(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0036】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0037】
また、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0038】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0039】
また、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0040】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体層を有するトランジスタを示す。
【0042】
トランジスタはチャネル形成領域が1つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造もしくは3つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁層を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0043】
図1(A)及び(B)に示すトランジスタ440aは、トップゲート構造のトランジスタの一例である。
図1(A)は平面図であり、
図1(A)中の一点鎖線X−Yで切断した断面が
図1(B)に相当する。
【0044】
チャネル長方向の断面図である
図1(B)に示すように、トランジスタ440aを含む半導体装置は、酸化物絶縁層436が設けられた絶縁表面を有する基板400上に、チャネル形成領域409、低抵抗領域404a、低抵抗領域404bを含む酸化物半導体層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、ゲート電極層401の側面に設けられた側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b、ゲート電極層401上に設けられた絶縁層413、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に設けられた層間絶縁層415、トランジスタ440aを覆う絶縁層407を有する。なお、図面をわかりやすくするため、
図1(A)では絶縁層407、酸化物絶縁層436の記載を省略している。
【0045】
層間絶縁層415はトランジスタ440aによる凹凸を平坦化するように設けられており、該上面の高さ(基板400表面からの垂直距離)は側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b、及び絶縁層413と概略同じである。また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの上面の高さは、層間絶縁層415、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b、及び絶縁層413の上面の高さより低く、ゲート電極層401の上面の高さより高い。
【0046】
また、
図1において、絶縁層407は、層間絶縁層415、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、側壁絶縁層412a、412b、絶縁層413と接して設けられている。
【0047】
酸化物半導体層403中の低抵抗領域404aおよび低抵抗領域404bは、自己整合プロセスにより形成する。具体的には、ゲート電極層401をマスクとして酸化物半導体層403にドーパントを導入し、酸化物半導体層403中にドーパントを含む低抵抗領域404aおよび低抵抗領域404bを形成する。酸化物半導体層403のゲート電極層401と重畳する領域にはドーパントが導入されず、該領域がチャネル形成領域409となる。ドーパントを含む低抵抗領域404aおよび低抵抗領域404bは、チャネル形成領域409より抵抗が低い領域である。
【0048】
なお、ドーパントは、酸化物半導体層403の導電率を変化させる不純物である。ドーパントの導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0049】
チャネル長方向にチャネル形成領域409を挟んで低抵抗領域404aおよび低抵抗領域404bを含む酸化物半導体層403を有することにより、トランジスタ440aはオン特性(例えば、オン電流及び電界効果移動度)が高く、高速動作や、高速応答が可能となる。
【0050】
酸化物半導体層403に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
【0051】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0052】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、In−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、In−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0053】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0054】
また、酸化物半導体として、InMO
3(ZnO)
m(m>0)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In
2SnO
5(ZnO)
n(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0055】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0056】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0057】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより移動度を上げることができる。
【0058】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)
2+(b−B)
2+(c−C)
2≦r
2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0059】
酸化物半導体は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)、微結晶、または非晶質などの状態をとる。
【0060】
好ましくは、酸化物半導体は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)とする。
【0061】
CAAC−OSは、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OSは、非晶質相に結晶部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OSに含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OSには粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OSは、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0062】
CAAC−OSに含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OSの被形成面または表面に垂直な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。
【0063】
なお、CAAC−OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OSの形成過程において、酸化物半導体層の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OSへ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0064】
CAAC−OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OSの被形成面または表面に垂直な方向に揃うため、CAAC−OSの形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OSが形成されたときの被形成面または表面に垂直な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0065】
また、CAAC−OSの被形成面は非晶質であることが好ましい。CAAC−OSの被形成面が結晶質であると、結晶性が乱れやすくCAAC−OSが形成されにくい。なお、CAAC−OSの被形成面がCAAC−OSと同様の結晶質を有する場合はこの限りではない。CAAC−OSと同様の結晶質を有する表面上に酸化物半導体層を形成すると、該化物半導体層はCAAC−OSになりやすい。
【0066】
CAAC−OSを用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0067】
なお、酸化物半導体層を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0068】
また、CAAC−OSのように結晶部を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0069】
なお、Raは、算術平均粗さを面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現でき、以下の式にて定義される。
【0071】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり座標(x
1,y
1,f(x
1,y
1))、(x
1,y
2,f(x
1,y
2))、(x
2,y
1,f(x
2,y
1))、(x
2,y
2,f(x
2,y
2))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS
0、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZ
0とする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【0072】
酸化物半導体層の厚さは、1nm以上30nm以下(好ましくは5nm以上10nm以下)とし、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、酸化物半導体層403は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0073】
図2(A)乃至(D)及び
図3(A)乃至(D)にトランジスタ440aを有する半導体装置の作製方法の一例を示す。
【0074】
まず、基板400上に酸化物絶縁層436を形成する。
【0075】
基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0076】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に酸化物半導体層403を含むトランジスタ440aを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体層403を含むトランジスタ440aを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体層403を含むトランジスタ440aとの間に剥離層を設けるとよい。
【0077】
酸化物絶縁層436としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0078】
酸化物絶縁層436として、熱酸化膜を用いてもよい。熱酸化膜は、基板を酸化性雰囲気中で熱処理することで、基板表面を酸化させて形成することができる。例えば、基板400として単結晶シリコン基板を用いて、酸素を含む雰囲気や水蒸気を含む雰囲気中で、900℃乃至1200℃で数時間の熱処理を行うことで、基板400の表面に熱酸化膜を形成することができる。
【0079】
また、酸化物絶縁層436は、単層でも積層でもよい。例えば、基板400上に酸化シリコン層、In−Hf−Zn系酸化物層、酸化物半導体層403を順に積層してもよいし、基板400上に酸化シリコン層、In:Zr:Zn=1:1:1の原子数比のIn−Zr−Zn系酸化物層、酸化物半導体層403を順に積層してもよいし、基板400上に酸化シリコン層、In:Gd:Zn=1:1:1の原子数比のIn−Gd−Zn系酸化物層、酸化物半導体層403を順に積層してもよい。
【0080】
また、酸化物絶縁層436と基板400との間に窒化物絶縁層を設けてもよい。窒化物絶縁層は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0081】
本実施の形態では、基板400として単結晶シリコン基板を用い、酸化物絶縁層436として基板400上にスパッタリング法により厚さ300nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0082】
次に、酸化物絶縁層436上に酸化物半導体層403を形成する(
図2(A)参照)。
【0083】
酸化物絶縁層436は、酸化物半導体層403と接するため、層中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましい。例えば、酸化物絶縁層436として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO
2+α(ただし、α>0)とする。このような酸化物絶縁層436を用いることで、酸化物半導体層403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。酸化物半導体層403へ酸素を供給することにより、層中の酸素欠損を補填することができる。
【0084】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含む酸化物絶縁層436を酸化物半導体層403と接して設けることによって、該酸化物絶縁層436から酸化物半導体層403へ酸素を供給することができる。酸化物半導体層403及び酸化物絶縁層436を少なくとも一部が接した状態で加熱処理を行うことによって酸化物半導体層403への酸素の供給を行ってもよい。
【0085】
また、酸化物絶縁層436に酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して酸化物絶縁層436を酸素過剰な状態としてもよい。酸素の導入は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、酸素を含む雰囲気下で行うプラズマ処理などを用いることができる。例えば、酸素を含む雰囲気下でプラズマ処理を行う場合は、アッシング装置を用いることができる。
【0086】
酸化物半導体層403の形成工程において、酸化物半導体層403に水素、又は水がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体層403の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で酸化物絶縁層436が形成された基板を予備加熱し、基板及び酸化物絶縁層436に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0087】
酸化物絶縁層436において酸化物半導体層403が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0088】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、酸化物絶縁層436の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0089】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、酸化物絶縁層436表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0090】
平坦化処理は、例えば、酸化物絶縁層436として用いる酸化シリコン膜表面に化学的機械研磨法により研磨処理(研磨条件:ポリウレタン系研磨布、シリカ系スラリー、スラリー温度室温、研磨圧0.001MPa、研磨時回転数(テーブル/スピンドル)60rpm/56rpm、研磨時間0.5分)を行い、酸化シリコン膜表面における平均面粗さ(Ra)を約0.15nmとすればよい。
【0091】
なお、酸化物半導体層403は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)状態とすることが好ましい。
【0092】
酸化物半導体層403は、銅、アルミニウム、塩素などの不純物がほとんど含まれない高純度化されたものであることが望ましい。トランジスタの製造工程において、これらの不純物が混入または酸化物半導体層表面に付着する恐れのない工程を適宜選択することが好ましい。具体的には、酸化物半導体層403の銅濃度は1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
17atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体層403のアルミニウム濃度は1×10
18atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体層403の塩素濃度は2×10
18atoms/cm
3以下とする。
【0093】
また、酸化物半導体層403は成膜直後において、化学量論的組成より酸素が多い過飽和の状態とすることが好ましい。例えば、スパッタリング法を用いて酸化物半導体層403を成膜する場合、成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件で成膜することが好ましく、特に酸素雰囲気(酸素ガス100%)で成膜を行うことが好ましい。成膜ガスの酸素の占める割合が多い条件、特に酸素ガス100%の雰囲気で成膜すると、例えば成膜温度を300℃以上としても、膜中からのZnの放出が抑えられる。
【0094】
なお、本実施の形態において、酸化物半導体層403を、スパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、組成がIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn系酸化物(IGZO)を成膜する。
【0095】
また、金属酸化物ターゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層403は緻密な膜とすることができる。
【0096】
酸化物半導体層403を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0097】
まず、減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持する。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体層403を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(H
2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層403に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0098】
また、酸化物半導体層403中のナトリウム(Na)、リチウム(Li)、カリウム(K)などのアルカリ金属の濃度は、Naは5×10
16cm
−3以下、好ましくは1×10
16cm
−3以下、さらに好ましくは1×10
15cm
−3以下、Liは5×10
15cm
−3以下、好ましくは1×10
15cm
−3以下、Kは5×10
15cm
−3以下、好ましくは1×10
15cm
−3以下とすることが好ましい。
【0099】
また、酸化物絶縁層436と酸化物半導体層403とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。酸化物絶縁層436と酸化物半導体層403とを大気に曝露せずに連続して形成すると、酸化物絶縁層436表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0100】
酸化物半導体層403は、膜状の酸化物半導体層をフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体層に加工して形成することができる。
【0101】
なお、特段の説明が無い限り、本明細書で言うフォトリソグラフィ工程には、レジストマスクの形成工程と、導電層または絶縁層のエッチング工程と、レジストマスクの剥離工程が含まれているものとする。
【0102】
島状の酸化物半導体層403を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0103】
酸化物半導体層のエッチングは、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体層のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO−07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0104】
なお、微細なパターンを形成するためには、異方性エッチングが可能なドライエッチング法を用いることが好ましい。ドライエッチング法の一例として、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法が挙げられる。例えば、酸化物半導体層をICPエッチング法により、エッチング(エッチング条件:エッチングガス(BCl
3:Cl
2=60sccm:20sccm)、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.9Pa)し、酸化物半導体層を島状に加工することができる。
【0105】
また、ドライエッチング法により酸化物半導体層をエッチングして島状の酸化物半導体層403を形成すると、レジストマスクに覆われていない島状の酸化物半導体層403の周辺部分にエッチングガスや、処理室内に残存する元素が不純物として付着する場合がある。
【0106】
また、酸化物半導体層403に不純物が付着すると、トランジスタのオフ電流の増加や、しきい値電圧の変動やばらつきの増加などの電気的特性の劣化がもたらされやすい。また、酸化物半導体層403に寄生チャネルが生じやすくなり、電気的に分離されるべき電極が酸化物半導体層403を介して電気的に接続されやすくなる恐れがある。
【0107】
また、不純物によっては、酸化物半導体層403内の表面近傍に混入し、酸化物半導体層403中の酸素を引き抜いてしまい、酸化物半導体層403に酸素欠損が形成されることがある。例えば、上述したエッチングガスに含まれる塩素やボロンや、処理室の構成材料であるアルミニウムは、酸化物半導体層403が低抵抗化(n型化)する要因の一つとなりうる。
【0108】
そこで、本発明の一態様では、島状の酸化物半導体層403を形成するためのエッチングが終了した後、酸化物半導体層403に付着した不純物を除去するための洗浄処理(不純物除去処理)を行う。
【0109】
なお、不純物除去処理は、酸化物半導体層403を形成した後、追って行われるゲート絶縁層442形成の直前に行う事が好ましい。不純物除去処理をゲート絶縁層442形成の直前に行うことで、レジストマスクを除去した後の工程で酸化物半導体層403の上面および側面に付着した不純物元素を除去し、酸化物半導体層403とゲート絶縁層442の界面状態を良好なものとすることができる。
【0110】
ゲート絶縁層442形成前に洗浄処理(不純物除去処理)を行うことで、特性ばらつきが少なく、安定した電気特性を有する信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0111】
不純物除去処理は、溶液による洗浄処理によって行うことができる。溶液による洗浄処理は、TMAH(Tetramethylammonium Hydroxide)溶液などのアルカリ性の溶液、希フッ酸、シュウ酸などの酸性の溶液、または水を用いて行うことができる。例えば、希フッ酸を用いる場合、50wt%フッ酸を、水で1/10
2乃至1/10
5程度、好ましくは1/10
3乃至1/10
5程度に希釈した希フッ酸を使用する。すなわち、濃度が0.5重量%乃至5×10
−4重量%の希フッ酸、好ましくは5×10
−2重量%乃至5×10
−4重量%の希フッ酸を洗浄処理に用いることが望ましい。洗浄処理により、酸化物半導体層403に付着した上記不純物を除去することができる。なお、シュウ酸を含む溶液としては、ITO−07N(関東化学株式会社製)を用いることもできる。
【0112】
また、希フッ酸溶液を用いて不純物除去処理を行うと、酸化物半導体層403の上面や側面をエッチングすることができる。すなわち、酸化物半導体層403の上面や側面に付着した不純物や、または酸化物半導体層403内の上面近傍や側面近傍に混入した不純物を、酸化物半導体層403の一部とともに除去することができる。また、酸化物半導体層403の上面や側面に生じた欠陥部分も除去することができる。
【0113】
不純物除去処理を行うことで、SIMS分析法により得られる濃度のピーク値(最大値)において、絶縁層表面及び酸化物半導体層表面における塩素濃度を1×10
19/cm
3以下(好ましくは5×10
18/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18/cm
3以下)とすることが可能となる。また、ボロン濃度を1×10
19/cm
3以下(好ましくは5×10
18/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18/cm
3以下)とすることができる。また、アルミニウム濃度を1×10
19/cm
3以下(好ましくは5×10
18/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18/cm
3以下)とすることができる。
【0114】
また、酸化物半導体層403に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体層403に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0115】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0116】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0117】
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0118】
また、加熱処理で酸化物半導体層403を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体層403を高純度化及びi型(真性)化することができる。
【0119】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、酸化物半導体層の形成後であれば、島状の酸化物半導体層403の形成前に行ってもよく、形成後に行ってもよい。また、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。
【0120】
なお、脱水化又は脱水素化のための加熱処理を、酸化物半導体層を島状の酸化物半導体層403に加工する前、すなわち、膜状の酸化物半導体層が酸化物絶縁層436を覆った状態で行うと、酸化物絶縁層436に含まれる酸素が加熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0121】
また、脱水化又は脱水素化処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素が同時に脱離して減少してしまう恐れがある。酸化物半導体層において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸素欠損に起因してトランジスタの電気的特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。
【0122】
このため、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層403に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
【0123】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層403に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体層403を高純度化、及びi型(真性)化することができる。高純度化し、i型(真性)化した酸化物半導体層403を有するトランジスタは、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0124】
酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、酸素を含む雰囲気下で行うプラズマ処理などを用いることができる。
【0125】
酸素の導入工程は、酸化物半導体層403に酸素導入する場合、酸化物半導体層403に直接導入してもよいし、他の層を通過して酸化物半導体層403へ導入してもよい。酸素を他の層を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、酸素を露出された酸化物半導体層403へ直接導入する場合は、酸素を含む雰囲気下で行うプラズマ処理なども用いることができる。
【0126】
酸化物半導体層403への酸素の導入は、脱水化又は脱水素化処理を行った後が好ましいが、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層403への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0127】
このように、酸化物半導体層403は水素などの不純物が十分に除去されることにより高純度化され、また、十分な酸素が供給されて酸素が過飽和の状態とされることにより、i型(真性)または実質的にi型(真性)化されたものであることが望ましい。具体的には、酸化物半導体層の水素濃度は5×10
19atoms/cm
3以下、望ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より望ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。また、十分な酸素が供給されて酸化物半導体層中の酸素が過飽和の状態とするため、酸化物半導体層を包みこむように過剰酸素を含む絶縁層(酸化シリコンなど)を接して設ける。
【0128】
また、過剰酸素を含む絶縁層の水素濃度もトランジスタの特性に影響を与えるため重要である。過剰酸素を含む絶縁層の水素濃度が、7.2×10
20atoms/cm
3以上である場合には、トランジスタの初期特性のバラツキの増大、L長依存性の増大、さらにBTストレス試験において大きく劣化するため、過剰酸素を含む絶縁層の水素濃度は、7.2×10
20atoms/cm
3未満とする。即ち、酸化物半導体層の水素濃度は5×10
19atoms/cm
3以下、且つ、過剰酸素を含む絶縁層の水素濃度は、7.2×10
20atoms/cm
3未満とすることが好ましい。
【0129】
次いで、酸化物半導体層403を覆うゲート絶縁層442を形成する(
図2(B)参照)。
【0130】
なお、ゲート絶縁層442の被覆性を向上させるために、酸化物半導体層403表面にも上記平坦化処理を行ってもよい。特にゲート絶縁層442として膜厚の薄い絶縁層を用いる場合、酸化物半導体層403表面の平坦性が良好であることが好ましい。
【0131】
ゲート絶縁層442の厚さは、1nm以上20nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、ゲート絶縁層442は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0132】
ゲート絶縁層442の材料としては、酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、または窒化酸化シリコンなどを用いることができる。ゲート絶縁層442は、酸化物半導体層403と接する部分において酸素を含むことが好ましい。特に、ゲート絶縁層442は、層中(バルク中)に少なくとも化学量論的組成を超える量の酸素が存在することが好ましく、例えば、ゲート絶縁層442として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO
2+α(ただし、α>0)とする。本実施の形態では、ゲート絶縁層442として、SiO
2+α(ただし、α>0)である酸化シリコン膜を用いる。この酸化シリコン膜をゲート絶縁層442として用いることで、酸化物半導体層403に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。さらに、ゲート絶縁層442は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁層442の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0133】
また、ゲート絶縁層442を形成する前に、酸素、一酸化二窒素、もしくは希ガス(代表的にはアルゴン)などを用いたプラズマ処理により、酸化物半導体層403の上面や側面に付着した水分や有機物などの不純物を除去することが好ましい。
【0134】
また、ゲート絶縁層442の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi
xO
y(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiO
xN
y(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl
xO
y(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。さらに、ゲート絶縁層442は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
【0135】
また、ゲート絶縁層442の形成後、ゲート絶縁層442に酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入してゲート絶縁層442を酸素過剰な状態としてもよい。酸素の導入は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、酸素を含む雰囲気下で行うプラズマ処理などを用いることができる。
【0136】
次にゲート絶縁層442上に導電層及び絶縁層の積層を形成し、該導電層及び該絶縁層の一部を選択的にエッチングして、ゲート電極層401及び絶縁層413の積層を形成する(
図2(C)参照)。
【0137】
ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体層、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0138】
また、ゲート電極層401の材料は、酸化インジウム酸化スズ、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0139】
また、ゲート絶縁層442と接するゲート電極層401として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0140】
絶縁層413の材料は、代表的には酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。絶縁層413は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0141】
次に、ゲート電極層401及び絶縁層413をマスクとして酸化物半導体層403にドーパント421を導入し、低抵抗領域404a、低抵抗領域404bを形成する(
図2(D)参照)。
【0142】
ドーパント421は、酸化物半導体層403の導電率を変化させる不純物である。ドーパント421としては、15族元素(代表的には窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、およびアンチモン(Sb))、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)のいずれかから選択される一以上を用いることができる。
【0143】
ドーパント421は、注入法により、他の膜(例えばゲート絶縁層442)を通過して、酸化物半導体層403に導入することもできる。ドーパント421の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。その際には、ドーパント421の単体のイオンあるいはフッ化物、塩化物のイオンを用いると好ましい。
【0144】
ドーパント421の導入工程は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、また通過させる膜の膜厚を適宜設定して制御すればよい。本実施の形態では、ドーパント421としてリンを用いて、イオン注入法でリンイオンの注入を行う。なお、ドーパント421のドーズ量は1×10
13ions/cm
2以上5×10
16ions/cm
2以下とすればよい。
【0145】
低抵抗領域におけるドーパント421の濃度は、5×10
18/cm
3以上1×10
22/cm
3以下であることが好ましい。
【0146】
ドーパント421を導入する際に、基板400を加熱しながら行ってもよい。
【0147】
なお、酸化物半導体層403にドーパント421を導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0148】
また、ドーパント421の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、温度300℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で1時間、酸素雰囲気下で行うことが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加熱処理を行ってもよい。
【0149】
本実施の形態では、イオン注入法により酸化物半導体層403に、リン(P)イオンを注入する。なお、リン(P)イオンの注入条件は加速電圧30kV、ドーズ量を1.0×10
15ions/cm
2とする。
【0150】
酸化物半導体層403をCAAC−OSとした場合、ドーパント421の導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパント421の導入後に加熱処理を行うことによって、酸化物半導体層403の結晶性を回復することができる。
【0151】
このようにして、ゲート電極層401および絶縁層413をドーパント421の導入時のマスクとして用いる自己整合プロセスにより、酸化物半導体層403中にチャネル形成領域409を挟んで低抵抗領域404a、低抵抗領域404bが形成される。
【0152】
次に、ゲート電極層401及び絶縁層413上に絶縁層を形成し、該絶縁層をエッチングして側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bを形成する。さらに、ゲート電極層401及び側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bをマスクとして、ゲート絶縁層442をエッチングし、ゲート絶縁層402を形成する(
図3(A)参照)。
【0153】
側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bは、絶縁層413と同様な材料及び方法を用いて形成することができる。本実施の形態では、CVD法により形成した酸化窒化シリコン膜を用いる。
【0154】
次いで、酸化物半導体層403、ゲート絶縁層402、ゲート電極層401、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b、及び絶縁層413上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電層444(図示せず)を形成する。
【0155】
導電層444は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。導電層444に用いる材料としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属、または上述した元素を成分とする金属窒化物(窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タングステン)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属またはそれらの金属窒化物(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、導電層444を導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3―SnO
2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3―ZnO)またはこれらの金属酸化物に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0156】
次に、フォトリソグラフィ工程により導電層444上にレジストマスクを形成し、導電層444を選択的にエッチングして島状の導電層445を形成した後、レジストマスクを除去する。なお、該エッチング工程では、ゲート電極層401上の導電層445の除去は行わない。
【0157】
導電層として厚さ30nmのタングステン層を用いる場合、該導電層のエッチングは、例えばドライエッチング法により、タングステン層の一部を選択的にエッチング(エッチング条件:エッチングガス(CF
4:Cl
2:O
2=55sccm:45sccm:55sccm)、電源電力3000W、バイアス電力140W、圧力0.67Pa)して、島状のタングステン層を形成すればよい。
【0158】
次に、島状の導電層445上に層間絶縁層415となる絶縁層446を積層する(
図3(B)参照)。
【0159】
絶縁層446は、絶縁層413と同様な材料及び方法を用いて形成することができる。絶縁層446は、これまで基板400上に形成された層により生じる凹凸を平坦化できる厚さで形成する。本実施の形態では、CVD法により形成した酸化窒化シリコンを300nm形成する。
【0160】
次に絶縁層446及び導電層445に化学的機械研磨法により研磨処理を行い、絶縁層413が露出するよう絶縁層446および導電層445の一部を除去する。
【0161】
該研磨処理によって、絶縁層446を層間絶縁層415に加工し、ゲート電極層401上の導電層445を除去し、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する。
【0162】
本実施の形態では、絶縁層446及び導電層445の除去に化学的機械研磨法を用いたが、他の切削(研削、研磨)方法を用いてもよい。また、ゲート電極層401上の導電層445を除去する工程において、化学的機械研磨法などの切削(研削、研磨)法の他、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)法や、プラズマ処理などを組み合わせてもよい。例えば、化学的機械研磨法による除去工程後、ドライエッチング法やプラズマ処理(逆スパッタリングなど)を行い、処理表面の平坦性向上を図ってもよい。切削(研削、研磨)方法に、エッチング法、プラズマ処理などを組み合わせて行う場合、工程順は特に限定されず、絶縁層446及び導電層445の材料、厚さ、及び表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0163】
なお、本実施の形態においては、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bはゲート電極層401側面に設けられた側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bの側面に接するように設けられている。また、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bは、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bを、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bの側面を上端部よりやや低い位置まで覆っている。ソース電極層405a、ドレイン電極層405bの形状は導電層445を除去する研磨処理の条件によって異なり、本実施の形態に示すように、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b、絶縁層413の研磨処理された表面より厚さ方向に後退した形状となる場合がある。しかし、研磨処理の条件によっては、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bの上端部の高さと、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bの上端部の高さとは概略一致する場合もある。
【0164】
以上の工程で、本実施の形態のトランジスタ440aが作製される(
図3(C)参照)。
【0165】
トランジスタ440aは作製工程において、ゲート電極層401、絶縁層413、及び側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412b上に設けられた導電層445を化学機械研磨処理することによって除去し導電層445を分断することによって、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する。
【0166】
また、ソース電極層405a、及びドレイン電極層405bは、露出した酸化物半導体層403上面、及び側壁絶縁層412a、又は側壁絶縁層412bと接して設けられている。よって、ソース電極層405a又はドレイン電極層405bと酸化物半導体層403とが接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層401との距離(最短距離)は、側壁絶縁層412a、側壁絶縁層412bのチャネル長方向の幅となり、より微細化が達成できる他、作製工程におけるばらつきをより少なくすることができる。
【0167】
また、ソース電極層405a又はドレイン電極層405bと酸化物半導体層403とが接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層401との距離を短くすることができるため、ソース電極層405a又はドレイン電極層405bと酸化物半導体層403とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極層401間の抵抗が減少し、トランジスタ440aのオン特性を向上させることが可能となる。
【0168】
また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成工程におけるゲート電極層401上の導電層445を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきが少ない微細な構造を有するトランジスタ440aを歩留まりよく作製することができる。
【0169】
なお、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成工程におけるゲート電極層401上の導電層445を除去する工程において、絶縁層413の一部、又は絶縁層413全部を除去してもよい。
図4(C)に、絶縁層413を全部除去し、ゲート電極層401が露出しているトランジスタ440cの例を示す。また、ゲート電極層401も上方の一部が除去されてもよい。トランジスタ440cのようにゲート電極層401を露出する構造は、トランジスタ440c上に他の配線や半導体素子を積層する集積回路において用いることができる。
【0170】
トランジスタ440a上に保護絶縁層となる緻密性の高い無機絶縁層(代表的には酸化アルミニウム層)を設けてもよい。
【0171】
本実施の形態では、絶縁層413、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、側壁絶縁層412a、412b、及び層間絶縁層415上に接して絶縁層407を形成する(
図3(D)参照)。
【0172】
また、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bと層間絶縁層415との間に保護絶縁層となる緻密性の高い無機絶縁層(代表的には酸化アルミニウム層)を設けてもよい。
【0173】
図4(B)にソース電極層405a及びドレイン電極層405bと層間絶縁層415との間に絶縁層410を設けたトランジスタ440bの例を示す。トランジスタ440bにおいては、絶縁層410も、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bの形成工程において用いる切削(研削、研磨)工程により上面が平坦化処理されている。
【0174】
絶縁層407、絶縁層410は、単層でも積層でもよく、少なくとも酸化アルミニウム層を含むことが好ましい。
【0175】
絶縁層407、絶縁層410は、プラズマCVD法、スパッタリング法、又は蒸着法等により成膜することができる。
【0176】
酸化アルミニウム以外の絶縁層407、絶縁層410に用いる材料としては、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、又は酸化ガリウムなどの無機絶縁材料などを用いることができる。また、酸化ハフニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化バリウム、又は金属窒化物(例えば、窒化アルミニウム)も用いることができる。
【0177】
本実施の形態では、絶縁層407、絶縁層410としてスパッタリング法により酸化アルミニウムを形成する。酸化アルミニウムを高密度(密度3.2g/cm
3以上、好ましくは3.6g/cm
3以上)とすることによって、トランジスタ440a、トランジスタ440bに安定な電気特性を付与することができる。膜密度はラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、X線反射率測定法(XRR:X−Ray Reflectometry)によって測定することができる。
【0178】
酸化物半導体層403上に設けられる絶縁層407、絶縁層410として用いることのできる酸化アルミニウムは、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0179】
従って、酸化アルミニウムで形成された絶縁層は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体層403への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体層403からの放出を防止する保護層として機能する。
【0180】
絶縁層407、絶縁層410は、絶縁層407、絶縁層410に水、水素等の不純物を混入させない方法(好適にはスパッタリング法など)を適宜用いて形成することが好ましい。
【0181】
また、酸化物半導体層の形成時と同様に、成膜室内の残留水分を除去するために、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で形成した絶縁層407、絶縁層410に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0182】
絶縁層407、絶縁層410を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0183】
また、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するために、トランジスタ上に平坦化絶縁層を形成してもよい。平坦化絶縁層としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0184】
また、
図4(A)に、層間絶縁層415及び絶縁層407にソース電極層405a、及びドレイン電極層405bに達する開口を形成し、開口に配線層435a、配線層435bを形成する例を示す。配線層435a、配線層435bを用いて他のトランジスタや素子と接続させ、様々な回路を構成することができる。
【0185】
配線層435a、配線層435bはゲート電極層401、ソース電極層405a、又はドレイン電極層405bと同様の材料及び方法を用いて形成することができ、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、配線層435a、配線層435bに用いる導電層としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3―SnO
2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0186】
例えば、配線層435a、配線層435bとして、モリブデン膜の単層、窒化タンタル膜と銅膜との積層、又は窒化タンタル膜とタングステン膜との積層などを用いることができる。
【0187】
以上のように、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するオン特性の高いトランジスタ440a、トランジスタ440b、トランジスタ440cを歩留まりよく提供することができる。
【0188】
従って、微細化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0189】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0190】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本明細書に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置の一例を、図面を用いて説明する。
【0191】
図5は、半導体装置の構成の一例である。
図5(A)に、半導体装置の断面図を、
図5(B)に半導体装置の平面図を、
図5(C)に半導体装置の回路図をそれぞれ示す。ここで、
図5(A)は、
図5(B)のA−B、及びC−Dにおける断面に相当する。なお、
図5(B)においては、
図5(A)に示す半導体装置の一部の構成要素を省略している。
【0192】
図5(A)及び
図5(B)に示す半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。トランジスタ162としては、実施の形態1で示すトランジスタ440aの構造を適用する例である。
【0193】
ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0194】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、情報を保持するために酸化物半導体を実施の形態1に示すようなトランジスタ162に用いる他、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0195】
図5(A)におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属間化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極110と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。
【0196】
基板185上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160を覆うように絶縁層128、及び絶縁層130が設けられている。なお、トランジスタ160において、ゲート電極110の側面に側壁絶縁層(サイドウォール絶縁層)を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120としてもよい。
【0197】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ160は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ160を覆うように絶縁層を2層形成し、トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該2層の絶縁層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁層128、絶縁層130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0198】
絶縁層128、絶縁層130は、代表的には酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化シリコン、窒化酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。絶縁層128、絶縁層130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0199】
また、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁層128、絶縁層130を形成してもよい。
【0200】
なお、本実施の形態において、絶縁層128として窒化シリコン膜、絶縁層130として酸化シリコン膜を用いる。
【0201】
絶縁層130表面において、酸化物半導体層144形成領域に、平坦化処理を行うことが好ましい。本実施の形態では、研磨処理(例えばCMP処理)により十分に平坦化した(好ましくは絶縁層130表面の平均面粗さは0.15nm以下)絶縁層130上に酸化物半導体層144を形成する。
【0202】
図5(A)に示すトランジスタ162は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタである。ここで、トランジスタ162に含まれる酸化物半導体層144は、高純度化されたものであることが望ましい。高純度化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0203】
トランジスタ162は、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0204】
トランジスタ162は作製工程において、ゲート電極148、絶縁層137、及び側壁絶縁層136a、136b上に設けられた導電層を化学機械研磨処理により除去する工程を用いて、ソース電極層及びドレイン電極層として機能する電極層142a、142bを形成する。
【0205】
よって、トランジスタ162は、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する電極層142a、142bと酸化物半導体層144が接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極148との距離を短くすることができるため、電極層142a、142bと酸化物半導体層144とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極148間の抵抗が減少し、トランジスタ162のオン特性を向上させることが可能となる。
【0206】
電極層142a、電極層142bの形成工程におけるゲート電極148上の導電層を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するトランジスタを歩留まりよく作製することができる。
【0207】
トランジスタ162上には、層間絶縁層135、絶縁層150が単層または積層で設けられている。本実施の形態では、絶縁層150として、酸化アルミニウムを用いる。酸化アルミニウムを高密度(密度3.2g/cm
3以上、好ましくは3.6g/cm
3以上)とすることによって、トランジスタ162に安定な電気特性を付与することができる。
【0208】
また、層間絶縁層135及び絶縁層150を介して、トランジスタ162の電極層142aと重畳する領域には、導電層153が設けられており、電極層142aと、層間絶縁層135と、絶縁層150と、導電層153とによって、容量素子164が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、導電層153は、容量素子164の他方の電極として機能する。なお、容量が不要の場合には、容量素子164を設けない構成とすることもできる。また、容量素子164は、別途、トランジスタ162の上方に設けてもよい。
【0209】
トランジスタ162および容量素子164の上には絶縁層152が設けられている。そして、絶縁層152上にはトランジスタ162と、他のトランジスタを接続するための配線156が設けられている。
図5(A)には図示しないが、配線156は、絶縁層150、絶縁層152及びゲート絶縁層146などに形成された開口に形成された電極を介して電極層142bと電気的に接続される。ここで、該電極は、少なくともトランジスタ162の酸化物半導体層144の一部と重畳するように設けられることが好ましい。
【0210】
図5(A)及び
図5(B)において、トランジスタ160と、トランジスタ162とは、少なくとも一部が重畳するように設けられており、トランジスタ160のソース領域またはドレイン領域と酸化物半導体層144の一部が重畳するように設けられているのが好ましい。また、トランジスタ162及び容量素子164が、トランジスタ160の少なくとも一部と重畳するように設けられている。例えば、容量素子164の導電層153は、トランジスタ160のゲート電極110と少なくとも一部が重畳して設けられている。このような平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0211】
なお、電極層142b及び配線156の電気的接続は、電極層142b及び配線156を直接接触させて行ってもよいし、電極層142b及び配線156の間の絶縁層に電極を設けて、該電極を介して行ってもよい。また、間に介する電極は、複数でもよい。
【0212】
次に、
図5(A)及び
図5(B)に対応する回路構成の一例を
図5(C)に示す。
【0213】
図5(C)において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160のゲート電極と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子164の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0214】
図5(C)に示す半導体装置では、トランジスタ160のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0215】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160のゲート電極、および容量素子164に与えられる。すなわち、トランジスタ160のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0216】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ160のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0217】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160をnチャネル型とすると、トランジスタ160のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Hは、トランジスタ160のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をV
th_HとV
th_Lの間の電位V
0とすることにより、トランジスタ160のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ160は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ160は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0218】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オフ状態」となるような電位、つまり、V
th_Hより小さい電位を第5の配線に与えればよい。または、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160が「オン状態」となるような電位、つまり、V
th_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0219】
また、
図24に、半導体装置の構成の他の一例を示す。
図24(A)は、半導体装置の平面図、
図24(B)は半導体装置の断面図である。ここで、
図24(B)は、
図24(A)のD3−D4における断面に相当する。なお、
図24(A)においては、図の明瞭化のため、
図24(B)に示す半導体装置の一部の構成要素を省略している。
【0220】
図24において容量素子164は、ゲート電極110、酸化物半導体層144、絶縁層173、及び導電層174で構成されている。導電層174はゲート電極148と同工程で作製され、上面を絶縁層176、側面を側壁絶縁層175a、175bで覆われている。
【0221】
トランジスタ162の電極層142bは層間絶縁層135、絶縁層150に形成された電極層142bに達する開口において、配線156と電気的に接続する。また、酸化物半導体層144の下に接して、導電層172が設けられており、トランジスタ160とトランジスタ162とを電気的に接続している。
【0222】
図24で示すように、トランジスタ160、トランジスタ162、容量素子164を重畳するように密に積層して設けることで、より半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0223】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0224】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲートへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0225】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0226】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0227】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態に示すトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置について、実施の形態2に示した構成と異なる構成について、
図6及び
図7を用いて説明を行う。
【0228】
図6(A)は、半導体装置の回路構成の一例を示し、
図6(B)は半導体装置の一例を示す概念図である。まず、
図6(A)に示す半導体装置について説明を行い、続けて
図6(B)に示す半導体装置について、以下説明を行う。
【0229】
図6(A)に示す半導体装置において、ビット線BLとトランジスタ162のソース電極又はドレイン電極の一方とは電気的に接続され、ワード線WLとトランジスタ162のゲート電極とは電気的に接続され、トランジスタ162のソース電極又はドレイン電極の他方と容量素子254の第1の端子とは電気的に接続されている。
【0230】
次に、
図6(A)に示す半導体装置(メモリセル250)に、情報の書き込みおよび保持を行う場合について説明する。
【0231】
まず、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位として、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、ビット線BLの電位が、容量素子254の第1の端子に与えられる(書き込み)。その後、ワード線WLの電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位として、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、容量素子254の第1の端子の電位が保持される(保持)。
【0232】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは、容量素子254に蓄積された電荷)を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0233】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ162がオン状態となると、浮遊状態であるビット線BLと容量素子254の第1の端子とが導通し、ビット線BLと容量素子254の間で電荷が再分配される。その結果、ビット線BLの電位が変化する。ビット線BLの電位の変化量は、容量素子254の第1の端子の電位(あるいは容量素子254に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0234】
例えば、容量素子254の第1の端子の電位をV、容量素子254の容量をC、ビット線BLが有する容量成分(以下、ビット線容量とも呼ぶ)をCB、電荷が再分配される前のビット線BLの電位をVB0とすると、電荷が再分配された後のビット線BLの電位は、(CB×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセル250の状態として、容量素子254の第1の端子の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0235】
そして、ビット線BLの電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すことができる。
【0236】
このように、
図6(A)に示す半導体装置は、トランジスタ162のオフ電流が極めて小さいという特徴から、容量素子254に蓄積された電荷は長時間にわたって保持することができる。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0237】
次に、
図6(B)に示す半導体装置について、説明を行う。
【0238】
図6(B)に示す半導体装置は、上部に記憶回路として
図6(A)に示したメモリセル250を複数有するメモリセルアレイ251a及び251bを有し、下部に、メモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251a及び251b)を動作させるために必要な周辺回路253を有する。なお、周辺回路253は、メモリセルアレイ251と電気的に接続されている。
【0239】
図6(B)に示した構成とすることにより、周辺回路253をメモリセルアレイ251の直下に設けることができるため半導体装置の小型化を図ることができる。
【0240】
周辺回路253に設けられるトランジスタは、トランジスタ162とは異なる半導体材料を用いるのがより好ましい。例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、十分な高速動作が可能である。したがって、該トランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0241】
なお、
図6(B)に示した半導体装置では、2つのメモリセルアレイ251(メモリセルアレイ251aと、メモリセルアレイ251b)が積層された構成を例示したが、積層するメモリセルアレイの数はこれに限定されない。3つ以上のメモリセルアレイを積層する構成としても良い。
【0242】
次に、
図6(A)に示したメモリセル250の具体的な構成について
図7を用いて説明を行う。
【0243】
図7は、メモリセル250の構成の一例である。
図7(A)に、メモリセル250の断面図を、
図7(B)にメモリセル250の平面図をそれぞれ示す。ここで、
図7(A)は、
図7(B)のE−F、及びG−Hにおける断面に相当する。
【0244】
図7(A)及び
図7(B)に示すトランジスタ162は、上記実施の形態で示した構成と同一の構成とすることができる。
【0245】
絶縁層180上に設けられたトランジスタ162上には、絶縁層256が単層または積層で設けられている。また、絶縁層256を介して、トランジスタ162の電極層142aと重畳する領域には、導電層262が設けられており、電極層142aと、層間絶縁層135と、絶縁層256と、導電層262とによって、容量素子254が構成される。すなわち、トランジスタ162の電極層142aは、容量素子254の一方の電極として機能し、導電層262は、容量素子254の他方の電極として機能する。
【0246】
トランジスタ162および容量素子254の上には絶縁層258が設けられている。そして、絶縁層258上にはメモリセル250と、隣接するメモリセル250を接続するための配線260が設けられている。図示しないが、配線260は、絶縁層256及び絶縁層258などに形成された開口を介してトランジスタ162の電極層142bと電気的に接続されている。但し、開口に他の導電層を設け、該他の導電層を介して、配線260と電極層142bとを電気的に接続してもよい。なお、配線260は、
図6(A)の回路図におけるビット線BLに相当する。
【0247】
図7(A)及び
図7(B)において、トランジスタ162の電極層142bは、隣接するメモリセルに含まれるトランジスタのソース電極としても機能することができる。
【0248】
図7(A)に示す平面レイアウトを採用することにより、半導体装置の占有面積の低減を図ることができるため、高集積化を図ることができる。
【0249】
以上のように、上部に多層に形成された複数のメモリセルは、酸化物半導体を用いたトランジスタにより形成されている。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0250】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(換言すると、十分な高速動作が可能なトランジスタ)を用いた周辺回路と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)を用いた記憶回路とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。また、周辺回路と記憶回路を積層構造とすることにより、半導体装置の集積化を図ることができる。
【0251】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0252】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0253】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した半導体装置を携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器に応用した場合の例を
図8乃至
図11を用いて説明する。
【0254】
携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯機器においては、画像データの一時記憶などにSRAMまたはDRAMが使用されている。SRAMまたはDRAMが使用される理由としてはフラッシュメモリでは応答が遅く、画像処理には不向きであるためである。一方で、SRAMまたはDRAMを画像データの一時記憶に用いた場合、以下の特徴がある。
【0255】
通常のSRAMは、
図8(A)に示すように1つのメモリセルがトランジスタ801〜806の6個のトランジスタで構成されており、それをXデコーダー807、Yデコーダー808にて駆動している。トランジスタ803とトランジスタ805、トランジスタ804とトランジスタ806はインバータを構成し、高速駆動を可能としている。しかし1つのメモリセルが6トランジスタで構成されているため、セル面積が大きいという欠点がある。デザインルールの最小寸法をFとしたときにSRAMのメモリセル面積は通常100〜150F
2である。このためSRAMはビットあたりの単価が各種メモリの中で最も高い。
【0256】
それに対して、DRAMはメモリセルが
図8(B)に示すようにトランジスタ811、保持容量812によって構成され、それをXデコーダー813、Yデコーダー814にて駆動している。1つのセルが1つのトランジスタと1つの容量を有する構成になっており、面積が小さい。DRAMのメモリセル面積は通常10F
2以下である。ただし、DRAMは常にリフレッシュが必要であり、書き換えを行わない場合でも電力を消費する。
【0257】
しかし、先の実施の形態で説明した半導体装置のメモリセル面積は、10F
2前後であり、且つ頻繁なリフレッシュは不要である。したがって、メモリセル面積が縮小され、且つ消費電力が低減することができる。
【0258】
図9に携帯機器のブロック図を示す。
図9に示す携帯機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェイス909を有している。一般にメモリ回路912はSRAMまたはDRAMで構成されており、この部分に先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0259】
図10に、ディスプレイのメモリ回路950に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用した例を示す。
図10に示すメモリ回路950は、メモリ952、メモリ953、スイッチ954、スイッチ955およびメモリコントローラ951により構成されている。また、メモリ回路950は、信号線から入力された画像データ(入力画像データ)、メモリ952、及びメモリ953に記憶されたデータ(記憶画像データ)を読み出し、及び制御を行うディスプレイコントローラ956と、ディスプレイコントローラ956からの信号により表示するディスプレイ957が接続されている。
【0260】
まず、ある画像データがアプリケーションプロセッサ(図示しない)によって、形成される(入力画像データA)。入力画像データAは、スイッチ954を介してメモリ952に記憶される。そしてメモリ952に記憶された画像データ(記憶画像データA)は、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介してディスプレイ957に送られ、表示される。
【0261】
入力画像データAに変更が無い場合、記憶画像データAは、通常30〜60Hz程度の周期でメモリ952からスイッチ955を介して、ディスプレイコントローラ956から読み出される。
【0262】
次に、例えばユーザーが画面を書き換える操作をしたとき(すなわち、入力画像データAに変更が有る場合)、アプリケーションプロセッサは新たな画像データ(入力画像データB)を形成する。入力画像データBはスイッチ954を介してメモリ953に記憶される。この間も定期的にメモリ952からスイッチ955を介して記憶画像データAは読み出されている。メモリ953に新たな画像データ(記憶画像データB)が記憶し終わると、ディスプレイ957の次のフレームより、記憶画像データBは読み出され、スイッチ955、及びディスプレイコントローラ956を介して、ディスプレイ957に記憶画像データBが送られ、表示がおこなわれる。この読み出しはさらに次に新たな画像データがメモリ952に記憶されるまで継続される。
【0263】
このようにメモリ952及びメモリ953は交互に画像データの書き込みと、画像データの読み出しを行うことによって、ディスプレイ957の表示をおこなう。なお、メモリ952及びメモリ953はそれぞれ別のメモリには限定されず、1つのメモリを分割して使用してもよい。先の実施の形態で説明した半導体装置をメモリ952及びメモリ953に採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0264】
図11に電子書籍のブロック図を示す。
図11はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。
【0265】
ここでは、
図11のメモリ回路1007に先の実施の形態で説明した半導体装置を使用することができる。メモリ回路1007の役割は書籍の内容を一時的に保持する機能を持つ。例えば、ユーザーがハイライト機能を使用する場合、メモリ回路1007は、ユーザーが指定した箇所の情報を記憶し、保持する。なお、ハイライト機能とは、ユーザーが電子書籍を読んでいるときに、特定の箇所にマーキング、例えば、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどによって、周囲との違いを示すことである。メモリ回路1007は短期的な情報の記憶に用い、長期的な情報の保存にはフラッシュメモリ1004に、メモリ回路1007が保持しているデータをコピーしてもよい。このような場合においても、先の実施の形態で説明した半導体装置を採用することによって、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減することができる。
【0266】
以上のように、本実施の形態に示す携帯機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力を低減した携帯機器が実現される。
【0267】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0268】
(実施の形態5)
上記実施の形態で示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0269】
図12(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。
図12(A)はフォトセンサの等価回路であり、
図12(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0270】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0271】
なお、本明細書における回路図において、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタと明確に判明できるように、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。
図12(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は上記実施の形態に示したトランジスタが適用でき、チャネルが形成される半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ440aと同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0272】
図12(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640の断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0273】
絶縁層631上に設けられたトランジスタ640上には層間絶縁層632、絶縁層633、層間絶縁層634が設けられている。フォトダイオード602は、絶縁層633上に設けられ、絶縁層633上に形成した電極層641a、641bと、層間絶縁層634上に設けられた電極層642との間に、絶縁層633側から順に第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cを積層した構造を有している。
【0274】
なお、トランジスタ640と重畳する領域に遮光層650が設けられている。
【0275】
電極層641bは、層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、導電層643と同一の工程で作製された電極層642は電極層641aを介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0276】
ここでは、第1半導体層606aとしてp型の導電型を有する半導体と、第2半導体層606bとして高抵抗な半導体(i型半導体)、第3半導体層606cとしてn型の導電型を有する半導体を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0277】
第1半導体層606aはp型半導体であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコンにより形成することができる。第1半導体層606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコンを形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコンに不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコンを形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体層606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0278】
第2半導体層606bは、i型半導体(真性半導体)であり、アモルファスシリコンにより形成する。第2半導体層606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。第2半導体層606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体層606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0279】
第3半導体層606cは、n型半導体であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコンにより形成する。第3半導体層606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコンを形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコンに不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコンを形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体層606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0280】
また、第1半導体層606a、第2半導体層606b、及び第3半導体層606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶半導体(セミアモルファス半導体(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))を用いて形成してもよい。
【0281】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm
−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm
−1とアモルファスシリコンを示す480cm
−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体が得られる。
【0282】
この微結晶半導体は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH
4、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4などの珪素を含む化合物を水素で希釈して形成することができる。また、珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体を形成することができる。これらのときの珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH
4、C
2H
6等の炭化物気体、GeH
4、GeF
4等のゲルマニウム化気体、F
2等を混入させてもよい。
【0283】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体層側とは逆の導電型を有する半導体層側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電層を用いるとよい。また、n型の半導体側を受光面として用いることもできる。
【0284】
絶縁層631、層間絶縁層632、絶縁層633としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)等により、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等の装置を用いて形成することができる。
【0285】
本実施の形態では、絶縁層633として酸化アルミニウムを用いる。絶縁層633はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0286】
酸化物半導体層上に絶縁層633として設けられた酸化アルミニウムは、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0287】
従って、酸化アルミニウムは、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体からの放出を防止する保護層として機能する。
【0288】
本実施の形態において、トランジスタ640は、作製工程において、ゲート電極層、絶縁層、及び側壁絶縁層上に設けられた導電層を化学機械研磨処理することによって除去し導電層を分断することによって、ソース電極層及びドレイン電極層を形成する。
【0289】
従って、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)と、ゲート電極層との距離を短くすることができるため、ソース電極層又はドレイン電極層と酸化物半導体層とが接する領域(コンタクト領域)、及びゲート電極層間の抵抗が減少し、トランジスタ640のオン特性を向上させることが可能となる。
【0290】
ソース電極層及びドレイン電極層の形成工程におけるゲート電極層上の導電層を除去する工程において、レジストマスクを用いたエッチング工程を用いないため、精密な加工を正確に行うことができる。よって、半導体装置の作製工程において、形状や特性のばらつきの少ない微細な構造を有するトランジスタ640を歩留まりよく作製することができる。
【0291】
絶縁層631、層間絶縁層632、絶縁層633としては、無機絶縁材料を用いることができる。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、又は酸化窒化アルミニウムなどの酸化物絶縁材料、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、又は窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁材料の単層、又は積層を用いることができる。
【0292】
また、層間絶縁層634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁層として機能する絶縁層が好ましい。層間絶縁層634としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0293】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0294】
以上のように、微細化及び高集積化を実現し、かつ高い電気的特性を付与された半導体装置、及び該半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0295】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0296】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、
図23を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
【0297】
図23(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体1701、筐体1702、表示部1703、キーボード1704などによって構成されている。筐体1701と筐体1702内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0298】
図23(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体1711には、表示部1713と、外部インターフェイス1715と、操作ボタン1714等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス1712などを備えている。本体1711内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が低減された携帯情報端末が実現される。
【0299】
図23(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍1720であり、筐体1721と筐体1723の2つの筐体で構成されている。筐体1721および筐体1723には、それぞれ表示部1725および表示部1727が設けられている。筐体1721と筐体1723は、軸部1737により接続されており、該軸部1737を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体1721は、電源スイッチ1731、操作キー1733、スピーカー1735などを備えている。筐体1721、筐体1723の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が低減された電子書籍が実現される。
【0300】
図23(D)は、携帯電話機であり、筐体1740と筐体1741の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体1740と筐体1741は、スライドし、
図23(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体1741は、表示パネル1742、スピーカー1743、マイクロフォン1744、タッチパネル1745、ポインティングデバイス1746、カメラ用レンズ1747、外部接続端子1748などを備えている。また、筐体1740は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル1749、外部メモリスロット1750などを備えている。また、アンテナは、筐体1741に内蔵されている。筐体1740と筐体1741の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が低減された携帯電話機が実現される。
【0301】
図23(E)は、デジタルカメラであり、本体1761、表示部1767、接眼部1763、操作スイッチ1764、表示部1765、バッテリー1766などによって構成されている。本体1761内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が低減されたデジタルカメラが実現される。
【0302】
図23(F)は、テレビジョン装置1770であり、筐体1771、表示部1773、スタンド1775などで構成されている。テレビジョン装置1770の操作は、筐体1771が備えるスイッチや、リモコン操作機1780により行うことができる。筐体1771およびリモコン操作機1780には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、信頼性が高く、且つ消費電力が低減されたテレビジョン装置が実現される。
【0303】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、信頼性が高く、消費電力が低減された電子機器が実現される。
【0304】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0305】
本実施例では、酸化物半導体層に付着した不純物を除去するための、フッ酸を用いた洗浄処理の効果について調査した結果を示す。実施例試料として、シリコンウェハ上に、酸化ケイ素層を形成し、酸化ケイ素層上に、酸化物半導体層を形成し、リファレンスとして該酸化物半導体層に対して何も行わない(未処理)試料である実施例試料1と、ドライエッチング処理のみを行った実施例試料2と、ドライエッチング処理の後に0.0025%に希釈したフッ酸で、30秒間のウェットエッチング処理を行った実施例試料3と、ドライエッチング処理の後に0.5%に希釈したフッ酸で、3秒間のウェットエッチング処理を行った実施例試料4を作製した。
【0306】
上記実施例試料1乃至実施例試料4について、SIMS分析法により酸化物半導体層中の不純物濃度分析を行い、フッ酸による洗浄処理の効果について調査した。
【0307】
続いて、実施例試料1乃至実施例試料4の作製方法について詳述する。まず、実施例試料1乃至実施例試料4に共通の工程について説明する。
【0308】
はじめに、シリコン基板上に厚さ300nmの酸化シリコン層を、スパッタリング法によって形成した。スパッタリングは、酸化シリコンのターゲットを用いて、スパッタリングガスをアルゴン及び酸素(Ar:O
2=25sccm:25sccm)の混合ガスとし、圧力0.4Pa、電源電力5kW、基板温度100℃の条件下で行った。
【0309】
次に、酸化シリコン層上に、In:Ga:Zn=3:1:2(原子数比)の酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmの第1のIGZO層を形成した。スパッタリングは、スパッタリングガスをアルゴン及び酸素(Ar:O
2=30sccm:15sccm)の混合ガスとし、圧力0.4Pa、電源電力0.5kW、基板温度200℃の条件下で行った。
【0310】
次に、実施例試料2乃至実施例試料4の第1のIGZO層に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、エッチングガスとして三塩化硼素及び塩素(BCl
3:Cl
2=60sccm:20sccm)を用いて、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.9Paの条件下でドライエッチング処理を行った。
【0311】
次に、実施例試料3及び実施例試料4の第1のIGZO層に対して、フッ酸によって、ウェットエッチング処理を行った。実施例試料3には、0.0025%に希釈したフッ酸を用い、30秒間のウェットエッチング処理を行った。実施例試料4には0.5%に希釈したフッ酸を用い、3秒間のウェットエッチング処理を行った。
【0312】
続いて、試料表面の汚染を防ぐため、実施例試料1乃至実施例試料4の表面に、第1のIGZO層と同じ形成条件で、保護層として厚さ100nmの第2のIGZO層を形成した。
【0313】
このようにして作製した、実施例試料1乃至実施例試料4に対してSIMS分析を行い、IGZO層中のホウ素(B)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、フッ素(F)濃度を調査した。なお、B、Clはエッチングガスの構成元素であり、Alはドライエッチング処理室の構成元素であり、Fはフッ酸の構成元素である。
【0314】
図13乃至
図16にSIMS分析結果を示す。
図13乃至
図16において、横軸は試料表面からの深さを示しており、0nmの位置が試料最表面(第2のIGZO層の最表面)に相当する。なお、分析結果をわかりやすくするため、
図13乃至
図16では横軸を60nm乃至140nmとしている。また、縦軸は、特定深さにおける試料中の分析対象元素濃度を対数軸で示している。
【0315】
図13乃至
図16において、深さ100nm近傍に第1のIGZO層と第2のIGZO層の界面が存在する。本実施例において、この界面を第1のIGZO層の表面として表記する。また、領域701は第1のIGZO層中の元素濃度プロファイルを示し、領域702は第2のIGZO層中の元素濃度プロファイルを示している。なお、各元素濃度プロファイルは、IGZO層で作製した標準試料を用いて定量している。
【0316】
図13乃至
図16において、元素濃度プロファイル711、721、731、741は、実施例試料1の元素濃度プロファイルを示している。また、元素濃度プロファイル712、722、732、742は、実施例試料2の元素濃度プロファイルを示している。元素濃度プロファイル713、723、733、743は、実施例試料3の元素濃度プロファイルを示している。元素濃度プロファイル714、724、734、744は、実施例試料4の元素濃度プロファイルを示している。なお、SIMS分析では、界面における濃度は絶対値として評価できない場合があるが、相対的な評価は可能である。
【0317】
図13は、第1および第2のIGZO層中の塩素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料4とも、第1のIGZO層の表面近傍で塩素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料4の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度(ピーク値)は、実施例試料1(元素濃度プロファイル711)で約1.4×10
18atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル712)で約1.1×10
19atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル713)で約3.4×10
17atoms/cm
3、実施例試料4(元素濃度プロファイル714)で約3.3×10
17atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中の塩素濃度はノイズレベルであった。
【0318】
図14は、第1および第2のIGZO層中のホウ素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料4とも、第1のIGZO層の表面近傍でホウ素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料4の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル721)で約1.5×10
18atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル722)で約4.8×10
20atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル723)で約4.5×10
18atoms/cm
3、実施例試料4(元素濃度プロファイル724)で約1.2×10
18atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中のホウ素濃度はノイズレベルであった。
【0319】
図15は、第1および第2のIGZO層中のアルミニウム濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料3では、第1のIGZO層の表面近傍でアルミニウム濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料3の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル731)で約4.9×10
17atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル732)で約3.0×10
19atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル733)で約7.5×10
17atoms/cm
3であった。なお、実施例試料4(元素濃度プロファイル734)はノイズレベルであった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中のアルミニウム濃度はノイズレベルであった。
【0320】
図16は、第1および第2のIGZO層中のフッ素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料4とも、第1のIGZO層の表面近傍でフッ素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料4の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル741)で約5.2×10
19atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル742)で約1.1×10
20atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル743)で約8.9×10
18atoms/cm
3、実施例試料4(元素濃度プロファイル744)で約7.2×10
18atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中のフッ素濃度はノイズレベルであった。
【0321】
以上のSIMS分析結果から、ドライエッチング処理により第1のIGZO層表面の塩素、ホウ素、アルミニウム、フッ素が増加し、その後のフッ酸処理により低減または除去されていることがわかる。また、フッ酸処理を行った試料(実施例試料3および4)のフッ素濃度が、未処理試料(実施例試料1)のフッ素濃度より低くなっていることから、フッ酸処理によるフッ素の付着よりも、除去の効果の方が高いと考えられる。
【0322】
フッ酸を用いた洗浄処理により、酸化物半導体層表面に付着した不純物元素が除去されることが確認できた。
【実施例2】
【0323】
本実施例では、酸化物半導体層に付着した不純物を除去するための、ITO−07N(関東化学社製)を用いた洗浄処理の効果について調査した結果を示す。ITO−07Nは、シュウ酸を5重量%含む水溶液である。実施例試料として、シリコンウェハ上に、酸化ケイ素層を形成し、酸化ケイ素層上に、酸化物半導体層を形成し、リファレンスとして該酸化物半導体層に対して何も行わない(未処理)試料である実施例試料1と、ドライエッチング処理のみを行った実施例試料2と、ドライエッチング処理の後に純水で1/100に希釈したITO−07Nで、30秒間のウェットエッチング処理を行った実施例試料3を作製した。
【0324】
上記実施例試料1乃至実施例試料3について、SIMS分析法により酸化物半導体層中の不純物濃度分析を行い、ITO−07Nによる洗浄処理の効果について調査した。
【0325】
続いて、実施例試料1乃至実施例試料3の作製方法について詳述する。まず、実施例試料1乃至実施例試料3に共通の工程について説明する。
【0326】
はじめに、シリコン基板上に厚さ300nmの酸化シリコン層を、スパッタリング法によって形成した。スパッタリングは、酸化シリコンのターゲットを用いて、スパッタリングガスをアルゴン及び酸素(Ar:O
2=25sccm:25sccm)の混合ガスとし、圧力0.4Pa、電源電力5kW、基板温度100℃の条件下で行った。
【0327】
次に、酸化シリコン層上に、In:Ga:Zn=3:1:2(原子数比)の酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ100nmの第1のIGZO層を形成した。スパッタリングは、スパッタリングガスをアルゴン及び酸素(Ar:O
2=30sccm:15sccm)の混合ガスとし、圧力0.4Pa、電源電力0.5kW、基板温度200℃の条件下で行った。
【0328】
次に、実施例試料2及び実施例試料3の第1のIGZO層に対して、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法により、エッチングガスとして三塩化硼素及び塩素(BCl
3:Cl
2=60sccm:20sccm)を用いて、電源電力450W、バイアス電力100W、圧力1.9Paの条件下でドライエッチング処理した。
【0329】
次に、実施例試料3第1のIGZO層に対して、純水で1/100に希釈したITO−07Nで、30秒間のウェットエッチング処理を行った。
【0330】
続いて、試料表面の汚染を防ぐため、実施例試料1乃至実施例試料3の表面に、第1のIGZO層と同じ形成条件で、保護層として厚さ100nmの第2のIGZO層を形成した。
【0331】
このようにして作製した、実施例試料1乃至実施例試料3に対してSIMS分析を行い、IGZO層中のホウ素(B)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、炭素(C)濃度を調査した。なお、B、Clはエッチングガスの構成元素であり、Alはドライエッチング処理室の構成元素であり、CはITO−07N(シュウ酸)の構成元素である。
【0332】
図17乃至
図20にSIMS分析結果を示す。
図17乃至
図20において、横軸は試料表面からの深さを示しており、0nmの位置が試料最表面(第2のIGZO層の最表面)に相当する。なお、分析結果をわかりやすくするため、
図17乃至
図20では横軸を60nm乃至140nmとしている。また、縦軸は、特定深さにおける試料中の分析対象元素濃度を対数軸で示している。
【0333】
図17乃至
図20において、深さ100nm近傍に第1のIGZO層と第2のIGZO層の界面が存在する。本実施例において、この界面を第1のIGZO層の表面として表記する。また、領域701は第1のIGZO層中の元素濃度プロファイルを示し、領域702は第2のIGZO層中の元素濃度プロファイルを示している。なお、各元素濃度プロファイルは、IGZO層で作製した標準試料を用いて定量している。
【0334】
図17乃至
図20において、元素濃度プロファイル751、761、771、781は、実施例試料1の元素濃度プロファイルを示している。また、元素濃度プロファイル752、762、772、782は、実施例試料2の元素濃度プロファイルを示している。元素濃度プロファイル753、763、773、783は、実施例試料3の元素濃度プロファイルを示している。なお、SIMS分析では、界面における濃度は絶対値として評価できない場合があるが、相対的な評価は可能である。
【0335】
図17は、第1および第2のIGZO層中の塩素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料3とも、第1のIGZO層の表面近傍で塩素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料3の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル751)で約1.0×10
18atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル752)で約3.2×10
19atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル753)で約1.8×10
18atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中の塩素濃度はノイズレベルであった。
【0336】
図18は、第1および第2のIGZO層中のホウ素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料3とも、第1のIGZO層の表面近傍でホウ素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料3の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル761)で約3.7×10
18atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル762)で約8.1×10
19atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル763)で約1.6×10
19atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中のホウ素濃度はノイズレベルであった。
【0337】
図19は、第1および第2のIGZO層中のアルミニウム濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料3とも、第1のIGZO層の表面近傍でアルミニウム濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料3の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル771)で約1.3×10
18atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル772)で約9.1×10
19atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル773)で約8.8×10
17atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中のアルミニウム濃度はノイズレベルであった。
【0338】
図20は、第1および第2のIGZO層中の炭素濃度分析結果を示す図である。実施例試料1乃至実施例試料3とも、第1のIGZO層の表面近傍で炭素濃度が急激に大きくなっていることがわかる。また、実施例試料1乃至実施例試料3の、第1のIGZO層の表面近傍での最大濃度は、実施例試料1(元素濃度プロファイル781)で約4.4×10
19atoms/cm
3、実施例試料2(元素濃度プロファイル782)で約2.2×10
20atoms/cm
3、実施例試料3(元素濃度プロファイル783)で約2.3×10
20atoms/cm
3であった。なお、界面近傍以外の領域701および領域702中の炭素濃度はノイズレベルであった。
【0339】
以上のSIMS分析結果から、ドライエッチング処理により第1のIGZO層表面の塩素、ホウ素、アルミニウム、炭素が増加し、その後の純水で1/100に希釈したITO−07Nを用いた洗浄処理により、塩素、ホウ素、アルミニウムは低減または除去されていることがわかる。ドライエッチング処理により増加した炭素は、上記洗浄処理を行ってもほぼ変化していない。したがって、ITO−07Nを用いた洗浄処理により、炭素を増やすことなく、酸化物半導体層表面に付着した不純物元素が除去されることが確認できた。
【実施例3】
【0340】
本実施例では、実施の形態1で示すトランジスタを作製し、島状の酸化物半導体層形成後、ゲート絶縁層形成前に希フッ酸による洗浄処理を行わない実施例トランジスタ501と、ゲート絶縁層形成前に希フッ酸による洗浄処理を行なう実施例トランジスタ502の電気特性を評価した。
【0341】
実施例トランジスタ501および実施例トランジスタ502は、実施の形態1で示した作製方法を用いて、トランジスタ440aと同様の構造のトランジスタを作製した。以下に実施例トランジスタ501および実施例トランジスタ502の作製方法を示す。
【0342】
まず、基板400として単結晶シリコン基板を用い、基板400上に酸化物絶縁層436としてスパッタリング法を用いて厚さ300nmの酸化シリコン層を形成した。
【0343】
次に、酸化物絶縁層436表面を化学的機械研磨法により研磨処理した後、酸化物絶縁層436にイオン注入法によりドーズ量1×10
16ions/cm
2の酸素を導入した。
【0344】
次に、酸化物絶縁層436上に酸化物半導体層としてIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により、厚さ20nmのIGZO層を形成した。
【0345】
次に、フォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体層を選択的にエッチングし、島状の酸化物半導体層403を形成した。酸化物半導体層のエッチングは、実施の形態1に開示したドライエッチング法により行った。
【0346】
次に、実施例トランジスタ502となる試料のみに、希フッ酸による洗浄処理として、0.0025%に希釈したフッ酸で、30秒間のウェットエッチング処理を行った。
【0347】
次に、CVD法によりゲート絶縁層442として厚さ20nmの酸化窒化シリコン層を形成し、ゲート絶縁層442上に、ゲート電極層401として、スパッタリング法により厚さ30nmの窒化タンタルと厚さ135nmのタングステンを積層して形成し、ゲート電極層401上に絶縁層413として厚さ200nmの酸化窒化シリコン層を形成した。
【0348】
次に、ゲート電極層401および絶縁層413をマスクとして、イオン注入法により酸化物半導体層403中にドーズ量1×10
15ions/cm
2のリン元素を導入し、低抵抗領域404aおよび低抵抗領域404bを形成した。
【0349】
次に、酸化窒化シリコンを用いて側壁絶縁層412aおよび側壁絶縁層412bを形成し、側壁絶縁層412aおよび側壁絶縁層412bをマスクとして、ゲート絶縁層442をエッチングし、ゲート絶縁層402を形成した。
【0350】
次に、導電層445として厚さ30nmのタングステン層を形成し、該タングステン層上に絶縁層446として厚さ70nmの酸化アルミニウム層と厚さ460nmの酸化窒化シリコン層を積層した。
【0351】
次に、絶縁層446と導電層445を化学的機械研磨法により研磨処理し、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、層間絶縁層415を形成した。その後、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、層間絶縁層415上に、絶縁層407としてCVD法により厚さ400nmの酸化窒化シリコン層を形成した。
【0352】
次に、酸素を含む雰囲気中で、400℃、1時間の熱処理を行った。
【0353】
次に、層間絶縁層415および絶縁層407に、ソース電極層405aおよびドレイン電極層405bに達する開口を形成し、厚さ300nmのタングステン層を用いて配線層435aおよび配線層435bを形成した。
【0354】
以上の工程により、実施例トランジスタ501と実施例トランジスタ502をそれぞれ7試料ずつ作製し、それぞれの電気特性を評価した。
【0355】
図21に、実施例トランジスタ501と実施例トランジスタ502の電気特性の測定結果を示す。
図21(A)および
図21(B)は、トランジスタのゲート電圧(Vg)を変化させた時のドレイン電流(Id)の変化を示すグラフであり、Vg−Id特性とも呼ばれるグラフである。
【0356】
図21(A)は、7つの実施例トランジスタ501のVg−Id特性を重ねて示している。また、
図21(B)は、7つの実施例トランジスタ502のVg−Id特性を重ねて示している。
図21(A)および
図21(B)とも、横軸はゲート電圧(Vg)を示しており、縦軸はゲート電圧に対するドレイン電流(Id)の値を対数目盛で示している。
【0357】
図21(A)および
図21(B)に示すVg−Id特性は、実施例トランジスタ501および実施例トランジスタ502のソース電位を0Vとし、ドレイン電位を1Vとし、ゲート電圧を−4Vから4Vに変化させて測定した。
【0358】
表1は、
図21(A)および
図21(B)から算出した、7つの実施例トランジスタ501と、7つの実施例トランジスタ502のしきい値電圧を示している。表1において、それぞれ7つのトランジスタのしきい値電圧を、試料番号1乃至7として示している。
【0359】
【表1】
【0360】
また、
図22は、表1をグラフ化した図であり、7つの実施例トランジスタ501と、7つの実施例トランジスタ502のしきい値電圧のばらつきを示す図である。
図22において、白丸が実施例トランジスタ501のしきい値電圧の分布を示し、黒三角が実施例トランジスタ502のしきい値電圧の分布を示している。
【0361】
図21(A)、
図21(B)、表1、および
図22から、実施例トランジスタ501よりも実施例トランジスタ502のしきい値電圧のばらつきが小さいことがわかる。ゲート絶縁層形成前に洗浄処理を行うことにより、トランジスタの電気特性を良好なものとすることができる。