(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034507
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】血栓フィルター及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
A61F2/01
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-543265(P2015-543265)
(86)(22)【出願日】2013年10月14日
(65)【公表番号】特表2015-535447(P2015-535447A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】CN2013085167
(87)【国際公開番号】WO2014079291
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年6月8日
(31)【優先権主張番号】201210484480.4
(32)【優先日】2012年11月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514263735
【氏名又は名称】杭州啓明医療器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Venus MedTech(HangZhou)Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲ヅ▼ 振軍
(72)【発明者】
【氏名】雷 栄軍
(72)【発明者】
【氏名】呂 守良
(72)【発明者】
【氏名】張 志飛
(72)【発明者】
【氏名】兪 金虎
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−220062(JP,A)
【文献】
特開2005−095242(JP,A)
【文献】
特開2004−267796(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0059356(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0155305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/01
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと、捕捉口付きの血栓捕捉網と、血栓捕捉網をシースから出入りするように駆動するための第1挿入器具と、第1挿入器具を制御するための制御ノブと、を含む血栓フィルターにおいて、
傘先が収束の記憶形状となる傘布と、一端が第2挿入器具と接続し、他端が傘布と接続する傘スタンドと、を含み、傘先の方向が捕捉口の方向と一致し、血栓捕捉網の外側に覆設される漏れ防止傘と、シース内に置かれ、漏れ防止傘を挿入・引抜くための第2挿入器具と、が更に設けられ、
第1挿入器具は、第2挿入器具とは別に駆動可能であり、
血栓捕捉網が解放される場合、漏れ防止傘の傘先は血栓捕捉網の捕捉口により広げられ、血栓捕捉網が戻される場合、血栓の漏れを防ぐために、前記第1挿入器具によって前記血栓捕捉網を戻して前記血栓捕捉網の捕捉口を前記傘先からずらすことで、漏れ防止傘の傘布は血栓捕捉網の捕捉口を覆い包み、漏れ防止傘の傘先は収束の形となることを特徴とする血栓フィルター。
【請求項2】
前記血栓捕捉網と漏れ防止傘との何れも、記憶合金からなる網状構造であることを特徴とする請求項1に記載の血栓フィルター。
【請求項3】
前記血栓捕捉網は網状構造であり、前記漏れ防止傘は記憶合金からなる傘スタンド及びその上に被せる濾過穴付きの被膜により構成されることを特徴とする請求項1に記載の血栓フィルター。
【請求項4】
前記血栓捕捉網は網状構造であり、前記漏れ防止傘の傘布は記憶合金からなる網状のものであり、前記傘スタンドは傘布と接続する支持具であることを特徴とする請求項1に記載の血栓フィルター。
【請求項5】
前記血栓捕捉網は骨組とその上に被せる濾過穴付きの被膜により構成され、前記漏れ防止傘の傘布は記憶合金からなる網状のものであり、前記傘スタンドは傘布と接続する支持具である請求項1に記載の血栓フィルター。
【請求項6】
前記第2挿入器具は、第1挿入器具と同軸に設けられるように、第1挿入器具に摺動可能に覆設される管状のものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の血栓フィルター。
【請求項7】
前記第1挿入器具は、中空部が輸送経路となる管状のものである請求項6に記載の血栓フィルター。
【請求項8】
前記傘布は環状のものであり、環状の外縁が傘スタンドと接続する請求項1に記載の血栓フィルター。
【請求項9】
前記血栓捕捉網は、一端が捕捉口であり、他端がシース内に差し込まれて前記第1挿入器具に繋げられた網底であることを特徴とする請求項1に記載の血栓フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管フィルター及びその使用方法に関し、特に、血栓フィルター及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
介入型手術が世界範囲で汎用されるにつれて、手術に伴う合併症も日増しに顕著になっている。介入型主動脈弁置換術を例にすれば、主動脈のひどい狭窄や石灰化のため、主動脈弁膜により既存の主動脈弁を支持し且つ置換える必要がある。しかし、殆どの場合は、主動脈のひどい狭窄と石灰化を原因に、血流経路の内径が小さくなるため、球形嚢を用いて既存の石灰化した弁膜を拡張することが一般的である。拡張の途中、石灰化したブロックの一部が剥がれ落ちたり、或いは手術の過程で生じた血栓が血液の流れに伴い、冠脈や脳、及び下肢などの血管に流れ込んだりすることにより、血管塞栓を引き起こし、最終的に患者の死亡と全身不随に繋がってしまう。
【0003】
上記の問題を解決するには、2004年7月28日を公開日とする、特許文献1において、発明の名称が「血栓フィルター」であり、血栓捕捉網、ガイドワイヤ、遠側接続器と近側接続器を含み、血栓捕捉網は形状記憶可能なニッケル・チタン合金糸の漏斗状の網状濾過穴付きの被膜を採用し、ニッケル・チタン合金糸の回収糸が血栓捕捉網の開口部の網穴を抜け通って近側接続器に接続し、血栓捕捉網の網状テール部は先端にガイドポイントを持つ遠側接続器に接続する血栓フィルターを公開した。血栓捕捉器の開口部がニッケル・チタン合金糸と接続するため、ニッケル・チタン合金糸の復元力によって血栓捕捉器は血管内壁に緊密にくっ付けられ、血栓を効果的に濾過できる。回収の際は、回収糸で漏斗状の血栓捕捉網の開口部を収束することによって、血栓の漏れを効果的に防ぎ、血栓回収率も向上し、冠脈や脳、下肢などの血管塞栓の発生リスクが低減できる。シンプルで、操作しやすく、優れる濾過効率、高い安全性と信頼性のメリットを備え、血管形成術と血栓溶解術における血栓と剥がれ落ちる血塊の漏れ防止に応用することで、手術のリスクを低減し、成功率を向上させる。
【0004】
捕捉網の開口部が近端(制御側)に向けられるケースのみを開示したものの、遠端(制御側から離れる側)に向けられる場合の血栓捕捉方式についての説明はなく、当該技術はまだうまく解決されていない。それに血栓フィルターが如何に植え込み過程を妨げずに、狭窄になった血管経路で血栓や剥がれ落ちた血塊の捕捉を完成させるかは解決すべき問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第1515326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術の不足点を克服するために、本発明は血栓捕捉後の引き戻しの場合に、血栓漏れを効果的に防ぐだけではなく、構造がシンプルで、操作が簡便な血栓フィルターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シースと、捕捉口付きの血栓捕捉網と、血栓捕捉網をシースから出入りするように駆動するための第1挿入器具と、第1挿入器具を制御するための制御ノブと、を含む血栓フィルターである。
【0008】
傘先の方向が捕捉口の方向と一致し、血栓捕捉網の外側に覆設される漏れ防止傘が更に設けられる。
【0009】
シース内に置かれ、漏れ防止傘を挿入・引抜くための第2挿入器具もある。
【0010】
漏れ防止傘は、傘先が収束の記憶形状となる傘布(傘面)と、一端が第2挿入器具と接続し、他端が傘布と接続する傘スタンドと、を含む。
【0011】
血栓捕捉網が解放される場合、漏れ防止傘の傘先は血栓捕捉網の捕捉口により拡げられる。
【0012】
血栓捕捉網が戻される場合、血栓の漏れを防ぐために、漏れ防止傘の傘布は血栓捕捉網の捕捉口を覆い包み、傘先は収束する。
【0013】
好ましくは、前記血栓捕捉網と漏れ防止傘との何れも、記憶合金からなる網状構造である。
【0014】
好ましくは、前記血栓捕捉網は網状構造であり、前記漏れ防止傘は記憶合金からなる傘スタンド及びその上に被せる濾過穴付きの被膜により構成される。
【0015】
好ましくは、前記血栓捕捉網は網状構造であり、前記漏れ防止傘の傘布は記憶合金からなる網状のものであり、前記傘スタンドは傘布と接続する支持具である。
【0016】
好ましくは、前記血栓捕捉網は骨組とその上に被せる濾過穴付きの被膜により構成され、前記漏れ防止傘の傘布は記憶合金からなる網状のものであり、前記傘スタンドは傘布と接続する支持具である。
【0017】
好ましくは、前記第2挿入器具は、第1挿入器具と同軸に設けられるように、第1挿入器具に摺動可能に覆設される管状のものである。
【0018】
好ましくは、前記第1挿入器具は、中空部が輸送経路となる管状のものである。
【0019】
好ましくは、前記傘布は環状のものであり、環状の外縁が傘スタンドと接続する。
【0020】
好ましくは、前記血栓捕捉網は、一端が捕捉口であり、他端がシース内に差し込まれて前記第1挿入器具に繋げられた網底である。
【0021】
本発明の有利な効果は、全体構造がシンプルで、操作が簡便である。血栓捕捉網と漏れ防止傘が解放される場合、手術中に生じた血栓を効果的に回収できるし、血栓捕捉の後で漏れ防止傘を引き戻すと、血栓漏れを効果的に防ぐことができる。
【0022】
本発明は、下記ステップを含む請求項1に記載の血栓フィルターの使用方法を提供する。
【0023】
ステップ(1)では、血栓捕捉網と漏れ防止傘が入ったシースを血栓捕捉の必要のある血管部位に送り込む。
【0024】
ステップ(2)では、シースを引き戻し、血栓捕捉網と漏れ防止傘をシース外に露出し、捕捉口を開く同時に、漏れ防止傘の傘先を広げ、血栓捕捉網が血流に逆らって血栓を捕捉する。
【0025】
ステップ(3)では、血栓の捕捉が終了した後、血栓の漏れを防ぐように、第1挿入器具によって捕捉網を戻し、漏れ防止傘の傘布が血栓捕捉網に対して前進し、傘布の開口部が記憶形状の収束力で収束する。
【0026】
ステップ(4)では、漏れ防止傘の開口部が完全に収束した後、シースを押し付けて、漏れ防止傘をシース内に引き込む
【0027】
ステップ(5)では、血栓捕捉網と漏れ防止傘とが入ったシースを血管から抜き出す。
【0028】
本発明の有利な効果は、従来の技術より、血栓フィルターの使用と操作が便利になることであり、手術中に生じた血栓の濾過効果が優れるばかりではなく、血栓捕捉の後で漏れ防止傘を引き戻すと、血栓漏れを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明の実施例1の構造概略図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2の構造概略図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例3の構造概略図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例4の構造概略図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例5で、血栓フィルターが血管に挿入される場合の構造概略図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例5で、血栓フィルターが血栓を捕捉する場合の構造概略図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例5で、血栓フィルターの捕捉網が引き戻される場合の構造概略図である。
【
図8】
図8は本発明の実施例5で、血栓フィルターを抜き取る場合の構造概略図である。
【
図9】
図9は本発明の実施例の局部構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、明細書の図面及び具体的な実施例に沿って、本発明の技術手段を更に説明する。ここで述べる具体的な実施例は本発明を解釈するためのものだけであり、本発明を限定するものではないことは、理解されるべきである。
【0031】
図1〜10のように、本発明の血栓フィルターはシース1と、制御ノブ(図示せず)と、を含み、初期状態にシース1に血栓捕捉網2と漏れ防止傘3、またそれらにそれぞれ接続する、制御ノブで制御する第1挿入器具4と第2挿入器具5が収納される。第1挿入器具4と第2挿入器具5は管状であり、内径が比較的に大きい第2挿入器具5は、第1挿入器具4と同軸に設けられるように、第1挿入器具4の外周に覆設される。血栓捕捉網2は漏斗状であり、一端が捕捉口であり、他端がシース1内に置かれる第1挿入器具4と繋ぐ網底である。網底部分には第1挿入器具4の筒口に対応する通り口も付いており、通り口が球形嚢と介入器具などが血栓フィルターと同一ルートの場合の経路として利用できる。これによって、球形嚢と介入器具などを血管に送る場合、血管Iに別の切り口を作らなくても済むので、人体への傷害を軽減することに役立つ。当然ながら、第1挿入器具4と第2挿入器具5は柱状と管状との組合せを採用したり、または挿入機能を実現出来る他の構造を用いたりしてもよいが、これらの実施案は何れも本発明の保護範囲にある。
【0032】
傘布32と傘スタンド31の二部分に分かれる漏れ防止傘3が収束後の血栓捕捉網2の周壁に覆設されている。傘スタンド31が血栓捕捉網2の周壁に覆設されている。本発明では、第1挿入器具4、第2挿入器具5、傘布32と傘スタンド31の制御ノブに近い側は近端とし、制御ノブに遠い側は遠端とする。傘スタンド31の近端が第2挿入器具5の遠端に接続し、傘布32の近端が傘スタンド31の遠端に接続する。血栓捕捉網2の捕捉口の向きと一致している傘布32の開口部の開きは主動的に収束されることにより、血栓捕捉網2の捕捉口が覆い包まれる。
【0033】
記憶合金は新規の材料として、磁性なし、耐食・耐久、無毒などの長所を有し、冷却の場合にオーステナイト相の状態で柔らかくなり、カテーテル内に受け入れやすく、体内で解放されると、マルテンサイト相に変わり、設計した状態に戻る。
【0034】
傘布32と傘スタンド31は何れも記憶合金で作られるので、製作プロセス上で実施しやすいため、一体化構造にしたほうが製作しやすい。また、傘布32と傘スタンド31を縫合または接続具で接続して組み立て式構造にすることも可能であり、材料消耗と全体サイズを更に減すことができる。それから、傘布32と傘スタンド31は異なる材料を使ってもよい。傘スタンド31が初期状態でシースの軸線方向に収束されており、血栓捕捉網2の開きと収束に伴って動き、特に血栓捕捉網2の開きにより拡げられるため、可撓性の材料を採用することができる。
【0035】
制御ノブは第1挿入器具4の押し・引きを操作するため、第1挿入器具4の近端における固有部分としてもよいし、第1挿入器具4に分離して据え付けられてもよい。制御ノブは血栓捕捉網2の押し込み動作を制御するほか、シース1と漏れ防止傘3との押し込み動作を制御することもできる。第2挿入器具5によって漏れ防止傘3の移動を制御し、シース1を引き戻す場合、漏れ防止傘3が第2挿入器具5に移動を制限されて後ろへの摩擦力が克服される。これと同じく、第1挿入器具4は血栓捕捉網2をシース1内に前進・後退させるように連動する。シース1で血栓捕捉網2と漏れ防止傘3を血管Iの指定部位に送り届けた後、シース1を引き戻し、相対的に固定する第2挿入器具5と第1挿入器具4により漏れ防止傘3と血栓捕捉網2を相対的静止状態で血管内に置くことができる。
【0036】
本発明は血栓捕捉網2と漏れ防止傘3の特性により、少なくとも下記四つの実施例を含むが、それらに限定されない。
【0037】
実施例1では、
図1のように、血栓捕捉網2(太い黒線)と漏れ防止傘3の何れも記憶合金で編んだ網状構造であり、血栓捕捉網2は体温において開く状態であり、漏れ防止傘3は体温において収束状態である。それに、血栓捕捉網2が開こうとする時の張力は漏れ防止傘3の収束状態での収束力より大きい。即ち、血栓捕捉網2が体温状態で開く場合、漏れ防止傘3は張力を受けて拡げられる。漏れ防止傘3上の傘布32の開口部は収束の記憶形状であるため、終始に中心部への収束を保持できるので、血栓捕捉網2の捕捉口へのカバーも実現される。血栓捕捉網2の捕捉口から離れる遠端の位置が第1挿入器具4と接続し、第1挿入器具4によってシース1内での自由移動を実現する。漏れ防止傘3の傘スタンド31が第2挿入器具5と接続し、漏れ防止傘3は第2挿入器具5によってシース1内での自由移動を実現する。
【0038】
実施例2:
図2のように、血栓捕捉網2が記憶合金で編んだ網状のものであり、体温において開く状態である。漏れ防止傘3の傘布32が濾過穴付きの被膜である。傘スタンド31(太い黒線)は帯状の記憶合金からなり、シース1の軸方向を巡って配置され、かつ長手方向がシース1の方向と一致している。傘スタンド31の遠端が軸心へ曲がる円弧形状を記憶している。傘スタンド31の近端が第2挿入器具5と接続し、体温において、傘スタンド31の遠端はシース1の軸線方向へ収束され、傘スタンド31の周壁に覆設される傘布32は傘スタンド31の開きと収束に伴って動く。
【0039】
実施例3では、
図3のように、血栓捕捉網2(太い黒線)は記憶合金で編んだ網状構造であり、体温において開く状態になる。漏れ防止傘3の傘布32は記憶合金で編んだ網状構造であり、傘布32の傘先が収束状態を記憶している。傘スタンド31(太い黒線、血栓捕捉網2の線よりも太い線)は傘布32に接続した、両端がそれぞれ第2挿入器具5と傘布32に接続する支持具である。
【0040】
実施例1、2、3では、血栓捕捉網2は応力のある金属糸からなり、球形嚢の膨らみにより拡げられる。記憶合金で出来た場合、体温において、記憶している開いた形状に復元することにより主動的に拡がる。
【0041】
実施例4では、
図4のように、血栓捕捉網2は骨組21(太い黒線)とその上に覆設される濾過穴付きの被膜22より構成される。骨組21は帯状の記憶合金からなり、一端が第1挿入器具4と接続しているため、体温において骨組21の上に第1挿入器具4から離れる部位がシース1の軸線から離れるほうへ突き出る。骨組21に覆設される被膜22は骨組21の膨らみと収束に伴って動く。漏れ防止傘3の傘布32は記憶状態が収束である記憶合金で編んだ網状構造である。傘スタンド31(太い黒線、骨組21よりも太い線)は傘布32に接続した、両端がそれぞれ第2挿入器具と傘布32に接続する支持具である。
【0042】
実施例4では、血栓捕捉網2の骨組が金属製支持具であり、球形嚢の膨らみにより拡げられる。記憶合金で出来た場合、体温状態において、記憶した膨らみ形状に復元することで主動的に拡がる。
【0043】
実施例5では、
図5〜8のように、血栓捕捉網2は帯状の記憶合金からなる骨組21(太い黒線)と、骨組21の周壁に覆設される、濾過穴付きの被膜22で構成される。骨組21は、一端が第1挿入器具4と接続し、体温において骨組21の第1挿入器具4から離れる部位がシース1の軸線から離れるほうへ突き出る。骨組21に覆設される被膜22は骨組21の膨らみと収束に伴って動く。漏れ防止傘3の傘布32の開口部は収束の記憶状態であるため、終始に中心部に収束することにより、血栓捕捉網2の捕捉口へのカバーを実現できる。
【0044】
上記実施例における被膜は高分子材料の薄膜であり、高分子材料の薄膜とは、例えば、医療用ポリテトラフルオロエチレン薄膜や、医療用ポリウレタン薄膜や、医療用シリカゲル薄膜などの医療用高分子材料薄膜を指している。また、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3は上記材料の組合せ構造以外に、特許請求の範囲により保護される別の構造を有してもよく、実施例の5つのケースに限定されない。
【0045】
本発明では多種の実施例があるが、各実施例の操作手順と原理は同じである。以下、実施例5について、血栓フィルターの使用方法を具体的に説明する。
【0046】
ステップ1では、
図5のように(血栓捕捉網2と漏れ防止傘3は重なった状態でシース1内に位置される)、血栓フィルターが血管Iに挿入され、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3とを入れたシース1を血管I内の指定部位に送り込む。矢印は血栓6が混入した血流の方向を表す。
【0047】
ステップ2では、
図6のように(血栓捕捉網2と漏れ防止傘3は重なった状態でシースから部分的に露出している。その場合、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3は図上には同一物に見えて、明らかな区別がない。)血栓フィルターは血栓6を捕捉する場合、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3の入れたシース1が血管I内の指定部位に移動した後に、シース1を引き戻し、第1挿入器具4と第2挿入器具5によって漏れ防止傘3と血栓捕捉網2を押し付けることにより、漏れ防止傘3と血栓捕捉網2に後退の作用力(主に摩擦力を指す)を克服して動かない状態を保持させる。即ち、第1挿入器具4と第2挿入器具5による押し付け操作によって、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3に血管Iに対する相対的な静止状態を保持させる。
【0048】
この時、血栓捕捉網2が記憶合金材料で製作され、且つ初期状態が開く状態であれば、血管内に置かれる血栓捕捉網2の開口部が自動に拡げられる。もしステンレスで製作されれば、まず球形嚢によって血栓捕捉網2を適切の大きさに拡げることになる。これと同時に、血栓捕捉網2の周壁に覆設される漏れ防止傘3も拡げられる。
【0049】
必要に応じて、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3が解放された後に、第2挿入器具5の管腔の経路IIを介して、手術器具の輸送、放置、引き戻しが実施され、全プロセスは保護状態で行われる。
【0050】
ステップ3では、
図7のように、血栓フィルターの捕捉網が引き戻される。器具の植込みが完成した後、それに協調する血栓6の捕捉作業が完了する場合に、第1挿入器具4によって血栓捕捉網2をシース1に引き戻す過程で、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3は血栓捕捉網2の捕捉口でずらされる。つまり、血栓捕捉網2がバックして漏れ防止傘3の中に入る時、漏れ防止傘3が血管Iに対し静止状態になるので、血栓捕捉網2がバックする過程で血管Iに対する傷害は避けられる。漏れ防止傘3が血栓捕捉網2に対して前進するので、傘布32は収束の記憶形状で血栓捕捉網2の捕捉口に覆い包む。ずれた距離により、漏れ防止傘3の傘布32の血栓捕捉網2と重なる部分が次第に分離され、徐々に全体が血栓捕捉網2の捕捉口に覆い包む。つまり、漏れ防止傘3の傘布32は血栓捕捉網2の捕捉口を越えて捕捉口の中心部へ収束されることにより、捕捉口への覆い包みを実現する。即ち、捕捉口の口径は傘布32の収束力により縮小され、蓋のように捕捉口に覆い包むことにより、血栓6が捕捉口から容易に漏れることを避ける。漏れ防止傘の傘先が自身収束の記憶形状で完全に閉じる場合(完全に閉じなくても、収束により開口部の開きが十分小さいので、血栓6の漏れが考えられないから、近似的に開口部の完全閉合と理解してもよい)、血管Iから濾過した血栓6は漏れ防止傘3により血栓捕捉網2内に封じ込められる。
図7において、血栓捕捉網2がまだ完全に行き届かなく、つまり、漏れ防止傘3がまだ完全に血栓捕捉網2の捕捉口を覆い包まない場合、血栓捕捉網2は漏れ防止傘3に完全に捕捉口を覆い包まれるまで戻してから、シース1が前に押し付けられて、漏れ防止傘3と血栓捕捉網2が回収される。
【0051】
本発明では、漏れ防止傘3の傘布32と傘スタンド31の区切り線について明確に要求していない。上述の状況では、傘布32の捕捉口への覆い包みさえ実現できれば良い。それに、漏れ防止傘3の傘布32と血栓捕捉網2の捕捉口がずらされた後、捕捉口の外側に懸った部分の何れも収束力により捕捉口の中心部を覆い包み、捕捉口の口径を縮小させる。それにより、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3がシース1に回収される場合に、血栓6が捕捉口から漏れることは避けられる。第1挿入器具4は漏れ防止傘3の傘先が完全に収束されるまで血栓捕捉網2を引きずることで、漏れ防止傘3によって血栓捕捉網2内の血栓6の漏れが完全に避けられる。
【0052】
ステップ4では、
図8のように、血栓フィルターが後退戻され、漏れ防止傘3の傘先が完全に収束された後、シース1を前に押し付けて、後ろから徐々に漏れ防止傘3をシース1に収納させる。血管I内の血液を濾過すると同時に、血栓捕捉網2を回収する際の血栓6の漏れも解決されるため、血管I内の環境が安定かつ安全であることを保証する。血管Iの内壁粘膜はとても脆いので、漏れ防止傘3がシース外、且つ血管I内に置かれる場合、血管I内を移動することは許されない。でなければ、漏れ防止傘3の外壁は血管Iの内壁を傷つけやすいので、血管Iの傷害と病変を引き起こしてしまう。従って、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3の解放や回収の場合、主にシースの相対的前進と後退により実現させる。また、血管Iの内壁をより良く保護するために、漏れ防止傘3と血栓捕捉網2の湾曲部位の記憶形状は弧状構造となる。
【0053】
ステップ5では、血栓捕捉網2と漏れ防止傘3とが入ったシース1を血管Iから抜き出す。
【0054】
本発明では、傘布32は少なくても下記3つの状態がある。血栓捕捉網2が解放される前に、血栓捕捉網2の周壁に覆設されるようにシース1内に置かれる。血栓捕捉網2が解放される場合、血栓捕捉網2の外側に置かれ、血栓捕捉網2の膨らみにより拡げられる。血栓捕捉網2を回収する際、傘布32は血栓捕捉網2の捕捉口周辺から中心側へ収束し、捕捉口を覆い包む。本発明は全体構造がシンプルで、操作が簡便である。血栓捕捉網2と漏れ防止傘3が解放された後、手術中に生じた血栓6を効果的に回収できるし、漏れ防止傘3を引き戻すと、血栓6の漏れを効果的に防ぐことができる。