特許第6034657号(P6034657)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034657発光装置の制御回路、それを用いた発光装置および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034657
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】発光装置の制御回路、それを用いた発光装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20161121BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   H01L33/00 J
   H02M3/155 J
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-237140(P2012-237140)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-86689(P2014-86689A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義和
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−215913(JP,A)
【文献】 特開2005−033853(JP,A)
【文献】 特開2012−190559(JP,A)
【文献】 特開2012−049179(JP,A)
【文献】 特開2012−038782(JP,A)
【文献】 特開2011−243787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、前記発光素子の他端と接続され、調節可能な駆動電流を供給する電流ドライバと、を有する発光装置に使用され、前記スイッチング電源のスイッチング素子を制御するゲートパルス信号を生成する制御回路であって、
前記発光素子と前記電流ドライバの接続点の電圧に応じた検出電圧と基準電圧との誤差を増幅し、誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記誤差信号に応じてデューティ比が調節される前記ゲートパルス信号を生成するパルス変調器と、
外部のホストプロセッサから前記駆動電流が増大する時刻に先立ってアサートされる通知信号を受け、前記電流ドライバが生成する前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記駆動電圧を上昇せしめるブースト回路と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記ブースト回路は、前記発光素子と前記電流ドライバの接続点の電圧を、可変の減衰率で減衰し、前記検出電圧を生成する可変減衰器を含み、前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記減衰率を低下させることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記可変減衰器は、
前記誤差増幅器の一方の入力端子と前記発光素子と前記電流ドライバの接続点の間に設けられた第1分圧用抵抗と、
前記誤差増幅器の前記一方の入力端子と固定電圧端子の間に、直列に設けられた第2分圧用抵抗およびスイッチと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記ブースト回路は、前記通知信号がアサートされてから所定期間、前記可変減衰器の減衰率を低下させるブーストコントローラをさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記ブースト回路は、前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記基準電圧を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項6】
前記ブースト回路は、前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記ゲートパルス信号のデューティ比が増大するように、前記誤差信号のレベルを変化させることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項7】
前記ブースト回路は、前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記ゲートパルス信号のデューティ比を増大させることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項8】
発光素子と、前記発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、前記発光素子の他端と接続され、調節可能な駆動電流を供給する電流ドライバと、を有する発光装置に使用され、前記スイッチング電源のスイッチング素子を制御するゲートパルス信号を生成する制御回路であって、
その一端が、前記発光素子と前記電流ドライバの接続点と接続された第1分圧用抵抗と、
前記第1分圧用抵抗の他端と固定電圧端子の間に直列に設けられた第2分圧用抵抗およびスイッチと、
前記第1分圧用抵抗の前記他端の検出電圧と、所定の基準電圧の誤差を増幅し、誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記誤差信号に応じてデューティ比が調節される前記ゲートパルス信号を生成するパルス変調器と、
外部のホストプロセッサから前記駆動電流が増大する時刻に先立ってアサートされる通知信号を受け、前記電流ドライバが生成する前記駆動電流が増大する時刻に先立ち、前記スイッチをオンするブーストコントローラと、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項9】
前記ブーストコントローラは、前記通知信号がアサートされてから所定期間、前記スイッチをオンすることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の制御回路。
【請求項11】
前記発光素子は、直列に接続された複数の発光ダイオードを含むLEDストリングであることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の制御回路。
【請求項12】
発光素子と、
前記発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、
前記発光素子の他端と接続され、調節可能な駆動電流を供給する電流ドライバと、
を備え、
前記スイッチング電源は、スイッチング素子と、前記スイッチング素子をスイッチングするためのゲートパルス信号を生成する請求項1から11のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
液晶パネルと、
前記液晶パネルのバックライトとして設けられた請求項12に記載の発光装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルのバックライトや照明機器として、LED(発光ダイオード)をはじめとする発光素子を利用した発光装置が利用される。図1は、比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。発光装置1003は、1チャンネルのLEDストリング(発光素子)6と、スイッチング電源1004と、を備える。
【0003】
発光素子6は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源1004は、入力端子P1に入力された入力電圧VINを昇圧して、出力端子P2に接続された発光素子6の一端に駆動電圧VOUTを供給する。
【0004】
スイッチング電源1004は、出力回路102と、制御IC(Integrated Circuit)1100を備える。出力回路102は、インダクタL1、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、出力キャパシタC1を含む。制御IC1100は、スイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を制御することにより、駆動電圧VOUTを調節する。
【0005】
発光素子6の経路上には、PWM調光用スイッチ(トランジスタ)M2および電流検出用の検出抵抗R2が設けられる。コントローラ1010は、目標輝度に応じてデューティ比が調節されるPWM調光用のパルス信号G2を生成する。ドライバDR2は、パルス信号G2にもとづき、PWM調光用スイッチM2をスイッチングする。
【0006】
検出抵抗R2には、発光素子6に流れる駆動電流ILEDに比例した電圧降下(検出電圧)VR2が発生する。誤差増幅器EA1は、検出電圧VR2と、基準電圧VREFとの誤差を増幅し、フィードバック電圧VFBを生成する。コントローラ1010は、フィードバック電圧VFBにもとづいてパルス変調されるゲートパルス信号G1を生成する。ドライバDR1は、ゲートパルス信号G1にもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0007】
インダクタL1に流れる電流を検出するために、抵抗R1が設けられる。抵抗R1には、コイル電流IL1に比例した電圧降下が発生する。コントローラ1010は、電圧降下VR1がしきい値を所定のしきい値を超えないように過電流保護を行う。またピーク電流モードあるいは平均電流モードのDC/DCコンバータでは、電圧降下VR1が、ゲートパルス信号G1のデューティ比に反映される。
【0008】
以上の構成により、検出電圧VR2が基準電圧VREFと一致するようにフィードバックがかかり、駆動電流ILEDは、ILED=VREF/R2に安定化される。この駆動電流ILEDを基準として、PWM調光用スイッチM2のスイッチングのデューティ比を変化させることで、発光素子6に流れる電流の時間平均量が変化し、発光素子6の輝度をデューティ比に応じて変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−261158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、図1に示すような1チャンネルのLEDストリングを有する発光装置において、PWM調光用スイッチM2および検出抵抗R2に代えて、電流ドライバを利用し、電流ドライバが生成する電流量を変化させることにより、LEDストリングの輝度を制御する回路について検討した。なお、多チャンネルのLEDストリングを有する発光装置においては、各チャンネルのLEDストリングごとに電流ドライバを設けることは一般的な構成であるが、1チャンネルのLEDストリングにおいては、電流ドライバの消費電力の観点で不利であるため採用されていなかった。
【0011】
図2は、本発明者が検討した発光装置2003の構成を示す回路図である。発光装置2003は、図1のPWM調光用スイッチM2および検出抵抗R2に代えて、電流ドライバ2008を備える。
【0012】
電流ドライバ2008は、誤差増幅器EA2、トランジスタM3、抵抗R3を含む。トランジスタM3および抵抗R3は、発光素子6の経路上に設けられる。誤差増幅器EA2の非反転入力端子には、調光制御電圧VDIMが入力され、その反転入力端子には、抵抗R3の電圧降下VR3が入力される。電流ドライバ2008おいては、電圧降下VR3が調光制御電圧VDIMと一致するようにフィードバックがかかり、ILED=VDIM/R3で与えられる駆動電流ILEDが生成される。
【0013】
この構成において、誤差増幅器EA1は、発光素子6のカソード電圧、言い換えれば電流ドライバ2008の電圧降下VLEDと、所定の基準電圧VREFの誤差を増幅する。電流ドライバ2008が、定電流源として機能するためには、その電圧降下VLEDがあるしきい値レベルより大きくなければならず、したがって基準電圧VREFは、このしきい値レベルよりも高く定められる。これにより、発光素子6のカソード電圧VLEDが、しきい値レベルよりも高い基準電圧VREFに安定化される。
【0014】
発光素子6に駆動電流ILEDが流れることにより、発光素子6には、駆動電流ILEDに応じた電圧降下Vが生ずる。したがってスイッチング電源2004の出力電圧VOUTは、回路の定常状態において、式(1)で与えられる。
OUT=VREF+V …(1)
【0015】
本発明者は、発光素子6の調光を目的として、調光制御電圧VDIMをダイナミックに変化させたときに、以下の問題が発生することを認識するに至った。
【0016】
図3は、図2の発光装置2003において、調光制御電圧VDIMをダイナミックに変化させたときの電圧、電流波形図である。時刻t1以前に、調光制御電圧VDIMは第1レベルV1であり、駆動電流ILEDは、第1レベルI1=V1/R3に安定化されている。第1レベルI1の駆動電流ILEDが流れるときの発光素子6の電圧降下をVF1とするとき、出力電圧VOUTは、VREF+VF1に保たれる。
【0017】
時刻t1に、発光素子6の輝度を低下させるべく、調光制御電圧VDIMを第2レベルV2に変化させると、これに応答して、駆動電流ILEDは、第2レベルI2=V2/R3に減少する。駆動電流ILEDが減少すると、発光素子6の電圧降下がVF2に減少する。そうすると、発光素子6のカソード電圧VLEDが跳ね上がる。その後、フィードバックによってカソード電圧VLEDは基準電圧VREFに近づいていく。
【0018】
時刻t2に、発光素子6の輝度を高めるために、調光制御電圧VDIMが第1レベルV1に上昇する。このとき、出力電圧VOUTはVF1+VREFよりも低いため、駆動電流ILEDは直ちに第1レベルI1には戻らない。スイッチング電源2004のフィードバックによって、出力電圧VOUTが徐々に上昇すると、駆動電流ILEDが第1レベルI1に向かって増大していく。
【0019】
また、フィードバックループの特性によっては、出力電圧VOUTにリンギングが生ずる場合がある。このリンギングによって出力電圧VOUTがVF1+VREFより低くなると、駆動電流ILEDが第1レベルI1よりも小さくなる。
【0020】
このように、図2の発光装置2003において、駆動電流ILEDをダイナミックに変化させると、出力電圧VOUTが不足する期間(i)、(ii)が発生し、それらの期間において駆動電流ILEDが目標レベルより小さくなり、実効的な輝度が低下するという問題が生ずる。
【0021】
なお、かかる課題を当業者の一般的な認識としてとらえてはならず、本発明者が独自に認識したものである。
【0022】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、駆動電流ILEDを変化させたときの、輝度の低下を抑制可能な発光装置の制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のある態様は、発光装置に使用され、スイッチング電源のスイッチング素子を制御するゲートパルス信号を生成する制御回路に関する。発光装置は、発光素子と、発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、発光素子の他端と接続され、調節可能な駆動電流を供給する電流ドライバと、を有する。
制御回路は、発光素子と電流ドライバの接続点の電圧に応じた検出電圧と基準電圧との誤差を増幅し、誤差信号を生成する誤差増幅器と、誤差信号に応じてデューティ比が調節されるゲートパルス信号を生成するパルス変調器と、電流ドライバが生成する駆動電流が増大する時刻に先立ち、駆動電圧を上昇せしめるブースト回路と、を備える。
【0024】
この態様によると、駆動電流が増大する時刻に先だって、LEDストリングの両端間の電圧を、増大後の駆動電流を流すのに十分な電圧レベルまで上昇させることができ、輝度の低下を抑制できる。
【0025】
ブースト回路は、発光素子と電流ドライバの接続点の電圧を、可変の減衰率で減衰し、検出電圧を生成する可変減衰器を含み、駆動電流が増大する時刻に先立ち、減衰率を低下させてもよい。
減衰率をα(0<α≦1)、基準電圧をVREFとするとき、発光素子と電流ドライバの接続点の電圧VLEDは、VLED=VREF/αが成り立つようにフィードバックがかかる。したがって減衰率を低下させることにより、VLEDを上昇させることができ、ひいては、駆動電圧VOUTを上昇させることができる。
【0026】
可変減衰器は、誤差増幅器の一方の入力端子と発光素子と電流ドライバの接続点の間に設けられた第1分圧用抵抗と、誤差増幅器の一方の入力端子と固定電圧端子の間に、直列に設けられた第2分圧用抵抗およびスイッチと、を含んでもよい。
この場合、スイッチのオン、オフに応じて、減衰率を切りかえることができる。
【0027】
ブースト回路は、外部のホストプロセッサから駆動電流が増大する時刻に先立ってアサートされる通知信号を受け、通知信号がアサートされてから所定期間、可変減衰器の減衰率を低下させるブーストコントローラをさらに含んでもよい。
【0028】
ブースト回路は、駆動電流が増大する時刻に先立ち、基準電圧を上昇させてもよい。
この態様によっても、発光素子と電流ドライバの接続点の電圧VLEDは、VLED=VREFが成り立つようにフィードバックがかかる。したがって基準電圧を上昇させることにより、VLEDを上昇させることができ、ひいては、駆動電圧VOUTを上昇させることができる。
【0029】
ブースト回路は、駆動電流が増大する時刻に先立ち、ゲートパルス信号のデューティ比を増大させてもよい。
【0030】
ブースト回路は、駆動電流が増大する時刻に先立ち、ゲートパルス信号のデューティ比が増大するように、誤差信号のレベルを変化させてもよい。
【0031】
本発明の別の態様もまた、制御回路である。この制御回路は、その一端が、発光素子と電流ドライバの接続点と接続された第1分圧用抵抗と、第1分圧用抵抗の他端と固定電圧端子の間に直列に設けられた第2分圧用抵抗およびスイッチと、第1分圧用抵抗の他端の検出電圧と、所定の基準電圧の誤差を増幅し、誤差信号を生成する誤差増幅器と、誤差信号にもとづき、検出電圧が基準電圧と一致するようにデューティ比が調節されるゲートパルス信号を生成するパルス変調器と、電流ドライバが生成する駆動電流が増大する時刻に先立ち、スイッチをオンするブーストコントローラと、を備える。
【0032】
この態様では、スイッチの制御に応じて、第1分圧用抵抗と第2分圧用抵抗が形成する減衰器の減衰率を変化する。したがって駆動電流が増大する時刻に先だってスイッチをオンすることにより、LEDストリングの両端間の電圧を、増大後の駆動電流を流すのに十分な電圧レベルまで上昇させることができ、輝度の低下を抑制できる。
【0033】
ブーストコントローラは、外部のホストプロセッサから駆動電流が増大する時刻に先立ってアサートされる通知信号を受け、通知信号がアサートされてから所定期間、スイッチをオンしてもよい。
【0034】
発光素子は、直列に接続された複数の発光ダイオードを含むLEDストリングであってもよい。
【0035】
本発明の別の態様は発光装置に関する。発光装置は、発光素子と、発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、発光素子の他端と接続され、調節可能な駆動電流を供給する電流ドライバと、を備えてもよい。スイッチング電源は、スイッチング素子と、スイッチング素子をスイッチングするためのゲートパルス信号を生成する上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0036】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、液晶パネルと、液晶パネルのバックライトとして設けられた上述の発光装置と、を備えてもよい。
【0037】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0038】
本発明のある態様によれば、駆動電流ILEDを変化させたときに、輝度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】比較技術に係る発光装置の構成例を示す回路図である。
図2】本発明者が検討した発光装置の構成を示す回路図である。
図3図2の発光装置において、調光制御電圧VDIMをダイナミックに変化させたときの電圧、電流波形図である。
図4】実施の形態に係る制御ICを備える発光装置を示す回路図である。
図5図4の発光装置において、調光制御電圧VDIMをダイナミックに変化させたときの動作波形図である。
図6図4の発光装置を備える電子機器の例を示す図である。
図7図7(a)、(b)は、第1、第2の変形例に係るブースト回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0041】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0042】
図4は、実施の形態に係る制御IC100を備える発光装置3を示す回路図である。発光装置3は、発光素子6と、スイッチング電源4と、電流ドライバ8と、ホストプロセッサ9を備える。
【0043】
発光素子6は、直列に接続された複数のLEDを含むLEDストリングである。
【0044】
ホストプロセッサ9は、発光装置3全体を統括的に制御する。具体的には、電流ドライバ8に与えられる調光制御電圧VDIMを制御することにより、発光素子6の輝度を制御する。本実施の形態では、ホストプロセッサ9が調光制御電圧VDIMを生成する場合を説明する。
【0045】
スイッチング電源4は、昇圧型のDC/DCコンバータであり、入力端子P1に入力された入力電圧VINを昇圧し、その出力端子P2に接続された発光素子6の一端(アノード)に駆動電圧VOUTを供給する。
【0046】
スイッチング電源4は、制御IC100および出力回路102を備える。出力回路102は、インダクタL1、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、出力キャパシタC1を含む。出力回路102のトポロジーは一般的であるため、説明を省略する。
【0047】
制御IC100のスイッチング端子SWは、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。制御IC100は、発光素子6の点灯に必要な出力電圧VOUTが得られ、かつ発光素子6が目標の輝度で発光するように、フィードバックによりデューティ比が調節されるゲートパルス信号G1を生成し、スイッチングトランジスタM1のスイッチング動作を制御する。
【0048】
制御IC100は、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能ICである。なお、「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。またスイッチングトランジスタM1は制御IC100に内蔵されてもよい。
【0049】
電流ドライバ8は、発光素子6の他端(カソード)と接続され、発光素子6に調節可能な駆動電流ILEDを供給する。電流ドライバ8の構成は特に限定されないが、図2に示したように、誤差増幅器EA2、トランジスタM3、抵抗R3を含んでもよい。電流ドライバ8の一部もしくは全部は、制御IC100に内蔵されてもよい。
【0050】
制御IC100は、誤差増幅器EA1、パルス変調器10、ドライバDR1、過電流保護回路12、ブースト回路20を備える。
【0051】
誤差増幅器EA1は、発光素子6と電流ドライバ8の接続点の電圧(カソード電圧ともいう)VLEDに応じた検出電圧VLED’と基準電圧VREFとの誤差を増幅し、誤差信号VERRを生成する。パルス変調器10は、誤差信号VERRにもとづき、検出電圧VLED’が基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節されるゲートパルス信号G1を生成する。パルス変調器10は、パルス幅変調器であってもよいし、パルス周波数変調器であってもよく、その変調方式は特に限定されない。またパルス変調器10は、電圧モード、ピーク電流モード、平均電流モードなど、さまざまな形式の変調器を採用しうる。電流モードの変調器の場合、ゲートパルス信号G1のデューティ比は、誤差電圧VERRに加えて、第1検出抵抗R1の電圧降下VR1に応じて調節される。
【0052】
過電流保護回路12は、第1検出抵抗R1の電圧降下VR1を監視し、所定のしきい値を超えると、過電流状態と判定し、所定の保護処理を行う。
【0053】
ドライバDR1は、パルス変調器10が生成したゲートパルス信号G1を受け、それにもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。
【0054】
ブースト回路20は、電流ドライバ8が生成する駆動電流が増大する時刻に先立ち、駆動電圧を上昇(ブースト)せしめる。
上述のように、発光素子6の輝度すなわち調光制御電圧VDIMは、ホストプロセッサ9によって制御される。したがって、ホストプロセッサ9は、駆動電流ILEDがいつどのように変化するかを知っている。そこで、ホストプロセッサ9は、駆動電流ILEDを増大させる時刻に先立って、制御IC100に対して、通知信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。ブースト回路20は、この通知信号S1に応答して、駆動電圧VOUTを上昇させる。
【0055】
ブースト回路20は、ブーストコントローラ22および可変減衰器24を含む。
可変減衰器24は、発光素子6と電流ドライバ8の接続点のカソード電圧VLEDを、可変の減衰率αで減衰し、検出電圧VLED’を生成する。減衰率αは、少なくとも通常時の第1の値α1と、駆動電圧VLEDをブーストするときの第2の値α2と、の2値で切りかえ可能となっている。ただし、α1>α2が成り立っている。
【0056】
ブーストコントローラ22は、駆動電流ILEDが増大する時刻に先立ち、減衰率αを第1の値α1から第2の値α2に切りかえることにより、その値を低下させる。具体的には通知信号S1がアサートされてから所定期間、可変減衰器24の減衰率αを低下させる。
【0057】
可変減衰器24は、第1分圧用抵抗R11、第2分圧用抵抗R12、スイッチ26を含む。第1分圧用抵抗R11は、誤差増幅器EA1の一方の入力端子(反転入力端子)と発光素子6と電流ドライバ8の接続点の間に設けられる。第2分圧用抵抗R12およびスイッチ26は、誤差増幅器EAの一方の入力端子と固定電圧端子の間に直列に設けられる。
【0058】
たとえばスイッチ26はNチャンネルMOSFETであり、そのゲートにハイレベルの制御信号S2が入力されるとオン、ローレベルの制御信号S2が入力されるとオフとなる。ブーストコントローラ22は、通知信号S1がアサートされてから所定時間、制御信号S2をハイレベルとしてもよいし、通知信号S1がアサートされてから、調光制御電圧VDIMが増大する時刻までの間、制御信号S2をハイレベルとしてもよい。
【0059】
スイッチ26がオフのとき、可変減衰器24の減衰率はα1=1であり、スイッチ26がオンのとき、可変減衰器24の減衰率はα2=R12/(R11+R12)で与えられる。
【0060】
なお可変減衰器24の構成は特に限定されず、当業者によればさまざまな可変減衰器が設計しうることが理解される。また可変減衰器24の一部または全部、たとえば第1分圧用抵抗R11は、制御IC100の半導体チップの外部に設けられてもよい。
【0061】
以上が発光装置3の構成である。続いてその動作を説明する。図5は、図4の発光装置3において、調光制御電圧VDIMをダイナミックに変化させたときの動作波形図である。
【0062】
時刻t1以前に、調光制御電圧VDIMは第1レベルV1であり、駆動電流ILEDは、第1レベルI1=V1/R3に安定化されている。また減衰率α=α1(=1)であり、VLED’=VLED=VREFが成り立っている。第1レベルI1の駆動電流ILEDが流れるときの発光素子6の電圧降下をVF1とするとき、出力電圧VOUTは、VREF+VF1に保たれる。
【0063】
時刻t1に、発光素子6の輝度を低下させるべく、調光制御電圧VDIMを第2レベルV2に変化させると、これに応答して、駆動電流ILEDは、第2レベルI2=V2/R3に減少する。駆動電流ILEDが減少すると、発光素子6の電圧降下がVF2に減少する。そうすると、発光素子6のカソード電圧VLEDが跳ね上がる。その後、フィードバックによってカソード電圧VLEDは基準電圧VREFに近づいていく。
【0064】
時刻t3に、発光素子6の輝度を高めるために、調光制御電圧VDIMが第1レベルV1に上昇する。これに先立つ時刻t2に、ホストプロセッサ9は通知信号S1をアサートする。これを受けてブーストコントローラ22は、可変減衰器24の減衰率αを第2の値α2に低下させる。その結果、検出電圧VLED’はVREF×α2に低下する。
【0065】
その後、制御IC100によるフィードバック制御により、検出電圧VLED’(=VLED×α2)は、基準電圧VREFに近づいていく。つまりカソード電圧VLEDは、基準電圧VREFより高い電圧レベル、具体的にはVREF/α2に近づいていく。その結果、駆動電圧VOUTは、調光制御電圧VDIMが上昇する時刻t3に先だって、VREF/α2+VF2付近まで上昇する。
【0066】
そして、時刻t3に調光制御電圧VDIMが第1レベルV1に変化する。このとき、出力電圧VOUTはVF1+VREF付近に保たれているため、駆動電流ILEDは直ちに第1レベルI1に戻る。
【0067】
このように、図4の発光装置3によれば、駆動電流ILEDを変化させたときの、輝度の低下を抑制することができる。
【0068】
通知信号S1がアサートされる時刻t2と、調光制御電圧VDIMが上昇する時刻t3の間の時間τは、制御IC100のフィードバックループの応答速度に鑑みて定めればよい。具体的にはτは、減衰率αを切りかえた後、検出電圧VLED’が基準電圧VREFに安定化されるまでに要する時間よりも長く定めればよい。
【0069】
続いて、発光装置3の用途を説明する。図6は、図4の発光装置3を備える電子機器2の例を示す図である。電子機器2はたとえば液晶ディスプレイ装置、テレビ受像器、カーナビ用ディスプレイ、あるいは液晶パネルを有する携帯電話端末、タブレットPC、オーディオプレイヤなどである。
【0070】
電子機器2は、LCD(Liquid Crystal Display)パネル5を備える。発光装置3の発光素子6は、LCDパネル5の背面にバックライトとして設けられる。電子機器2の筐体内には、図示しないスイッチング電源4、電流ドライバ8、ホストプロセッサ9が内蔵される。
【0071】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセス、それらの組み合わせには、さまざまな変形例が存在しうる。以下、こうした変形例について説明する。
【0072】
(変形例1)
ブースト回路20の構成は、図4のそれには限定されない。
図7(a)は、第1の変形例に係るブースト回路20aを示す回路図である。この変形例において、基準電圧VREF’は可変電圧源28により生成される。検出電圧VLED’は、カソード電圧VLEDそのものであってもよいし、カソード電圧VLEDを固定の減衰率で減衰した電圧であってもよい。ブーストコントローラ22は、駆動電流ILEDが増大する時刻に先立ち、可変電圧源28を制御し、基準電圧VREF’を上昇させる。これにより、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
(変形例2)
図7(b)は、第2の変形例に係るブースト回路20bを示す回路図である。この変形例において、ブースト回路20bは、駆動電流ILEDが増大する時刻に先立ち、ゲートパルス信号G1のデューティ比が増大するように、誤差信号VERRのレベルを変化させる。たとえばブースト回路20bは、誤差増幅器EA1の出力端子に接続されたプルアップ回路30を備える。プルアップ回路30はブーストコントローラ22からの制御信号S2に応答して、誤差信号VERRを強制的に上昇させる。これにより、ゲートパルス信号G1のデューティ比が増大し、駆動電圧VOUTがブーストされる。
【0074】
実施の形態および第1、第2の変形例を理解した当業者によれば、ブースト回路20は、通知信号S1に応答して、ゲートパルス信号G1のデューティ比を増大させるように構成されていればよく、その手段、構成には、そのほかのさまざまな変形例が存在し、それらも本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0075】
(変形例3)
発光素子6は、LEDストリングには限定されず、現在、あるいは将来利用可能なその他の発光素子であってもよい。
【0076】
(変形例4)
ホストプロセッサ9は調光制御電圧VDIMの値を示すデジタル値を生成し、図示しないD/Aコンバータによりデジタル値を調光制御電圧VDIMに変換してもよい。
あるいは、調光制御電圧VDIMを生成する電圧源を、制御IC100に内蔵し、ホストプロセッサ9から、制御IC100に対して、調光制御電圧VDIMの指令値を示すデジタル値を送信してもよい。
【0077】
(変形例5)
実施の形態では、電流ドライバ8駆動電圧VLEDをブーストするために、減衰率αを2値で切りかえる場合を説明したが、本発明はそれには限定されず、3値以上を切りかえ可能としてもよい。この場合、輝度の変更前の発光素子6の電圧降下Vと、変更後の電圧降下Vの差分に応じて、駆動電圧VOUTのブースト量を最適化することができる。
【0078】
(変形例6)
実施の形態では、発光装置3の用途として液晶パネルのバックライトを説明したが、本発明はそれには限定されない。たとえば発光装置3は、照明機器などにも利用可能である。
【0079】
(変形例7)
実施の形態ではインダクタL1を用いた非絶縁型のスイッチング電源を説明したが、本発明はトランスを用いた絶縁型のスイッチング電源にも適用可能である。
【0080】
(変形例8)
また、本実施の形態で説明した各信号の、ハイレベル、ローレベルの設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0081】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0082】
2…電子機器、3…発光装置、4…スイッチング電源、5…LCDパネル、6…発光素子、8…電流ドライバ、9…ホストプロセッサ、100…制御IC、102…出力回路、10…パルス変調器、12…過電流保護回路、20…ブースト回路、22…ブーストコントローラ、24…可変減衰器、EA1…誤差増幅器、DR1…ドライバ、R11…第1分圧用抵抗、R12…第2分圧用抵抗、26…スイッチ、R1…第1検出抵抗、R2…第2検出抵抗、L1…インダクタ、C1…出力キャパシタ、D1…整流ダイオード、M1…スイッチングトランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7