(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたクラッシュボックス(衝撃吸収部材)では、CFRPのみで構成されているため、衝撃荷重が付与されたときに高い強度を発揮するが変形量は少なく、限界を超えると一気に破壊してしまうため、衝撃荷重を長く継続して吸収することが困難である。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、衝撃荷重をより長く継続して吸収することが可能な車両用衝撃吸収機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明は、車幅方向に延在するバンパビームと、前記バンパビームの車両前後方向の前側に配設され、中空部を有する衝撃吸収コア材と、を備え、前記バンパビームには、車両前後方向の前側に、
複数の凸状部が設けられ、
前記各凸状部の車幅方向の左右端部には、前記複数の凸状部同士を接続する補強プレートが設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車両用衝撃吸収機構に対して衝撃荷重が付与された際、バンパビームに設けられた凸状部によって弾性域内での剛性・強度が高められてその変形が抑制されるため、先ず、バンパビームの前側に配設された衝撃吸収コア材が選択的に塑性変形して衝撃荷重を吸収する。衝撃吸収コア材がある程度塑性変形した後、続いて、バンパビームが弾性域内で弾性変形して衝撃荷重を吸収する。このように本発明では、前半の衝撃吸収コア材による塑性変形と後半のバンパビームによる弾性変形とによって、衝撃荷重をより長く継続して吸収することができる。この結果、本発明では、衝撃吸収コア材とバンパビームとの複合的な作用で、短い変位量で大きな衝撃荷重量を吸収することができる。また、軽衝突の場合には、バンパビームが塑性変形することがなく、衝撃吸収コア材が塑性変形するのみであるため、衝撃吸収コア材を交換するだけでよく、修理コストを安価にすることができる。
さらに、本発明によれば、バンパビームの左右両端部に補強プレートを設けることにより、衝撃荷重が付与された場合であっても、凸状部同士の開きや倒れ等の変形を抑制して凸状部同士を拘束することができる。この結果、本発明では、バンパビームが弾性変形可能な弾性域の必要な範囲内でバンパビームが弾性変形することを好適にサポートすることができる。
【0009】
また、本発明は、前記凸状部が、車両前後方向に延び、それぞれが上下に配置された2つの壁部と、前記2つの壁部のそれぞれの車両前後方向の前端に連接された前端部とによって構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、バンパビームの凸状部を2つの壁部と、2つの壁部を連接する前端部とによって構成することにより、バンパビームがより座屈しにくい構成とすることができる。本発明では、2つの壁部によって衝撃荷重を吸収することができるため、例えば、衝撃吸収コア材で吸収することができなかった衝撃荷重を、バンパビームの2つの壁部によって好適に吸収することができる。
【0011】
さらに、本発明は、前記衝撃吸収コア材の車両前後方向の後方側が、前記壁部に沿って形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、衝撃吸収コア材の後方部(後方側)が壁部に倣った形状とすることで、後方部が隣接する凸状部間に差し込まれる形状、又は、後方部が分岐して凸状部を跨ぐ形状とすることができる。この結果、本発明では、衝撃吸収コア材をバンパビームに組み付ける際、衝撃吸収コア材をバンパビームに対して容易に位置決めすることができると共に、衝撃吸収コア材がバンパビームから脱落することを防止することができる。さらに、衝撃荷重が付与された際、衝撃吸収コア材からバンパビームの凸状部に対して衝撃荷重を確実に伝達することができると共に、凸状部における衝撃荷重の吸収性能を確実に発揮させることができる。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記バンパビームの車両前後方向の後方側に、車両前後方向に沿って延設する骨格部材が設けられることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、バンパビームの後方に設けられた骨格部材に対して、バンパビームに付与される衝撃荷重を吸収する機能を発揮させることができる。
【0017】
さらにまた、本発明は、前記衝撃吸収コア材に、カバー部材が設けられることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、衝撃吸収コア材にカバー部材を設けることで、局部的な衝撃荷重の入力に対して衝撃吸収コア材に対する衝撃荷重の入力を平準化してバンパビームに伝達することができる。このため、衝撃吸収コア材の潰れ残りを抑制して十分に衝撃荷重を吸収することができる。さらに、カバー部材をバンパビームに係止することで、衝撃吸収コア材のバンパビームからの脱落を防止し、組付作業性の向上と衝撃荷重を確実に吸収することができる。
【0019】
さらにまた、本発明は、前記バンパビームが複合材からなり、前記衝撃吸収コア材がアルミニウム合金からなることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、軽量且つ衝撃荷重の吸収性に優れた中空部を有するアルミニウム合金(発泡性アルミニウムも含む)からなる衝撃吸収コア材と、軽量な複合材(例えば、CFRP、GFRP等)からなるバンパビームとによって、変位量が短くても大きな衝撃荷重量を吸収することができる。
【0021】
さらにまた、本発明は、前記衝撃吸収コア材が、ハニカム形状を有することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、衝撃吸収コア材をハニカム形状とすることにより、さらに軽量化を図ると共に、塑性変形し易くすることができる。
【0023】
さらにまた、本発明は、前記骨格部材が、金属材料で形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、例えば、車体のフロントサイドフレームの前端部とバンパビームとの間を連結する骨格部材を金属材料とすることにより、衝撃荷重によってバンパビームの弾性変形が進行していく際、骨格部材との締結部近傍における応力集中でバンパビームが破壊に至る前、骨格部材が塑性変形することでバンパビームが破壊されることを回避することができる。
【0025】
さらにまた、本発明は、前記金属材料が、アルミニウム合金であることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、骨格部材をアルミニウム製合金とすることで、軽量且つ変形容易な部材とすることができる。このため、衝撃荷重が大きく、バンパビームが破壊に至るほどの変位に到達する前、骨格部材が優先的に圧潰して衝撃荷重を吸収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用衝撃吸収機構の斜視図、
図2は、
図1の分解斜視図、
図3は、
図1の矢印Z方向からみた斜視図、
図4は、
図1の一部破断正面図、
図5は、
図1の平面図、
図6は、
図1の右側面図、
図7は、
図4のVII−VII線に沿った縦断面図である。なお、各図中に矢印で示される、「前後」及び「上下」は、車体の前後方向及び上下方向を示し、「左右」は、運転席から見た左右方向(車幅方向)をそれぞれ示している。
【0030】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係る車両用衝撃吸収機構10は、図示しない車両の車体前部に設けられるフロントバンパに適用されたものである。この車両用衝撃吸収機構10は、車幅方向に延在するバンパビーム12と、バンパビーム12の車両前後方向の前側(前面)に固定される衝撃吸収コア材14とを含む。バンパビーム12は、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)やGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)等の複合材によって形成される。また、衝撃吸収コア材14は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料によって形成される。
【0031】
さらに、車両用衝撃吸収機構10は、バンパビーム12の車幅方向に沿った左右両端部でバンパビーム12の車両前後方向の後方側(後面)に固定される一対のエクステンション部材(骨格部材)16と、バンパビーム12の車幅方向に沿った左右両端部でバンパビーム12の前側(前面)に固定される一対の補強プレート18とを備えて構成されている。なお、車両用衝撃吸収機構10は、フロントバンパに限定されるものではなく、リヤバンパにも適用することができる。
【0032】
バンパビーム12には、車両前後方向の前側(前面)に、少なくとも1以上の凸状部20が設けられている。本実施形態では、軸方向(車幅方向)と直交する縦断面が略コ字を呈し(
図7参照)、車両前方に向かって突出する2つの凸状部20が車幅方向に沿って平行に延在するように設けられている。
【0033】
また、2つの凸状部20は、バンパビーム12の後方に位置する縦壁21を介して車両上下方向に沿って連続し、上部側及び下部側の凸状部20と縦壁21との間で車両後方側に窪んだ断面矩形状の凹部22が形成される。凹部22は、バンパビーム12の前面に車幅方向に沿って延在するように設けられる。なお、2つの凸状部20は、それぞれ車両前方に向かって突出した同一断面形状で構成されているが、後記するようにそれぞれ異なる断面形状で構成されてもよい。
【0034】
凸状部20は、
図7に示される縦断面において、車両前後方向に延び、それぞれが所定間隔離間して上下に配置された2つの壁部24と、2つの壁部24のそれぞれの車両前後方向の前端に連接された前端部26とを有する。
【0035】
ここで、バンパビーム12に設けられた凸状部20の変形例を、
図8及び
図9に基づいて説明する。なお、
図8及び
図9では、バンパビーム12及び衝撃吸収コア材14が簡略化された断面形状で図示されていると共に、エクステンション部材16の図示を省略している。
【0036】
図8(a)は、第1変形例に係る凸状部が設けられたバンパビーム及び衝撃吸収コア材の縦断面図である。このバンパビーム12aは、単一の凸状部20aを有し、前面にやや幅広に形成された単一の前端部26aと、前端部26aの上端及び下端から車両後方に向かって相互に対向する離間距離が徐々に増大するように延在する2つの壁部24aと、壁部24aの後端から上下方向に屈曲する後端フランジ部28とによって構成されている。
【0037】
図8(b)は、第2変形例に係る凸状部が設けられたバンパビーム及び衝撃吸収コア材の縦断面図である。このバンパビーム12bは、同一形状からなる2つの凸状部20bを有し、前面にやや幅狭に形成された2つの前端部26bと、前端部26bの上端及び下端から車両後方に向かって相互に対向する離間距離が徐々に減少するように延在する2つの壁部24bと、壁部24bを連接する縦壁21とによって構成されている。
【0038】
図8(c)は、第3変形例に係る凸状部が設けられたバンパビーム及び衝撃吸収コア材の縦断面図である。このバンパビーム12cは、異なる形状からなる2つの凸状部20c、20dを有し、2つの凸状部20c、20dが縦壁21を介して上下方向に連続して設けられている。
【0039】
2つの凸状部20c、20dのうちの上部側の凸状部20cは、前面にやや幅狭なフランジ状からなる前端部26cと、前端部26cの下端から後方に延在する単一の壁部24cとから構成される。下部側の凸状部20dは、前面にやや幅狭に形成された単一の前端部26dと、前端部26dの上端及び下端から車両後方に向かって相互に対向する離間距離が徐々に増大するように延在する2つの壁部24cと、下側の壁部24cの後端から下方側に向かって略L字状に屈曲する後方フランジ部28とによって構成されている。
【0040】
なお、バンパビーム12の車幅方向に沿った左右両端側の上端部及び下部部には、一対のエクステンション部材16を取り付けるための取付フランジ30が設けられている。
【0041】
衝撃吸収コア材14は、断面正六角形の複数の貫通孔(中空部)が車両前後方向に沿って貫通して形成されるハニカム形状32(
図4参照)を有するコア本体34と、コア本体34の略全面を被覆すると共に、収納空間部内に収納されるコア本体34を保持してバンパビーム12に固定するカバー部材36とを備える。カバー部材36は、例えば、CFRPで形成され、後端側が開口した箱状の部材である(
図7参照)。カバー部材36の四隅角部には、ねじ部材を介してバンパビーム12の前端部26にカバー部材36を締結する取付フランジ38(
図2参照)が設けられる。
【0042】
衝撃吸収コア材14を構成するコア本体34の車両前後方向の後方部(後方側)34aは、バンパビーム12の凸状部20を構成する2つの壁部24に沿って形成される。すなわち、本実施形態では、
図7に示されるように、コア本体34の後方部34aが、相互に対向する2つの壁部24の間に形成された凹部22内に差し込まれて(嵌挿されて)、2つの壁部24間の間で後方部34aが挟持されるように設けられる。コア本体34の後方部34aは、凹部22に略対応する凸形状からなり、コア本体34の後方部34aの上下方向に沿った肉厚が、2つの壁部24内壁の上下方向に沿った離間距離よりも若干大きく設定されている。
【0043】
本実施形態では、衝撃吸収コア材14のコア本体34の後方部34aが、凸状部20の相互に対向する2つの壁部24の間に差し込まれて挟持される構成を採用しているが、これに限定されるものではない。
【0044】
図9(a)及び
図9(b)は、衝撃吸収コア材がバンパビームの凸状部を跨いで連結される状態を示す縦断面図である。
図9(a)及び
図9(b)に示されるように、コア本体34の後方部34aを上部側と下部側で2つに分岐して構成し、この2つの分岐部40が単一の凸状部20a(20d)を間にして上下方向で跨いで挟持するようにするとよい。なお、
図9(a)に示される凸状部20aは、
図8(a)に示される第1変形例に係る凸状部20aを用い、
図9(b)に示される凸状部20dは、
図8(c)に示される第3変形例に係る下部側の凸状部20dを用いているため、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図10(a)〜(e)は、衝撃荷重が付与されることにより、2つの凸状部の間に差し込まれた衝撃吸収コア材が、バンパビームの弾性変形領域まで追従して塑性変形した状態を示す断面図である。
【0046】
さらに、
図7に示されるコア本体34は、後方部34a全体が2つの壁部24で形成される凹部22内に差し込まれ、後方部34aが凹部22の縦壁21と当接するように構成されているのに対し、例えば、
図10(a)に示されるように、コア本体34の後方部34aを凹部22の途中まで差し込んで、後方部34aと凹部22の縦壁21との間で空間部42が形成されるようにしてもよい。なお、空間部42を設けることがなく、コア本体34の後方部34aと凹部22の縦壁21とを予め当接するまで差し込むようにしてもよい。
【0047】
この場合、車両用衝撃吸収機構10に対して衝撃荷重が付与されて衝撃吸収コア材14が押圧された際、
図10(b)に示されるように、コア本体34が空間部42に沿って車両後方に押圧されてコア本体34の後端面34bと凹部22の縦壁21とが当接する。さらに、
図10(c)に示されるように、衝撃荷重によって衝撃吸収コア材14がバンパビーム12の前端部26と略面一となるまで塑性変形した後、
図10(d)に示されるように、バンパビーム12及び衝撃吸収コア材14の両方にそれぞれ付与される衝撃荷重によって、バンパビーム12が弾性変形領域内で弾性変形すると同時に、衝撃吸収コア材14がさらに塑性変形する。最後に、
図10(e)に示されるように、弾性変形領域内で弾性変形したバンパビーム12がスプリングバックの作用により寸法αだけ戻って原形状に復帰する。このように
図10(a)〜(e)に示される実施形態では、衝撃荷重が付与された際、衝撃吸収コア材14の塑性変形量を、バンパビーム12の弾性変形領域まで追従(持続)させることができる(
図10(d)参照)。このため、その追従(持続)した分だけ衝撃吸収コア材14による衝撃荷重の吸収量(衝撃吸収コア材14の塑性変形量)を増大させることができる利点がある。
【0048】
図2に示されるように、エクステンション部材16は、金属材料、好適には、アルミニウム合金によって形成される。エクステンション部材16は、内部に隔壁44を有する中空の直方体からなるエクステンション本体46と、エクステンション本体46の軸方向(車両前後方向)に沿った前端に接合される前部プレート48と、エクステンション本体46の軸方向に沿った後端に接合される後部プレート50とから構成される。
【0049】
エクステンション本体46の内部には、隔壁44を間にして軸方向に貫通する上部側中空部52aと下部側中空部52bとが設けられる。また、前部プレート48には、表裏両面を貫通する矩形状の開口部54が形成されると共に、バンパビーム12の取付フランジ30にねじ締結するためのねじ孔が形成される。開口部54を間にした上下方向には、断面V字状に屈曲する一対の屈曲部56が設けられ、この一対の屈曲部56間にエクステンション本体46の前端が位置決めされて接合される。
【0050】
さらに、後部プレート50には、車両前方に向かって突出し且つ車幅方向に沿って延在する一対の横リブ58が設けられる。この横リブ58は、エクステンション本体46の後端に対して後部プレート50を接合する際の位置決めとなるものである。前部プレート48及び後部プレート50は、例えば、MIG溶接等の溶接手段を介してエクステンション本体46の前端及び後端の全周にわたって接合される。
【0051】
バンパビーム12の車幅方向に沿った左右両端部の前面には、上下方向に連続する2つの凸状部20同士を接続する一対の補強プレート18が締結される。一対の補強プレート18は、断面ハット状からなり、それぞれ同一形状に形成される。各補強プレート18は、上部側の凸状部20の前端部26に締結される上部フランジ部60aと、下部側の凸状部20の前端部26に締結される下部フランジ部60bと、上部フランジ部60aと下部フランジ部60bとを連結する連結部62とを有する。
【0052】
図11(a)は、補強プレートが無い比較例において、衝撃荷重が付与されて凸状部が変形する状態を示した説明図、
図11(b)は、補強プレートが設けられた本実施形態において、衝撃荷重が付与されても凸状部が拘束される状態を示した説明図である。
【0053】
補強プレート18が無い比較例では、
図11(a)に示されるように、衝撃荷重(曲げモーメント)がバンパビーム12に付与されると、上下方向で連続する2つの凸状部20間の離間距離が増大して外側に開く開き変形や、2つの凸状部間の離間距離が減少して内側に倒れる倒れ変形等が発生する(
図11(a)中の破線参照)。この結果、補強プレート18が無い比較例では、衝撃荷重が付与されて2つの凸状部20が弾性変形することでバンパビーム12の左右両端部側に応力が集中する。
【0054】
これに対して、2つの凸状部同士を接続する補強プレート18が設けられた本実施形態では、衝撃荷重(曲げモーメント)がバンパビーム12に付与された際、補強プレート18によって2つの凸状部20が原形状に拘束されるため、バンパビーム12全体が弾性変形することができる。この結果、補強プレート18により、バンパビームの左右両端部側に応力が集中することを好適に回避し、バンパビーム12が弾性変形可能な弾性域の必要な範囲内でバンパビーム12が弾性変形することを好適にサポートすることができる。
【0055】
本実施形態に係る車両用衝撃吸収機構10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0056】
図12は、本実施形態に係る車両用衝撃吸収機構と比較例とにおいて、衝撃荷重と変位量との関係を示す特性図、
図13(a)〜(d)は、本実施形態に係る車両用衝撃吸収機構に対して衝撃荷重が付与された際の変形状態を経時的に示したものである。なお、
図12中では、本実施形態に係る車両用衝撃吸収機構10の特性曲線を実線で示し、CFRPのみで形成された図示しない衝撃吸収部材に係る比較例の特性曲線を破線で示している。また、
図13(a)は、衝撃荷重が付与されていない原形状を示したものである。さらに、
図12中の横軸は、変位量の他に時間(時刻t)をも便宜的に示している。
【0057】
例えば、車両の衝突等により車両用衝撃吸収機構10に対して衝撃荷重が付与された際、バンパビーム12に設けられた凸状部20によって変形が抑制されるため、先ず、バンパビーム12の前側に配設された衝撃吸収コア材14が塑性変形して衝撃荷重を吸収しカバー部材16によって衝撃吸収コア材14が全体的に潰れる(
図13(b)参照)。衝撃吸収コア材14の塑性変形の進行に伴って増加する荷重により、徐々にバンパビーム12の弾性変形が進行して衝撃荷重を吸収する(
図13(c)参照)。さらに、バンパビーム12が弾性域内での弾性変形を維持したまま、バンパビーム12の車幅方向の左右両端部に設けられた一対のエクステンション部材16が塑性変形して衝撃荷重を吸収する(
図13(d)参照)。
【0058】
例えば、
図12中に実線で示される車両用衝撃吸収機構10の特性曲線において、時刻tよりも前の範囲では、衝撃吸収コア材14が塑性変形して衝撃荷重を吸収する状態を示している。また、
図12中の時刻tよりも後の範囲では、バンパビーム12が弾性域内で弾性変形して衝撃荷重を吸収すると共に、バンパビーム12が弾性域内での弾性変形を維持したまま、一対のエクステンション部材16が塑性変形して衝撃荷重を吸収する状態を示している。
【0059】
本実施形態に係る車両用衝撃吸収機構10では、時刻tよりも前の範囲において、比較的低い衝撃荷重を吸収することができるのに対し、時刻tよりも後の範囲では、凸状部20によってバンパビーム12の剛性・強度が増大しているため、時刻tよりも前の範囲と比較して高い衝撃荷重(ピーク値)を吸収することができる。
【0060】
これに対し、破線で示される比較例では、初期段階で比較的高い衝撃荷重を吸収することができるが、その変位量が増大するにつれて、その後に吸収される衝撃荷重が急減する。この結果、比較例では、長い時間にわたって充分な衝撃荷重量を吸収することができない。
【0061】
このように本実施形態では、衝撃吸収コア材14による塑性変形(時刻tよりも前の範囲)とバンパビーム12による弾性変形(時刻tの後の範囲)とによって、衝撃荷重をより長く継続して吸収することができる。この結果、本実施形態では、衝撃吸収コア材14とバンパビーム12との複合的な作用で、短い変位量で大きな衝撃荷重量を吸収することができる。また、軽衝突の場合には、バンパビーム12が弾性変形することがなく、衝撃吸収コア材14が塑性変形するのみであるため、衝撃吸収コア材14を新たなものと交換するだけでよく、修理コストを安価にすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、バンパビーム12の凸状部20を2つの壁部24と、2つの壁部24を連接する前端部26とによって構成することにより、バンパビーム12がより座屈しにくい構造とすることができる。本実施形態では、2つの壁部24によって衝撃荷重を吸収することができるため、例えば、衝撃吸収コア材14で吸収することができなかった衝撃荷重を、バンパビーム12の2つの壁部24によって好適に吸収することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、衝撃吸収コア材14の後方部34a(後方側)が壁部24に倣った形状とすることで、後方部34aが隣接する凸状部20間に差し込まれる形状(
図7及び
図10参照)、又は、後方部34aの分岐部40が凸状部20を跨ぐ形状(
図9参照)とすることができる。この結果、本実施形態では、衝撃吸収コア材14をバンパビーム12に組み付ける際、衝撃吸収コア材14をバンパビーム12に対して容易に位置決めすることができると共に、衝撃吸収コア材14がバンパビーム12から脱落することを防止することができる。さらに、衝撃荷重が付与された際、衝撃吸収コア材14からバンパビーム12の凸状部20に対して衝撃荷重を確実に伝達することができると共に、凸状部20における衝撃荷重の吸収性能を確実に発揮させることができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態では、バンパビーム12の後方に設けられた一対のエクステンション部材16に対して、バンパビーム12に付与される衝撃荷重を吸収する機能を発揮させることができる。
【0065】
さらにまた、本実施形態では、バンパビーム12の左右両端部に補強プレート18を設けることにより、衝撃荷重が付与された場合であっても、凸状部20同士の開きや倒れ等の変形を抑制して凸状部20同士を好適に拘束することができる。この結果、本実施形態では、バンパビーム12が弾性変形可能な弾性域の必要な範囲内でバンパビーム12が弾性変形することを好適にサポートすることができる。
【0066】
さらにまた、本実施形態では、衝撃吸収コア材14にコア本体34を被覆するカバー部材36を設けることで、局部的な衝撃荷重の入力に対して衝撃吸収コア材14に対する衝撃荷重の入力を平準化してバンパビーム12に伝達することができる。このため、衝撃吸収コア材14の潰れ残りを抑制して十分に衝撃荷重を吸収することができる。さらに、カバー部材36を取付フランジ38バンパビーム12にねじ締結することで、衝撃吸収コア材14のバンパビーム12からの脱落を防止し、組付作業性の向上と衝撃荷重を確実に吸収することができる。
【0067】
さらにまた、本実施形態では、軽量且つ衝撃荷重の吸収性に優れたアルミニウム合金(発泡性アルミニウムも含む)からなる衝撃吸収コア材14と、軽量な複合材(例えば、CFRP、GFRP等)からなるバンパビーム12とによって、変位量が短くても大きな衝撃荷重量を吸収することができる。
【0068】
さらにまた、本実施形態では、衝撃吸収コア材14のコア本体34を車両前後方向に沿って貫通するハニカム形状32(
図4参照)とすることにより、さらに軽量化を図ると共に、塑性変形し易くすることができる。また、ハニカム形状とすることで、衡激吸収性能を高めることができる。
【0069】
さらにまた、本実施形態では、例えば、図示しない車体のフロントサイドフレームの前端部とバンパビーム12との間を連結する一対のエクステンション部材16(骨格部材)を金属材料とすることにより、衝撃荷重によってバンパビーム12の弾性変形が進行していく際、エクステンション部材16との締結部近傍における応力集中でバンパビーム12が破壊に至る前、一対のエクステンション部材16が塑性変形することでバンパビーム12が破壊されることを回避することができる。
【0070】
さらにまた、本実施形態では、一対のエクステンション部材16をアルミニウム製合金とすることで、軽量且つ変形容易な部材とすることができる。このため、衝撃荷重が大きく、バンパビーム12が破壊に至るほどの変位に到達する前、一対のエクステンション部材16が優先的に圧潰して衝撃荷重を吸収することができる。