(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば車両用の組電線である所謂ワイヤハーネスには、種々の外装材が取り付けられる。この外装材には、耐摩耗性に優れ、配索経路に沿うように屈曲自在なコルゲートチューブが多用されている(例えば特許文献1参照)。
コルゲートチューブは、大径部と小径部とからなる凹凸部が軸線方向に交互に形成される蛇腹形状を有している。これにより、内方に挿通されたワイヤハーネスは、凹凸部によって他部材との接触面積が小さくなり、且つ他部材からの距離を凸部によって大きくすることで、電線被覆の傷つき等を遅延させる機能を有する。
この他、ワイヤハーネスには、直線保持性の要求される筒状の外装材や、分岐ハーネスを導出するための穴あきの外装材、耐衝撃性を有するプロテクタ等種々のものが複合的に取り付けられる場合もある。
【0003】
ところが、このような外装材は、ワイヤハーネスの異なる部位によって耐摩耗性、直線性、曲がり性(可撓性)、電線分岐が必要となる場合、それに合わせて種々のものが組み付けられることから、部品点数が増大し、加工工数が増大する。
また、コルゲートチューブは、耐摩耗性、曲げ性に優れるが、凹凸形状を有するため、長尺のものを巻回して運ぶ際、嵩張り、物流コストが増大する。
そこで、シート状の外装素材(シート基材)を丸めて円筒状とすることで、物流コストの低減を図ろうとする外装材が提案されている(例えば特許文献2参照)。
即ち、シート状の外装素材は積層状態での搬送が可能となるため、嵩張らず、搬送効率がよい。このことから、コルゲートチューブを、円筒状とする前の凹溝凸条を交互に有した波板シートの状態で搬送し、その後、円筒状に丸めることも考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した蛇腹形状のコルゲートチューブをシート基材から作ろうとすると、凹溝凸条を交互に形成した波板シートを、チューブ軸線方向に凹凸部が交互に配置されるように筒状に丸めなければならず、凹凸部が構造的な剛性を発現させる(梁構造となる)ため、屈曲自在なコルゲートチューブの製作が困難となる。
そこで、特許文献2に開示された外装材では、平板状の外装素材に凹部と凸部にかけてX方向に連続する薄肉ヒンジ部を設けると共に、該薄肉ヒンジ部をY方向に所要ピッチで形成することにより、上記外装材をY方向に巻いて円環形状としている。しかしながら、このような薄肉ヒンジ部を備えた凹凸形状の波板シートをエンボス加工等の安価な加工方法で連続成形することは困難であり、製造コストが上昇するという問題があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は製造コスト及び物流コストを低減することができる良好な外装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) エンボス加工により形成された複数の凹部が、シート基材の表面に規則正しく隣接して形成された外装材であって、前記凹部は、一対の平面視V字状の稜線を有してV字開口側が対向するように線対称に配置され前記シート基材の表面に形成された多角形の格子部と、前記平面視V字状の稜線のそれぞれの頂部から前記シート基材の裏面側に傾斜して互いに接近するように延びる一対の傾斜折線と、これら傾斜折線の先端部をつなぐ水平折線とを有する谷部と、を備えることを特徴とする外装材。
【0008】
上記(1)の構成の外装材によれば、シート基材の表面に、規則正しく隣接した凹部がエンボス加工により形成され、凹部の稜線が表面と同一平面に配置される。そこで、シート基材の表裏面には、耐摩耗性を確保するための凹凸が安価なエンボス加工により形成されることになる。
また、シート基材の表面には、一対の平面視V字状の稜線を有する複数の凹部が規則正しく縦横に並んだ多角形の格子部と、連続折線となる谷部の傾斜折線及び水平折線とが構成される。そこで、シート基材に凹部が形成された外装材は、水平折線または水平折線と直交する直交線を中心に容易に湾曲させて、筒状に丸めることが可能となる。従って、シート基材から成る外装材は、積層状態での搬送が可能となるため、嵩張らず、搬送効率が向上する。
更に、谷部が水平折線を有することで、凹部を形成したことにより裏面側に突出する峰部を尖らせないように構成できる。即ち、外装材は、シート基材の裏面に突出して被外装品や外部部品に接触する峰部が馬の背状に形成されて接触面積が増大する。これにより、外装材は、被外装品(例えば被覆電線等)や外部部品(例えば他のワイヤハーネス等)への峰部による傷つき等を抑止することができる。
【0009】
(2) 上記(1)の構成の外装材であって、前記凹部が、前記平面視V字状の稜線のそれぞれのV字開口側端をつないで前記水平折線と平行に延びる水平稜線を備えることを特徴とする外装材。
【0010】
上記(2)の構成の外装材によれば、一対の平面視V字状の稜線が水平稜線を介してつながり、凹部の格子部が平面視で六角形となる。平面視六角形となった凹部の格子部は、平面視V字状の稜線のそれぞれの頂部が3本の稜線を交差させて形成した部分となり、水平稜線を備えずに平面視菱形となった凹部の格子部における平面視V字状の稜線のそれぞれの頂部が4本の稜線を交差させて形成した部分となる場合に比べて、エンボス加工時の加工が容易となる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)の構成の外装材であって、前記外装材が、前記水平折線に沿って前記シート基材の裏面側に湾曲させられて筒状に形成され、少なくとも1本の電線の外周面に巻き付けられることを特徴とする外装材。
【0012】
上記(3)の構成の外装材によれば、外装材が、水平折線に沿ってシート基材の裏面側に湾曲させられ、水平折線と直交する直交線に沿う中心軸線を有する筒状に形成されると、筒の中心軸線方向に沿って凹部の一対の対向内面が配置される向きとなる。そして、軸線両端側を接近させるように筒状の外装材を曲げる際には、対向内面間を伸縮させる応力が凹部に作用するが、外周面側に開口する凹部は一対の対向内面が接近離反する方向には変形が容易で変形量が大きいため、筒状の外装材を容易に曲げることができる。従って、電線の配索経路に沿うように屈曲自在な筒状の外装材を容易に得ることができる。
これに対し、外装材が、水平折線に沿ってシート基材の表面側に湾曲させるように丸められて、水平折線と直交する直交線に沿う中心軸線を有する筒状に形成された場合は、筒の中心軸線方向に沿って凹部の一対の対向内面が配置される向きとなる。そして、軸線両端側を接近させるようにこの筒状の外装材を曲げる際には、対向内面間を伸縮させる応力が凹部に作用するが、筒状の内周面側に開口する凹部における一対の対向内面は接近離反する方向に変形が容易でなく変形量が小さいため、容易に曲げることができない。従って、外装材を水平折線に沿ってシート基材の表面側に湾曲させるように丸めた場合には、直線保持性の要求される電線の配索経路に用いられる筒状の外装材とすることができる。
また、外装材が、水平折線と直交する直交線に沿ってシート基材の裏面側又は表面側に湾曲させるように丸められて、水平折線に沿う中心軸線を有する筒状に形成された場合は、筒の中心軸線方向に沿って一対の頂部が配置される向きとなる。そして、軸線両端側が接近するように筒状の外装材を曲げる際には、凹部の頂部同士を伸縮させる応力が凹部に作用するが、一対の頂部が接近離反する方向へは凹部が変形し難く、変形量が小さいため、容易には曲がらない。従って、外装材を水平折線と直交する直交線に沿ってシート基材の裏面側又は表面側に湾曲させるように丸めた場合には、直線保持性の要求される電線の配索経路に用いられる筒状の外装材とすることができる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)の何れかの構成の外装材が、少なくとも1本の電線の外周面に巻き付けられたことを特徴とするワイヤハーネス。
【0014】
上記(4)の構成のワイヤハーネスによれば、製造コストおよび物流コストを低減した安価なワイヤハーネスを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る外装材によれば、安価なエンボス加工により凹凸が形成されるシート基材は積層状態での搬送が可能であり、製造コストおよび物流コストを低減することができる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る外装材11は、所定幅にスリット加工された長尺のシート基材(図示せず)の表面に、エンボス加工により同一形状で形成された複数の凹部15が、規則正しく縦横(X方向、Y方向)に隣接して連続形成されている。図示例では、凹部15が千鳥状に配列されている。
各凹部15は、格子部17と谷部21とを有する。
図2に示すように、本第1実施形態の各格子部17は、一対の平面視V字状の稜線23を有してV字開口側が対向するようにシート幅方向(X方向)に延びる境界線25を挟んで線対称に配置され、シート基材の表面に複数の多角形を形成している。
本第1実施形態の各谷部21は、
図3に示すように、平面視V字状の稜線23のそれぞれの頂部27からシート基材の裏面側(
図3中、下方側)に傾斜して互いに接近するように延びる一対の傾斜折線19と、これら傾斜折線19の先端部を水平折線29とを有する。なお、本実施形態に係る水平折線29は、エンボス加工時にシート基材を破断しないように先端部にR部を備えた成形型により成形されるため、
図2に示したように所定幅を有する溝状に形成されている。
【0019】
本第1実施形態に係る外装材11の凹部15は、平面視V字状の稜線23のそれぞれのV字開口側端をつないで水平折線29と平行に延びる水平稜線31を備える。そこで、凹部15は、一対の平面視V字状の稜線23が水平稜線31を介してつながり、
図2に示すように、凹部15の格子部17が平面視で六角形となる。平面視六角形となった凹部15の格子部17は、平面視V字状の稜線23のそれぞれの頂部27が3本の稜線を交差させて形成した部分となる。
【0020】
また、本実施形態に係る外装材11は、熱可塑性樹脂製のシート基材の表面に、エンボス加工により複数の凹部15を形成した後、
図4に示すようにパイプ形状に加熱成形して筒状外装材43として使用するものであるが、人間の力で折り曲げたり、丸めたりすることができる十分な柔軟性を有する弾性材料で形成することもできる。
即ち、外装材11は、使用方法によって適宜に材質を変えて用いることができ、合成樹脂やシリコーンの他、紙、金属、布、樹脂含浸繊維等の種々のシート基材を使用することができる。
【0021】
次に、上記構成を有する外装材11の作用を説明する。
本第1実施形態に係る外装材11では、シート基材の表面に、規則正しく隣接した凹部15がエンボス加工により形成され、一対の平面視V字状の稜線23が水平稜線31を介してつながることで凹部15の稜線となる六角形の格子部17がシート基材の表面と同一平面に配置される。即ち、外装材11を表裏逆にして裏面側より見れば、凹部15を形成したことにより裏面側に峰部39(
図3参照)が突出する。そこで、シート基材からなる外装材11の表裏面には、耐摩耗性を確保するための凹凸が安価なエンボス加工により形成されることになる。
【0022】
また、外装材11の表面には、一対の平面視V字状の稜線23と水平稜線31を有する複数の凹部15が規則正しく縦横に並んだ六角形の格子部17と、連続折線となる谷部21の傾斜折線19及び水平折線29とが構成される。そこで、凹溝凸状を交互に形成した波板シートをチューブ軸線方向に凹凸部が交互に配置されるように丸める従来の外装材と異なり、シート基材に凹部15が形成された外装材11は、水平折線29または水平折線29と直交する直交線41を中心に容易に湾曲させて、多角形の筒状に丸めることが可能となる。従って、シート基材から成る外装材11は、積層状態での搬送が可能となるため、嵩張らず、搬送効率が向上する。
【0023】
更に、谷部21が水平折線29を有することで、凹部15を形成したことにより裏面側に突出する峰部39を尖らせないように構成できる。即ち、外装材11は、シート基材の裏面に突出して被外装品である被覆電線61や外部部品である他のワイヤハーネスに接触する峰部39が馬の背状に形成されて接触面積が増大する。これにより、外装材11は、被覆電線61や他のワイヤハーネスへの峰部39による傷つき等を抑止することができる。
【0024】
次に、上記構成を有する外装材11の使用方法の一例を説明する。
本第1実施形態に係る外装材11は、
図4に示すように、水平折線29に沿ってシート基材の裏面側に湾曲させられ、水平折線29と直交する直交線41に沿う中心軸線を有する筒状に形成され、複数の被覆電線61の外周面に巻き付けられる筒状外装材43として使用される。外装材11の湾曲は加熱成形によって行われ、筒状外装材43として筒状となった外装材11は、再び平面状態に戻ることはない。筒状外装材43は、筒状に丸められた先端側同士が重ねられたり、或いはスリットを有したまま用いられたりすることとなる。
【0025】
図5に示すように、外装材11の所定長さに切断された後、複数の被覆電線61の外周面に巻き付けられた筒状外装材43は、軸線両端側を粘着テープTで固定することで、スリットの開きが防止された状態で被覆電線61の所定位置に固定されて、被覆電線61を車体等の外部部品との接触から保護する。
筒状外装材43は、外装材11が筒状に丸められることで、
図6に示すように、凹部15を構成したことによりシート基材の裏面側に突出した峰部39が内方に突出する。内方に突出した峰部39は、収容される被覆電線61に接触するが、峰部39は水平折線29を有する谷部21により馬の背状に形成され、被覆電線61に対する接触面積が増大して尖らないように構成されている。
【0026】
水平折線29の長さは、傾斜折線19の傾斜角度θや、凹部15の深さによって調整が可能である。即ち、外装材11は、凹部15の深さ、傾斜折線19の傾斜角度θ、水平折線29の長さが、保護する被覆電線61の外径に合わせて最適に調整される。これにより、被覆電線61に合わせて最適な長さの水平折線29を形成することで、シート基材の裏面側を内側として筒状に外装材11を丸めた際に内周面に突出する筒状外装材43の峰部39を尖らせないように構成して、被覆電線61の傷つきを抑止できる。
【0027】
本実施形態の外装材11は、長尺のシート基材の表面に、加熱される一対のエンボスローラを備えた比較的簡易なエンボス加工装置により容易に凹部15を連続成形できる。また、このようにして凹部15が形成されたシート基材からなる外装材11は、比較的簡易な折曲加工装置により筒状外装材43へ容易に成形できる。
このため、本実施形態の外装材11は、ワイヤハーネス組立工場に設置したエンボス加工装置と折曲加工装置によって、シート基材から筒状外装材43への製品化が容易となる。その結果、ワイヤハーネス組立工場へは、嵩張らず、搬送効率がよいロール状態でのシート基材の搬送が可能となる。この場合、シート基材には、所定幅に裁断するスリット加工を予め施しておくことが好ましい。
【0028】
なお、外装材11は、上述した使用方法のように、筒状の筒状外装材43に成形せず、複数の凹部15を形成したままの平板形状で、被覆電線61に巻き付けるものであってもよい。巻かれた後の外装材11は、粘着テープTや結束バンド等によって展開しないように固定される。この場合、折曲加工装置の設置は不要となる。
【0029】
次に、被覆電線61に巻き付けられた筒状外装材43の軸線両端側が接近するように曲げられた際の作用を説明する。
本実施形態の外装材11は、水平折線29に沿ってシート基材の裏面側に湾曲させられ、水平折線29と直交する直交線41に沿う中心軸線を有する筒状の筒状外装材43に形成されると、筒の中心軸線方向に沿って凹部15の一対の対向内面49a,49bが配置される向きとなる。
【0030】
ここで、外装材11の凹部15は、
図1及び
図3に示すように、シート基材の表面に形成された舟形箱体45の内方側空間部である。凹部15は、平面視V字状の稜線23のそれぞれの頂部27が、一対の傾斜折線19と、これら傾斜折線19の先端部をつなぐ水平折線29との連続折線となる谷部21によって接続されている。そして、凹部15は、舟形箱体45における谷部21を境とする一対の対向内面49a,49bが接近離反する方向には、変形が容易で大きく変形する。つまり、舟形箱体45は、シート幅方向(X方向)には大きく変形することができる。一方、凹部15は、一対の頂部27が接近離反する方向(Y方向)へは谷部21の傾斜折線19と水平折線29が曲げ抵抗となって変形し難く、変形量が小さい。このため、複数の凹部15が縦横に並んだ外装材11は、
図1に示した平板状態においては、シート幅方向(X方向)には容易に伸縮するが、シート長手方向(Y方向)には伸縮し難い。このように、外装材11には、面内方向の伸縮性に指向性が生じる。
【0031】
そして、軸線両端側が接近するように筒状の筒状外装材43が曲げられると、一対の対向内面49a,49b間を伸縮させる応力が凹部15に作用するが、外周面側に開口する凹部15は一対の対向内面49a,49bが接近離反する方向には変形が容易で変形量が大きい。そのため、
図7(a),(b)に示すように、筒状外装材43が曲げられると、屈曲部51の外側には引っ張り応力が生じて一対の対向内面49a,49b間が大きな変形量で伸び、屈曲部51の内側には圧縮応力が生じて一対の対向内面49a,49b間が大きな変形量で縮む。その結果、筒状外装材43を容易に曲げることができる。従って、被覆電線61の配索経路に沿うように屈曲自在な筒状外装材43を容易に得ることができる(
図6参照)。
【0032】
これに対し、外装材11が、水平折線29に沿ってシート基材の表面側に湾曲させるように丸められて、水平折線29と直交する直交線41に沿う中心軸線を有する筒状に形成された場合は、筒の中心軸線方向に沿って凹部15の一対の対向内面49a,49bが配置される向きとなる。そして、軸線両端側を接近させるようにこの筒状の外装材11を曲げる際には、一対の対向内面49a,49b間を伸縮させる応力が凹部15に作用するが、筒状の内周面側に開口する凹部15における一対の対向内面49a,49bは接近離反する方向に変形が容易でなく変形量が小さいため、容易に曲げることができない。従って、外装材11を水平折線29に沿ってシート基材の表面側に湾曲させるように丸めた場合には、直線保持性の要求される被覆電線61の配索経路に用いられる筒状の外装材11とすることができる。
【0033】
また、外装材11は、水平折線29と直交する直交線41に沿ってシート基材の裏面側又は表面側に湾曲させるように丸められて、水平折線29に沿う中心軸線を有する筒状に形成された場合、筒の中心軸線方向に沿って一対の頂部27が配置される向きとなる。そして、軸線両端側が接近するように筒状の外装材11を曲げる際には、凹部15の頂部27同士を伸縮させる応力が凹部15に作用するが、一対の頂部27が接近離反する方向へは凹部15が変形し難く、変形量が小さいため、容易には曲がらない。従って、外装材11を水平折線29と直交する直交線41に沿ってシート基材の裏面側又は表面側に湾曲させるように丸めた場合には、直線保持性の要求される被覆電線61の配索経路に用いられる筒状の外装材11とすることができる。
【0034】
このように、本実施形態の外装材11において、筒状に丸める方向は、シート基材の表裏別、水平折線29に対する筒の中心軸線方向の平行直交別の四通りが可能となるが、筒状の外装材11が屈曲容易となるのは、シート基材の裏面側に湾曲させられて直交線41に沿う中心軸線を有する筒状に外装材11を丸める一通りのみとなる。これにより、耐摩耗性を確保するための複数の凹部15を設けた外装材11は、筒状に形成する丸め方向を選択することにより、屈曲部用、直線部用として使い分けすることができる。
【0035】
次に、本発明の第2実施形態に係る外装材111を説明する。
図8〜
図10に示すように、本第2実施形態に係る外装材111は、凹部15に代えて凹部115をシート基材の表面にエンボス加工により形成した以外は、上記第1実施形態に係る外装材11と略同様の構成である。そこで、同様の構成部分については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
本第2実施形態に係る外装材111は、所定幅にスリット加工された長尺のシート基材(図示せず)の表面に、エンボス加工により同一形状で形成された複数の凹部115が、規則正しく縦横に隣接して千鳥状に連続形成されている。各凹部115は、格子部117と谷部21とを有する。
図8に示すように、本第2実施形態の各格子部117は、一対の平面視V字状の稜線23を有してV字開口側が対向するようにシート幅方向(X方向)に延びる境界線25を挟んで線対称に配置され、シート基材の表面に複数の多角形を形成している。即ち、本第2実施形態に係る外装材111の凹部115は、格子部117が平面視で菱形となる。平面視菱形となった凹部115の格子部117は、平面視V字状の稜線23のそれぞれの頂部27が4本の稜線を交差させて形成した部分となる。
【0037】
次に、上記構成を有する外装材111の作用を説明する。
本第2実施形態に係る外装材111では、シート基材の表面に、規則正しく隣接した凹部115がエンボス加工により形成され、一対の平面視V字状の稜線23がつながることで凹部115の稜線となる菱形の格子部117がシート基材の表面と同一平面に配置される。即ち、外装材111を表裏逆にして裏面側より見れば、凹部115を形成したことにより裏面側に峰部39(
図9,10参照)が突出する。そこで、シート基材からなる外装材111の表裏面には、耐摩耗性を確保するための凹凸が安価なエンボス加工により形成されることになる。
【0038】
また、外装材111の表面には、一対の平面視V字状の稜線23を有する複数の凹部115が規則正しく縦横に並んだ菱形の格子部117と、連続折線となる谷部21の傾斜折線19及び水平折線29とが構成される。そこで、凹溝凸状を交互に形成した波板シートをチューブ軸線方向に凹凸部が交互に配置されるように丸める従来の外装材と異なり、シート基材に凹部115が形成された外装材111は、水平折線29または水平折線29と直交する直交線41を中心に容易に湾曲させて、多角形の筒状に丸めることが可能となる。従って、シート基材から成る外装材111は、積層状態での搬送が可能となるため、嵩張らず、搬送効率が向上し、上記第1実施形態に係る外装材11と同様の作用効果を有する。
【0039】
図10に示したように、本第2実施形態に係る外装材111は、水平折線29に沿ってシート基材の裏面側に湾曲させられ、水平折線29と直交する直交線41に沿う中心軸線を有する筒状に形成され、複数の被覆電線61の外周面に巻き付けられる筒状外装材53として使用される。外装材111の湾曲は加熱成形によって行われ、筒状外装材53として筒状となった外装材111は、再び平面状態に戻ることはない。筒状外装材53は、筒状に丸められた先端側同士が重ねられたり、或いはスリットを有したまま用いられたりすることとなる。
【0040】
そして、軸線両端側が接近するように筒状の筒状外装材53が曲げられると、一対の対向内面149a,149b間を伸縮させる応力が凹部115作用するが、外周面側に開口する凹部115は一対の対向内面149a,149bが接近離反する方向には変形が容易で変形量が大きい。そのため、筒状外装材53が曲げられると、屈曲部の外側には引っ張り応力が生じて一対の対向内面149a,149b間が大きな変形量で伸び、屈曲部の内側には圧縮応力が生じて一対の対向内面149a,149b間が大きな変形量で縮む。その結果、筒状外装材53を容易に曲げることができる。従って、被覆電線61の配索経路に沿うように屈曲自在な筒状外装材53を容易に得ることができる。
【0041】
次に、本発明の第3実施形態に係る一括組付用の外装材57を用いたワイヤハーネス73への使用例を説明する。
図11(a)は格子部17を部分的に形成し、分岐電線用の切欠部55を形成した一括組付用の外装材57の平面図であり、(b)は(a)に示した一括組付用の外装材57を用いて組み立てられたワイヤハーネス73の部分斜視図である。
外装材57は、
図11(a)に示すように、シート基材の所望の範囲に複数の凹部15を形成することで、上述した作用により、凹部15の形成領域を屈曲容易とし、凹部15が形成されていない領域を屈曲し難くできる。また、所望の位置に切欠部55を形成しておくことで、外装材57を筒状に丸めた際の分岐電線59の導出口64を確保することができる。
【0042】
このようにして複数の凹部15を部分形成し、切欠部55を設けた一括組付用の外装材57は、
図11(b)に示すように、分岐電線59を導出口64から引き出した後、基幹電線63を覆ってテープTや結束バンドによって固定される。一括組付用の外装材57は、平板形状のままのもの、筒状に成形したものの何れであってもよい。
従来のワイヤハーネスは、異なる部位によって耐摩耗性、直線性、曲がり性(可撓性)、電線分岐が必要となる場合、それに合わせて種々のコルゲートチューブ、プロテクタ、分岐用チューブ等が組み付けられていた。
これに対し、本第3実施形態に係る一括組付用の外装材57を用いれば、一部材で屈曲可能部65、直線保持部67、分岐部69を備えたワイヤハーネス73を形成できる。この結果、部材の重複を廃止し、ワイヤハーネス73の一体構造化が実現できる。また、一括組付けによる省人化も可能となる。
【0043】
従って、上述した本実施形態に係る外装材11,111,57によれば、安価なエンボス加工により凹凸が形成されるシート基材は積層状態での搬送が可能であり、製造コストおよび物流コストを低減できる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。