(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車の内燃エンジン(E)用の弁作動機構(S)であって、前記弁作動機構は、少なくとも1つのロッカー(9)であって、ピストンチャンバ(101)内の流体圧力上昇の作用下で前記ロッカー(9)の前記ピストンチャンバ(101)内でエンジン動作機能が停止している第1位置から前記エンジン動作機能が実行される第2位置まで移動可能な前記ロッカー(9)の起動ピストン(95)を介して、シリンダ弁を開放するための開放アクチュエータ(7)の少なくとも一部分に弁開放力(F9)を発揮するように構成され、前記ロッカー(9)の流体供給回路(911)と前記ピストンチャンバ(101)の間の双方向の流体流を可能にする開放状態と、前記ピストンチャンバ(101)から前記流体供給回路(911)への流体流を遮断してその第2位置にある前記起動ピストン(95)を遮断する遮断状態とを有する制御遮断弁(97)を備えたロッカーを備えており、
その開放状態及び遮断状態間の前記遮断弁(97)の制御は、前記ピストンチャンバ(101)内の流体圧力によって、前記ピストンチャンバ(101)内の流体圧力にさらされる前記遮断弁(97)の弁部材(97A)に発揮された力(FP)の作用により実行され、
前記弁部材(97A)は、少なくとも前記弁部材(97A)が前記遮断弁を通る双方向の流体流を許容する第1位置にある時、流体圧力によって前記弁部材(97A)に生じる力(FP)が前記遮断弁を通る前記流体供給回路(911)への流体流を遮断する第2位置に向けて前記弁部材(97A)を移動させることになるように流体圧力にさらされ、
前記弁部材(97A)は、前記弁部材(97A)の位置に応じて前記主流体供給ダクト(912)と選択的に流体接続又は流体非接続される少なくとも1つの連通通路(97A4,97A12,97A34)を備えており、前記弁部材(97A)がその第1位置にある時、流体及び/又は流体圧力は前記少なくとも1つの連通通路を通って前記主流体供給ダクト(912)及び前記ピストンチャンバ(101)間で循環し伝達される、弁作動機構。
前記制御遮断弁(97)は、前記遮断弁の状態と、前記ピストンチャンバ(101)から前記流体供給回路(911)への有効流体流の両方を制御する、単一の一体型可動弁部材(97A)を備える、請求項1に記載の弁作動機構。
流体圧力にさらされる前記弁部材(97A)の表面の面積は、少なくとも前記弁部材(97A)が第1位置にある時、流体圧力によって前記弁部材(97A)に生じる力(FP)が前記弁部材(97A)をその第2位置に向けて移動させることになるように寸法設定される、請求項1に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)の前記第1位置は、前記主流体供給ダクト(912)が前記ピストンチャンバ(101)と流体接続される前記制御遮断弁(97)の前記開放状態に対応し、前記弁部材(97A)の前記第2位置は、前記主流体供給ダクト(912)及び前記ピストンチャンバ(101)が流体分離される前記制御遮断弁(97)の前記遮断状態に対応する、請求項4に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)は、前記弁チャンバ(970)内に、永続的に前記ピストンチャンバ(101)と同じ圧力となるように前記ピストンチャンバ(101)に永続的に流体接続された流体圧力区画(97B)を画定する、請求項4又は5に記載の弁作動機構。
前記弁チャンバ(970)及び前記弁部材(97A)は、前記流体圧力区画(97B)内で流体圧力にさらされる前記弁部材(97A)の表面の面積が、少なくとも前記弁部材(97A)が前記第1位置にある時、流体圧力によって前記弁部材(97A)に生じる力(FP)が前記弁部材(97A)をその第2位置に移動させることになるように寸法設定されるように設計される、請求項6に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)がその第2位置にある時、前記流体圧力区画(97B)及び前記ピストンチャンバ(101)は前記主流体供給ダクト(912)から流体分離される、請求項6又は7に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)がその第2位置にある時、前記主流体供給ダクト(912)内の流体圧力は、前記主流体供給ダクト(912)内の流体圧力の作用によって前記弁部材(97A)に生じる力が前記弁部材(97A)の実質的な移動を引き起こすことにはならないように、前記弁部材(97A)の移動に対して略垂直な前記弁部材(97A)の表面に印加される、請求項4乃至8のいずれかに記載の弁作動機構。
前記弁チャンバ(970)及び前記弁部材(97A)は弁座を画定し、そこでは、前記弁チャンバ及び前記弁部材(97A)が前記主流体供給ダクト(912)から前記ピストンチャンバ(101)及び前記流体圧力区画(97B)を流体分離するように前記弁部材(97A)の前記第2位置において互いに接触し、前記弁部材(97A)がその第1位置にある時は、前記弁部材(97A)及び前記弁チャンバ(970)が前記ピストンチャンバ(101)及び前記流体圧力区画(97B)及び前記主流体供給ダクト(912)間の流体連通を可能にするように前記弁座において離隔される、請求項6乃至8のいずれかに記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)は、前記弁チャンバ(970)の対応する内面と接触することによって前記弁チャンバ(970)内で前記弁部材が案内される周面を備えており、前記主流体供給ダクト(912)が前記内面に到達し、前記弁部材(97A)は、前記連通通路(97A4)と流体連通する容積を形成する周溝(97A2)を備えており、前記弁部材(97A)がその第1位置にある時は、前記周溝(97A2)は前記主流体供給ダクト(912)と流体連通し、前記弁部材(97A)がその第2位置にある時は、前記周溝(97A2)は前記弁チャンバ(970)の内壁面(972)に対向する、請求項1に記載の弁作動機構。
前記連通通路は、前記弁部材(97A)の長手方向軸(X97)に沿って前記弁部材(97A)を通って延在するダクト(97A4)であって、前記連通ダクト(97A4)の周囲に分配された複数のダクト(97A5)のおかげで前記周溝(97A2)と流体連通する、請求項13に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)は、前記弁部材(97A)がその第2位置にある時、前記主流体供給ダクト(912)に接続された少なくとも1つのポート(914)に突出するように構成された少なくとも1つの突出部材(97A13)を備える、請求項15に記載の弁作動機構。
前記弁部材(97A)の外面(97A1)は、前記弁部材(97A)がその第1位置にある時は前記主流体供給ダクト(912)に対向し、前記弁部材(97A)がその第2位置にある時は前記弁チャンバ(970)の内壁(972)に対向するスロット(97A34)を備える、請求項1に記載の弁作動機構。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、遮断弁のデザインが単純な、自動車用の新たな弁作動機構を提案することである。
【0009】
このために、本発明は、自動車の内燃エンジン用の弁作動機構に関し、該弁作動機構は、少なくとも1つのロッカーであって、ピストンチャンバ内の流体圧力上昇の作用下で該ロッカーの該ピストンチャンバ内でエンジン運転機能が停止している第1位置から該エンジン運転機能が実行される第2位置まで移動可能な該ロッカーの起動ピストンを介して、シリンダ弁を開放するための開放アクチュエータの少なくとも一部分に弁開放力を発揮するように構成され、該ロッカーの流体供給回路と該ピストンチャンバの間の双方向の流体流を可能にする開放状態と、該ピストンチャンバから該流体供給回路への流体流を遮断してその第2位置にある該起動ピストンを遮断する遮断状態とを有する制御遮断弁を備えたロッカーを備えており、その開放状態及び遮断状態間の該遮断弁の制御は、該ピストンチャンバ内の流体圧力によって、該ピストンチャンバ内の流体圧力にさらされる該遮断弁の弁部材に発揮された力の作用により実行される。
【0010】
有利ではあるが強制的ではない本発明の更なる態様によれば、そのような弁作動機構は以下の特徴のうちの1つ又は複数を組み込むことができる。
【0011】
− 該制御遮断弁は、該遮断弁の状態と、該ピストンチャンバから該流体供給回路への有効流体流の両方を制御する、単一の一体型可動弁部材を備える。
【0012】
− 該弁部材は、少なくとも該弁部材が該遮断弁を通る双方向の流体流を許容する第1位置にある時、流体圧力によって該弁部材に生じる力が該遮断弁を通る該流体供給回路への流体流を遮断する第2位置に向けて該弁部材を移動させることになるように流体圧力にさらされる。
【0013】
− 流体圧力にさらされる弁部材の表面の面積は、少なくとも弁部材が第1位置にある時、流体圧力によって該弁部材に生じる力が該弁部材をその第2位置に向けて移動させることになるように寸法設定される。
【0014】
− 該弁部材は、該起動ピストンの該チャンバ及び主流体供給ダクトと流体連通する弁チャンバ内で移動可能である。
【0015】
− 該弁部材の該第1位置は、該主流体供給ダクトが該ピストンチャンバと流体接続される該制御遮断弁の該開放状態に対応し、該弁部材の該第2位置は、該主流体供給ダクト及び該ピストンチャンバが流体分離される該制御遮断弁の該遮断状態に対応する。
【0016】
− 該弁部材は、該弁チャンバ内に、永続的に該ピストンチャンバと同じ圧力となるように該ピストンチャンバに永続的に流体接続された流体圧力区画を画定する。
【0017】
− 該弁チャンバ及び該弁部材は、該流体圧力区画内で流体圧力にさらされる該弁部材の表面の面積が、少なくとも該弁部材が該第1位置にある時、流体圧力によって該弁部材に生じる力が該弁部材をその第2位置に移動させることになるように寸法設定されるように設計される。
【0018】
− 該弁部材がその第2位置にある時、該流体圧力区画及び該ピストンチャンバは該主流体供給ダクトから流体分離される。
【0019】
− 該弁部材がその第2位置にある時、該主流体供給ダクト内の流体圧力は、該主供給ダクト内の流体圧力の作用によって該弁部材に生じる力が該弁部材の実質的な移動を引き起こすことにはならないように、該弁部材の移動に対して略垂直な該弁部材の表面に印加される。
【0020】
− 該弁チャンバ及び該弁部材は弁座を画定し、そこでは、該弁チャンバ及び該弁部材が該主流体供給ダクトから該ピストンチャンバ及び該流体圧力区画を流体分離するように該弁部材の該第2位置において互いに接触するのに対して、該弁部材がその第1位置にある時、該弁部材及び該弁チャンバが該ピストンチャンバ及び該流体圧力区画及び該主流体供給ダクト間の流体連通を可能にするように該弁座において離隔される。
【0021】
− 該弁作動機構は、該弁部材をその第1位置に向けて付勢する弾性手段を備える。
【0022】
− 該弁部材をその第1位置に付勢する手段は、該弁部材の移動方向に沿って力を発揮するスプリングを備える。
【0023】
− 該弁部材は、流体圧力がスプールに発揮した力が該スプリングの発揮する力を超えた時、その第1位置からその第2位置へと移動する。
【0024】
− 該弁部材は、該弁部材の位置に応じて該主流体供給ダクトと選択的に流体接続又は流体非接続される少なくとも1つの連通通路を備えており、該弁部材がその第1位置にある時、流体及び/又は流体圧力は該少なくとも1つの連通通路を通って該主流体供給ダクト及び該ピストンチャンバ間で循環/伝達される。
【0025】
− 該弁部材は、該弁チャンバの対応する内面と接触することによって該弁チャンバ内で該弁部材が案内される周面を備えており、該主流体供給ダクトが該内面に到達し、該弁部材は、該連通通路と流体連通する容積を形成する周溝を備えており、該弁部材がその第1位置にある時は、該周溝は該主流体供給ダクトと流体連通し、該弁部材がその第2位置にある時は、該周溝は該弁チャンバの内壁面に対向する。
【0026】
− 該連通通路は、該弁部材の長手方向軸に沿って該弁部材を通って延在するダクトであって、該連通ダクトの周囲に分配された複数のダクトのおかげで該周溝と流体連通する。
【0027】
− 該弁部材は、該弁部材の外周面に設けられた複数の連通溝を備える。
【0028】
− 該弁部材は、該弁部材がその第2位置にある時、該主流体供給ダクトに接続された少なくとも1つのポートに突出するように構成された少なくとも1つの突出部材を備える。
【0029】
− 該弁部材の外面は、該弁部材がその第1位置にある時は該主流体供給ダクトに対向し、該弁部材がその第2位置にある時は該弁チャンバの内壁に対向するスロットを備える。
【0030】
− 該連通通路は、該弁部材の長手方向軸に沿って該弁部材を通って延在するダクトであって、該弁部材がその第2位置にある時、該弁チャンバの表面から突出する突出部材が該連通ダクトに突出する。
【0031】
− 該弁部材は、該弁チャンバの長手方向軸に沿って並進するように構成されたスプールである。
【0032】
− 該ロッカーはカムシャフトによって動かされ、該起動ピストンの該第2位置において、該ロッカーのカムフォロアは、該エンジン運転機能を実行するように該カムシャフトのカムの少なくとも1つの補助弁リフトセクタを追従するように構成される。
【0033】
本発明はまた、上記したように弁作動機構を備えたトラック等の自動車にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に示す弁作動機構Sは、長手方向軸X2の周囲で回転可能なカムシャフト2を備えている。カムシャフト2は複数のカム22を備えており、その各々は、弁作動機構Sが組み込まれている、トラック等の不図示の自動車の、内燃エンジンEの1つのシリンダの各弁を移動させるためのものである。各々のカムは、1つ又は複数の「バンプ」、即ち、弁リフトセクタを備えるカム輪郭を有しており、このカム輪郭は、カムの基円半径よりも軸X2に対してより大きな偏心率を示す。
図1は、エンジンの1つのシリンダに対応する弁作動機構Sの一部分を示している。
【0036】
本実施形態では、エンジンEの各々のシリンダが2つの排気弁4及び5を備えている。弁4及び5は、それぞれのスプリング41及び51によってそれらの閉位置に向けて付勢される。各々の弁4及び5は、開放又は上昇するように開口軸4又はX5に沿って並進して移動可能である。より正確には、弁4及び5の並進によってシリンダの燃焼チャンバと排気マニホルドの間の通路が開放する。弁4及び5は、弁開放アクチュエータを形成し、軸X4及びX5に対して略垂直に延在する弁ブリッジ7に接続される。弁4及び5は、図に部分的に示されており、それらの各ステムのみが見えている。
【0037】
各々のシリンダに関して、カムシャフト2及び弁ブリッジ7間の移動の伝達は、本実施例では対応するカムシャフトの軸X2と平行なロッカー回転軸X91を画定するロッカーシャフト91に関して回転可能なロッカー9によって実行される。1つのロッカー9のみが図に示されている。各々のロッカー9は、カムフォロアとして作用し、カム22と協動するローラー93を備えている。ローラー93は、シャフト91に対してロッカー9の片側に位置している。各々のロッカー9は、シャフト91に対してローラー93の反対側に、例えば単に弁ステムと接触することによって、弁4及び5に接続された弁ブリッジ7に弁開放力を発揮するように構成された起動ピストン95を備えている。
【0038】
弁X4,X5によって画定された平面は、ロッカー9の回転軸X91に対して垂直である。本実施例では、弁5は弁4よりもロッカー回転軸V91から更に離れているが、その他の構成も可能である。また、ロッカー9は、排気弁のうちの1つと直接接触してもよく、その場合、弁開放アクチュエータは例えば弁ステム自体によって形成してもよい。
【0039】
カムシャフト2の回転は、ローラーがカムの弁リフトセクタにぶつかった時、ローラー93を介して回転運動R1をロッカー9に伝達し、この回転運動が、軸X4及びX5と平行の軸X7に沿って、起動ピストン95を介した弁ブリッジ7の並進運動を誘発する。一方ではカム22の主弁リフトセクタとローラー93の間、他方ではピストン95と弁ブリッジ7の間の協動によって、内燃エンジンEの対応する動作段階の間、弁4及び5の排気開口が生じる。ロッカーは、別の回転運動を有するため、カム輪郭に応じて、弁閉鎖位置及び弁開放位置の間で回転することができる。このことにより、本実施形態では、ロッカー9はカムシャフトによって直接駆動される。本発明のその他の実施形態では、ロッカーは、伝達機構を介して、カムシャフトによって間接的に駆動してもよく、別のタイプのアクチュエータ、例えば油圧式又は空気圧式アクチュエータによって駆動してもよい。本発明は、ロッカーが2つの排気弁を駆動するが、ロッカーの起動ピストンはそれらの2つの弁のうちの1つのみを駆動してその弁のみの開放を実行する、いわゆる単一弁ブレーキ構成に関連して組み込むこともできる。
【0040】
図1〜5の実施形態では、ロッカーシャフト91は中空であり、弁作動機構Sの不図示の流体圧力源から来る流体回路を収容するダクト911を画定する。ロッカー9は、それ自体、制御遮断弁97を介して、ピストン95によって部分的に区切られた、ロッカー9のピストンチャンバ101にダクト911を接続する内部流体回路を備えている。起動ピストン95は、ロッカー9の穴94内に収容され、穴94及びピストン95によって区切られたチャンバ101に関して、ピストン95の長手方向軸に対応する並進軸X95に沿って移動するように構成される。主供給ダクト912は、ロッカー9内に配設され、ダクト911を制御遮断弁97に流体接続する。ダクト913は、制御遮断弁97をピストンチャンバ101に流体接続する。
【0041】
エンジンEが正常運転モードにあると、ダクト911に送られる圧力は低レベル、例えば大気圧である。エンジンEがエンジンブレーキモードに切り替わると、不図示のエンジンブレーキ制御弁が、例えばほぼ3バール程度の高い圧力レベルの加圧流体をダクト911及び912に送り、ピストンチャンバ101への遮断弁97を通る加圧流体の流れを引き起こす。チャンバ101内の圧力上昇は、ピストン95が全体的又は部分的にチャンバ101内に押し戻される、即ち、後退する第1位置から、ピストン95が部分的にピストンチャンバ101から出る、即ち、伸長する第2位置への、ロッカー9に対して外側へのピストン95の並進運動を、それが弁ブリッジ7に当接するまで誘発する。好ましくは、制御流体は、油等の略非圧縮性流体である。
【0042】
カム22は、本実施形態において、ローラー93と協動するように構成された2つの補助弁リフトセクタを備えている。これらのセクタは、ロッカー9のローラー93によって追従されると、カムシャフト2の各回転でロッカー9の2つの更なる旋回運動を誘発する。補助リフトセクタは、通常、弁の限られたリフトのみを生じさせるように設計されており、弁を通って多くのガスを流れさせるようには意図されていない。一般的に、補助弁リフトセクタによって生じるリフトは、最大弁リフト値の30パーセント未満である。ピストン95が伸長位置にある時、それらの旋回運動は、上記で簡単に説明したように、エンジンEの運転中、2つの正確な瞬間にエンジンブレーキ機能を実行するようにピストン95によって弁4及び5の2つの開放運動に変換される。それらの弁の開放の目的及び効果は周知であり、更に後述することはない。別の実施形態によれば、カム22は、主排気弁の開放に加えて、カムシャフト2の各回転で弁4及び5のうちの1つのみの開放を実行する1つの補助弁リフトセクタのみを備えてもよい。
【0043】
図1に示すように、ピストン95がその後退した第1位置にある時、ローラー93は、エンジンブレーキ作動クリアランスによってカム22の補助弁リフトセクタに対してオフセットしており、カムシャフト2が軸X2の周囲で回転した時、カム22がローラー93と接触しないか、又はピストン95が弁ブリッジ7と接触しないようになっている。補助弁リフトセクタによって誘発されたロッカーの回転は、起動ピストン95弁ブリッジ7間又はローラー93又はカム22間のクリアランスを補うには制限が多過ぎるので、クリアランスは、補助弁リフトセクタが弁4及び5を開放させることができないようになっている。反対に、主弁リフトセクタは、両弁を開放させるのに十分なその軸の周囲のロッカー9の変位を生じさせる。
【0044】
図3に示すようにピストン95をその伸長した第2位置に移動させることによって、ロッカー9はシャフト91の長手方向軸X91の周囲を旋回する。従って、作動クリアランスが抑制され、ローラー93がカム22の補助弁リフトセクタと接触する一方で、起動ピストン95が同時に弁ブリッジ7と接触又は疑似接触することで、ローラー93が補助弁リフトのいずれか1つによって作用した時にエンジンブレーキ動作を実施することができる。
【0045】
制御遮断弁97は、本実施例では、中央長手方向軸X97に中心がある円筒穴である、弁チャンバ970を備えている。弁チャンバ970は、円筒内壁面972を画定する。弁チャンバ970は、片側がロッカー9の外側に開口しているが、反対側が軸X97に垂直な横断壁面974によって閉鎖している。弁チャンバ970は、起動ピストン95のチャンバ101及び主流体供給ダクト912と流体連通している。
【0046】
遮断弁97はまた、弁チャンバ970内で移動可能な弁部材97Aを備えている。弁部材97Aは、主流体供給ダクト912がピストンチャンバ101に流体接続される、遮断弁97の開放状態に対応する第1位置と、主流体供給ダクト912及びピストンチャンバ101が流体分離される、遮断弁97の遮断状態に対応する第2位置の間で移動可能である。
【0047】
図示の実施形態では、弁部材97Aは、複数の部品からなっていてもよいが、そのような部品が1つの単一の一体型構造物として働くように組み付けられ、部品間の実質的又は機能的な運動がないという意味において、単一の一体型可動弁部材からなっている。
【0048】
図示の実施形態では、弁部材97Aは剛性である。弁部材97Aは、弁チャンバ970の形状に対応する略円筒形状を有するスプールの形態であり、その外側円筒周面97A1は、接触面に沿った流体流を実質的に防ぐのに十分なほど密接した摺動組み付けで、弁チャンバ970の内側円筒壁面972と摺動接触している。このことにより、スプール97Aは、軸X97に沿って弁チャンバ970内に直線的に移動することができる。そのため、制御遮断弁97は、図示の実施例では、直線摺動スプール弁の形態である。しかし、本発明を鑑み、制御遮断弁は、他の形態をとってもよく、例えば回転スプール弁の形態であってもよい。
【0049】
図1に示す第1実施形態では、ダクト911を制御遮断弁97に流体接続するダクト912は、軸X97に沿った弁チャンバ970のほぼ中間領域で、弁チャンバ970の円筒内壁面に入る。遮断弁97をピストンチャンバ101に流体接続するダクト913は、弁チャンバ970の開口端に対向する弁チャンバ970の横断面974の近傍で開口している。横断壁面974と弁部材97Aの間で弁チャンバ970内に画定される体積は、永続的にピストンチャンバ101と同じ圧力となるように、ダクト913を介してピストンチャンバ101に永続的に流体接続された圧力区画97Bを形成する。
【0050】
上記のように、スプール97Aは、
図2に示す、流体がダクト912からダクト913へ両方向に循環することができる第1開放位置と、
図3に示す、流体が遮断弁97によって遮断される第2遮断位置の間で、少なくともピストンチャンバ101から主供給ダクト912の方向に、移動可能である。
【0051】
本発明の好適な実施形態によれば、弁部材97Aは、少なくとも弁部材97Aが遮断弁を通る双方向の流体流を許容するその第1位置にある時、流体圧力によって弁部材97Aに生じる力FPが遮断弁97を通る流体供給回路911への流体流を遮断するその第2位置に向けて弁部材97Aを移動させることになるように流体圧力にさらされる。
【0052】
本発明のこの第1実施形態では、スプール97Aは、その外面97A1上に、
図2に示す弁部材970の第1位置において、弁チャンバ970内のダクト912の開口に対向する周溝97A2を備えている。有利には、溝97A2は、スプール97Aをその軸X97の周囲に正確に配向する必要がないようにスプール97Aの全周に延びてもよい。流体圧力区画97Bは、例えばスプール97Aの軸X97に沿って延在する連通ダクト97A4によって溝97A2に流体接続される。流体圧力区画97Bは、ロッカー9の横断面974及びスプール97Aの環状面97A3の間に延在する。環状面97A3は、連通ダクト97A4の出口の周囲に延在する。連通ダクト97A4は、スプール97A内に設けられた少なくとも1つのダクト97A5によって溝97A2に流体接続される。有利には、スプール97Aは、軸X97から半径方向に延在し、連通ダクト97A4の周囲に十字形に分配された4つのダクト97A5を備えている。
【0053】
流体圧力にさらされる弁部材97Aの表面の面積は、少なくとも弁部材97Aが第1位置にある時、流体圧力によって弁部材97Aに生じる力FPが弁部材(97A)をその第2位置に向けて移動させることになるように寸法設定される。本実施形態では、流体圧力は、チャンバ101,流体圧力区画97B,溝97A2,連通ダクト97A4及びダクト97A5の隣接する体積によって形成される全体的な流体圧力領域内で作用する。しかしながら、以下で説明するように、流体圧力によって弁部材97Aに生じる効果は、主に流体圧力区画97B内の圧力の効果である。
【0054】
遮断弁97が開放した時、スプール97Aは周壁97A6の縁部97A61が横断面974に当接する位置にある。この位置では、流体は、溝97A2,ダクト97A5,連通ダクト97A4,流体圧力区画97B及び開口部97A7を介してダクト912からダクト913に移行することができる。そのため、スプール97Aは、スプール97Aの位置に応じて主流体供給ダクト912と選択的に流体接続又は流体非接続される、連通ダクト97A4及び97A5の少なくとも1つの連通通路を備えており、スプールがその第1位置にある時、流体及び/又は流体圧力は、スプール97A上に配設された該少なくとも1つの連通通路を通って主流体供給ダクト912及びピストンチャンバ101間で循環/伝達される。
【0055】
スプールは、弁チャンバ970の開口端の側に位置するその端部97A8では、流体圧力にさらされない。スプール97Aは、その端部97A8に、軸X97の周囲に延在するスリーブ97A9を備えている。遮断弁97は、組み付け目的で軸X97に沿ってロッカー9にねじ込まれるストップリング97Cを更に備えている。スプリング97Dは、初期設定で、エンジンブレーキが起動していない限り、即ち、主流体供給ダクト912によって送られた流体が、低圧、例えば絶対圧力2バール以下である限り、スプール97Aをその第1開放位置に保持するように、端部97A8及びストップリング97Cの間に取り付けられる。
【0056】
遮断弁97の遮断状態では、スプール97Aは、その第1位置に対して軸X97に沿ってオフセットされたその第2位置にあって、弁チャンバ970内のダクト912の開口がスプール97Aの外面97A1に対向するようになっている。
図3に示すこの位置では、溝97A2が内壁972に対向している。そのため、流体は、ダクト912からダクト913へも、ダクト913からダクト912へも移行することができない。その結果、スプール97Aがその第2位置にある時、流体圧力区画97B及びピストンチャンバ101は、主流体供給ダクト912から流体分離される。また、この第1実施形態では、スプール97Aがその第2位置にある時、主流体供給ダクト912内の流体圧力は、主供給ダクト912内の流体圧力の作用によってスプールに生じる力FPがスプール97Aの実質的な移動を生じさせることにはならないように、スプール97Aの表面、ここでは、スプール97Aの移動に対して略垂直なスプール97Aの外面97A1に印加される。
【0057】
上記を考慮すると、弁チャンバ970及びスプール97Aは弁座を画定し、そこでは、弁チャンバ970及びスプール97Aが主流体供給ダクト912からピストンチャンバ101及び流体圧力区画97Bを流体分離するようにスプール97Aの第2位置において互いに接触し、スプールがその第1位置にある時、スプール97A及び弁チャンバ970がピストンチャンバ101及び流体圧力区画97B及び主流体供給ダクト912間の流体連通を可能にするように弁座において離隔されると言える。
【0058】
弁座に対して、ロッカー9内、即ち、流体圧力源の側に燃料流体回路の上流部分と、ピストンチャンバ101の側に下流部分を画定することが可能である。
【0059】
この第1実施例では、弁座は、チャンバ970の内側円筒壁面972における主供給ダクト912の出口、及びスプールの外側円筒面97A1の対応する部分とで形成される。そのため、弁座は、スプール移動が弁座を通る流体の一般的な流れ方向に対して略垂直となるように、スプール97Aの移動方向に対して略平行な要素によって形成される。この構成では、主供給ダクト912内の流体圧力の作用によってスプール97Aに生じる力がスプール97Aの実質的な移動を生じさせることにはならない。
【0060】
エンジンブレーキ弁リフトを実行する必要がある時は、例えば3バールの制御圧力で流体がダクト911からロッカー9に送られたことの結果として、エンジンブレーキが起動する。この時、
図2に示すように、起動ピストン95はその内側第1位置にあると考えられ、遮断弁97は開放していると考えられる。
【0061】
流体がダクト912に流れ始めると、流体は前述したようにスプール97Aを通り、その後ダクト913を通って、ピストンチャンバ101へと流れ込む。ピストン95は、流体圧力の作用下でピストンチャンバ101から外側に移動し始める。流体がダクト912から弁チャンバ970に更に流れ込むにつれて、流体圧力区画97B内の流体圧力が上昇し、特に一旦起動ピストンがその外側第2位置に達する。弁チャンバ970及びスプール97Aは、流体圧力区画97B内の流体圧力にさらされるスプール97Aの表面の面積が、流体圧力によってスプールに生じる力がスプール97Aをその第2位置に向けて移動させることになるように寸法設定されるように設計される。図示の実施形態では、流体圧力区画97B内の流体によって生じた圧力の力FPは、ダクト97A5及び連通ダクト97A4間の交差点に位置する表面97A3,縁部97A61及び円形面97A41に発揮される。これらの表面に流体圧力が発揮されることで、スプール97Aがその第2位置に向けて移動することになる。ダクト97A5の上部内面の流体圧力の作用は、スプール97Aのその第1位置に向けての移動を生じさせることになるが、ダクト97A5の下部内面への流体圧力の作用によって相殺される。この時、スプール97Aは、スプリング97Dが発揮した力F97Dによってその開放位置に保持される。圧力区画97B内の圧力の上昇は、力97Dに対して軸X97に沿って発揮される、スプール97Aに発揮された流体圧力の力FPが次第に力F97Dを相殺することを意味している。力FPがF97Dを超えると、流体圧力が制御圧力に達した時点で、
図2の矢印A1で示すように、スプール97Aが軸X97に沿ってその第2位置に到達する。
【0062】
流体が弁チャンバ970に更に入るにつれて、スプール97Aは、その遮断位置に到達するまで矢印A1に沿って移動し続け、そこでは、制御圧力の流体が前述のように弁チャンバ970内に入ることが防がれる。
図3に示すこの構成では、ピストン95はその外側位置にあって、エンジンブレーキ弁リフトを実行することができ、遮断弁97はその遮断状態にあって、流体がピストンチャンバ101からダクト912へ出ることが防がれる。そのため、起動ピストン95はその内側第1位置に向けて移動することができない。
【0063】
ロッカー9の回転R1が弁リフトの始まる角度に達すると、ロッカー9の回転は、スプリング41及び51が弁ブリッジ7に発揮する抵抗力の作用に逆らう。この力は、ピストンチャンバ101内の流体圧力を急に上昇させ、ロッカー9内で圧力波を生じさせる。その結果、過度の圧力が流体圧力区画97B内で発生し、スプール97Aを矢印A1に沿って更に下方に移動させる。これにより、スリーブ97A9がストップリング97Cに当接する当接位置にスプール97Aを移動させることによって遮断弁97の閉鎖を更に「ロック」することが可能になる。ピストンチャンバ101内の圧力は、スプリング41及び51が発揮した力によって更に上昇する。この時、弁4及び5はエンジンブレーキ機能を実行するためにリフトされる。
【0064】
これらのリフトが終了すると、弁4及び5は閉鎖し、スプリング41及び51は弁ブリッジ7、従って起動ピストン95に対するそれらの作用を解放する。そして、ピストンチャンバ101内の流体圧力は制御圧力にほぼ等しい値まで降下する。しかし、本システムは、流体区画から若干の流体の漏れが発生する可能性があるように構成されている。遮断弁97がその遮断状態にある時に弁チャンバ970とロッカー9の外部の間で発生する可能性があるその漏れのため、圧力区画97B内の圧力が制御圧力以下の値に降下する。そのような漏れは、溝97A2及びスリーブ97A9間に構成される領域内で、内壁972及び外面97A1の間で発生する可能性があり、且つ/又は起動ピストン95及びその穴94の間で発生する可能性がある。好ましくは、この漏れは、排気弁スプリング41,51が発揮する弁の開放力を起動ピストンが受ける、流体圧力が高レベルにある時に基本的に発生する。この大きな力が止まると、漏れによって、スプリングの力F97Dを受けてスプール97Aに発揮される力の不均衡が発生する。そのため、圧力が閾値レベル以下に下がった後、スプール97Aは、スプリング97Dの作用下で、
図3の矢印A2で示すように、その第1位置、即ち、その開放位置に向けて移動し始める。遮断弁97の開放は、ダクト912が再び溝97A2に対向するまで続く。ロッカー9内の流体回路は、スプール97Aを横断面974との当接状態に戻すことができる。この時、弁ブリッジ7が起動ピストン95に力を更に発揮すると、流体はピストンチャンバ101,ダクト913及び弁チャンバ970からダクト912へと流れ始めることになり、起動ピストン95の後退を生じさせることになる。一方で、起動ピストン95及び弁ブリッジ7がそれ以上接触しない場合、主流体供給ダクト912内の圧力は、起動ピストン95のその第2最外位置への伸長を再び生じさせることが可能になる。そして、次のエンジンブレーキ弁リフサイクルトを行うことができる。弁座の下流の流体漏れは、主弁リフトと補助弁リフト間の遮断弁97の自動短時間再開のおかげでサイクルごとに自動的に補償される。
【0065】
遮断弁97のその開放状態から遮断状態への切り替えの制御は、専ら、ピストンチャンバ101内の圧力と同じ、流体圧力区画97B内の流体圧力によって発揮された力FPの作用によって、即ち、弁座の下流の流体圧力の作用によって得られる。より詳細には、ピストンチャンバ101内の圧力、即ち、ロッカー9内の流体回路の下流部分の圧力は、遮断弁97をその遮断状態に切り替える唯一の駆動要因である。従来の技術システムでは、遮断弁の閉鎖は弁座の上流の圧力によって駆動され、弁座の上流の圧力によって制御された弁座の上流に位置するピストンが弁の閉鎖を可能にするという事実によるものである。
【0066】
また、遮断弁97がその遮断状態にある時、弁の切り替えを制御する弁部材97Aは、流体圧力区画内の流体圧力のみにさらされる。流体圧力区画内の流体圧力は、ピストンチャンバ101内の流体圧力と永続的に同じ圧力であると考えられる。
【0067】
遮断弁97の開放は、弁座の下流側の圧力が遮断弁97の幾何学的形状及びスプリングの発揮する力F97Dによって決まる所定の圧力閾値以下に下がった時にスプリング97Dによってもたらされる。スプール97Aに対する流体圧力の力FPの増加及び減少によって、ダクト912及びダクト913間の流体通路が開閉する。
【0068】
遮断弁97の幾何学的形状により、ロッカー9の流体入口及び出口と同じ回路を使用することが可能になる。言い換えると、流体は、ダクト912から遮断弁97を介してピストンチャンバ101に運ばれ、更にダクト912によって遮断弁97を介してピストンチャンバ101からパージされる。これにより、単純な流体構造が提供される。
【0069】
後述するその他の実施形態と同様に本実施形態では、弁部材97Aは単一の一体型弁部材であり、その位置が、ピストンチャンバ101内の圧力に応じて、弁の状態、即ち、弁が開放状態であるか遮断状態であるかを制御すると共に、弁座をその第2位置に圧迫するという点で、チャンバ101から流体供給回路911への有効流体流を制御する。
【0070】
更に、遮断弁97は、単一の特別に製造された部品、即ち、スプール97Aのみをスプリング97Aと共に使用して、ロッカー9内の流体回路の開閉を制御する。これにより、システムの単純性が更に向上する。また、制御遮断弁97は二方弁であり、即ち、2つの入口・出口ポートのみを有する。
【0071】
制御遮断弁の第2,第3及び第4実施形態は、それぞれ
図6,8及び10に開放状態で示され、それぞれ
図7,9及び11に遮断状態で示されている。第1実施形態の要素と同様の要素は、同じ参照符号を有し、同様に機能する。第1実施形態との主な違いのみを以下に記載する。
【0072】
図6及び7に示す第2実施形態では、スプール97Aは、軸X97に沿って延在する略管状形状を有しており、同じく軸X97に沿って延在する中心孔97A10を備えている。弁チャンバ970もまた、ロッカー9の円筒内面によって半径方向外側に、且つ中心極976によって半径方向内側に区切られた管状形状を有する。スプール97Aは、中心孔97A10によって受容される中心極976に沿って取り付けられる。スプール97Aは、中心極97A10の異なる直径の2つの部分を離隔する内側横断ショルダ97A11を備えている。流体は、中心極976の周囲に分配された入口ポート914を通ってダクト912から弁チャンバ970に入る。第1実施形態とは違って、入口ポートはチャンバ970の横断上流壁面に配設される。弁チャンバ970の反対側、即ち、弁の下流側で、出口ポート915が横断下流壁に配設され、中心極976の周囲に分配されて、ダクト913及びピストンチャンバ101に向かう流体流を許容する。
【0073】
その円筒外面97A1に、スプール97Aは、軸X97に略平行であり、遮断弁97を通って、ポート914から流体区画97Bへ、及びその反対に流体流を許容する、1つ又は複数の連通溝97A12を備えている。
【0074】
図6に示すその第1位置では、スプール97Aは、ショルダ97A11と中心極976のショルダ979の間に取り付けられたスプリング97Dによって、入口ポート914の側で、ストップ977に対してバネ付勢される。スプリング97Dは、好ましくは油がなく、有利には大気に排気することができる区画内に受容される。その開放位置では、流体は連通溝97A12を介して入口ポート914から出口ポート915に移行することができる。スプール97Aの開放位置は、入口ポート914が配設されるチャンバ970の横断壁に対向するスプール97Aの横断面から突出する突出フィンガ97A13が軸X97に沿って入口ポート914から軸方向にオフセットされていることを示している。
【0075】
制御遮断弁のこの第2実施形態では、突出フィンガ97A13及び対応する入口ポート914は弁座を形成し、この弁座は、スプール97Aの移動が弁座を通る流体の全体的な流れ方向に対して略平行となるように、スプール97Aの移動方向に対して略垂直な要素によって形成されていることがわかる。この構成では第1実施形態とは違って、主供給ダクト912内の流体圧力の作用によってスプール97Aに生じる力が、遮断弁97の開放状態に対応するその第1位置に向かうスプール97Aの移動を生じさせることになる。そのため、本実施形態では、制御遮断弁97の容易な閉鎖を可能にするように、主流体供給ダクトの入口914の表面積を最小化することが必要である。そのためには、遮断弁97がその遮断状態にある時、突出フィンガ97A13の上流の流体の圧力によって生じる可能性がある力は、スプリングと弁座の上流の流体圧力とによって発揮される力と比べて僅かにならなければならない。好ましくは、弁部材97Aの第2位置では、弁座の上流の流体圧力にさらされる弁部材97Aの相当する断面は、流体圧力区画97B内の流体圧力にさらされる弁部材97Aの相当する断面の15%未満でなければならない。
【0076】
遮断弁97のその開放状態から遮断状態への切り替えは、第1実施形態と同様に達成される。弁座の下流の流体区画97B内の流体圧力の上昇により、スプール97Aに生じる力FPが発揮されて、スプール97Aをその第2位置に向けて移動させることになる。生じた流体圧力の力FPがスプリング力97Dを超えると、スプール97Aは、矢印A1で示すように、突出フィンガ97A13が入口ポート914に戻る流体の流れを防止する、
図7の構成に向けて移動する。
【0077】
本実施形態では、スプール97Aの溝は、主流体供給ダクト912とピストンチャンバ101の間、より詳細には、弁部材の上流側とスプールの下流側の間の流体及び/又は流体圧力の流れを可能にする。そのため、溝は、第1実施形態の連通ダクト97A4の溝と同様の機能を有しているが、スプールの内側ではなくスプールの外面に形成される。
【0078】
次のステップは、第1実施形態と同じである。
【0079】
図8及び9に示す本発明の第3実施形態では、弁チャンバ970は、軸X97を中心とする第1前方円筒部分と、大径を有し、同じくX97を中心とする第2後方円筒部分988とを備えている。流体圧力源に接続される主流体供給ダクト912は、基本的にスプール97Aの移動に対して平行の、弁チャンバ970の第1部分の円筒内壁面972に開口している。ピストンチャンバ101に接続されるダクト913は、第1部分の横断前面990に開口し、軸X97に沿って、弁チャンバ970の部分988に位置する横断後面974に対向している。
【0080】
スプール97Aは、横断後面974と横断前面990の間に軸方向に移動するように弁チャンバ970内に位置しており、内面972に対して略流体密封で取り付けられた、外面97A1を支える第1前方部分97A30と、弁チャンバ970の大径部分988を区切る内面992に対して略流体密封で取り付けられた、大径を有する第2後方部分97A32とを備えている。第2部分97A32は、後方に回転し、横断後面974に対向する横断環状面97A3を支えている。スプール97Aは、端から端に延在して、出口ポートの近傍の流体圧力区画97Bの前方部分を、スプールの後方横断面97A3と弁チャンバ970の横断後面974とによって区切られる流体圧力区画の後方部分に流体接続する連通ダクト97A4を備えている。
【0081】
スプール97Aは、部分97A30に設けられた1つ又は複数のスロット、即ち環状外側切欠き97A34を備えており、スプール97Aが
図8に示すその第1位置にある時、ダクト912からダクト913に流体を流すことができる。スプール97Aは、スプール97Aと前方横断面990の間に取り付けられたスプリング97Dによってその開放位置に向けて後方に付勢される。好ましくは、
図8に示すように、スプールの後方横断面97A3と弁チャンバ970の横断後面974が互いに接触しないように、ストップが設けられる。
【0082】
流体圧力区画97B内の流体圧力にさらされるスプール97Aの表面の面積は、流体圧力によってスプール97Aに生じる力がそれをその第2遮断位置に向けて移動させるように寸法設定される。弁チャンバ970は、その後方部分988内だがスプール97Aの後方部分97A32の前方に、流体圧力にさらされない区画989を備えている。この区画989は、好ましくは、区画989を本機構の外側に接続するダクト994のおかげで、図に示すように、大気圧にさらされる。
【0083】
遮断弁97は第1実施形態と同様に機能する。エンジンブレーキが必要な時は、弁チャンバ970内の流体はダクト912からスロット又は切欠き97A34を通る圧力を制御するように設定される。環状面97A3にかかる流体圧力は上昇し、スプール97Dは、ダクト912が外面97A1に対向するまで上方に移動し始める。この時、遮断弁97は、
図9に示すようにその遮断状態にあり、ダクト913からダクト912に戻る流体の流れは防止される。本実施形態では、弁座は、チャンバの壁972にあるダクト912の出口と、弁部材97Aの外側円筒壁97A1の対向部分とを備えている。
【0084】
遮断弁97の動作の次のステップは、第1実施形態と同様に行われる。
【0085】
図10及び11に示す本発明の第4実施形態では、円筒状弁チャンバ970は、後方横断面986を有する小径の円筒状後方部分980を備えている。主流体供給ダクト912は、小径後方部分980の内側円筒壁982に開口している。
【0086】
本実施形態では、スプール97Aは、第1実施形態と同様の円筒形状を有し、チャンバの後方部分980に略流体密封状態で摺動するように構成された小径の円筒状後方部分97A15を更に備えている。スプールの後方部分97A15は、円筒状周面97A16を有する。
【0087】
部分980に対して弁チャンバ970の前方側で、ピストンチャンバ101に接続するダクト913は前方横断面974に開口している。
【0088】
このことにより、遮断弁97の流体圧力区画97Bは、スプール97Aの前方の第1領域978と、スプールの後方部分97A15の後方の第2領域984とを備えている。これらの2つの領域は、スプール97A中に設けられ、軸X97に沿って延在する連通ダクト97A17によって流体接続される。
【0089】
図8及び9の実施形態と同様に、弁チャンバは、チャンバの主要部分内だが、スプールの主要部分の後方に、流体圧力にはさらされず、好ましくは例えばダクト994のおかげで大気圧にさらされる区画987を備えている。
【0090】
図10に示すその開放位置では、スプール97Aの後方部分97A15は、流体がスプール97Aを通ってダクト912から連通ダクト97A17に、そしてダクト913に移行することができるように、部分980内のダクト912の開口に対して軸X97に沿ってオフセットされる。弁チャンバ970内で圧力が上昇すると、流体圧力の力FPは、スプール97Aを
図11に示すその閉鎖位置に向けて移動させることになる。この構成では、ダクト912の開口端は周面97A16によって遮断され、ダクト912から連通ダクト97A17に移行する流体を防止する。
【0091】
ダクト912の端部と周面97A16の組み合わせによって、
図8及び9の実施形態で説明した弁座と同様、即ち、スプール97Aの移動に対して垂直の弁座を形成する。
【0092】
本発明の変形例によれば、ピストン95は、内部排気ガス再循環機能等の異なるエンジン動作機能を起動又は起動停止するように構成してもよい。この機能は、吸気行程中に排気弁の開放を可能にする。排気ガスの制御量を燃焼プロセスに戻すことによって、ピーク燃焼温度が低下する。これにより、窒素酸化物(NOx)の形成が減少することになる。
【0093】
本発明の不図示の実施形態によれば、弁作動機構Sは、シリンダの燃焼チャンバと吸気マニホルド間の通路を解放するように構成された2つの吸気弁を移動させるための吸気弁作動機構であってよい。この場合、起動ピストンは、専門家には既知であり、以下で更に説明しない初期又は後期のミラーサイクル(アトキンソン)に基づいて吸気機能を起動又は起動停止するように構成してもよい。