(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非対称的なカムプロファイルが、前記ポンピングエレメント(314a、314b)の前記第1のポンピングストロークを駆動するための第1のローブ(352)と、前記ポンピングエレメント(314a、314b)の前記第2のポンピングストロークを駆動するための第2のローブ(354)とを含み、前記第1のポンピングストロークが前記第2のポンピングストロークよりも長くなるように、前記第1のローブ(352)が、前記第2のローブ(354)よりも高いカムリフト量を有している、請求項1に記載の燃料ポンプ装置。
前記ポンプユニットまたは各ポンプユニット(310a、310b)の前記ポンピングチャンバー(312a、312b)を、前記燃料噴射システムのコモンレール(320)に接続するための1つまたは複数の一方向弁(322a、322b)をさらに含む、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料ポンプ装置。
前記燃料送達要求を満たすために、前記第1のポンピングストロークの一部だけの間に、および/または、前記第2のポンピングストロークの一部だけの間に、前記燃料ポンプ装置から前記コモンレールへ燃料を送達するステップを含む、請求項5に記載の方法。
前記燃料送達要求を満たすために、前記第1のポンピングストロークだけの間に、または、前記第2のポンピングストロークだけの間に、前記燃料ポンプ装置から前記コモンレールへ燃料を送達するステップを含む、請求項5または請求項6に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
高圧燃料噴射システムでは、1つまたは複数のカム駆動されるポンプユニットを使用し、燃料インジェクターへ送達するために燃料を加圧するということが知られている。典型的に、複数のポンプユニットが設けられており、ポンピング力が、複数のユニットに分配されるようになっている。それぞれのポンプユニットは、ポンピングチャンバーおよびポンピングプランジャーを含み、ポンピングプランジャーは、関連のカムによって駆動され、ポンピングチャンバーの中を往復運動する。ポンピングプランジャーは、プランジャーの充填ストロークまたはリターンストロークのときに、低圧燃料供給源からポンピングチャンバーの中へ燃料を引き込むように作用し、また、プランジャーのポンピングストロークまたは前進ストロークの間に、燃料インジェクターへ送達するために、チャンバーの中の燃料を加圧するように作用する。
【0003】
それぞれのポンプユニットの構成要素は、「ユニットインジェクター」と通常称される構成で、燃料インジェクターと一体化することが可能である。代替的に、ポンプ構成要素は、いわゆる「ユニットポンプ」の中に、インジェクターとは分離して収容することが可能である。いずれの場合においても、加圧燃料は、ポンプユニットからそれぞれのインジェクターへ直接的に送達することが可能である。より一般的に、燃料は、ポンプから、燃料噴射システムのアキュムレーター体積またはコモンレールへ送達され、それに、インジェクターのそれぞれが接続されている。
【0004】
使用時に、燃料インジェクターによってエンジンへ送達される燃料体積は、エンジン動作条件に依存し、とりわけ、エンジン負荷および速度、ならびに、スロットル用途に応答して要求されるトルクに依存する。噴射される燃料量は、これらの条件に応答して、噴射圧力および噴射時間の両方を調節することによって、エンジンの電子制御ユニットによって制御される。噴射圧力は、たとえば、アイドル状態における数百バールの圧力から、最大負荷における最大3000バール以上までの範囲にあることが可能である。したがって、エンジン動作の間の任意の所与の時間において、必要とされる燃料の体積が、必要とされる圧力で、噴射のために利用可能となるように、コモンレールの中の燃料圧力を調整することが必要である。
【0005】
添付の図面の
図1は、2つのユニットポンプ10を有する公知の燃料ポンプ装置を含む燃料噴射システムの一部の概略図である。それぞれのポンプは、ポンピングチャンバー12およびポンピングプランジャー14を含む。ポンピングプランジャー14は、カムシャフト18のそれぞれのカム16によって駆動される。それぞれのポンプ10のポンピングチャンバー12は、燃料が燃料レール20に向かう方向だけに流れることを可能にする一方向弁22によって、燃料レール20に連通している。燃料レール20は、複数の燃料インジェクター(図示せず)を供給する。
【0006】
それぞれのポンプ10のポンピングチャンバー12は、電子的に切り替え可能な計量バルブ(metering valve)26によって、低圧燃料の供給源24に接続されている。計量バルブ26は、以下のように、エンジンの電子制御ユニット(図示せず)によって制御され、燃料レール20の中の燃料圧力を調整することが可能である。
【0007】
充填ストロークの間に、ポンプ10のポンピングプランジャー14は、ポンピングチャンバー12の容積を増加させるように移動する。ポンプ10に関連付けされている計量バルブ26は、充填ストロークの間に開位置に保持され、燃料が低圧供給源24からポンピングチャンバー12の中へ引き込まれることを可能にする。
【0008】
プランジャー14がその移動の限界値となるときに、および、ポンピングチャンバー12の容積が最大値となるときに、充填ストロークは終了する。次いで、プランジャー14のポンピングストロークが始まり、プランジャー14がチャンバー12の中へ移動するにつれて、ポンピングチャンバー12の容積は減少する。ポンピングストロークの間に、計量バルブ26が閉じ、燃料がポンピングチャンバー12から低圧供給源24へ流れて戻ることを防止する。
【0009】
ポンピングストロークが継続するにつれて、ポンピングチャンバー12の中の圧力がレール20の中の圧力を超えるときに、一方向弁22が開き、燃料がポンピングチャンバー12からレール20へ圧力下で流れることを可能にするまで、ポンピングチャンバー12の中の燃料の圧力が上昇する。
【0010】
プランジャー14のポンピングストロークのより大きい部分またはより小さい部分にわたって計量バルブ26を閉じることによって、燃料レール20の中の燃料の圧力を調整することが可能であり、それによって、レールに到達する加圧燃料の量を制御する。燃料レール20の中の燃料圧力が、センサー(図示せず)によって監視され、センサーは、圧力信号を電子制御ユニットへ出力する。電子制御ユニットは、実際のレール圧力を所望のレール圧力と比較し、所望のレール圧力は、エンジンの現在の要求および予測される要求に従って計算される。次いで、電子制御ユニットは、所望のレール圧力までレール圧力を上昇させるために計量バルブ26が閉じられるべきポンピングストロークの割合を計算する。計量バルブ26は、ポンピングストロークの開始時に開けられたままにすることが可能であり、次いで、ポンピングストロークの間の適当な時間に閉じられるか、または、代替的に、計量バルブ26は、ポンピングストロークの開始時に、または、ポンピングストロークの開始時の辺りに、閉じることが可能であり、ポンピングストロークの終了の前に開けることが可能である。計量バルブ26が開くと、ポンピングチャンバー12の中に残っている加圧燃料が、低圧供給源24へ流出して戻る。したがって、ポンピングチャンバー12の中の燃料圧力が降下し、燃料レール20の中への燃料のさらなる通過を防止するために一方向弁22が閉じるようになっている。
【0011】
最大可能レール圧力が必要とされるときには、プランジャー14のポンピングストロークの実質的に全体にわたって、計量バルブ26を閉じたままにすることが可能である。これは、ポンプ10の動作の最も効率的なモードである。その理由は、低圧供給源24へ戻される高圧燃料の体積に対するレール20に到達する高圧燃料の体積の比率が最大になるからである。そのうえ、カム16の上昇の速度が最も低くなるときに弁が閉じるので、この動作のモードにおいて、騒音、振動、および摩耗が最小化される。より低いレール圧力が望まれるときには、ポンプ10の動作の効率は減少する。その理由は、計量バルブ26が開くときに、低圧供給源24へ戻される高圧燃料の体積に対するレール20に到達する高圧燃料の体積の比率が低くなるからである。また、ポンプ10の動作に関連付けされる騒音、振動、および摩耗も増加する。
【0012】
燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置の別の例が、本出願人の許可された欧州特許第EP1921307号に説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対して、とりわけ、比較的に低い噴射圧力で動作しているときに、改善された効率を提供するが、また、比較的に高い噴射圧力での噴射のために、燃料を提供することもできる、燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様から見ると、本発明は、燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置に属する。燃料ポンプ装置は、1つまたは複数のカム駆動されるポンプユニットを含む。前記ポンプユニット、またはそれぞれのポンプユニットは、ポンピングチャンバーと、ポンピングチャンバーの中の燃料を加圧するためのポンピングエレメントとを含む。前記ポンピングエレメント、またはそれぞれのポンピングエレメントは、燃料ポンプ装置のそれぞれのカムによって駆動され、カムの回転毎に少なくとも1つのポンピングストロークを生じさせる。第1のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料体積が、第2のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料体積よりも大きくなるように、燃料ポンプ装置が構成されている。
【0015】
第1および第2のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料体積は異なるので、先行技術の装置(先行技術の装置では、ポンプのそれぞれが、ポンピングストローク毎に同じ燃料体積変位を有する)よりも効率的な方式で、ポンプ装置を動作させることが可能である。本発明は、ポンピングストローク全体にわたって、小さい体積の燃料がポンプ送りされるか、または、大きい体積の燃料がポンプ送りされるかのいずれかを選択することを可能にし、したがって、騒音および振動を低減させながら、および、高いポンピング効率を維持しながら、レール圧力のより優れた制御を可能にする。
【0016】
とりわけ、低い噴射率において、高圧燃料に対する要求が比較的に低いときには、より小さい体積の第2のポンピングストロークだけを使用して、ポンプ装置から燃料を送達することが可能である。このように、送達に必要とされる燃料だけが加圧され、加圧燃料の廃棄を回避することが可能である。そのうえ、騒音および振動が最小化される。より高い噴射率において、高圧燃料に対する要求が比較的に高いときには、より大きい体積の第1のポンピングストロークを使用して、燃料を送達することが可能である。一般的に、燃料は、第1のポンピングストロークの一部もしくはすべてから、および/または、第2のポンピングストロークの一部もしくはすべてから送達され、ポンプ装置の効率を最適化することが可能であり、また、ポンプ装置によって出力される燃料の圧力の変動を最適化することが可能である。
【0017】
一実施形態では、ポンプ装置は、第1のカム駆動されるポンプユニットと、第2のカム駆動されるポンプユニットとを含み、第1のポンピングストロークは、第1のポンプユニットのポンピングストロークであり、第2のポンピングストロークは、第2のポンプユニットのポンピングストロークである。第1および第2のポンプユニットからの出力を独立して制御することによって、第1のより大きい体積のポンピングストロークおよび第2のより小さい体積のポンピングストロークの適当な組合せが選択され、ポンプ装置の効率を最適化することが可能である。
【0018】
ポンプ装置は、第1のポンプユニットのポンピングエレメントを駆動するための第1のカムと、第2のポンプユニットのポンピングエレメントを駆動するための第2のカムとを含むことが可能である。
【0019】
本発明の一実施形態では、第1のカムは、第2のカムとは異なるプロファイルを有することが可能であり、第1のポンピングストロークが、第2のポンピングストロークよりも長くなっている。換言すれば、第1のカムのカムリフト量を、第2のカムのカムリフト量よりも大きくすることが可能である。このように、第1のポンプの中で起こる第1のポンピングストロークによって変位させられる体積は、第2のポンプの中で起こる第2のポンピングストロークによって変位させられる体積よりも大きい。この実施形態では、第1のポンプユニットのポンピングエレメントは、好ましくは、第2のポンプユニットのポンピングエレメントと同じ断面積を有している。
【0020】
第1および第2のポンプユニットを有する別の実施形態では、第1のポンプユニットのポンピングエレメントは、第2のポンプユニットのポンピングエレメントよりも、断面積が大きい。このように、第1および第2のポンプユニットのそれぞれのポンピングエレメントが同じ距離にわたり移動することは、第2のポンプユニットの中よりも、第1のポンプユニットの中の燃料の変位が大きくなることを結果として生じさせる。この実施形態では、第1のポンプユニットのポンピングエレメントを駆動するための第1のカムと、第2のポンプユニットのポンピングエレメントを駆動するための第2のカムとが設けられているときには、第1および第2のカムは、同じプロファイルを有することが可能であり、ポンピングエレメントが、それぞれのポンプユニットの中で同じストローク長さを有するようになっている。
【0021】
1つまたは複数のポンプユニットが設けられているさらなる実施形態では、カム、または、カムのうちの少なくとも1つが、非対称的なカムプロファイルを有し、カムの1回転の間に、第1および第2のポンピングストロークにおいて、それぞれのポンプユニットのポンピングエレメントを駆動する。たとえば、非対称的なカムプロファイルは、ポンピングエレメントの第1のポンピングストロークを駆動するための第1のローブと、ポンピングエレメントの第2のポンピングストロークを駆動するための第2のローブとを含むことが可能である。第1のローブは、好ましくは、第2のローブよりも高いカムリフト量を有しており、第1のポンピングストロークが、第2のポンピングストロークよりも長くなるようになっている。このように、前記ポンプユニット、またはそれぞれのポンプユニットは、第1のポンピングストロークまたは第2のポンピングストロークの間にそれぞれ燃料を加圧および出力することによって、比較的に大きい体積の加圧燃料、または比較的に小さい体積の加圧燃料のいずれかを、最大効率で供給することができる。
【0022】
好ましくは、燃料ポンプ装置は、前記ポンプユニットまたはそれぞれのポンプユニットのポンピングチャンバーを低圧燃料の供給源に切り替え可能に接続するための1つまたは複数の計量バルブを含む。燃料ポンプ装置は、開位置と閉位置との間で、前記計量バルブまたはそれぞれの計量バルブを切り替えるための制御装置をさらに含むことが可能であり、開位置では、それぞれのポンピングチャンバーが、低圧燃料の供給源に流体連通しており、閉位置では、それぞれのポンピングチャンバーが、低圧燃料の供給源から分離され、それぞれのポンピングチャンバーの中の燃料の加圧を生じさせ、ポンピング装置から加圧燃料を出力する。制御装置は、燃料送達要求を計算するように、および、前記計量バルブまたはそれぞれの計量バルブを切り替えるように配置することが可能であり、ポンピング装置が、燃料送達要求を満たすように燃料を出力するようになっている。
【0023】
燃料ポンプ装置は、前記ポンプユニットまたはそれぞれのポンプユニットのポンピングチャンバーを、燃料噴射システムのコモンレールに接続するための1つまたは複数の一方向弁をさらに含むことが可能である。
【0024】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による燃料ポンプ装置を含む燃料噴射システムの中のコモンレールへ燃料を送達するための方法に属する。方法は、燃料送達要求を計算するステップと、燃料送達要求を満たすために、第1のポンピングストロークおよび/または第2のポンピングストロークの間に、燃料ポンプ装置からコモンレールへ燃料を送達するステップとを含む。
【0025】
方法は、燃料送達要求を満たすために、第1のポンピングストロークの一部だけの間に、および/または、第2のポンピングストロークの一部だけの間に、燃料ポンプ装置からコモンレールへ燃料を送達するステップを含むことが可能である。同様に、方法は、燃料送達要求を満たすために、第1のポンピングストロークだけの間に、または、第2のポンピングストロークだけの間に、燃料ポンプ装置からコモンレールへ燃料を送達するステップを含むことが可能である。
【0026】
本発明の一実施形態は、コモンレール燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置を含み、燃料ポンプ装置は、第1および第2のカム駆動されるポンプユニットを含み、それぞれのポンプユニットが、ポンピングチャンバーと、ポンピングチャンバーの中の燃料を加圧するためのポンピングエレメントとを含み、また、燃料ポンプ装置は、それぞれのポンピングストロークにおいて、第1および第2のポンプユニットのそれぞれのポンピングプランジャーを駆動するための第1および第2のカムを含む。第1のポンプユニットのポンピングストロークは、第2のポンプユニットのポンピングストロークよりも大きい体積の燃料を変位させる。
【0027】
本発明の別の実施形態は、コモンレール燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置を含み、燃料ポンプ装置は、カム駆動されるポンプユニットを含み、カム駆動されるポンプユニットが、ポンピングチャンバーと、ポンピングチャンバーの中の燃料を加圧するためのポンピングプランジャーとを含み、また、燃料ポンプ装置が、ポンプユニットのポンピングプランジャーを駆動するためのカムを含む。カムは、非対称的なカムプロファイルを有しており、カムのそれぞれの回転の間に、第1および第2のポンピングストロークにおいて、ポンピングプランジャーを駆動し、第1のポンピングストロークは、第2のポンピングストロークよりも大きい体積の燃料を変位させる。
【0028】
本発明のそれぞれの態様および実施形態の好適な特徴および/または随意的な特徴は、本発明の他の態様および実施形態においても、単独で、または、適当に組み合わせて、使用することが可能である。
【0029】
ここで、本発明の実施形態が、単なる例として、添付の図面を参照して説明されることとなり、図面において、同様の参照番号は、同様の特徴に対して使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図2は、本発明の第1の実施形態による燃料ポンプ装置を有する燃料噴射システム100の一部を示している。燃料ポンプ装置は、ユニットポンプタイプの複数の燃料ポンプを含む。図示されている実施形態では、第1および第2の燃料ポンプユニット110a、110bが設けられている。
【0032】
それぞれの燃料ポンプユニット110a、110b(以下、燃料ポンプと称される)は、ポンピングチャンバー112a、112bと、ポンピングエレメントまたはプランジャー114a、114bとを含み、ポンピングエレメントまたはプランジャー114a、114bは、それぞれのポンピングチャンバー112a、112bの体積を増減させるために、プランジャーボア(図示せず)の中で往復移動するように配置されている。ポンピングプランジャー114a、114bは、共通のカムシャフト118に装着されているそれぞれの第1および第2のカム116a、116bによって駆動される。
【0033】
第1のカム116aおよび第2のカム116bは、異なるカムプロファイルを有している。具体的には、第1のカム116aは、第2のカム116bよりも大きいリフト量を有しており、それぞれのカム116a、116bのリフト量は、カムプロファイルの最小半径とカムプロファイルの最大半径との間の差である。カム116aと116bとの間のリフト量の差に起因して、第1のカム116aは、第2のカム116bによって駆動される第2のポンプ110bのポンピングプランジャー114bのストローク長さと比較して、より長いストロークで第1のポンプ110aのポンピングプランジャー114aを駆動する。
【0034】
それぞれのポンプ110a、110bのポンピングチャンバー112a、112bは、それぞれの一方向弁122a、122bを経由して、燃料レール120に接続されており、それぞれの一方向弁122a、122bは、燃料が燃料レール120に向かう方向にだけ流れることを可能にする。当業者によく知られているように、燃料レール120は、複数の燃料インジェクター(図示せず)を供給する。
【0035】
また、それぞれのポンプ110a、110bのポンピングチャンバー112a、112bは、それぞれの電子的に切り替え可能な計量バルブ126a、126bによって、低圧燃料の供給源124に接続されている。計量バルブ126a、126bは、下記に説明されるように、エンジンの電子制御ユニット(図示せず)によって独立して制御され、燃料レール120の中の燃料圧力を調整することが可能である。
【0036】
カムシャフト118が回転すると、カム116a、116bが、ポンプ110a、110bのそれぞれのポンピングプランジャー114a、114bを往復直線移動で駆動し、関連のポンピングチャンバー112a、112bの体積を周期的な様式で増減させる。
【0037】
第1のポンプ110aを例にとれば、第1のポンプ110aのポンピングプランジャー114aのそれぞれの充填ストロークまたはリターンストロークの間に、ポンピングプランジャー114aは、ポンピングチャンバー112aの体積を増加させるように移動する。第1のポンプ110aに関連付けされている計量バルブ126aは、充填ストロークの間に開位置に保持され、燃料が低圧供給源124からポンピングチャンバー112aの中へ引き込まれることを可能にする。
【0038】
プランジャー114aがそのリターン移動の限界値となるときに、および、そのポンピングチャンバー112aの体積が最大値となるときに、第1のポンプ110aの充填ストロークは終了する。次いで、カム116aの回転が継続すると、プランジャー114aのポンピングストロークが始まり、プランジャー114aがチャンバー112aの中へ移動するにつれて、ポンピングチャンバー112aの体積が減少する。プランジャー114aがその前方移動の限界値に到達するときに、ポンピングストロークは終了し、前進移動の限界値の点において、ポンピングチャンバー112aの体積は最大となり、次の充填ストロークが始まる。プランジャー114aのストローク長さ(すなわち、その前進および逆進移動の限界値の間の距離)、および、したがって、プランジャー114aのポンピングストロークの間に変位させられるポンピングチャンバー112aの中の燃料の体積は、カム116aのリフト量によって決定される。
【0039】
第2のポンプ110bは、同じ方式に動作する。しかし、第2のカム116b(第2のカム116bは、第2のポンプ110bのプランジャー114bを駆動する)は、第1のカム116aよりも小さいリフト量を備えるプロファイルを有しているので、第2のポンプ110bの中のポンピングストロークの間に変位させられるポンピングチャンバー112bの中の燃料の体積は、第1のポンプ110aの中のポンピングストロークの間に変位させられる燃料の体積よりも小さい。
【0040】
第1および第2のカム116a、116bは、互いに90°オフセットされて、カムシャフト118の上に配置されている。このように、第1のポンプ110aのプランジャー114aがポンピングストロークで移動している間に、第2のポンプ110bのプランジャー114bは、充填ストロークで移動しており、その逆もまた同様である。図示されている実施形態では、カム116a、116bは、ダブルローブになっており、2つのポンピングサイクル(すなわち、充填ストロークの後にポンピングストロークが続く)が、カムシャフト118のそれぞれの回転にわたって起こるようになっている。
【0041】
計量バルブ126a、126bは、燃料レール120の中の燃料圧力を制御するために使用される。有利には、計量バルブ126a、126bを独立して制御することによって、第1のポンプ110aおよび第2のポンプ110bのそれぞれからレール120に到達する燃料の量は、独立して調整され、燃料噴射システムの動作の効率を最大化することが可能である。
【0042】
たとえば、第1のポンプ110aを使用して燃料レール120の中へ燃料を圧送することが望まれるときには、電子制御ユニットは、ポンピングストロークの間に第1の計量バルブ126aを閉じ、燃料が第1のポンプ110aのポンピングチャンバー112aから低圧供給源124へ流れて戻ることを防止する。ポンピングストロークが継続するにつれて、所定の圧力において、第1のポンプ110aを燃料レール120に接続する一方向弁122aが開き、燃料がポンピングチャンバー112aからレール120へ圧力下で流れることを可能にするまで、ポンピングチャンバー112aの中の燃料の圧力が上昇する。ポンピングストロークの終わりにおいて、第1の計量バルブ126aが開けられ、ポンピングチャンバー112aが次の充填ストロークの間に充填されることを可能にする。
【0043】
第1のポンプ110aからレール120へ最大体積の加圧燃料を送達することが望まれる場合には、ポンピングストロークの実質的にすべてにわたって、第1の計量バルブ126aをその閉鎖状態に保持することが可能である。この場合には、ポンピングストロークの間に変位させられる燃料の体積の実質的に全体が、加圧され、レール120へ送達される。
【0044】
代替的に、第1のポンプ110aからレール120へ最大体積よりも少ない加圧燃料を送達することが望まれる場合には、ポンピングストロークの一部の間だけ、第1の計量バルブ126aをその閉鎖状態に保持することが可能である。たとえば、第1の計量バルブ126aをポンピングストロークの開始時に開けて保持し、ポンピングストロークの間の適当な時点において閉じ、レール120へ適当な体積の加圧燃料を送達することが可能である。
【0045】
第1の計量バルブ126aが閉じられている間だけ、燃料は、一方向弁122aを通して燃料レール120へ移る。第1の計量バルブ126aがポンピングストロークの間に開けられる場合には、ポンピングチャンバー112aの中の圧力が降下し、一方向弁122aが閉じ、第1のポンプ110aからレール120の中への燃料の流れが停止する。ポンピングストロークの残りの間にプランジャー114aによって変位させられた残りの燃料体積が、加圧なしに低圧供給源124へ戻る。
【0046】
関連の一方向弁122bを通る第2のポンプ110bからレール120への加圧燃料の流れは、第2の計量バルブ126bを開閉することによって、同様の方式で制御することが可能である。
【0047】
電子制御ユニットは、燃料レール120の中の実際の燃料圧力と、燃料送達要求を満足させるために必要とされる燃料圧力(すなわち、現在のおよび予測されるエンジンのトルク要求を満たすために、適当な圧力において、適当な体積の燃料をインジェクターへ供給するために必要とされる圧力)との間の差を決定することによって、第1および第2の計量バルブ126a、126bに関する適当な開閉時間を計算するように配置されている。燃料レール120の中の実際の燃料圧力は、センサー(図示せず)によって監視される。当業者にはよく知られているように、トルク要求を満たすために必要とされる必要レール圧力は、適切なセンサー入力から(たとえば、スロットル位置センサー、クランクシャフト位置センサー、温度センサー、空気流量センサーなどから)電子制御ユニットによって決定することが可能である。
【0048】
レール120の中の燃料圧力は、時間の関数として、概して鋸歯状の曲線にしたがう。燃料圧力は、燃料がインジェクターによって噴射されるので、時間とともに低下し、また、燃料ポンプ110a、110bのそれぞれによって燃料がレールへ送達されると、鋭く上昇する。したがって、電子制御ユニットは、目標最小レール圧力(目標最小レール圧力は、燃料要求を満たすために必要とされる現在の最小噴射圧力を反映している)と、目標ピークレール圧力(目標ピークレール圧力は、目標レール圧力の十分に上方にあり、ポンピング事象同士の間の圧力低下を可能にする)とを計算する。
【0049】
電子制御ユニットは、測定されるレール圧力を目標最小および目標ピークレール圧力と比較し、出力信号を第1および第2の計量バルブ126a、126bへ送信し、したがって、実際のレール圧力を、目標ピークレール圧力と目標最小レール圧力との間に維持する。
【0050】
実際のレール圧力が目標最小レール圧力に接近するにつれて、電子制御ユニットは、プランジャー114a、114bのそれぞれのポンピングストロークの間に計量バルブ126a、126bのうちの1つまたは両方を閉じ、第1のポンプ110aおよび/または第2のポンプ110bから燃料レール120へ高圧燃料を給送する。実際のレール圧力が目標ピークレール圧力に到達するために十分な高圧燃料がレール120へ送達されると、電子制御ユニットは、必要とされる計量バルブ126a、126bを開け、ポンピングチャンバー122a、122bの中に残っている燃料を流出させ、低圧供給源124へ戻す。
【0051】
実際には、ポンピングストロークが起こっている間のレール圧力を継続的に監視するというよりも、電子制御ユニットは、それぞれのポンピングストロークに先立って、計量バルブ126a、126bに関して必要とされる閉鎖時間および開放時間を計算し、それぞれのポンプ110a、110bのポンピングストロークの所望の割合が、燃料をレール120へ圧送するために使用されるということを確実にする。
【0052】
有利には、この戦略は、それぞれの計量バルブ126a、126bが、それぞれのポンピングストロークの間の適当なときに閉じられ、ポンピングストロークの終わりに開けられることを可能にし、計量バルブ126a、126bが開いているときに低圧供給源124へ流出される加圧燃料の量を最小化するようになっている。しかし、計量バルブ126a、126bが、ポンピングストロークの終わりまで閉じたままであるときにも、いくらかの加圧燃料は、ポンプ110a、110bの死容積に起因して、低圧供給源124へ失われるということが認識される。当業者によって理解されるように、死容積は、それぞれのポンピングストロークの終わりにポンピングチャンバー122a、122bの中に残っている燃料の体積に相当する。
【0053】
それぞれのポンプ110a、110bが、それぞれのポンピングストロークによって異なる体積の加圧燃料を送達するので、動作のいくつかの異なるモードを、ポンプ装置の効率および性能を最適化するように適合させることが可能である。
【0054】
図3(a)は、ポンプ装置が第1のモードで動作している状態で、比較的に低い噴射率で動作している
図2の燃料噴射システムに関して、時間に対するレール圧力の概略プロットであり、それは、高い効率動作を提供する。この例では、目標最小レール圧力(P
TM)は、比較的に低く、かつ、第2のポンプ110bだけを用いて圧送することによって維持することが可能である。
【0055】
したがって、第2のポンプ110bのポンピングストロークの開始時には、第2の計量バルブ126bは閉じられている。この点は、
図3(a)において、V2の符号が付されている。第2の計量バルブ126bは、第2のポンプ110bのポンピングストロークの全体にわたって閉じたままであり、レール圧力を目標ピークレール圧力(P
TP)へ上昇させる。ポンピングストロークの終わりは、
図3(a)において、F2の符号が付されている。次いで、第2の計量バルブ126bが開き、第2のポンプ110bのポンピングチャンバー112bが、プランジャー114bの充填ストロークの間に再充填することを可能にする。レール圧力が目標最小レール圧力P
TMへ低下して戻ると、第2の計量バルブ126bが、次のポンピングストローク(V2)の開始時には閉じられ、レール圧力をもう一度上昇させる。
【0056】
したがって、この第1のモードの動作では、第2のポンプ110bのポンピング力の実質的にすべてが、レール120の中の燃料圧力を上昇させることになる。ポンプ110aの中の死容積に起因して、最小量の加圧燃料だけが、ポンピングチャンバー112bから低圧供給源124へ流出させられる。第1の計量バルブ126aは、全体を通して開いたままであり、燃料が第1のポンプ110aからレールへポンプ送りされないようになっている。第1のポンプ110aのポンピングチャンバー112aが低圧供給源124に対して開いたままであるので、燃料は第1のポンプ110aの中で加圧されず、および最小エネルギーが浪費される。したがって、このモードの動作は、比較的に低い噴射率において、最大効率を実現する。また、ポンピングストロークの間の計量バルブ126a、126bの閉鎖が回避されるので、騒音、振動、および摩耗が、このモードの動作の間に最小化される。
【0057】
第1のモードの動作では、レール120の中の燃料圧力の変動(すなわち、目標最小圧力P
TMと目標ピーク圧力P
TPとの間の差)は、比較的に大きいということが
図3(a)から認識される。しかし、ポンピング負荷を第1のポンプ110aと第2のポンプ110bとの間で分割することによって、同じ噴射率に対して、レール圧力の中の変動の低減を実現することが可能である。第2のモードの動作(それは、この方式で動作する)は、
図3(b)を参照して説明される。
【0058】
この例では、第1のカム116aのリフト量は、第2のカム116bのリフト量の2倍である。したがって、第1のポンプ110aの全ポンピングストロークにおいて変位させられる燃料の体積は、第2のポンプ110bの全ポンピングストロークにおいて変位させられる燃料の体積の2倍である。第2のモードの動作では、第1のポンプ110aのポンピングストロークの25%に関して第1の計量バルブ126aを閉じることによって、および、第2のポンプ110bのポンピングストロークの50%に関して第2の計量バルブ126bを閉じることによって、目標最小レール圧力P
TMが維持される。それぞれのポンピングストロークによって変位させられる燃料体積の差に起因して、それぞれのストロークは、レール圧力が同じ目標ピークレール圧力P
TPまで上昇するということを結果的に生じさせるということを、これらの比率は意味する。第1および第2のカム116a、116bのオフセットに起因して、第2のポンプ110bのポンピングストロークは、第1のポンプ110aの充填ストロークの間に起こり、また、その逆も同様である。第1および第2の計量バルブ126a、126bの閉鎖時間は、
図3(b)において、V1およびV2によってそれぞれ示されており、開放時間は、F1およびF2によって示されている。
【0059】
図3(b)から見ることができるように、この第2のモードの動作では、レール圧力は、
図3(a)に示されている第1のモードの動作と比較して、目標最小圧力P
TMにより近いままである。したがって、第2のモードの動作では、動作の効率は、第1のモードの動作よりもいくらか低いが、噴射圧力の一貫性を改善することが可能である。
【0060】
第2のモードの動作では、低圧供給源124へ流出させられる燃料に対するレール120へ送達される燃料の比率は、第1のモードの動作におけるものよりも低くなるが、先行技術による装置(先行技術による装置では、ポンプのすべてが、ポンピングストローク毎に、同じ体積の燃料を変位させる)と比較して、効率の改善が依然として得られる。
【0061】
比較のために、
図3(c)は、
図1に示されている先行技術の装置に関する概略の圧力−時間プロットを示しており、ポンプ10は、それぞれのポンプ10に関して同じプロファイルを有するカム16によって駆動されている。
図1の装置では、それぞれのポンプ10がポンピングストロークの間に同じ体積の燃料を変位させるように、カム16はサイズ決めされており、その体積は、
図2においてポンピングストローク毎に第1のポンプ110aによって変位させられる体積の75%に等しいか、または、ポンピングストローク毎に第2のポンプ110bによって変位させられる体積の150%と同等である。このように、
図1の従来の装置における両方のポンプ10の合計変位は、
図2の本発明による装置における両方のポンプ110a、110bの合計変位と同じである。
【0062】
図3(b)に示されているように、第2のモードで動作する
図2の装置によって実現されているものと同じ変動をレール圧力の中に実現するために、従来通りにサイズ決めされているカムを備える
図1の装置は、
図3(c)に示されているように、計量バルブが、それぞれのポンプのポンピングストロークの3分の1にわたり開いていることを必要とする。
図3(c)では、弁の閉鎖時間は、Vの符号が付されており、開放時間は、Fの符号が付されている。
【0063】
図3(b)に図示されている第2のモードと比較して、
図3(c)に示されているような従来の装置の動作は、効率的でない。
【0064】
噴射率がより高くなるときには、燃料要求を満たすために、より大きい体積の燃料が必要とされる。
図4(a)〜
図4(c)は、より高い噴射率であること以外は、
図3(a)〜
図3(c)と同等の状況に関して、時間とともに、レール圧力の中の変動を示している。
【0065】
図4(a)では、
図2の装置が、第3のモードの動作で動作させられており、レール圧力は、第1のポンプ110aの容量の100%を使用して、第1のポンプ110aを単独で使用したポンピングによって維持されている。したがって、第1の計量バルブ126aは、第1のポンプ110aのポンピングストロークの開始時(
図4(a)のV1によって示されている)には閉じられており、ポンピングストロークの終わり(F1によって示されている)まで閉じたままである。第2の計量バルブ126bは、全体を通して開いたままであり、燃料が第2のポンプ110bによってレール120の中へポンプ送りされないようになっている。
【0066】
第2のポンプ110bの中の燃料を加圧することにポンピング力は費やされないが、第1のポンプ110aのポンピング力のすべてが、レール120の中の燃料の圧力を上昇させるために使用されるので、この第3のモードの動作は、装置の効率を最大化する。
【0067】
第1および第2のポンプ110a、110bの間でポンピング負荷を分けることによって、レール圧力の変動を低減させることが可能である。したがって、
図4(b)に示されている第4のモードの動作では、第1の計量バルブ126aは、第1のポンプ110aのポンピングストロークの半分にわたって閉じられており、第2の計量バルブ126bは、第2のポンプ110bのポンピングストローク全体にわたって閉じられている。このように、燃料に関して、
図4(a)のものと同じ要求を満たすことが可能であるが、より低いレール圧力の変動を有する。
【0068】
第4のモードの動作は、第3のモードの動作ほど効率的ではないが、
図1に示されているもののような従来の装置(従来の装置では、それぞれのポンプが、ポンピングストローク毎に同じ変位を有している)を使用して同等の燃料要求を満たすことも、依然として効率的ではない。
図1の装置に関する圧力−時間曲線が、
図4(c)に示されている。
図2の装置の第4のモードと同じ圧力の変動性によって同じ目標最小レール圧力P
TMを得るために、
図1の装置の計量バルブ22は、それぞれのポンプ10のポンピングストロークの3分の2にわたって閉じられなければならない。これは、
図2の装置の第4のモードの動作よりも低い効率を結果として生じさせる。
【0069】
本発明によるポンプ装置の動作のモードは、特定の用途に関して、および、特定のエンジン動作条件に関して、最適化され得るということが当業者によって認識される。たとえば、任意の所与の噴射率に関して、ポンプ装置は、電子制御ユニットによって制御され、最大効率もしくは最小レール圧力変動で、または、効率と圧力変動との間の適切な妥協によって、燃料をレール120へ送達し、燃料噴射システムの動作を全体として最適化することが可能である。
【0070】
本発明の第1の実施形態の変形例では、さらなるポンプを設けることが可能である。たとえば、第1のカム116aと同じプロファイルのそれぞれのカムによって駆動される2つ以上のポンプの組、および、第2のカム116bと同じプロファイルのそれぞれのカムによって駆動される2つ以上のさらなるポンプの組を設けることが可能である。このように、燃料量および/または圧力に関するより大きい要求を、ポンプ装置によって満たすことが可能である。別の変形例では、第1のカム116aと第2のカム116bとの間の中間にある幾何学形状を有するカムによって駆動される1つまたは複数の追加的なポンプを設けることが可能である。そのような装置は、先行技術で知られている装置と比較して、さらなる効率の改善を可能にする。
【0071】
本発明の第2の実施形態による燃料ポンプ装置を有する燃料噴射システムが、
図5に示されている。第1の実施形態と同様に、この第2の実施形態では、第1および第2の燃料ポンプ210a、210bが設けられている。それぞれの燃料ポンプ210a、210bは、ポンピングチャンバー212a、212bと、ポンピングプランジャー214a、214bとを含み、ポンピングプランジャー214a、214bは、プランジャーボア(図示せず)の中で往復移動するように配置されている。ポンピングプランジャー214a、214bは、共通のカムシャフト218の上に装着されているそれぞれの第1および第2のカム216a、216bによって駆動される。
【0072】
第2の実施形態では、第1および第2のカム216a、216bが同一のカムプロファイルを有しているという点において、本発明の第2の実施形態は第1の実施形態とは異なっている。その代わりに、第1および第2のポンプ210a、210bによるポンピングストローク毎に変位させられる燃料の体積の差を実現するために、第1のポンプ210aのポンピングプランジャー214aおよび関連のポンピングチャンバー212aは、第2のポンプ210bのポンピングプランジャー214bおよび関連のポンピングチャンバー212bよりも大きい直径を有している。
【0073】
このように、それぞれのポンピングプランジャー214a、214bのストロークは同じであるが、ポンピングストロークの間に第1のポンプ210aのプランジャー214aによって変位させられる体積は、第2のポンプ210bのプランジャー214bによって変位させられる体積よりも大きい。具体的には、第1のポンプ210aのプランジャー214aは、断面積が、第2のポンプ210bのプランジャー214bの断面積の2倍であり、第1のポンプ210aが、ポンピングストローク毎に第2のポンプ210bの2倍の燃料を変位させるようになっている。
【0074】
本発明の第1の実施形態と同様に、第2の実施形態では、それぞれのポンプ210a、210bのポンピングチャンバー212a、212bは、それぞれの一方向弁222a、222bを経由して、燃料レール220に接続されており、また、それぞれの電子的に切り替え可能な計量バルブ226a、226bによって、低圧燃料の供給源224に接続されている。
【0075】
本発明の第2の実施形態のポンプ装置の動作は、上記に説明されているような本発明の第1の実施形態のものと同じである。
【0076】
本発明の第2の実施形態のポンプ装置は、第1の実施形態の装置の有用な代替例を提供する。たとえば、同一のカム216a、216bによって駆動される、異なるプランジャー直径を有するポンプ210a、210bの使用は、バランスのとれたポンプカムシャフトを提供することが望ましいときに有利である。そのうえ、本発明の第2の実施形態の変形例では、ポンプ自身が、同じストローク長さに対して異なる体積の燃料を出力するように構成されているので、第1および第2のポンプを同じカムによって駆動することが可能である。
【0077】
本発明の第2の実施形態のさらなる変形例では、さらなるポンプを設けることが可能である。たとえば、比較的に大きいプランジャーを有する2つ以上のポンプの組、および、比較的に小さいプランジャーを有する2つ以上のさらなるポンプの組を設けることが可能である。このように、燃料量および/または圧力に対するより大きい要求を、ポンプ装置によって満たすことが可能である。別の変形例では、第1のポンプ210aのプランジャー直径と第2のポンプ210bのプランジャー直径との間の中間にあるプランジャー直径を有する1つまたは複数の追加的なポンプを設けることが可能である。そのような装置は、先行技術で知られている装置と比較して、さらなる効率の改善を可能にする。
【0078】
図6は、本発明の第3の実施形態によるポンプ装置を有する燃料噴射システムの一部を示している。
【0079】
第1および第2の実施形態と同様に、この第3の実施形態では、第1および第2の燃料ポンプ310a、310bが設けられている。それぞれの燃料ポンプ310a、310bは、ポンピングチャンバー312a、312bと、ポンピングプランジャー314a、314bとを含み、ポンピングプランジャー314a、314bは、プランジャーボア(図示せず)の中で往復移動するように配置されている。ポンピングプランジャー314a、314bは、共通のカムシャフト318の上に装着されているそれぞれの第1および第2のカム316a、316bによって駆動される。
【0080】
この第3の実施形態では、第1および第2のカム316a、316bは、より詳細に
図7に示されているように、同一の非対称的なカムプロファイルを有している。それぞれのカム316a、316bは、軸線350の周りに回転し、それは、カムシャフト318に同軸に装着されている。第1および第2の突出部(noses)356、358をそれぞれ画定する2つのローブ352、354が、軸線350を横切って直径方向に対向している。それぞれの突出部352、354は、軸線350から半径R
Nの位置に存在している。
【0081】
カム316a、316bの最小半径360、362の位置は、ローブ352、354の間で、カム316a、316bのそれぞれの側部の上の異なる半径において位置付けされている。カム316a、316bが反時計回りの方向に回転すると、第1のローブ352に先行する最小半径360の点が、軸線350から半径R
1の位置に存在し、第2のローブ354に先行する最小半径362の点が、軸線350から半径R
2の位置に存在する。半径R
2は、半径R
1の2倍である。
【0082】
したがって、カムシャフト318が回転すると、それぞれのカム316a、316bは、1回転毎に2つのポンピングサイクルでそれぞれのポンピングプランジャー314a、314bを駆動する。第1のポンピングサイクルのポンピングストロークは、第1のローブ352によって駆動され、この第1のポンピングストロークが、R
N−R
1によって与えられるストローク長さを有するようになっている。第2のポンピングサイクルのポンピングストロークは、第2のローブ354によって駆動され、この第2のポンピングストロークが、R
N−R
2によって与えられるストローク長さを有するようになっている。
【0083】
したがって、第1のポンピングストロークは、第2のポンピングストロークの2倍の長さになっている。したがって、それぞれのポンプ310a、310bの第1のポンピングサイクルの間に変位させられる燃料体積は、それぞれのポンプ310a、310bの第2のポンピングサイクルの間に変位させられる燃料体積の2倍である。
【0084】
本発明の第1および第2の実施形態と同様に、第3の実施形態では、それぞれのポンプ310a、310bのポンピングチャンバー312a、312bは、それぞれの一方向弁322a、322bを経由して、燃料レール320に接続されており、また、それぞれの電子的に切り替え可能な計量バルブ326a、326bによって、低圧燃料の供給源324に接続されている。
【0085】
本発明の第3の実施形態による装置の動作は、本発明の第1および第2の実施形態の装置の動作と同様である。この場合には、両方のポンプ310a、310bは、カムシャフト318のそれぞれの回転の間にそれぞれのポンプ310a、310bの中に起こる第1および第2のポンピングストロークに対応して、ポンピングストローク毎に大きいまたは小さい体積の燃料のいずれかを提供することが可能である。カムシャフト318のそれぞれの回転に関して、電子制御ユニットは、それぞれの計量バルブ326a、326bを閉じたままにすべきである第1の(より長い)ポンピングストロークおよび第2の(より短い)ポンピングストロークの比率を独立して選択することが可能である。
【0086】
本発明の第3の実施形態は、第1および第2の実施形態の有用な代替例を提供する。有利には、ポンプ310a、310bが同一であり、非対称的なカム316a、316bも同一であるので、本発明のこの実施形態は、先述の実施形態よりも少ない独自構成要素の総数を有する比較的に簡単な装置を提供する。
【0087】
本発明の第3の実施形態の中のそれぞれのポンプは、小変位および大変位のポンピングストロークの両方を送達することが可能であるので、本発明の利益を得るために、1つのポンプが単独で十分となり得るということが認識される。したがって、第3の実施形態の変形例では、1つのポンプだけが設けられている。他の変形例では、より大きい体積および/または圧力要求を満たすために、3つ以上のポンプを設けることが可能である。また、2つ以上のポンプを同じ非対称的なカムによって駆動することが可能であるということが認識される。また、異なるストローク長さを有する複数のポンピングストロークを提供するために、3つ以上のローブを有するカムプロファイルを使用することも可能である。
【0088】
本発明の第3の実施形態の別の変形例では、カム316a、316bが、異なる非対称のプロファイルを有しており、ポンプ310a、310bのそれぞれが、そのそれぞれの第1および第2のポンピングストロークにおいて異なる体積の燃料を供給するようになっている。そのような装置は、ポンピング装置の効率を最適化する際にさらなる改良を提供することが可能である。
【0089】
本発明の上述の実施形態および変形例は、単なる例であるということ、および、明示的に上記に説明されていないが、第1のポンピングストロークにおいて、第2のポンピングストロークにおいて送達される燃料体積よりも大きい燃料体積を送達することが可能である他のポンピング装置も検討することが可能であるということが、当業者によって認識される。
【0090】
たとえば、上述の実施形態の特徴のうちの2つ以上を組み合わせることが可能であろう。また、たとえば、異なる断面積を有するポンピングプランジャーを備える2つ以上のポンプを、非対称的なカムプロファイルを有するカムによって駆動することも可能である。
【0091】
上述の実施形態では、第1のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料の体積は、第2のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料の体積の2倍である。しかし、第1および第2のポンピングストロークにおいて変位させられる燃料の相対的な体積を、所与の用途に関して適当となるように選択することが可能であるということが認識される。3つ以上のポンピングストローク(それぞれが、異なる体積の燃料を変位させる)が利用可能である、本発明のさらなる実施形態を検討することが可能である。このように、より大きい数の最大効率モードの動作を提供することが可能である。
【0092】
また、添付の特許請求の範囲に規定されているような本発明の範囲を逸脱することなく、さらなる修正例および変形例が可能である。
例えば、本発明は、特許請求の範囲に記載されるものの他、以下の態様を含む。
1.燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置であって、前記燃料ポンプ装置は、
第1のカム駆動されるポンプユニット(110a;210a)、および、第2のカム駆動されるポンプユニット(110b;210b)と、
前記第1のポンプユニット(110a;210a)のポンピングチャンバー(112a;212a)を低圧燃料(124;224)の供給源に切り替え可能に接続するための第1の計量バルブ(126a;226a)と、
前記第2のポンプユニット(110b;210b)のポンピングチャンバー(112b;212b)を低圧燃料(124;224)の前記供給源に切り替え可能に接続するための第2の計量バルブ(126b;226b)と
を含み、
前記ポンプユニット(110a、110b;210a、210b)の各々は、ポンピングチャンバー(112a、112b;212a、212b)と、前記ポンピングチャンバー(112a、112b;212a、212b)の中の燃料を加圧するためのポンピングエレメント(114a、114b;214a、214b)とを含み、
前記ポンピングエレメント(114a、114b;214a、214b)の各々は、前記燃料ポンプ装置のカム(116a、116b;216a、216b)によって駆動され、前記カム(116a、116b;216a、216b)の回転毎に少なくとも1つのポンピングストロークを生じさせ、
前記第1のポンプユニット(110a;210a)のポンピングストローク全体において変位させられる燃料体積が、前記第2のポンプユニット(110b;210b)のポンピングストローク全体において変位させられる燃料体積よりも大きくなるように、前記燃料ポンプ装置が構成されている、燃料噴射システムのための燃料ポンプ装置。
2.前記第1のポンプユニット(110a;210a)の前記ポンピングエレメント(114a;214a)を駆動するための第1のカム(116a;216a)と、
前記第2のポンプユニット(110b;210b)の前記ポンピングエレメント(114b;214b)を駆動するための第2のカム(116b;216b)と
をさらに含む、上記1.に記載の燃料ポンプ装置。
3.前記第1のポンピングストロークが前記第2のポンピングストロークよりも長くなるように、前記第1のカム(116a)が、前記第2のカム(116b)とは異なるプロファイルを有している、上記3.に記載の燃料ポンプ装置。
4.前記第1のポンプユニット(110a)の前記ポンピングエレメント(114a)が、前記第2のポンプユニット(110b)の前記ポンピングエレメント(114b)と同じ断面積を有している、上記4.に記載の燃料ポンプ装置。
5.前記第1のポンプユニット(210a)の前記ポンピングエレメント(214a)は、前記第2のポンプユニット(210b)の前記ポンピングエレメント(214b)よりも断面積が大きい、上記1.または2.に記載の燃料ポンプ装置。