(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール部材を構成するフィルムの外径(rb)は、マニホールド径(rc)よりも0.01〜1mmだけ大きい請求項1または2に記載のダイ用インナーディッケル。
各シール部材は、前記フィルム間に、マニホールド径(rc)よりも小さな外径(rs)をもつ第1スペーサ部材をさらに具える請求項1、2または3に記載のダイ用インナーディッケル。
第1スペーサ部材の外径をrsおよびフィルムの外径をrbとすると、第1スペーサ部材の厚さtsは、下記の関係式を満足する請求項4または5に記載のダイ用インナーディッケル。
ts<(rb−rs)
補強シール部は、少なくとも2つのシール部材を具え、該シール部材間に、マニホールド径(rc)よりも小さい外径(ra)をもつ第2スペーサ部材をさらに具える請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
前記補強シール部は、前記ディッケル補助部を配置した領域内の、前記インナーディッケルの先端側区域に設ける請求項1〜8のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、ディッケル本体部にリング状のグランドパッキングを設ける構成を採用した場合、液密状態を十分に確保するには、グランドパッキングの外径サイズを、ダイのマニホールドの内径に比べてできるだけ大きくすることが好ましいものの、外径サイズを大きくしすぎると、塗工幅の調整の際に、ダイのマニホールド内を移動(厳密には摺動)させるときのインナーディッケルの挿入や引き抜き時に移動させるのに必要な力(以下、単に「移動力」という。)が大きくなって、塗工幅調整の作業性が悪化する傾向があり、一方、塗工幅の調整を容易にするため、グランドパッキングの外径サイズを小さくしすぎると、塗工幅の調整については容易になるものの、液密状態を十分に確保できなくなるおそれがあるという問題がある。
【0007】
このため、従来の塗工装置は、その構造上、十分な液密状態の確保と塗工幅調整の容易化の両立は二律背反の関係にあり、これらの両立を図れる新規な技術を開発することができれば望ましい。
【0008】
本発明の目的は、インナーディッケルのディッケル本体部に、特定構造をもつ補強シール部を具えることにより、十分な液密状態の確保と塗工幅調整の容易化の両立を可能にしたダイ用インナーディッケルおよびそのインナーディッケルを具えるダイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)1対の分割金型部材を合体させて形成してなる金型で構成され、該金型の長手方向に延びるマニホールドと、該マニホールドから前記金型の径方向外方に向かって延びるスリットとを有するダイの両端部に配置され、前記マニホールドに対応した外面形状をもつシャフト状のディッケル本体部と、該ディッケル本体部から延び、前記スリットに対応した外面形状をもつシート状またはフィルム状のディッケル補助部とを有するダイ用インナーディッケルにおいて、前記ディッケル本体部は、前記ディッケル補助部を配置した領域の少なくとも一部に、前記マニホールド内に充填される、塗布または押出成形するための液状物の液密封止を補強する補強シール部を具え、該補強シール部が、前記ダイに対するインナーディッケルの位置移動時には、前記マニホールドの内壁に対して
倒れ込み変形の変形態様で弾性変形しながら摺動し、かつ、前記ダイに対するインナーディッケルの位置固定時には、弾性復元力により、互いに協動した状態で前記内壁に密着する2枚以上のフィルムを含む少なくとも1つのシール部材を具えることを特徴とするダイ用インナーディッケル。
【0010】
(2)前記シール部材を構成するフィルムが、マニホールド径(rc)よりも大きな外径をもつ上記(1)に記載のダイ用インナーディッケル。
【0011】
(3)前記シール部材を構成するフィルムの外径(rb)は、マニホールド径(rc)よりも0.01〜1mmだけ大きい上記(1)または(2)に記載のダイ用インナーディッケル。
【0012】
(4)各シール部材は、前記フィルム間に、マニホールド径(rc)よりも小さな外径をもつ第1スペーサ部材をさらに具える上記(1)、(2)または(3)に記載のダイ用インナーディッケル。
【0013】
(5)第1スペーサ部材の外径は、マニホールド径(rc)よりも0.001〜3mmだけ小さい上記(4)に記載のダイ用インナーディッケル。
【0014】
(6)第1スペーサ部材の外径をrsおよびフィルムの外径をrbとすると、第1スペーサ部材の厚さtsは、下記の関係式を満足する上記(4)または(5)に記載のダイ用インナーディッケル。
ts<(rb−rs)
【0015】
(7)補強シール部は、少なくとも2つのシール部材を具え、該シール部材間に、マニホールド径(rc)よりも小さい外径をもつ第2スペーサ部材をさらに具える上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
【0016】
(8)第2スペーサ部材の外径は、マニホールド径よりも0.001〜3mmだけ小さい上記(7)に記載のダイ用インナーディッケル。
【0017】
(9)前記補強シール部は、前記ディッケル補助部を配置した領域内の、前記インナーディッケルの先端側区域に設ける上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
【0018】
(10)各シール部材を構成するフィルムの枚数は2枚である上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
【0019】
(11)前記フィルムは潤滑性樹脂材料からなる上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケル。
【0020】
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のダイ用インナーディッケルを具えるダイ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、インナーディッケルのディッケル本体部に、特定構造をもつ補強シール部を具えることにより、十分な液密状態の確保と塗工幅調整の容易化の両立を可能にしたダイ用インナーディッケルおよびそのインナーディッケルを具えるダイを提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら以下で説明する。
図1は、本発明に従う代表的なインナーディッケルをダイに装着する前の状態で示す斜視図、
図2は、
図1に示すインナーディッケルをダイに装着した後の状態で示す斜視図、
図3は、
図1に示すインナーディッケルを、その先端側の斜め上方位置から眺めたときの拡大斜視図、
図4は、
図3の領域Xで囲まれたインナーディッケルの部分の拡大斜視図、そして、
図5は、
図2に示すインナーディッケルの補強シール部を構成する第2スペーサ部材とシール部材の寸法関係を説明するための図である。
【0024】
図示のダイ1は、1対の分割金型部材2a,2bを合体させて形成してなる金型2で構成され、金型2の長手方向Lに貫通するまで延びるマニホールド3と、このマニホールド3から金型2の径方向外方Rに向かって延びるスリット4とを有している。
【0025】
このダイ1の両端部1a,1bに、塗工幅の調整のため、1対のインナーディッケル5(片方のインナーディッケルのみ図示)のそれぞれが配置される。
【0026】
インナーディッケル5は、シャフト状のディッケル本体部6と、シート状またはフィルム状のディッケル補助部7とを有している。ディッケル補助部7の厚みは、スリット4の幅に対して、その偏差として±2μmとすることが好ましい。また、ディッケル補助部7は、その厚さをスリット4の幅よりも厚くする場合には、シート状またはフィルム状の複数枚の薄片からなる複層タイプのディッケル補助部7として構成することも可能である。
【0027】
ディッケル本体部6は、マニホールド3に対応した外面形状をもち、ディッケル補助部7は、ディッケル本体部6から延び、スリット4に対応した外面形状をもっている。
【0028】
そして、本発明の構成上の主な特徴は、インナーディッケル5のディッケル本体部6に、特定構造をもつ補強シール部8を具えることにあり、より具体的には、ディッケル本体部6は、前記ディッケル補助部7を配置した領域9の少なくとも一部、
図3ではインナーディッケル5の先端側区域9aに、前記マニホールド3内に充填される、塗布または押出成形するための液状物の液密封止を補強する補強シール部8を具え、補強シール部8が、
図5に示すように、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置移動時には、マニホールド3の内壁に対して
倒れ込み変形の変形態様で弾性変形しながら摺動し、かつ、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時には、弾性復元力により、互いに協動した状態で前記内壁に密着する2枚以上のフィルムを含む少なくとも1つのシール部材11、
図4では2枚のフィルム11a,11bで構成される6つのシール部材11を具えることにある。
【0029】
なお、ここでいう「弾性復元力により、互いに協動した状態で前記内壁に密着する」とは、前記シール部材11を構成する2枚以上のフィルムが、ともに同じ方向に弾性復元する動きをする結果として、互いに協力し合ってマニホールドの内壁に密着することを意味し、具体的には、例えば2枚以上のフィルム同士が、折り重なった状態でマニホールドの内壁に密着する場合がシール性を高める観点から好適であるが、フィルム同士が分離した状態でマニホールドの内壁に密着する場合や、フィルム間に、塗布または押出成形するための液状物が入り込んで、フィルム間に位置するマニホールドの内壁部分に形成した膜の存在下でフィルム同士が互いに協力し合ってマニホールドの内壁に密着することによって、シール性を高めるような場合も含まれる。
【0030】
そして、本発明は、上記構成を採用することによって、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置変更時には、補強シール部8のシール部材11(より厳密にはシール部材11を構成するフィルム11a.11b)が、ダイ1のマニホールド3の内壁に対して接触するものの、インナーディッケル5の装着方向(挿入方向)Idとは反対方向に容易に弾性変形しながら摺動するため、ダイ1へのインナーディッケル5の挿入力を小さくすることができ、また、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時には、補強シール部8のシール部材11が、弾性復元力により、互いに協動した状態でマニホールド3の内壁に密着する結果、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時における十分な液密状態の確保と、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置移動時における塗工幅調整の容易化の両立を図ることができる。
【0031】
本発明は、特に補強シール部8を、単一フィルムではなく、2枚以上のフィルム11a、11bを含むシール部材11で構成することにより、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置移動時には、フィルム11a,11bの倒れ込み変形をより一層容易にして摺動性を向上させ、また、ダイ1へのインナーディッケル5の位置固定時には、ダイ1のマニホールド3内壁に対するシール部材11のフィルム11a,11bが弾性復元力により、互いに協動した状態、好適にはフィルム11a,11b同士が折り重なった状態でマニホールド3の内壁に密着することに伴ってフィルム11a,11bの総接触面積が、単一フィルムからなるシール部材に比べて増加するため、十分な液密状態を確保することができる。
【0032】
シール部材11を構成するフィルム11a,11bは、マニホールド径rcよりも大きな外径rbをもつことが、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時に、弾性復元力により、互いに協動した状態でマニホールド3の内壁に密着するように構成する点で必要であり、具体的には、シール部材11を構成するフィルム11a,11bの外径rbを、マニホールド径rcよりも0.01〜1mmだけ大きくすることが好ましい。なお、ここでいう「マニホールド径」とは、マニホールド3の横断面形状が、真円形状である場合にはその半径を意味し、また、
図1に示すような半円形状や、半楕円形状、楕円形状などのように複数の異なる径を有する形状である場合には、径の中心位置または径の中心に相当する位置から、スリット4の延在方向(
図1に示す金型2の径方向外方R)に沿って測定した半径(直径の1/2)を意味する。
【0033】
シール部材11を構成するフィルム11a,11bの外径rbがマニホールド径rcに比べて1mmよりも大きい場合には、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置移動時におけるインナーディッケル5の挿入力が高くなって、装着の際の作業性が悪化する傾向があるため好ましくない。また、フィルム11a,11bの外径rbがマニホールド径rcに比べて0.01mm未満しか差がない場合には、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時における液密状態を十分に確保できなくなる傾向があるため好ましくない。
【0034】
シール部材11を構成するフィルム11a,11bは、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置変更時には、容易に倒れ込み変形をし、かつダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時には、元の形状に復元する特性を有することが必要であるため、弾性率が10000MPa以下、好適には1000MPa以下の弾性材料であることが好ましく、特に潤滑性樹脂材料が最適である。
【0035】
潤滑性樹脂材料としては特に限定はしないが、シール部材11は、耐薬品性および摺動性に優れていることが望ましく、この点から、潤滑性樹脂材料として、好適には静摩擦係数が0.2以下である樹脂材料、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが好ましい。
【0036】
また、シール部材11は、
図4および
図5では2枚のフィルム11a,11bのみで構成した場合を示したが、3枚以上のフィルムで構成してもよく、また、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時に折り重なった状態を維持できる範囲で、例えば
図6のようにフィルム11aとフィルム11bとの間に、マニホールド径rcよりも小さな外径、好適にはマニホールド径rcよりも0.001〜3mmだけ小さい外径rsをもつ第1スペーサ部材12をさらに具えていてもよく、第1スペーサ部材12は必要に応じて適宜配設することができる。
【0037】
なお、第1スペーサ部材12を配設する場合、第1スペーサ部材12の厚さtsは、第1スペーサ部材12の外径をrs、フィルム11a,11bの外径をrbとすると、下記の関係式を満足することが好ましい。
ts<(rb−rs)
【0038】
ts≧(rb−rs)の関係になると、フィルム11a,11b間の距離が、フィルム11a,11bの弾性変形する部分の長さ寸法に比べて同等ないし大きくなるため、ダイ1に対するインナーディッケル5の位置固定時にフィルム11a,11b同士が分離した状態になって、互いに協動した状態、特に折り重なった状態を実現することができなくなる傾向があるため好ましくない。
【0039】
また、フィルム11a,11bの厚さtb(
図6では、tb1,tb2)は、前記ダイに対するインナーディッケルの位置移動時には、前記マニホールドの内壁に対して弾性変形しながら摺動し、かつ、前記ダイに対するインナーディッケルの位置固定時には、弾性復元力により、互いに協動した状態で前記内壁に密着できる構成であればよく、特に限定はしないが、前記ダイに対するインナーディッケルの位置移動時に前記マニホールドの内壁に対して弾性変形しながら摺動可能な前記各フィルム11a,11bの厚さtbとしては、例えばtb≦4(rc−rs)の範囲にすることが好ましい。tb>4(rc−rs)の関係になると、前記ダイに対するインナーディッケルの位置移動時に、前記マニホールドの内壁に対して十分に弾性変形できず、摺動時の移動力が大きくなってインナーディッケルがダイ内を移動できなくなる傾向があるからである。
【0040】
前記フィルム11a、11bの厚さの好適範囲としては、フィルムの材質によっても異なるが、例えば、前記フィルム11a、11bとしてPTFEフィルムを用いた場合には、各フィルム11a、11bの厚さは、0.05〜0.4mm程度の厚さにすることが好ましい。
【0041】
また、補強シール部8は、少なくとも2つのシール部材11、
図4では6つのシール部材11を具え、該シール部材11,11間に、マニホールド径rcよりも小さい外径raをもつ第2スペーサ部材10をさらに具えることが、インナーディッケル5の位置移動時において、シール部材11を構成するフィルム11a,11bが弾性変形するためのスペースを確保すると共に、ダイのマニホールド3の内壁に対するインナーディッケル5全体の接触面積を小さくして摺動抵抗を低くする点で好ましい。
【0042】
なお、
図4では、6つのシール部材11と、これらのシール部材11間に5つの第2スペーサ部材10を介装した場合の例が示してあるが、シール部材11と第2スペーサ部材10の配設数は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0043】
第2スペーサ部材10の外径raは、マニホールド径よりも0.001〜3mmだけ小さいことが好ましい。第2スペーサ部材10の外径raがマニホールド径rcに比べて3mmよりも小さいと、ダイ1にインナーディッケル5を装着したときに、第2スペーサ部材10と、ダイ1のマニホールド3の内壁との間に大きなスペースが生じるため、インナーディッケル5の位置固定時における液密状態を十分に確保できなくなる傾向があるからである。また、第2スペーサ部材10の外径raがマニホールド径rcに比べて0.001mm未満しか差がないと、インナーディッケル5の位置移動時に、補強シール部8のシール部材11が第2スペーサ部材10側に変形するための、ダイ1のマニホールド3内におけるスペースが不足し、位置移動時(装着時)におけるインナーディッケル5の移動力が高くなる傾向があるからである。
【0044】
第1スペーサ部材12および第2スペーサ部材10の材質については特に限定はしないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PTFEなどの各種樹脂材料を用いることができる。
【0045】
また、本発明のインナーディッケル5はダイ用インナーディッケルであり、このインナーディッケル5を具えるダイ1は、十分な液密状態の確保と塗工幅調整の容易化の両立を図ることができる。
【0046】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明に従う1対のダイ用インナーディッケルを試作し、これらのインナーディッケルを、
図1に示すダイに装着した塗工装置を用いて走行するウエブ表面に連続的に塗布し、性能評価を行ったので、以下で説明する。
【0048】
実施例は、
図3および
図4に示す補強シール部を具えるインナーディッケル5を用いたものであり、塗布幅が250mmであり、ダイ1のマニホールド径rcが20mmであり、スリット4の幅が300μm、ディッケル補助部7の厚さが295μm、補強シール部8は、ディッケル補助部7を配置した領域内の、インナーディッケルの先端側区域9aに設け、厚さが200μmのPTFE樹脂材料製の2枚のフィルム11a,11bからなる計6つのシール部材11と、これらシール部材11,11間にそれぞれ介挿された厚さ500μmの PET樹脂製の計5つの第2スペーサ部材10とで構成され、第2スペーサ部材10の外径raを、マニホールド径rcよりも100μmだけ小さく、シール部材11を構成する2枚のフィルム11a,11bの外径rbを、マニホールド径rcよりも100μmだけ大きくなるように設定した。
【0049】
(比較例1)
比較のため、ディッケル本体部の、ディッケル補助部の基部相当位置の外周部に、ダイのマニホールドの内壁に対して液密状態になるような外径サイズをもつリング状のグランドパッキング(外径サイズ:マニホールド径よりも0.5mm大きい。)を設ける構成を採用した、特許文献1に記載された塗工装置と同様の構成のインナーディッケル(比較例1)についても併せて試作し、実施例と同様の性能評価を行った。
【0050】
(比較例2)
シール部材を、0.5mm厚さのPTFE樹脂材料製の単一フィルムで構成したことを除いて実施例と同様の構成とした。
【0051】
(比較例3)
シール部材を、0.2mm厚さのPTFE樹脂材料製の単一フィルムで構成したことを除いて実施例と同様の構成とした。
【0052】
(性能評価)
(1)ダイに対するインナーディッケルの位置移動時における移動力の測定
図1に示すインナーディッケル挿入装置13を用い、インナーディッケル5を、ディッケル補助部7がスリット4内に完全に見えなくなる位置までダイ1の内部に挿入して装着し、次いで、インナーディッケル挿入装置13を構成するネジ押し込み部分を取り外し、ダイ1の外部に出ているインナーディッケル5のディッケル本体部6に連結したシャフト14にプッシュプルゲージ(最大目盛50N)を取り付け、インナーディッケル5をダイ1の外側に引き出すときの移動力(N)をプッシュプルゲージで測定した。
【0053】
(2)ダイに対するインナーディッケルの位置固定時における液漏れの有無の評価
ダイ1内の所定位置にインナーディッケル5を装着した後、インナーディッケル5を、ダイ1内において60mmの距離を10往復移動させ、次いで、シリコーンオイル(粘度0.5Pas)を、ダイ内圧300kPaになるまで、ポンプでダイ1に挿入し、その圧力状態を1時間維持し、このとき、ダイの両端部に配置されたインナーディッケルとマニホールドとの間から液漏れが生じているか否かについて目視観察により評価した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す評価結果から、比較例1、2は、ダイ1にインナーディッケル5を装着する際のインナーディッケルの移動力が大きくなりすぎて移動困難であった。比較例3は、ダイ1に対するインナーディッケル5の装着時におけるインナーディッケル移動力については小さいものの、塗工後の液漏れが観察された。これに対し、実施例は、ダイへのインナーディッケルの装着時におけるインナーディッケルの移動力が小さく、塗工後の液漏れも観察されなかった。