメインを含む。複数の膜貫通ドメインを有するタンパク質は典型的に、複数の細胞/コンパートメント外及び細胞/コンパートメント内のドメインも有する。例えば、7回膜貫通受容体は7つの膜貫通ドメインを含む。
【0063】
このため、細胞関連抗原という用語は本明細書で理解される場合、緩くしか結び付かない、すなわち膜にしっかりと固定されない又は膜内に位置しない抗原を排除することが意図される。抗原は膜の中と延びる少なくとも1つのドメイン又は部分を含む場合にしっかりと固定される。
【0064】
一実施形態では本発明は、脂質尾部(lipid tail)を介する膜挿入部を有するが、膜貫通ドメインを有しない抗原を排除する。この場合、タンパク質の親水性部分又は親水性ドメインの立体構造は膜環境に依存しない。例えば、適切な立体構造にある、すなわち抗原が脂質尾部を介して膜と結び付く場合にも存在する立体構造エピトープを発現する、脂質尾部を欠いた組換えタンパク質を発現することが考え得る。同様に、緩くしか結び付かない任意の他のタンパク質が特定の実施形態で本発明から排除される。これに関連して「緩く結び付いた」タンパク質は、膜が存在しない場合であっても天然立体構造を示す、すなわち天然立体構造が膜との固定又は膜内での包埋(embedding)に依存しないタンパク質を意味する。さらに特定の実施形態では、本発明はART2.2を排除する。
【0065】
本発明による細胞関連抗原の典型例は、7回膜貫通ドメイン受容体、例えばGタンパク質共役受容体、例えばさらに本明細書で記載されるもの、アドレナリン受容体、嗅覚受容体、受容体チロシンキナーゼ、例えば上皮成長因子受容体、インスリン受容体、線維芽細胞成長因子受容体、高親和性のニューロトロフィン受容体、及びEph受容体、インテグリン、低親和性の神経成長因子受容体、NMDA受容体、幾つかの免疫受容体、例えばトール様受容体、T細胞受容体及びCD28を含む。さらには、本発明による細胞関連抗原は、イオンチャネル、例えば本明細書にさらに記載されるもの、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、カリウムチャネル、2Pイオンチャネル、6−TMイオンチャネル、電圧依存性イオンチャネル及び/又はカルシウム活性化カリウムチャネルも含む。
【0066】
本明細書で使用される場合、「細胞関連抗原」という用語は、上記細胞関連抗原の任意の部分、断片、サブユニット、又はドメインを含み、またこれを表すことが意図される。細胞関連抗原の任意のサブセクションは、対象となる立体構造エピトープを表す場合、本発明の範囲内にある。例えば対象となるエピトープが受容体の結合部位、又はイオンチャネルの孔に位置する場合、上記エピトープを形成することが可能な細胞関連抗原の任意の断片(複数可)が本発明に含まれる。好ましくは、これらの部分、ドメイン、断片又はサブユニットは、膜依存性の立体構造に関与する細胞関連抗原の部分である。例えばタンパク質が伸長(extended)細胞内ループにより連結した幾つかの膜貫通ドメインを含む場合、細胞外立体構造エピトープに影響することなく、かかるループが一部又は完全に省略されることが想定される。
【0067】
特に本発明は、天然立体構造で細胞関連抗原に指向性を有する免疫グロブリン配列に関する。本発明との関連では、「天然立体構造」は、タンパク質がその二次構造及び/又は三次構造、特にその膜依存性の二次構造及び/又は三次構造を示すことを意味する。言い換えると、天然立体構造は、非変性形態のタンパク質を説明し、立体構造エピトープ、特に膜依存性の立体構造エピトープが存在する立体構造を説明する。具体的にタンパク質は、タンパク質が膜に組み込まれ、又は膜にしっかりと結合する場合に存在する立体構造を有する。抗原は、細胞関連抗原を発現する天然細胞若しくはトランスフェクト細胞を含む細胞、細胞由来の膜抽出物、抗原を内包する小胞若しくは任意の他の膜誘導体、リポソーム、又は細胞関連抗原を発現するウイルス粒子に存在する場合、天然立体構造で得ることができる。これらの実施形態のいずれかでは、抗原は好適な手段で濃縮することができる。上記細胞関連抗原を、Cho、Cos7、Hek293、又はラクダ科動物起源の細胞を包含するがこれらに限定されない、未変性又は天然の(native or natural)立体構造での抗原の発現を可能にする任意の好適な細胞で発現させることができる。
【0068】
本発明の細胞関連抗原は、好ましくは新薬開発のための膜タンパク質、特に複数の膜貫通ドメインを有する新薬開発のための膜タンパク質である。本発明の一実施形態では、標的はGPCR又はイオンチャネルである。
【0069】
本発明による細胞関連抗原を表すイオンチャネルの具体的であるが非限定的な例が以下に与えられる。このようなイオンチャネルを特異的に認識する免疫グロブリン配列の治療効果も挙げている。
【0070】
1.Two−Pカリウムチャネル(Goldstein etal., Pharmacological Reviews, 57, 4, 527 (2005)を参照されたい)、例えばK2P1.1、K2P2.1、K2P3.1、K2P3.1、K2P4.1、K2P5.1、K2P6.1、K2P7.1、K2P9.1、K2P10.1、K2P12.1、K2P13.1、K2P15.1、K2P16.1、K2P17.1及びK2P18.1(これらは全て、FLIPR又はパッチ−クランプ等の電気生理学的アッセイを用いてスクリーニングすることができる)。
2.CatSperチャネル(Clapham and Garbers,Pharmacological Reviews, 57, 4, 451 (2005)を参照されたい)、例えばCatSper−1及びCatSper−2(両方とも受精能及び精子の運動性にかかわる)、CatSper−3及びCatSper−4(これらは全て、FLIPR、パッチ−クランプ、又はカルシウム画像化技法等の電気生理学的アッセイを用いてスクリーニングすることができる)。
3.二孔チャネル(Clapham and Garbers,Pharmacological Reviews, 57, 4, 451 (2005)を参照されたい)、例えばTPC1及びTPC2。
4.環状ヌクレオチド依存性チャネル(Hofman etal., Pharmacological Reviews, 57, 4, 455 (2005)を参照されたい)、例えばCNGA−1、CNGA−2、CNGA−3、CNGA−4A、CNGB1及びCNGB3(これらはパッチ−クランプ及びカルシウム画像化等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
5.過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(Hofmanet al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 455 (2005)を参照されたい)、例えばHCN1、HCN2、HCN3、HCN4(全て心不整脈及び虚血性心疾患のための薬剤開発のための有力な薬理学標的と考えられる)(これらは電圧固定等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
6.内向き整流型のカリウムチャネル(Kubo et al.,Pharmacological Reviews, 57, 4, 509 (2005)を参照されたい)、例えばKir1.1、Kir2.1、Kir2.2、Kir2.3、Kir2.4、Kir3.1、Kir3.2、Kir3.3、Kir3.4、Kir3.4、Kir4.2、Kir5.1、Kir6.1(降圧薬及び冠拡張薬に関する標的)、Kir6.2(ペントラミンに関する標的;そのサブユニットSUR1は糖尿病及びPHHIの治療に関する標的である)及びKir7.1(カルシウムチャネルブロッカーの副作用に関する可能性がある部位である)(これらは電圧固定等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
7.カルシウム活性化カリウムチャネル(Wei et al.,Pharmacological Reviews, 57, 4, 463 (2005)を参照されたい)、例えば
Ca1.1−脳卒中、癲癇、膀胱過反応性(bladder over-reactivity)、喘息、高血圧、胃の過剰運動性(gastrichypermotility)及び精神病の治療に有用であり得るオープナー;
Ca2.1−筋緊張性筋ジストロフィー、消化管運動障害、記憶障害、癲癇、ナルコレプシー及びアルコール依存症等の様々な疾患の治療に有用であり得るモジュレータ。KCa2.2のオープナーは小脳性運動失調症のために提唱されている;
Ca2.2−筋緊張性筋ジストロフィー、消化管運動障害、記憶障害、癲癇、ナルコレプシー及びアルコール依存症等の様々な疾患の治療に有用であり得るモジュレータ。Kca2.2のオープナーは小脳性運動失調症のために提唱されている;
Ca2.2−筋緊張性筋ジストロフィー、消化管運動障害、記憶障害、癲癇、ナルコレプシー、高血圧及び尿失禁等の様々な疾患の治療に有用であり得るモジュレータ;
Ca3.1−鎌状赤血球貧血、糖尿病の治療に、免疫抑制剤として、EAEに、再狭窄及び血管形成の予防に、脳損傷の治療に、並びに脳浮腫の低減に有用であり得るブロッカー。KCa3.1のオープナーは嚢胞性線維症及びCOPDの治療のために提唱されている;
並びにKCa4.1、KCa4.2及びKCa5.1(それらは全て、電気生理学的技法又はパッチ−クランプ若しくは電圧固定等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
8.カリウムチャネル(Shieh et al.,Pharmacological Reviews, 57, 4, 557 (2005)及びGutman et al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 473 (2005)を参照されたい)、例えば
電圧依存性カルシウムチャネル、例えばKv1.1、Kv1.2、Kv1.3、Kv1.4、Kv1.5、Kv1.6及びKv.17;
電圧依存性及びcGMP依存性のカルシウムチャネル、例えばKv1.10;
Kvチャネルのβ−サブユニット、例えばKvβ−1、Kvβ−2及びKvβ−3;
Shab様チャネル、例えばKv2.1及びKv2.2;
Shaw様チャネル、例えばKv3.1、Kv3.2、Kv3.3及びKv3.4;
Shal様チャネル、例えばKv4.1、Kv4.2、Kv4.3、Kv5.1、Kv6.1、Kv6.2、Kv8.1、Kv9.1、Kv9.2、Kv9.3、KH1及びKH2;
ether−a−go−goチャネル、例えばEAG、HERG、BEC1及びBEC2;
MinK型チャネル、例えばMinK、MiRP1及びMiRP2;
KvLQT型チャネル、例えばKvLQT1、KvLQT2、KvLQT3、KvLQT4、KvLQT5;
内向き整流型カリウムチャネル、例えば上述のもの;
スルホニル尿素受容体、例えばスルホニル尿素受容体1及び2;
大コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、例えばS/o及びBKCaのβ−サブユニット;
小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、例えばSK1、SK2及びSK3;
中間コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、例えばIKCa1;
二孔カリウムチャネル、例えばTWIK1、TREK、TASK、TASK2、TWIK2、TOSS、TRAAK及びCTBAK1;
(それらは全て、電気生理学的技法又はパッチ−クランプ若しくは電圧固定等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。カリウムチャネルは、心疾患(例えば不整脈)、神経疾患、神経筋障害、聴覚及び前庭疾患、腎疾患、アルツハイマー病及び代謝性疾患等の多種多様な疾患及び障害にかかわり、これらの疾患における活性化合物の標的である。これらについても、Shieh et al.及びGutman et al.(及びそれらで言及されるさらなる従来技術)によるレビュー、並びに本明細書で言及されるさらなる引例を参照する。Shiehのレビューの表3及び表4は、様々なカリウムチャネルの多くの既知のオープナー及びブロッカーのそれぞれ、及びそれらが使用/提唱されている疾患適応症にも言及している。
9.電圧依存性カルシウムチャネル(Catterall etal., Pharmacological Reviews, 57, 4, 411 (2005)を参照されたい)、例えば
Ca1.2−Ca2+アンタゴニストとして有用であるモジュレータ;
Ca1.3−心拍数を調節するために、抗うつ剤として、及び聴覚障害用の薬剤として提唱されているモジュレータ;
Ca2.1−炎症性疼痛用の鎮痛剤として提唱されているモジュレータ;
Ca2.2−炎症性疼痛、術後疼痛、温熱性痛覚過敏、慢性疼痛及び機械的異痛等の疼痛用の鎮痛剤として提唱されているモジュレータ;
Ca3.2−癲癇、高血圧及び狭心症のための標的として提唱されている;
Ca3.3−視床振動(thalamicoscillations)の治療のための標的として提唱されている;
及びCa1.1、Ca1.4、Ca2.3、Ca3.1(それらは全て、パッチ−クランプ、電圧固定及びカルシウム画像化等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
10.一過性受容体電位(TRP)チャネル(Clapham etal., Pharmacological Reviews, 57, 4, 427 (2005)を参照されたい)、例えば
TRPCチャネル、例えばTRPC1、TRPC2、TRPC3、TRPC4、TRPC5、TRPC6及びTRPC7;
TRPVチャネル、例えばTRPV1、TRPV2、TRPV3、TRPV4、TRPV5及びTRPV6;
TRPMチャネル、例えばTRPM1、TRPM2、TRPM3、TRPM4、TRPM5、TRPM6、TRPM7及びTRPM8;
TRPA1;
TRPPチャネル、例えばPKD1、PKD2L1及びPKD2L2(これらは多発性嚢胞腎にかかわる);
TRPMLチャネル、例えばムコリピン1、ムコリピン2及びムコリピン3;
(それらは、パッチ−クランプ又はカルシウム画像化等の技法を用いてスクリーニングすることができる)。
11.電圧依存性ナトリウムチャネル(Catterall etal., Pharmacological Reviews, 57, 4, 397 (2005)を参照されたい)、例えば
Na1.1、Na1.2及びNa1.3−癲癇及び発作の予防及び治療用の薬剤のための標的である;
Na1.4−ミオトニーの治療用の局所麻酔のための標的である;
Na1.5−抗不整脈薬のための標的である;
Na1.6−抗癲癇薬及び鎮痛剤のための標的である;
Na1.7、Na1.8及びNa1.9−局所麻酔のための潜在的な標的である;
(それらは全て電圧固定又は電圧感受性色素を伴う技法を用いてスクリーニングすることができる)。
【0071】
イオンチャネル、並びにそれらが関連する疾患及び障害が当該技術分野で既知である。例えば以下のレビュー:Goldstein et al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 527 (2005);Yu et al., Pharmacological Reviews,57, 4, 387 (2005);Clapham andGarbers, Pharmacological Reviews, 57, 4, 451 (2005);Hoffmann et al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 455 (2005);Kubo et al., Pharmacological Reviews,57, 4, 509 (2005);Wei et al.,Pharmacological Reviews, 57, 4, 463 (2005);Shieh et al, Pharmacological Reviews, 57, 4, 557 (2005);Catterall et al, PharmacologicalReviews, 57, 4, 411 (2005);Gutmanet al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 473 (2005);Clapham et al., Pharmacological Reviews, 57, 4, 427 (2005);及びCatterall et al., PharmacologicalReviews, 57, 4, 397 (2005);並びにこれらのレビュー並びに以下の論文及びレビュー:Chandy et al., Trends in Pharmacological Sciences, May 2004, 280-289;Takana and Shigenobu, J. Pharmacol. Sci., 99, 214-200 (2005);Padinjat and Andrews, Journal of CellScience, 117, 5707-5709 (2004);Amiret al., The Journal of Pain, Vol. 7, No. 5, S1-S29 (2006);Devor, The Journal of Pain, Vol. 7, No. 15, S3-S12 (2006);Xie et al., Current Drug Discovery,April 2004, 31-33;Vianna-Jorge and Suarez-Kurtz,BioDrugs 2004, 18(5), 329-41;Garcia and Kaczorowski, Sci STKE, 2005, 302;Gopalakrishnanand Shieh, Expert Opin. Ther. Targets, 2005, 8(5), 437-58;Mannhold, Med. Res. Rev., 2004, 24(2), 213-66;Sabido-Davidet al., Expert Opin. Investig. Drugs, 2004, 13(1)1249-61;及びChrist, Journal of Andrology,Vol. 23, No. 5, S10-S19 (2002)で言及されるさらなる引例を、並びにこれらで言及されたさらなる従来技術(全て参照により本明細書で援用される)を、並びに本願で言及される以下の表及びさらなる従来技術を参照する。
【0072】
これらのレビュー及びこの従来技術から分かるように、イオンチャネルは一般的に、それらを通過することができるイオンに応じて(すなわちカルシウムチャネル、ナトリウムチャネル又はカリウムチャネル)、それらの組成及び構造に応じて(例えばサブユニット、孔及び膜貫通ドメインの数及び種類に応じて、例えば2Pイオンチャネル、6−TMイオンチャネル等)、及び/又はそれらが活性化される様式に応じて(例えば電圧依存性イオンチャネル又はカルシウム活性化カリウムチャネル)分類される。
【0073】
イオンチャネルは一般的に、細胞内ループと細胞外ループとの組合せにより連結された、多くの膜貫通ドメインサブユニットを含む。これらについても上記で言及された引例及び従来技術、並びにBenham, Nature Biotechnology, October 2005, 1234-1235、並びに本明細書で言及されるさらなる従来技術を参照する。
【0074】
イオンチャネルが膜タンパク質であり、様々な疾患状態と既知の関連があるということにより、イオンチャネルが薬学的化合物及び獣医学的化合物のための(すなわち予防、治療又は診断のための)魅力的な分子標的となる。また、活性(アゴニスト、アンタゴニスト、ブロッカー及び/又はオープナーのいずれかとして)及び/又はイオンチャネル及びそれらの生物学的活性又は生理学的活性に関する選択性に関して潜在的な薬学的化合物又は獣医学的化合物をスクリーニングする方法が従来技術分野で既知である。関与するイオンチャネルに応じた好適な技法の幾つかの非限定的な例としては、パッチ−クランプ、電圧固定、イオン束の測定、FLIPR、カルシウム画像化及び電気生理学的技法等の技法が挙げられる。
【0075】
本発明による細胞関連抗原を表すGPCRの具体的であるが、非限定的な例が以下に与えられる。これらのGPCRに指向性を有する本発明の免疫グロブリン配列の幾つかの例示的な治療効果も挙げられている。
【0076】
A群GPCR
アセチルコリン受容体(アゴニスト)、
ムスカリン受容体(アゴニスト)、
ムスカリンM1受容体(アゴニスト)、
ムスカリンM2受容体(アゴニスト)、
ムスカリンM3受容体(アゴニスト)、
ムスカリンM4受容体(アゴニスト)、
ムスカリンM5受容体(アゴニスト)、
ムスカリン受容体(部分アゴニスト)、
アドレナリン受容体(アゴニスト)、
αアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α1アドレナリン受容体(アゴニスト)、
α1Aアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α1Bアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α1Dアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α2アドレナリン受容体(アゴニスト)、
α2Aアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α2Bアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α2Cアドレナリン受容体(アゴニスト)、
α2アドレナリン受容体(部分アゴニスト)、
α3アドレナリン受容体(アゴニスト)、
βアドレナリン受容体(アゴニスト)、
β1アドレナリン受容体(アゴニスト)、
β2アドレナリン受容体(アゴニスト)、
β3アドレナリン受容体(アゴニスト)、
ドーパミン受容体(アゴニスト)、
ドーパミンD5受容体(アゴニスト)、
ドーパミンD1受容体(アゴニスト)、
ドーパミンD2受容体(アゴニスト)、
ドーパミンD3受容体(アゴニスト)、
ドーパミンD4受容体(アゴニスト)、
ヒスタミン受容体(アゴニスト)、
ヒスタミンH1受容体(アゴニスト)、
ヒスタミンH2受容体(アゴニスト)、
ヒスタミンH3受容体(アゴニスト)、
ヒスタミンH4受容体(アゴニスト)、
5−HT GPCR(アゴニスト)、
5−HT 1(アゴニスト)、
5−HT 2(アゴニスト)、
5−HT 4(アゴニスト)、
5−HT 5a(アゴニスト)、
5−HT 5b(アゴニスト)、
5−HT 6(アゴニスト)、
5−HT 7(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−1(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−2(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−3(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−4(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−5(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−6(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−7(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−8(アゴニスト)、
微量アミン関連受容体−9(アゴニスト)、
アペリン受容体(アゴニスト)、
カンナビノイド受容体(アゴニスト)、
カンナビノイドCB1受容体(アゴニスト)、
カンナビノイドCB2受容体(アゴニスト)、
リゾスフィンゴ脂質受容体(アゴニスト)、
スフィンゴシン−1−リン酸受容体−1(アゴニスト)、
リゾホスファチジン酸−1受容体(アゴニスト)、
スフィンゴシン−1−リン酸受容体−3(アゴニスト)、
リゾホスファチジン酸−2受容体(アゴニスト)、
スフィンゴシン−1−リン酸受容体−2(アゴニスト)、
スフィンゴシン−1−リン酸受容体−4(アゴニスト)、
リゾホスファチジン酸−3受容体(アゴニスト)、
スフィンゴシン−1−リン酸受容体−5(アゴニスト)、
A群ホルモンタンパク質GPCR(アゴニスト)、
FSH(アゴニスト)、
黄体形成ホルモン受容体(アゴニスト)、
TSH(アゴニスト)、
ロイコトリエン(アゴニスト)、
ロイコトリエンBLT受容体(アゴニスト)、
システイニルロイコトリエン受容体(アゴニスト)、
メラトニン(アゴニスト)、
メラトニンMT1(アゴニスト)、
メラトニンMT2(アゴニスト)、
メラトニンMT3(アゴニスト)、
A群ヌクレオチド様GPCR(アゴニスト)、
アデノシン受容体(アゴニスト)、
P2Y受容体(アゴニスト)、
A群オーファンGPCR(アゴニスト)、
グレリン(アゴニスト)、
A群ペプチドGPCR(アゴニスト)、
アンジオテンシン受容体(アゴニスト)、
アンジオテンシンI受容体(アゴニスト)、
アンジオテンシンII受容体(アゴニスト)、
ボンベシン受容体(アゴニスト)、
ボンベシンBB1受容体(アゴニスト)、
ボンベシンBB2受容体(アゴニスト)、
ボンベシンbb3受容体(アゴニスト)、
ガストリン放出ペプチドリガンド、
ニューロメディンBリガンド、
ニューロメディンCリガンド、
ブラジキニン受容体(アゴニスト)、
ブラジキニンB1受容体(アゴニスト)、
ブラジキニンB2受容体(アゴニスト)、
C3a受容体(アゴニスト)、
C5a(アゴニスト)、
CCK受容体(アゴニスト)、
CCK 1受容体(アゴニスト)、
CCK 2受容体(アゴニスト)、
ガストリン(アゴニスト)、
ケモカイン(アゴニスト)、
CCケモカイン受容体(アゴニスト)、
CCR1ケモカイン(アゴニスト)、
CCR2ケモカイン(アゴニスト)、
CCR3ケモカイン(アゴニスト)、
CCR4ケモカイン(アゴニスト)、
CCR5ケモカイン(アゴニスト)、
CCR6ケモカイン(アゴニスト)、
CCR7ケモカイン(アゴニスト)、
CCR8ケモカイン(アゴニスト)、
CCR9ケモカイン(アゴニスト)、
CCR10ケモカイン(アゴニスト)、
CCR11ケモカイン(アゴニスト)、
CX3Cケモカイン受容体(アゴニスト)、
CX3CR1ケモカイン(アゴニスト)、
XCR1ケモカイン(アゴニスト)、
CXCケモカイン受容体(アゴニスト)、
CXCR1ケモカイン(アゴニスト)、
CXCR3ケモカイン(アゴニスト)、
CXCR4ケモカイン(アゴニスト)、
CXCR5ケモカイン(アゴニスト)、
アドレノメジュリン受容体(アゴニスト)、
エンドセリン(アゴニスト)、
エンドセリンET−A(アゴニスト)、
エンドセリンET−B(アゴニスト)、
ガラニン(アゴニスト)、
ガラニンGAL1(アゴニスト)、
ガラニンGAL2(アゴニスト)、
ガラニンGAL3(アゴニスト)、
IL−9(アゴニスト)、
KiSS−1受容体(アゴニスト)、
メラニン凝集ホルモン(アゴニスト)、
MCH受容体−1(アゴニスト)、
MCH受容体−2(アゴニスト)、
メラノコルチン(アゴニスト)、
メラノコルチンMC1(アゴニスト)、
ACTH受容体(アゴニスト)、
メラノコルチンMC3(アゴニスト)、
メラノコルチンMC4(アゴニスト)、
メラノコルチンMC5(アゴニスト)、
NK(アゴニスト)、
NK1(アゴニスト)、
NK2(アゴニスト)、
NK3(アゴニスト)、薬剤:1
神経ペプチドY受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドY1受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドY2受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドY4受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドY5受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドY6受容体(アゴニスト)、
ニューロテンシン受容体(アゴニスト)、
ニューロテンシンNTS1(アゴニスト)、
ニューロテンシンNTS2(アゴニスト)、
オレキシン及び神経ペプチドFF受容体(アゴニスト)、
オレキシン(アゴニスト)、
オピオイド(アゴニスト)、
δオピオイド(アゴニスト)、
κオピオイド(アゴニスト)、
μオピオイド(アゴニスト)、
ORL1受容体(アゴニスト)、
オピオイド(部分アゴニスト)、
σオピオイド(アゴニスト)、
オレキシン及び神経ペプチドFF受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドFF受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドFF1受容体(アゴニスト)、
神経ペプチドFF2受容体(アゴニスト)、
オレキシン(アゴニスト)、
オレキシン−1(アゴニスト)、
オレキシン−2(アゴニスト)、
プロテアーゼ活性化受容体(アゴニスト)、
プロテアーゼ活性化受容体−1(アゴニスト)、
プロテアーゼ活性化受容体−2(アゴニスト)、
プロテアーゼ活性化受容体−3(アゴニスト)、
プロテアーゼ活性化受容体−4(アゴニスト)、
プロキネチシン受容体(アゴニスト)、
プロキネチシン受容体−1(アゴニスト)、
プロキネチシン受容体−2(アゴニスト)、
ソマトスタチン(アゴニスト)、
ソマトスタチン1(アゴニスト)、
ソマトスタチン2(アゴニスト)、
ソマトスタチン3(アゴニスト)、
ソマトスタチン4(アゴニスト)、
ソマトスタチン5(アゴニスト)、
ウロテンシンII(アゴニスト)、
バソプレシン様受容体(アゴニスト)、
オキシトシン(アゴニスト)、
バソプレシン(アゴニスト)、
バソプレシンV1(アゴニスト)、
バソプレシンV2(アゴニスト)、
プロスタノイド受容体(アゴニスト)、
DPプロスタノイド(アゴニスト)、
PGD2(アゴニスト)、
EP1プロスタノイド(アゴニスト)、
PGE2(アゴニスト)、
EP2プロスタノイド(アゴニスト)、
PGE2(アゴニスト)、
EP3プロスタノイド(アゴニスト)、
PGE2(アゴニスト)、
EP4プロスタノイド(アゴニスト)、
PGE2(アゴニスト)、
FPプロスタノイド(アゴニスト)、
PGF2α(アゴニスト)、
IPプロスタノイド(アゴニスト)、
プロスタサイクリン(アゴニスト)、
プロスタノイド受容体(部分アゴニスト)、
TPプロスタノイド(アゴニスト)、
トロンボキサンA2(アゴニスト)、
コハク酸受容体1(アゴニスト)、
TRH(アゴニスト)、
TRH1(アゴニスト)、
TRH2(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体−1(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体−2(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体−3(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体−4(アゴニスト)、
1型鋤鼻受容体−5(アゴニスト)、
アペリン受容体(モジュレータ)、
カンナビノイド受容体(モジュレータ)、
ケモカイン受容体様1(モジュレータ)、
リゾスフィンゴ脂質受容体(モジュレータ)、
A群ホルモンタンパク質GPCR(モジュレータ)、
ロイコトリエン受容体(モジュレータ)、
メラトニン受容体(モジュレータ)、
A群ヌクレオチド様GPCR(モジュレータ)、
A群オーファンGPCR(モジュレータ)、
PAF受容体(モジュレータ)、
A群ペプチドGPCR(モジュレータ)、
プロスタノイド受容体(モジュレータ)、
コハク酸受容体1(モジュレータ)、
TRH受容体(モジュレータ)、
1型鋤鼻受容体(モジュレータ)
【0077】
B群GPCR
Gタンパク質共役受容体−3(モジュレータ)、
Gタンパク質共役受容体−3(アゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−3(アンタゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−6(モジュレータ)、
Gタンパク質共役受容体−6(アゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−6(アンタゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−12(モジュレータ)、
Gタンパク質共役受容体−12(アゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−12(アンタゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−14(モジュレータ)、
Gタンパク質共役受容体−14(アゴニスト)、
Gタンパク質共役受容体−14(アンタゴニスト)、
B群GPCR(アゴニスト)、
CRF−1受容体(アゴニスト)、
CRF−2受容体(アゴニスト)、
カルシトニン受容体(モジュレータ)、
カルシトニン(アゴニスト)、
カルシトニン(アンタゴニスト)、
ACTH放出因子受容体(モジュレータ)、
CRF−1受容体(モジュレータ)、
CRF−1受容体(アゴニスト)、
CRF−1受容体(アンタゴニスト)、
CRF−2受容体(モジュレータ)、
CRF−2受容体(アゴニスト)、
CRF−2受容体(アンタゴニスト)、
ACTH放出因子(アゴニスト)、
CRF−1受容体(アゴニスト)、
CRF−2受容体(アゴニスト)、
ACTH放出因子(アンタゴニスト)、
CRF−1受容体(アンタゴニスト)、
CRF−2受容体(アンタゴニスト)、
グルカゴン様ペプチド受容体(モジュレータ)、
グルカゴン様ペプチド1受容体(モジュレータ)、
グルカゴン様ペプチド2受容体(モジュレータ)、
グルカゴン様ペプチド(アゴニスト)、
グルカゴン様ペプチド(アンタゴニスト)、
グルカゴン受容体(モジュレータ)、
グルカゴン(アゴニスト)、
グルカゴン(アンタゴニスト)、
GHRH受容体(モジュレータ)、
GHRH(アゴニスト)、
成長ホルモン放出因子(アンタゴニスト)、
I型PACAP受容体(モジュレータ)、
I型PACAP受容体(アゴニスト)、
I型PACAP受容体(アンタゴニスト)、
PTH受容体(モジュレータ)、
PTH−1受容体(モジュレータ)、
PTH−2受容体(モジュレータ)、
PTH(アゴニスト)、
PTH(アンタゴニスト)、
セクレチン受容体(モジュレータ)、
セクレチン(アゴニスト)、
セクレチン(アンタゴニスト)、
VIP受容体(モジュレータ)、
VIP−1受容体(モジュレータ)、
VIP−2受容体(モジュレータ)、
VIP(アゴニスト)、
VIP(アンタゴニスト)
【0078】
C群GPCR
C群GPCR(モジュレータ)、
C群GPCR(アゴニスト)、
GABA B受容体(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体1(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体2(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体3(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体4(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体5(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体6(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体7(アゴニスト)、
代謝型グルタミン酸受容体8(アゴニスト)
【0079】
好ましくは上記細胞関連抗原は、例えばP2X7等のイオンチャネルから選択される抗原を含むが、これに限定されない膜貫通抗原である。
【0080】
当業者には、「天然立体構造」という用語により包含される異なる特定の三次元立体構造が存在し得ることが理解される。例えばタンパク質が膜環境にありながら、2つ以上の異なる立体構造を有する場合、これらの立体構造全てが「天然立体構造」であると考えられる。このことは活性化により立体構造が変化する受容体、例えば光により誘導されるロドプシンの様々な活性化状態、又は「閉塞(closed)」若しくは「開放(open)」立体構造を示すイオンチャネルで例示される。本発明はこれらの異なる天然立体構造のいずれか1つに対する、すなわち存在し得る異なる種類の立体構造エピトープに対する免疫グロブリン配列を包含する。
【0081】
本発明の「核酸」は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAの形態を取ることができ、好ましくは二本鎖DNAの形態をとる。例えば、本発明のヌクレオチド配列はゲノムDNA、cDNA又は合成DNA(目的とする宿主細胞又は宿主生物内の発現に特異的に適合しているコドンの使用を伴うDNA等)であってもよい。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、本発明の核酸は、本明細書中に規定したように、本質的に単離形態である。
【0083】
本発明の核酸は、例えばプラスミド、コスミド又はYAC等のベクター(また本質的に単離形態であってもよい)の形態をとり、ベクター中に存在し、及び/又はベクターの一部であってもよい。
【0084】
本発明の核酸は、本発明の細胞関連抗原若しくは免疫グロブリン配列に関する情報に基づき、それ自体が既知の方法で調製されるか若しくは得ることができ、及び/又は好適な天然資源から単離することができる。類似体を得るためには、天然VHHドメインをコードするヌクレオチド配列に、例えば、部位特異的な突然変異誘発を起こして、上記類似体をコードする本発明の核酸を得ることができる。また、当業者にとって明らかであるように、本発明の核酸を調製するために、例えば、ナノボディをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、及び例えば、1つ又は複数のリンカーをコードする核酸等の幾つかのヌクレオチド配列を、好適な方法で連結することもできる。
【0085】
本発明の核酸を生成するための技法は当業者にとって明らかであり、例えば、自動DNA合成、部位特異的突然変異誘発、2つ以上の天然配列及び/又は合成型配列(又はこれらの2つ以上の部分)の組合せ(combining)、切断された発現産物を発現させる突然変異の導入、(例えば、好適な制限酵素を用いて容易に消化及び/又はライゲーションすることができるカセット及び/又は領域を作製するための)1つ又は複数の制限部位の導入、及び/又は例えば、天然GPCRの配列を鋳型として使用した1つ又は複数の「ミスマッチ」プライマーを使用するPCR反応による突然変異の導入が挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの技法及び他の技法は当業者にとって明らかであり、同様に上記のSambrook et al.及びAusubel et al.等の標準的なハンドブック、並びに以下の実施例を参照する。
【0086】
本発明の核酸はまた、当業者にとって明らかであるように、遺伝子構築物の形態をとり、遺伝子構築物中に存在し、及び/又は遺伝子構築物の一部であってもよい。このような遺伝子構築物は一般に、例えば、1つ又は複数の好適な調節要素(好適なプロモーター(複数可)、エンハンサー(複数可)、ターミネーター(複数可)等)、及び本明細書中に述べられている遺伝子構築物のさらなる要素等)といった、1つ又は複数のそれ自体が既知の遺伝子構築物の要素に、任意で連結する少なくとも1つの本発明の核酸を含む。少なくとも1つの本発明の核酸を含むこのような遺伝子構築物は、本明細書中において「本発明の遺伝子構築物」とも呼ばれる。
【0087】
本発明の遺伝子構築物は、DNA又はRNAであってもよく、好ましくは二本鎖DNAである。また、本発明の遺伝子構築物は、目的とする宿主細胞又は宿主生物の形質転換に好適な形態、目的とする宿主細胞のゲノムDNAへの組込みに好適な形態、又は目的とする宿主生物における独立した複製、維持及び/又は継代(inheritance)に好適な形態、又は遺伝子免疫付与に好適な形態をとり得る。例えば、本発明の遺伝子構築物は、例えば、プラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター又はトランスポゾン等のベクターの形態をとることができる。特に、ベクターは、発現ベクター、すなわちin vitro及び/又はin vivo(例えば、好適な宿主細胞、宿主生物及び/又は発現系)での発現をもたらし得るベクターであってもよい。
【0088】
好ましいが非限定的な一実施形態では、本発明の遺伝子構築物は、
a)b)と作用可能に連結した少なくとも1つの本発明の核酸と、
b)プロモーター、及び任意で好適なターミネーター等の、1つ又は複数の調節要素と、任意でさらに
c)それ自体が既知の遺伝子構築物の1つ又は複数のさらなる要素とを含み、ここで、「調節要素」、「プロモーター」、「ターミネーター」、及び「作用可能に連結した」という用語は、当該技術分野における(本明細書中に詳述するような)通常の意味を有しており、遺伝子構築物中に存在する上記「さらなる要素」とは、例えば、3’−又は5’−UTR配列、リーダー配列、選択マーカー、発現マーカー/レポーター遺伝子、及び/又は形質転換若しくは組込み(の効率)を促進又は増大させ得る要素であってもよい。このような遺伝子構築物に好適なこれら及び他の要素は当業者にとって明らかであり、例えば、使用する構築物の種類、免疫付与の対象となる宿主細胞、宿主生物又は動物、対象となる本発明のヌクレオチド配列を発現させる方法(例えば、構成的発現、一時的発現、又は誘導性発現等を介するもの)、及び/又は使用する形質転換/ワクチン接種技法に応じて決定することができる。例えば、抗体及び抗体断片((単一)ドメイン抗体及びScFv断片が挙げられるが、これらに限定されない)の発現及び産生のための、それ自体が既知の調節配列、プロモーター及びターミネーターを、本質的に類似の方法で使用してもよい。
【0089】
好ましくは、本発明の遺伝子構築物において、上記少なくとも1つの本発明の核酸、及び上記調節要素、及び任意で上記1つ又は複数のさらなる要素は、互いに「作用可能に連結」しており、これによりこれらは互いに機能的な関係にあることが通常意図されている。例えば、プロモーターが、コード配列の転写及び/又は発現を、開始又は別の形で制御/調節することができる場合(上記コード配列は、上記プロモーター「の制御下に」あるものとして理解されたい)、コード配列に「作用可能に連結」していると考えられる。一般に、2つのヌクレオチド配列が作用可能に連結している場合、これらは同一の配向(orientation)を有し、また通常同一リーディングフレーム内にある。また、必ずしも必要ではないこともあるが、これらは通常本質的に隣接している。
【0090】
好ましくは、本発明の遺伝子構築物の調節要素及びさらなる要素は、目的とする宿主細胞又は宿主生物において意図される生物学的機能を付与することができるようなものである。
【0091】
例えば、プロモーター、エンハンサー又はターミネーターは、目的とする宿主細胞又は宿主生物において「作用可能」であるとされ、このため(例えば)、上記プロモーターは、(本明細書で規定したように)作用可能に連結したヌクレオチド配列(例えばコード配列)の転写及び/又は発現を、開始又は別の形で制御/調節することができるものであると意図される。
【0092】
ターミネーター、転写及び/又は翻訳エンハンサー、及び/又は組込み因子等の、本発明の遺伝子構築物に存在し/使用され得る、プロモーター、選択マーカー、リーダー配列、発現マーカー及びさらなる要素についての(さらなる)非限定的な幾つかの例については、上記のSambrook et al.及びAusubel et al.等の包括的なハンドブック、並びに国際公開第95/07463号、国際公開第96/23810号、国際公開第95/07463号、国際公開第95/21191号、国際公開第97/11094号、国際公開第97/42320号、国際公開第98/06737号、国際公開第98/21355号、米国特許第6,207,410号、米国特許第5,693,492号及び欧州特許第1 085 089号に示された例を参照する。他の例は当業者にとって明らかであろう。上記の包括的な背景技術及び本明細書中にさらに引用した参考文献も参照する。
【0093】
本発明の遺伝子構築物は、通常、例えば、上記のSambrooket al.及びAusubel et al.等の包括的なハンドブックに記載の技法を用いて、本発明のヌクレオチド配列(複数可)を、1つ又は複数の上記さらなる要素と適切に連結させることにより得ることができる。
【0094】
多くの場合、本発明の遺伝子構築物は、本発明のヌクレオチド配列を、それ自体が既知の好適な(発現)ベクターに挿入することによって得られる。好適な発現ベクターの好ましいが非限定的な幾つかの例は、以下の実施例において使用されるもの、及び本明細書中に言及したものである。
【0095】
本発明の核酸及び/又は本発明の遺伝子構築物は、宿主細胞又は宿主生物を形質転換するため、すなわち本発明のナノボディ若しくはポリペプチドを発現及び/又は産生させるため、又は遺伝子ワクチン接種のために使用することができる。好適な宿主又は宿主細胞は当業者にとって明らかであり、例えば、任意の好適な真菌、原核若しくは真核の細胞若しくは細胞株、又は任意の好適な真菌、原核若しくは真核の生物であり得る。
【0096】
本発明の非限定的な一実施形態によれば、本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ又はポリペプチドはグリコシル化されている。本発明の別の非限定的な実施形態によれば、本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ又はポリペプチドはグリコシル化されていない。
【0097】
本発明との関連で、「遺伝子ワクチン接種」は、核酸配列、例えばDNA配列を、上記核酸配列によりコードされたタンパク質に対する免疫応答を誘導するのに好適な標的動物に移入させる任意の既知の方法又は手段を含む。当業者にとって遺伝子ワクチン接種の標準方法は既知である。本発明によれば、遺伝子ワクチン接種を、無針ジェット注射により、バリスティック法により、タトゥーのような針による注射により、パッチによる皮膚上へのDNAの局所適用により、又はこれらの投与方法のいずれかの後のin vivoエレクトロポレーションにより行うことができ、さらにDNAの皮内投与、筋肉内投与又は皮下投与により行われるワクチン接種を含む。
【0098】
遺伝子ワクチン接種に関して、「遺伝的」という用語は、例えば本明細書で規定のような任意の好適なタイプ又は種類の核酸分子、例えばDNA、RNA、cDNA、二本鎖DNA、例えば修飾ヌクレオチド(例えばPNA)を含む核酸分子を表し、ここで上記核酸分子は本明細書で規定のように細胞関連抗原をコードし、免疫応答を生じることができるように非ヒト動物において発現を引き起こすのに好適である。
【0099】
核酸分子の例には、DNA、RNA、PNA、cDNA、二本鎖DNA、及びin vivo又はin vitroで例えば安定性を増大させる化学修飾を含む他の形態の核酸分子が含まれる。
【0100】
核酸分子は発現ベクター、プラスミド、又は動物において抗原を発現するのに好適な任意の他の核酸分子若しくは遺伝的構築物の形態であり得る。好適な核酸分子が当業者にとって既知であり、市販の発現ベクター及びプラスミドを含む。具体的であるが、非限定的な例としては、市販のpVAX1構築物、又はAldevronから取得可能なB型肝炎小型表面抗原(HBSAg)をコードする真核生物発現ベクターpRc/CMV−Hbs(複数可)(これらは対象となる抗原を発現するルーチン手段により改変することができる)が挙げられる。
【0101】
哺乳動物細胞における使用のためのベクターの幾つかの非限定的な例としては、pMAMneo(Clontech)、pcDNA3(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)及び1ZD35(ATCC 37565)、並びにアデノウイルスに基づく発現系等のウイルスに基づく発現系が挙げられる。
【0102】
遺伝子ワクチン接種は非ヒト動物において標的抗原を発現するのに好適な要素を含む、好適な核酸又は遺伝的構築物により行われる。このような要素は、対象となる立体構造エピトープが抗原の構造情報により表される場合、この構造情報をコードする要素、又はその一部を含む。遺伝的構築物は、発現の制御に関連する要素、例えば好適なプロモーター、エンハンサー、ターミネータ及び当業者にとって既知の他の制御配列も含み得る。具体的には本発明は、in vivoトランスフェクション後の構成的発現を可能にするプロモーターの使用も包含する。好適なプロモーターの具体的であるが、非限定的な例は構成的なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。
【0103】
当業者には、哺乳動物細胞における発現のためのプロモーターを含むが、これらに限定されない多くのさらなる好適なプロモーターが既知である:ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期エンハンサー/プロモーター;プロモーターがTetリプレッサーによって制御可能なように2個のテトラサイクリンオペレーター配列を含有するヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーター変異体;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)プロモーター;ラウス肉腫ウイルスの長末端反復配列(RSV LTR)エンハンサー/プロモーター;ヒト、チンパンジー、マウス又はラット由来の伸長因子1α(hEF−1α)プロモーター;SV40初期プロモーター;HIV−1の長末端反復配列プロモーター;βアクチンプロモーター。
【0104】
本発明は当該技術分野で既知の方法による好適な量の遺伝子ワクチン接種に必要とされる核酸分子の産生を包含する。例えば、エンドトキシン−低プラスミドDNAを製造業者の取扱説明書に従ってエンドトキシンフリーGigaprepキット(Qiagen)を用いて産生することができる。
【0105】
遺伝子ワクチン接種のために、本明細書に記載の核酸分子を好適なやり方で配合することができる。例えば核酸分子、例えばベクター又はプラスミドをエンドトキシンフリーHO、好ましくはLAL(カブトガニ血球抽出成分(limulus amaebocyte lysate))HO(すなわちLALによりエンドトキシンに関して試験した水)中で若しくはLAL HO中のエンドトキシンフリーの0.9% NaCl中で、又は当業者にとって既知の別の好適なバッファー若しくは溶液中で最終的に再構成する。再構成された核酸分子を−20℃の一定分量の溶液中に保管することができる、又は代替的に使用前の再構築のために凍結乾燥形態で保管することができる。
【0106】
核酸分子は、遺伝子ワクチン接種における使用に好適な希釈率に、例えば0.1mg/ml〜10mg/ml、具体的には1mg/ml〜5mg/ml、より具体的には1mg/mLの濃度で希釈する。
【0107】
遺伝子ワクチン接種のために、核酸分子を本明細書で概説されるように好適なやり方で動物に投与する。DNAの好適な皮内適用方法の具体例には、無針ジェット注射(Pig−jet)、タトゥー法(Bins, et al., Nature Medicine 11:899-904)、Vacci−jetを用いた無針ジェット注射(Robbins Instruments, USA)、DNAを投与するためのバリスティック法としてのパッチ又はヘリオス遺伝子銃(Biorad)による皮膚上へのDNAの局所投与が含まれる。全てのDNA投与方法の後に、細胞トランスフェクション効率を高めるためにin vivoエレクトロポレーションを行うことができる。
【0108】
上記の方法のいずれかに関して、核酸は好適な担体と結び付けることができる。例えば、核酸は粒子(金粒子を含むが、これに限定されない)と結び付けることができる。当業者には核酸を好適な担体と結び付けるルーチン技法が既知である。
【0109】
本発明との関連で、「非ヒト動物」は、脊椎動物、サメ、哺乳動物、トカゲ、ラクダ科動物、ラマ、好ましくはラクダ科動物、最も好ましくはラマ又はアルパカを含むが、これらに限定されない。
【0110】
B)本発明の方法
本発明は本明細書で規定のように細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を生成する方法に関する。該方法は以下の工程を含むが、これらに限定されない:
a)非ヒト動物に、上記細胞関連抗原、又は上記細胞関連抗原のドメイン若しくは特定部分をコードする核酸、又は例えば免疫調節遺伝要素との遺伝子融合体としての上記細胞関連抗原のドメイン若しくは特定部分、又はラクダ科動物オーソログ配列上でグラフト化した上記細胞関連抗原のドメイン若しくは特定部分を遺伝子ワクチン接種する工程;並びに
b)任意で、細胞関連抗原(又は上記抗原の抗原ドメイン若しくは特定部分)を発現する天然細胞又はトランスフェクト細胞を含む細胞、細胞由来の膜抽出物、豊富な抗原を内包する小胞若しくは任意の他の膜誘導体、リポソーム、又は細胞関連抗原を発現するウイルス粒子から選択される天然立体構造で上記抗原を動物に追加免疫する工程;
c)上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関して、上記非ヒト動物に由来する免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程。
【0111】
そのため包括的には、本発明の方法は、本明細書で規定のような非ヒト動物の遺伝子ワクチン接種を含む。1つの特定の実施形態では、非ヒト動物はラクダ科動物である。
【0112】
本発明の特定の利点は、広範な抗原に広く適用可能である、免疫グロブリン配列を生成するロバストな方法が提供されることにある。本発明の方法はタンパク質抗原の接近可能性(accessibility)に限定されない。特に、精製された抗原を必要としない。有利なことに該方法は、遺伝子ワクチン接種を単に使用することにより該方法を行うことができることから、抗原が細胞で発現される又は膜環境に存在する必要がない。したがって、本発明の方法は上記で例示されるような抗原のいずれにも広く適用可能であるが、それに限定されない。特に本方法は、対応する核酸配列が既知である、又はルーチン手段により同定することができる抗原に適用可能である。
【0113】
そのため、本発明はこのようなロバストで広範な適用性を欠いた従来技術の方法と比べて有利である。特にラクダ科動物、特にラマ等の動物において免疫グロブリン配列を生成するこのようなロバストな方法に関して当該技術分野では教示がない。
【0114】
具体的には、本発明は細胞関連抗原に対する免疫グロブリン配列を生成する改善された方法を提供するが、該方法は、1つの特定の実施形態によればDNAワクチン接種により免疫応答を誘導し、その後細胞関連抗原と結合することができる免疫グロブリン配列に関してスクリーニングすることにより精製タンパク質による追加免疫の必要がなくなる。さらに具体的には本発明は、細胞関連抗原に対する免疫グロブリン配列(ナノボディを含む)を生成する方法であって、
a)ラクダ科動物に上記細胞関連抗原(又は上記抗原の抗原ドメイン若しくは特定部分)をコードする核酸をワクチン接種する工程;並びに
b)上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関して、上記ラクダ科動物に由来する免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程、
を含む、方法を提供する。
【0115】
驚くべきことに、血清抗体力価がタンパク質又は細胞に基づいた免疫付与と比較して、DNAワクチン接種後でより低くなった場合であっても、特異的な免疫グロブリン配列に関するスクリーニングにより、同程度のヒット率が与えられた、すなわち同程度の頻度の特異的な免疫グロブリン配列を得ることができることも見出されている。さらに、同定された結合因子の親和性は(本明細書で規定のように)高かった。このことは、より特異的な高親和性の免疫グロブリン応答をもたらし、特異的な免疫グロブリン配列のより効率的なスクリーニング及び単離を可能にするという本発明の特定の利点を明確に示している。特に免疫付与された動物が血清抗体力価に関してより低い免疫応答を示す場合、このような利点をDNAワクチン接種により得ることができることは従来技術からは予測不可能であった。
【0116】
代替的な実施形態において、本発明は、細胞関連抗原に対する免疫グロブリン配列(ナノボディを含む)を生成する方法であって、
a)ラクダ科動物に上記細胞関連抗原(又は上記抗原の抗原ドメイン若しくは特定部分)をコードする核酸をワクチン接種する工程;
b)例えば細胞関連抗原(又は上記抗原の抗原ドメイン若しくは特定部分)を発現するトランスフェクト細胞の使用により、細胞膜抽出物を用いて、又は細胞関連抗原を発現するウイルス粒子を用いて、天然立体構造で細胞関連抗原をラクダ科動物に追加免疫する工程;並びに
c)上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関して、上記ラクダ科動物に由来する免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程、
を含む、方法を提供する。
【0117】
ワクチン接種
本発明の方法では、動物において免疫応答を誘導するのに好適な遺伝子ワクチン接種を行う。より具体的には、遺伝子ワクチン接種は動物における免疫グロブリン配列の生成に反映されるように免疫応答を誘導するのに好適でなければいけない。動物の血清中での抗体応答の検出は「血清変換(serum conversion)」とも称される。当業者はルーチン手段により抗体応答を決定することにより遺伝子ワクチン接種をモニタリングすることができる。このため当業者は、適切な抗体応答を誘導するのに必要となる適正な投与量及び頻度を容易に決定することができる。
【0118】
好ましくは、遺伝子ワクチン接種は適正な抗体力価を誘導する。抗体力価は、単離及び/又はスクリーニングによる免疫グロブリン配列の生成を可能にする特定の抗体産生細胞の数に相当する。しかしながら上記で指摘されるように、本発明の方法は、従来の方法と比較して低い血清抗体力価しかない場合であっても、高い親和性の免疫グロブリン配列の単離を成功させる。例えば、遺伝子ワクチン接種は、タンパク質の追加免疫後に得られる血清力価(従来のタンパク質免疫付与技法により取得可能な抗体力価と同程度である)と比較して、例えば3分の1の血清抗体力価で高親和性の免疫グロブリン配列の単離を成功させる。1つの特定の実施形態では、該血清抗体力価は5分の1、好ましくは10分の1であり得る。血清力価を例えばELISA又はFACSを含む従来方法により決定することができる。
【0119】
本発明に関する重要なさらなる態様は遺伝子ワクチン接種により得られる抗体レパートリーの幅である。特に抗体応答が直鎖エピトープ及び立体構造エピトープの両方に指向性を有し、重要なことに膜依存性の立体構造エピトープに指向性を有することが本発明の一態様である。
【0120】
このため本発明は、非ヒト動物において適正な力価及び幅の抗体応答を得るのに好適な遺伝子ワクチン接種に関する。
【0121】
一実施形態では本発明は、動物の1箇所又は複数箇所の部位での単回遺伝子ワクチン接種を伴い得る。例えば、ラクダ科動物は1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所又は複数箇所の部位(互いに隣接してもよく又は動物の全身の好適な位置に分散していてもよい)で注射することができる。具体例では、ラクダ科動物、例えばラマは頸部の最大5箇所の隣接部位で遺伝子ワクチン接種を受ける。遺伝子ワクチン接種の領域は清浄であり、毛がない方がよいことは自明である。そのため本発明は、好適な除毛手段、例えば剪毛、及び化学的手段、例えば脱毛クリーム、又はテープによる物理的除毛を包含する。
【0122】
本発明の一態様では、驚くべきことにDNAワクチンを投与する位置が取得可能な免疫グロブリン配列に、特に多様性およびエピトープ選好に関して影響を与えることが見出されている。
【0123】
本発明は、反復遺伝子ワクチン接種、例えば好適な間隔で2連続、3連続、4連続又は5連続の遺伝子ワクチン接種を包含する。このような間隔は好ましくは数日〜数週間、例えば3日〜4週間、より好ましくは5日〜2週間である。好適な間隔は、0日目、3日目、7日目、21日目、24日目、28日目、56日目、59日目及び63日目、代替的には0日目、14日目、28日目及び57日目、代替的には0日目、3日目、7日目、21日目、24日目、28日目、56日目、59日目及び63日目、代替的には0日目、14日目、28日目及び42日目での遺伝子ワクチン接種を含む。
【0124】
1つの具体的な実施形態では、遺伝子ワクチン接種は適正な抗体応答が動物で誘起されるまで、毎週又は隔週で行われる。
【0125】
さらなる具体的な実施形態では、例えば無針注射による皮内投与は0日目、14日目、28日目及び57日目に行われる。別の具体的な実施形態では、短間隔のタトゥー法、タトゥーイング(tattooing)は0日目、3日目、7日目、21日目、24日目、28日目、56日目、59日目及び63日目に行われる。さらなる具体例は、0日目、14日目、28日目及び42日目での無針注射による免疫付与を含む。遺伝子ワクチン接種のバリスティック法では、用量は0日、14日、28日及び42日の間隔で投与した、最大500psi〜600psiの圧力設定での金1mg当たり1μgのDNA 12ショット(shots)であり得る。
【0126】
1つの特定の実施形態では、本発明は、好適なDNA投与技法、その後のin vivoエレクトロポレーションを用いた遺伝子ワクチン接種に関する。驚くべきことに遺伝子ワクチン接種の従来方法と比較してこの投与形式が有益であることが見出されている。例えば、in vivoエレクトロポレーションはワクチン接種の有効性に関して有益である、すなわちより顕著で、及び/又はより信頼性のある免疫応答をもたらす。これに関して「より信頼性がある」とは、個々の動物間で観察される免疫応答、特にスクリーニングにより取得可能な「ヒット」の数の変動がより低いことを意味する。さらに、エレクトロポレーションの使用は、システムの設定を変えることにより、ワクチン接種プロトコルを要求される侵入深さに容易に適合させる、例えば皮内、皮下又は筋肉内のワクチン接種間で選択するのを可能にする。さらに、幾つかの動物、例えばラクダ科動物の比較的厚く頑丈な皮膚を考えると、エレクトロポレーションは良好なワクチン接種有効性、及び異なる皮膚特性を特徴とする、免疫付与の様々な異なる位置に対する即時の適合も可能にする。
【0127】
当業者は遺伝子ワクチン接種に好適な用量の核酸分子を選択することができる。例えば、0.1mg〜10mgの核酸、具体的には1mg〜5mg、より具体的には1mg〜2mg、又は1mgの核酸を遺伝子ワクチン接種の1回の(例えば0日目での)適用に使用することができ、これにより反復遺伝子ワクチン接種の回数に応じた累積用量が得られる。
【0128】
好適な抗体応答が動物で確認される場合、本発明の一実施形態では免疫グロブリン配列は、本明細書で記載の方法により上記動物から直接、すなわちタンパク質の追加免疫を行わずに単離することができる。抗体応答の検出を、ルーチン手段、例えばELISA、RIA、FACS、又は抗体を検出する任意の他の方法により行うことができる。
【0129】
タンパク質の追加免疫
代替的には該方法は、動物にタンパク質の好適な供給源を追加免疫することも含む。特に動物に本明細書で規定のような細胞関連抗原、特に膜貫通抗原を天然立体構造で含む組成物を追加免疫することが想定される。このような組成物は抗原を発現する細胞、又は細胞の断片若しくは誘導体、例えば膜画分、単離オルガネラ、又は他の好適な調製物を含み得る。ウイルス、リポソーム、ミセル、又は天然立体構造で細胞関連抗原を含有するのに好適な他のシステムも想定される。
【0130】
本発明の一態様では、抗原を同種細胞で発現させることができる。例えばラクダ科動物の免疫付与のために、抗原をラクダ科動物細胞で発現させることができる。ラクダ科動物の免疫系はラクダ科動物細胞に寛容である、すなわちこの細胞に含まれる抗原のほとんどに対して免疫応答を開始しない(mount)。しかしながら、異種抗原(本明細書で規定のような細胞関連抗原を含むが、これに限定されない)が上記細胞に人工的に導入される場合、動物の免疫系は上記抗原に特異的に指向性を有する免疫応答を開始する。これは免疫応答が主に対象となる抗原に指向性を有する、すなわちこの抗原に対する特異性の向上を特徴とするという利点を有する。当業者には、このアプローチを関連の種に使用することができることを理解されたい。例えば、密接な関連性を考慮してラクダ由来細胞をラマの免疫付与に使用することも、またその逆も可能である。
【0131】
免疫付与する動物と同種の任意の好適な細胞を使用することができる。例えば、ラクダ科動物細胞をラクダ科動物の免疫付与に使用することができる、例えばラマ細胞をラマの免疫付与に使用することができる。好適な細胞は自発的に不死化した細胞、例えば癌細胞、又は未分化細胞、例えば胚由来細胞を含むが、これらに限定されない。好適な細胞は既知の手段により人工的に不死化した細胞も包含する。
【0132】
細胞をin vivoでの増殖が低減又は排除されるように動物への投与前に有利に処理することができる。好適な処理は化学的処理及び物理的処理を含むが、これらに限定されない。好適な物理的処理の具体的な一例は細胞が増殖することのないようにするX線による照射である。
【0133】
上記の細胞のいずれかを本明細書で規定のような非ヒト動物を免疫付与するためにのみ、すなわちDNAワクチン接種とは独立して使用することもできる。
【0134】
好ましくはタンパク質を、免疫応答を増強させるために上記の調製物のいずれかにおいて濃縮する。例えば、高効率プロモーターを用いた細胞における組換え発現を、細胞1個当たりの抗原の量を増大させるのに使用することができる。一実施形態では、非ヒト動物としてラクダ科動物を用いる場合、対象となる抗原を発現する細胞はラクダ科動物由来細胞、好ましくは不死化したラクダ科動物由来細胞であり得る。該細胞は上記抗原を発現するように遺伝子修飾する。
【0135】
さらに当業者には、本発明がワクチン接種に関して免疫応答を高めるために一般的に使用されるアジュバントの使用も包含することを理解されたい。タンパク質調製物は例えばゲル又はエマルション等の免疫応答を高める物理的形態でもあり得る。アジュバントの具体的であるが、非限定的な例としては、Stimune又はSpecol(CEDI Diagnostics, Lelystad, The Netherlands)、完全フロインドアジュバント、フロインド不完全アジュバント、TiterMax(金)、モノホスホリルリピドA(MPL)、Alum、QuilA、CpG DNAが挙げられる。
【0136】
本発明は、天然立体構造でのタンパク質の上記供給源による単回又は複数回の追加免疫(任意でアジュバントを用いる)を含む。タンパク質の追加免疫を好適な間隔で行い、この間隔はルーチン手段により、例えば動物において免疫グロブリン応答をモニタリングすることにより決定することができる。
【0137】
追加免疫を皮内、皮下又は筋肉内の投与を含むが、これらに限定されない異なる投与経路により行うことができる。
【0138】
1つの特定の実施形態では、本発明は、好適な免疫応答を誘発するために動物において要求されるタンパク質の投与回数を低減することに関する。このため、遺伝子ワクチン接種−タンパク質追加免疫(「初回刺激−追加免疫(prime-boost)」とも称される)戦略が動物の反復タンパク質追加免疫の必要性を排除する。一例としてはこの戦略が動物に対する負担を軽減し、手順を容易にすると共に加速させ、免疫グロブリン配列を産生するのに必要となる抗原の量を減らす。このため、本発明の遺伝子ワクチン接種−タンパク質追加免疫戦略により、遺伝子ワクチン接種後にタンパク質の追加免疫を行わない又は1回だけ行う場合であっても、驚くべきことに動物の血液中で複数回のタンパク質の追加免疫を含む従来の方法と同じ抗体力価を得ることができる。
【0139】
追加免疫のための抗原源として細胞を用いた初回刺激−追加免疫戦略のさらなる特定の利点は、抗体応答が既知のアプローチと比べて特に高い特異性を特徴とすることにある。言い換えれば、DNA初回刺激のために、細胞追加免疫(cell boost)により誘起されるリコール(recall)免疫応答が主に対象となる抗原に指向性を有し、細胞上の任意の他の抗原決定基は免疫応答全体に有意な影響を与えない。このため、本発明によるDNA初回刺激−細胞追加免疫は特異性に関して特に有益であり、これによりスクリーニングの際の有益な「ヒット率」、すなわち多数の特異的免疫グロブリン配列が生じる。
【0140】
このためタンパク質の追加免疫を含む実施形態では、特定の技術的効果が免疫応答の向上を含む。さらに、同じB細胞系列に属する異なる機能的ナノボディの配列多様性が高まる。本発明による追加免疫が遺伝子免疫付与のみの後で同定された配列と比べてこれまでに同定されてないアミノ酸置換の導入を引き起こし、これは追加免疫媒介性のin vivo成熟の指標である。
【0141】
免疫グロブリン配列のスクリーニング/単離
本明細書に記載の遺伝子ワクチン接種は動物において免疫応答を誘導する。それから、免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリを動物から単離する。「単離」は、a)例えば好適な組織をサンプリングすることによる動物からの配列の分離、及びb)例えばスクリーニング、すなわち特異的バインダーの「ヒット数」の単離による特異的配列からの選出を含む。
【0142】
当業者は免疫グロブリン配列の好適なセット、コレクション又はライブラリを確立する技法、及び対象となる配列に関してそれらをスクリーニングする技法に精通している。糖業者は例えば国際公開第02/085945号及び国際公開第04/049794号に記載の技法を一般的に参照することができる。国際公開第99/37681号、国際公開第01/90190号、国際公開第03/025020号及び国際公開第03/035694号に記載の技法及び方法も参照することができる。代替的に、本発明に従って免疫付与した動物から得られる、例えばVHHライブラリに由来する改良型の合成ライブラリ又は半合成ライブラリ(例えばランダム突然変異誘発及び/又はCDRシャッフリング(例えば国際公開第00/43507号に記載されているようなもの)等の技法によって、VHHライブラリから得られるVHHライブラリ)を使用してもよい。
【0143】
本発明は免疫グロブリン配列を含む動物からの物質(例えば、これに限定されないが抗体産生細胞)の単離を含む。例えば、末梢血単球(PBMC)を従来の手段により単離することができる。他の物質は末梢血リンパ球(PBL)、末梢リンパ節、特に免疫付与部位、脾臓、骨髄のリンパを集めるリンパ節、又は他の免疫学的に関連がある物質を含む。
【0144】
具体的であるが、非限定的な一例では、B細胞含有血液試料を回収することができ、末梢血リンパ球(PBL)を標準方法により精製することができる。例えば、Ficoll−Paque(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)での濃度勾配遠心分離を製造業者の取扱説明書に従って用いることができる。
【0145】
例えば動物から単離されたPBLを含む上記の物質のいずれかは多くの免疫グロブリン配列、すなわち免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリを含む。
【0146】
例えばPBMCで発現したこの多くの免疫グロブリン配列の中でも、所望の免疫グロブリンの特異性で、例えば細胞のイムノパニング(immunopanning)により直接単離することができる。
【0147】
代替的に、免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをコードする核酸配列を細胞又はウイルスのセット、コレクション又はサンプルで単離、移入及び発現させることができる。
【0148】
遺伝物質を所望の特異性を有する免疫グロブリン配列をコードするこのような配列を単離するのに好適な手段によりさらに単離及びプロセシングすることができる。このために、例えば上記の多くの免疫グロブリン配列をコードする核酸配列を好適な手段により該物質から抽出することができ、発現のためにレシピエント細胞又はウイルスに移入することができる。当業者は免疫グロブリン配列の抽出に好適な技法、及び発現のための、例えば細胞又はウイルスにおける発現ライブラリでのこれらの配列の操作に精通している。幾つかの非限定的な例は例えば大腸菌(E. coli)又はバクテリオファージにおける発現ライブラリの生成を含む。
【0149】
具体的であるが、非限定的な一例では、全RNAを上記物質から抽出することができる。全RNAを既知の手段によりcDNAに変換することができる。このcDNAを用いて、例えばナノボディレパートリー等の免疫グロブリン配列を例えばPCR又は当該技術分野で既知のネステッドPCR法(上記の参考特許文献を参照されたい)を含むルーチン手段により増幅することができる。
【0150】
免疫グロブリン配列を含む核酸分子を好適な制限酵素の使用により消化することができ、その後任意で例えばゲル電気泳動により精製する。消化した配列を好適な遺伝子構築物、例えばベクター又はプラスミドにおける対応する制限部位にライゲートすることができる。好適なベクターの非限定的な例としては、ファージディスプレイベクター、例えばpAX50が挙げられる。pAX50はLacZプロモーター、大腸菌ファージpIIIタンパク質コード配列、アンピシリン又はカルベニシリンに対する抵抗性遺伝子、マルチクローニング部位(Sfil制限部位及びBstEII制限部位を内包する)、並びにgene3及びエルウィニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)pelBモチーフからなるキメラリーダー配列を含有する。このディスプレイベクターは、geneIII産物との融合タンパク質として個々のナノボディを発現する、ファージ粒子の産生を可能にする。
【0151】
ライゲートした核酸分子を大腸菌のような好適な宿主生物の形質転換によりライブラリを得るのに使用することができる。当業者には、好適な形質転換技法、例えば化学的方法、エレクトロポレーション等が既知である。このようにして、好適なサイズ、例えば1E7〜1E8個のライブラリを得ることができる。
【0152】
一実施形態では、ライブラリを、細菌を対数期(例えばOD600=0.5)まで成長させることによりレスキューする(rescued)ことができ、その後ヘルパーファージを感染させ、pIII融合タンパク質としてファージの先端上でクローニング免疫グロブリン配列のレパートリーを発現する組換えファージを得て、得られたファージを例えば4℃でさらなる使用のために例えば濾過滅菌後に保管することができる。
【0153】
細胞又はウイルスのセット、コレクション又はライブラリを、上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を発現する細胞又はウイルスに関してスクリーニングする、より具体的には上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列を細胞又はウイルスから精製及び/又は単離した後に、上記免疫グロブリン配列を発現させることができる。
【0154】
このため本発明は、非ヒト動物に存在する多くの配列から対象となる抗原に指向性を有する免疫グロブリン配列(又はこれをコードする核酸配列)を選択及び単離するのに好適なスクリーニング工程(複数可)も包含する。このようなスクリーニング方法は、対象となる免疫グロブリン配列に関連する、細胞、ウイルス、発現構築物、又は配列を選び出すのに好適な方法を全て包含する。当業者はファージディスプレイ、イムノパニング等を含む多くの好適な技法に精通している。当然のことながら本発明は、既知の方法の組合せにも関する。好適な組合せは当業者にとって明らかであろう。
【0155】
1つの特定の実施形態では、免疫グロブリン配列を発現するファージのライブラリを好適な細胞関連抗原源(対象となる抗原を含む(固定化)細胞又はリポソームを含むが、これらに限定されない)での1回又は複数回のパニングにより選択することができる。
【0156】
例えばイムノパニングによる1回の選択の後、アウトプット(output)をさらなる選択及び/又はプロセシングに好適な発現ベクターへプールとして再クローニングすることができる。
【0157】
本発明によれば、上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を精製及び/又は単離することができる。
【0158】
当業者は免疫グロブリンの産生に標準技法を使用することができる。このため対象となる免疫グロブリン配列をコードする細胞、ウイルス又は核酸配列をスクリーニング法により同定した後、上記免疫グロブリン配列を例えば組換え発現により産生することができる。この目的で、細胞若しくはウイルスを直接使用することができる、又は免疫グロブリン配列をコードする核酸を好適な宿主細胞を含む好適な発現系に移入することができる。宿主細胞としては、哺乳動物系、例えばCHO細胞、真核生物系、例えば昆虫細胞、又は例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含む真菌、及び原核生物系、例えば大腸菌が挙げられる。当業者には、これらの宿主系で免疫グロブリン配列を発現する際に使用するのに好適な発現ベクター及びツールが既知である。
【0159】
本発明の免疫グロブリン配列、ナノボディ及び核酸を、本明細書の記載から当業者にとって明らかなようにそれ自体既知のやり方で調製することができる。当業者には、どの具体例が遺伝子ワクチン接種に、免疫グロブリン配列のセット、コレクション若しくはライブラリの生成及び/又はスクリーニングに、又は抗原特異的配列の選択後の免疫グロブリン配列の産生に好適であるかを理解されたい。
【0160】
例えば、本発明のポリペプチドを、抗体の調製のために、特に抗体断片((単一)ドメイン抗体及びScFv断片を含むが、これらに限定されない)の調製のためにそれ自体が既知の任意のやり方で調製することができる。
【0161】
当業者にとって明らかであるように、本発明のポリペプチドを調製する特に有用な一方法は概して、
好適な宿主細胞又は宿主生物(本明細書で「本発明の宿主」とも称される)において、又は本発明の上記ナノボディ又はポリペプチドをコードする核酸(本明細書で「本発明の核酸」とも称される。この用語は特定の文脈から明らかなように、ワクチン接種のための遺伝子構築物にも使用される)の別の好適な発現系において発現を行う工程、
任意でその後、このようにして得られた本発明のナノボディ又はポリペプチドを単離及び/又は精製する工程、
を含む。
【0162】
さらに、産生された免疫グロブリンを、沈殿(precipitation)、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、HPLC、濾過及び他の既知の精製法を含む標準技法により精製することができる。さらに、免疫グロブリン配列は、例えばエピトープ特異性、結合反応速度等を決定するために、既知の方法によりさらに特徴付けることができる。
【0163】
免疫グロブリン配列
本発明は、本明細書に記載の方法により取得可能な免疫グロブリン配列、すなわちポリペプチド分子、上記免疫グロブリン配列を含む組成物にも関する。このような組成物は研究目的のための組成物、及び治療用の薬学的組成物を含む。当業者は、免疫グロブリン配列の治療適用のための標準技法及び配合物に精通している。このため一態様では、本発明の方法は薬学的組成物としての特定の免疫グロブリン配列及びそれらの配合物の精製を包含する。
【0164】
本発明は、本質的に単離した形態で、例えば少なくとも90%純粋な、少なくとも95%純度な、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.99%純粋な形態で免疫グロブリン配列を提供する。非限定的な一実施形態では、純粋であるとは調製物中に他の免疫グロブリンの配列が存在しないことを意味する。さらなる非限定的な実施形態では、純粋は産生生物由来の混入物(contaminants)が組成物中に存在しないことを意味する。
【0165】
本発明は、本明細書で開示の方法により取得可能な免疫グロブリン配列の誘導体である免疫グロブリン配列も包含する。例えば本発明は、当該技術分野で既知の方法により取得可能なヒト化免疫グロブリン配列を包含する。さらに本発明は、当該技術分野で既知の方法によっても取得可能なラクダ化免疫グロブリン配列を包含する。本発明は、免疫グロブリン配列の既知の構造変異体も包含する。
【0166】
B型肝炎小型表面抗原に指向性を有する免疫グロブリン配列
本発明は、(本明細書で規定のように)B型肝炎小型表面抗原に指向性を有する免疫グロブリン配列、並びに1つ又は複数のこのような免疫グロブリン配列を含むか又はこれから本質的になる、化合物又は構築物、特にタンパク質及びポリペプチド(それぞれ本明細書で「本発明の免疫グロブリン配列」、「本発明の化合物」及び「本発明のポリペプチド」とも称される)に関する。本発明は、このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドをコードする核酸(本明細書で「本発明の核酸」又は「本発明のヌクレオチド配列」とも称される)に;このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドを調製する方法に;このような免疫グロブリン配列若しくはポリペプチドを発現する、又は発現することができる宿主細胞に;このような免疫グロブリン配列、ポリペプチド、核酸及び/又は宿主細胞を含む組成物、特に薬学的組成物に;並びに特に予防目的、治療目的若しくは診断目的、例えば本明細書で言及される予防目的、治療目的若しくは診断目的のためのこのような免疫グロブリン配列若しくはポリペプチド、核酸、宿主細胞及び/又は組成物の使用にも関する。
【0167】
イオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列
本発明は、(本明細書で規定のように)イオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列に、並びに1つ又は複数のこのような免疫グロブリン配列を含むか又はこれから本質的になる、化合物又は構築物、特にタンパク質及びポリペプチド(本明細書ではそれぞれ、「本発明の免疫グロブリン配列」、「本発明の化合物」、及び「本発明のポリペプチド」とも称される)に関する。本発明は、このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドをコードする核酸(本明細書では「本発明の核酸」又は「本発明のヌクレオチド配列」とも称される)に;このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドを調製する方法に;このような免疫グロブリン配列又はポリペプチドを発現する又は発現することが可能な宿主細胞に;このような免疫グロブリン配列、ポリペプチド、核酸及び/又は宿主細胞を含む組成物、特に薬学的組成物に;並びに特に予防目的、治療目的若しくは診断目的、例えば本明細書で言及される予防目的、治療目的若しくは診断目的のためのこのような免疫グロブリン配列若しくはポリペプチド、核酸、宿主細胞及び/又は組成物の使用にも関する。
【0168】
Xu et al., NatureBiotechnology, October 2005, 1289-1293 and Benham, Nature Biotechnology,October 2005, 1234-1235は、6回膜貫通ドメイン構造を有するイオンチャネルを遮断するアプローチを記載しており、ここでは特定の細胞外ループ、すなわち第3の細胞外領域(E3)に指向性を有する、ウサギで産生されるポリクローナル抗体が使用される。しかしながら、ウサギポリクローナル抗体はヒトにおける治療的使用に適さない。このため本発明の目的はイオンチャネルに、及び/又はイオンチャネルの生物学的及び/又は生理学的活性に関連する疾患及び障害の予防、治療又は診断に使用することができる治療的化合物を提供することである。本明細書で使用される場合、疾患又は障害の「予防」及び「治療」は一般的に、疾患又は障害を患う又はその危険性がある被験体に有益な任意の予防効果又は治療効果を含み、例えば疾患の1つ又は複数の症状を緩和又は予防すること、及び疾患の発症及び/又は(さらなる)進行を予防する又は遅らせることも含む。
【0169】
特に本発明の目的は、イオンチャネルを調節することが可能であるこのような治療的化合物を提供することである。「イオンチャネルの調節」とは概して本明細書では、イオンチャネルと接触する際、又はそうでなければ好適にはイオンチャネルと相互作用する際(すなわち好適なin vitro、細胞又はin vivoアッセイの条件下で及び/又は好適な動物モデルで;特に生理学的条件下で、すなわち被験体への好適な投与の際)、化合物がイオンチャネルに関して及び/又は上記イオンチャネルに関連する生物学的及び/又は生理学的機能に関して、アゴニスト効果又はアンタゴニスト効果を与えることを意味する。
【0170】
本発明の別の目的は、予防若しくは治療における(すなわち本明細書にさらに記載のようにこのような治療を必要とする被験体に1つ又は複数の化合物を投与することによる)、又は診断目的のための(これも本明細書にさらに記載のように)本明細書に記載の治療的化合物の使用によりそれぞれ治療、予防及び/又は診断することができる疾患及び障害の予防、治療及び/又は診断に使用することができる治療的化合物を提供することである。特に本発明の目的は、少なくとも1つのイオンチャネルを(本明細書で規定のように)調節することにより、それぞれ治療、予防及び/又は診断することができる疾患及び障害の予防、治療及び/又は診断に使用することができる治療的化合物を提供することである。さらなる目的は、ポリクローナル抗体の使用に、ウサギで産生された抗体の使用に、及び通常の四本鎖抗体の使用に関連する欠点を有しないこのような化合物を提供することである。本発明の目的は、このような化合物を容易に生成するのに使用することができる方法を提供することでもある。
【0171】
本発明の具体的であるが、非限定的な一目的は、イオンチャネルに指向性を有するタンパク質及び/又はポリペプチドを提供すること、及びXu et alにより記載された通常のポリクローナルウサギ抗体又はその断片と比較して改善した治療特性及び/又は薬理学特性及び/又は他の有益な特性(例えば調製しやすさの改善及び/又は製品コストの低減等)を有する、このようなタンパク質又はポリペプチド用の免疫グロブリン配列を提供することである。これらの改善した有益な特性は本明細書のさらなる記載から明らかになるであろう。上記の目的は概して、本明細書に記載の免疫グロブリン配列及び組成物(の使用)により達成される。
【0172】
本発明の免疫グロブリン配列、ポリペプチド及び組成物は概して、イオンチャネルの開放及び/又は閉塞(開放及び/又は閉塞の増進)を調節するのに、及び/又はイオンチャネルを介したイオンの流れを調節するのに(すなわち不可逆的であってもよいが、好ましくは可逆的に、このような流れを増大若しくは低減するのに、又はこのような流れを部分的に若しくは完全に遮断するのに)使用することができる。このため、本発明のポリペプチド及び組成物を、イオンチャネル及び/又はイオンチャネルを介したイオンの流れがかかわる生物学的な機能、経路、応答、効果、機構及び作用を調節するのに使用することができる。特に本発明のポリペプチド及び組成物を、イオンチャネルを介したイオンの流れを(すなわち完全に若しくは部分的に、不可逆的であってもよいが、好ましくは可逆的に)低減又は阻害するのに使用することができる。このため、本発明の免疫グロブリン配列、ポリペプチド及び組成物は概して、イオンチャネルの(完全又は部分)ブロッカーとして及び/又は(完全及び部分)オープナーとして(これも不可逆的であってもよいが、好ましくは可逆的に)、及び/又はイオンチャネルの、及び/又はイオンチャネル及び/又はイオンチャネルを介したイオンの流れがかかわる生物学的な機能、経路、応答、効果、機構及び作用のアゴニストとして又はアンタゴニストとして作用することができる。このため、本発明のポリペプチド及び組成物を、イオンチャネルに関連する疾患及び障害の予防及び治療(本明細書で規定のように)に使用することができる。一般的に、「イオンチャネルに関連する疾患及び障害」は、本発明の(特にその薬学的に活性のある量の)ポリペプチド又は組成物のいずれかを、及び/又はイオンチャネルに対して活性のある既知の活性成分を、それを必要とする(すなわち疾患若しくは障害若しくは少なくとも1つのそれらの症状を有する、及び/又は疾患若しくは障害を誘発若しくは発症する危険性がある)被験体に好適に投与することにより、それぞれ予防及び/又は治療することができる疾患及び障害として定義することができる。イオンチャネルに関連するこのような疾患及び障害の例は、本明細書の開示に基づき当業者にとって明らかであり、例えば本発明の免疫グロブリン配列又は化合物/ポリペプチドが指向性を有するイオンチャネル(複数可)に応じて、本明細書で挙げられる従来技術で言及された疾患及び障害を含む。したがってこれらに限定されないが、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドを、例えば現在イオンチャネルを調節することができる活性成分により予防又は治療されている全ての疾患及び障害、例えば上記の従来技術で言及されるものを予防及び/又は治療するのに使用することができる。また本発明のポリペプチドを、このような活性成分による治療が現在開発されている、提案されている、又は将来提案若しくは開発される全ての疾患及び障害を予防及び/又は治療するのに使用することができることも想定される。さらに、本明細書中にさらに記載のそれらの有利な特性のために、本発明のポリペプチドを、これらの既知の活性成分が使用されているか、又は提案若しくは開発される疾患及び障害以外の他の疾患及び障害の予防及び治療にも使用してもよいこと、及び/又は本発明のポリペプチドが本明細書に記載の疾患及び障害を治療するのに新規の方法及びレジメンを提供ことが想定される。
【0173】
本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドの他の用途及び使用は、本明細書のさらなる開示から当業者にとって明らかになる。概して本発明は、(本明細書に規定のように)イオンチャネルに指向性を有する、及び/又は(本明細書に規定のように)これと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列、並びにこのような免疫グロブリン配列を少なくとも1つ含む化合物及び構築物、特にタンパク質及びポリペプチドを提供する。より具体的には本発明は、本明細書に規定の(さらに本明細書に記載されるような(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度、又は代替的にIC50値として好適に測定される及び/又は表される)親和性でイオンチャネルと結合することができる免疫グロブリン配列、並びにこのような免疫グロブリン配列を少なくとも1つ含む化合物及び構築物、特にタンパク質及びポリペプチドを提供する。
【0174】
特に、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、
10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で(すなわち10L/モル〜1012L/モル以上、及び好ましくは10L/モル〜1012L/モル以上、及びより好ましくは10L/モル〜1012L/モルの結合定数(K)で)イオンチャネルと結合するようなもの、及び/又は
10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)のkon速度でイオンチャネルと結合するようなもの、及び/又は
1s−1(t1/2=0.69s)〜10−6−1(t1/2が数日である略不可逆的な複合体の場合)、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)のkoff速度でイオンチャネルと結合するようなものであるのが好ましい。
【0175】
好ましくは、本発明の一価の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列を1つだけ含有するポリペプチド)が、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性でイオンチャネルと結合するようなものであるのが好ましい。本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドとイオンチャネルとの結合に関する幾つかの好ましいIC50値は、本明細書のさらなる記載及び実施例から明らかになる。イオンチャネルとの結合のために、本発明の免疫グロブリン配列は通常、その免疫グロブリン配列内に1つ又は複数のアミノ酸残基若しくは1つ又は複数のアミノ酸残基のストレッチ(すなわちそれぞれの「ストレッチ」が、(すなわち免疫グロブリン配列の一次構造又は三次構造で)互いに隣接しているか、又は互いに近接している2つ以上のアミノ酸残基を含む)を含有し、これを介して本発明の免疫グロブリン配列はイオンチャネルと結合することができ、このようにしてアミノ酸残基又はアミノ酸残基のストレッチは、イオンチャネルと結合する「部位」(本明細書で「抗原結合部位」とも称される)を形成する。
【0176】
本発明で与えられる免疫グロブリン配列は、(本明細書で規定のように)本質的に単離形態であるか、又は(本明細書で規定のように)本発明のタンパク質若しくはポリペプチド(1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列を含むか、又は本質的にこれからなってもよく、任意でさらに1つ又は複数のさらなる免疫グロブリン配列(全て任意で1つ又は複数の好適なリンカーを介して連結される)を含んでもよい)の一部を形成するのが好ましい。例えば、これに限定されないが、1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列は、全て本明細書に記載される一価、多価又は多重特異性の本発明のポリペプチドをそれぞれ提供するように、このようなタンパク質又はポリペプチド(任意で(すなわちイオンチャネル以外の1つ又は複数の他の標的に対する)結合単位としての役割を果たし得る1つ又は複数のさらなる免疫グロブリン配列を含有してもよい)における結合単位として使用してもよい。このようなタンパク質又はポリペプチドは、(本明細書に規定のように)本質的に単離形態でもあり得る。
【0177】
本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチド自体が、ジスルフィド架橋を介して任意の他の免疫グロブリン配列又は免疫グロブリン鎖と連結しない(が、1つ又は複数の分子内ジスルフィド架橋を含有しても又は含有しなくてもよい(例えば本明細書中に記載のナノボディは、CDR3とCDR1又はFR2との間にジスルフィド架橋を含有し得ることもあることが知られている))単一のアミノ酸鎖から本質的になるのが好ましい。しかしながら、1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列は、互いに及び/又は他の免疫グロブリン配列と(例えばジスルフィド架橋を介して)連結し、本発明に有用でもあり得るペプチド構築物(例えばFab’断片、F(ab’)断片、ScFv構築物、「ダイアボディ」及び他の多重特異性の構築物)を提供し得ることに留意されたい。例えばHolliger and Hudson, Nat Biotechnol. 2005 Sep; 23(9): 1126-36によるレビューを参照する。概して、本発明の免疫グロブリン配列(又はこれを含む化合物、構築物若しくはポリペプチド)が(例えば本明細書に記載の治療目的及び/又は診断目的のための)被験体への投与を目的とする場合、上記被験体において自然発生しない免疫グロブリン配列であるか、又は上記被験体において自然発生する場合は、(本明細書に規定のように)本質的に単離形態であるのが好ましい。
【0178】
薬学的用途の場合、本発明の免疫グロブリン配列(並びにこれを含む化合物、構築物及びポリペプチド)はヒトイオンチャネルに指向性を有するのが好ましく、一方で獣医学目的の場合は、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは治療する種由来のイオンチャネルに指向性を有するか、又は治療する種由来のイオンチャネルと少なくとも交差反応性を有するのが好ましいことも、当業者にとって明らかである。
【0179】
さらに、本発明の免疫グロブリン配列は、任意でかつイオンチャネルとの結合のための少なくとも1つの結合部位の他に、他の抗原、タンパク質又は標的との結合のための1つ又は複数のさらなる結合部位を含有し得る。
【0180】
関与する特定の疾患又は障害に応じて、それ自体が既知の任意の好適なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイ及び/又は動物モデル、又はこれらの任意の組合せを使用して、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチド、並びにこれを含む組成物の有効性を試験することができる。好適なアッセイ及び動物モデルは当業者に明らかであり、例えば本明細書に記載のレビュー及び従来技術で言及されるアッセイ及び動物モデルを含む。
【0181】
また本発明によれば、第1の種の温血動物由来のイオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、1つ又は複数の他の種の温血動物由来のイオンチャネルと交差反応性を示しても又は示さなくてもよい。例えば、ヒトイオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、1つ又は複数の他の種の霊長類(例えば、これらに限定されないが、マウス、マカク属のサル(例えば特にカニクイザル(マカク・ファシクラリス(Macaca fascicularis))及び/又はアカゲザル(マカク・ムラット(Macacamulatta)))及びヒヒ(パピオ・ウルジヌス(Papio ursinus))由来のイオンチャネル、及び/又は疾患のための動物モデル(例えばマウス、ラット、ウサギ、ブタ又はイヌ)、特にイオンチャネルに関連がある疾患及び障害のための動物モデルで使用されることが多い、1種又は複数種の動物(例えば本明細書で言及される種及び動物モデル)由来のイオンチャネルと交差反応性を示しても又は示さなくてもよい。この観点では、このような疾患モデルでヒトイオンチャネルに対して免疫グロブリン配列及びポリペプチドを試験することが可能となるので、このような交差反応性が存在する場合、該反応性は薬剤開発の観点から都合がよいことがあることが当業者にとって明らかである。
【0182】
より一般的には、複数種の哺乳動物由来のイオンチャネルと交差反応性を有する本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、同じ免疫グロブリン配列又はポリペプチドを複数種にわたって使用することが可能であるので、通常、獣医学用途に使用するのに有利である。したがって、或る種の動物由来のイオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列及びポリペプチド(例えばヒトイオンチャネルに対する免疫グロブリン配列及びポリペプチド)は、免疫グロブリン配列及び/又はポリペプチドの使用によって治療する種において所望の効果がもたらされる限り、別の種の動物の治療に使用することができることも本発明の範囲内に包含される。
【0183】
本発明の免疫グロブリン配列(及びこれを含むポリペプチド)はイオンチャネルを(本明細書で規定のように)調節することが可能であるようなものが好ましい。特に本発明の免疫グロブリン配列(及びこれを含むポリペプチド)はイオンチャネルを(完全に又は部分的に)遮断することが可能であるようなものが好ましい。化合物によるイオンチャネルのそれぞれの「部分的な又は完全な遮断」とは、免疫グロブリン配列又はポリペプチドによるイオンチャネルの調節が、イオンチャネルが免疫グロブリン配列又はポリペプチドにより遮断される特定の機構にかかわらずそれぞれ、(すなわち本明細書に記載のような好適なアッセイにより決定されるように免疫グロブリン配列/ポリペプチドとイオンチャネルとの間に相互作用がない場合のイオンチャネルを介したイオンの流れと比較して)チャネルを介したイオンの流れの低減をもたらす、又はチャネルを介したイオンの流れが本質的になくなることを意味する。例えばこれに限定されないが、免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、チャネルを介したイオンの流れが(例えば立体障害又は立体相互作用により)完全若しくは部分的に遮断されるようにイオンチャネル(又はその少なくとも1つのサブユニット)のエピトープに結合することにより直接的に、又はイオンチャネルの1つ若しくは複数の細胞外の部分、領域、ドメイン若しくはループとの相互作用により、又はイオンチャネルの(可能性のある)立体構造(複数可)に影響を与えることにより、又はイオンチャネルが立体構造変化を受けることができる程度及び/又は速度を限定することにより間接的に、イオンチャネルを部分的に若しくは完全に遮断することができる。
【0184】
イオンチャネルのブロッカーである本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、本明細書で記載されるもののような、好適なアッセイにより決定されるように、免疫グロブリン配列/ポリペプチドとイオンチャネルとの間の相互作用がない場合のイオンチャネルを介したイオンの流れと比較して、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば25%以上、又はさらに50%以上、及び最大で75%、又はさらに90%超、又はそれ以上チャネルを介したイオンの流れを低減するようなものが好ましい。
【0185】
イオンチャネルのオープナーである本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、本明細書で記載されるもののような、好適なアッセイにより決定されるように、免疫グロブリン配列/ポリペプチドとイオンチャネルとの間の相互作用がない場合のイオンチャネルを介したイオンの流れと比較して、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば25%以上、又はさらに50%以上、及び最大で75%、又はさらに90%超、又はそれ以上チャネルを介したイオンの流れを増大するようなものが好ましい。
【0186】
イオンチャネル及び/又はそれらに関連する生物学的機能(複数可)又は応答(複数可)のアゴニストである本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、本明細書で記載されるもののような、好適なアッセイにより決定されるように、免疫グロブリン配列/ポリペプチドとイオンチャネルとの間の相互作用がない場合の生物学的機能又は応答と比較して、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば25%以上、又はさらに50%以上、及び最大で75%、又はさらに90%超、又はそれ以上所望の生物学的機能又は応答を増大するようなものが好ましい。
【0187】
イオンチャネル及び/又はそれらに関連する生物学的機能(複数可)又は応答(複数可)のアンタゴニストである本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、本明細書で記載されるもののような、好適なアッセイにより決定されるように、免疫グロブリン配列/ポリペプチドとイオンチャネルとの間の相互作用がない場合の生物学的機能又は応答と比較して、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば25%以上、又はさらに50%以上、及び最大で75%、又はさらに90%超、又はそれ以上所望の生物学的機能又は応答を低減するようなものが好ましい。
【0188】
イオンチャネルのブロッカー又はオープナーである(又はブロッカー若しくはオープナーを増進する)及び/又はイオンチャネル、又はそれらに関連する生物学的機能(複数可)若しくは応答(複数可)のアゴニスト又はアンタゴニストである本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、不可逆的に所望の活性を提供することができるが、可逆的に活性を提供することができるのが好ましい。
【0189】
本発明はまたその最も広範な意味で、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが指向性を有するイオンチャネルの、特異的な抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又は立体構造(適用可能な場合)によっては特に限定又は規定されない。
【0190】
本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、任意の所望のイオンチャネルに指向性を有してもよく、特に少なくとも1つの細胞外ドメインを有するイオンチャネルに指向性を有してもよい。これらに限定されないが、より具体的には、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、より具体的には少なくとも2つの膜貫通ドメイン、例えば少なくとも4つの膜貫通ドメイン(例えば4−TMイオンチャネル)又は6つ以上の膜貫通ドメイン(例えば6−TMイオンチャネル)を有する任意の所望のイオンチャネルに指向性を有してもよい。このようなイオンチャネルの例は、本明細書に挙げられた従来技術に基づき当業者にとって明らかであろう。例えば上記で挙げられたGoldstein et al.、Yu et al.、Clapham and Garbers、Hoffmann et al.、Kubo et al.、Wei et al.、Shieh et al.(例えば559頁の図2を参照されたい)、Catterall etal、Gutman et al.、Clapham et al.、Catterall et al.のレビューを参照する。本明細書にさらに記載のように、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは例えば、このような膜貫通ドメインの細胞外部分に、特にこのような膜貫通ドメインと連結する細胞外ループ/リピートに指向性を有し得る(例えばこれについてもShieh et al.の559頁の図2、及び2−TM、4−TM及び6−TMイオンチャネルのこのような細胞外ループを概略的に示すXu et al(上掲)の1290頁の図1を参照する)。
【0191】
好ましいが、非限定的な一態様では、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、6−TMイオンチャネル(例えばこれらに限定されないが、上述のKv−イオンチャネル(例えばKv1.1〜Kv9.3、KvLQTイオンチャネル、Slo及びIKCa10))に、特にこのような6−TMイオンチャネルの膜貫通ドメインと連結する細胞外ループ/リピートのうちの1つ、例えばE1、E2、特にE3ループ、又はリピート2、3及び4のS5とS6との間の領域に指向性を有する。
【0192】
しかしながら本発明の特定の一態様によれば、本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは細胞の表面上で発現するイオンチャネルに、及び/又はイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに(本明細書で規定のように)指向性を有し得る。
【0193】
特にこの態様によれば、本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、イオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに(本明細書で規定のように)指向性を有し、さらに本発明の上記免疫グロブリン配列又はポリペプチドが(本明細書で規定のように)上記イオンチャネルを調節することが可能であるようなものが好ましい。より具体的にはこの態様によれば、本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドが、イオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに(本明細書で規定のように)指向性を有し、さらに本発明の上記免疫グロブリン配列又はポリペプチドが(完全に又は部分的に)上記イオンチャネルを遮断することが可能であるようなものが好ましい。
【0194】
本発明のこの態様によれば、本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、任意の好適な細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに指向性を有し得るが、好ましくは膜貫通ドメインの細胞外部分の1つに又はより好ましくは膜貫通ドメインと連結する細胞外ループの1つに指向性を有する。より具体的には、イオンチャネルが6−TMチャネルである場合、タンパク質又はポリペプチド(特にそこに存在する免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つ)は、膜貫通ドメインと連結する細胞外E3ループに指向性を有し得る(及び/又は細胞外E3ループに及び/又は細胞外E3ループの配列に由来する、又はこれに基づく合成又は半合成のペプチドに対して産生することができる)。
【0195】
他の好適な細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又はエピトープは、関連(pertinent)イオンチャネルの免疫グロブリン配列のKyte−Doolittle解析により、同じ(サブ)ファミリーに属するイオンチャネルをアライメントすると共に、様々な膜貫通ドメイン及び細胞外の部分、領域、ドメイン若しくはループ(E3ループを含む)を同定することにより、TMAP解析により、又はそれらの任意の好適な組合せにより得ることができる。本発明は、(本明細書でさらに規定されるような)このような細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又はエピトープに指向性を有する(及び/又はこのような細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくはエピトープを含む免疫グロブリン配列の部分若しくは断片に対して、及び/又はこのような細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくはエピトープに由来する若しくはこれらに基づく合成若しくは半合成のペプチドに対して産生された)免疫グロブリン配列にも関する。
【0196】
特に、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、
10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で(すなわち10L/モル〜1012L/モル以上、及び好ましくは10L/モル〜1012L/モル以上、及びより好ましくは10L/モル〜1012L/モルの結合定数(K)で)(本明細書で記載のように)イオンチャネルの細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープと結合するようなもの、及び/又は
10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)のkon速度で(本明細書で記載のように)イオンチャネルの細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープと結合するようなもの、及び/又は
1s−1(t1/2=0.69s)〜10−6−1(t1/2が数日である略不可逆的な複合体の場合)、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)のkoff速度で(本明細書で記載のように)イオンチャネルの細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープと結合するようなものであるのが好ましい。
【0197】
好ましくは、本発明の一価の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列を1つだけ含有するポリペプチド)が、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で(本明細書で記載のように)イオンチャネルの細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープと結合するようなものであるのが好ましい。
【0198】
本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドと、イオンチャネルの細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(本明細書に記載のような)との結合に関する幾つかの好ましいIC50は、本明細書でのさらなる記載及び実施例から明らかであろう。
【0199】
またこの態様によれば、本発明の任意の(本明細書で規定されるような)多価又は多重特異性のポリペプチドは好適には、同一の抗原上の2つ以上の異なる細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくは他の細胞外エピトープに、例えば2つの異なる細胞外ループに、膜貫通ドメインの2つの異なる細胞外部分に、又は1つの細胞外ループ(one extracellular loops)及び1つの細胞外ループにも指向性を有し得る。本発明のこのような多価又は多重特異性のポリペプチドは、所望のイオンチャネル、及び/又はこのような多価又は多重特異性のポリペプチドの使用により得ることができる任意の他の所望の特性又は所望の特性の組合せに対する増大した結合活性又は改善した選択性を有していてもよい(又はこれらに関して遺伝子操作されていても(engineered)及び/又は選択されていてもよい)。
【0200】
本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、本発明のペプチド抗原自体(代わりに例えばより大きいタンパク質又はポリペプチドの一部である、例えば細胞表面上に存在するイオンチャネルの一部であるペプチド抗原)を用いて、ペプチド抗原に対する本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドの結合(すなわち全て本明細書に記載のようなこのような結合の特異性、親和性、K、K、kon又はkoff)を決定するのに標準的なアッセイにおいて上記ペプチド抗原自体に指向性を有する場合、(本明細書でさらに規定のように)ペプチド抗原「に指向性を有する」と言うこともできる。免疫グロブリン配列又はポリペプチドと小ペプチドとの結合を決定する技法は当業者にとって明らかであり、例えば本明細書に記載の技法を含む。
【0201】
本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは、上記ペプチド抗原に関してスクリーニングする、これを用いて選択する及び/又は(すなわち本明細書でさらに記載のように好適には哺乳動物に免疫付与することにより)これに対して産生される場合、(本明細書でさらに規定のように)ペプチド抗原「に指向性を有する」と言うこともできる。本発明のペプチド抗原に対して本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドを産生する技法、並びに本発明のペプチド抗原に結合する本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドをスクリーニング又は選択する技法は、例えば本明細書でのさらなる開示に基づき当業者にとって明らかであろう。
【0202】
概して、本発明のペプチド抗原自体に指向性を有する及び/又は本発明のペプチド抗原に対してスクリーニングした、これを用いて選択した及び/又はこれに対して産生された、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、細胞の表面上に存在するイオンチャネル(又は少なくとも1つのそのサブユニット)の一部を形成する本発明のペプチド抗原と結合する(特に本明細書で規定のように特異的に結合する)ことも可能であることが期待される。このため、本発明のペプチド抗原は(本明細書で規定のように)本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドを生成する方法に特定に使用することができ、このような方法及び使用は本発明のさらなる態様を形成する。
【0203】
例えば、このような方法が以下の工程の1つ又は以下の工程の両方の好適な組合せを含み得る:
a)所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)に対する免疫応答が惹起されるように、ラクダ科動物に所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくは他の細胞外エピトープ(複数可)を含む好適な抗原を好適に免疫付与する工程。抗原は、所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)に対する免疫応答を惹起することが可能な任意の好適な抗原;例えばこれに限定されないが、その表面上に所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)を有する全細胞;この細胞壁断片若しくはこのような細胞に由来する任意の他の好適な調製物;その表面上に所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)を有する小胞;所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくは他の細胞外エピトープ(複数可)を含む、イオンチャネルのサブユニット若しくはサブユニットの断片;又は所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ若しくは他の細胞外エピトープ(複数可)(の免疫グロブリン配列)を含む及び/又はこれに基づく合成若しくは半合成のペプチドであってもよく、及び/又は
b)所望の細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)との親和性及び/又は結合に関してスクリーニングする工程。これは例えば、表面上で重鎖抗体を発現する細胞(例えば好適に免疫付与したラクダ科動物から得られたB細胞)のセット、コレクション若しくはライブラリをスクリーニングすることにより、VHH配列若しくはナノボディ配列の(ナイーブ又は免疫)ライブラリのスクリーニングにより、又はVHH配列若しくはナノボディ配列をコードする核酸配列の(ナイーブ又は免疫)ライブラリのスクリーニングにより実施することができ、これらは全て本明細書で言及されるさらなる開示及び従来技術を参照して、それ自体が既知の方法で実施してもよく、
この方法はさらに任意でそれ自体が既知の1つ又は複数の他の好適な工程、例えばこれに限定されないが、親和性成熟工程、所望の免疫グロブリン配列を発現する工程、所望の抗原(この場合、イオンチャネル)との結合及び/又はこれに対する活性に関してスクリーニングする工程、所望の免疫グロブリン配列又はヌクレオチド配列を決定する工程、(例えば本明細書でさらに記載のように)1つ又は複数のヒト化置換を導入する工程、好適な多価及び/又は多重特異性フォーマットでフォーマットする工程、所望の生物学的及び/又は生理学的特性に関してスクリーニングする(すなわち本明細書で記載されるような好適なアッセイを使用する)工程、及び/又は1つ又は複数のこのような工程の任意の好適な組合せを1つ又は複数任意の好適な順番で含んでいてもよい。
【0204】
このような方法及びこのような方法で得られた免疫グロブリン配列、並びにこれらを含むか又はこれらから本質的になるタンパク質及びポリペプチドは、本発明のさらなる態様を形成する。
【0205】
好ましい一実施形態において、本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドは「モノクローナル」免疫グロブリン配列又はポリペプチドであり、これは上記タンパク質又はポリペプチドに存在するイオンチャネルに指向性を有する1つ又は複数の免疫グロブリン配列の少なくともそれぞれ(好ましくは上記タンパク質又はポリペプチドに存在する免疫グロブリン配列の全て)が当業者に一般的に理解されるような「モノクローナル」であることを意味する。しかしながらこの点において、本明細書でさらに記載のように、本発明は、同一のイオンチャネルの異なる部分、領域、ドメイン、ループ又はエピトープに、特に同一のイオンチャネルの異なる細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又はエピトープに指向性を有する免疫グロブリン配列(特にモノクローナル免疫グロブリン配列)を2つ以上含む、多価又は多重特異性のタンパク質を明確に包含することに留意すべきである。
【0206】
別の態様では本発明は、(本明細書で規定のように)イオンチャネルを調節することが可能な、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン配列、又は本発明の免疫グロブリン配列の少なくとも1つの部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体を含むか又はこれから本質的になるタンパク質又はポリペプチドに関する。好ましくは、上記タンパク質又はポリペプチドは(本明細書で規定のように)イオンチャネルを完全に又は部分的に遮断することが可能である。
【0207】
本明細書に記載のタンパク質又はポリペプチドは、好ましくは細胞の表面上で発現されるイオンチャネルに、及び/又はイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに、より好ましくはイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外ループに指向性を有する。具体的な一態様では、イオンチャネルが6つの膜貫通ドメイン(6−TM)を有するイオンチャネルである場合、タンパク質又はポリペプチドは細胞外E3ループに指向性を有するのが好ましい。本明細書に記載のタンパク質又はポリペプチドは本発明のペプチド抗原にも指向性を有し得る。
【0208】
具体的な一態様では、本発明は本発明の少なくとも1つの免疫グロブリン配列、又は本発明の免疫グロブリン配列の少なくとも1つの部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体を含むか又はこれから本質的になるタンパク質又はポリペプチドであって、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つ(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体のうちの少なくとも1つ)がイオンチャネルに指向性を有する、タンパク質又はポリペプチドに関する。好ましくはタンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つ(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体のうちの少なくとも1つ)がイオンチャネルを調節する、より好ましくはイオンチャネルを完全に又は部分的に遮断することが可能である。また好ましくは、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つ(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体のうちの少なくとも1つ)が、イオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに、具体的にはイオンチャネルの1つの細胞外ループに指向性を有する。具体的な一態様では、イオンチャネルが6つの膜貫通ドメイン(6−TM)を有するイオンチャネルである場合、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つが細胞外E3ループに指向性を有するのが好ましい。
【0209】
本明細書に記載のタンパク質又はポリペプチドは、本発明の単一の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)、又は任意で好適には(本明細書に記載のような)1つ若しくは複数の好適なリンカーを介して連結される、本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)のうちの少なくとも2つ(例えば2つ、3つ、4つ又はそれ以上)を含み得るか又はこれから本質的になり得る。このようなリンカーの好適な例は、例えば本明細書のさらなる開示に基づき当業者にとって明らかであろう。
【0210】
本発明の一態様では、タンパク質又はポリペプチドが少なくとも2つの本発明の免疫グロブリン配列を含む場合、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)のうちの少なくとも2つが同じイオンチャネルに指向性を有する。例えば、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)のうちの少なくとも2つが同じイオンチャネルの異なる細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに指向性を有し得る。しかしながら好ましくは、タンパク質又はポリペプチドに存在する本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)のうちの少なくとも1つ(又は少なくとも2つ)がイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外ループに指向性を有する。
【0211】
本発明のタンパク質又はポリペプチドが、少なくとも2つの本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)を含むか又はこれから本質的になる場合、本発明のタンパク質又はポリペプチドは、少なくとも2つの異なる本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)を含み得るか、及び/又は少なくとも2つの同一の本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)を含み得る。
【0212】
具体的な一態様では、本発明のタンパク質又はポリペプチドが、少なくとも2つの本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)を含むか又はこれから本質的になる場合、本発明のタンパク質又はポリペプチドは、イオンチャネルとは異なるタンパク質、ポリペプチド又は他の抗原に指向性を有する、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン配列(又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体)を含み得る。
【0213】
別の態様では本発明は、イオンチャネルを調節することが可能な本発明の免疫グロブリン配列、又は本発明の免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、変異体若しくは誘導体に関する。好ましくは、上記本発明の免疫グロブリンは、(本明細書に規定のように)イオンチャネルを完全に又は部分的に遮断することが可能である。
【0214】
本明細書に記載の本発明の免疫グロブリン配列は、好ましくはイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外の領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープに、より好ましくはイオンチャネルの少なくとも1つの細胞外ループに指向性を有する。具体的な一態様では、イオンチャネルが6つの膜貫通ドメイン(6−TM)を有するイオンチャネルである場合、本発明の免疫グロブリン配列は細胞外E3ループに指向性を有するのが好ましい。
【0215】
適用可能な場合、本発明の免疫グロブリン配列が、イオンチャネルの2つ以上の抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニット又は立体構造と結合することができることも、本発明の範囲内である。このような場合、本発明の免疫グロブリン配列及び/又はポリペプチドが結合する、イオンチャネルの抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン又はサブユニットは、本質的に同じであり得るか(例えば、イオンチャネルが反復構造モチーフを含有するか、又は多量体形態で生じる場合)、又は異なり得る(後者の場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、同じであり得るか、若しくは異なり得る親和性及び/又は特異性で、イオンチャネルのこのような異なる抗原決定基、エピトープ、部分、ドメイン、サブユニットと結合し得る)。また、例えば、イオンチャネルが活性な立体構造及び不活性な立体構造で存在する場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、これらの立体構造のいずれか一方に結合してもよく、又はこれらの立体構造の両方に(すなわち、同じであり得る又は異なり得る親和性及び/又は特異性で)結合してもよい。また、例えば、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、関連リガンドと結合するイオンチャネルの立体構造と結合してもよく、関連リガンドと結合していないイオンチャネルの立体構造と結合してもよく、又はこのような立体構造の両方と(また同じであり得る又は異なり得る親和性及び/又は特異性で)結合してもよい。
【0216】
また、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは概して、イオンチャネルの天然又は合成の類似体、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分及び断片全て;又は少なくとも、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドがイオンチャネル(例えば野生型のイオンチャネル)で結合する抗原決定基(複数可)又はエピトープ(複数可)と本質的に同じである抗原決定基又はエピトープを1つ又は複数含有する、イオンチャネルのこれらの類似体、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分及び断片と少なくとも結合することが期待される。また、このような場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン配列が(野生型)イオンチャネルと結合する親和性及び特異性と同じか、又は異なる(すなわちこれより高いか、又は低い)親和性及び/又は特異性で、このような類似体、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分及び断片と結合し得る。本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、イオンチャネルの類似体、変異体、突然変異体、対立遺伝子、部分及び断片によっては結合するものもあれば、結合しないものもあることも、本発明の範囲内に含まれる。
【0217】
イオンチャネルが単量体形態及び1つ又は複数の多量体形態で存在する場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、単量体形態のイオンチャネルのみと結合するか、多量体形態のイオンチャネルのみと結合するか、又は単量体及び多量体形態の両方のイオンチャネルと結合することは、本発明の範囲内である。同様に、このような場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン配列が多量体形態と結合する親和性及び特異性と同じか、又は異なる(すなわちこれより高いか、又は低い)親和性及び/又は特異性で単量体形態のイオンチャネルと結合し得る。
【0218】
また、イオンチャネルが、タンパク質複合体を形成するように他のタンパク質又はポリペプチドと(例えば複数のサブユニットと)会合することができる場合、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが、会合していない状態でイオンチャネルと結合するか、会合した状態でイオンチャネルと結合するか、又はその両方でイオンチャネルと結合することは、本発明の範囲内である。これら全ての場合で、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドが単量体状態及び非会合状態でイオンチャネルと結合する親和性及び/又は特異性と同じか、又は異なり得る(すなわちこれより高いか、又は低い)親和性及び/又は特異性でこのような多量体又は会合したタンパク質複合体と結合し得る。
【0219】
また、当業者にとって明らかなように、イオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列を2つ以上含有するタンパク質又はポリペプチドは、対応する単量体免疫グロブリン配列(複数可)よりも高い結合活性でイオンチャネルと結合し得る。例えば、これらに限定されないが、イオンチャネルの異なるエピトープに指向性を有する免疫グロブリン配列を2つ以上含有するタンパク質又はポリペプチドは、異なる単量体それぞれよりも高い結合活性で結合することができ(通常結合し)、イオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列を2つ以上含有するタンパク質又はポリペプチドも、より高い結合活性でイオンチャネルの多量体と結合することができる(通常結合する)。
【0220】
概して、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドは、当業者にとって明らかなように、生物学的及び/又は治療的観点から最も関連がある形態のイオンチャネル(単量体、多量体及び会合している形態を含む)と少なくとも結合する。本明細書で想定される使用に好適である限り、本発明の免疫グロブリン配列及びポリペプチドの部分、断片、類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子及び/又は誘導体を使用すること、及び/又はこのような部分、断片、類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子及び/又は誘導体を1つ又は複数含むか、又はこれから本質的になるタンパク質又はポリペプチドを使用することも本発明の範囲内である。このような部分、断片、類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子及び/又は誘導体は通常、イオンチャネルとの結合に関して機能的な抗原結合部位(の少なくとも一部)を含有し、より好ましくはイオンチャネルと特異的に結合することができ、さらにより好ましくは本明細書に規定のように(さらに本明細書に記載されるような(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度、又は代替的にIC50値として好適に測定される、及び/又は表される)親和性でイオンチャネルと結合することができる。このような部分、断片、類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子、誘導体、タンパク質及び/又はポリペプチドの幾つかの非限定的な例は、本明細書のさらなる記載から明らかになる。また本発明のさらなる断片又はポリペプチドは、本明細書に記載の1つ又は複数の(より小さい)部分又は断片を好適に組み合わせることによって(すなわち連結又は遺伝子融合によって)提供され得る。
【0221】
本明細書でさらに記載される、本発明の具体的であるが非限定的な一態様において、このような類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子、誘導体は、その元となる免疫グロブリン配列に比べて(本明細書にさらに記載されるように)増大した血清半減期を有する。例えば、本発明の免疫グロブリン配列は、本発明の免疫グロブリン配列の誘導体の半減期が増大するように、半減期を延長する1つ又は複数の基又は部分(例えばPEG)と(化学的に又は別の方法で)連結され得る。
【0222】
具体的ではあるが非限定的な一態様では、本発明の免疫グロブリン配列は、免疫グロブリンフォールドを含む免疫グロブリン配列であり得るか、又は好適な条件(例えば生理的条件)下で(すなわちフォールディングによって)免疫グロブリンフォールドを形成することができる免疫グロブリン配列であり得る。特にHalaby et al., J. (1999) Protein Eng. 12, 563-71によるレビューを参照する。好ましくは、免疫グロブリンフォールドを形成するように適切にフォールディングする場合、このような免疫グロブリン配列は、イオンチャネルと(本明細書に規定のように)特異的に結合することができ、より好ましくは本明細書に規定のように(さらに本明細書に記載されるような(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度、又は代替的にIC50値として好適に測定される、及び/又は表される)親和性でイオンチャネルと結合することができる。また、このような免疫グロブリン配列の部分、断片、類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子及び/又は誘導体は、免疫グロブリンフォールドを含むか、又は好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することができるようなものであるのが好ましい。
【0223】
具体的であるが、非限定的に、本発明の免疫グロブリン配列は、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と、3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とから本質的になる免疫グロブリン配列、又はこのような免疫グロブリン配列の任意の好適な断片(したがって通常、本明細書でさらに記載されるように、CDRの少なくとも1つを形成するアミノ酸残基の少なくとも幾つかを含有する)であり得る。
【0224】
本発明のこのような免疫グロブリン配列において、フレームワーク配列は任意の好適なフレームワーク配列であり得るが、好適なフレームワーク配列の例は、例えば標準的なハンドブック、並びに本明細書において言及されるさらなる開示及び従来技術に基づき、当業者に明らかである。
【0225】
フレームワーク配列は、免疫グロブリンフレームワーク配列、又は(例えばヒト化又はラクダ化によって)免疫グロブリンフレームワーク配列から誘導されているフレームワーク配列(の好適な組合せ)であるのが好ましい。例えば、フレームワーク配列は、軽鎖可変ドメイン(例えばV配列)及び/又は重鎖可変ドメイン(例えばV配列)から誘導されているフレームワーク配列であり得る。特に好ましい一態様では、フレームワーク配列は、VHH配列(該フレームワーク配列は任意で、部分又は完全ヒト化し得る)から誘導されているか、又は(本明細書に規定のように)ラクダ化した通常のV配列であるいずれかのフレームワーク配列である。
【0226】
フレームワーク配列は、本発明の免疫グロブリン配列が、ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(商標)(VHH配列を含むが、これに限定されない)であるようなものであるのが好ましい。同様に、好適なフレームワーク配列は、例えば標準的なハンドブック、並びに本明細書に言及されるさらなる開示及び従来技術に基づいて当業者にとって明らかである。
【0227】
特に、本発明の免疫グロブリン配列に存在するフレームワーク配列は、本発明の免疫グロブリン配列がナノボディ(商標)であるように、(本明細書に規定の)特徴的な残基を1つ又は複数含有し得る。このようなフレームワーク配列(の好適な組合せ)の幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる開示から明らかになる。
【0228】
同様に概して、本発明の免疫グロブリン配列に関して本明細書に記載のように、上記のいずれかの好適な断片(又は断片の組合せ)(例えば1つ又は複数のフレームワーク配列に好適に隣接した、及び/又はこれを介して連結した、1つ又は複数のCDR配列を(例えば、これらのCDR配列及びフレームワーク配列が、断片が誘導された完全長の(full-sized:フルサイズの)免疫グロブリン配列で発生し得るのと同じ順序(order)で)含有する断片)を使用することも可能である。このような断片は同様に、免疫グロブリンフォールドを含むか、若しくは形成することができるようなもの、又は代替的に免疫グロブリンフォールドを含まないか、若しくは形成することができないようなものであってもよい。
【0229】
特定の一態様において、このような断片は、本明細書に記載の単一CDR配列(特にCDR3配列)を含み、フレームワーク配列(の一部)(特に断片が誘導される免疫グロブリン配列において上記CDR配列に隣接するフレームワーク配列(複数可)の一部)が両側に隣接する。例えば、CDR3配列は、FR3配列(の一部)の後にあり、FR4配列(の一部)の前にあり得る。このような断片はまた、ジスルフィド架橋、特にCDR配列の前後それぞれにある2つのフレームワーク領域を連結するジスルフィド架橋を含有してもよい(このようなジスルフィド架橋を形成するために、上記フレームワーク領域で自然発生するシステイン残基を使用するか、又は代替的にシステイン残基を上記フレームワーク領域に合成的に付加若しくは導入してもよい)。これらの「促進断片」のさらなる説明に関しては、同様に国際公開第03/050531号、並びに国際公開第2009/127691号を参照する。
【0230】
本発明の免疫グロブリン配列は、具体的に免疫グロブリン配列又はその好適な断片、より具体的には免疫グロブリン可変ドメイン配列又はその好適な断片(例えば軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)若しくはその好適な断片、又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)若しくはその好適な断片)であり得る。本発明の免疫グロブリン配列は、重鎖可変ドメイン配列である場合、通常の四本鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン配列(例えば、これに限定されないが、ヒト抗体由来のV配列)又はいわゆる(本明細書に規定の)「重鎖抗体」由来のいわゆる(本明細書に規定の)VHH配列であり得る。
【0231】
しかし本発明が、本発明の免疫グロブリン配列(又はこれを発現するのに使用される本発明のヌクレオチド配列)の起源に関しても、また本発明の免疫グロブリン配列又はヌクレオチド配列を生成又は入手する(又は生成若しくは入手した)方法に関しても限定されないことに留意すべきである。したがって本発明の免疫グロブリン配列は、(任意の好適な種由来の)天然免疫グロブリン配列、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列であり得る。本発明の具体的ではあるが非限定的な態様では、免疫グロブリン配列は(任意の好適な種由来の)天然免疫グロブリン配列、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列であり、これにはこれらに限定されないが、(本明細書に規定の)「ヒト化」免疫グロブリン配列(例えば部分又は完全ヒト化マウス又はウサギ免疫グロブリン配列、特に部分又は完全ヒト化VHH配列又はナノボディ)、(本明細書に規定の)「ラクダ化」免疫グロブリン配列、並びに親和性成熟(例えば、合成、ランダム又は天然免疫グロブリン配列から開始する)、CDRグラフト化、ベニヤリング(veneering)、異なる免疫グロブリン配列由来の断片の組合せ、重複プライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に既知の免疫グロブリン配列を遺伝子操作する同様の技法、又は上記のいずれかの任意の好適な組合せ等の技法によって得られる免疫グロブリン配列が含まれる。例えば標準的なハンドブック、並びに本明細書に言及されるさらなる記載及び従来技術を参照する。
【0232】
同様に、本発明のヌクレオチド配列は、天然ヌクレオチド配列、又は合成若しくは半合成の配列であってもよく、例えばPCRによって好適な天然鋳型(例えば細胞から単離されるDNA又はRNA)から単離される配列、ライブラリ(特に発現ライブラリ)から単離されたヌクレオチド配列、(それ自体が既知の任意の好適な技法(例えばミスマッチPCR)を使用して)天然ヌクレオチド配列に突然変異を導入することによって調製されたヌクレオチド配列、重複プライマーを使用してPCRによって調製されたヌクレオチド配列、又はそれ自体が既知のDNA合成のための技法を使用して調製されたヌクレオチド配列であり得る。
【0233】
特に本発明の免疫グロブリン配列は、(本明細書で規定の)ナノボディ(商標)又はその好適な断片(備考:ナノボディ(商標)(NanobodyTM, NanobodiesTM)及びナノクローン(商標)は、Ablynx N. V.の商標である)であり得る。イオンチャネルに指向性を有するこのようなナノボディは、本明細書中で「本発明のナノボディ」とも称される。ナノボディの概説に関しては、以下のさらなる記載、及び本明細書で引用される従来技術を参照する。しかしこれに関して、本明細書及び従来技術は主に、いわゆる「V3群」のナノボディ(すなわちDP−47、DP−51又はDP−29等のV3群のヒト生殖細胞系列の配列との高度な配列相同性を有するナノボディ)を説明し、このナノボディは本発明の好ましい態様を形成することに留意すべきである。しかし概して、本発明は最も広範な意味で、イオンチャネルに指向性を有する任意のタイプのナノボディを包含し、例えば2006年4月14日付けでAblynxN. V.により出願された"DP-78-like Nanobodies"と題する米国仮特許出願第60/792,279号に記載されるように、例えばいわゆる「V4群」に属するナノボディ(すなわちDP−78等のV4群のヒト生殖細胞系列の配列との高度な配列相同性を有するナノボディ)も包含することに留意すべきである。
【0234】
概して、ナノボディ(特にVHH配列及び部分ヒト化ナノボディ)は特に、(同様に本明細書にさらに記載される)1つ又は複数のフレームワーク配列における(本明細書に記載される)1つ又は複数の「特徴的な(Hallmark:ホールマーク)残基」の存在を特徴とし得る。したがって概して、ナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指し、1つ又は複数の特徴的な残基は本明細書にさらに規定されるようなものである)を有する免疫グロブリン配列として定義することができる。
【0235】
具体的にナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指し、フレームワーク配列は本明細書にさらに規定されるようなものである)を有する免疫グロブリン配列であり得る。
【0236】
具体的にナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指し、フレームワーク配列は本明細書にさらに規定されるようなものである)を有する免疫グロブリン配列であり得る。
【0237】
より具体的に、ナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有する免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)好ましくは、カバットナンバリング(Kabat numbering)による11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ又は複数は、以下の表B−2で言及する特徴的な残基から選択され、
ii)上記免疫グロブリン配列は、配列番号1〜配列番号22の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基(配列番号1〜配列番号22の配列においてXで示す)は無視する)。
【0238】
これらのナノボディにおいて、CDR配列は概して、本明細書中にさらに規定されるようなものである。
【0239】
したがって、本発明は、イオンチャネルと(本明細書に規定のように)結合することができる及び/又はこれに指向性を有するこのようなナノボディ、その好適な断片、並びにこのようなナノボディ及び/又は好適な断片を1つ又は複数含むか、又はこれらから本質的になるポリペプチドにも関する。
【0240】
配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)はイオンチャネルに対して惹起されている多くのVHH配列の免疫グロブリン配列を与える。
【0241】
表A−1:好ましいVHH配列又はナノボディ配列(本明細書で特定の名称を有する配列又は配列番号X(ここでXは関連の免疫グロブリン配列を表す番号である)としても表される):
【表1】













【0242】
特に本発明は幾つかの特定の態様で以下のものを提供する:
(本明細書で規定のように)イオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば90%若しくは95%、又はそれ以上の配列同一性を有する、免疫グロブリン配列。これらの免疫グロブリン配列はさらに同種リガンドとイオンチャネルとの結合を中和するようなもの;及び/又はイオンチャネルとの結合に関して同種リガンドと競合するもの;及び/又はイオンチャネル上の(本明細書で規定のような)相互作用部位(例えばリガンド結合部位)に指向性を有するものであり得る;
(本明細書で規定のように)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとイオンチャネルとの結合を交差遮断する、及び/又はイオンチャネルとの結合に関して配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つと競合する、免疫グロブリン配列。この場合も、これらの免疫グロブリン配列はさらに同種リガンドとイオンチャネルとの結合を中和するようなもの;及び/又はイオンチャネルとの結合に関して同種リガンドと競合するようなもの;及び/又はイオンチャネル上での(本明細書で規定のような)相互作用部位(例えばリガンド結合部位)に指向性を有するようなものであり得る;
この免疫グロブリン配列は、本明細書でさらに記載のようなもの(例えばナノボディであり得る);並びにこのような免疫グロブリン配列を1つ又は複数含む本発明のポリペプチド(本明細書にさらに記載のようなものであってもよく、例えば本明細書に記載のような二重特異性及び/又は二重パラトピックポリペプチドであってもよい)、及びこのような免疫グロブリン配列及びポリペプチドをコードする核酸配列であり得る。このような免疫グロブリン配列及びポリペプチドは任意の天然リガンドを含まない。
【0243】
したがって本発明の特に好ましいナノボディの幾つかが、イオンチャネルと(本明細書でさらに規定されるように)結合することができ、及び/又はそれらに指向性を有し、
i)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する)(またこれに関しては、表B−1を参照するが、この図は配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780(表A−1を参照されたい)のナノボディのフレームワーク1配列(配列番号126〜配列番号207)、フレームワーク2配列(配列番号290〜配列番号371)、フレームワーク3配列(配列番号454〜配列番号535)及びフレームワーク4配列(配列番号618〜配列番号699)を列挙する)(フレームワーク1配列の1位〜4位及び27位〜30位のアミノ酸残基に関しては、以下で為されるコメントも参照する。したがって、アミノ酸同一性の程度を決定するためにこれらのアミノ酸残基は無視するのが好ましい)、
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ又は複数が、以下の表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、ナノボディである。
【0244】
これらのナノボディにおいて、概してCDR配列は本明細書にさらに規定されるようなものである。
【0245】
この場合もこのようなナノボディは、任意で好適な方法で任意の好適な供給源から得られてもよく、例えば(すなわち好適な種のラクダ科動物由来の)天然VHH配列、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列であってもよく、これにはこれらに限定されないが、(本明細書に規定の)「ヒト化」ナノボディ、(本明細書に規定の)「ラクダ化」免疫グロブリン配列(特にラクダ化重鎖可変ドメイン配列)、並びに本明細書にさらに記載されるように、親和性成熟(例えば、合成、ランダム又は天然免疫グロブリン配列から開始する)、CDRグラフト化、ベニヤリング、異なる免疫グロブリン配列由来の断片の結合、重複プライマーを使用したPCRアセンブリ、及び当業者に既知の免疫グロブリン配列を遺伝子操作する同様の技法、又は上記のいずれかの任意の好適な組合せ等の技法によって得られたナノボディが含まれる。また、ナノボディがVHH配列を含む場合、上記ナノボディは、1つ又は複数の本発明のさらなる(部分又は完全)ヒト化ナノボディを提供するように、本明細書でさらに記載されるように好適にヒト化され得る。同様に、ナノボディが合成又は半合成の配列(例えば部分ヒト化配列)を含む場合、上記ナノボディは、同様に1つ又は複数の本発明のさらなる(部分又は完全)ヒト化ナノボディを提供するように、同様に本明細書で記載されるように任意でさらに好適にヒト化され得る。
【0246】
特にヒト化ナノボディは、概してこれまでの段落でナノボディに関して規定されたような免疫グロブリン配列であり得るが、この中に(本明細書に規定の)ヒト化置換である、及び/又はヒト化置換に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基が(特にフレームワーク残基の少なくとも1つに)存在する。本明細書中の開示に基づいて、当業者にとって、幾つかの好ましいが非限定的なヒト化置換(及びその好適な組合せ)は明らかになる。付加的に又は代替的に、天然VHH配列のフレームワーク領域の配列を、1つ又は複数の密接に関連したヒトV配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって、他の潜在的に有用なヒト化置換を確認することができ、その後このようにして決定した潜在的に有用なヒト化置換(又はその組合せ)の1つ又は複数を上記VHH配列に(それ自体が既知の任意の方法で、本明細書にさらに記載のように)導入することができ、得られたヒト化VHH配列を、標的に対する親和性、安定性、発現の容易さ及びレベル、及び/又は他の所望の特性に関して試験することができる。このように、限定的な試行錯誤によって、本明細書中の開示に基づき、当業者は、他の好適なヒト化置換(又はその好適な組合せ)を決定することができる。また上記に基づいて、ナノボディ(のフレームワーク領域)を部分ヒト化又は完全ヒト化してもよい。
【0247】
好ましいが非限定的な一態様において、本発明は、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とからなる、例えばP2X7等のイオンチャネルに対する(本明細書中に規定の)ナノボディであって、
CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択され、及び/又は
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択され、及び/又は
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択されるか、又はこのような免疫グロブリン配列の任意の好適な断片である、ナノボディに関する。
【0248】
特に、好ましいが非限定的なこの態様によれば、本発明は、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とからなる、例えばP2X7等のイオンチャネルに対する(本明細書中に規定の)ナノボディであって、
CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択され、
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択され、
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択されるか、又はこのような免疫グロブリン配列の任意の好適な断片である、ナノボディに関する。
【0249】
本発明の免疫グロブリン配列に関して本明細書で包括的に言及するように、本発明のナノボディがb)及び/又はc)によるCDR1配列を1つ又は複数含有する場合、
i)b)及び/又はc)によるこのようなCDRにおいて任意のアミノ酸置換は、(本明細書で規定されるように)対応するa)によるCDRと比較して、保存的なアミノ酸置換であるのが好ましく;及び/又は
ii)b)及び/又はc)によるCDRは、対応するa)によるCDRと比較して、アミノ酸置換だけを含有し、アミノ酸欠失又は挿入は含有しないのが好ましく;及び/又は
iii)b)及び/又はc)によるCDRは、それ自体が既知の1つ又は複数の親和性成熟技法を用いる親和性成熟によってa)によるCDRから誘導されるCDRであり得る。
【0250】
同様に、本発明のナノボディがe)及び/又はf)によるCDR2配列を1つ又は複数含有する場合、
i)e)及び/又はf)によるこのようなCDRにおいて任意のアミノ酸置換は、(本明細書で規定されるように)対応するd)によるCDRと比較して、保存的なアミノ酸置換であるのが好ましく;及び/又は
ii)e)及び/又はf)によるCDRは、対応するd)によるCDRと比較して、アミノ酸置換だけを含有し、アミノ酸欠失又は挿入は含有しないのが好ましく;及び/又は
iii)e)及び/又はf)によるCDRは、それ自体が既知の1つ又は複数の親和性成熟技法を用いる親和性成熟によってd)によるCDRから誘導されるCDRであり得る。
【0251】
また同様に、本発明のナノボディがh)及び/又はi)によるCDR3配列を1つ又は複数含有する場合、
i)h)及び/又はi)によるこのようなCDRにおいて任意のアミノ酸置換は、(本明細書で規定されるように)対応するg)によるCDRと比較して、保存的なアミノ酸置換であるのが好ましく;及び/又は
ii)h)及び/又はi)によるCDRは、対応するg)によるCDRと比較して、アミノ酸置換だけを含有し、アミノ酸欠失又は挿入は含有しないのが好ましく;及び/又は
iii)h)及び/又はi)によるCDRは、それ自体が既知の1つ又は複数の親和性成熟技法を用いる親和性成熟によってg)によるCDRから誘導されるCDRであり得る。
【0252】
直前の3段落は概して、それぞれb)、c)、e)、f)、h)又はi)によるCDR1配列、CDR2配列及び/又はCDR3配列を1つ又は複数含む、任意の本発明のナノボディに適用されると理解すべきである。
【0253】
本発明のナノボディのうち、具体的には上記で明示的に挙げられるCDRを1つ又は複数含むナノボディが好ましい。より具体的には上記で明示的に挙げられるCDRを2つ以上含むナノボディが好ましい。最も具体的には上記で明示的に挙げられるCDRを3つ含むナノボディが好ましい。
【0254】
幾つかの特に好ましいが非限定的なCDR配列の組合せ、及びCDR配列とフレームワーク配列との好ましい組合せが以下の表B−1で言及され、これは多くの好ましい(が非限定的な)本発明のナノボディに存在するCDR配列及びフレームワーク配列を挙げている。当業者にとって明らかなように、同じクローンで現れるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の組合せ(すなわち表B−1の同じ行で言及されるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列)が通常好ましい(が、本発明はその最も広範な意味ではこれに限定されず、表B−1で言及されるCDR配列の他の好適な組合せも含む)。また、同じクローンで現れるCDR配列とフレームワーク配列との組合せ(すなわち表B−1の同じ行で言及されるCDR配列及びフレームワーク配列)が通常好ましい(が、本発明はその最も広範な意味ではこれに限定されず、表B−1で言及されるCDR配列とフレームワーク配列との他の好適な組合せ、並びに例えば本明細書でさらに記載されるようなこのようなCDR配列と他の好適なフレームワーク配列との組合せも含む)。
【0255】
また、表B−1で言及されるCDRの組合せを含む本発明のナノボディにおいて、それぞれのCDRを、言及されるCDRとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性(本明細書中で規定)を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択されるCDRに置き換えることができ、ここで
i)このようなCDRにおいて任意のアミノ酸置換は、(本明細書で規定されるように)対応する表B−1で言及されるCDR配列と比較して、保存的なアミノ酸置換であるのが好ましく;及び/又は
ii)任意のこのようなCDR配列は、対応する表B−1で言及されるCDR配列と比較して、アミノ酸置換だけを含有し、アミノ酸欠失又は挿入は含有しないのが好ましく;及び/又は
iii)任意のこのようなCDR配列は、特に対応する表B−1で言及されるCDR配列から、それ自体が既知の親和性成熟技法によって誘導されるCDRである。
【0256】
しかし、当業者にとって明らかなように、表B−1で言及される、CDR配列(の組合せ)、並びにCDR配列及びフレームワーク配列(の組合せ)が一般的に好ましい。
【0257】
表B−1:CDR配列の好ましい組合せ、フレームワーク配列の好ましい組合せ、及びフレームワーク配列とCDR配列との好ましい組合せ。
(「番号」は本明細書で使用される配列番号を表す)
【表2】
















【0258】
このため、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から;又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の「配列同一性」(本明細書で規定)を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみの「アミノ酸差異」(本明細書で規定)を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から好適に選択される。
【0259】
これに関して、「好適に選択される」とは、規定通りに、それぞれCDR1配列が好適なCDR1配列から(すなわち本明細書で規定のように)選択され、CDR2配列が好適なCDR2配列から(すなわち本明細書で規定のように)選択され、CDR3配列が好適なCDR3配列から(すなわち本明細書で規定のように)選択されることを意味する。より具体的には、CDR配列は、本発明のナノボディが本明細書に規定のような(さらに本明細書に記載されるような(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度、又は代替的にIC50値として好適に測定される、及び/又は表される)親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するように選択されるのが好ましい。
【0260】
特に、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−1で挙げられるCDR3配列からなる群から;又は表B−1で挙げられるCDR3配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3配列からなる群から;及び/又は表B−1で挙げられるCDR3配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR3配列からなる群から好適に選択される。
【0261】
好ましくは、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも2つが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から;又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみの「アミノ酸差異」を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から好適に選択される。
【0262】
特に、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−1で挙げられるCDR3配列からなる群から;又はそれぞれ表B−1で挙げられるCDR3配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR3配列からなる群から好適に選択され;存在するCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列及びCDR2配列からなる群から;又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群から好適に選択される。
【0263】
最も好ましくは、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の3つ全てが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から;又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列それぞれからなる群から好適に選択される。
【0264】
さらにより好ましくは、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から好適に選択される。好ましくはこの態様では、存在する他の2つのCDR配列の少なくとも1つ、又は好ましくは両方が、表B−1でそれぞれ挙げられる対応するCDR配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられる対応する配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群から好適に選択される。
【0265】
特に、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR3配列が少なくとも、表B−1で挙げられるCDR3からなる群から好適に選択される。好ましくはこの態様では、存在するCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つ、及び好ましくは両方が、表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列及びCDR2配列との、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群から;及び/又は表B−1でそれぞれ挙げられるCDR1配列及びCDR2配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR1配列及びCDR2配列それぞれからなる群から好適に選択される。
【0266】
さらにより好ましくは、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも2つが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から好適に選択される。好ましくはこの態様では、存在する残りのCDR配列が、表B−1で挙げられる対応するCDR配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群から;及び/又は表B−1で挙げられる対応する配列の少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群から好適に選択される。
【0267】
特に、本発明のナノボディにおいて、CDR3配列が少なくとも、表B−1で挙げられるCDR3配列からなる群から好適に選択され、CDR1配列又はCDR2配列のいずれかが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列及びCDR2配列からなる群から好適に選択される。好ましくは、この態様において、存在する残りのCDR配列が、表B−1で挙げられる対応するCDR配列の少なくとも1つとの、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群から;及び/又は表B−1で挙げられる対応するCDR配列との、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群から好適に選択される。
【0268】
さらにより好ましくは、本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の3つ全てが、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から好適に選択される。また概して、表B−1で挙げられるCDRの組合せ(すなわち表B−1の同じ行で言及されるもの)が好ましい。このため概して、本発明のナノボディにおけるCDRが、表B−1で言及されるCDR配列であるか、又は表B−1で挙げられるCDR配列との、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群から;及び/又は表B−1で挙げられるCDR配列との、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群から好適に選択される場合、他のCDRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、表B−1における同じ組合せ(すなわち表B−1の同じ行で言及されるもの)に属するCDR配列から好適に選択されるか、又は同じ組合せに属するCDR配列(複数可)との、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するCDR配列からなる群から;及び/又は同じ組合せに属するCDR配列(複数可)との、3つ、2つ若しくは1つのみのアミノ酸差異を有するCDR配列からなる群から好適に選択されることが好ましい。上記の段落で示される他の好ましい実施形態(preferences)は、表B−1で言及されるCDRの組合せにも適用される。
【0269】
このため、非限定的な例により、本発明のナノボディは例えば、表B−1で言及されるCDR1配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR1配列と、表B−1で言及される(が、異なる組合せに属する)CDR2配列の1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2配列と、CDR3配列とを含むことができる。
【0270】
幾つかの好ましい本発明のナノボディは例えば以下のものを含み得る:(1)表B−1で言及されるCDR1配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR1配列;表B−1で言及される(が、異なる組合せに属する)CDR2配列の1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2配列;及び表B−1で言及される(が、異なる組合せに属する)CDR3配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR3配列;又は(2)表B−1で言及されるCDR1配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR1配列;CDR2配列;及び表B−1で挙げられるCDR3配列の1つ;又は(3)CDR1配列;表B−1で挙げられるCDR2配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR2配列;及びCDR2配列と同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR3配列との、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有するCDR3配列。
【0271】
幾つかの特に好ましい本発明のナノボディは例えば以下のものを含み得る:(1)表B−1で言及されるCDR1配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR1配列;同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR2配列との、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2配列;及び同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR3配列との80%を超える配列同一性を有するCDR3配列;又は(2)CDR1配列;表B−1で挙げられるCDR2;及び表B−1で挙げられるCDR3配列(ここでCDR2配列とCDR3配列とは異なる組合せに属し得る)。
【0272】
幾つかのさらにより好ましい本発明のナノボディは例えば以下のものを含み得る:(1)表B−1で言及されるCDR1配列の1つとの80%を超える配列同一性を有するCDR1配列;同じ組合せに属する、表B−1で挙げられるCDR2配列;及び異なる組合せに属する、表B−1で言及されるCDR3配列;又は(2)表B−1で言及されるCDR1配列;同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR2配列との、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有するCDR2配列;及び同じ若しくは異なる組合せに属する、表B−1で挙げられるCDR3配列との80%を超える配列同一性を有するCDR3配列。
【0273】
特に好ましい本発明のナノボディは例えば、表B−1で言及されるCDR1配列と、同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR2配列との80%を超える配列同一性を有するCDR2配列と、同じ組合せに属する、表B−1で言及されるCDR3配列とを含み得る。最も好ましい本発明のナノボディにおいて、存在するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列が、それぞれ表B−1で挙げられるCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の組合せの1つから好適に選択される。
【0274】
別の好ましいが非限定的な本発明の態様によれば、(a)CDR1は1個〜12個のアミノ酸残基、通常2個〜9個のアミノ酸残基、例えば5個、6個又は7個のアミノ酸残基の長さを有し、及び/又は(b)CDR2は13個〜24個のアミノ酸残基、通常15個〜21個のアミノ酸残基、例えば16個又は17個のアミノ酸残基の長さを有し、及び/又は(c)CDR3は2個〜35個のアミノ酸残基、通常3個〜30個のアミノ酸残基、例えば6個〜23個のアミノ酸残基の長さを有する。
【0275】
別の好ましいが非限定的な態様では、本発明は、CDR配列(本明細書で規定)が、配配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つのCDR配列との、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で規定)を有するナノボディに関する。
【0276】
概して、上記のCDR配列を有するナノボディが、本明細書でさらに記載されるようなものであり、好ましくは同様に本明細書でさらに記載されるようなものであるフレームワーク配列を有し得る。このため、例えば本明細書で言及されるようにこのようなナノボディは、(任意の好適な種由来の)天然のナノボディ、天然の(すなわち好適なラクダ科動物種由来の)VHH配列、又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列若しくはナノボディ(部分ヒト化ナノボディ又はVHH配列、完全ヒト化ナノボディ又はVHH配列、ラクダ化重鎖可変ドメイン配列が挙げられるが、これらに限定されない)、及び本明細書で言及される技法により得られたナノボディであり得る。
【0277】
このため、具体的であるが非限定的な一態様において、本発明は、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と、3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とからなるヒト化ナノボディであって、CDR1〜CDR3は本明細書で規定されるようなものであり、上記ヒト化ナノボディが少なくとも1つのヒト化置換(本明細書で規定)、具体的にはそのフレームワーク配列(本明細書で規定)の少なくとも1つに少なくとも1つのヒト化置換を含む、ヒト化ナノボディに関する。
【0278】
別の好ましいが非限定的な態様において、本発明は、CDR配列が、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つのCDR配列との、少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%若しくはそれ以上のアミノ酸同一性、又はさらに本質的に100%のアミノ酸同一性を有するナノボディに関する。このアミノ酸同一性の程度は例えば、上記のナノボディと配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の配列の1つ又は複数との間のアミノ酸同一性の程度を(本明細書で記載のように)求めることにより決定することができる(ここでフレームワーク領域を形成するアミノ酸残基は無視する)。このようなナノボディは本明細書でさらに説明されるようなものであり得る。
【0279】
別の好ましいが非限定的な態様において、本発明は、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)からなる群から、又は配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で規定)を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択される免疫グロブリン配列を有するナノボディに関する。
【0280】
別の好ましいが非限定的な本発明の態様は、対応する天然VHH配列と比較して、少なくとも1つのヒト化置換(本明細書で規定)、具体的にはそのフレームワーク配列(本明細書で規定)の少なくとも1つに少なくとも1つのヒト化置換を含む、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)のナノボディのヒト化変異体に関する。
【0281】
本発明のポリペプチドは少なくとも1つの本発明のナノボディを含むか又はこれから本質的になる。本発明のポリペプチドの幾つかの好ましいが、非限定的な例は配列番号789〜配列番号791(表A−3を参照されたい)で与えられる。
【0282】
表A−3(適用される場合):好ましいポリペプチド又は化合物の配列(本明細書で特定の名称を有する配列又は配列番号X(ここでXは関連の免疫グロブリン配列を表す番号である)としても表される):
【表3】
【0283】
「好ましい」(又は「より好ましい」、「さらにより好ましい」等)と本明細書中で言及されるナノボディが、本明細書中に記載のポリペプチドで使用するのにも好ましい(又はより好ましい、又はさらにより好ましい等)ことは、当業者にとって明らかである。このように概して、1つ又は複数の「好ましい」本発明のナノボディを含むか又はこれから本質的になるポリペプチドが好ましく、概して1つ又は複数の「より好ましい」本発明のナノボディを含むか又はこれから本質的になるポリペプチドがより好ましい。
【0284】
概して、単一のナノボディ(本発明の単一のナノボディ等)を含むか又はこれから本質的になるタンパク質又はポリペプチドは、本明細書で「一価」タンパク質若しくはポリペプチド、又は「一価構築物」と呼ばれる。2つ以上のナノボディ(少なくとも2つの本発明のナノボディ、又は少なくとも1つの本発明のナノボディ及び少なくとも1つの他のナノボディ等)を含むか又はこれから本質的になるタンパク質及びポリペプチドは、本明細書で「多価」タンパク質若しくはポリペプチド、又は「多価構築物」と呼ばれ、これらは、対応する本発明の一価のナノボディに比べて或る特定の利点を与え得る。このような多価構築物の幾つかの非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0285】
具体的であるが、非限定的な一態様によれば、本発明のポリペプチドは、少なくとも2つの本発明のナノボディ、例えば2つ又は3つの本発明のナノボディを含むか又はこれから本質的になる。本明細書中にさらに記載のように、このような多価構築物は、本発明の単一ナノボディを含むか又はこれから本質的になるタンパク質又はポリペプチドに比べて、例えばP2X7等のイオンチャネルに対する結合活性が大きく改善するというような、或る特定の利点を与えることができる。このような多価構築物は、本明細書中の開示に基づき当業者にとって明らかであり、このような多価ナノボディ構築物の幾つかの好ましいが、非限定的な例は、配列番号789〜配列番号791の構築物である。
【0286】
具体的であるが、非限定的な別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明のナノボディと、好ましくはナノボディでもある少なくとも1つの他の結合単位(すなわち別のエピトープ、抗原、標的、タンパク質又はポリペプチドに指向性を有する)とを含むか又は本質的にこれからなる。このようなタンパク質又はポリペプチドは、本明細書中で「多重特異性」タンパク質若しくはポリペプチド、又は「多重特異性構築物」とも称され、これらは、(好ましいが非限定的な幾つかの多重特異性構築物の本明細書中のさらなる考察から明らかになるように)対応する本発明の一価ナノボディに比べて或る特定の利点を与え得る。このような多重特異性構築物は、本明細書中の開示に基づき当業者にとって明らかであり、このような多重特異性ナノボディ構築物の幾つかの好ましいが、非限定的な例は、配列番号789〜配列番号791の構築物である。
【0287】
具体的であるが、非限定的なさらに別の態様によれば、本発明のポリペプチドは、少なくとも1つの本発明のナノボディと、任意で1つ又は複数のさらなるナノボディと、本発明のナノボディに及び/又は得られた融合タンパク質に少なくとも1つの所望の特性を与える少なくとも1つの他の免疫グロブリン配列(タンパク質又はポリペプチド等)とを含むか又はこれから本質的になる。ここでも同様に、このような融合タンパク質は、対応する本発明の一価ナノボディに比べて或る特定の利点を与え得る。このような免疫グロブリン配列及びこのような融合構築物の幾つかの非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0288】
例えば2つ以上の上記の態様を組合せて、2つの本発明のナノボディと、1つの他のナノボディと、任意で1つ又は複数の他の免疫グロブリン配列とを含む三価の二重特異性構築物を提供することも可能である。このような構築物、及び本発明の関連内で特に好ましい幾つかの構築物のさらなる非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0289】
上記の構築物において、1つ又は複数のナノボディ及び/又は他の免疫グロブリン配列は、互いに直接連結しても、及び/又は1つ又は複数のリンカー配列を介して互いに好適に連結してもよい。このようなリンカーの幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0290】
具体的な本発明の一態様において、本発明のナノボディ、又は本発明のナノボディを少なくとも1つ含む、本発明の化合物、構築物若しくはポリペプチドの半減期は、対応する本発明の免疫グロブリン配列に比べて増大し得る。このようなナノボディ、化合物及びポリペプチドの幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる開示に基づき、当業者にとって明らかになり、例えば(例えばペグ化によって)半減期が増大するように化学修飾した本発明のナノボディ配列又はポリペプチド;血清タンパク質(血清アルブミン等、例えば欧州特許第0368684号、4頁を参照されたい)との結合に関するさらなる結合部位を少なくとも1つ含む本発明の免疫グロブリン配列;又は本発明のナノボディの半減期を増大させる、少なくとも1つの部分(特に少なくとも1つの免疫グロブリン配列)と連結する本発明のナノボディを少なくとも1つ含む本発明のポリペプチドを含む。このような半減期を延ばす部分又は免疫グロブリン配列を含む本発明のポリペプチドの例は、本明細書中のさらなる開示に基づき、当業者にとって明らかになり、例えば1つ又は複数の本発明のナノボディが、1つ又は複数の血清タンパク質若しくはその断片(血清アルブミン又はその好適な断片等)と、又は血清タンパク質と結合することができる、1つ又は複数の結合単位(例えば血清アルブミン等の血清タンパク質、IgG等の血清免疫グロブリン、又はトランスフェリンと結合することができるナノボディ又は(単一)ドメイン抗体等)と好適に連結するポリペプチド;本発明のナノボディがFc部分(ヒトFc等)又はその好適な部分若しくは断片と連結するポリペプチド;又は1つ若しくは複数の本発明のナノボディが、血清タンパク質と結合することができる、1つ又は複数の小タンパク質又はペプチド(例えば国際公開第91/01743号、国際公開第01/45746号、国際公開第02/076489号、及び2006年12月5日付で出願したAblynx N.V.の"Peptides capable ofbinding to serum proteins"と題したAblynx N.V.の米国仮特許出願(国際出願PCT/EP/2007/063348号も参照されたい)に記載のタンパク質及びペプチドであるが、これに限定されない)と好適に連結するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0291】
さらに、当業者にとって明らかなように、このようなナノボディ、化合物、構築物又はポリペプチドは、三重特異性又は多重特異性ナノボディ構築物を提供するように、1つ又は複数のさらなる基、残基、部位、又は結合単位(例えば1つ又は複数のさらなる免疫グロブリン配列、特に1つ又は複数のさらなる(すなわち例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有しない)ナノボディ)を含有し得る。
【0292】
概して、半減期が増大した本発明のナノボディ(又はこれを含む化合物、構築物若しくはポリペプチド)は、対応する本発明の免疫グロブリン配列自体の半減期の少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍(少なくとも5倍等)、例えば少なくとも10倍又は20倍を超える半減期を有するのが好ましい。例えば、半減期が増大した本発明のナノボディ、化合物、構築物又はポリペプチドは、対応する本発明の免疫グロブリン配列自体に比べて、半減期が1時間を超えて、好ましくは2時間を超えて、より好ましくは6時間を超えて(12時間等を超えて)、又はさらに24時間、48時間若しくは72時間を超えて増大し得る。
【0293】
好ましいが非限定的な本発明の一態様において、このような本発明のナノボディ、化合物、構築物又はポリペプチドは、少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間又はそれ以上のヒトにおける血清半減期を示す。例えば本発明の化合物又はポリペプチドは、少なくとも5日(約5日〜10日等)、好ましくは少なくとも9日(約9日〜14日等)、より好ましくは少なくとも約10日(約10日〜15日等)、若しくは少なくとも約11日(約11日〜16日等)、より好ましくは少なくとも約12日(約12日〜18日以上等)、又は14日超(約14日〜19日等)の半減期を有し得る。
【0294】
本発明の別の一態様では、本発明のポリペプチドは、得られる本発明のポリペプチドが血液脳関門を横断するのを可能にする1つ又は複数(例えば2つ及び好ましくは1つ)の免疫グロブリン配列に連結する(任意で1つ又は複数の好適なリンカー配列を介して)、1つ又は複数(例えば2つ又は好ましくは1つ)の本発明のナノボディを含む。特に、得られる本発明のポリペプチドが血液脳関門を横断するのを可能にする上記1つ又は複数の免疫グロブリン配列は、1つ又は複数の(例えば2つ及び好ましくは1つ)ナノボディ、例えば、国際公開第02/057445号に記載のナノボディ(好ましい例は、FC44(国際公開第06/040153号の配列番号189)及びFC5(国際公開第06/040154号の配列番号190)である)であり得る。
【0295】
特に、本発明のナノボディを1つ又は複数含むポリペプチドは、
10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で(すなわち10L/モル〜1012L/モル以上、及び好ましくは10L/モル〜1012L/モル以上、及びより好ましくは10L/モル〜1012L/モルの結合定数(K)で)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するようなもの、及び/又は
10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)のkon速度で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するようなもの、及び/又は
1s−1(t1/2=0.69s)〜10−6−1(t1/2が数日である略不可逆的な複合体の場合)、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)のkoff速度で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するようなものであるのが好ましい。
【0296】
好ましくは、本発明の免疫グロブリン配列を1つだけ含有するポリペプチドが、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するようなものであるのが好ましい。これに対して、本発明のナノボディを2つ以上含有するポリペプチドは、本発明の免疫グロブリン配列を1つだけ含有するポリペプチドに比べて、増大した結合活性で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができることが当業者には明らかである。
【0297】
本発明の免疫グロブリン配列又はポリペプチドと例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合に関する幾つかの好ましいIC50値は、本明細書のさらなる記載及び実施例から明らかになる。
【0298】
本発明のこの好ましい態様による他のポリペプチドは例えば、配列番号789〜配列番号791(表A−3を参照されたい)の免疫グロブリン配列のうちの1つ又は複数と80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%又はそれ以上の「配列同一性」(本明細書で規定のような)を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択されてもよく、ここで上記免疫グロブリン配列内に含まれるナノボディは本明細書にさらに規定のようなものが好ましい。
【0299】
本発明の別の態様は、本発明の免疫グロブリン配列(例えば本発明のナノボディ)又はこれを含む本発明のポリペプチドをコードする核酸に関する。さらに、本発明の核酸に関して本明細書中に概して記載するように、このような核酸は、本明細書中に規定のように遺伝子構築物の形態であり得る。
【0300】
別の態様では本発明は、本発明の免疫グロブリン配列(例えばナノボディ)及び/又はこれを含む本発明のポリペプチドを発現するか、又は発現することができる、及び/又は本発明の核酸を含有する宿主又は宿主細胞に関する。このような宿主又は宿主細胞の幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0301】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの本発明の免疫グロブリン配列と、少なくとも1つの本発明のポリペプチド及び/又は少なくとも1つの本発明の核酸と、任意で(すなわち組成物の使用目的に応じて)それ自体が既知のこのような組成物の1つ又は複数のさらなる構成要素とを含有するか又は含む生成物又は組成物に関する。このような生成物又は組成物は例えば、(本明細書に記載の)薬学的組成物、獣医学的組成物又は(同様に本明細書に記載の)診断用途のための生成物若しくは組成物であり得る。このような生成物又は組成物の幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0302】
本発明はさらに、本明細書中に記載の免疫グロブリン配列、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物を調製又は生成する方法に関する。このような方法の幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0303】
本発明はさらに、本明細書中に記載の免疫グロブリン配列、化合物、構築物、ポリペプチド、核酸、宿主細胞、生成物及び組成物の適用及び使用、並びに例えばP2X7等のイオンチャネルに関連する疾患及び障害を予防及び/又は治療する方法に関する。幾つかの好ましいが非限定的な適用及び使用は、本明細書中のさらなる記載から明らかになる。
【0304】
また本発明の他の態様、実施形態、利点及び用途は、本明細書の以下のさらなる記載から明らかになる。概して、最も広範な意味で本明細書で使用されるナノボディという用語は、特定の生物学的供給源又は特定の調製方法に限定されないことに留意すべきである。例えば、以下でより詳細に考察されるように、本発明のナノボディは概して、国際公開第08/020079号の61頁及び62頁で言及された技法(1)〜(8)又はそれ自体が既知の任意の他の好適な技法のいずれかによって得ることができる。1つの好ましい群のナノボディは、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する天然重鎖抗体のVHHドメインに対応する。本明細書にさらに記載されるように、このようなVHH配列は概して、例えばP2X7等のイオンチャネルをラクダ科動物種に好適に(すなわち免疫応答及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する重鎖抗体を誘起するように)免疫付与することによって、上記ラクダ科動物由来の好適な生体試料(例えば血液試料、血清試料又はB細胞の試料)を得ることによって、及びそれ自体が既知の任意の好適な技法を使用して、上記試料から例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有するVHH配列を生成することによって、生成又は入手することができる。このような技法は、当業者にとって明らかであり、及び/又は本明細書でさらに記載される。
【0305】
代替的に、例えばP2X7等のイオンチャネルに対するこのような天然VHHドメインは、ラクダ科動物のVHH配列のナイーブライブラリから、例えばそれ自体が既知の1つ又は複数のスクリーニング技法を用いて、例えばP2X7等のイオンチャネル、又は少なくともその一部分、断片、抗原決定基若しくはエピトープを使用して、このようなライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる。このようなライブラリ及び技法は例えば、国際公開第99/37681号、国際公開第01/90190号、国際公開第03/025020号及び国際公開第03/035694号に記載されている。代替的に、ナイーブVHHライブラリ由来の改良型の合成ライブラリ又は半合成ライブラリ(例えばランダム突然変異誘発及び/又はCDRシャッフリング(例えば国際公開第00/43507号に記載されているようなもの)等の技法によって、ナイーブVHHライブラリから得られるVHHライブラリ)を使用してもよい。
【0306】
このように、別の態様において、本発明は、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有するナノボディを生成する方法に関する。一態様では、上記方法は少なくとも、
a)ナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリを準備する工程と、
b)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができる、及び/又はこれに対する親和性を有するナノボディ配列に関して、上記のナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程と、
c)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができる、及び/又はこれに対する親和性を有するナノボディ(単数又は複数)を単離する工程とを含む。
【0307】
このような方法では、ナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリは、ナノボディ配列のナイーブセット、ナイーブコレクション又はナイーブライブラリ、ナノボディ配列の合成又は半合成のセット、コレクション又はライブラリ、及び/又は親和性成熟を受けているナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリであり得る。
【0308】
この方法の好ましい一態様では、ナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリは、例えばP2X7等のイオンチャネル、又はこれに基づく若しくはこれに由来する好適な抗原決定基(例えばその抗原の部分、断片、領域、ドメイン、ループ又は他のエピトープ)を好適に免疫付与したラクダ科動物種に由来している、ナノボディ配列の免疫セット、免疫コレクション又は免疫ライブラリ、特にVHH配列の免疫セット、免疫コレクション又は免疫ライブラリであり得る。特定の一態様では、上記抗原決定基は、細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)であり得る。
【0309】
上記の方法において、ナノボディ配列又はVHH配列のセット、コレクション又はライブラリは、スクリーニングを容易にするように、ファージ、ファージミド、リボソーム又は好適な微生物(酵母等)上に提示してもよい。ナノボディ配列(のセット、コレクション又はライブラリ)を提示及びスクリーニングするのに好適な方法、技法及び宿主生物は、例えば本明細書中のさらなる開示に基づいて当業者にとって明らかである。国際公開第03/054016号及びNature Biotechnology, 23, 9, 1105-1116(2005)におけるHoogenboomによる総説も参照する。
【0310】
別の態様において、ナノボディ配列を生成する方法は、
a)免疫グロブリン配列を発現するラクダ科動物種由来の細胞のコレクション又は試料を準備する工程と、
b)(i)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができる、及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を発現する細胞、(ii)重鎖抗体を発現する細胞に関して上記細胞のコレクション又は試料をスクリーニングする工程であって、例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができる及び/又はこれに対して親和性を有する重鎖抗体を発現する細胞を少なくとも1つ提供するように、本質的に単一のスクリーニング工程として、又は2つの別々のスクリーニング工程として任意の好適な順番で下位工程(i)及び(ii)を実施することができる、スクリーニングする工程と、
c)(i)上記重鎖抗体に存在するVHH配列を上記細胞から単離する工程、又は(ii)上記重鎖抗体に存在するVHH配列をコードする核酸配列を上記細胞から単離した後、上記VHHドメインを発現する工程のいずれかとを少なくとも含む。
【0311】
この態様による方法において、細胞のコレクション又は試料は例えば、B細胞のコレクション又は試料であり得る。また、この方法では、細胞の試料は、例えばP2X7等のイオンチャネル、又はこれに基づく若しくはこれに由来する好適な抗原決定基(例えばその抗原の部分、断片、領域、ドメイン、ループ又は他のエピトープ)を好適に免疫付与したラクダ科動物に由来し得る。特定の一態様では、上記抗原決定基は、細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)であり得る。
【0312】
上記の方法は、当業者にとって明らかなように、任意の好適な方法で行われ得る。例えば欧州特許第0542810号、国際公開第05/19824号、国際公開第04/051268号及び国際公開第04/106377号を参照されたい。工程b)のスクリーニングは、FACS等のフローサイトメトリ法を使用して行うのが好ましい。これに関しては、例えばLieby et al., Blood, Vol. 97, No. 12, 3820を参照する。特に、Ablynx N.V.による国際出願である国際公開第06/079372号で記載のいわゆる「ナノクローン(商標)」法を参照する。
【0313】
別の態様において、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列を生成する方法は、
a)重鎖抗体又はナノボディ配列をコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリを準備する工程と、
b)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する重鎖抗体又はナノボディ配列をコードする核酸配列に関して、上記核酸配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程と、
c)上記核酸配列を単離し、その後それぞれ上記重鎖抗体に存在するVHH配列を発現するか、又は上記ナノボディ配列を発現する、単離する工程とを少なくとも含み得る。
【0314】
このような方法では、重鎖抗体又はナノボディ配列をコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリは例えば、重鎖抗体又はVHH配列のナイーブセット、ナイーブコレクション又はナイーブライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリ;ナノボディ配列の合成又は半合成のセット、コレクション又はライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリ;及び/又は親和性成熟を受けているナノボディ配列のセット、コレクション又はライブラリをコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリであり得る。
【0315】
この方法の好ましい一態様では、免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリは、例えばP2X7等のイオンチャネル、又はこれに基づく若しくはこれに由来する好適な抗原決定基(例えばその抗原の部分、断片、領域、ドメイン、ループ又は他のエピトープ)を好適に免疫付与したラクダ科動物由来の重鎖抗体又はVHH配列をコードする核酸配列の免疫セット、免疫コレクション又は免疫ライブラリであり得る。特定の一態様では、上記抗原決定基は、細胞外の部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープ(複数可)であり得る。
【0316】
上記の方法において、ヌクレオチド配列のセット、コレクション又はライブラリは、スクリーニングを容易にするように、ファージ、ファージミド、リボソーム又は好適な微生物(例えば酵母)上に提示してもよい。免疫グロブリン配列をコードするヌクレオチド配列(のセット、コレクション又はライブラリ)を提示及びスクリーニングするのに好適な方法、技法及び宿主生物は、例えば本明細書中のさらなる開示に基づいて当業者にとって明らかである。国際公開第03/054016号及びNature Biotechnology, 23, 9, 1105-1116(2005)におけるHoogenboomによるレビューも参照する。
【0317】
当業者にとって明らかなように、本明細書中に記載の方法のスクリーニング工程を選択工程として実施することもできる。したがって、本明細書で使用する「スクリーニング」という用語は、選択、スクリーニング、又は選択法及び/又はスクリーニング法の任意の好適な組合せを含むことができる。また、配列のセット、コレクション又はライブラリを使用する場合、これは、1個、2個、3個又は約5個、10個、50個、100個、500個、1000個、5000個、10個、10個、10個、10個、10個以上の配列等の任意の好適な数の配列を含有し得る。
【0318】
また、上記の免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリにおける配列の1つ又は複数又は全ては、コンピュータモデリング法又は生物静力学法又はデータマイニング法等の合理的又は半経験的なアプローチで入手又は規定され得る。
【0319】
さらに、このようなセット、コレクション又はライブラリは、自然に多様化した配列(例えば免疫ライブラリ))の多様なセットに由来する複数の配列を含む(compromise)、(例えば、指定の点突然変異又はランダム化した位置を有する)互いの変異体である1つ、2つ以上の配列、又は任意の他の多様な配列源(例えばHoogenboom et al, Nat Biotechnol 23: 1105, 2005及びBinz et al, Nat Biotechnol 2005, 23: 1247に記載)を含み得る。配列のこのようなセット、コレクション又はライブラリは、ファージ粒子、リボソーム、細菌、酵母細胞、哺乳動物細胞の表面上に提示され、これらの担体内で免疫グロブリン配列をコードするヌクレオチド配列に連結することができる。このことが、このようなセット、コレクション又はライブラリを、所望の本発明の免疫グロブリン配列を単離する選択法に従わせる。より一般的には、配列が好適な宿主又は宿主細胞上に提示される場合、初めに上記宿主又は宿主細胞から所望の配列をコードするヌクレオチド配列を単離した後、好適な宿主生物で上記ヌクレオチド配列を好適に発現することによって所望の配列を得ることも可能である(慣習になっている)。さらに、当業者にとって明らかなように、それ自体が既知の任意の好適な方法でこれを実施することができる。
【0320】
例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有するVHH配列又はナノボディ配列を得るためのさらに別の技法は、(すなわち免疫応答及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する重鎖抗体を生じるように)重鎖抗体を発現することができるトランスジェニック哺乳動物に好適に免疫付与すること、上記VHH配列又はナノボディ配列(をコードする核酸配列)を含有する上記トランスジェニック哺乳動物由来の好適な生体試料(例えば血液試料、血清試料又はB細胞の試料)を得ること、及びこれからそれ自体が既知の任意の好適な技法(本明細書で記載の方法又はハイブリドーマ法のいずれか等)を使用して、上記試料から例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有するVHH配列を生成することを伴う。例えばこのために、国際公開第02/085945号、国際公開第04/049794号、国際公開第06/008548号及びJanssens et al., Proc. Natl. Acad. Sci .USA. 2006 Oct 10;103(41):15130-5に記載されている重鎖抗体発現マウス、並びにさらなる方法及び技法を使用することができる。例えば、このような重鎖抗体発現マウスは、天然源由来の(単一)可変ドメイン(例えばヒト(単一)可変ドメイン、ラクダ科動物(単一)可変ドメイン又はサメ(単一)可変ドメイン)及び例えば合成又は半合成の(単一)可変ドメイン等の任意の好適な(単一)可変ドメインを有する重鎖抗体を発現することができる。
【0321】
本発明は、上記方法、又は代替的に上記の方法の1つと、さらに上記VHH配列又はナノボディ配列のヌクレオチド配列又は免疫グロブリン配列を決定する工程と、好適な宿主細胞若しくは宿主生物における発現又は化学合成のようなそれ自体が既知の方法で上記VHH配列又はナノボディ配列を発現又は合成する工程とを少なくとも含む方法によって得られるVHH配列又はナノボディ配列にも関する。
【0322】
本明細書で言及されるように、特に好ましい群の本発明のナノボディは、国際公開第08/020079号の63頁にさらに記載されるように、及び国際公開第08/020079号の63頁で言及される技法を用いて、天然VHHドメインの免疫グロブリン配列に対応するが、すなわち上記天然VHH配列(特にフレームワーク配列)の免疫グロブリン配列における1つ又は複数のアミノ酸残基を、(例えば上記の)ヒト由来の通常の四本鎖抗体由来のVドメインの対応する位置(複数可)で発生する1つ又は複数のアミノ酸残基に置き換えることによって「ヒト化」した免疫グロブリン配列を有するナノボディを含む。別の特に好ましい群の本発明のナノボディは、国際公開第08/020079号の63頁にさらに記載されるように、及び国際公開第08/020079号の63頁で言及される技法を用いて、天然Vドメインの免疫グロブリン配列に対応するが、すなわち通常の四本鎖抗体由来の天然Vドメインの免疫グロブリン配列における1つ又は複数のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVHHドメインの対応する位置(複数可)で発生する1つ又は複数のアミノ酸残基に置き換えることによって「ラクダ化」した免疫グロブリン配列を有するナノボディを含む。
【0323】
天然V配列又は好ましくはVHH配列を発端として本発明のナノボディ及び/又はこれをコードする核酸を得るのに好適な他の方法及び技法は当業者から明らかであり、例えば国際公開第08/00279号の64頁で言及された技法を含み得る。そこで言及されるように、ナノボディは特に、フレームワーク配列のうちの1つ又は複数における1つ又は複数の「特徴的な残基(Hallmark residues)」(本明細書に記載)の存在を特徴とし得る。
【0324】
したがって、好ましいが、本発明の非限定的な一態様によれば、ナノボディは概して、最も広範な意味で
a)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQである)、及び/又は
b)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、(本明細書に規定の)荷電アミノ酸又はシステイン残基であり、44位のアミノ酸残基はEであるのが好ましい)、及び/又は
c)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はP、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択される)を含む、ポリペプチドと定義することができる。
【0325】
したがって好ましいが非限定的な第1の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
a)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQであり、及び/又は
b)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、荷電アミノ酸又はシステインであり、カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基はEであるのが好ましく、及び/又は
c)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はP、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択され、
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0326】
特に、ナノボディは概して、最も広範な意味で
a)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQである)、及び/又は
b)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基はEであり、カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基はRである)、及び/又は
c)3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列(カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はP、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択される)を含む、ポリペプチドと定義することができる。
【0327】
したがって好ましいが非限定的な一態様によれば、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
a)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQであり、及び/又は
b)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基はEであり、カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基はRであり、及び/又は
c)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はP、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択され、
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0328】
特に本発明による例えばP2X7等のイオンチャネルに対するナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
a)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQであり、及び/又は
b)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基はEであり、カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基はRであり、及び/又は
c)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はP、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択され、
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0329】
特に、好ましいが、本発明の非限定的な一態様によれば、ナノボディは概して、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列を含むポリペプチドと定義することができ、
a−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、A、G、E、D、G、Q、R、S、Lからなる群から選択され、好ましくはG、E若しくはQからなる群から選択され、
a−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、L、R若しくはCからなる群から選択され、好ましくはL若しくはRからなる群から選択され、
a−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、W、R若しくはSからなる群から選択され、好ましくはW若しくはRであり、最も好ましくはWであり、
a−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQであるか、又は
b−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、E及びQからなる群から選択され、
b−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基はRであり、
b−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、W、R及びSからなる群から選択され、好ましくはWであり、
b−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQ及びLからなる群から選択され、好ましくはQであるか、又は
c−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、A、G、E、D、Q、R、S及びLからなる群から選択され、好ましくはG、E及びQからなる群から選択され、
c−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、L、R及びCからなる群から選択され、好ましくはL及びRからなる群から選択され、
c−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、P、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択され、
c−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQ及びLからなる群から選択され、好ましくはQであり、かつ
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0330】
したがって、好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
a−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、A、G、E、D、G、Q、R、S、Lからなる群から選択され、好ましくはG、E若しくはQからなる群から選択され、
a−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、L、R若しくはCからなる群から選択され、好ましくはL若しくはRからなる群から選択され、
a−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、W、R若しくはSからなる群から選択され、好ましくはW若しくはRであり、最も好ましくはWであり、
a−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQであり、かつ
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0331】
好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
b−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、E及びQからなる群から選択され、
b−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基はRであり、
b−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、W、R及びSからなる群から選択され、好ましくはWであり、
b−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQ及びLからなる群から選択され、好ましくはQであり、かつ
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0332】
好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
c−1)カバットナンバリングによる44位のアミノ酸残基は、A、G、E、D、Q、R、S及びLからなる群から選択され、好ましくはG、E及びQからなる群から選択され、
c−2)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、L、R及びCからなる群から選択され、好ましくはL及びRからなる群から選択され、
c−3)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、P、R及びSからなる群から選択され、特にR及びSからなる群から選択され、
c−4)カバットナンバリングによる108位のアミノ酸残基はQ及びLからなる群から選択され、好ましくはQであり、かつ
d)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0333】
2つの特に好ましいが非限定的な本発明のナノボディ群は、上記のa)、上記の(a−1)〜(a−4)、上記のb)、上記の(b−1)〜(b−4)、上記の(c)、及び/又は上記の(c−1)〜(c−4)によるものであり、
i)カバットナンバリングによる44位〜47位のアミノ酸残基は、配列GLEW(又は本明細書に記載のGLEW様配列)を形成し、108位のアミノ酸残基はQであるか、又は
ii)カバットナンバリングによる43位〜46位のアミノ酸残基は、配列KERE又は配列KQRE(又は記載されるようなKERE様配列)を形成し、108位のアミノ酸残基はQ又はLであり、好ましくはQである。
【0334】
したがって、好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
i)カバットナンバリングによる44位〜47位のアミノ酸残基は、配列GLEW(又は本明細書に記載のGLEW様配列)を形成し、108位のアミノ酸残基はQであり、かつ
ii)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0335】
好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有し得る;ここで
i)カバットナンバリングによる43位〜46位のアミノ酸残基は、配列KERE又は配列KQRE(又はKERE様配列)を形成し、108位のアミノ酸残基はQ又はLであり、好ましくはQであり、かつ
ii)CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0336】
カバットナンバリングによる43位〜46位のアミノ酸残基が、配列KERE又は配列KQREを形成する、本発明のナノボディにおいて、37位のアミノ酸残基がFであるのが最も好ましい。カバットナンバリングによる44位〜47位のアミノ酸残基が、配列GLEWを形成する、本発明のナノボディにおいて、37位のアミノ酸残基は、Y、H、I、L、V又はFからなる群から選択され、Vであるのが最も好ましい。
【0337】
したがって、決してこれらには限定されないが、上記で言及された位置に存在するアミノ酸残基に基づき、概して本発明のナノボディを以下の3つの群に基づいて分類することができる:
i)「GLEW群」:カバットナンバリングによる44位〜47位に免疫グロブリン配列GLEW、及びカバットナンバリングによる108位にQを有するナノボディ。本明細書でさらに記載されるように、この群内のナノボディは通常、37位にVを有し、103位にW、P、R又はSを有することができ、好ましくは103位にWを有する。GLEW群は、以下の表B−2で言及されるもののような幾つかのGLEW様配列も含む。より包括的にはこれらに限定されないが、GLEW群に属するナノボディは44位がG及び/又は47位がWであり、46位が通常Eであり、好ましくは45位が荷電アミノ酸残基及びシステインではないナノボディとして定義することができる。
ii)「KERE群」:カバットナンバリングによる43位〜46位に免疫グロブリン配列KERE又はKQRE(又は別のKERE様配列)、及びカバットナンバリングによる108位にQ又はLを有するナノボディ。本明細書でさらに記載されるように、この群内のナノボディは通常、37位にF、及び47位にL又はFを有し、103位にW、P、R又はSを有することができ、好ましくは103位にWを有する。より包括的にはこれらに限定されないが、KERE群に属するナノボディは44位がK、Q又はR(通常K)であり、45位が荷電アミノ酸残基又はシステインであり、47位が本明細書でさらに規定のようなものであるナノボディとして定義することができる。
iii)「103P、R、S群」:103位にP、R又はSを有するナノボディ。これらのナノボディは、カバットナンバリングによる44位〜47位に免疫グロブリン配列GLEW、又はカバットナンバリングによる43位〜46位に免疫グロブリン配列KERE又はKQREのいずれかを有することができ(後者は、(KERE群に関して規定のように)37位のF、及び47位のL又はFと組合せるのが最も好ましい)、カバットナンバリングによる108位にQ又はLを有することができ、Qを有するのが好ましい。
【0338】
また必要に応じて、ナノボディは、2つ以上のこれらの群に属し得る(すなわちこれらの特徴を有し得る)。例えば、1つの特に好ましいナノボディ群は、44位〜47位にGLEW又はGLEW様配列、103位にP、R又はS(特にR)、及び108位にQ(Lへとヒト化してもよい)を有する。
【0339】
より一般的には、上記に言及される定義が、未変性(すなわち非ヒト化)VHH配列の形態のナノボディを説明し、またこれに当てはまること、及びこれらのナノボディのヒト化変異体は、上記のもの以外のアミノ酸残基(すなわち本明細書中に規定の1つ又は複数のヒト化置換)を含有し得ることに留意されたい。例えばこれに限定されないが、GLEW群又は103P、R、S群の幾つかのヒト化ナノボディにおいて、108位のQは、108Lにヒト化し得る。本明細書中に既に言及されたように、他のヒト化置換(及びその好適な組合せ)は、本明細書中の開示に基づき当業者にとって明らかであろう。付加的に又は代替的に、天然のVHH配列のフレームワーク領域の配列を、1つ又は複数の密接に関連するヒトV配列の対応するフレームワーク配列と比較することによって、他の潜在的に有用なヒト化置換を確認することができ、その後(本明細書中にさらに記載のように、それ自体が既知の任意の方法で)このようにして求めた、潜在的に有用なヒト化置換(又はその組合せ)の1つ又は複数を上記VHH配列に導入することができ、標的に対する親和性、安定性、発現の容易さ及びレベル、及び/又は他の所望の特性に関して、得られたヒト化VHH配列を試験することができる。このようにして、当業者は、限定的な試行錯誤によって、本明細書中の開示に基づき他の好適なヒト化置換(又はその好適な組合せ)を求めることができる。また、上記に基づき、ナノボディ(のフレームワーク領域)を部分ヒト化又は完全ヒト化してもよい。
【0340】
したがって、好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、(本明細書に規定のように)GLEW群に属するナノボディであってもよく、その中のCDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0341】
好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、(本明細書に規定のように)KERE群に属するナノボディであってもよく、CDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0342】
したがって、好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、(本明細書に規定のように)103P、R、S群に属するナノボディであってもよく、その中のCDR1、CDR2及びCDR3は本明細書で規定されるようなものであり、好ましくは本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであり、より好ましくは本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものである。
【0343】
また、より一般的には、上記で言及された108Q、43E/44R及び103P、R、S残基の他に、本発明のナノボディは、通常のVドメインでV/V界面(の一部)が形成される1つ又は複数の位置で、対応する天然V配列における同じ位置(複数可)で自然発生するアミノ酸残基よりも強く荷電する、1つ又は複数のアミノ酸残基、特に(国際出願の国際公開第08/020079号の48頁の表A−2で言及される)1つ又は複数の荷電アミノ酸残基を含有することができる。このような置換としては、これらに限定されないが、以下の表B−2で言及されるGLEW様配列、及び例えば44位〜47位のKLEWと共に108位にQを有するナノボディを得るために、いわゆる「ミクロボディ」に関して国際出願の国際公開第00/29004号で説明される置換が挙げられる。これらの位置での他の可能性のある置換は、本明細書中の開示に基づいて当業者にとって明らかである。本発明のナノボディの一態様において、83位のアミノ酸残基は、L、M、S、V及びWからなる群から選択され、Lであるのが好ましい。また、本発明のナノボディの一態様において、83位のアミノ酸残基は、R、K、N、E、G、I、T及びQからなる群から選択され、(天然VHHドメインに対応するナノボディに関しては)K若しくはE、又は(本明細書に記載の「ヒト化」ナノボディに関しては)Rのいずれかであるのが最も好ましい。一態様では、84位のアミノ酸残基は、P、A、R、S、D、T及びVからなる群から選択され、(天然VHHドメインに対応するナノボディに関しては)P、又は(本明細書に記載の「ヒト化」ナノボディに関しては)Rであるのが最も好ましい。さらに本発明のナノボディの一態様において、104位のアミノ酸残基は、G及びDからなる群から選択され、Gであるのが最も好ましい。
【0344】
まとめると、ナノボディにおいて上記で言及される、11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基は、本明細書で「特徴的な残基」とも称される。特徴的な残基及び最も密接に関連したヒトVドメイン(V3)の対応する位置のアミノ酸残基を表B−2に要約する。
【0345】
天然VHHドメインで生じるこれらの特徴的な残基の幾つかの特に好ましいが非限定的な組合せを表B−3で言及する。比較のために、DP−47と呼ばれるヒトV3の対応するアミノ酸残基をイタリック体で示している。
【0346】
表B−2:ナノボディにおける特徴的な残基
【表4】

脚注:
(1)排他的ではないが、具体的には、43位〜46位のKERE又はKQREとの組合せで。
(2)通常44位〜47位のGLEWとして。
(3)通常43位〜46位のKERE又はKQREとして、例えば43位〜47位のKEREL、KEREF、KQREL、KQREF、KEREG、KQREW又はKQREGとして。代替的に、TERE(例えばTEREL)、TQRE(例えばTQREL)、KECE(例えばKECEL又はKECER)、KQCE(例えばKQCEL)、RERE(例えばREREG)、RQRE(例えばRQREL、RQREF又はRQREW)、QERE(例えばQEREG)、QQRE(例えばQQREW、QQREL又はQQREF)、KGRE(例えばKGREG)、KDRE(例えばKDREV)等の配列も可能である。幾つかの他の可能であるがあまり好ましくない配列としては例えば、DECKL及びNVCELが挙げられる。
(4)44位〜47位にGLEW、及び43位〜46位にKERE又はKQREの両方を有する。
(5)多くの場合、天然VHHドメインの83位、84位のKP又はEPとして。
(6)排他的ではないが、具体的には44位〜47位のGLEWとの組合せで。
(7)44位〜47位がGLEWである場合、また103位にWを含有する(非ヒト化)VHH配列における108位は常にQであることが条件である。
(8)GLEW群は、44位〜47位にGLEW様配列(例えばGVEW、EPEW、GLER、DQEW、DLEW、GIEW、ELEW、GPEW、EWLP、GPER、GLER及びELEW)も含有する。
【0347】
表B−3:天然ナノボディにおける特徴的な残基の幾つかの好ましいが非限定的な組合せ
これらの組合せのヒト化に関しては、明細書を参照する。
【表5】
【0348】
ナノボディにおいて、特徴的な残基以外の任意の位置の各アミノ酸残基は、天然VHHドメインの(カバットナンバリングによる)対応する位置で自然発生する任意のアミノ酸残基であり得る。
【0349】
このようなアミノ酸残基は当業者にとって明らかである。表B−4〜表B−7は、天然VHHドメインのFR1、FR2、FR3及びFR4の(カバットナンバリングによる)それぞれの位置に存在し得る幾つかの非限定的な残基を表す。それぞれの位置に関しては、天然VHHドメインのそれぞれの位置で最も頻繁に発生する(ナノボディにおける上記位置に最も好ましいアミノ酸残基である)アミノ酸残基を太字で示し、それぞれの位置で好ましい他のアミノ酸残基を下線処理する(備考:天然VHHドメインの26位〜30位で見られるアミノ酸残基の数字は、これらの位置の残基が既にCDR1部分を形成しているというChothia(同上)によるナンバリングの基礎をなす仮説を支持する)。
【0350】
表B−4〜表B−7では、ヒトV3ドメインのそれぞれの位置に存在し得る非限定的な残基の幾つかも表している。また、それぞれの位置に関しては、天然ヒトV3ドメインのそれぞれの位置で最も頻繁に発生するアミノ酸残基を太字で示し、他の好ましいアミノ酸残基を下線処理する。
【0351】
参考のみのために、表B−4〜表B−7は、7732個のVHH配列の代表的な試料におけるそれぞれのアミノ酸位置でのVHHエントロピー(「VHH Ent.」)及びVHH変動性(「VHH Var.」)に関するデータ(Utrecht UniversityのDavid Lutje Hulsing及びProf. Theo Verripsによって無償(kindly)提供されたa.o.データを含む)も含有する。VHHエントロピー及びVHH変動性の値は、解析する7732個のVHH配列間のアミノ酸残基の変動性及び保存度に対する評価基準を与え、低い値(すなわち1未満、例えば0.5未満)は、アミノ酸残基が、VHH配列間で強く保存される(すなわちほとんど変動性がない)ことを示す。例えば、9位のG及び36位のWがそれぞれ、0.01及び0のVHHエントロピー値を有し、これは(解析する7732個の配列全てにおいて36位がWである場合)これらの残基が強く保存され、ほとんど変動しないことを示す一方で、CDR部分を形成する残基に関しては概して、1.5以上の値が見られる(データ図示せず)。以下で表すデータは、27位〜30位のアミノ酸残基、並びにおそらく93位及び94位のアミノ酸残基でさえも既にCDR部分を形成しているという仮説を支持することに留意されたい(しかしながら、本発明は任意の特定の仮説又は説明に限定されず、上記のように、本明細書ではカバットによるナンバリングを使用する)。配列エントロピー、配列変動性及びこれを決定する方法の一般的説明に関しては、Oliveira et al., PROTEINS: Structure, Function and Genetics, 52:544-552(2003)を参照されたい。
【0352】
表B−4:FR1におけるアミノ酸残基の非限定的な例(脚注に関しては、表B−2の脚注を参照する)
【表6】

【0353】
表B−5:FR2におけるアミノ酸残基の非限定的な例(脚注に関しては、表B−2の脚注を参照する)
【表7】
【0354】
表B−6:FR3におけるアミノ酸残基の非限定的な例(脚注に関しては、表B−2の脚注を参照する)
【表8】

【0355】
表B−7:FR4におけるアミノ酸残基の非限定的な例(脚注に関しては、表B−2の脚注を参照する)
【表9】
【0356】
このように、好ましいが非限定的な別の態様において、本発明のナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有する免疫グロブリン配列として規定することができ、ここで
i)カバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基の1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択され、
ii)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0357】
上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、さらに本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。
【0358】
特に、本発明のナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
(ここで、FR1〜FR4はそれぞれフレームワーク領域1〜フレームワーク領域4を指し、CDR1〜CDR3はそれぞれ相補性決定領域1〜相補性決定領域3を指す)を有する免疫グロブリン配列である可能性があり、ここで
i)カバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位の(好ましくは)アミノ酸残基の1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択され(VHH配列が特徴的な残基を1つ又は複数含有すること、並びに部分ヒト化ナノボディが通常及び好ましくは[依然として]特徴的な残基を1つ又は複数含有すること[しかしながら、本発明に応じて好適であれば、1つ又は複数の他のアミノ酸残基ではなく、全ての特徴的な残基がヒト化した部分ヒト化ナノボディを提供することも本発明の範囲内である]、並びに本発明に応じて好適であれば、完全ヒト化ナノボディにおいて特徴的な残基の位置の全てのアミノ酸残基がヒトV3配列で発生するアミノ酸残基であることが理解される。本明細書中の開示に基づき当業者にとって明らかなように、このようなVHH配列、少なくとも1つの特徴的な残基を有するこのような部分ヒト化ナノボディ、特徴的な残基を有しないこのような部分ヒト化ナノボディ及びこのような完全ヒト化ナノボディは全て、本発明の態様を形成する)、
ii)上記免疫グロブリン配列が、配列番号1〜配列番号22の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(アミノ酸同一性の程度を求めるために、CDR配列を形成するアミノ酸残基(配列番号1〜配列番号22の配列においてXで示す)は無視する)、
iii)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0359】
上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、さらに本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。
【0360】
表B−8:KERE、GLEW及びP、R、S 103群のナノボディの代表的な免疫グロブリン配列
CDRはXXXXで示す
【表10】



【0361】
特に、KERE群の本発明のナノボディは、(一般)構造:
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
を有する免疫グロブリン配列である可能性があり、ここで
i)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、荷電アミノ酸(本明細書中に規定)又はシステイン残基であり、44位のアミノ酸残基は好ましくはEであり、
ii)FR1は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0362】
表B−9:KERE群のナノボディの代表的なFW1配列
【表11】
【0363】
iii)FR2は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0364】
表B−10:KERE群のナノボディの代表的なFW2配列
【表12】
【0365】
iv)FR3は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0366】
表B−11:KERE群のナノボディの代表的なFW3配列
【表13】
【0367】
v)FR4は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0368】
表B−12:KERE群のナノボディの代表的なFW4配列
【表14】
【0369】
vi)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0370】
上記ナノボディにおいて、1つ又は複数のさらなる特徴的な残基は、(例えばこれらがVHH配列又は部分ヒト化ナノボディである場合)本明細書中に記載のようなものが好ましい。
【0371】
また、上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、さらに本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。
【0372】
フレームワーク1に関して、上記で概説の免疫グロブリン配列がヌクレオチド配列の発現によって生成する場合、上記核酸を生成するのに使用されているプライマー(複数可)によって、始めの4つの免疫グロブリン配列(すなわちカバットナンバリングによる1位〜4位のアミノ酸残基)が決まり得ることが多いことは、当業者にとって明らかである。このように、アミノ酸同一性の程度を求めるために、始めの4つのアミノ酸残基を無視するのが好ましい。
【0373】
また、フレームワーク1に関して、カバットナンバリングによる27位〜30位のアミノ酸位置は(CDRではなく)フレームワーク領域の一部であると考えられるが、1000個を超えるVHH配列のデータベースの解析によって、27位〜30位のアミノ酸が、1位〜26位のアミノ酸に対する変動性よりも非常に大きい変動性(VHHエントロピー及びVHH変動性に関して表される、表B−4〜表B−7を参照されたい)を有することが見出されている。このため、アミノ酸同一性の程度を求めるために、27位〜30位のアミノ酸残基も無視するのが好ましい。
【0374】
これを考慮して、KERE群のナノボディは、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)カバットナンバリングによる45位のアミノ酸残基は、荷電アミノ酸(本明細書中に規定)又はシステイン残基であり、44位のアミノ酸残基は好ましくはEであり、
ii)FR1は、カバットナンバリングによる5位〜26位で、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0375】
表B−13:KERE群のナノボディの代表的なFW1配列(5位〜26位のアミノ酸残基)
【表15】
【0376】
iii)FR2、FR3及びFR4は、KERE群のナノボディのFR2、FR3及びFR4に関して本明細書中に言及されるようなものであり、
iv)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0377】
上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、この場合も本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。
【0378】
GLEW群のナノボディは、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)好ましくは、GLEW群のナノボディが非ヒト化ナノボディである場合、108位のアミノ酸残基はQであり、
ii)FR1は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0379】
表B−14:GLEW群のナノボディの代表的なFW1配列
【表16】
【0380】
iii)FR2は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0381】
表B−15:GLEW群のナノボディの代表的なFW2配列
【表17】
【0382】
iv)FR3は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0383】
表B−16:GLEW群のナノボディの代表的なFW3配列
【表18】
【0384】
v)FR4は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0385】
表B−17:GLEW群のナノボディの代表的なFW4配列
【表19】
【0386】
vi)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0387】
上記ナノボディにおいて、1つ又は複数のさらなる特徴的な残基は、(例えばこれらがVHH配列又は部分ヒト化ナノボディである場合)本明細書中に記載のようなものが好ましい。
【0388】
この場合もフレームワーク1に関して、アミノ酸同一性の程度を求めるために、1位〜4位及び27位〜30位のアミノ酸残基を無視するのが好ましいことは当業者にとって明らかである。
【0389】
これを考慮して、GLEW群のナノボディは、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)好ましくは、GLEW群のナノボディが非ヒト化ナノボディである場合、108位のアミノ酸残基はQであり、
ii)FR1は、カバットナンバリングによる5位〜26位で、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0390】
表B−18:KERE群のナノボディの代表的なFW1配列(5位〜26位のアミノ酸残基)
【表20】
【0391】
iii)FR2、FR3及びFR4は、GLEW群のナノボディのFR2、FR3及びFR4に関して本明細書中に言及されるようなものであり、
iv)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0392】
上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、この場合も本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。上記ナノボディにおいて、1つ又は複数のさらなる特徴的な残基は、(例えばこれらがVHH配列又は部分ヒト化ナノボディである場合)本明細書中に記載のようなものが好ましい。
【0393】
P、R、S 103群のナノボディは、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はWではなく、
ii)好ましくは、カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、P、R又はSであり、より好ましくはRであり、
iii)FR1は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0394】
表B−19:P、R、S 103群のナノボディの代表的なFW1配列
【表21】
【0395】
iv)FR2は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0396】
表B−20:P、R、S 103群のナノボディの代表的なFW2配列
【表22】
【0397】
v)FR3は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0398】
表B−21:P、R、S 103群のナノボディの代表的なFW3配列
【表23】
【0399】
vi)FR4は、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0400】
表B−22:P、R、S 103群のナノボディの代表的なFW4配列
【表24】
【0401】
vii)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0402】
上記ナノボディにおいて、1つ又は複数のさらなる特徴的な残基は、(例えばこれらがVHH配列又は部分ヒト化ナノボディである場合)本明細書中に記載のようなものが好ましい。
【0403】
フレームワーク1に関して、アミノ酸同一性の程度を求めるために、1位〜4位及び27位〜30位のアミノ酸残基を無視するのが好ましいことはここでもまた当業者にとって明らかである。
【0404】
これを考慮して、P、R、S 103群のナノボディは、3つの相補性決定領域/配列が間に挿入された4つのフレームワーク領域/配列から構成される免疫グロブリン配列であり得る;ここで
i)カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基はWではなく、
ii)好ましくは、カバットナンバリングによる103位のアミノ酸残基は、P、R又はSであり、より好ましくはRであり、
iii)FR1は、カバットナンバリングによる5位〜26位で、以下の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列であり、
【0405】
表B−23:P、R、S 103群のナノボディの代表的なFW1配列(5位〜26位のアミノ酸残基)
【表25】
【0406】
iv)FR2、FR3及びFR4は、P、R、S 103群のナノボディのFR2、FR3及びFR4に関して本明細書中に言及されるようなものであり、
v)CDR1、CDR2及びCDR3が、本明細書中で規定されるようなものであり、本明細書中の好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるものが好ましく、本明細書中のより好ましい態様の1つに従って規定されるようなものであるのがより好ましい。
【0407】
上記ナノボディは例えば、VHH配列であっても、又はヒト化ナノボディであってもよい。上記ナノボディ配列がVHH配列である場合、これらは、本明細書中にさらに記載のように、好適にヒト化されていてもよい。ナノボディが部分ヒト化ナノボディである場合、これらは任意で、この場合も本明細書中に記載のようにさらに好適にヒト化してもよい。
【0408】
上記ナノボディにおいて、1つ又は複数のさらなる特徴的な残基は、(例えばこれらがVHH配列又は部分ヒト化ナノボディである場合)本明細書中に記載のようなものが好ましい。
【0409】
別の好ましいが非限定的な態様において本発明は、上記のようなナノボディであって、CDR配列が、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つのCDR配列との少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性(95%以上のアミノ酸同一性等)、又はさらに本質的に100%のアミノ酸同一性を有する、ナノボディに関する。このアミノ酸同一性の程度は例えば、上記ナノボディと、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の配列の1つ又は複数との間のアミノ酸同一性の程度を(本明細書に記載の方法で)求めることによって決定することができる(フレームワーク領域を形成するアミノ酸残基は無視する)。このようなナノボディは、本明細書にさらに記載されるようなものであり得る。
【0410】
本明細書で既に言及されているように、別の好ましいが非限定的な本発明の態様は、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)からなる群から、又は配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの、80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書で規定)を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択される免疫グロブリン配列を有するナノボディに関する。
【0411】
また上記のナノボディにおいて、
i)任意のアミノ酸置換(本明細書で規定のようにヒト化置換でない場合)は、(本明細書で規定されるように)対応する配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列と比較して、保存的なアミノ酸置換であるのが好ましく;及び/又は
ii)その免疫グロブリン配列は、対応する配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列と比較して、アミノ酸置換だけ、又はそうでなければ好ましくはわずか5つ、好ましくはわずか3つ、より好ましくは1つ若しくは2つだけのアミノ酸欠失若しくは挿入を含有するのが好ましく;及び/又は
iii)CDRは、親和性成熟によって、例えば対応する配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)の免疫グロブリン配列のCDRから誘導されるCDRであり得る。
【0412】
好ましくは、本発明のナノボディにおけるCDR配列及びFR配列は、本発明のナノボディ(及びこれを含む本発明のポリペプチド)が、
10−5モル/L〜10−12モル/L以下、好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、より好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で(すなわち、10L/モル〜1012L/モル以上、好ましくは10L/モル〜1012L/モル以上、より好ましくは10L/モル〜1012L/モルの結合定数(K)で)例えばP2X7等のイオンチャネルに結合するようなものであり、及び/又は
10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)のkon速度で例えばP2X7等のイオンチャネルに結合するようなものであり、及び/又は
1s−1(t1/2=0.69s)〜10−6−1(t1/2が数日のほぼ非可逆的な複合体を与える)、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)のkoff速度で例えばP2X7等のイオンチャネルに結合するようなものである。
【0413】
好ましくは、本発明のナノボディに存在するCDR配列及びFR配列は、本発明のナノボディが、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合するようなものである。
【0414】
本発明の非限定的な一態様によれば、ナノボディは本明細書で規定されるようなものであり得るが、天然のヒトVドメインの対応するフレームワーク領域と比較して、特にDP−47の対応するフレームワーク領域と比較して、フレームワーク領域の少なくとも1つに少なくとも「1つのアミノ酸差異」(本明細書で規定される)を有することが条件である。より具体的には、本発明の非限定的な一態様によれば、ナノボディは本明細書で規定されるようなものであり得るが、天然のヒトVドメインの対応するフレームワーク領域と比較して、特にDP−47の対応するフレームワーク領域と比較して、特徴的な残基(例えば108位、103位及び/又は45位のもの)の少なくとも1つに少なくとも「1つのアミノ酸差異」(本明細書で規定される)を有することが条件である。通常、ナノボディは、FR2及び/又はFR4の少なくとも1つにおいて、特にFR2及び/又はFR4の特徴的な残基の少なくとも1つ(同様に、例えば108位、103位及び/又は45位のもの)において、天然のVドメインとの少なくとも1つのこのようなアミノ酸差異を有する。
【0415】
また、本発明のヒト化ナノボディは本明細書で規定されるようなものであり得るが、天然のVHHドメインの対応するフレームワーク領域と比較して、フレームワーク領域の少なくとも1つに少なくとも「1つのアミノ酸差異」(本明細書で規定される)を有することが条件である。より具体的には、本発明の非限定的な一態様によれば、ヒト化ナノボディは本明細書で規定されるようなものであり得るが、天然のVHHドメインの対応するフレームワーク領域と比較して、特徴的な残基(例えば108位、103位及び/又は45位のもの)の少なくとも1つに少なくとも「1つのアミノ酸差異」(本明細書で規定される)を有することが条件である。通常、ヒト化ナノボディは、FR2及び/又はFR4の少なくとも1つにおいて、特にFR2及び/又はFR4の特徴的な残基の少なくとも1つ(同様に、例えば108位、103位及び/又は45位のもの)において、天然のVHHドメインとの少なくとも1つのこのようなアミノ酸差異を有する。
【0416】
本明細書における開示より明らかなように、本明細書で規定されるような本発明のナノボディの天然又は合成の類似体、突然変異体、変異体、対立遺伝子、ホモログ及びオーソログ(本明細書中でまとめて「類似体」と称される)、特に配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)のナノボディの類似体の使用も本発明の範囲内である。したがって、本発明の一態様によれば、「本発明のナノボディ」という用語は最も広範な意味ではこのような類似体も包含する。
【0417】
概して、このような類似体では、本明細書で規定されるような本発明のナノボディと比較して、1つ又は複数のアミノ酸残基が置換、欠失及び/又は付加されていてもよい。このような置換、挿入又は欠失はフレームワーク領域の1つ又は複数、及び/又はCDRの1つ又は複数において起こってもよい。このような置換、挿入又は欠失がフレームワーク領域の1つ又は複数において起こる場合、特徴的な残基の1つ又は複数、及び/又はフレームワーク残基中の他の位置の1つ又は複数において起こってもよいが、特徴的な残基での置換、挿入又は欠失は(これらが本明細書中で説明されるような適切なヒト化置換でない限り)一般にあまり好適ではない。
【0418】
非限定的な例によると、置換は例えば保存的置換(本明細書中で説明される)であってもよく、及び/又はアミノ酸残基は、別のVHHドメインの同じ位置で自然発生する別のアミノ酸残基で置き換えられていてもよいが(このような置換の幾つかの非限定的な例については表B−4〜表B−7を参照されたい)、本発明は概してこれに限定されない。したがって、本発明のナノボディの特性を改善するか、又は少なくとも本発明のナノボディの所望の特性又は所望の特性のバランス若しくは組合せを過度に(すなわち、ナノボディがもはやその使用目的に適さなくなる程度まで)損なわない任意の1つ又は複数の置換、欠失若しくは挿入、又はその任意の組合せが本発明の範囲内に含まれる。当業者は一般に、本明細書における開示に基づいて、また任意に、例えば限られた数の可能な置換を導入すること、及びそのようにして得られるナノボディの特性に対するその影響を求めることを含み得る限られた日常実験の後、適切な置換、欠失若しくは挿入、又はその適切な組合せを決定及び選択することが可能である。
【0419】
例えば当業者の能力の範囲内で、本発明のナノボディ又はポリペプチドを発現するために使用される宿主生物に応じて、このような欠失及び/又は置換を、翻訳後修飾される1つ又は複数の部位(例えば1つ又は複数のグリコシル化部位)を除去するように設計してもよい。代替的には、置換又は挿入を官能基(本明細書中で説明される)が結合する1つ又は複数の部位を導入して、例えば部位特異的ペグ化(同様に本明細書中で説明される)を可能にするように設計してもよい。
【0420】
上記の表B−4〜表B−7に示すVHHエントロピー及びVHH変動性に関するデータから明らかなように、フレームワーク領域内の幾つかのアミノ酸残基は他よりも保存されている。一般に、任意の置換、欠失又は挿入は好ましくは保存されにくい位置で起こるが、本発明は最も広範な意味ではこれに限定されない。また、一般に、アミノ酸置換はアミノ酸欠失又はアミノ酸挿入よりも好適である。
【0421】
類似体は好ましくは、本発明のナノボディに関して本明細書で規定されるようなものである親和性(本明細書中でさらに説明されるように、(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度として、又は代替的にはIC50値として適切に測定されるか、及び/又は表される)で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができるようなものである。
【0422】
類似体は好ましくは、本明細書中で説明されるようなナノボディの有利な特性を保持するものでもある。
【0423】
また、好適な一態様によれば、類似体は、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)のナノボディの1つとの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%(少なくとも95%等)又は99%以上の程度の配列同一性を有し、及び/又は好ましくは多くとも20個、好ましくは多くとも10個、さらにより好ましくは多くとも5個、例えば4個、3個、2個又はただ1個のアミノ酸差異(本明細書で規定される)を有する。
【0424】
また、類似体のフレームワーク配列及びCDRは好ましくは、本明細書で規定される好適な態様に従うものである。より一般には、本明細書中で説明されるように、類似体は(a)108位にQ、及び/又は(b)45位に荷電アミノ酸又はシステイン残基、好ましくは44位にE、より好ましくは44位にE及び45位にR、及び/又は(c)103位にP、R又はSを有する。
【0425】
本発明のナノボディの1つの好適な群の類似体は、ヒト化された(すなわち、本発明の天然のナノボディの配列と比較して)ナノボディを含む。本明細書中で引用される背景技術で述べられたように、このようなヒト化は一般に、ヒトVドメイン、例えばヒトV3ドメインでの同じ位置に起こるアミノ酸残基での、天然のVHHの配列における1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを含む。可能なヒト化置換又はヒト化置換の組合せの例は、例えば本明細書中の表から、本明細書中で引用される背景技術で述べられた可能なヒト化置換から、及び/又はナノボディの配列と天然のヒトVドメインの配列との比較から当業者に明らかである。
【0426】
ヒト化置換は、得られるヒト化ナノボディが、本明細書で規定されるようなナノボディの有利な特性を依然として保持するように、より好ましくは類似体に関して前述の段落に説明されるようなものであるように選択されるべきである。当業者は一般に、本明細書における開示に基づいて、また任意に、例えば限られた数の可能なヒト化置換を導入すること、及びそのようにして得られるナノボディの特性に対するその影響を求めることを含み得る限られた日常実験の後、適切なヒト化置換又は適切なヒト化置換の組合せを決定及び選択することが可能である。
【0427】
概して、ヒト化の結果として、本発明のナノボディは、本明細書中で説明されるような本発明のナノボディの有利な特性を依然として保持しながら、より「ヒト様」となり得る。結果として、このようなヒト化ナノボディは幾つかの利点、例えば対応する天然のVHHドメインと比較して低減された免疫原性を有し得る。同様に、当業者は、本明細書における開示に基づいて、また任意に限られた日常実験の後、一方ではヒト化置換によりもたらされる有利な特性と、他方では天然のVHHドメインの有利な特性との間の所望の又は適切なバランスを最適化又は達成するヒト化置換又は適切なヒト化置換の組合せを選択することが可能である。
【0428】
本発明のナノボディは任意のフレームワーク残基(複数可)で、例えば1つ又は複数の特徴的な残基(本明細書で規定される)で又は1つ又は複数の他のフレームワーク残基(すなわち、非特徴的な残基)で又はこれらの任意の適切な組合せで適切にヒト化され得る。「P、R、S−103群」又は「KERE群」のナノボディに関する1つの好適なヒト化置換は、Q108からL108への置換である。「GLEW群」のナノボディもまた、他の特徴的な残基の少なくとも1つがラクダ化(camelid(camelizing))置換(本明細書で規定される)を含有するという条件で、Q108からL108への置換によりヒト化され得る。例えば、上述したように、1つの特に好適な群のヒト化ナノボディは、GLEW又はGLEW様配列を44位〜47位に、P、R又はS(特にR)を103位に、Lを108位に有する。
【0429】
ヒト化及び他の類似体、並びにこれをコードする核酸配列は、例えば国際公開第08/020079号の103頁及び104頁で言及される技法のうちの1つ又は複数を用いて、それ自体が既知の任意の方法で準備することができる。
【0430】
ここで言及されるように、本発明のナノボディ(その類似体を含む)を、例えばヒトV3配列、例えばDP−47、DP−51又はDP−29等のヒトV配列(すなわち、免疫グロブリン配列又は対応するヌクレオチド配列)から、すなわち、本発明のナノボディの配列を提供するために及び/又はこのようにして得られる配列にナノボディの有利な特性を付与するために、1つ又は複数のラクダ化置換を導入する(すなわち、上記ヒトVドメインの免疫グロブリン配列中の1つ又は複数のアミノ酸残基を、VHHドメインの対応する位置で生じるアミノ酸残基に変化させる)ことにより、設計及び/又は準備することが可能であることも、当業者には明らかである。同様に、これは一般に、開始点としてヒトVドメインに対する免疫グロブリン配列及び/又はヌクレオチド配列を使用し、前の段落で言及される多様な方法及び技法を用いて実行することができる。
【0431】
幾つかの好ましいが非限定的なラクダ化置換は、表B−4〜表B−7から導くことができる。特徴的な残基の1つ又は複数でのラクダ化置換は一般に、所望の特性に他のアミノ酸位置の1つ又は複数での置換よりも大きな影響を与えるが、その両方及び任意の適切な組合せが本発明の範囲内に含まれることも明らかである。例えば、既に少なくとも幾つかの所望の特性を付与している1つ又は複数のラクダ化置換を導入すること、及び次に上記特性をさらに改善するか、及び/又はさらなる有利な特性を付与するさらなるラクダ化置換を導入することが可能である。また、当業者は一般に、本明細書における開示に基づいて、また任意に、例えば限られた数の可能なラクダ化置換を導入すること、及びナノボディの有利な特性が得られたか又は改善された(すなわち、元のVドメインと比較して)か否かを求めることを含み得る限られた日常実験の後、適切なラクダ化置換又は適切なラクダ化置換の組合せを決定及び選択することが可能である。
【0432】
しかしながら、一般にこのようなラクダ化置換は好ましくは、得られる免疫グロブリン配列が少なくとも(a)108位にQ、及び/又は(b)45位に荷電アミノ酸又はシステイン残基及びまた好ましくは44位にE、より好ましくは44位にE及び45位にR、及び/又は(c)103位にP、R又はS、並びに任意に1つ又は複数のさらなるラクダ化置換を含有するようなものである。より好ましくは、ラクダ化置換は、本発明のナノボディ及び/又はその類似体(本明細書で規定される)、例えばヒト化類似体及び/又は好ましくは前述の段落に規定されるようなものである類似体をもたらすようなものである。
【0433】
ナノボディは自然状態で稀であるが、VHドメインフォールドに構造的に適合する置換の組込みによりVドメインから得ることもできる。例えばこれらに限定されないが、これらの置換は以下のうちの1つ又は複数を含み得る:35位のGly、37位のSer、Val又はThr、39位のSer、Thr、Arg、Lys、His、Asp又はGlu、45位のGlu又はHis、47位のTrp、Leu、Val、Ala、Thr又はGlu、50位のS又はR(Barthelemy et al. J Biol Chem. 2008 Feb 8;283(6):3639-54. Epub 2007 Nov 28)。
【0434】
本明細書における開示から同様に明らかなように、本明細書で規定されるような本発明のナノボディの部分若しくは断片、又は2つ以上の部分若しくは断片の組合せ、特に配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)のナノボディの部分又は断片の使用もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の一態様によれば、「本発明のナノボディ」という用語は最も広範な意味ではこのような部分又は断片も包含する。
【0435】
概して、本発明のナノボディ(その類似体を含む)のこのような部分又は断片は、対応する本発明の全長ナノボディ(又はその類似体)の免疫グロブリン配列と比較して、N末端の1つ又は複数のアミノ酸残基、C末端の1つ又は複数のアミノ酸残基、1つ又は複数の連続内部アミノ酸残基、又はその任意の組合せが欠失しているか、及び/又は除去された免疫グロブリン配列を有する。
【0436】
部分又は断片は好ましくは、本発明のナノボディに対して、本明細書で規定されるようなものである親和性(本明細書中でさらに記載されるように、(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度として、又は代替的にはIC50値として適切に測定されるか、及び/又は表される)で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができるようなものである。
【0437】
任意の部分又は断片は好ましくは、対応する本発明の全長ナノボディの免疫グロブリン配列の少なくとも10個の連続アミノ酸残基、好ましくは少なくとも20個の連続アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも30個の連続アミノ酸残基、例えば少なくとも40個の連続アミノ酸残基を含むようなものである。
【0438】
また、任意の部分又は断片は好ましくは、CDR1、CDR2及び/又はCDR3の少なくとも1つ又は少なくともその一部(特に少なくともCDR3又は少なくともその一部)を含むようなものである。より好ましくは、任意の部分又は断片は、好ましくは適切なフレームワーク配列(複数可)又は少なくともその一部により連結した、CDRの少なくとも1つ(好ましくは少なくともCDR3又はその一部)及び少なくとも1つの他のCDR(すなわち、CDR1又はCDR2)又は少なくともその一部を含むようなものである。より好ましくは、任意の部分又は断片は、好ましくは同様に適切なフレームワーク配列(複数可)又は少なくともその一部により連結した、CDRの少なくとも1つ(好ましくは少なくともCDR3又はその一部)及び残り2つのCDRの少なくとも一部を含むようなものである。
【0439】
別の特に好ましいが非限定的な態様によれば、このような部分又は断片は、対応する本発明の全長ナノボディの少なくともCDR3、例えばFR3、CDR3及びFR4を含む(すなわち、例えば国際出願の国際公開第03/050531号(Lasters et al.)に説明される)。
【0440】
上記で既に述べたように、2つ以上のこのような部分又は断片(すなわち、同一の又は異なる本発明のナノボディに由来する)を組み合わせる、すなわち、本発明のナノボディの類似体(本明細書で規定される)を提供する及び/又はさらなる部分又は断片(本明細書で規定される)を提供することも可能である。例えば、本発明のナノボディの1つ又は複数の部分又は断片を、ヒトVドメインの1つ又は複数の部分又は断片と組み合わせることもまた可能である。
【0441】
好適な一態様によれば、部分又は断片は、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773、又は配列番号778(表A−1を参照されたい)のナノボディの1つとの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%(少なくとも90%等)、95%又は99%以上の程度の配列同一性を有する。
【0442】
部分及び断片、並びにこれをコードする核酸配列は、任意のそれ自体が既知の方法で準備して任意に組み合わせることができる。例えば、このような部分又は断片は、完全長の本発明のナノボディをコードする核酸中に終止コドンを挿入すること、及び次にこのようにして得られる核酸をそれ自体が既知の方法(例えば本明細書中で説明される)で発現させることで得ることができる。代替的には、このような部分又は断片をコードする核酸は、完全長の本発明のナノボディをコードする核酸を適切に制限すること、又はこのような核酸をそれ自体が既知の方法で合成することにより得ることができる。部分又は断片はまた、それ自体が既知のペプチド合成技法を用いて準備してもよい。
【0443】
本発明は最も広範な意味では本発明のナノボディの誘導体も含む。このような誘導体は概して、本発明のナノボディ及び/又は本発明のナノボディを形成するアミノ酸残基の1つ又は複数の修飾、特に化学的及び/又は生物学的(例えば酵素的)修飾により得ることができる。
【0444】
このような修飾の例、並びにこのような形(すなわち、タンパク質骨格、又は好ましくは側鎖のいずれか)で修飾することができるナノボディ配列内のアミノ酸残基の例、このような修飾の導入のために使用することができる方法及び技法、並びにこのような修飾の潜在的使用及び利点は当業者に明らかである。
【0445】
例えば、このような修飾は、1つ又は複数の官能基、残基又は部分、特に1つ又は複数の所望の特性又は官能性を本発明のナノボディに付与する1つ又は複数の官能基、残基又は部分を本発明のナノボディ中に又はナノボディ上に(例えば共有結合によるか、又は他の適切な形で)導入することを含み得る。このような官能基の例は当業者に明らかである。
【0446】
例えば、このような修飾は、本発明のナノボディの半減期、溶解性及び/又は吸収性を増大する、本発明のナノボディの免疫原性及び/又は毒性を低減する、本発明のナノボディの任意の望ましくない副作用を排除若しくは減衰する、及び/又は本発明のナノボディ及び/又はポリペプチドに他の有益な特性を付与するか、及び/又は本発明のナノボディ及び/又はポリペプチドの不要な特性を低減する、又は上記の2つ以上の任意の組合せである1つ又は複数の官能基を(例えば共有結合によるか、又は任意の他の適切な形で)導入することを含み得る。このような官能基及びこれらを導入する技法の例は当業者に明らかであり、一般に、上記で引用される包括的な背景技術で述べた全ての官能基及び技法、並びに医薬用タンパク質の修飾、特に抗体又は抗体断片(例えばScFv及び単一ドメイン抗体)の修飾に関するそれ自体が既知の官能基及び技法を含み得る。これに関しては例えばRemington'sPharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)を参照する。同様に当業者に明らかなように、このような官能基は、例えば本発明のナノボディに直接(例えば共有結合的に)、又は任意に適切なリンカー若しくはスペーサーを介して結合し得る。
【0447】
半減期を増大するか、及び/又は医薬用タンパク質の免疫原性を低減するために最も広く使用される技法の1つは、適切な薬理学的に許容可能なポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)又はその誘導体(例えばメトキシポリ(エチレングリコール)すなわちmPEG)の結合を含む。概して、任意の適切な形のペグ化、例えば当該技術分野で抗体及び抗体断片(例えば、限定されるものではないが、(単一)ドメイン抗体及びScFv)に対して使用されるペグ化を使用することができる。例えばChapman, Nat. Biotechnol.,54, 531-545 (2002)、Veronese andHarris, Adv. Drug Deliv. Rev. 54, 453-456 (2003)、Harris and Chess, Nat. Rev. Drug. Discov., 2, (2003)及び国際公開第04/060965号を参照する。タンパク質のペグ化に関する多様な試薬も、例えばNektar Therapeutics, USAより市販されている。
【0448】
好ましくは、特にシステイン残基を介した部位特異的ペグ化を使用する(例えばYang et al., Protein Engineering, 16, 10, 761-770 (2003)を参照されたい)。例えば、そのために、本発明のナノボディにおいて自然発生するシステイン残基にPEGを結合してもよく、本発明のナノボディを、PEGに結合する1つ又は複数のシステイン残基を適切に導入するように修飾してもよく、又はPEGに結合する1つ又は複数のシステイン残基を含む免疫グロブリン配列を、本発明のナノボディのN末端及び/又はC末端と融合してもよい(全て、それ自体が当業者に既知であるタンパク質工学の技法を使用する)。
【0449】
好ましくは、PEGは、本発明のナノボディ及びタンパク質に対して5000を超える(例えば10000を超える)かつ200000未満(例えば100000未満)の分子量、例えば20000〜80000の範囲の分子量で使用する。
【0450】
さらに、通常あまり好ましくない修飾は、一般的に翻訳時及び/又は翻訳後の修飾の一部として、本発明のナノボディ又はポリペプチドを発現するのに用いられる宿主細胞に応
じてN結合型又はO結合型のグリコシル化を含む。
【0451】
さらに別の修飾は、標識したナノボディの用途に応じて、1つ又は複数の検出可能な標識、又は他のシグナル生成基若しくはシグナル生成部分の導入を含んでいてもよい。これらを結合、使用及び検出するのに好適な標識及び技法は当業者にとって明らかであり、例としては、蛍光標識、リン光標識、化学発光標識、生物発光標識、放射性同位体、金属、金属キレート、金属カチオン、発色団及び酵素、例えば国際公開第08/020079号の109頁で言及されるものが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な標識は当業者にとって明らかであり、例としては、NMR分光法又はESR分光法を用いて検出することができる部分が挙げられる。
【0452】
本発明のこのような標識したナノボディ及びポリペプチドは、例えば、特定の標識の選択に応じて、(ELISA、RIA、EIA及び他の「サンドイッチアッセイ」等のそれ自体が既知のイムノアッセイを含む)in vitro、in vivo又はin situアッセイに、並びにin vivo診断及びイメージングの目的で使用され得る。
【0453】
当業者にとって明らかであるように、別の修飾は、例えば、上記の金属又は金属カチオンの1つをキレート化するキレート基(chelating group)の導入を含んでいてもよい。例えば好適なキレート基としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0454】
さらに別の修飾は、ビオチン−(ストレプト)アビジン結合対等の特異的結合対の一部である官能基の導入を含んでいてもよい。このような官能基は、本発明のナノボディを別のタンパク質、ポリペプチド、又は結合対の残り半分と結合する化合物に連結させるのに(すなわち、結合対の形成を介して)使用され得る。例えば、本発明のナノボディは、ビオチンと結合し、アビジン又はストレプトアビジンと結合した別のタンパク質、ポリペプチド、化合物又は担体に連結し得る。例えば、このような結合ナノボディは、例えば、検出可能なシグナル生成剤がアビジン又はストレプトアビジンに結合する診断系のレポーターとして使用され得る。このような結合対は、例えば、本発明のナノボディを、医薬目的に好適な担体を含む担体に結合させるのにも使用することができる。非限定的な一例は、Cao and Suresh, Journal of Drug Targetting, 8, 4, 257 (2000)によって記載のリポソーム製剤である。このような結合対はまた、本発明のナノボディと治療に有効な作用物質とを連結させるのに使用することができる。
【0455】
用途によっては、特に、(例えば、癌の治療において)本発明のナノボディが指向性を有する標的を発現する細胞を死滅させること、又はこのような細胞の成長及び/又は増殖を低減するか若しくは遅延させることを意図する用途では、本発明のナノボディは、毒素又は毒素残基若しくは毒素部分にも連結し得る。本発明のナノボディに連結して、例えば細胞毒性化合物をもたらし得る毒素部分、化合物又は残基の例は当業者にとって明らかであり、例えば、上記の従来技術に及び/又は本明細書中のさらなる説明に見ることができる。一例はいわゆるADEPT(商標)技術である(国際公開第03/055527号に記載)。
【0456】
他の可能な化学修飾及び酵素修飾は当業者にとって明らかであろう。このような修飾を、(例えば、機能−活性関係を研究するために)調査目的で導入してもよい。例えば、Lundblad and Bradshaw, Biotechnol. Appl. Biochem., 26, 143-151 (1997)を参照する。
【0457】
好ましくは、この誘導体は、本発明のナノボディに関して本明細書で規定されるようなものである親和性(本明細書中でさらに説明されるように、(実際又は見掛けの)K値、(実際又は見掛けの)K値、kon速度及び/又はkoff速度として、又は代替的にはIC50値として適切に測定されるか、及び/又は表される)で例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができるようなものである。
【0458】
上述のように、本発明はまた、少なくとも1つの本発明のナノボディから本質的になるか又はこれを含む、タンパク質又はポリペプチドに関する。「から本質的になる」とは、本発明のポリペプチドの免疫グロブリン配列が、本発明のナノボディの免疫グロブリン配列と厳密に同じであるか、又は、1個〜20個のアミノ酸残基、例えば、1個〜10個のアミノ酸残基、及び好ましくは1個〜6個のアミノ酸残基(例えば、1個、2個、3個、4個、5個又は6個のアミノ酸残基)等の限定数のアミノ酸残基をナノボディの免疫グロブリン配列のアミノ末端、カルボキシ末端、又はアミノ末端及びカルボキシ末端の両方に付加させた本発明のナノボディの免疫グロブリン配列に対応するかどちらかであることを意味する。
【0459】
上記のアミノ酸残基は、ナノボディの(生物学的)特性を変更するか、改質するか、又はさもなければこれに影響を与える場合もあり又は与えない場合もあり、ナノボディにさらなる官能性を付加する場合もあり又は付加しない場合もある。例えば、このようなアミノ酸残基は、
例えば、異種宿主細胞又は異種宿主生物において発現した結果得られるN末端Met残基を含み得る。
合成の際に宿主細胞からのナノボディの分泌を導く、シグナル配列又はリーダー配列を形成してもよい。好適な分泌リーダーペプチドは当業者にとって明らかであり、本明細書中にさらに記載される通りであり得る。通常、このようなリーダー配列は、ナノボディのN末端に連結されるが、本発明は最も広範な意味では、これに限定されるものではない。
ナノボディを、特定の器官、組織、細胞、又は細胞の一部若しくはコンパートメントに指向性を有し、及び/又はこれらに侵入させるか若しくは入り込ませ、及び/又はナノボディを、細胞膜、上皮細胞の層等の細胞層、固形腫瘍を含む腫瘍、又は血液脳関門のような生物学的障壁に侵入させるか若しくはこれらに対して横断させる、配列又はシグナルを形成し得る。このような免疫グロブリン配列の例は当業者にとって明らかであり、国際公開第08/020079号の112頁のc)段落で言及されるものを含む。
「標識」、例えば、免疫グロブリン配列又は残基を対象とする親和性技法等を用いてナノボディの精製を可能にするか又は容易にする、上記の配列又は残基を形成し得る。その後、(例えば、化学的又は酵素学的な切断によって)上記の配列又は残基を除去して、ナノボディ配列をもたらし得る(この目的のために、標識は任意で、切断可能なリンカー配列を介してナノボディ配列に連結されてもよく、又は切断可能なモチーフを含有していてもよい)。このような残基の好ましいが非限定的な幾つかの例は、複数のヒスチジン残基、グルタチオン残基、及びmyc標識(例えば国際公開第06/12282号の配列番号31を参照)である。
官能化し及び/又は官能基の結合のための部位として機能することができる1つ又は複数のアミノ酸残基であり得る。好適なアミノ酸残基及び官能基は当業者にとって明らかであり、本発明のナノボディの誘導体について本明細書中に記述されたアミノ酸残基及び官能基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0460】
ラクダ科動物におけるDNAワクチン接種
DNAワクチン接種は実験動物、例えばラット、マウス及びウサギにおいて免疫応答を誘導するのに広く使用されている(例えばTang et al., Nature, 1992;Nagata et al., J.Immunol. Methods, 2003;Bins et al., Nature Med. 2005;Bins et al, J. Immunol., 2007;Kilpatrick etal., Hybridoma, 1998を参照されたい)。しかしながら、より大型の動物のDNAワクチン接種は不可能ではないにしても困難であると考えられている。特にラクダ科動物のDNAワクチン接種に関するレポートは数少ない。Koch Nolte et al., 2007によるレポートは、さらに2回のタンパク質追加免疫と組合せた、6週〜12週間隔での8回ものDNAワクチン接種が要求される長期にわたる面倒な手順を説明している。本発明の目的の1つは、大型動物、特にラクダ科動物をDNAワクチン接種する改善された方法を提供することである。
【0461】
a)タンパク質追加免疫を伴わない免疫グロブリン配列の生成
特定の実施形態では本発明は、非ヒト動物、具体的にはラクダ科動物、より具体的にはラマにおいてタンパク質追加免疫を伴わない遺伝子ワクチン接種により免疫グロブリン配列を生成する方法に関する。
【0462】
非ラクダ科動物において、例えばマウスにおいて、タンパク質抗原による追加免疫を伴わないDNAワクチン接種後にポリクローナル血清抗体応答を得ることができることがこれまでに実証されている(例えばBins et al., Nature Medicine, 2005; Bins et al., J. Immunol. 2007)。しかしながら、このようなポリクローナル抗体応答は、抗原特異的モノクローナル抗体を効果的に生成するのに十分ではないことが知られている(Nagata et al., 2003)。著者らは、タンパク質追加免疫を行わないマウスにおける「ごくわずかな(almost negligible)」特異的なハイブリドーマ収率(10E8個の脾臓細胞当たり0.0〜1.3)を報告している。
【0463】
より大型の動物、特にラクダ科動物の遺伝子ワクチン接種がマウスと比較して免疫応答を誘起する効率が極めて乏しいことが一般的に知られている。そのためラクダ科動物における遺伝子ワクチン接種の使用では免疫グロブリン配列の産生が不可能であると考えられる。
【0464】
Koch-Nolte et al. 2007は、ecto−ADP−リボシルトランスフェラーゼART2.2に対する単一のドメイン抗体を得るDNA初回刺激−タンパク質追加免疫戦略によるラマの免疫付与を説明している。しかしながらこの手順は、低効率であり、広範な追加免疫が要求されることを特徴としていた。より具体的には、ラマは6週〜12週の間隔でART2.2をコードする発現ベクターを用いた4回の皮内遺伝子銃による4回の免疫付与を受けた(300psiの圧力設定での金1mg当たり1μgのDNA 12ショット)。4回のその後の追加免疫DNA免疫付与及びさらなる2回のタンパク質追加免疫には、満足のいく免疫応答を得るために組換えART2.2を用いることが要求された。全体としては、この手順は動物で好適な免疫応答を達成するまで7ヶ月におよび、複数回のタンパク質追加免疫が必要となる。
【0465】
この従来技術の教示を鑑みて、本明細書に記載の方法を使用することにより、タンパク質追加免疫を伴わず好適な免疫応答をラクダ科動物、特にラマで達成することができることは、本発明の驚くべき発見である。言い換えると、遺伝子ワクチン接種単独でも、その後のスクリーニングによる免疫グロブリン配列の生成に適正な免疫応答を誘導するのに十分であり得る。特に、血清抗体応答が従来の免疫付与戦略と比較して低かったとしても、良好な「ヒット率」を達成するのに、すなわち許容可能な頻度で抗原特異的な免疫グロブリン配列を得るのにDNAワクチン接種単独で十分であることが見出されたのは驚くべきことである。
【0466】
b)細胞関連抗原に対する抗体応答の生成
導入部で概説されたように、当該技術分野は、本明細書で規定のように細胞結合する抗原に対する、特に膜貫通抗原に対する抗体応答を生成するのに適正な手段を提供してはいない。
【0467】
本発明は、好適な非ヒト動物、特にラクダ科動物、好ましくはラマの遺伝子ワクチン接種により、従来技術の試みと比較してレパートリーの幅の改善及び特異性の改善を特徴とする抗体応答を生成することができるという驚くべき発見に基づいている。
【0468】
細胞関連抗原、より具体的には単一又は複数の膜貫通ドメインを有する抗原は、それらの天然立体構造で精製するのが困難である。未変性エピトープに対する、ナノボディを含む免疫グロブリン配列を得るために、標的抗原をその未変性の立体構造でラマに投与することが極めて重要である。これらの細胞関連抗原に関して、抗原を機能的に発現する全細胞による免疫付与が好ましい戦略である(例えば特許文献1、特許文献2、米国特許出願第61/004,332号で行われたようなもの)。全細胞の免疫付与の主な欠点は、多くの他の抗原(細胞表面マーカー)も動物の免疫系に対して提示され、これにより高度に希釈された標的特異的な免疫応答が起こることである。特異性を増大するために、精密かつ技術的に複雑な初回刺激−追加免疫戦略を考案する必要がある。これらの工程のいずれかが変性タンパク質又はペプチドの使用を含む範囲では、得られる抗体応答は立体構造エピトープの不利益となる。したがって、免疫グロブリン配列の取得可能なスペクトル幅は限定されるであろう。さらに、単に細胞に基づいたアプローチ、すなわち免疫付与のために標的抗原を発現する細胞を使用するアプローチは、対象となる免疫グロブリン配列の効率的な単離を不可能にする免疫グロブリン配列の低い特異性を特徴とする。
【0469】
Koch-Nolte et al. 2007は、ecto−ADP−リボシルトランスフェラーゼART2.2に対する単一のドメイン抗体を得るためにDNA初回刺激−タンパク質追加免疫戦略を用いた或るラマの免疫付与を説明している。
【0470】
ecto−ADP−リボシルトランスフェラーゼART2.2は、脂質尾部を介するが、膜貫通ドメインを伴わない膜挿入を特徴とするGpi固定タンパク質である。このタンパク質に関して、正確に折り畳まれた精製タンパク質を追加免疫のために調製することができる。そのため、精製タンパク質を用いて追加免疫を行うことができる。上記のように、膜内に固定された、又は膜に位置する細胞関連抗原の精製タンパク質はそれらの天然立体構造の精製形態では得ることができない。いかなる精製調製物も膜依存性の立体構造エピトープを欠くこととなる。そのため、これらの細胞関連抗原からの精製タンパク質による追加免疫は不可能である。
【0471】
膜貫通タンパク質、特に複数の膜貫通ドメインを有するタンパク質に関して、立体構造エピトープ、特に膜依存性の立体構造エピトープが免疫グロブリン配列に関する標的として特に興味深い。例えば、イオンチャネルの孔は治療的に最も重要な標的を表す。しかしながら、従来のアプローチの使用では、このような標的を認識する免疫グロブリン配列を生成することはほとんど不可能である。例えば、イオンチャネルの孔領域は複数の膜貫通ドメイン、さらに場合によってはチャネルの複数のサブユニットにより形成される。この孔領域と結合する免疫グロブリン配列の生成のためのペプチドを提供することはほぼ不可能である。さらに、該タンパク質が膜環境でしかその天然立体構造を示さないため、精製イオンチャネルタンパク質を免疫付与に使用することはできない。
【0472】
本発明は、このような種類の立体構造エピトープに対する免疫グロブリン配列の生成を提供し、精製タンパク質による追加免疫の必要性を排除する。
【0473】
本発明では、遺伝子ワクチン接種(免疫応答の必要となる特異性を提供する)後に、動物に例えば天然立体構造で、すなわち膜に包埋された/固定されたタンパク質を発現する細胞を追加免疫することができることが期待される。これらの細胞が多くの抗原を発現する場合であっても、免疫学的なリコール応答が遺伝子ワクチン接種により送達された抗原に対してのみ起こることとなる。このため遺伝子ワクチン接種による動物の初回刺激により、たとえ例えばタンパク質を発現するが、免疫グロブリン配列の高度に特異的なレパートリーが得られる細胞に関してタンパク質が精製されていないとしても、天然立体構造でのタンパク質による追加免疫が可能になる。
【0474】
好ましい実施形態では本発明は、ラクダ科動物、特にラマにおける免疫グロブリン配列の生成に関する。これらの動物の抗体応答は、標的抗原上の溝(grooves)又は隙間(crevices)に広がり、特異的に結合することができる免疫グロブリン配列の存在を特徴とする。これは、細胞関連抗原の立体構造エピトープの場合に特に重要かつ有益である。
【0475】
このため具体的な一実施形態では本発明は、細胞関連抗原、特に1つ又は複数の膜貫通ドメインを示す抗原の立体構造エピトープに対して免疫グロブリン配列を産生するためのラクダ科動物の遺伝子ワクチン接種の使用に関する。
【0476】
これより上記に記載のような本発明の一般原理を特定の好ましい態様、実施形態及び特許請求の範囲に関して例示する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものとは理解されない。
【0477】
本願を通して挙げられた全ての引例(参考文献、交付済み特許、公開済み特許出願及び同時係属特許出願を含む)の内容全体が参照により本明細書に明示的に援用されている。
【0478】
好ましい態様:
態様A−1:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列。
態様A−2:本質的に単離形態である、態様A−1に記載の免疫グロブリン配列。
態様A−3:被験体に投与するためのものであり、上記被験体では自然発生しない、態様A−1又はA−2に記載の免疫グロブリン配列。
態様A−4:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様A−5:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様A−6:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様A−7:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様A−8:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−9:免疫グロブリンフォールドを含むか、又は好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することが可能である、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン。
態様A−10:4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と、3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−11:免疫グロブリン配列である、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−12:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−13:ヒト化免疫グロブリン配列、ラクダ化免疫グロブリン配列、又は親和性成熟等の技法により得られた免疫グロブリン配列である、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−14:軽鎖可変ドメイン配列(例えばVL配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えばVH配列)から本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−15:通常の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−16:ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むが、これに限定されない)から本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−17:ナノボディから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−18:
i)配列番号1〜配列番号22のAn免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−19:
i)配列番号789〜配列番号791の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ポリペプチドから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−20:
i)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。態様A−21:ヒト化ナノボディから本質的になる、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様A−22:例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合に関する少なくとも1つの結合部位に加えて、他の抗原、タンパク質又は標的との結合に関する1つ又は複数のさらなる結合部位を含有する、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
【0479】
CDRベースの態様
態様B−1:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができ、以下のものからなる群から選択されるアミノ酸残基のストレッチを1つ又は複数含む、免疫グロブリン配列:
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;又は
それらの任意の好適な組合せ。
このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様B−2:アミノ酸残基の上記ストレッチのうちの少なくとも1つが例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合に関する抗原結合部位の一部分を形成する、態様B−1に記載の免疫グロブリン配列。
態様B−3:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができ、(i)アミノ酸残基の第1のストレッチがa)、b)若しくはc)による免疫グロブリン配列の1つに対応する場合、アミノ酸残基の第2のストレッチはd)、e)、f)、g)、h)若しくはi)による免疫グロブリン配列の1つに対応し;(ii)アミノ酸残基の第1のストレッチがd)、e)若しくはf)による免疫グロブリン配列の1つに対応する場合、アミノ酸残基の第2のストレッチはa)、b)、c)、g)、h)若しくはi)による免疫グロブリン配列の1つに対応し;又は(iii)アミノ酸残基の第1のストレッチがg)、h)若しくはi)による免疫グロブリン配列の1つに対応する場合、アミノ酸残基の第2のストレッチはa)、b)、c)、d)、e)若しくはf)による免疫グロブリン配列の1つに対応するように、以下のものからなる群から選択されるアミノ酸残基のストレッチを2つ以上含む、免疫グロブリン配列:
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列。
このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22、B−1又はB−2のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様B−4:アミノ酸残基の少なくとも2つのストレッチが例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合に関する抗原結合部位の一部分を形成する、態様B−3に記載の免疫グロブリン配列。
態様B−5:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができ、アミノ酸残基の第1のストレッチが、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
からなる群から選択され、
アミノ酸残基の第2のストレッチが、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列;
からなる群から選択され、
アミノ酸残基の第3のストレッチが、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの、3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択される、アミノ酸残基のストレッチを3つ以上含む、免疫グロブリン配列。
このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22及び/又はB−1〜B−4のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様B−6:アミノ酸残基の少なくとも3つのストレッチが例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合に関する抗原結合部位の一部分を形成する、態様B−5に記載の免疫グロブリン配列。
態様B−7:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列であって、上記免疫グロブリン配列のCDR配列が、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つのCDR配列との少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性(95%以上のアミノ酸同一性等)、又はさらに本質的に100%のアミノ酸同一性を有する、免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22及び/又はB−1〜B−6のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様C−1:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つと、例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合を交差遮断する免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22のいずれかに記載の及び/又はB−1〜B−7のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。また好ましくは、このような免疫グロブリン配列は例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することが可能である。
態様C−2:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つにより、例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合を交差遮断される免疫グロブリン配列。このような免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22のいずれかに記載の及び/又はB−1〜B−7のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。また好ましくは、このような免疫グロブリン配列は例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することが可能である。
態様C−3:上記免疫グロブリン配列の交差遮断する又は交差遮断される能力をビアコアアッセイで検出する、態様C−1又はC−2に記載の免疫グロブリン配列。
態様C−4:上記免疫グロブリン配列の交差遮断する又は交差遮断される能力をELISAアッセイで検出する、態様C−1〜C−3のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−1:本質的に単離形態である、態様B−1〜B−7又はC−1〜C−7のいずれ1つに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−2:被験体に投与するためのものであり、上記被験体では自然発生しない、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−3:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1又はD−2のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−4:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1〜D−3のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−5:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1〜D−4のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−6:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1〜D−5のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様D−1〜D−6のいずれかに記載の免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
態様E−1:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、及び/又はD−1〜D−6のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−2:免疫グロブリンフォールドを含むか、又は好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することが可能である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1のいずれかに記載の免疫グロブリン。
態様E−3:免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はD−1又はD−2のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−4:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−3のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−5:ヒト化免疫グロブリン配列、ラクダ化免疫グロブリン配列、又は親和性成熟等の技法により得られた免疫グロブリン配列である、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−4のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−6:軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−5のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−7:通常の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−6のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−8:ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適なAn免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むが、これに限定されない)から本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−7のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−9:ナノボディから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−8のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−10:
i)配列番号1〜配列番号22の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−9のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−11:
i)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778のAn免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−10のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−12:ヒト化ナノボディから本質的になる、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D1〜D−6、及び/又はE−1〜E−11のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−13:CDR配列により形成される、結合に関する少なくとも1つの結合部位に加えて、他の抗原、タンパク質又は標的との結合に関する1つ又は複数のさらなる結合部位を含有する、態様B−1〜B−7、C−1〜C−7、D−1〜D−6、及び/又はE−1〜E−11のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様E−1〜E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン配列は特に態様A−1〜A−22のいずれかに記載の免疫グロブリン配列であり得る。
【0480】
フレームワーク+CDRの態様
態様F−1:4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とから本質的になる免疫グロブリン配列であって、
CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、及び/又は
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、及び/又は
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択される、免疫グロブリン配列。
このような免疫グロブリン配列は好ましくは、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列である。また、このような免疫グロブリン配列は好ましくは、態様A−1〜態様A−22、態様C−1〜態様C−7、態様D−1〜態様D−6及び/又は態様E−1〜態様E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン配列である。
態様F−2:4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)と3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)とから本質的になる免疫グロブリン配列であって、
CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ又は1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ又は1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ又は1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択される、免疫グロブリン配列。
このような免疫グロブリン配列は好ましくは、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列である。また、このような免疫グロブリン配列は好ましくは、態様A−1〜態様A−22、態様C−1〜態様C−7、態様D−1〜態様D−6及び/又は態様E−1〜態様E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン配列である。
態様F−3:上記免疫グロブリン配列のCDR配列が、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つのCDR配列との少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらには本質的に100%のアミノ酸同一性を有する、態様F−1及び態様F−2のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
このような免疫グロブリン配列は好ましくは、例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる免疫グロブリン配列である。また、このような免疫グロブリン配列は好ましくは、態様A−1〜態様A−22、態様C−1〜態様C−7、態様D−1〜態様D−6及び/又は態様E−1〜態様E−13のいずれかに記載の免疫グロブリン配列である。
態様F−4:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列の態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つの結合を交差遮断する、態様F−1〜態様F−3のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−5:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つにより例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合を交差遮断される、態様F−1〜態様F−3のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−6:上記免疫グロブリン配列の交差遮断する又は交差遮断される能力をビアコアアッセイで検出する、態様F−4又は態様F−5に記載の免疫グロブリン配列。
態様F−7:上記免疫グロブリン配列の交差遮断する又は交差遮断される能力をELISAアッセイで検出する、態様F−4又は態様F−5に記載の免疫グロブリン配列。
態様F−8:本質的に単離形態である、態様F−1〜態様F−7のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−9:被験体に投与するためのものであり、上記被験体では自然発生しない、態様F−1〜態様F−8のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−10:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様F−1〜態様F−9のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−11:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様F−1〜態様F−10のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−12:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様F−1〜態様F−11のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−13:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様F−1〜態様F−12のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−14:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、態様F−1〜態様F−13のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−15:免疫グロブリンフォールドを含むか、又は好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することが可能である、態様F−1〜態様F−14のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−16:免疫グロブリン配列である、態様F−1〜態様F−15のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−17:天然免疫グロブリン配列(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列である、態様F−1〜態様F−16のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−18:ヒト化免疫グロブリン配列、ラクダ化免疫グロブリン配列、又は親和性成熟等の技法により得られた免疫グロブリン配列である、態様F−1〜態様F−17のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−19:軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)から本質的になる、態様F−1〜態様F−19のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−20:従来の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列から本質的になる、態様F−1〜態様F−19のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−21:ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むが、これに限定されない)から本質的になる、態様F−1〜態様F−20のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−22:ナノボディから本質的になる、態様F−1〜態様F−21のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−23:
i)配列番号1〜配列番号22の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、態様F−1〜態様F−22のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−24:
i)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
ナノボディから本質的になる、態様F−1〜態様F−23のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様F−25:ヒト化ナノボディから本質的になる、態様F−1〜態様F−24のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様G−1:CDR配列により形成される、結合に関する少なくとも1つの結合部位に加えて、別の抗原、タンパク質又は標的との結合に関する1つ又は複数のさらなる結合部位を含有する、これまでの態様のいずれかに記載の免疫グロブリン配列。
態様H−1:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する及び/又はこれと特異的に結合することができる、ナノボディ。
態様H−2:本質的に単離形態である、態様H−1に記載のナノボディ。
態様H−3:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様H−1又は態様H−2に記載のナノボディ。
態様H−4:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様H−1〜態様H−3のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−5:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様H−1〜態様H−4のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−6:500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満(500pM未満等)の親和性で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様H−1〜態様H−5のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−7:天然ナノボディ(任意の好適な種由来)又は合成若しくは半合成のナノボディである、態様H−1〜態様H−6のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−8:VHH配列、部分ヒト化VHH配列、完全ヒト化VHH配列、ラクダ化重鎖可変ドメイン、又は親和性成熟等の技法により得られたナノボディである、態様H−1〜態様H−7のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−9:
i)配列番号1〜配列番号22のAn免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
態様H−1〜態様H−8のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−10:
i)配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775、又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778のAn免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し(ここでアミノ酸同一性の程度を決定するためにCDR配列を形成するアミノ酸残基は無視する);
ii)好ましくはカバットナンバリングによる11位、37位、44位、45位、47位、83位、84位、103位、104位及び108位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数が、表B−2で言及される特徴的な残基から選択される、
態様H−1〜態様H−9のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−11:CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、及び/又は
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、及び/又は
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択される、態様H−1〜態様H−10のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−12:CDR1が、
a)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列;
b)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
c)配列番号208〜配列番号289の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、
CDR2が、
d)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列;
e)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
f)配列番号372〜配列番号453の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択され、
CDR3が、
g)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列;
h)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン配列;
i)配列番号536〜配列番号617の免疫グロブリン配列の少なくとも1つとの3つ、2つ若しくは1つのアミノ酸差異を有する免疫グロブリン配列
からなる群から選択される、態様H−1〜態様H−11のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−13:CDR配列が、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つのCDR配列との少なくとも70%のアミノ酸同一性、好ましくは少なくとも80%のアミノ酸同一性、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一性、例えば95%以上のアミノ酸同一性、又はさらには本質的に100%のアミノ酸同一性を有する、態様H−1〜態様H−12のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−14:部分ヒト化ナノボディである、態様H−1〜態様H−13のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−15:完全ヒト化ナノボディである、態様H−1〜態様H−14のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−16:配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775若しくは配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773若しくは配列番号778からなる群から、又は配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775若しくは配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773若しくは配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つとの80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、例えば99%以上の配列同一性(本明細書中で規定される)を有する免疫グロブリン配列からなる群から選択される、態様H−1〜態様H−15のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−17:ヒト化ナノボディである、態様H−1〜態様H−16のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−18:配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773からなる群から選択される、態様H−1〜態様H−17のいずれかに記載のナノボディ。
態様H−19:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つの、例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合を交差遮断する、ナノボディ。
態様H−20:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有し、配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775又は配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773又は配列番号778の免疫グロブリン配列のうちの少なくとも1つにより例えばP2X7等のイオンチャネルとの結合を交差遮断される、ナノボディ。
態様H−21:上記ナノボディの交差遮断する又は交差遮断される能力をビアコアアッセイで検出する、態様H−19又は態様H−20に記載のナノボディ。
態様H−22:上記ナノボディの交差遮断する又は交差遮断される能力をELISAアッセイで検出する、態様H−19〜態様H−21のいずれかに記載のナノボディ。
【0481】
ポリペプチド
態様K−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の1つ又は複数の免疫グロブリン配列、及び/又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つ又は複数のナノボディを含むか又はこれから本質的になり、任意で1つ又は複数のペプチドリンカーをさらに含む、ポリペプチド。
態様K−2:上記1つ又は複数の結合単位が免疫グロブリン配列である、態様K−1に記載のポリペプチド。
態様K−3:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様K−1又は態様K−2に記載のポリペプチド。
態様K−4:上記1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列が免疫グロブリン配列である、態様K−1〜態様K−3のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−5:上記1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列が、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様K−1〜態様K−4のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−6:態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つ又は複数のナノボディを含むか又はこれから本質的になり、上記1つ又は複数の他の結合単位がナノボディである、態様K−1〜態様K−5のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−7:少なくとも1つの結合単位が多価構築物である、態様K−1〜態様K−6のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−8:少なくとも1つの結合単位が多重パラトピック構築物である、態様K−1〜態様K−8のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−9:少なくとも1つの結合単位が多重特異的構築物である、態様K−1〜態様K−8のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−10:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体と比較して増大した半減期を有する、態様K−1〜態様K−9のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−11:上記1つ又は複数の他の結合単位が、それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体と比較して増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす、態様K−10に記載のポリペプチド。
態様K−12:増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす上記1つ又は複数の他の結合単位が、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質と結合することができる結合単位、Fc部分、及び血清タンパク質と結合することができる小タンパク質又は小ペプチドからなる群から選択される、態様K−10又は態様K−11に記載のポリペプチド。
態様K−13:増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす上記1つ又は複数の他の結合単位が、ヒト血清アルブミン又はその断片からなる群から選択される、態様K−10〜態様K−12のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−14:増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす上記1つ又は複数の他の結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができる結合単位からなる群から選択される、態様K−10〜態様K−13のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−15:増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす上記1つ又は複数の他の結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができるドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様K−10〜態様K−14のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−16:増大した半減期を有するポリペプチドをもたらす上記1つ又は複数の他の結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができるナノボディである、態様K−10〜態様K−15に記載のポリペプチド。
態様K−17:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体の半減期より少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、又は20倍超大きい血清半減期を有する、態様K−10〜態様K−16のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−18:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体と比較して、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、又はさらには24時間超、48時間超若しくは72時間超増大した血清半減期を有する、態様K−10〜態様K−17のいずれかに記載のポリペプチド。
態様K−19:少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上の;例えば、少なくとも5日(例えば約5日〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば約9日〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば約10日〜15日)、又は少なくとも約11日(例えば約11日〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば約12日〜18日以上)、又は14日超(例えば約14日〜19日)の、ヒトにおける血清半減期を有する、態様K−1〜態様K−18のいずれかに記載のポリペプチド。
【0482】
化合物又は構築物
態様L−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の1つ又は複数の免疫グロブリン配列、及び/又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つ又は複数のナノボディを含むか又はこれから本質的になり、任意で1つ又は複数のリンカーを介して連結された1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位を任意でさらに含む、化合物又は構築物。
態様L−2:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が免疫グロブリン配列である、態様L−1に記載の化合物又は構築物。
態様L−3:上記1つ又は複数のリンカーが存在する場合、該リンカーが1つ又は複数の免疫グロブリン配列である、態様L−1又は態様L−2に記載の化合物又は構築物。
態様L−4:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が免疫グロブリン配列である、態様L−1〜態様L−3のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−5:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様L−1〜態様L−4のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−6:上記1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列が免疫グロブリン配列である、態様L−1〜態様L−5のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−7:上記1つ又は複数の本発明の免疫グロブリン配列が、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様L−1〜態様L−6のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−8:態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つ又は複数のナノボディを含むか又はこれから本質的になり、上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位がナノボディである、化合物又は構築物。
態様L−9:多価構築物である、態様L−1〜態様L−9のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−10:多重特異的構築物である、態様L−1〜態様L−10のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−11:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体と比較して増大した半減期を有する、態様L−1〜態様L−10のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−12:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22に記載のナノボディそれ自体と比較して増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす、態様L−1〜態様L−11に記載の化合物又は構築物。
態様L−13:増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清タンパク質又はその断片、血清タンパク質と結合することができる結合単位、Fc部分、及び血清タンパク質と結合することができる小タンパク質又は小ペプチドからなる群から選択される、態様L−12に記載の化合物又は構築物。
態様L−14:増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、ヒト血清アルブミン又はその断片からなる群から選択される、態様L−12又は態様L−13に記載の化合物又は構築物。
態様L−15:増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができる結合単位からなる群から選択される、態様L−12〜態様L−14のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−16:増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができるドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様L−12〜態様L−14のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−17:増大した半減期を有する化合物又は構築物をもたらす上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が、血清アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)又は血清免疫グロブリン(例えばIgG)と結合することができるナノボディである、態様L−12〜態様L−14のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−18:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体の半減期より少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、又は20倍超大きい血清半減期を有する、態様L−12〜態様L−17のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−19:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体と比較して、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、又はさらには24時間超、48時間超若しくは72時間超増大した血清半減期を有する、態様L−12〜態様L−18のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−20:少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上の;例えば、少なくとも5日(例えば約5日〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば約9日〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば約10日〜15日)、又は少なくとも約11日(例えば約11日〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば約12日〜18日以上)、又は14日超(例えば約14日〜19日)の、ヒトにおける血清半減期を有する、態様L−12〜態様L−19のいずれかに記載の化合物又は構築物。
態様L−21:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の1つの免疫グロブリン配列、及び/又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つのナノボディを含むか又はこれから本質的になる、一価構築物。
態様L−22:上記本発明の免疫グロブリン配列が、ドメイン抗体、ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、単一ドメイン抗体、単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列、「dAb」、dAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列、又はナノボディからなる群から選択される、態様L−21に記載の一価構築物。
態様L−23:態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載の1つのナノボディを含むか又はこれから本質的になる、一価構築物。
【0483】
核酸
態様M−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25又は態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディをコードする、核酸配列又はヌクレオチド配列。
態様M−2:上記の態様のいずれかに記載の化合物又は構築物をコードする、核酸配列又はヌクレオチド配列。
【0484】
宿主細胞
態様N−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物(これをコードする核酸配列若しくはヌクレオチド配列の発現により得ることができるようなものである)、若しくは態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を発現する若しくはこれを好適な状況下で発現することが可能である;及び/又は態様M−1に記載の核酸配列若しくはヌクレオチド配列、若しくは態様M−2に記載の遺伝子構築物を含む、宿主又は宿主細胞。
【0485】
組成物
態様O−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物、又は態様M−1若しくは態様M−2に記載の核酸配列若しくはヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む、組成物。
態様O−2:薬学的組成物である、態様O−1に記載の組成物。
態様O−3:薬学的組成物であり、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤若しくは賦形剤及び/又はアジュバントをさらに含み、1つ又は複数のさらなる薬学的に活性のあるポリペプチド及び/又は化合物を任意で含む、態様O−2に記載の組成物。
【0486】
本発明の作用物質及び組成物の製造
態様P−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物(これをコードする核酸配列若しくはヌクレオチド配列の発現により得ることができるようなものである)、又は態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を製造する方法であって、
a)好適な宿主細胞若しくは宿主生物において、又は別の好適な発現系において、態様M−1に記載の核酸配列若しくはヌクレオチド配列、又は態様M−2に記載の遺伝子構築物を発現させる工程、
任意でその後
b)そのようにして得られた態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、方法。
態様P−2:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物(これをコードする核酸配列若しくはヌクレオチド配列の発現により得ることができるようなものである)、又は態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を製造する方法であって、
a)態様....に記載の宿主又は宿主細胞を培養及び/又は維持する工程であって、上記宿主又は上記宿主細胞が態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を少なくとも1つ発現及び/又は産生するような条件下で、培養及び/又は維持する工程、
任意でその後
b)そのようにして得られた態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物を単離及び/又は精製する工程
を少なくとも含む、方法。
【0487】
スクリーニングの方法
態様Q−1:例えばP2X7等のイオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン配列をスクリーニングする方法であって、
a)免疫グロブリン配列をコードする核酸配列のセット、コレクション又はライブラリを用意する工程、
b)例えばP2X7等のイオンチャネルと結合することができ及び/又はこれに対する親和性を有し、本発明のナノボディ、例えば配列番号705〜配列番号788、より好ましくは配列番号726〜配列番号750、配列番号753〜配列番号758、配列番号762〜配列番号764、配列番号772〜配列番号773、配列番号775若しくは配列番号778〜配列番号780、より好ましくは配列番号732、配列番号773若しくは配列番号778(表A−1)、又は本発明のポリペプチド若しくは構築物、例えば配列番号789〜配列番号791(表A−3を参照されたい)により交差遮断される又はこれを交差遮断する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列に関して、核酸配列の上記セット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程、並びに
c)上記核酸配列を単離する工程であって、その後上記免疫グロブリン配列を発現させる、単離する工程
を少なくとも含む、方法。
【0488】
本発明の結合因子の使用
態様R−1:少なくとも1つの[疾患及び障害を挿入]を予防及び/又は治療する方法であって、薬学的に活性のある量の、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23のいずれかに記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物を少なくとも1つ、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−2:例えばP2X7等のイオンチャネルと、その生物学的活性若しくは薬理学的活性と、及び/又は例えばP2X7等のイオンチャネルが関与する生物学的経路若しくはシグナル伝達に関連する少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、薬学的に活性のある量の、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物を少なくとも1つ、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−3:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物を少なくとも1つ、それを必要とする被験体に投与することにより予防及び/又は治療することができる少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、薬学的に活性のある量の、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物を少なくとも1つ、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−4:免疫療法のための方法であって、薬学的に活性のある量の、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物を少なくとも1つ、それを必要とする被験体に投与することを含む、方法。
態様R−5:少なくとも1つの[疾患及び障害を挿入]の予防及び/若しくは治療のための薬学的組成物の調製における、並びに/又は態様R−1〜態様R−3に記載の方法の1つ又は複数における使用のための、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物の使用。
態様R−6:イオンチャネルが或る役割を果たす又はイオンチャネルが関与する少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療のための、態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディ、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、態様L−1〜態様L−21のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、態様L−22若しくは態様L−23に記載の一価構築物;又は態様O−2若しくは態様O−3に記載の組成物。
【0489】
断片の態様
態様S−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列の、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディの、部分又は断片。
態様S−2:例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様S−1に記載の部分又は断片。
態様S−3:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様S−1又は態様S−2に記載の部分又は断片。
態様S−4:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様S−1〜態様S−3のいずれかに記載の部分又は断片。
態様S−5:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様S−1〜態様S−4のいずれかに記載の部分又は断片。
態様S−6:態様S−1〜態様S−4のいずれかに記載の1つ又は複数の部分又は断片を含むか又はこれから本質的になり、任意で1つ又は複数のリンカーを介して連結された1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位を任意でさらに含む、化合物又は構築物。
態様S−7:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が免疫グロブリン配列である、態様S−6に記載の化合物又は構築物。
態様S−8:上記1つ又は複数のリンカーが存在する場合、該リンカーが1つ又は複数の免疫グロブリン配列である、態様S−6又は態様S−7に記載の化合物又は構築物。
態様S−9:態様S−1〜態様S−7のいずれかに記載の部分若しくは断片、又は態様S−8に記載の化合物若しくは構築物をコードする、核酸配列又はヌクレオチド配列。
態様S−10:態様S−1〜態様S−7のいずれかに記載の部分若しくは断片、態様S−6〜態様S−8のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様S−9に記載の核酸配列若しくはヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む、組成物。
【0490】
誘導体の態様
態様T−1:態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列の、又は態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディの、誘導体。
態様T−2:例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−1に記載の誘導体。
態様T−3:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−1又は態様T−2に記載の誘導体。
態様T−4:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−1〜態様T−3のいずれかに記載の誘導体。
態様T−5:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−1〜態様T−4のいずれかに記載の誘導体。
態様T−6:態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、又は態様L−1〜態様L−23のいずれかに記載の化合物若しくは構築物の、誘導体。
態様T−7:例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−6に記載の誘導体。
態様T−8:10−5モル/L〜10−12モル/L以下、及び好ましくは10−7モル/L〜10−12モル/L以下、及びより好ましくは10−8モル/L〜10−12モル/Lの解離定数(K)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−6又は態様T−7に記載の誘導体。
態様T−9:10−1−1〜約10−1−1、好ましくは10−1−1〜10−1−1、より好ましくは10−1−1〜10−1−1(10−1−1〜10−1−1等)の結合速度(kon速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−6〜態様T−8のいずれかに記載の誘導体。
態様T−10:1s−1〜10−6−1、好ましくは10−2−1〜10−6−1、より好ましくは10−3−1〜10−6−1(10−4−1〜10−6−1等)の解離速度(koff速度)で例えばP2X7等のイオンチャネルと特異的に結合することができる、態様T−6〜態様T−9のいずれかに記載の誘導体。
態様T−11:対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、態様H−1〜態様H−22のいずれかに記載のナノボディそれ自体、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、又は態様L−1〜態様L−23のいずれかに記載の化合物若しくは構築物それ自体の半減期より少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、又は20倍超大きい血清半減期を有する、態様T−1〜態様T−10のいずれかに記載の誘導体。
態様T−12:それぞれ対応する態様A−1〜態様A−22、態様B−1〜態様B−7、態様C−1〜態様C−4、態様D−1〜態様D−6、態様E−1〜態様E−13、態様F−1〜態様F−25若しくは態様G−1のいずれかに記載の免疫グロブリン配列それ自体、態様H−1〜態様H−23のいずれかに記載のナノボディそれ自体、態様K−1〜態様K−19のいずれかに記載のポリペプチド、又は態様L−1〜態様L−23のいずれかに記載の化合物若しくは構築物それ自体と比較して、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、又はさらには24時間超、48時間超若しくは72時間超増大した血清半減期を有する、態様T−1〜態様T−11のいずれかに記載の誘導体。
態様T−13:少なくとも約12時間、好ましくは少なくとも24時間、より好ましくは少なくとも48時間、さらにより好ましくは少なくとも72時間以上の;例えば、少なくとも5日(例えば約5日〜10日)、好ましくは少なくとも9日(例えば約9日〜14日)、より好ましくは少なくとも約10日(例えば約10日〜15日)、又は少なくとも約11日(例えば約11日〜16日)、より好ましくは少なくとも約12日(例えば約12日〜18日以上)、又は14日超(例えば約14日〜19日)の、ヒトにおける血清半減期を有する、態様T−1〜態様T−12のいずれかに記載の誘導体。
態様T−14:ペグ化誘導体である、態様T−1〜態様T−13のいずれかに記載の誘導体。
態様T−15:態様T−1〜態様T−14のいずれかに記載の1つ又は複数の誘導体を含むか又はこれから本質的になり、任意で1つ又は複数のリンカーを介して連結された1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位を任意でさらに含む、化合物又は構築物。
態様T−16:上記1つ又は複数の他の基、残基、部分又は結合単位が免疫グロブリン配列である、態様T−15に記載の化合物又は構築物。
態様T−17:上記1つ又は複数のリンカーが存在する場合、該リンカーが1つ又は複数の免疫グロブリン配列である、態様T−16に記載の化合物又は構築物。
態様T−18:態様T−16又は態様T−17に記載の化合物又は構築物をコードする、核酸。
態様T−19:態様T−1〜態様T−14のいずれかに記載の誘導体、態様T−15〜態様T−17のいずれかに記載の化合物若しくは構築物、又は態様T−18に記載の核酸配列若しくはヌクレオチド配列を少なくとも1つ含む、組成物。
【0491】
特に好ましい態様
1.細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を生成する方法であって、
a)非ヒト動物に、上記細胞関連抗原又は上記細胞関連抗原のドメイン若しくは特定部分をコードする核酸を遺伝子ワクチン接種する工程、並びに
b)任意で、該細胞関連抗原を発現する天然細胞若しくはトランスフェクト細胞を含む細胞、細胞由来の膜抽出物、豊富な抗原を内包する小胞若しくは任意の他の膜誘導体、リポソーム、又は該細胞関連抗原を発現するウイルス粒子から選択される、その天然立体構造の上記抗原により該動物を追加免疫する工程、
c)上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列に関して、上記非ヒト動物に由来する免疫グロブリン配列のセット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする工程
を含む、方法。
2.上記細胞関連抗原が、膜貫通抗原、例えばGPCR又はイオンチャネルを含むがこれらに限定されない多重貫通ドメインを有する膜貫通抗原から選択される、態様1に記載の方法。
3.上記非ヒト動物が、脊椎動物、例えばサメ、トカゲ及び哺乳動物、より具体的にはラクダ科動物、例えばラマ及びアルパカから選択される、態様1又は2に記載の方法。
4.非ヒト動物がラクダ科動物又はラマである、態様1〜3のいずれか1つに記載の方法。
5.上記免疫グロブリン配列が軽鎖可変ドメイン配列又は重鎖可変ドメイン配列である、態様1〜4のいずれか1つに記載の方法。
6.免疫グロブリン配列が、従来の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列である、態様5に記載の方法。
7.免疫グロブリン配列が、ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適な免疫グロブリン配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)、又はナノボディ(VHH配列を含むがこれに限定されない)(又はナノボディとしての使用に好適な免疫グロブリン配列)である、態様1〜6のいずれか1つに記載の方法。
8.免疫グロブリン配列がナノボディである、態様7に記載の方法。
9.ワクチン接種を、無針ジェット注射により、バリスティック法により、タトゥーのような針による注射により、局所適用により、又は任意のDNA投与法、その後のin vivoエレクトロポレーションにより行う、態様1〜8のいずれか1つに記載の方法。
10.ワクチン接種を、DNAの皮内投与、筋肉内投与又は皮下投与により行う、態様1〜9のいずれか1つに記載の方法。
11.免疫グロブリン配列の該セット、コレクション又はライブラリを、上記非ヒト哺乳動物のこれらの免疫グロブリン配列をコードする細胞を内包する血液、リンパ節、脾臓、骨髄、又は任意の組織から得る、態様1〜10のいずれか1つに記載の方法。
12.上記細胞関連抗原を、その未変性の立体構造の標的の発現が可能である任意の細胞、例えばこれらに限定されないが、Cho、Cos7、Hek293、又はラクダ科動物由来細胞、例えばラマ由来細胞若しくはアルパカ由来細胞から選択される細胞で発現させる、態様1〜11のいずれか1つに記載の方法。
13.上記細胞関連抗原が、膜貫通抗原、例えばGPCR及び/又はイオンチャネル等である、態様1〜12のいずれか1つに記載の方法。
14.上記抗原が、CXCR7、CXCR4及び/又はP2X7から選択される、態様1〜13のいずれか1つに記載の方法。
15.免疫グロブリン配列の該セット、コレクション又はライブラリを、細胞又はウイルスのセット、コレクション又はサンプルで発現させ、上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列を発現する細胞に関して、細胞の上記セット、コレクション又はサンプルをスクリーニングする、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
16.上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列を該細胞又は該ウイルスから精製及び/又は単離した後、上記免疫グロブリン配列を発現させる、態様15に記載の方法。
17.免疫グロブリン配列の該セット、コレクション又はライブラリが核酸配列のセット、コレクション又はライブラリによってコードされ、上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする核酸配列に関して、核酸配列の上記セット、コレクション又はライブラリをスクリーニングする、態様1〜16のいずれかに記載の方法。
18.上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する免疫グロブリン配列をコードする該核酸配列を精製及び/又は単離した後、上記免疫グロブリン配列を発現させる、態様17に記載の方法。
19.上記細胞関連抗原と結合することができる及び/又はこれに対する親和性を有する該免疫グロブリン配列を精製及び/又は単離する、態様1〜18のいずれか1つに記載の方法。
20.態様1〜19のいずれか1つの方法により取得可能な免疫グロブリン。
21.態様1〜19のいずれか1つの方法により取得可能な、イオンチャネルに指向性を有する免疫グロブリン。
22.イオンチャネルのアンタゴニスト(部分又は完全)である、態様21に記載の免疫グロブリン。
23.イオンチャネルのアゴニスト(部分又は完全)である、態様21に記載の免疫グロブリン。
24.態様1〜19のいずれか1つの方法により取得可能な、P2X7に指向性を有する免疫グロブリン。
25.態様20〜24のいずれかに記載の免疫グロブリン配列を含む組成物。
【0492】
図1.Pig−jet(パネルA)又はタトゥー法(パネルB)による遺伝子ワクチン接種後のラマにおける体液性免疫応答の動態を示す図である。
図2.DNAワクチン接種したラマでの単一のHBSAgタンパク質追加免疫の効果を示す図である。グラフの注釈は図1と同じである。
図3.タンパク質免疫付与(ラマ32及びラマ33)に対する「DNA」初回刺激(prime:プライム)−「タンパク質」追加免疫(boost:ブースト)プロトコル(ラマ124、ラマ160、ラマ117、ラマ203)で得られた体液性免疫応答を示す図である。
図4.HBSAgに対する重鎖抗体(IgG2及びIgG3)媒介性の抗体応答を示す図である。
【実施例】
【0493】
実施例1.ラマの遺伝子免疫付与、及びモデル抗原としてB型肝炎小型表面抗原を用いた免疫グロブリン配列の同定
標的特異的ラクダ科動物の免疫グロブリン配列を、DNAワクチン接種に続いて同定した。B型肝炎小型表面抗原をモデル抗原として選択した(このタンパク質は動物において遺伝子免疫付与後に体液性免疫応答を誘導するのに広く使用されているためである)。
【0494】
実施例1.1.遺伝子免疫付与のためのプラスミドの生成及び調製
B型肝炎小型表面抗原(HBSAg)をコードする真核生物発現ベクターpRc/CMV−Hbs(複数可)は、Aldevronから入手する。発現は構成的サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下である。得られた構築物の配列を配列解析によって検証した。
【0495】
プラスミドDNAを、製造業者の取扱説明書に従ってエンドトキシンフリーGigaprepキット(Qiagen)を用いて作製する。ベクターDNAを最後にエンドトキシンフリーLAL HO中、又はエンドトキシンフリー0.9%NaClのLAL HO溶液中1mg/mLの濃度で再構築する。プラスミドは−20℃で一定分量で保管する。使用前にプラスミドDNA溶液を遠心分離して、可能な限り凝集物を除去する。
【0496】
実施例1.2.異なるDNA投与方法に続く遺伝子免疫付与によるラクダ科動物における体液性免疫応答の誘導
獣医学部倫理委員会(ゲント大学、Belgium)の認可の後、4頭のラマ(124、160、117及び203)に2つの遺伝子免疫付与法を用いて免疫付与し、抗原特異的体液性応答を誘導した。どちらの方法についてもDNAは皮内(ID)適用した。第1のDNA投与方法は無針ジェット注射からなるものであり、第2のDNA投与方法はタトゥー法(Bins et al. 2005. Nature Medicine 11:899-904)に従うものであった。
【0497】
DNA適用の前に、ラマの皮膚の肩甲骨より上のおよそ200cm〜240cmの領域を剪毛し、皮膚を市販の脱毛クリーム(Veet)で2分間処理して、残った全ての毛及び角質層の一部を化学的に除去し、剪毛した領域を水ですすぐことによって十分に清浄にした。第1の方法については、DNAはPig−jet装置(Endoscopic)を用いて皮膚内に投与する(ラマ124及びラマ160)。マルチノズルヘッドによって5つの隣接するスポットに同時に0.04mlずつDNA溶液を分散させるが、注射による水疱又は丘疹が皮膚に2時間ほど残る。したがって、(0日目、14日目、28日目及び57日目に)ラマに与えられる各用量(1mgのDNA)によって、25個の注射による水疱が生じた。短間隔タトゥー法については、短間隔計画を使用した。ラマ117及びラマ203に麻酔をかけ、DNA適用領域を0日目、3日目、7日目(間隔1)、21日目、24日目、28日目(間隔2)、56日目、59日目及び63日目(間隔3)にタトゥーイングする3つの部分に分けた。1mg/mlのDNAの液滴を適用し、市販のタトゥー装置(magnum 9 formation needle)を用いて皮膚内に0.5mmの深さで、1期間につき少なくとも10分間、およそ80cmの表面上にタトゥーを入れた。投与されるDNAの用量は1.33mg(間隔1及び間隔2)及び4mg(間隔3)である。全てのラマについて、免疫付与の間に一定間隔で小量の血液試料を回収し、ELISAにより血清変換をモニタリングする。
【0498】
DNAワクチン接種後にラマがHBsAg特異的体液性免疫応答を誘導したか否かを検証するために、400倍希釈の免疫前血清及び免疫血清を用いてELISAを実行した。つまり、1μg/mlの組み換えHBsAg(Aldevron)を96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)に4℃で一晩固定化する。ウェルをカゼイン溶液(PBS中1%)でブロッキングする。血清希釈物を添加した後、特異的に結合した免疫グロブリンを、ヤギ抗ラマIgGセイヨウワサビペルオキシダーゼ複合体(Bethyl Lab. Inc.,Montgomery,TX)を用いて検出する。図1.1に示す結果から、両方のラマ(124及び160)に対するジェット注射法について、規模は様々であるが明らかな標的特異的血清変換が検出される(0日目対80日目)ことが実証される(図1.1のパネルA、パネルB)。3回目にタトゥーを入れた後、応答の規模はジェット注射と比べると小さいが、同様の傾向がラマ117及びラマ203について実証される(図1.1のパネルA、パネルC)。
【0499】
実施例1.3.HBsAgタンパク質によるDNA初回刺激したラクダ科動物の追加免疫は、重鎖抗体媒介性応答を含む抗原特異的血清変換を増大させた
85日目に、アジュバントとしてStimune(CEDIDiagnostics,Lelystad,TheNetherlands)を用いた50μgの精製HBsAgの単回追加免疫を、4頭全てのラマの頸部に筋内(IM)投与し、小量の血清試料を回収した。4頭全ての動物の免疫応答の評価を、先の実施例に記載されるようにELISAによって行ったが、4頭全ての動物について単回HBsAg追加免疫によって強い二次応答が誘導されることが示された(図1.2)。この「DNA」初回刺激−「タンパク質」追加免疫アプローチの後、HBsAgタンパク質のみを注射した免疫付与法(ラマ32及びラマ33;毎週のIM頸部注射を6回;Stimuneをアジュバントとして用い、1回の注射当たり100μg〜50μgのタンパク質という用量)と比べて、同様の抗原特異的血清力価が生じた。結果を図1.3に示す。結合したラマ免疫グロブリンが、ラマIgG1通常抗体、又は重鎖のみのラマIgG2抗体及びIgG3抗体を特異的に認識するモノクローナル抗体で検出されたため、抗体応答は通常抗体及び重鎖抗体を発現するB細胞レパートリーのどちらによっても増加した(図1.4)(Daley et al., Clin Diagn Lab Immunol. 2005 Mar; 12(3): 380-6)。
【0500】
実施例1.4.ラクダ科動物におけるDNAを用いたHBsAgに対する免疫応答の初回刺激は、in vivo成熟抗原特異的ナノボディを同定するのに十分である
B細胞を含有する150mLの血液試料を、ラマ124及びラマ117(それぞれPig−jet DNA適用及びタトゥーDNA適用の後に最も高い血清変換を示すラマ)から、最後のDNA投与とHBsAgタンパク質追加免疫との間に回収した。続いて、末梢血リンパ球(PBL)を、製造業者の取扱説明書に従ったFicoll−Paque(Amersham Biosciences,Uppsala,Sweden)での密度勾配遠心分離法によって精製した。
【0501】
全RNAを抽出し、cDNAを調製して、以前に記載されている(例えば、国際公開第02/085945号及び国際公開第04/049794号)ようにネステッドPCRによってナノボディレパートリーを増幅した。PCR産物をSfil(ネステッドPCRによってFR1プライマー領域に導入した)及びBstEII(FR4に自然発生する制限部位)で消化し、ゲル電気泳動の後、およそ350bpのDNA断片をゲルから精製した。330ngの増幅したナノボディレパートリーを、Sfil−BstEIIで消化した1μgのファージディスプレイベクター(pAX50)の対応する制限部位とライゲーションして、大腸菌TG1のエレクトロポレーションの後ライブラリを得た。pAX50はLacZプロモーター、大腸菌ファージpIIIタンパク質コード配列、アンピシリン又はカルベニシリンに対する抵抗性遺伝子、マルチクローニング部位(Sfil制限部位及びBstEII制限部位を内包する)、並びにgene3及びエルウィニア・カロトボーラpelBモチーフからなるキメラリーダー配列を含有する。このディスプレイベクターは、個々のナノボディをc−Myc、His6タグ及びgeneIII産物との融合タンパク質として発現するファージ粒子の作製を可能にする。ラマ124及びラマ117の免疫組織に由来するライブラリのサイズは、それぞれ1×10CFU及び3×10CFUであった。ライブラリの品質管理のため、各々のライブラリのランダムに選んだ24個のコロニーに対するM13リバースプライマー及びgeneIIIプライマーを用いたコロニーPCRによって、正確なサイズの挿入断片の割合がそれぞれ91%及び100%であると求められた。
【0502】
ライブラリを、細菌を対数期(OD600=0.5)まで培養することによってレスキューし、その後のヘルパーファージでの感染によって、クローニングナノボディのレパートリーをファージの先端でpIII融合タンパク質として発現する組み換えファージを得た。ファージを濾過滅菌後にさらなる使用のために4℃で保管した。
【0503】
HBsAg特異的ナノボディを、以下のように単回のパニングの後選択した。組み換えHBsAg(Aldevron)を、Maxisorp96ウェルプレート(Nunc,Wiesbaden,Germany)に1ウェル当たり500ng及び50ngで直接固定化した。ファージライブラリとの2時間のインキュベーション及び十分な洗浄の後、結合したファージをトリプシン(1mg/ml)を用いて室温で15分間溶出させた。プロテアーゼ活性は、100μlのファージ溶出物に5μlの16mM ABSFプロテアーゼ阻害剤を添加することによって阻害された。全ての選択条件において、非HBsAgコーティングウェルから溶出した溶出ファージの数と比較して、HBsAg固定化ウェルからより多数の溶出ファージが観察され、HBsAg特異的ナノボディの濃縮が示される。各々の選択のアウトプットを、対数的に増殖した大腸菌TG1に37℃で30分間再感染させ、適切な希釈物を固形培地(2%グルコース及びアンピシリンを含有するLB)上で一晩培養して、単一のコロニーを得た。個々のコロニーをHBsAg濃縮選択アウトプットから取り出し、96ディープウェルプレート(1ml容)で培養して、IPTGを添加することによってナノボディ発現を誘導した。ペリプラズム抽出物(PE)を標準的な方法に従って80μlの容量で調製した。
【0504】
合計188個の10倍希釈のPE(ラマ124に由来するPEが94個及びラマ117に由来するPEが94個)を、固相にコーティングしたHBsAgとの特異的結合について、マウス抗Mycモノクローナル抗体及び後続工程で抗マウスHRP結合検出抗体を用いて、ELISAによってスクリーニングした。バックグラウンド(非コーティングウェル)の最低2倍のシグナルを示すペリプラズム抽出物を陽性とスコア付けし、対応するナノボディクローンをシークエンシングした。ライブラリ124及びライブラリ117については、クローンのそれぞれ68%及び4%が陽性であるとスコア付けされた。配列解析によって、5個のHBsAg特異的ナノボディファミリーが同定され(ラマ124から3個及びラマ117から2個;配列番号は表1.1)、ファミリーの代表例は、ラマ124からHBSAGPMP2E7(ファミリー1)、HBSAGPMP2E12(ファミリー2)及びHBSAGPMP2A4(ファミリー3)、並びにラマ117からHBSAGPMP1C6(ファミリー4)及びHBSAGPMP1E11(ファミリー5)である。
【0505】
実施例1.5.DNAワクチン接種したラマから単離したナノボディは、タンパク質免疫付与したラマから同定されたものと同様の解離速度を示す
血漿由来HBsAg粒子(Biodesign)を、表面プラズモン共鳴CM5センサーチップ(BIAcore)に11000RUの密度で固定化した。チップ表面の再生は、0.1M HClを45μl/分の流速で5秒間流すことによって行った。ペリプラズムナノボディ抽出物を注入し、解離速度を評価した(Biacore)。データは参照チャネル、及びブランクの泳動バッファー注入の曲線を減算することによって二重参照した。処理した曲線を、Biacore T100 Evaluationソフトウェアv1.1.1及びBiaevaluationソフトウェアv4.1において1:1解離モデルを結合曲線に適合することによって評価した。HBSAGPMP2E7、HBSAGPMP2E12の解離速度は、それぞれ8.8E−4 s−1及び1.3E−3 s−1と算出された。これらの解離速度は、ラマ32及びラマ33から得られたライブラリに対する選択後に同定されたHBsAg特異的ナノボディについて得られたもの(解離速度6.0E−2 s−1〜1.7E−3 s−1)と同様であり(Serruys et al. 2009 Hepatology 49(1):39-49)、遺伝子免疫付与によって得られたナノボディの親和性が、タンパク質免疫付与によって同定されたナノボディと異ならないことが示される。
【0506】
表1.1:配列:
【表26】
【0507】
実施例2.遺伝子免疫付与によるGタンパク質共役受容体に対するナノボディの同定
複数の膜貫通ドメインを内包する膜結合標的に対する遺伝子免疫付与の実行可能性を実証するために、ヒトケモカイン受容体CXCR4を第1の例として選択した。
【0508】
実施例2.1.遺伝子免疫付与に好適なCXCR4をコードするベクターの生成
ヒトケモカイン受容体CXCR4をコードするcDNA(NM_003467)をOpen Biosystemsから購入した。制限部位NheI(5’末端)及びXhoI(3’末端)のPCR媒介性導入の後、単位複製配列をpVAX−1(Invitrogen)及びpCDNA3.1(Invitrogen)の対応する部位にクローニングした。得られたpVAX1−CXCR4及びpCDNA3.1−CXCR4の配列完全性を配列解析によって検証した。ベクターpVAX1は遺伝子免疫付与に使用するように設計されたものであり、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを内包する。pVAX1は大腸菌における高コピー数の複製、並びにin vitro及びin vivoの両方で、大抵の哺乳動物細胞における対象となるタンパク質の一時的な高レベルの発現を可能にする。ミリグラム量のエンドトキシンフリーpVAX1−CXCR4プラスミドを作製し、LAL HO中0.9%生理食塩水に2mg/mLの濃度まで溶解し、−20℃で保管した。
【0509】
実施例2.2.pVAX1−CXCR4トランスフェクト細胞は、機能的CXCR4受容体を発現する
ヒトCXCR4の機能的発現を検証するために、エンドトキシンフリーpVAX1−CXCR4プラスミドを、HEK293細胞にFugene(Roche)を用いて一時的にトランスフェクトし、in vitroで細胞外発現をフローサイトメトリーによってモニタリングした。ヒトCXCR4特異的モノクローナル抗体12G5(R&D SystemsのMAB170)、その後PE標識ヤギ抗マウスIgG検出抗体(Jackson ImmunoResearch Inc.、カタログ番号115−115−164)を検出抗体として使用した。この方法によって、非トランスフェクトHEK293細胞に比べて38倍のトランスフェクトpVAX1−hCXCR4/HEK293細胞の蛍光強度シフトが示された(図2.1、パネルA)。細胞表面での機能的CXCR4の存在は、親HEK293細胞ではなくCXCR4トランスフェクトHEK293細胞への、そのビオチン化リガンドCXCL12/SDF−1a(R&D Systems、Human CXCL12/SDF−1α Biotinylated Fluorokine Kit NNS00)の結合によって、製造業者の手順に従って確認した(図示せず)。
【0510】
実施例2.3.安定にトランスフェクトしたCXCR4ラクダ科動物細胞の生成
安定なCXCR4細胞株の生成のために、pCDNA3.1−hCXCR4プラスミドを、不死化ラクダ腎臓(CAKI)細胞にトランスフェクトした(Nguyen et al. 2001. Adv. Immunol. 79:261-296)。(実施例2.2に記載されるような)12G5抗体での蛍光染色によって示される高い発現密度を示す個々のトランスフェクト細胞を、マイクロタイタープレートウェルにおける単一細胞の沈着によってクローニングした(ACDU付きのFACSAria I、Becton Dickinson)。クローン細胞株を選択抗生物質を含有する培地中で増殖させ、(実施例2.2のように)フローサイトメトリーによってCXCR4発現を確認した後、複数の均質で安定なCXCR4 CAKIトランスフェクタントが得られた。非トランスフェクトラクダ科動物細胞と比べて114倍の蛍光シフトを示す(高レベルのCXCR4膜発現を示唆する)1つのクローンを、さらなる実験に選択した(図2.1、パネルB)。
【0511】
実施例2.4.pVAX1−CXCR4の皮内送達は、ラマにおいて検出可能な標的特異的体液性免疫応答を誘導するのに十分である
獣医学部倫理委員会(ゲント大学、Belgium)による認可の後、4頭のラマ(ラマ389、ラマ401、ラマ402及びラマ403)を遺伝子免疫付与に割り当てた。CXCR4をコードするDNAの投与の直前に、ラマの肩甲骨を覆う250cmの皮膚領域を剪毛し、実施例1.2に記載されるように市販の脱毛クリームを塗布することによって残った全ての毛組織を除去する。0.9%生理食塩水に溶解したDNAを毛のない皮膚に、3ノズルヘッドを用いた自動ジェット式注射器(dermojet)Vacci−jet(Akra DermoJet France)を使用する無針ジェット注射によって投与した。4回のDNA投与(0日目、14日目、28日目及び42日目)全てについて、ラマ1頭当たり2mgのDNAを適用し、複数の隣接するスポットに分散させた。DNAを含有する液体の皮内(ID)適用の成功は、皮膚上に液体を含有する表在性の水疱又は丘疹が2時間ほど形成されることによって示される。各々のラマから、10mlの免疫前血清試料及び遺伝子ワクチン接種手順中の異なる血清試料を回収し、抗原特異的体液性応答をモニタリングした。250倍〜5000倍希釈の免疫前試料(0日目)及び免疫血清試料(53日目;4回目のDNA適用後11日目に回収した)中に存在するラマ免疫グロブリンの結合を、非トランスフェクトラクダ科動物細胞に対するCXCR4トランスフェクト(tranfected)ラクダ科動物細胞の染色差について、フローサイトメトリーによってスコア付けした。ラマ全IgG(通常抗体+重鎖抗体)に結合した細胞を、ヤギ抗ラマIgG(カタログ番号A160−100;Bethyl)、その後のPE結合ロバ抗ヤギIgG(JacksonImmunoResearch Laboratories、カタログ番号115−115−164)での二次染色によって検出した。ラマ403を除いて、CXCR4トランスフェクトCAKI細胞の53日目の免疫血清全てについて(最低でも試験した3つの希釈率について)、免疫前レベルと比べて明らかに増大した平均細胞蛍光(MCF)が観察されたが、同様に染色した非トランスフェクトCAKI細胞のMCF値は低いままであった(図2.2)。このことから、ID遺伝子免疫付与の後、4頭のうち3頭のラマが未変性の標的立体構造に対して特異的体液性応答を示すことが示唆された。
【0512】
実施例2.5.遺伝子免疫付与に続く単回細胞追加免疫は、CXCR4特異的血清変換を有意に増大させる
ヒト又は齧歯類の宿主細胞バックグラウンドと比べて高い全体的配列類似性による、ラマにおけるラクダ科動物細胞表面マーカーの免疫原性の減少を見込んで、ラクダ科動物細胞を免疫応答をCXCR4に指向付ける免疫原細胞バックグラウンドとして選択した。培養したCXCR4発現ラクダ科動物細胞(実施例2.3)を新たに採取し、D−PBSで2回洗浄して、全ての培養培地混入物を除去した。細胞を2mLのD−PBSに再懸濁し、動物施設への移送の間氷上で保管した。ラマ389、ラマ401、ラマ402及びラマ403に、最後のDNA投与の最低3週間後に2E7個のhCXCR4トランスフェクトラクダ科動物細胞を皮下(SC)注射した。細胞追加免疫後11日目に、免疫血液試料を各々のラマから回収し、CXCR4血清力価を実施例2.4に記載されるように求めた。4頭全てのラマ(250倍〜2250倍の血清希釈率)について、DNA投与単独の後(53日目)に得られた血清試料と比べて増大したMCF値がCXCR4トランスフェクトラクダ科動物細胞で検出されたが、未トランスフェクトラクダ科動物細胞に結合した血清は、3頭の動物においてわずかにしか増大しなかった。これらの結果から、単回細胞追加免疫が4頭全てのラマについてCXCR4応答の規模の増大をもたらしたことが示される(図2.2及び表2.1)。4頭の遺伝子免疫付与ラマと並行して、ラマ217及びラマ218から回収した62日目試料について血清力価を求めた(図2.2及び表2.1)。これらのラマを、6回のCXCR4−HEK293細胞注射(1回の用量当たり1E7個〜4E7個の細胞)によって一週間の間隔で免疫付与した(特許文献6に記載)。2頭のうち1頭のラマ(218)のみが、未トランスフェクト対照細胞と比べて、CXCR4発現細胞に対して強い血清応答を示した(n=2;代表的な一例を示す)。検出されたMCF値から、実行した遺伝子免疫付与手順(DNA+細胞追加免疫)によって、完全細胞免疫付与と比べて同様の又はより良好な規模の標的特異的力価が生じることが示唆された。
【0513】
表2.1.CXCR4特異的ナノボディB細胞系列の発見概要
【表27】
【0514】
実施例2.6.遺伝子免疫付与はCXCR4特異的ナノボディを同定するのに十分である
ラマ389、ラマ401、ラマ402、ラマ403から、4つの150mlの血液試料を、最後のDNA投与後3日目及び9日目(それぞれPBL1及びPBL2として記号化される)、並びに細胞追加免疫後4日目及び8日目(それぞれPBL3及びPBL4)に回収した。さらに、細胞追加免疫後3日目〜4日目に、触知可能な弓リンパ節(bow lymph node)(LN)の生検材料を各々のラマから局所外科手術によって回収した。末梢血リンパ球をPBL1〜PBL4試料から、実施例1.4に記載されるようにFicoll−Paqueでの密度勾配遠心分離法によって精製した。リンパ球を内包する免疫組織全てから、(実施例1.4に記載されるように)全RNAを抽出し、cDNA調製の鋳型として使用した。遺伝子免疫付与したラマの各々から、2つの別個のライブラリを作成した(表2.2):一方のライブラリはプールしたPBL1+PBL2のcDNAに由来し(「DNA」ライブラリ)、もう一方はプールしたPBL3+PBL4及びLNに由来するものであった(ポスト追加免疫又は「PB」ライブラリ)。
【0515】
表2.2.親V生殖細胞系列配列に対する5個のin vivo成熟CXCR4ナノボディファミリーの遺伝的距離
【表28】

欠失又は付加を含むあらゆる変化が突然変異の数を算出する上で考慮される。
【0516】
フローサイトメトリーによって検出されたポリクローナル血清応答は、未変性CXCR4に対する標的特異的ラマ抗体の存在を示唆しているが、力価の規模は必ずしも、i)抗CXCR4重鎖抗体媒介性クローン多様性、ii)標的に対するモノクローナルナノボディの親和性、及びiii)応答幅(例えば個々のナノボディの対象となるCXCR4エピトープ)を予測するものではない。これらをモノクローナルレベルで特性化するために、CXCR4特異的ナノボディをファージディスプレイによって同定した。並列選択を、8個のDNA及びPBライブラリ、並びに細胞免疫付与したラマから作成した2個のさらなるライブラリの各々に対して行った。ライブラリを、最後の細胞注射後4日目及び8日目に回収したPBL1+PBL2に由来するプールしたcDNAから同様にして(similarly in a similar manner)作成した。
【0517】
CXCR4特異的ナノボディを選択するために、実施例1.4に記載されるように10個全てのライブラリから組み換えファージをレスキューした。1回目の選択では、CXCR4トランスフェクトHEK293細胞に由来する、96ウェルMaxisorpプレート(Nunc)に固定化した膜小胞10単位を、低脂肪粉乳(PBS中Marvell 4%)でブロッキングした。レスキューしたファージとの2時間のインキュベーションの後、室温で15分間トリプシン溶出(1mg/ml)を行い、続いてPBSで15回洗浄した。0.8mM プロテアーゼ阻害剤ABSFを適用することによってプロテアーゼ活性を即座に中和した。全てのファージアウトプットを、対数的に増殖した大腸菌TG1細胞に感染させ、個々のナノボディクローンの解析のために寒天プレート(LB+Amp+2%グルコース)にプレーティングした。1回目のファージアウトプットをレスキューし、プレートに固定化したCXCR4膜小胞10単位又は1単位に対して2回目の選択を行った。非トランスフェクトHEK293対照膜小胞から溶出したファージに対する、CXCR4膜小胞から溶出したファージの数の比率として濃縮係数を算出した。10個のうち8個のライブラリについて、2回目のアウトプットが5を超える濃縮係数を示した(データは図示せず)。プレートに固定化したhCXCR4膜小胞10単位又は1単位に対して選択した2回目のファージアウトプットを、TG1細胞に感染させ、寒天プレート(LB+Amp+2%グルコース)にプレーティングした。CXCR4膜小胞に対して選択した(1回目及び2回目)各々のアウトプットの45個の個々のクローンを、1mlの96ディープウェルプレートにおいて培養し、実施例1.4に記載されるようにペリプラズム抽出物(PE)を調製した。
【0518】
CXCR4特異性を2つの異なる受容体フォーマットを用いる2回のスクリーニングアッセイによって決定した。第1の方法では、2単位のCXCR4膜小胞を、4℃で一晩のコーティングによって96ウェルMaxisorpプレートに1ウェル毎に固定化した。PBS中4%Marvelでブロッキングした後、10倍希釈のPEを添加し、結合したナノボディ(c−Mycタグを内包する)を、マウス抗Myc及びウサギ抗マウスHRPでの逐次検出によって検出した。hCXCR4膜小胞で対照膜小胞と比べて最低で5倍のELISAシグナルの増大を示す501個のナノボディを、CXCR4特異的であると見なした。2種類の陰性対照PE(一方は無関連ナノボディを発現するTG−1から、もう一方は空の発現ベクターを含有するTG−1から生成した)の対応する平均比は、それぞれ1.1±0.8及び1.2±0.7であった。このスクリーニング法から、各々の選択アウトプットのヒット率を算出し、表2.1にまとめた。異なる免疫付与戦略に従う2回の選択アウトプット(10Uの膜小胞)の平均ヒット率に基づくと、発見効率が「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー及び「細胞」レパートリーについて、それぞれ14%、71%及び91%であると算出された(図2.3)。CXCR4に対する検出可能な重鎖抗体(HcAb)力価の非存在下であっても(表2.1)、ラマ403 DNAライブラリに対する1回目及び2回目の選択後のそれぞれ4%及び31%のヒット率によって示されるように、標的特異的ナノボディが同定された。ヒット率から、単回細胞追加免疫後では、単回の選択が全てのHcAbラマレパートリーからCXCR4特異的ナノボディを同定するのに十分であることが示唆される(表2.1中のヒット率4%〜36%)。
【0519】
501個全てのCXCR4特異的ナノボディをシークエンシングし、重複するナノボディ(同一のアミノ酸配列)を除外した。これにより、70個の異なるナノボディB細胞系列に属する171個の特有の配列が同定された(表2.1)。ナノボディは、そのCDR3領域が高いアミノ酸配列類似性を示し、かつ同じ長さである場合、同じB細胞系列又はファミリーに属する。CDR3は主に抗原相互作用に寄与すると予想され、結果として同じファミリーに属するナノボディは同じエピトープに結合すると推定される。1頭のラマにつき同定されたCXCR4特異的ナノボディファミリーの平均数はそれぞれ、細胞免疫付与後は12.5(217、218)、DNA免疫付与によって11.2(DNA+細胞追加免疫;389、401、402及び403)である。1つのナノボディファミリーに属するナノボディアミノ酸配列変異体(最低で1つのアミノ酸残基の突然変異)の数は、1個〜最大で17個のファミリー変異体の範囲であった。
【0520】
CXCR4特異的結合を、ヒトCXCR4を発現する細胞に結合するナノボディをフローサイトメトリーによって測定する二次スクリーニングアッセイにおいて確認した。ここで、5倍希釈のPEを、親の又はCXCR4をトランスフェクトしたラクダ科動物細胞(2×10個の細胞)と共にインキュベートし、ナノボディ結合をマウス抗Myc(SerotecのMCA2200)、続いて抗マウスIgG−PE(JacksonImmunoResearch Laboratoriesの115−115−164)検出抗体によって測定した。全ての試料について、CXCR−4発現細胞に対するMCF値と、未トランスフェクト対照細胞に対するMCFとの比率を算出した。無関連ナノボディが一貫して2.4未満の比率を示した一方で、61個のナノボディファミリー(少なくとも1つのファミリー成員)について10を超える比率が検出され、それにより未変性CXCR4に対するこれらのファミリーの特異性が確認された。残りの9個のナノボディファミリーのうち、単一の成員からなる7個のファミリー(7ファミリー)が、膜小胞でのELISAにおいて測定された5倍〜10倍の吸光度比にもかかわらず3未満の比率を示した。残りの2個のナノボディファミリー(2ファミリー;全ての単一成員のファミリー)については、吸光度比(ELISA)はそれぞれ144及び70であり、MCF比(FACS)はそれぞれ2.2及び2.3であった。
【0521】
実施例2.7.免疫付与法としての皮内DNA投与は、SDF−1−CXCR4受容体相互作用を調節するナノボディを同定するのに十分である
CXCR4特異性のスクリーニング(ELISA又はFACSによって決定した)に続いて、171個全てのCXCR4特異的ナノボディ変異体を、(特許文献6に記載されるように)リガンドSDF−1とその受容体との相互作用を遮断するそれらの能力について試験し、受容体機能を調節するナノボディを同定した。つまり、40pMの[125I]SDF−1リガンド(自家(in-house)標識した)を、2μgのhCXCR4/HEK293膜抽出物と、ナノボディ競合相手の10倍希釈のPE(実施例1.4に記載されるように作製した)の存在下又は非存在下で結合させた。4℃で1時間のインキュベーションの後、膜抽出物を洗浄し、結合リガンドの1分当たりの放射能カウント(cpm)の全量を求めた。膜抽出物への放射標識したリガンドの非特異的結合(非CXCR4関連)を、CXCR4受容体からの全ての放射性リガンドと競合する過剰の非標識SDF−1(100nM)の添加によって決定した。各々のプレートの非特異的結合値を、全結合(ナノボディの非存在下でのcpm)及び各々のナノボディについて得られたcpm値から減算し、ナノボディの存在下での残留[125I]SDF−1結合率(%)(SDFres)を算出した。リガンドディスプレーサとしてスコア付けされたナノボディファミリーが多数同定され(表2.1)、リガンドと競合するナノボディが各々の免疫付与戦略(DNAレパートリー、PBレパートリー及び細胞レパートリーを表す)から同定されたことが示される。
【0522】
実施例2.8.異なる免疫付与戦略後に同定されたナノボディのエピトープマッピング
各々の免疫付与戦略からの標的特異的ナノボディ(競合相手及び結合因子)の選択アウトプットを、さらなる特性化のために、His6及びMycタグと融合させた溶解性ナノボディの発現及び精製を可能にする発現ベクターに再クローニングした。発現はIPTG誘導後に37℃で大腸菌において行う。細胞培養物を遠心した(spinning)後、ペレットを凍結融解し、dPBSに再懸濁することによってペリプラズム抽出物を調製する。この抽出物を固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)の出発材料として使用する。ナノボディを250mMイミダゾールを用いてカラムから溶出させ、続いてdPBSで脱塩する。全てのナノボディの純度及び完全性をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって検証する一方で、タグの存在をウェスタンブロット法によって検証する。
【0523】
DNAワクチン接種戦略(DNAのみ又はその後の細胞追加免疫)によって、細胞免疫付与戦略の後同定されたナノボディと比べて、異なるエピトープに対するナノボディが同定されるかを決定するために、多数のエピトープビニングアッセイを実施する。これらは、アミノ酸残基1〜14に相当するCXCR4のN末端ペプチドへの結合(ELISA)、N末端及び細胞外ループ領域内に点突然変異を導入したCXCR4突然変異体の受容体への結合、又はN末端若しくは細胞外ループが関連GPCRの配列によって個々に置き換わったN末端切断型hCXCR4受容体若しくはCXCR4キメラ等の突然変異CXCR4への結合である。代替的には、エピトープマッピングを本発明者らの精製ナノボディパネルと、i)4G10(Santa Cruz、SC53534)等のエピトープが記載されている(Carnec etal. 2005, J. Vir. 1930-33)、直鎖状のN末端に結合するモノクローナル抗体又はFab断片、ii)アンタゴニストAMD3100(SigmaのA5602)等の小分子阻害剤、及びiii)蛍光マーカー又はビオチンで標識した他のナノボディを含む、異なるCXCR4特異的化合物との競合実験を用いて行う。
【0524】
実施例2.9.遺伝子免疫付与に続く細胞追加免疫は、異なるナノボディレパートリーを生じる
ラマ389、ラマ401、ラマ402及びラマ403から、(シークエンシングした225個のうち)123個のナノボディ配列変異体からなる45個のCXCR4特異的ナノボディファミリーを同定した。これら123個の変異体を各々、「DNA」ライブラリ又は「PB」ライブラリに割り当てた(同一のアミノ酸配列を有する変異体はどちらのライブラリからも得られない)。これら45個のファミリーのうち5個(全ファミリー多様性の11.1%)についてのみ、同じファミリーに属するナノボディ変異体が、同じ動物に由来する「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリから同定された(表2.2)。これら5個のファミリーは、非冗長クローンの34%に相当する42個の異なるナノボディ変異体を含む。残りのナノボディレパートリー(76%)が、「DNA」ライブラリ又は「PB」ライブラリのいずれかから同定され、遺伝子免疫付与に続く細胞追加免疫によって、遺伝子免疫付与のみの後作成したライブラリのパニングによって容易には同定されないナノボディレパートリーのin vivo成熟がもたらされることが示唆される(図2.4)。遺伝子免疫付与のみによって異なるナノボディレパートリーが得られ、細胞追加免疫の後レパートリーが失われる可能性があることが示唆される。
【0525】
実施例2.10.「DNA」レパートリーの平均効力は、「PB」レパートリー及び「細胞」レパートリーよりも低い
先の実施例によって、「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリの両方から限られた数のファミリーしか同定されないことが示される。このレパートリーサブセットに対する細胞追加免疫の効果を検証するために、i)特定のナノボディファミリー内の各々の変異体について、親V遺伝子生殖細胞系列配列に対する遺伝的距離を算出すること(アミノ酸又はヌクレオチドの突然変異の数;CDR3領域及びFR4領域をコードするD遺伝子セグメント及びJ遺伝子セグメントを除外する)、及びii)ナノボディ変異体の効力を比較することによって、in vivo成熟をスコア付けした。遺伝的距離の算出については、全てのライブラリについて増幅エラーの比例的(proportional)導入を推定した(PCRによる増幅を含むナノボディレパートリークローニング法によって引き起こされる突然変異の数を制限するために、プルーフリーディングポリメラーゼが使用されている)。これら5個のファミリーのうち3個について、「PB」由来ナノボディは親V遺伝子生殖細胞系列配列に対して平均して12個、13個及び9個のアミノ酸突然変異(又は26個、19個及び13個のヌクレオチド突然変異)を示した一方で、「DNA」ライブラリに由来するナノボディについてはそれぞれ10個、12個及び5個(又はヌクレオチドレベルでは19個、17個及び5.5個)であり、「PB」由来ナノボディが「DNA」由来ナノボディよりも親V遺伝子生殖細胞系列から離れている(したがってより成熟している)ことが示唆された。これら3個のファミリーについて、この「PB」ナノボディのより高い成熟度は、「PB」由来ナノボディ対「DNA」由来ナノボディの平均結合効力(実施例2.6に記載されるようなMCF比)が3個のファミリーそれぞれについて、それぞれ553対46、261対105、556対505であることにも反映されている(FACSの結果であるが傾向はELISAにおいて確認した、表2.2を参照されたい)。
【0526】
ラマ389、ラマ401、ラマ402及びラマ403に由来する122個の特有のナノボディ(「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリに由来するそれぞれ20個及び102個のナノボディ変異体)の全てについて濃度依存性標的結合を解析する場合、平均MCF比(FACS)は、「PB」ライブラリ及び「DNA」ライブラリに由来するナノボディについて、それぞれ427及び196であった(図2.5)。「細胞」ライブラリ(ラマ217又はラマ218)に由来する49個のナノボディ変異体から算出された、対応する数値は538である。この傾向をELISAアッセイによって得られた数値により確認する:平均吸着比(実施例2.6に記載されるように算出した)は「PB」ライブラリ及び「DNA」ライブラリに由来するナノボディについて、それぞれ36.2及び23であった。「細胞」ライブラリ(ラマ217又はラマ218)に由来する49個のナノボディ変異体から算出された、対応する数値は28である。このことから、「DNA」ライブラリに由来するナノボディ変異体の平均遺伝的距離が、「PB」ライブラリから同定されたナノボディよりも密接に親生殖細胞系列配列に関連することが示唆され、したがってより成熟度が低いと考えられる。さらに、3つのレパートリーの平均結合効力を解析したところ、「DNA」レパートリーは「PB」レパートリーよりも効力が低く、「PB」レパートリーは「細胞」レパートリーと同様の効力を有するようである(図2.5)。
【0527】
しかしながら、第4のファミリーについては驚くべきことに、「DNA」ライブラリから得られた変異体が、「PB」ライブラリから同定されたナノボディと比べて、それ以上のin vivo成熟度を示した(表2.2)。このファミリーからの「DNA」由来クローンは、V生殖系列と比べて15個のアミノ酸(又は21個のヌクレオチド)突然変異を示すが、「PB」由来ナノボディについての対応する平均値は14.6(アミノ酸)又は21.7(ヌクレオチド)である。このことは、「DNA」ナノボディ及び「PB」ナノボディのFACSアッセイにおける平均効力にも反映される(それぞれ755及び671である)。第5のファミリーについては、「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリの成熟は、4つの解析法(アミノ酸突然変異又はヌクレオチド突然変異、FACS及びELISA)によると「DNA」由来ナノボディと「PB」由来ナノボディとの間に一貫した順位が検出されないため、極めて同様であるとスコア付けされた。
【0528】
3つの異なるレパートリーの平均結合効力の間には統計的に有意な差は見られないが、「PB」レパートリーの平均効力は、「細胞」ライブラリから得られた平均効力と同様であり、これらは「DNA」レパートリーの平均効力よりも高い。しかしながら、モノクローナルレベルでは、同様の結合効力を有するナノボディは、細胞追加免疫又は細胞免疫付与の後に同定された場合と比べると、遺伝子免疫付与のみの後に同定されている。
【0529】
実施例3.リガンド作動性イオンチャネルに対するナノボディの同定
複数の膜貫通ドメインを内包する膜結合標的に対する遺伝子免疫付与の実行可能性を実証する第2の例として、マウスプリン受容体P2X7を選択した。
【0530】
P2X7は、高濃度の外因性(exogeneous)ATP、又はNAD依存性ADPリボシル化によって活性化される、リガンド依存性イオンチャネルである。この機能的チャネルは、各々が2つの膜貫通領域及び285個のアミノ酸残基の単一の細胞外ループからなる3つのP2X7タンパク質サブユニットによって形成される。プリン受容体の活性化は立体構造変化を誘導し、大きな非選択的な孔の形成をもたらし、最終的に膜のブレブ形成及びアポトーシスを引き起こす。
【0531】
P2X7による遺伝子免疫付与は、ウサギ及びラットにおいてポリクローナル及びモノクローナル抗P2X7抗体を首尾よく産生させることが以前に実証されている(Adriouch et al. 2005, Cell Immun 236, 72-77)。ここで、本発明者らは、遺伝子免疫付与に続いてリガンド誘導性P2X7活性化を調節するP2X7特異的ナノボディの同定を実証した。
【0532】
実施例3.1.バリスティック法を用いた遺伝子免疫付与によるラマにおけるmP2X7に対する体液性応答の誘導
遺伝子銃免疫付与は、マウス、ウシ及びラマを含む様々な動物において体液性応答を誘導する皮内DNA送達の効率的な方法であることが示されている(Koch-Nolte 2007, Faseb. J. 21, 3490-3499)。このバリスティック投与法では、高圧下でDNAをコーティングした金微粒子を非常に免疫能力の高い皮膚組織に送達し、ランゲルハンス抗原提示細胞等の真皮中に存在する免疫エフェクター細胞を直接標的化し、トランスフェクトする。これによりin vivoでのトランスフェクション効率の増大がもたらされ、結果として持続的な抗原提示が体液性免疫応答の誘導を刺激すると考えられる。
【0533】
3頭のラマ(407、414及び417)を、マウスP2X7(mP2X7)をコードするDNAによって免疫付与した。DNA送達に使用した装置は、ヘリオス遺伝子銃(Biorad)であった。エンドトキシンフリーmP2X7発現プラスミドpCDNA6.1−mP2X7(Adriouch et al. 2005, Cell Immun 236, 72-77)を、1μmの金粒子(Biorad、カタログ番号1652263)に製造業者の取扱説明書に従ってコーティングした。ラマの頸部領域の皮膚を実施例1.2のように準備した。各々のラマに2週間の投与間隔で4回の抗原投与を行った。12ショットのプラスミド結合金粒子からなる各々の投与(1ショット当たり0.5mgの金粒子に結合したDNA1μg)を、600psiに設定した圧力によって皮膚内に適用した。最後の遺伝子免疫付与の3週間後、全てのラマに2×10個のmP2X7トランスフェクトHek293細胞の単回追加免疫を行った。一定間隔で血液試料を回収し、体液性免疫応答の誘導を経時的にモニタリングした。B細胞組織の単離のために、4回目のDNA免疫付与後3日目及び9日目(PBL1及びPBL2)、並びに細胞追加免疫後4日目及び8日目(PBL3及びPBL4)にこれらの動物から血液を回収した。弓領域の触知可能なリンパ節(LN)の生検材料を、細胞追加免疫後4日目に採取した。
【0534】
別の3頭のラマ(413、415及び416)を、2×10個の安定にトランスフェクトしたmP2X7 Hek293細胞(Adriouch et al. 2005, Cell Immun 236, 72-77)によって2週間の間隔で4回、弓領域の皮下に免疫付与した。4回目の免疫付与後4日目及び8日目にこれらの動物から血液を回収し、4回目の免疫付与後4日目にLN生検材料を採取した。
【0535】
実施例2.4に記載されるのと同様にして、未トランスフェクトCHO細胞及びmP2X7トランスフェクトCHO細胞を用いたフローサイトメトリーによって、血清応答をmP2X7反応性についてモニタリングした。DNA免疫付与したラマについては、mP2X7血清変換を免疫前血清試料(0日目)、最後のDNA免疫付与後に回収した血清試料(51日目、PBL2)及び細胞追加免疫後の血清試料(71日目、PBL4)の間で比較した。4回の細胞注射によって免疫付与したラマについては、mP2X7特異的力価を免疫前試料と、52日目に回収した免疫試料との間で比較した。図3.1に、6頭全てのmP2X7によって免疫付与したラマの全IgG(通常抗体及び重鎖抗体)免疫応答を示す。ラマ407を除いて、免疫前レベル(最低で3つの希釈物を試験した)と比べて、細胞追加免疫後に回収した71日目の免疫血清試料によって、mP2X7トランスフェクトCHO細胞の平均細胞蛍光(MCF)の明らかな増大が観察された。非トランスフェクトCHO細胞に対するMCF値は低いままである。遺伝子免疫付与手順(DNA初回刺激、その後の単回細胞追加免疫)の後、3頭のうち2頭のラマが未変性標的立体構造に対する特異的体液性応答を示した。複数回の細胞注射を受けた3頭の動物は全て、検出可能なmP2X7特異的血清力価を示す(52日目)。無関連CHO細胞表面抗原に対するバックグラウンド応答は、遺伝子免疫付与(DNA+細胞追加免疫)によって免疫付与した動物よりも、これらの動物において高い。
【0536】
実施例3.2:遺伝子銃を用いたヒト及びマウスのP2X7の遺伝子カクテル免疫付与
遺伝子免疫付与の利点の1つは、単に異なる標的をコードする遺伝子を同じ動物に投与することによって、複数の標的に対する免疫応答を生じる汎用性である。カクテル免疫付与は、免疫応答を特異的立体構造に偏らせるためにも使用することができる。カクテル免疫付与の例として、本発明者らは、図3.2に示されるような80.5%の全体的配列同一性を共有するヒト(h)P2X7及びmP2X7オーソログを、ラマの遺伝子銃DNA免疫付与に選択する。また、P2X7チャネルに対するそのオープン立体構造での免疫応答の誘導を可能にするために、実施例3.1に記載される免疫付与戦略に2つの変更を加えた。まず、カクテル免疫付与を、mP2X7及びmArt2.2(ADPリボシル化を媒介することによるP2X7の既知の活性化因子である)をコードするプラスミドの混合物によって適用した。次に、細胞追加免疫の前にP2X7トランスフェクトHek293細胞をATPで処理してチャネルを活性化した後、オープン立体構造を保存するためにパラホルムアルデヒドを用いて細胞を固定した。
【0537】
2頭のラマ(405及び418)を、遺伝子銃による遺伝子免疫付与を用いて、hP2X7及びmP2X7の両方によって同時に免疫付与した。エンドトキシンフリーpCDNA6.1−mP2X7及びpCDNA6.1−mArt2.2(1:10比)の混合物を、1μmの金粒子に結合させた。同様に、hP2X7をコードするpCDNA6.1−hP2X7プラスミドを1μmの金粒子に結合させた。遺伝子免疫付与を実施例3.1に記載されるように行った(1μg/0.5mg/ショット)。頸部の左側面をmP2X7/mArt2.2複合体での免疫付与に使用し、右側面をhP2X7複合体での免疫付与に使用した。4回目のDNA免疫付与の3週間後、両方のラマを2×10個のATP処理した、固定したmP2X7−Hek293細胞(左側)及びhP2X7−Hek293細胞(右側)で同時に追加免疫した。3日後に、2回目の追加免疫を2×10個のATP処理した、固定したhP2X7−Hek293細胞を用いて行った。B細胞組織の単離については、4回目のDNA免疫付与後3日目及び9日目(PBL1及びPBL2)、並びに1回目の細胞追加免疫後4日目及び8日目(PBL3及びPBL4)にこれらの動物から血液を回収した。1回目の細胞追加免疫後3日目に、左側の弓領域からLN生検材料を採取した。
【0538】
両方のラマのmP2X7に対する全IgG血清力価応答を、実施例3.1に記載されるように、未トランスフェクト細胞及びmP2X7トランスフェクト細胞を用いたフローサイトメトリーによってモニタリングした。ここで、免疫前血清試料(0日目)を、DNA免疫付与後(51日目、PBL2)及びそれぞれの細胞追加免疫後(71日目、PBL4)に採取した試料と比較した。ラマ418は、DNA免疫付与後にmP2X7に対する明らかな全IgG免疫応答を示し、これは細胞追加免疫後にさらに増強されたが、ラマ405のみが細胞追加免疫後にmP2X7反応性を示す(図3.3)。両方のラマについて、未トランスフェクトCHO細胞に対するMCF値は低いままである。ヒトP2X7に対する血清反応性は求めなかった。要するに、遺伝子免疫付与及び続く細胞追加免疫後に、5頭のうち4頭のラマが明らかなmP2X7血清応答を示す。
【0539】
実施例3.3:遺伝子免疫付与後の重鎖抗体応答の誘導
また、重鎖抗体(HcAb)媒介性mP2X7特異的応答の誘導を、安定なHek293−mP2X7トランスフェクタントに対するラマIgGアイソタイプ特異的モノクローナル抗体を用いたFACSによってモニタリングした。この設定を試験するために、ラマ血清の希釈物(DNA免疫付与したラマについては200倍、細胞免疫付与したラマについては1000倍)を、1×10個のWT Hek293細胞に室温で1時間前吸着させて(pre-adsorbed)、細胞バックグラウンド抗体を枯渇させた。次に、5×10個のHek293−mP2X7又は未トランスフェクトHek293細胞を、0.1mLの前吸着させた血清と共に4℃で0.5時間インキュベートし(内在化を防ぐため)、その後結合したHcAbをマウス抗ラマIgG2及びIgG3抗体の混合物によって検出し(Daley et al. 2005. Clin Diagn Lab Immunol 12: 380-386)、続いて抗マウスIgG−PE(Jackson ImmunoResearch)で染色した。通常ラマ抗体の結合は抗ラマIgG1を用いて検出した。mP2X7染色の対照として、ラットmAb Hano43が挙げられる(Adriouch et al. 2005, Cell Immun 236, 72-77)。Hek293−mP2X7によって免疫付与したラマのmP2X7特異的IgG血清力価は、高レベルのHek293細胞バックグラウンド結合のために求めることができなかったが、そのような高いバックグラウンドはDNA免疫付与したラマ407については観察されなかった。図3.4に、mP2X7(ラマ414及びラマ417)又はmP2X7及びhP2X7のカクテル(ラマ405及びラマ418)による遺伝子免疫付与後の通常抗体(パネルA)及びHcAb(パネルB)媒介性血清応答を示す。DNAワクチン接種のみの後、ラマ414及びラマ418の血清は、通常Ab媒介性応答について非トランスフェクトWT Hek293細胞に対し、mP2X7トランスフェクトHek293細胞の明らかなMCFシフトを示し、(実施例3.1及び実施例3.2において)全IgGによって検出された血清変換が確認された。細胞追加免疫によって、非トランスフェクトWT Hek293細胞に対し、mP2X7トランスフェクトHek293細胞の中程度(ラマ417)から明らかな(ラマ405、ラマ414及びラマ418)通常Ab媒介性MCFシフトが誘導された。中程度のHcAb応答がラマ414及びラマ418について細胞追加免疫前に検出され、これはラマ414については細胞追加免疫によって増強された(71日目及び67日目の血清と比較)。対照的に、ラマ405及びラマ417については検出可能な重鎖血清応答はあったとしてもほとんど見られなかった(図3.4−B)。要するに、5頭のうち2頭のラマにおいて、遺伝子免疫付与によって細胞追加免疫後にmP2X7に対する検出可能なHcAb応答がもたらされた。
【0540】
実施例3.4.ライブラリ構築
末梢血単核細胞を、Ficoll−Hypaqueを用いて、製造業者(Amersham Bioscience)の取扱説明書に従って血液試料から調製した。次に、これらの細胞及びLN生検材料から全RNAを抽出し、ナノボディをコードする遺伝子断片(実施例1.4)を増幅するRT−PCRの出発材料として使用した。5頭のDNA免疫付与したラマ405、407、414、417及び418については、DNA免疫付与後にPBL1及びPBL2から得たcDNAのみを「DNA」ライブラリの生成に使用したが、追加免疫後(PB)ライブラリの構築にはPBL3、PBL4及びLNに由来するcDNAを使用した。Hek293−mP2X7細胞によって免疫付与したラマについては、PBL1、PBL2及びLNから得たcDNAをライブラリの生成に使用した。HcAbレパートリーの可変ドメインに対応する断片を、LacZプロモーター、大腸菌ファージpIIIタンパク質コード配列、アンピシリン又はカルベニシリンに対する抵抗性遺伝子、マルチクローニング部位及びgene3リーダー配列を含有する、pUC119に由来するファージミドベクターにクローニングした。このベクターは、ナノボディコード配列とインフレームで、C末端c−mycタグ及び(HiS)タグをコードする。合計13個のファージライブラリを生成し、405−DNA、405−PB、407−DNA、407−PB、414−DNA、414−PB、417−DNA、417−PB、418−DNA、418−PB、413−細胞、415−細胞及び416−細胞と指定した。得られたファージライブラリのサイズは、0.12〜2.5×10個のクローンであり、挿入断片は83%〜100%であると推定された。ファージを標準的な方法に従って調製し、さらなる使用のために4℃で保管した。
【0541】
実施例3.5.ファージディスプレイを用いたmP2X7発現細胞に対するナノボディ選択
mP2X7プリン受容体をその未変性立体構造で認識するナノボディを同定するために、DNAワクチン接種後の動物から生成した10個全てのライブラリ、及び細胞免疫付与したラマから生成した3個のライブラリを用いて、mP2X7を発現する全細胞に対して選択を行った。種々の免疫付与法によって同定されたモノクローナルナノボディの特性を比較するため、全てのライブラリに対する選択を並行して行った。1回目の選択においては、mP2X7をトランスフェクトしたCHO細胞又は未トランスフェクトCHO細胞(1つのライブラリにつき5×10個)を、ブロッキングバッファー(PBS中10%ウシ胎児血清(FBS)及び2%Marvel)で4℃で30分間ブロッキングした。プレブロッキング工程として、全てのファージインプット(inputs)を、ブロッキングバッファー中、4℃で30分間インキュベートした。細胞をファージと共に4℃で低回転でインキュベートした後、遠沈して、ブロッキングバッファーで3回、PBSを用いてさらに2回洗浄した。細胞に結合したファージを、実施例1.4のようにトリプシンを用いて溶出させた。全てのファージアウトプットを対数的に増殖した大腸菌TG1細胞に感染させ、個々のナノボディクローンの解析のために寒天プレート(LB+Amp+2%グルコース)にプレーティングした。並行選択において非トランスフェクトCHO細胞から溶出したファージに対する、mP2X7−CHO細胞から溶出したファージの数の比率として濃縮係数を算出した。1回目の選択における3倍超の濃縮係数は413及び414のライブラリについてのみ観察することができ、414のPBライブラリについては200倍超の濃縮係数も示すものであった。1回目のmP2X7/CHOに対して選択されたファージアウトプットをレスキューし、mP2X7を内在的に発現するマウスYac−1細胞に対する2回目の選択に使用した。細胞バックグラウンドの変更を、無関連細胞バックグラウンドマーカーに結合するファージの選択を減少させるために行った。1回目と本質的に同じ手順に従った。この2回目の選択に利用可能な対照細胞はなかったため、1回目のアウトプットに対する2回目のアウトプットの比を取ることによって相対濃縮係数を算出した。DNAライブラリからは、407及び417についてのみ濃縮が検出された(比はそれぞれ6及び97)。PBレパートリーについては、5個のうち3個のライブラリが10を超える濃縮係数を示したが、407については中程度の3倍の濃縮が観察された。PBライブラリ414についてはさらなる濃縮は見られなかったが、これは1回目の選択中における既に高い抗原特異的ファージ濃縮によるものである可能性がある。細胞免疫付与したライブラリについては、413のみが中程度の3倍の濃縮を示した。各々の選択アウトプット(1回目及び2回目)の45個〜48個の個々のクローンを96ウェルフォーマットで培養し、ファージを続くスクリーニングのために実施例1に記載されるように調製した。
【0542】
実施例3.6.mP2X7特異的ナノボディに関するスクリーニング
初めに、P2X7特異性を、未トランスフェクトCHO細胞及びmP2X7トランスフェクトCHO細胞に対するファージELISAによって決定した。細胞を96ウェル培養プレートに、ペニシリン及びストレプトマイシン(それぞれ100U/ml及び100μg/ml)を添加した10%FBSを含有するDMEM培地0.2ml中、1ウェル当たり4×10個の細胞という密度で播種し、5%CO雰囲気において37℃で24時間インキュベートした。サブコンフルエントな細胞をPBSですすぎ、PBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。固定した細胞をPBSで3回洗浄し、PBS中の2%BSAで2時間ブロッキングした。ブロッキングに続いて、ファージを含有する10倍希釈の培養上清を添加し、1時間インキュベートした。細胞に結合したファージをマウス抗M13−HRP複合体(GE Healthcare、カタログ番号E2886)によって検出した。陽性対照としてラットmAb Hano43を使用した。全ての回の選択に由来する1506個のうち523個のスクリーニングした個々のクローンが、対照CHO細胞と比べてmP2X7−CHO細胞に対し、最低で2倍増大したELISAシグナルを示した。DNAライブラリ、PBライブラリ及び細胞ライブラリの一次スクリーニング後のヒット率を表3.1に示す。
【0543】
種々の免疫付与戦略(DNA、PB、細胞)後に生成したレパートリーに対する1回目及び2回目の選択アウトプットの平均ヒット率に基づくと、発見効率は「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー及び「細胞」レパートリーについて、それぞれ4%、40%及び11%(1回目のアウトプット)又は31%、78%及び60%(2回目のアウトプット)であると算出された(図3.5)。これにより、種々のレパートリーにおけるmP2X7に結合するナノボディの割合は、「DNA」よりも「PB」及び「細胞」について高いことが示された。cDNA免疫付与した動物については、2回の選択後の血清力価とヒット率との間の良好な相関が、ラマ405、ラマ418及びラマ414に由来するPBライブラリについて観察され、ヒット率は1回目の後に48%超、2回目の後に90%超という範囲であった。比較のために、細胞免疫付与に由来するライブラリで観察されたヒット率は、2回の選択後に40%〜73%の範囲であった。DNA免疫付与後にラマ407及びラマ417において検出可能な血清力価が存在しないにもかかわらず(図3.1)、対応するDNAライブラリのヒット率は、2回の選択後にそれぞれ25%及び87%であった。先にCXCR4について示されたように、このことは、DNAワクチン接種が、検出可能な標的特異的血清変換の非存在下であっても、mP2X7特異的ナノボディをファージディスプレイ技術によって同定するのに十分であることを示す。
【0544】
実施例3.7.mP2X7結合クローンの配列多様性
一次スクリーニングにおける全てのmP2X7結合因子の配列を解析した。523個のナノボディクローンのうち、84個の特有のクローンが同定され、これらは29個の異なる配列ファミリーにカテゴリー化することができた(図3.13)。同じファミリーに属するナノボディアミノ酸配列変異体の数を図3.6にまとめる。DNAワクチン接種(DNA+PB)及び細胞免疫付与の後、それぞれ15個及び14個のファミリーが同定され、DNA+細胞追加免疫免疫付与法後には3個、細胞免疫付与戦略後には4.7個のファミリーという平均多様性が得られた。DNAライブラリ及びPBライブラリの両方に由来するファミリー変異体、すなわちファミリー2、ファミリー15、ファミリー25及びファミリー5を含む4個のmP2X7ファミリーが同定された(図3.5)。これらのクローンのうちの2個、16D9(ファミリー15、ラマ414)及び6A11(ファミリー5、ラマ418)は、DNAレパートリー及びPBレパートリーの両方から同定された。しかしながら、CXCR4について先に示されたように、大半のファミリーはもっぱら「DNA」ライブラリ(15個のうち4個のファミリー)又は「PB」ライブラリ(15個のうち7個のファミリー)において同定された。このことは、遺伝子免疫付与に続く細胞追加免疫により、遺伝子免疫付与のみの後に生成したライブラリにおいては容易に同定されないナノボディレパートリーのin vivo成熟が引き起こされたことを示している(表3.1)。
【0545】
表3.1.mP2X7遺伝子及び細胞免疫付与の後のスクリーニングヒット率
【表29】
【0546】
実施例3.8.各々のファミリーの代表的なクローンの選択についてのmP2X7結合クローンの特異性及び順位の確認
全ての非冗長mP2X7特異的クローンを、1mL容96ディープウェルプレートでのPEの作製のために、実施例1に記載されるように96ウェルプレートにおいて再整列した(re-arrayed)。固定した細胞への結合についてのスクリーニングの後同定されたmP2X7特異的ナノボディが、未変性mP2X7にも結合することができることを確認するために、全ての非冗長クローンのPEを、mP2X7−Hek293細胞への直接結合について、検出にmycタグを用いるFACSにおいて解析した。10倍希釈のPEを0.5μgの抗myc FITC結合抗体(AbD Serotec、カタログ番号MCA2200F)(結合強度を増大させるために偽二価ナノボディを作製する)と共に、0.1mlのPBS/10%FCS中、4℃で45分間プレインキュベートした。PE希釈物を、Hek293−mP2X7と未トランスフェクト細胞との混合物(各々5×10個)と共に4℃で0.5時間インキュベートした後、細胞をすすぎ、細胞結合蛍光をフローサイトメトリーによって検出した。代替的には、10倍希釈のPEの抗myc FITC結合抗体による逐次染色を細胞とのインキュベーション後に行った。ナノボディファミリー1、2、4、5、25(DNA/PBライブラリに由来)並びにナノボディファミリー10及び11(細胞免疫付与ライブラリに由来)の成員については、明らかな結合活性の利点が見られ、これらのナノボディのエピトープが、偽二量体化ナノボディにとって依然として容易に接近可能であることが示された。ナノボディ2C4(ファミリー1)及びナノボディ5A1(ファミリー3)についてのプレインキュベーションの効果を図3.7に示す。各々のファミリーのうち、最良の結合因子をさらなる特性化のために選択した。ファミリー6、ファミリー26〜ファミリー29は、抗Myc抗体とのプレインキュベーション後であっても、mP2X7発現細胞への低い結合しか示さず、したがってさらなる特性化から除外された。DNAライブラリ及びPBライブラリの両方に由来する特有のクローンを有するファミリー(ファミリー2、ファミリー5、ファミリー15及びファミリー25)から、少なくとも2つの代表例を、DNA由来クローンとPB由来クローンとの比較を可能にするために選択した。この結果、それぞれのナノボディの効力及び親和性に対する細胞追加免疫の考え得る寄与の決定が可能となる。さらなる特性化のために選択したナノボディのパネルを図3.8及び表3.2に示す。
【0547】
表3.2.mP2X7特異的ナノボディの特性化
【表30】
【0548】
実施例3.9.mP2X7特異的ナノボディの作製及び精製
選択したナノボディのコード配列を、(実施例2.8に記載されるように)LacZプロモーター、カナマイシンに対する抵抗性遺伝子、マルチクローニング部位及びOmpAシグナルペプチド配列を含有するpUC119に由来する発現ベクターに再クローニングした。このベクターはナノボディコード配列とインフレームで、C末端c−mycタグ及び(His)6タグをコードするものであった。発現は大腸菌TG−1細胞中でc−myc、Hisタグ付きタンパク質として、250mLの培養容量で行った。1mM IPTGを添加することによって発現を誘導し、37℃で3時間継続させた。細胞培養物を遠心した後、ペレットを凍結融解し、dPBSに再懸濁することによってペリプラズム抽出物を調製した。これらの抽出物を、Histrap FF粗カラム(GE Healthcare,Uppsala,Sweden)を用いる固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)に関する出発材料として使用した。ナノボディ(登録商標)を250mM イミダゾールを用いてカラムから溶出させ、続いてdPBSで脱塩した。全てのナノボディの純度及び完全性をポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって検証し、一方でタグの存在を抗His抗体を検出に用いるウェスタンブロット法によって検証した。
【0549】
実施例3.10.いずれのマウスP2X7ナノボディもヒトP2X7又はP2X4に対して交差反応性でない
精製ナノボディの濃度依存性mP2X7結合を、FACSにおいて安定なmP2X7発現CHO細胞を用いて解析した。1.2uM〜6.7pMの範囲のナノボディの段階希釈物を調製し、10%FBS(FACSバッファー)を添加した0.1mlのdPBS中で2×10個の細胞と共に、4℃で0.5時間インキュベートした。次に、細胞を3回洗浄し、結合したナノボディをマウス抗Myc(Serotec、MCA2200)を使用し、その後抗マウスIgG−PE(JacksonImmunoResearch Laboratories、115−115−164)で染色することによって検出した。陽性対照として、ラットHano43抗体のハイブリドーマ上清を使用し、これを抗ラットIgG−PE(Jackson ImmunoResearch Laboratories、112−116−143)によって可視化した。結果を図3.8に示す。無関連対照ナノボディによって得られる最大MCF値は、314〜355(濃度は1.2μM〜6.7pM)の範囲であった。ナノボディ7D5(ファミリー14)、ナノボディ13A7(ファミリー22)及びナノボディ7E2(ファミリー3)については、EC50値はそれぞれ3nM、3.4nM及び4.3nMである。試験した他の全てのナノボディについては、S字状曲線は得られず、結果としてEC50値を求めることができなかった(図3.8)。注目すべきことに、最も強く結合するナノボディは全て、Hek293-P2X7細胞によって免疫付与した3頭のラマに由来していた。2C4、20A11及び13F6(600を超えるMCF値が検出されなかった)以外の全てのナノボディについて特異的結合を確認した。
【0550】
次に、24個全てのファミリーのナノボディの特異性を、P2X7のヒトオーソログを発現するHek293細胞、及びP2Xプリン受容体ファミリーの別の成員であるhP2X4を発現するCHO細胞に対する交差反応性結合の解析によって決定した(Moeller et la Purinergic Signal 3: 359-366, 2007)。各々のナノボディのうち、250ng(最終濃度147nM)を抗Myc−FITC結合抗体と共に、未トランスフェクトHek細胞を含まない以外は実施例3.7に記載されるのと同じ手順に従ってプレインキュベートした。陽性対照として抗体L4(hP2X7に特異的、Buell et al. Blood 15: 3521-3528)及びCR29(hP2X4に特異的、Moeller et la Purinergic Signal 3: 359-366, 2007)を使用し、一方で無関連ナノボディを陰性対照として加えた。いずれのナノボディも、hP2X7−Hek293又はhP2X4を発現するCHO細胞に結合しないことが見出された。一部のナノボディをhP2X7及びmP2X7の両方によって免疫付与したラマから単離した(ファミリー5、ファミリー7、ファミリー16ファミリー及びファミリー17)という事実にもかかわらず、これらのいずれもhP2X7に対し交差反応性ではなかった。
【0551】
実施例3.11.mP2X7受容体機能を増強又は遮断するナノボディの同定
24個の異なるファミリーからの全ての精製ナノボディを、mP2X7プリン受容体の機能的活性を調節するその能力について解析した。P2X7の活性化は、細胞外ATP(直接的活性化)又はNAD依存性ADPリボシル化(間接的活性化)によって起こり、カルシウム放出、ホスファチジルセリンの曝露、及びCD62Lのシェディングをもたらし、最終的にアポトーシスを引き起こす(Scheuplein et al. 2009, J. Immun. 182(5): 2898-908)。リガンド誘導性CD62Lシェディングを用いて、ナノボディがmP2X7機能を妨げることができるか否かを決定した。
【0552】
第1のアプローチにおいては、5×10個のYac−1細胞(mP2X7を内因的に発現する)を、単一濃度のナノボディ(5μg、最終濃度2μM)と共に、10%FBSを添加したRPMI中、室温で15分間インキュベートした。続いて、ATP(最終濃度100μM)又はNAD(最終濃度20μM)を添加することによってP2X7イオンチャネルを活性化させ、その後細胞懸濁液を37℃で20分間さらにインキュベートした。先の滴定実験から、これらのリガンド濃度によって最大のCD62L細胞外ドメイン切断が誘導されることが示された。細胞を洗浄し、細胞表面のCD62Lの存在を抗CD62L−PE結合抗体(BD Pharmingen、カタログ番号553151)を用いるFACSにおいて検出した。CD62L陽性染色細胞の割合を、P2X7機能調節の尺度として採用した。対照として、ナノボディなし又は無関連対照ナノボディを加えたが、これらはリガンド及び個々の実験に応じてCD62Lシェディングを細胞の80%〜98%でもたらした(すなわち細胞の2%〜20%はCD62L陽性のままである)。CD62L陽性のままである細胞の割合が、無関連ナノボディを用いて得られた値の3倍を超える場合、ナノボディをmP2X7ブロッカーと見なした。7個のファミリー(ファミリー5、ファミリー7、ファミリー11、ファミリー16、ファミリー19、ファミリー22及びファミリー23)を代表する10個のナノボディは、ATP及びNAD誘導性CD62Lシェディングの両方を遮断したが、ファミリー7の2個のナノボディは閾値のすぐ上であった。さらに、ファミリー16及びファミリー19に属する2個のナノボディは、NAD誘導性応答を遮断するが、ATP誘導性応答は遮断しないようであり、これらがmP2X7上のNAD依存性ADPリボシル化部位を選択的に標的とし得ることが示唆される(Adriouch et al. FASEB J 22: 861-869, 2008)。阻害能を確認するため、並びにATP及びNAD媒介性CD62Lシェディングアッセイにおけるナノボディの遮断効力を順位付けするために、これらの10個のナノボディのうち9個を2回の並行実験において段階希釈で試験した。代表例を図3.9に示す。両方のリガンド媒介性アッセイにおいて、全てのブロッカーについてP2X7機能の阻害を確認することができたが、IC50値を表3.2に示す。ファミリー19のナノボディ13B5について示唆されたNAD選択性(-selectively)は確認されなかった。ブロッキング効力に基づいて、ナノボディを以下の通りに順位付けすることができる:13A7>8G11、13G9、8G12>7H6>13B5、8F5>8C7、8E7。
【0553】
ナノボディが単独でmP2X7チャネルを活性化することができるかを検証するために、細胞を同様に2μMのナノボディと共に、その後のリガンド処理なしにインキュベートした。試験した一価ナノボディのいずれもmP2X7を直接活性化することができなかった。しかしながら、或る特定のナノボディについては、CD62L細胞外ドメインシェディングの増大がヌクレオチド処理後に観察され、これらのクローンがmP2X7のゲーティングを促進し得ることが示唆された。ATP及びNAD誘導性P2X7活性化の増強を、準最適リガンド濃度(ATPについては100μM未満、NADについては20μM未満)を用いて検証した。Yac−1細胞を固定濃度のナノボディ(2μM)で処理し、次いで漸増濃度のATP(1μM〜2700μM)又はNAD(1μM〜540μM)で刺激した。ATPの場合、3個のナノボディがCD62Lシェディングを以下の効力の順番で明らかに増強することが見出された:14D5>4B4=7D6(図3.10)。NADについては増強はあまり明白でなかった。
【0554】
遮断ナノボディも同様に同じアッセイにおいて試験した(固定濃度のナノボディ対漸増濃度のリガンドで)。試験したNADの最も高い濃度(540μM)では、停滞状態(60%前後の阻害)に達した13B5及び8F5を除く大半のブロッカーは、依然として最大限に切断を阻害していた(図3.10)。ATPを用いて得られた滴定曲線に基づいて、ブロッカーについて以下の順位を付けることができた;13A7、13G9、7H6>8G11、8G12>8F5、13B5(表3.2)。3個のファミリー5のナノボディを比較したところ、PBライブラリに由来するクローン(8G11及び8G12)の両方が、DNAライブラリに由来するクローン(8F5)よりも優れたブロッカーであった。
【0555】
受容体調節ナノボディ(ブロッカー及びエンハンサー)を、3つ全てのレパートリー「DNA」、「PB」又は「細胞」から同定したが、最も効力のあるブロッカーは「細胞」ライブラリから同定された13A7(ATP及びNADアッセイにおけるIC50は、それぞれ6nM及び11nM)であった。対照的に、最も効力のあるエンハンサーである14D5は、「DNA」ライブラリから同定された。
【0556】
実施例3.12.受容体調節効力の改善した多価ナノボディ
35アミノ酸GlySerリンカーによって連結した2つの同一ナノボディ配列の頭−尾遺伝子融合体からなる二価ナノボディ構築物を、機能的遮断ナノボディ13A7(ファミリー22、細胞)及び8G11(ファミリー5、PB)、並びに部分アゴニスト14D5(ファミリー17、DNA)から生成した。構築物を、特異的制限部位を含む種々のプライマーセットを用いた別個のPCR反応(一方はN末端ナノボディサブユニットに対し、一方はC末端ナノボディサブユニットに対する)によって作製した。LacZプロモーター、カナマイシンに対する抵抗性遺伝子及びOmpAシグナルペプチド配列を含有する、pUC119に由来する発現ベクターを使用した。シグナルペプチドのすぐ下流に、ナノボディ挿入のための多重クローニング部位、続いてDNA配列をコードする35Gly−Serリンカー、及び第2のナノボディ配列のクローニングのための第2の多重クローニング部位が存在する。このベクターは、得られるナノボディ−35Gly−Ser−ナノボディコード配列とインフレームで、C末端c−mycタグ及び(His)6タグをコードするものであった。ヌクレオチド配列の検証の後、3つ全ての二価mP2X7ナノボディ構築物を発現させ、精製した。大腸菌TG1細胞中で作製を行い、続いて実施例3.9に本質的に記載されるように、IMAC及び脱塩によってペリプラズム画分からHisタグを用いて精製した。
【0557】
mP2X7活性の増強における一価及び二価14D5の効力を、(実施例3.11に記載されるように)Yac−1細胞では細胞外ドメインシェディングが起こらない準最適ヌクレオチド濃度(ATPは33μM、NADは1.5μM)で、CD62L細胞外ドメインシェディングの増強を測定することによって比較した。一価14D5に対する二価14D5の効力の増大は、ATPによって誘導されたシェディングについてはおよそ220倍(EC50は22.6nMに対して0.1nM)、NADによって誘導されたシェディングについては40倍(EC50は4.1nMに対して0.06nM)であった。リガンドの非存在下では、一価14D5も二価14D5もP2X7のゲーティングを誘導することができなかった。
【0558】
図3.11に示されるように、2つの遮断ナノボディ13A7及び8G11の効力を、100μM ATP及び20μM NADのそれぞれで求めた。二価ナノボディ(Bivalents)13A7及び8G11は、ATP及びNADの両方についてナノモル以下の範囲の効力を有していた。一価13A7に対する二価13A7の効力の増大は中程度でしかなく、NAD誘導性シェディングの場合は23倍の増大、ATP誘導性シェディングの場合は9倍の増大であった(二価ナノボディのIC50はATPについては0.1nM、NADについては0.3nM)。8G11については、一価から二価への効力の増大ははるかに強く、146倍(NAD)及び84倍(ATP)(二価ナノボディのIC50はATPについては0.2nM、NADについては0.52nM)であった。
【0559】
実施例3.13.mP2X7三量体上の異なるエピトープに対するナノボディ地図
近年、ゼブラフィッシュプリン受容体P2X4の結晶構造が公表された(Kawate et al. 2009. Nature 460: 592-598)。利用可能なP2X4構造(pdb3I5D及びpdb3H9V、分解能はそれぞれ3.5Å及び3.1Å)に基づき、ホモロジーモデリングソフトウェア(Discovery Studio(Accelrys)に内蔵されたModeler)を用いてmP2X7のモデルを構築した。ゼブラフィッシュP2X4とmP2X7との配列同一性は、細胞外領域では49%である。まず、マウスP2X7の配列を既知のP2X4構造の配列とアライメントした。配列アライメントでは、2つの配列間のギャップ及び保存されたジスルフィド結合の適切な位置決めを行うことに注意する。次に、既知のP2X4構造の3D座標を使用して、未知のmP2X7の3D座標を予測した。確率密度関数(pdf)は幾何学的特徴の制約を表し、3Dモデルを評価するために使用される。mP2X7 WTと同様のレベルの細胞外mP2X7発現を示すmP2X7アルギニン突然変異体の既存のパネルのうち、7個の突然変異体を選択した(Adriouch et al. 2008, FASEB J 22: 861-869、Schwarzet al. Purinergic Signal 5: 151-161, 2009)。生成したモデルによると、これら7個の突然変異体は、mP2X7分子上に構造的に分散した6つの領域を表す;突然変異体R125A(部位I;NAD媒介性リボシル化に重要なR125残基)、R294A(部位I;ATP結合に重要な溝に位置する残基)、R206A(部位II;2つのmP2X7相互作用単量体の界面近くに位置する機能獲得型突然変異体);R151A(部位III;抗mP2X7 mAb Hano44との結合に重要な残基;Adriouch et al. 2008, FASEB J 22: 861-869);R178A(部位IV);R230A(部位V);R53K(部位VI;2つのmP2X7相互作用単量体の界面の膜貫通ドメイン近くに位置する残基)。ナノボディとmP2X7との結合がこれらの置換によって影響され得るか否かを決定するために、種々のファミリーを代表する24個の精製ナノボディを、非トランスフェクトHek293細胞、及びWT又は突然変異mP2X7受容体で一時的にトランスフェクトしたHek293細胞との結合について評価した。フローサイトメトリーアッセイについては、ナノボディの検出は抗Myc、その後ヤギ抗マウス−PE複合体によって行ったが、P2X7発現密度の推定はラットモノクローナルHano43、その後二次抗ラット−PE複合体での染色によって行った。Hek293細胞へのバックグラウンド結合の減算による、種々の一時的トランスフェクタント(WT mP2X7及び7個の突然変異体)に対する発現密度の正規化の後、1μMでの種々のナノボディの残存結合を算出した。
【0560】
90%を超える結合の減少は、以下の6個のナノボディのみで検出された(全て突然変異体R151Aに対する結合):ナノボディ7H6(細胞、415、ファミリー11)、7D5(細胞、415、ファミリー14)、6B7(PB、405、ファミリー16)、7E2(細胞、413、ファミリー3)、8G11(PB、418、ファミリー5)、8G12(PB、418、ファミリー5)。これによって、他の全てのナノボディが、それらが別個の領域に結合すること、又はこれらのナノボディがそのフットプリント内でArg残基に結合しないことから、結合に関してArg151に決定的には依存しないことが推論される。予想された通り、mP2X7特異的ラット抗体Hano44は、R151A突然変異体に対していかなる結合も示さなかった。
【0561】
実施例3.14.「DNA」レパートリーの平均効力は、「PB」レパートリーと同程度であるが、「細胞」レパートリーよりも低い
4個のファミリーのみが「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリの両方から同定された。実施例2.10のように、特定のナノボディファミリー内の各々の変異体について、最も近縁なラマV生殖細胞系列配列(FR1〜FR3を含む)に対するin vivo成熟をスコア付けし、ナノボディ変異体の効力を比較した(表3.3)。ファミリー2、ファミリー5、ファミリー15及びファミリー25について、「PB」由来ナノボディは親V遺伝子生殖細胞系列配列に対して、平均して19.5個、16.5個、10個及び14個のアミノ酸突然変異を示したが、「DNA」ライブラリに由来するナノボディはそれぞれ19.5個、17個、10.3個及び15個であり、「DNA」由来ナノボディと「PB」由来ナノボディとの等しい成熟が示される。DNA及びPBに由来するファミリー成員のCDR3領域の配列を比較すると、DNA配列に対するPBにおける多様性の増大がファミリー5及びファミリー25のみで観察される。
【0562】
表3.3.親V生殖細胞系列配列に対するin vivo成熟ナノボディの遺伝的距離
【表31】

欠失又は付加を含むいかなる変化も突然変異の数を算出する上で考慮される。
【0563】
「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー及び「細胞」レパートリーにそれぞれ由来する20個、37個及び29個のナノボディ変異体の平均吸着比(ELISA)は、それぞれ13、13及び26であり(図3.12)、この標的に対する「細胞」由来ナノボディの優位性が示される。これらの観察結果は、最も効力のある結合因子(13A7、7D5及び7E2、実施例3.10)及び最も効力のあるブロッカー(13A7)の両方が「細胞」レパートリーから同定されたことから、モノクローナルナノボディレベルでも示される。しかしながら、個々のファミリーを考える場合、ファミリー5については(他ではない)、DNAレパートリーに対するPBの平均効力の明らかな増大が観察される(吸着比は18に対して23、FACSによる平均蛍光強度は66に対して95)。このことから、このファミリーにおいては細胞追加免疫の結果として親和性成熟が起こったことが示唆される。他の3つのファミリーでは、細胞追加免疫によって効力は改善しなかった。しかしながら、機能的ナノボディの効力の順位では、最も効力のあるエンハンサー14D5はDNAレパートリーに由来するが、二番目に良好なブロッカーはPBレパートリーのファミリー5に由来するものであった。どちらのファミリーも、DNA免疫付与後に最も強いHcAb媒介性血清応答を示すラマである(図3.4B)ラマ418から同定された。
【0564】
実施例3.15.標的カクテルによる遺伝子免疫付与は個々の標的の各々に特異的なナノボディの同定を可能にする
ラマ等の非近交系動物の免疫付与によって、個々の動物間で非常に多様な標的特異的体液性応答の規模(magnitudes)が生じた。この効果は、GPCR及びイオンチャネル等といった複数の膜貫通ドメインを含有する低免疫原性の細胞表面発現受容体による遺伝子免疫付与後にさらに顕著である(実施例2.4及び実施例3.1)。検出可能なHcAb媒介性標的特異的応答は発見効率を少なくとも増大させることが予想される。したがって、任意の種類の標的カクテル(細胞結合分子及び非細胞結合分子)による非近交系動物の遺伝子免疫付与は有利であり得る。動物の数を増加させることによって、可用性に負担をかけることなく、より多くの(大規模(high magnitude)の)標的レスポンダー(responders)を同定する可能性が増大する。カクテルDNAワクチン接種の一例として、本発明者らは2頭のラマ(405及び418)を、マウス及びヒト起源の2つのイオンチャネルP2X7によって実施例3.2に記載されるように免疫付与した。マウス及びヒトのP2X7間のアミノ酸同一性は十分に異なり(80.5%の配列同一性)、同定された全てのマウスP2X7ナノボディはヒトP2X7との交差反応性を欠いている(実施例3.10)ため、マウス及びヒトのP2X7を、カクテル遺伝子免疫付与アプローチを実証するための関連標的例として利用することができる。
【0565】
hP2X7特異的ナノボディを同定するために、実施例3に本質的に記載されるように、細胞に基づいた選択を行い、hP2X7特異的ナノボディを濃縮した。選択はラマ405及びラマ418の各々に由来するプールした「DNA」(PBL1+PBL2)及び「PB」(PBL2+PBL3+LN)ライブラリに対し、全ての多様性を維持し、ライブラリを動物毎に分けて行った。安定なhP2X7トランスフェクトYAC−1細胞及びhP2X7−Art2.2トランスフェクトCHO細胞を、それぞれ1回目及び2回目の選択に使用した。2回目の選択の後、濃縮係数を非トランスフェクトCHO細胞に対する、hP2X7トランスフェクト細胞から溶出したファージの数の比として算出した。濃縮係数は、ラマ405及びラマ418に由来するライブラリについては、それぞれ15倍及び7倍であり、hP2X7ナノボディの存在が示され、両方のイオンチャネルに対するナノボディの同定の成功が示唆された。
【0566】
hP2X7選択後のファージアウトプットによる大腸菌TG1の感染の後、個々のクローンを取り出し、ペリプラズム抽出物を実施例1.4のように調製した。このペリプラズム抽出物を使用して、マウスP2X7に対して行った場合(実施例3.5)と同様に、フローサイトメトリーによってヒトP2X7に対する特異性を決定する。ペリプラズム抽出物は、hP2X7トランスフェクト細胞株(CHO又はHEK293等)では明らかな染色を示すが、マウスP2X7をトランスフェクトした同一の親細胞株、又は同じ非トランスフェクトWT細胞株ではバックグラウンドを超えず、hP2X7に特異的であると考えられる。hP2X7特異性は、EC50を決定するのと同じ方法で精製ナノボディを用いて用量依存的に確認される。
【0567】
実施例4.1.ヘリオス遺伝子銃を用いたラマの遺伝子免疫付与に続く、体液性CXCR7特異的血清力価の誘導
遺伝子免疫付与後に標的特異的ナノボディを同定する第2のGPCR例として、ケモカイン受容体CXCR7を選択した。ヒトCXCR7をコードするcDNAをpVAX1にクローニングし、プラスミドDNAを実施例2.1に記載されるように精製した。トランスフェクション後、実施例2.2に記載されるものと同様の検出法に従って、親WT細胞に対するCXCR7トランスフェクトWT細胞の染色差によって確認したところ、pVAX1−CXCR7構築物は細胞表面で未変性CXCR7の発現を示した(データは図示せず)。
【0568】
4頭のラマ(391、395、396及び397)を、実施例2.4に記載されるように皮内ジェット注射によって免疫付与した。単回の2×10個のCAKI/hCXCR7細胞の注射を4回目のDNA免疫付与後42日目〜56日目に投与した。3頭のラマ(385、387及び404)を、2×10個の安定にトランスフェクトしたCXCR7/HEK293細胞を14日間隔で4回注射することによって免疫付与した。CXCR7特異的血清IgG力価を、DNAワクチン接種及び単回細胞追加免疫後の免疫前血清試料及び免疫血清試料を用いて、実施例2.4と同様に求めた。7頭のラマのいずれもその2つの免疫付与計画の後、CXCR7特異的体液性応答を示さなかった。
【0569】
別の免疫付与実験において、4頭のラマ(434、439、441及び444)を、ヘリオス遺伝子銃を用いて、実施例3に記載されるように遺伝子免疫付与した。要するに、4回のDNA投与を2週間間隔で適用し(1回の投与当たり24ショット)、その後CAKIトランスフェクトCXCR7細胞(2E7個の細胞)の単回細胞追加免疫を行った。4回目のDNA投与後8日目の免疫前血液試料、及び単回細胞追加免疫後8日目の最後の血液試料を各々のラマから回収し、標的特異的血清力価を実施例2.4に記載されるようにFACSによって求めた。免疫付与した4頭のラマのうち、1頭のラマ(444)のみが、免疫前レベルと比べてCXCR7トランスフェクトHEK293細胞で、「DNA」及び細胞追加免疫後血清試料について中程度ではあるが一貫して増大したMCFを試験した全ての希釈率で示した(図4.1)。並行して、4頭のラマ(435、436、437、440)を、CXCR7トランスフェクトCAKI細胞を2週間間隔で4回細胞注射すること(1回の注射につき2×10個の細胞)によって免疫付与した。ラマ444とは対照的に、後者の4頭のラマのいずれも検出可能なCXCR7血清力価を示さなかった。
【0570】
実施例4.2.検出可能なCXCR7特異的血清変換の非存在下での標的特異的ナノボディの同定
ラマ391、ラマ395、ラマ396及びラマ397の各々について、遺伝子免疫付与及び細胞追加免疫の後に回収した免疫組織からライブラリを構築した(それぞれDNAレパートリー及びPBレパートリー)。3個のさらなるライブラリを、細胞免疫付与したラマ385、ラマ387及びラマ404から構築した。ライブラリの概要を表4.1にまとめる。11個全てのライブラリについて、ファージディスプレイ選択を10(1回目及び2回目の選択)及び1(2回目の選択)単位のCXCR7膜小胞に対し、先に記載されるように(実施例2.6)行った。2回目の選択アウトプットの全てから、853個のクローンがスクリーニングされた(1個のライブラリにつき31個〜155個の個々のクローン)。結果を表4.1にまとめる。CXCR7特異性を、2単位のCXCR7膜小胞に対し、1mLの培養物から調製したファージ上清の10倍希釈物を適用して、ファージELISAによって求めた。非トランスフェクト対照膜小胞と比べて、hCXCR7膜小胞について最低で2倍増大したELISAシグナルを示す234個のナノボディを、CXCR7特異的であると見なした。動物及びレパートリーについての2回目のヒット率を表4.1にまとめる(4%〜61%の範囲)。種々の免疫付与戦略後の2回目の選択アウトプットに対する平均ヒット率に基づくと、発見効率は「DNA」レパートリー、「PB」レパートリー及び「細胞」レパートリーについて、それぞれ29%、28%及び26%であると算出された(図4.2)。CXCR7に対する検出可能なHcAb力価の非存在下であっても、標的特異的ナノボディが全ての免疫付与戦略(DNA、PB、細胞)から同定された。234個全てのCXCR7特異的ナノボディをシークエンシングし、重複するナノボディ(同一のアミノ酸配列)を除外した。これにより、46個の異なるナノボディB細胞系列に属する78個の特有の配列が同定された(表4.1)。ファミリー内で同定された変異体(最低で1アミノ酸残基差)の数は1〜12の範囲であった。1頭のラマにつき同定されたCXCR7特異的ナノボディファミリーの平均数はそれぞれ、細胞免疫付与後に5.3(385、387、404)、DNA免疫付与によって7.5(DNA+細胞追加免疫;391、395、396、397)であり、この標的について、遺伝子免疫付与(DNA+PB)が細胞免疫付与によって得られた多様性と比べて、より高いナノボディファミリー多様性をもたらしたことが示される。
【0571】
表4.1.CXCR7特異的ナノボディファミリーの発見概要
【表32】
【0572】
受容体機能調節ナノボディを同定するために、SDF−1リガンド置換アッセイを、CXCR7/HEK293膜抽出物を用いて、CXCR4について記載される場合(実施例2.7)と同様に行った。CXCR7/HEK293膜抽出物への残存[125I]−SDF−1結合の明らかな減少を示すナノボディを、リガンド競合相手であると見なした。リガンドディスプレーサであるとスコア付けされたナノボディファミリーの数を表4.1に示すが、リガンド競合ナノボディが免疫付与戦略(レパートリーDNA、レパートリーPB及びレパートリー細胞によって表される)に関係なく同定されることが示される。
【0573】
実施例4.3.遺伝子免疫付与後の細胞追加免疫によって、異なるナノボディレパートリーが生成される
ラマ391、ラマ395、ラマ396及びラマ397から、(シークエンシングした234個のうち)55個のナノボディ配列変異体からなる29個のCXCR7特異的ナノボディファミリーが同定された。実施例2(CXCR4)及び実施例3(P2X7)での所見とは対照的に、最低で1個の同一の変異体を含有する2個のファミリーを、ラマ396のDNAレパートリー及びPBレパートリーの両方において同定することができた。これら29個のファミリーのうち2個についてしか(全ファミリー多様性の7%)、同じファミリーに属するナノボディ変異体が「DNA」ライブラリ及び「PB」ライブラリから同定されず(表4.1及び図4.3)、この場合もDNAワクチン接種(DNA)又は細胞追加免疫(PB)後のナノボディレパートリーが異なることが示唆される。遺伝子免疫付与のみによって異なるナノボディレパートリーがもたらされ、レパートリーの一部が細胞追加免疫後に同定されないか、又は失われることが示される。
図1.1A】
図1.1B】
図1.1C】
図1.2】
図1.3】
図1.4】
図2.1】
図2.2A】
図2.2B】
図2.3】
図2.4】
図2.5A】
図2.5B】
図3.1】
図3.2】
図3.3】
図3.4A】
図3.4B】
図3.5】
図3.6】
図3.7】
図3.8】
図3.9】
図3.10A】
図3.10C】
図3.11A】
図3.11C】
図3.12】
図3.13A】
図3.13B】
図4.1】
図4.2】
図4.3】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]