特許第6034597号(P6034597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034597
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20161121BHJP
   A01B 49/06 20060101ALI20161121BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   A01C15/00 F
   A01B49/06
   A01M9/00 D
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-121208(P2012-121208)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-243982(P2013-243982A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年2月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】吉村 茂樹
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−053617(JP,U)
【文献】 実開昭59−038702(JP,U)
【文献】 実開昭61−100906(JP,U)
【文献】 実開昭63−020726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 15/00−23/02
A01B 27/00−49/06
A01M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被散布物が収容される収容体と、
耕耘体の前方に位置する落下口部を有し、前記収容体からの被散布物を案内して前記落下口部から落下させる案内体と、
この案内体を位置決めする位置決め体と、
この位置決め体が取り付けられた被取付板部を前端部に有し、前記耕耘体の上方部を覆う耕耘カバー部と、
前記落下口部の前方に前記耕耘体からの耕耘土と接触するように配設され、被散布物の飛散を防止する飛散防止体とを備え、
前記飛散防止体は、前記位置決め体に取り付けられ、かつ、弾性変形可能な弾性部材にて構成され、
前記弾性部材の上下方向長さ寸法は、傾斜角度が25°〜60°の範囲内の仮想傾斜線が前記弾性部材の下端部を通る寸法であり、
前記仮想傾斜線は、耕耘前の圃場面に対して前記傾斜角度をもって傾斜しかつ前記耕耘カバー部の前記被取付板部の後端部の点を通る線である
ことを特徴とする農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被散布物の飛散を防止できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、図8に示すように、回転しながら耕耘作業をする耕耘体1と、薬剤等の被散布物が収容される収容体2と、耕耘体1の前方に位置する落下口部3を下端部に有し収容体2からの被散布物を案内して落下口部3から落下させる細長筒状の案内体4と、この案内体4の下端部が挿入された箱状の拡散板5とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−84843号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば周囲の風および耕耘土の飛び出しにより発生する風の影響を受けて、被散布物が大気中に舞い上がって飛散するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被散布物の飛散を防止でき、適切な散布作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
求項記載の農作業機は、被散布物が収容される収容体と、耕耘体の前方に位置する落下口部を有し、前記収容体からの被散布物を案内して前記落下口部から落下させる案内体と、この案内体を位置決めする位置決め体と、この位置決め体が取り付けられた被取付板部を前端部に有し、前記耕耘体の上方部を覆う耕耘カバー部と、前記落下口部の前方に前記耕耘体からの耕耘土と接触するように配設され、被散布物の飛散を防止する飛散防止体とを備え、前記飛散防止体は、前記位置決め体に取り付けられ、かつ、弾性変形可能な弾性部材にて構成され、前記弾性部材の上下方向長さ寸法は、傾斜角度が25°〜60°の範囲内の仮想傾斜線が前記弾性部材の下端部を通る寸法であり、前記仮想傾斜線は、耕耘前の圃場面に対して前記傾斜角度をもって傾斜しかつ前記耕耘カバー部の前記被取付板部の後端部の点を通る線であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛散防止体が案内体の落下口部の前方に配設されているため、被散布物の飛散を防止でき、適切な散布作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機の正面図である。
図3】同上農作業機の弾性部材の側面図である。
図4】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の弾性部材の側面図である。
図5】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の正面図である。
図6】同上農作業機の拡散ノズルおよび弾性部材の正面図である。
図7】同上拡散ノズルおよび弾性部材の側面図である。
図8】従来の農作業機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の農作業機の一実施の形態について図1ないし図3を参照して説明する。
【0011】
図中の10は農作業機で、この農作業機10は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、トラクタの走行により圃場を前方(進行方向)に移動しながら散布作業および耕耘整地作業を行うものである。すなわち、農作業機10は、圃場に被散布物Wを散布する散布作業を行う左右1対の散布機11をロータリー12に搭載した作業機である。なお、被散布物Wは、例えば粉状或いは粒状の薬剤、肥料或いは種子等である。
【0012】
農作業機10は、図示しないトラクタの後部の3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持部)に脱着可能に連結された機体13を備えている。
【0013】
機体13は、左右方向長手状のフレーム部であるフレームパイプ部15を有し、このフレームパイプ部15の長手方向中央部に入力軸保持部16が設けられ、この入力軸保持部16にて入力軸17が回転可能に保持されている。入力軸17は、図示しないトラクタのPTO軸に動力伝達手段を介して接続されている。
【0014】
また、機体13には、入力軸17側からの動力により所定方向(図1に示す回転方向)に回転しながら耕耘作業をする耕耘体21が回転可能に設けられている。耕耘体21は、機体13が有する左右1対の支持部22にて回転可能に支持された左右方向の耕耘軸23と、この耕耘軸23に取り付けられた複数の耕耘爪24とを有している。
【0015】
さらに、耕耘体21の上方部は、機体13の板状の耕耘カバー部26にて覆われている。耕耘カバー部26は、上方に向かって凸の湾曲板状に形成されている。そして、耕耘カバー部26の後端部には、耕耘体21の後方で整地作業をする板状の整地体(均平板)27が上下方向に回動可能に設けられている。
【0016】
また、機体13には、左右方向にやや細長いホッパー状の収容体31が取り付けられ、この収容体31に被散布物Wが収容されている。収容体31は、上面開口部32を有する箱状のもので、この上面開口部32は蓋33にて開閉可能となっている。収容体31は、被散布物Wを下方に向けて排出する上下面開口状の複数の排出筒部35を下端部に有し、これら複数の排出筒部35は左右方向に間隔をおいて並んでいる。
【0017】
収容体31内の下部には、被散布物Wを排出筒部35側に供給する左右方向長手状の繰り出し用の回転体36が回転可能に配設されている。回転体36は、モータボックス37内のモータからの動力により回転して被散布物Wを排出筒部35側に供給する。
【0018】
また、収容体31の各排出筒部35には、収容体31からの被散布物Wを案内して下端部の落下口部43から落下させる案内体41の上端部が取り付けられている。
【0019】
各案内体41は、上下面が開口した細長円筒状をなす可撓性の案内ホース42のみで構成され、この案内ホース42の上端部が排出筒部35の外周側に取り付けられている。案内ホース42の下面開口部が、下方に向かって開口する落下口部43となっており、この落下口部43が耕耘体21の上側前方に位置している。これら複数の落下口部43は、互いに等間隔をおいて左右方向に並んでいる。
【0020】
機体13の耕耘カバー部26の前端部における水平状の被取付板部26aには、複数の案内体41を位置決めする左右方向長手状で板状の位置決め体46が取付具(例えばボルトおよびナット)47にて脱着可能に取り付けられている。
【0021】
位置決め体46は、耕耘カバー部26の被取付板部26aに取り付けられた水平状の取付板部48と、この取付板部48の前端部から下方に向かって突出する鉛直状の突出板部49とを有し、この突出板部49の下端部が自由端部となっている。取付板部48および突出板部49は、いずれも左右方向に長手方向を有する矩形板状に形成されている。
【0022】
取付板部48には、案内ホース42の本数と同じ数の位置決め用孔部51が形成され、この各位置決め用孔部51に案内ホース42の下端部が挿通保持されている。つまり、位置決め用孔部51にて案内ホース42の下端部が所定位置に位置決めされている。
【0023】
また、位置決め体46の突出板部49の前面には、耕耘体21の前方で案内ホース42の落下口部43から落下した被散布物Wの大気中への飛散を防止する板状の飛散防止体55が位置決め体46の全長にわたって取り付けられている。
【0024】
そして、飛散防止体55は、落下口部43の前方の近傍位置に耕耘体21からの耕耘土と接触するように配設されている。すなわち、飛散防止体55が位置決め体46の前部から下方に向かって突出し、この飛散防止体55の少なくとも一部は落下口部43よりも下方に位置している。換言すると、落下口部43の下方の前方部が飛散防止体55にて覆われている。
【0025】
飛散防止体55は、例えば1枚板状の弾性変形可能な弾性部材である弾性板56にて構成されている。弾性板56は、左右方向に長手方向を有する矩形板状に形成され、この弾性板56の左右方向長さ寸法(横寸法)と耕耘体21の軸方向長さ寸法とが略同じである。そして、この弾性板56にて、少なくとも案内ホース42の下端部の前方部が覆われている。
【0026】
また、弾性板56の上端部が突出板部49の前面に脱着可能に取り付けられ、この弾性板56は、弾性変形する前の状態では、鉛直面に沿った平面状になっている。そして、作業時には、回転中の耕耘体21から前斜め下方へ飛び出す耕耘土が弾性板56の後面に常に接触するため、弾性板56は、耕耘土から受ける外力で弾性変形して湾曲面状となる。この弾性板56は、例えば土が付着しにくいゴム或いは樹脂にて形成されている。
【0027】
なお、図3中のAは、耕耘前の圃場面に対して傾斜角度αをもって傾斜しかつ耕耘カバー部26の被取付板部26aの後端部の点Pを通る仮想傾斜線である。
【0028】
そして、弾性板56の上下方向長さ寸法(縦寸法)Bは、例えば傾斜角度α=60°の仮想傾斜線Aが弾性板56の下端部の点Qを通る寸法に設定されている。なお、弾性板56の寸法Bは、傾斜角度αが25°〜60°(好ましくは40°〜50°)の範囲内の仮想傾斜線Aが弾性板56の下端部を通る寸法であればよい。
【0029】
次に、農作業機10の作用等を説明する。
【0030】
図1に示すように、トラクタの走行により農作業機10を進行方向に移動させると、ロータリー12の耕耘体21にて耕耘作業が行われ、この耕耘体21の後方で整地体27にて整地作業が行われる。
【0031】
また、散布機11の収容体31内では回転体36が回転し、この回転に応じて被散布物Wが排出筒部35内を通って排出される。
【0032】
この排出された被散布物Wは、案内ホース42内を通り、耕耘体21の前方で案内ホース42の落下口部43から下方に向かって落下する。
【0033】
この落下した被散布物Wは、前方側からの周囲の風の影響を弾性板56により遮断されているため、大気中に飛散することなく、耕耘体21から飛び出した耕耘土と接触して混合される。こうして、被散布物Wの散布作業が行われる。
【0034】
そして、農作業機10によれば、飛散防止体55である弾性板56が案内体41の落下口部43の前方に配設されているため、周囲の風の影響を受けにくくなり、案内体41の落下口部43から落下した被散布物Wの大気中への飛散を防止でき、適切な散布作業ができる。
【0035】
また、飛散防止体55である弾性板56は、回転中の耕耘体21から前斜め下方に向かって飛び出す耕耘土と接触するように配設されているため、その弾性板56に接触した耕耘土と被散布物Wとが混合しやすくなり、より適切な散布作業ができる。
【0036】
なお、弾性板56は、例えば図4に示すように、下端部が耕耘前の圃場面の上方近傍に位置するようなものでもよい。
【0037】
また、農作業機10は、図5ないし図7に示すものでもよい。
【0038】
図5ないし図7に示す農作業機10では、各案内体41は、案内ホース42と、この案内ホース42の下端部に取り付けられ被散布物Wを拡散して落下口部43から落下させるノズル(拡散ノズル)61とにて構成されている。ノズル61は、下方に向かって幅広状に形成されており、このノズル61の下面開口部が落下口部43となっている。
【0039】
なお、案内体41は、機体13のフレームパイプ部15に取り付けられた案内体支持具(図示せず)によって支持され、所定位置に位置決めされている。
【0040】
また、被散布物Wの大気中への飛散を防止する飛散防止体55は、ノズル61の数と同じ数の矩形板状の弾性変形可能な弾性部材である分割弾性板62にて構成されている。分割弾性板62は、上下方向にやや長手状の矩形板状に形成されている。
【0041】
さらに、分割弾性板62の上端部がノズル61の下端部前面に脱着可能に取り付けられ、この分割弾性板62は、前記弾性板56と同様、弾性変形する前の状態では、鉛直面に沿った平面状になっている。そして、作業時には、回転中の耕耘体21から前斜め下方へ飛び出す耕耘土が弾性板56の後面に常に接触するため、分割弾性板62は、耕耘土から受ける外力で弾性変形して湾曲面状となる。この弾性板62は、例えば土が付着しにくいゴム或いは樹脂にて形成されている。
【0042】
そして、図5ないし図7に示す農作業機10のように、各案内体41ごとに分割弾性板62を設けた構成でも、周囲の風の影響を受けにくくなり、案内体41の落下口部43から落下した被散布物Wの大気中への飛散を防止でき、適切な散布作業ができる等、前記一実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0043】
また、各実施の形態において、飛散防止体55は、弾性変形可能な弾性部材からなるものには限定されず、例えば可撓性シート部材や、剛性部材等でもよい。つまり、飛散防止体55の材質等は任意である。
【0044】
さらに、例えば飛散防止体55を透明な部材で構成することが好ましく、この場合には、例えばトラクタに乗った作業者は、被散布物Wの散布状態を容易に確認でき、また飛散防止体55に付着した土の状況も容易に確認できる。
【0045】
さらに、例えば飛散防止体55を機体13に取り付けた構成や、飛散防止体55を案内ホース42の下端部に取り付けた構成等でもよい。
【0046】
また、被散布物Wは、例えば粉状或いは粒状ものには限定されず、液状のものでもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 農作業機
21 耕耘体
26 耕耘カバー部
26a 被取付板部
31 収容体
41 案内体
43 落下口部
46 位置決め体
55 飛散防止体
56 弾性部材である弾性板
61 ノズル
62 弾性部材である分割弾性板
W 被散布物
A 仮想傾斜線
B 上下方向長さ寸法
P 耕耘カバー部の被取付板部の後端部の点
α 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8