特許第6034654号(P6034654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許6034654-タイヤ 図000003
  • 特許6034654-タイヤ 図000004
  • 特許6034654-タイヤ 図000005
  • 特許6034654-タイヤ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034654
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20161121BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20161121BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20161121BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20161121BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B60C13/00 E
   B60C9/18 M
   B60C9/20 L
   B60C11/00 D
   B60C9/08 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-235073(P2012-235073)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-84006(P2014-84006A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】柿本 龍児
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−178294(JP,A)
【文献】 特開2008−201379(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/130520(WO,A1)
【文献】 特開平11−342709(JP,A)
【文献】 特開平09−254608(JP,A)
【文献】 特開昭55−164509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/18
B60C 9/20
B60C 11/00
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビード部および該ビード部のタイヤ径方向外側に延びる1対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部とを有し、該サイドウォール部は、前記トレッド部を形成するトレッドゴムの両側端に連なるカバーゴムを、前記ビード部側から前記トレッド部側へ跨って配置されたサイドゴムのタイヤ幅方向外側に重ね合わせてなり、前記サイドゴムは、前記サイドウォール部の外表面に、タイヤ幅方向外側に突出するリムガードを具え、ビード部の上端付近からカーカスに沿って、カーカスのクラウン部の方向にゴム厚が漸減して延びる形状であり、
前記サイドゴムとカバーゴムとの界面の、タイヤ幅方向最外側端縁をPOUT、同最内側端縁をPINとしたとき、
タイヤ幅方向断面視で、前記POUTから前記ビード部のビードベースラインに下ろした垂線の長さhの、タイヤ断面高さSHに対する比h/SHが0.45以上0.53以下であり、
同じくタイヤ幅方向断面視で、前記タイヤの外表面の、前記POUTにおける接線と、該POUTおよび前記PINを結ぶ線分との挟角αが35°〜40°でり、 前記PINと前記カバーゴムと前記トレッドゴムとの界面のタイヤ幅方向外側端縁とは一致すること、を特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部にベルトを有し、該ベルトと前記サイドゴムのタイヤ幅方向内側端部とがタイヤ径方向に重複する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カバーゴムの貯蔵弾性率が前記トレッドゴムの貯蔵弾性率よりも高い、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記カバーゴムと前記トレッドゴムとの界面のタイヤ幅方向最外側端縁が、該界面のタイヤ幅方向最内側端縁よりもタイヤ径方向内側に位置する、請求項1から3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記1対のビード部の間にトロイダル状に跨るカーカスを有し、前記カーカスは、前記ビード部においてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返される折り返し部を有し、該折り返し部の少なくとも端部が前記ベルトとタイヤ径方向に重複する、請求項1から4に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドウォール部に改良を加えたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのビード部側からトレッド部側へ跨って配置されるサイドゴムのタイヤ幅方向外側に、カバーゴムを重ね合わせた構造が知られている。例えば、特許文献1では、上記のサイドウォール構造において、サイドゴムとカバーゴムとの界面に沿って発生するクラックを回避しうる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたサイドウォール構造は、サイドゴムとカバーゴム(特許文献1では、外側サイドゴムにあたる)とのオーバーラップ量が大きいため、サイドウォール部のゴム厚が大きくなることは避けられない。すなわち、特許文献1には、サイドゴムとカバーゴムとの界面のタイヤ幅方向最外側端縁を、ビードベースから、タイヤ断面高さの50%以下の領域に配置することが提案されているが、かかる構成では、サイドゴムとカバーゴムとのオーバーラップ量が大きく、軽量化ひいては転がり抵抗を小さくすることとは逆の思想であり、サイドウォール部のゴム厚を薄くすることは難しい。
【0005】
本発明の目的は、上記のサイドウォール構造、すなわち、カバーゴムをサイドゴムのタイヤ幅方向外側に重ね合わせたサイドウォール構造において、サイドゴムとカバーゴムとの界面に長期の使用により生じるクラックの発生を抑制しつつ、該サイドウォール部のゴム厚を薄くして転がり抵抗性能を向上させたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の知見に由来するものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
本発明のタイヤは、1対のビード部および該ビード部のタイヤ径方向外側に延びる1対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部とを有し、該サイドウォール部は、前記トレッド部を形成するトレッドゴムの両側端に連なるカバーゴムを、前記ビード部側から前記トレッド部側へ跨って配置されたサイドゴムのタイヤ幅方向外側に重ね合わせてなり、前記サイドゴムは、前記サイドウォール部の外表面に、タイヤ幅方向外側に突出するリムガードを具え、ビード部の上端付近からカーカスに沿って、カーカスのクラウン部の方向にゴム厚が漸減して延びる形状であり、前記サイドゴムとカバーゴムとの界面の、タイヤ幅方向最外側端縁をPOUT、同最内側端縁をPINとしたとき、タイヤ幅方向断面視で、前記POUTから前記ビード部のビードベースラインに下ろした垂線の長さhの、タイヤ断面高さSHに対する比h/SHが0.45以上0.53以下であり、同じくタイヤ幅方向断面視で、前記タイヤの外表面の、前記POUTにおける接線と、該POUTおよび前記PINを結ぶ線分との挟角αが35°〜40°でり、前記PINと前記カバーゴムと前記トレッドゴムとの界面のタイヤ幅方向外側端縁とは一致すること、を特徴とする。
【0007】
かかる構成の本発明のタイヤによれば、タイヤのサイドウォール部を形成する2つのゴムの界面に沿って生じるクラックの発生を抑制しつつ、該サイドウォール部のゴム厚を薄くして転がり抵抗性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【0008】
本発明のタイヤにおいては、前記トレッド部にベルトを有し、該ベルトと前記サイドゴムのタイヤ幅方向内側端部とがタイヤ径方向に重複すること、が好ましい。
この構成によれば、サイドゴムとトレッドゴムとの界面の面積が増加するため、これらのゴム相互間におけるクラック耐性が向上する。また、ベルト端のセパレーションを抑制することができる。
【0009】
本発明のタイヤにおいては、前記カバーゴムの貯蔵弾性率が前記トレッドゴムの貯蔵弾性率よりも高いこと、が好ましい。
この構成によれば、歪みが大きくなるカバーゴムの耐カット性能が向上して、タイヤの耐久性が高まる。
【0010】
本発明のタイヤにおいては、前記カバーゴムと前記トレッドゴムとの界面のタイヤ幅方向最外側端縁が、該界面のタイヤ幅方向最内側端縁よりもタイヤ径方向内側に位置すること、が好ましい。
この構成によれば、カバーゴムとトレッドゴムとの界面における、クラックの発生を抑制することができる。
【0011】
本発明のタイヤにおいては、前記1対のビード部の間にトロイダル状に跨るカーカスを有し、前記カーカスは、前記ビード部においてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返される折り返し部を有し、該折り返し部の少なくとも端部が前記ベルトとタイヤ径方向に重複すること、が好ましい。
この構成によれば、カーカスの折り返し部の端部がベルト端部とカーカス本体とに挟み込まれて、カーカスの折り返し部に発生する歪みを低減できるため、かかるカーカス端部がサイドウォール部に配置される場合に比し、タイヤの耐久性をさらに向上させることができる。
【0012】
なお、タイヤ断面高さSHや挟角α等は、タイヤを適用リムに組み付け、所定空気圧を充填し、無負荷の状態で測定するものとする。
ここでいう、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO STANDARD MANUAL、米国ではTRA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リムをいう。
また、「所定空気圧」とは、上記のJATMA等に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいうものとし、「所定荷重」とは、最大負荷能力に相当する荷重をいうものとする。
【0013】
また、本発明における「ゴム厚」とは、タイヤの両ビード部間をトロイダル状に跨るカーカスから、タイヤサイド部外表面までの距離のことであり、距離の引き方はカーカスラインの法線方向に測定されるものであり、「サイドウォール部のゴム厚を薄くする」とは、タイヤ最大幅位置におけるゴム厚を4.0mm以下とすることをいう。
【0014】
また、上記のゴムの貯蔵弾性率(E′)は、粘弾性測定装置を用いて、室温25℃、周波数52Hz、初期歪み率2%、動歪み率2%、で測定するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カバーゴムをサイドゴムのタイヤ幅方向外側に重ね合わせたサイドウォール構造において、サイドゴムとカバーゴムとの界面に沿って生じるクラックの発生を抑制しつつ、該サイドウォール部のゴム厚を薄くして転がり抵抗性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤの半部の、タイヤ幅方向断面図である。
図2図1に示す断面図の、サイドウォール部の一部を拡大した図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るタイヤの半部の、タイヤ幅方向断面図である。
図4】比較例タイヤの半部の、タイヤ幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明のタイヤを、その実施形態を例示して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ10の半部の、タイヤ幅方向断面である。タイヤ10は、1対のビードコア1を有するビード部11および該ビード部11のタイヤ径方向外側に延びる1対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12間に跨るトレッド部13と、からなり、一方のビード部11からトレッド部13を通り他方のビード部11にわたって延びる少なくとも1層(図示では1層)のカーカスプライからなるカーカス2と、該カーカス2のクラウン部の径方向外側に少なくとも1層(図示では2層)のベルト層からなる傾斜ベルト3を具え、トレッド部13を形成するトレッドゴム6の両端部に連なるカバーゴム7が、サイドウォール部12を形成するサイドゴム5のタイヤ幅方向外側に重ね合わされてなるタイヤである。
【0018】
このタイヤ10は、上記の傾斜ベルト3のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層(図示では3層)の周方向ベルト層からなる周方向ベルト4を具え、傾斜ベルト3と周方向ベルト4とでベルトを構成しているが、本発明に係るタイヤは、上記のベルト構成に限定されるものではない。
また、タイヤ10は、サイドウォール部12の外表面に、タイヤ幅方向外側に突出するリムガード15を具えているが、これを具えないタイヤであってもよい。さらに、タイヤ10のカーカス2は、ビードコア1にて折り返された部分がトレッド部13まで延びるエンベロープ構造であるが、ハイターンアップ構造やアップダウン構造等としてもよい。
【0019】
ここにおいて、本発明に係るタイヤ10は、サイドゴム5とカバーゴム7との界面Pの、タイヤ幅方向最外側端縁をPOUT、同最内側端縁をPINとしたとき、タイヤ幅方向断面視で、該POUTからビード部11のビードベースラインBLに下ろした垂線の長さhの、タイヤ断面高さSHに対する比h/SHが0.45以上0.53以下であり、同じくタイヤ幅方向断面視で、タイヤ10の外表面のPOUTにおける接線と、該POUTおよびPINを結ぶ線分Lとの挟角αが35°〜40°であること、が肝要である。
【0020】
まず、比h/SHを0.45以上0.53以下とするのは、次の理由による。
上記POUTを比h/SHが0.53以下の領域に配置すれば、サイドウォール部外表面の引張り歪みが25%未満の領域にPOUTを配置することになり、サイドゴム5とカバーゴム7との界面に沿うクラックが発生し難くなる。ここで、クラックの発生について引張歪み25%を境界値とするのは、引張歪みが25%以上となるサイドウォール領域に上記の端縁POUTが配置されると、そこからクラックが発生する可能性が高まるからである。具体的には、過去の試験からの経験で引張歪み25%付近でクラックが発生しやすい経緯があったことから、引張歪み25%をクラック発生の目安としている。
【0021】
一方で、上記POUTを比h/SHが小さくなる領域に配置するにつれて、サイドゴム5とカバーゴム7とのオーバーラップ量が大きくなり、サイドウォール部12のゴム厚が大きくなるところ、該POUTを比h/SHが0.45以上の領域に配置すれば、上述したサイドウォール部12のゴム厚(カーカス層からタイヤサイドウォール部外表面までの距離のことであり、距離の引き方はカーカスラインの法線方向に測定されるもの)を4.0mm以下にして、タイヤの転がり抵抗性能を向上させることができる。
従って、比h/SHを0.45以上0.53以下とすることが求められる。
【0022】
また、比h/SHが0.45以上であれば、界面Pの面積を適切な範囲とすることができるため、タイヤの製造工程において、サイドゴム5となる未加硫ゴム部材とカバーゴム7となる未加硫ゴム部材とをステッチャー装置で圧着する工程において、両ゴム部材の界面Pにしわが生じる製品不良も抑制できる。
【0023】
なお、比h/SHは0.46以上0.50以下であることがさらに好ましく、特には、比h/SHが0.48であることが最も好ましい。サイドウォール部12におけるクラックを十分抑制しつつ、該サイドウォール部12のゴム厚を最も薄くすることができる。
【0024】
また、タイヤ10の成形方法としては、トレッドゴム6となる未加硫ゴム部材を押出成形する際に、デュアルチューバを用いて、トレッドゴム6となる未加硫ゴム部材の両端面にカバーゴム7となる未加硫ゴム部材を一体化させた複合ゴム部材を形成し、未加硫タイヤを成型するに当り、この複合ゴム部材をそのカバーゴム7となる未加硫ゴム部材を介して、サイドゴム5となる未加硫ゴム部材に貼り合わせる方法が好適である。
この場合、上記の複合ゴム部材が、サイドゴム5となる未加硫ゴム部材を、タイヤ径方向外側から覆うように配置および加硫成型されることになり、かかるタイヤの成形方法によれば、タイヤの生産性が向上するからである。
【0025】
次に、図2は、図1に示すタイヤ10の断面における界面P周辺を拡大したものである。タイヤ10の外表面の端縁POUTにおける接線Mと、該端縁POUTおよび端縁PINを結ぶ線分Lとの挟角αが35°〜40°であれば、サイドウォール部12のゴム厚を薄くして、転がり抵抗を十分に小さくすることができる。
【0026】
また、端縁PINを、該端縁PINと端縁POUTとを結ぶ線分Lの長さが、15mm以上となる位置に配置することが好ましい。この線分Lが15mm以上の長さであれば、サイドゴム5とカバーゴム7との界面Pの面積が十分に確保されて、ゴム相互間の接着力が向上するので、界面Pに沿うクラックの発生が効果的に抑制される。
【0027】
続いて、図3は、本発明の第2実施形態に係るタイヤ20のタイヤ幅方向断面である。図3において図1と同様の構成要素は、図1と同じ参照符号を付してその説明を省略する。図3に示す第2実施形態のタイヤ20では、サイドゴム5のタイヤ幅方向内側端部5eが、傾斜ベルト3と周方向ベルト4とからなるベルトと、タイヤ径方向に重複する部分wを有している点において、図1のタイヤ10とは異なる。
このように、サイドゴム5は、ビード部11の上端付近からカーカス2に沿うようにして、ゴム厚を徐々に薄くしながら、該カーカス2のクラウン部に向かって延び、サイドゴム5のタイヤ幅方向内側端部5eが上記ベルトとタイヤ径方向に重複すること、が好ましい。
【0028】
この場合、サイドゴム5とトレッドゴム6との界面が大きくなるため、両ゴム間の接着力が増して、かかるゴム間のクラック耐性を向上させることができる。また、サイドウォールゴム5が傾斜ベルト3と周方向ベルト4とからなるベルトのタイヤ径方向内側に配置されると、かかるゴム部分がクッションゴムの代わりとなり、上記ベルトの端部とカーカス2との間に生じるせん断力に起因する、上記ベルトのセパレーションを抑制することができるので、タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0029】
また、上記サイドゴム5のタイヤ幅方向内側端部5eを、サイドゴム5とは異なるクッションゴムとしてもよい。この場合においても、上記のタイヤ20と同様にタイヤの耐久性を向上させることができる。
【0030】
さらに、本発明のタイヤでは、カバーゴム7の貯蔵弾性率(E′)がトレッドゴム6の貯蔵弾性率(E′)よりも高いこと、が好ましい。
これは、タイヤに荷重を負荷した際のカバーゴム7には、サイドゴム5と同様に、トレッドゴム6に比し大きな引張歪みが生じるため、かかる部分に耐カット性のより優れたゴムを配置することによって、タイヤの耐久性が向上するからである。
【0031】
また、本発明のタイヤでは、カバーゴム7とトレッドゴム6との界面Qのタイヤ幅方向最外側端縁QOUT、(図1および図3では、端縁PINと一致する)が、該界面Qのタイヤ幅方向最内側端縁QINよりもタイヤ径方向内側に位置すること、が好ましい。
当該構成によれば、荷重負荷時に、カバーゴム7に歪みが集中するのを抑制して、該カバーゴム7とトレッドゴム6との界面Qにおいてクラックが発生するのを抑制することができる。
【0032】
さらに、本発明のタイヤでは、前記1対のビード部11の間にトロイダル状に跨るカーカス2を有し、前記カーカス2は、前記ビード部11においてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返される折り返し部を有し、該折り返し部の少なくとも端部が前記ベルトとタイヤ径方向に重複すること、が好ましい。
この構成によれば、カーカス2の折り返し部の端部がベルト端部とカーカス2の本体とに挟み込まれて、カーカス2の折り返し部に発生する歪みを低減できるため、かかるカーカス2の端部がサイドウォール部12に配置される場合に比し、タイヤの耐久性をさらに向上させることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。
タイヤサイズが255/40R18、タイヤの偏平率が40%、の発明例タイヤ1〜7および比較例タイヤ1〜4を表1に示す仕様のもと試作し、サイドウォール部12の耐クラック性を評価するとともに該サイドウォール部のゴム厚を測定し、転がり抵抗性能を評価した。
なお、カバーゴム7の貯蔵弾性率(E′)とトレッドゴム6の貯蔵弾性率(E′)との大小関係については、貯蔵弾性率(E′)がカバーゴム7の方が高い場合を+、トレッドゴムの方が高い場合を−として示している。
また、界面Qの傾きについては、界面Qのタイヤ幅方向最外側端縁QOUTが、同最内側端縁QINよりもタイヤ径方向内側に位置する場合を+、その逆の場合を−として示している。
【0034】
【表1】
【0035】
(耐クラック性)
各供試タイヤをリム8J×18に組み付け、正規内圧を充填した後、車両に装着し、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機(速度:60km/h)を用いて、サイドウォール外表面にクラックが発生するまでの走行時間を測定し、表1に示した。なお、表1に示すのは、比較例1を100とする指数評価であり、値が大きいほど耐クラック性に優れていることを示している。
【0036】
(転がり抵抗性能)
各供試タイヤをリム8J×18に組み付け正規内圧を充填した後、車両に装着し、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機(速度:60km/h)を用いて、車軸の転がり抵抗力を求めた。この転がり抵抗の測定はISO18164に準拠し、スムースドラム、フォース式にて実施したものである。表1に示す結果は、従来例タイヤを100とする指数評価であり、値が小さいほど転がり抵抗性能に優れていることを示している。
【0037】
発明例タイヤにおいては、サイドウォール部12におけるクラックを抑制しつつ、比較例タイヤに比し、平均1.0mmの薄ゲージ化を実現して、転がり抵抗性能を向上させていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、カバーゴムをサイドゴムのタイヤ幅方向外側に重ね合わせたサイドウォール構造において、サイドゴムとカバーゴムとの界面に沿って生じるクラックの発生を抑制しつつ、該サイドウォール部のゴム厚を薄くして転がり抵抗性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:ビードコア 2:カーカス 3:傾斜ベルト 3a、3b:傾斜ベルト層
4:周方向ベルト 4a、4b、4c:周方向ベルト層 5:サイドゴム 5e:サイドゴムのタイヤ幅方向内側端部 6:トレッドゴム 7:カバーゴム 10、20、40:タイヤ 11:ビード部 12:サイドウォール部 13:トレッド部 15:リムガード CL:タイヤ赤道 L:POUTとPINとを結ぶ線分 M:タイヤ外表面のPOUTにおける接線 P:サイドゴムとカバーゴムとの界面 PIN:界面Pのタイヤ幅方向最内側端縁 POUT:界面Pのタイヤ幅方向最外側端縁 Q:トレッドゴムとカバーゴムとの界面 QIN:界面Qのタイヤ幅方向最内側端縁 QOUT:界面Qのタイヤ幅方向最外側端縁 SH:タイヤ断面高さ h:POUTからビードベースに下ろした垂線 w:サイドゴムとベルトとの重複部分のタイヤ幅方向長さ α:接線Mと線分Lとの挟角
図1
図2
図3
図4