(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられ、前記受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間に配置される第一の封止シートと、前記受光面側保護部材と前記裏面側保護部材との間に配置される第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートセットであって、
前記第一の封止シートが、エチレン・α−オレフィン共重合体を含み、
前記第二の封止シートが、エチレン・極性モノマー共重合体を含み、かつ該エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、エポキシ基含有シランカップリング剤(B)を0.05〜2.0重量部と、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物および複合金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の受酸剤(C)を0.6〜2.0重量部と、を含有することを特徴とする太陽電池封止用シートセット。
前記第二の封止シートの、430〜800nmの波長域における全光線透過率が10%以下であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の太陽電池封止用シートセット。
前記受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間に、前記第一の封止シートと前記第二の封止シートとを任意の順番で積層させて配置することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の太陽電池封止用シートセット。
前記受光面側封止層(I)が、前記第一の封止シートを架橋させてなるシートを含んでなり、前記裏面側封止層(II)が、前記第二の封止シートを架橋させてなるシートを含んでなることを特徴とする請求項18に記載の太陽電池モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いながら説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「〜」は特に断りがない限りは、以上から以下を表す。
【0019】
本発明は、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられる、第一の封止シートと第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートセットである。第一の封止シートは、エチレン・α−オレフィン共重合体からなり、第二の封止シートはエポキシ基含有シランカップリング剤(B)を含むエチレン・極性モノマー共重合体からなる。
【0020】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することによって得られる。α−オレフィンとしては、通常、炭素数3〜20のα−オレフィンを1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状又は分岐状のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどを挙げることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα−オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3〜8のα−オレフィンである。入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンが好ましい。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0021】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンからなる共重合体であってもよい。α−オレフィンは前述と同様であって、非共役ポリエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)などが挙げられる。これら非共役ポリエンを1種単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、芳香族ビニル化合物、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン類;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレン、炭素数が3〜20の環状オレフィン類、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、などを併用してもよい。
【0023】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体は、以下a1)〜a4)の少なくとも一つを満たすことが好ましく、以下a1)〜a4)の二以上を満たすことがより好ましく、以下a1)〜a4)の三以上を満たすことが更に好ましく、以下a1)〜a4)の全てを満たすことが特に好ましい。
a1)エチレンに由来する構成単位の含有割合が80〜90mol%であるとともに、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位の含有割合が10〜20mol%である。
a2)ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるMFRが0.1〜50g/10分である。
a3)ASTM D1505に準拠して測定される密度が0.865〜0.884g/cm
3である。
a4)ASTM D2240に準拠して測定されるショアA硬度が60〜85である。
【0024】
a1)α−オレフィン単位
本発明の第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位の含有割合は、80〜90mol%であることが好ましく、より好ましくは80〜88mol%、更に好ましくは82〜88mol%、特に好ましくは82〜87mol%である。エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構成単位(以下、「α−オレフィン単位」とも記す)の割合は10〜20mol%であり、好ましくは12〜20mol%、より好ましくは12〜18mol%、さらに好ましくは13〜18mol%である。
【0025】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が10mol%以上であると、高い透明性が得られる。また、低温での押出成形を容易に行うことができ、例えば130℃以下での押出成形が可能である。このため、エチレン・α−オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込む場合においても、押出機内での架橋反応が進行することが抑制でき、第一の封止シートの外観を良好にすることができる。また、適度な柔軟性が得られるため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケなどの発生を防ぐことができる。
【0026】
エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン単位の含有割合が20mol%以下であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度が適度になるため、押出機より押し出されたシートがベタつかず、冷却ロールでの剥離が容易であり、本発明の第一の封止シートを効率的に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しないのでブロッキングを防止でき、シートの繰り出し性が良好にある。また、耐熱性の低下を防ぐこともできる。
【0027】
a2)MFR
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレ−ト(MFR)は、通常0.1〜50g/10分、好ましくは2〜50g/10分、より好ましくは5〜50g/10分、更に好ましくは10〜40g/10分、より更に好ましくは10〜27g/10分、最も好ましくは15〜25g/10分である。なお、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、重合温度、重合圧力、並びに重合系内のエチレン及びα−オレフィンのモノマー濃度と水素濃度のモル比率などを調整することにより、調整することができる。
【0028】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される。
【0029】
MFRが0.1〜10g/10分の範囲にあると、カレンダー成形によって第一の封止シートを製造することができる。MFRが0.1〜10g/10分の範囲にあると、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が低いため、第一の封止シートを電池素子とラミネートする際にはみ出した溶融樹脂によるラミネート装置の汚れを防止できる点で好ましい。
【0030】
さらに、MFRが2g/10分以上であると、樹脂組成物の流動性が向上し、シート押出成形によって生産することも可能である。さらに、MFRが10g/10分以上であると、押出成形によって第一の封止シートを製造する場合に、エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の流動性が向上し、シート押出成形時の生産性を向上させることができる。また、MFRが50g/10分以下にすると、分子量が大きくなるため、チルロールなどのロール面への付着を抑制できるため、剥離が不要となり、均一な厚みの第一の封止シートに成形することができる。さらに、「コシ」がある樹脂組成物となるため、0.3mm以上の厚い第一の封止シートを容易に成形することができる。また、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋特性が向上するため、十分に架橋させて、耐熱性の低下を抑制することができる。MFRが27g/10分以下であると、さらに、シート成形時のドローダウンを抑制できるため、幅の広い第一の封止シートを成形でき、また架橋特性および耐熱性がさらに向上し、最も良好な第一の封止シートを得ることができる。
【0031】
a3)密度
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは0.865〜0.884g/cm
3であるが、より好ましくは0.866〜0.883g/cm
3、更に好ましくは0.866〜0.880g/cm
3、特に好ましくは0.867〜0.880g/cm
3である。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、エチレン単位の含有割合とα−オレフィン単位の含有割合とのバランスにより調整することができる。すなわち、エチレン単位の含有割合を高くすると結晶性が高くなり、密度の高いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。一方、エチレン単位の含有割合を低くすると結晶性が低くなり、密度の低いエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。なお、本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、ASTM D1505に準拠して測定される。
【0032】
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.884g/cm
3以下であると、結晶性が低くなり、透明性を高くすることができる。さらに、低温での押出成形が容易となり、例えば130℃以下で押出成形を行うことができる。このため、エチレン・α−オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込んでも、押出機内での架橋反応が進行するのを防ぎ、第一の封止シートの外観を良好にすることができる。また、柔軟性が高いため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子であるセルの割れや薄膜電極のカケなどの発生を防ぐことができる。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が0.865g/cm
3以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度を速くできるため、押出機より押し出されたシートがベタつきにくく、冷却ロールでの剥離が容易になり、本発明の第一の封止シートを容易に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しにくくなるのでブロッキングの発生を抑制し、シートの繰り出し性を向上させることができる。また、十分に架橋させられるため、耐熱性の低下を抑制することができる。
【0033】
a4)ショアA硬度
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は、60〜85であることが好ましく、より好ましくは62〜83、更に好ましくは62〜80、特に好ましくは65〜80である。エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は、エチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有割合や密度を制御することにより、調整することができる。なお本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度は、ASTM D2240に準拠して測定されるものである。
【0034】
ショアA硬度が60以上であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の結晶化速度が適度になるため、押出機より押し出されたシートがベタつかず、冷却ロールでの剥離が容易であり、本発明の第一の封止シートを効率的に得ることができる。また、シートにベタツキが発生しないのでブロッキングを防止でき、シートの繰り出し性が良好にある。また、耐熱性の低下を防ぐこともできる。一方、ショアA硬度が85以下であると、高い透明性が得られる。また、低温での押出成形を容易に行うことができ、例えば130℃以下での押出成形が可能である。このため、エチレン・α−オレフィン共重合体に有機過酸化物を練り込む場合においても、押出機内での架橋反応が進行することが抑制でき、本発明の第一の封止シートの外観を良好にすることができる。また、適度な柔軟性が得られるため、太陽電池モジュールのラミネート成形時に太陽電池素子の割れや、薄膜電極のカケなどの発生を防ぐことができる。
【0035】
また、第一の封止シートに用いられるエチレン・α―オレフィン共重合体は、更に以下a5)を満たすことがより好ましい。
a5)エチレン・α―オレフィン共重合体中のアルミニウム元素の含有量が10〜500ppmである。
【0036】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる、アルミニウム元素(以下、「Al」とも記す)の含有量(残渣量)は、好ましくは10〜500ppmであり、より好ましくは20〜400ppm、さらに好ましくは20〜300ppmである。Al含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体の重合過程において添加する有機アルミニウムオキシ化合物や有機アルミニウム化合物の濃度に依存する。
【0037】
Al含有量が10ppm以上の場合は、エチレン・α−オレフィン共重合体の重合過程において有機アルミニウムオキシ化合物や有機アルミニウム化合物が、メタロセン化合物の活性が十分発現させられる程度の濃度で添加できるので、メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物の添加が不要となる。該イオン対を形成する化合物が添加される場合、該イオン対を形成する化合物がエチレン・α−オレフィン共重合体中に残留することにより、電気特性の低下を起こすことがある(例えば100℃などの高温での電気特性が低下する傾向にある)が、こうした現象を防ぐことが可能である。また、Al含有量を少なくするためには、酸やアルカリでの脱灰処理が必要となり、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中に残留する酸やアルカリが電極の腐食を起こす傾向にあり、脱灰処理を施すために、エチレン・α−オレフィン共重合体のコストも高くなるが、こうした脱灰処理が不要となる。
【0038】
また、Al含有量が500ppm以下であると、押出機内での架橋反応の進行を防止できるため、第一の封止シートの外観を良好にすることができる。
【0039】
上記のような、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム元素をコントロールする手法としては、例えば、後述のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法に記載の(II−1)有機アルミニウムオキシ化合物及び(II−2)有機アルミニウム化合物の製造工程における濃度、又は、エチレン・α−オレフィン共重合体の製造条件のメタロセン化合物の重合活性を調整することによって、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム元素をコントロールすることができる。
【0040】
第一の封止シートに用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体の、示差走査熱量測定(DSC)に基づく融解ピークは30〜90℃の範囲に存在することが好ましく、33〜90℃の範囲に存在することがさらに好ましく、33〜88℃の範囲に存在することがとくに好ましい。融解ピークが90℃以下であると、結晶化度が低くなり、得られるシートの柔軟性が高まるため、太陽電池モジュールをラミネート成形する際にセルの割れや、薄膜電極のカケの発生を防止することができる。一方、融解ピークが30℃以上であると、樹脂組成物の柔軟性を適度に高くできるため、押出成形にて第一の封止シートを容易に得ることができる。また、シートがベタついてブロッキングするのを防止して、シートの繰り出し性の悪化を抑制することができる。
【0041】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラー化合物、バナジウム化合物、メタロセン化合物などを触媒として用いて製造することができる。中でも以下に示す種々のメタロセン化合物を触媒として用いて製造することが好ましい。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報などに記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよいし、二種以上のメタロセン化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
メタロセン化合物を用いる重合反応としては、例えば以下に示す態様を好適例として挙げることができる。
【0043】
従来公知のメタロセン化合物(I)と、有機アルミニウムオキシ化合物(II−1)、化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物(II−2)、及び有機アルミニウム化合物(II−3)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(II)(助触媒ともいう)と、からなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンなどから選ばれる一種以上のモノマーを供給する。
【0044】
化合物(II)としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、及び特開2005−314680号公報などに記載のメタロセン化合物を用いることができる。ただし、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよい。これら化合物は、個別に、あるいは予め接触させて重合雰囲気に投入してもよい。さらに、例えば特開2005−314680号公報などに記載の微粒子状無機酸化物担体に担持して用いてもよい。なお、好ましくは、化合物(II−2)を実質的に使用せずに製造することで、電気特性に優れるエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【0045】
エチレン・α−オレフィン共重合体の重合は、従来公知の気相重合法、及びスラリー重合法、溶液重合法などの液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法などの液相重合法により行われる。上記のようなメタロセン化合物を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行ってエチレン・α−オレフィン共重合体を製造する場合、(I)のメタロセン化合物は、反応容積1リットル当り、通常10
−9〜10
−1モル、好ましくは10
−8〜10
−2モルになるような量で用いられる。
【0046】
化合物(II−1)は、化合物(II−1)と、化合物(I)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(II−1)/M]が通常1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。化合物(II−2)は、化合物(I)中の全遷移金属(M)とのモル比[(II−2)/M]が、通常0.5〜50、好ましくは1〜20となるような量で用いられる。化合物(II−3)は、重合容積1リットル当り、通常0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0047】
溶液重合法では、上述のようなメタロセン化合物の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行うことによって、コモノマー含量が高く、組成分布が狭く、分子量分布が狭いエチレン・α−オレフィン共重合体を効率よく製造できる。ここで、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとの仕込みモル比は、通常、エチレン:α−オレフィン=10:90〜99.9:0.1、好ましくはエチレン:α−オレフィン=30:70〜99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α−オレフィン=50:50〜99.9:0.1である。
【0048】
「溶液重合法」とは、後述の不活性炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。溶液重合法における重合温度は、通常0〜200℃、好ましくは20〜190℃、さらに好ましくは40〜180℃である。溶液重合法においては、重合温度が0℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下し、重合熱の除熱も困難となり生産性の点で実用的でない。また、重合温度が200℃を超えると、重合活性が極端に低下するので生産性の点で実用的でない。
【0049】
重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下である。共重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。反応時間(共重合反応が連続法で実施される場合には、平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なり、適宜選択することができるが、通常1分間〜3時間、好ましくは10分間〜2.5時間である。さらに、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(II)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は、生成するエチレン・α−オレフィン共重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。また、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の分子末端に存在するビニル基及びビニリデン基は、重合温度を高くすること、水素添加量を極力少なくすることで調整できる。
【0050】
溶液重合法において用いられる溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なお、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類や、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。
【0051】
前記したように、溶液重合法においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素に溶解する有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAOのような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン・α−オレフィン共重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となる。すなわち、溶液重合法は、環境負荷を軽減化でき、人体健康への影響を最小化できるという特徴も有する。なお、物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体、及び所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
【0052】
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体は、エチレンと極性モノマーとのランダム共重合体である。極性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸グリシジルエステル、メタアクリル酸グリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタアクリル酸グリシジルエーテルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステルなどの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0053】
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体は、具体的には、エチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水イタコン酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸無水物共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸イソブチル・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸nブチル・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸エステル・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・アクリル酸グリシジルエステル共重合体のようなエチレン・不飽和グリシジルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸グリシジルエーテル共重合体のようなエチレン・不飽和グリシジルエーテル共重合体、エチレン・アクリル酸グリシジルエステル・アクリル酸メチル共重合体のようなエチレン・不飽和グリシジルエステル・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸グリシジルエーテル・アクリル酸メチル共重合体のようなエチレン・不飽和グリシジルエーテル・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体のようなエチレン・ビニルエステル共重合体などが挙げられ、一種又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、エチレン・不飽和グリシジルエステル共重合体、エチレン・不飽和グリシジルエーテル共重合体、エチレン・不飽和グリシジルエステル・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・不飽和グリシジルエーテル・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体などが好ましい。
【0054】
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーの含有量は、15〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは20〜40重量%である。極性モノマーの含有量がこの範囲にあれば、第二の封止シートの柔軟性が良好であり、太陽電池素子の割れを防止できる傾向にある。
【0055】
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体は、中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量は15〜47重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。エチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量がこの範囲であれば、第二の封止シートの柔軟性が良好であり、太陽電池素子の割れを防止できる傾向にある。
【0056】
第二の封止シートに用いられるエチレン・酢酸ビニル共重合体のメルトフローレ−ト(MFR)は0.1〜50g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0〜30g/10分、更に好ましくは1.0〜25g/10分である。エチレン・極性モノマー共重合体のMFRが上記範囲であると、カレンダー成形、押出成形性が可能である。エチレン・極性モノマー共重合体のMFRは、重合反応の際の重合温度、重合圧力、並びに重合系内の極性モノマーのモノマー濃度と水素濃度のモル比率などを調整することにより、調整することができる。
【0057】
本発明において、エチレン・酢酸ビニル共重合体のMFRは、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるものである。
【0058】
第二の封止シートに用いられるエチレン・極性モノマー共重合体は、上記のようなモノマー単位を含有するものであるが該共重合体は、例えば、ラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下に共重合させることにより製造し得る。またポリエチレンとグリシジル基を有する不飽和化合物とラジカル発生剤等からなる混合物を、押出機等を用いることにより溶融グラフト重合することにより製造することもできる。
【0059】
シランカップリング剤(A)
本発明の実施形態に係わる第一の封止シートおよび/または第二の封止シートには、ビニル基、メタクリル基、アクリル基の群から選ばれる少なくとも一種の基を有するシランカップリング剤(A)が含まれていることが好ましい。なお、ビニル基、メタクリル基、アクリル基の群から選ばれる少なくとも一種の基を有するシランカップリング剤(A)はエポキシ基を含有することはない。有機過酸化物より発生するラジカルによりエチレン・α−オレフィン共重合体に前記シランカップリング剤(A)がグラフト変性され、表面保護部材(ガラスなど)、太陽電池素子、金属膜、金属電極、ハンダ、裏面保護部材への接着性を発現する。本実施形態の第一の封止シートおよび/または第二の封止シート中のビニル基、メタクリル基、アクリル基の群から選ばれる少なくとも一種の基を有するシランカップリング剤(A)の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜4重量部であり、とくに好ましくは0.1〜3重量部である。
【0060】
ビニル基、メタクリル基、アクリル基の群から選ばれる少なくとも一種の基を有するシランカップリング剤(A)の含有量が0.1重量部以上であると、接着性が向上する。一方、シランカップリング剤(A)の含有量が5重量以下であると、シランカップリング剤(A)を太陽電池モジュールのラミネート時にエチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体にグラフト反応させるための有機過酸化物の添加量を抑制できる。このため、例えば、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートを押出機でシート状にして得る際のゲル化を抑制でき、その結果、押出機のトルクを抑制できるため、押出シートの成形が容易となる。押出機内でゲル物を発生しないためシートの表面に凹凸がなく、シートの外観が良好である。
シランカップリング剤(A)が5重量以下であると、シランカップリング剤(A)自体の縮合反応による筋状の外観悪化を抑制できる点で好ましい。
【0061】
シランカップリング剤(A)は、従来公知のものが使用でき、とくに制限はない。具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランなどが使用できる。好ましくは、接着性が良好な3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0062】
エポキシ基含有シランカップリング剤(B)
本実施形態に係わる第二の封止シートは、分子内にアルコキシシランとグリシジル(エポキシ)基を有するエポキシ基含有シランカップリング剤(B)を含有している。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)を含むことにより、金属配線およびハンダへの接着性に優れ、前記接着性の高温高湿下での長期信頼性にも優れる。従来、金属電極と太陽電池素子の接合部および金属電極同士の接合部のハンダの濡れ性を向上するため表面にロジン系フラックスあるいは水溶性フラックスが塗布されるが、地球環境保護の観点から水溶性フラックスが通常用いられている。この水溶性フラックス成分に含まれる脂肪酸が、高温高湿下で太陽電池封止シート中に浸透した水分により酸を発生させ、第二の封止シート中のシランカップリング剤(A)と金属電極との結合を切断し接着性が低下する。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)が発生した酸を中和し、或いは脂肪酸にエポキシ含有シランカップリング剤(B)が作用し、酸によるシランカップリング剤(A)と金属の結合の切断を抑制するためと推定される。さらに、エチレン・極性モノマー共重合体から、高温高湿下または、高温下、耐候性試験下で発生する遊離酸を捕獲し、電極、配線材などの腐食を防止することができる。
【0063】
本実施形態に係わる第二の封止シート中のエポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、好ましくは0.05〜2.0重量部であり、より好ましくは0.05〜1.5重量部であり、とくに好ましくは0.05〜1.0重量部である。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量が0.05重量部以上であると、十分な受酸性能を得られる。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量が2.0重量部以下であると、金属電極への接着性が保たれ好ましい。
【0064】
エポキシ基含有シランカップリング剤(B)としては、従来公知のものが使用でき、とくに制限はない。具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0065】
本実施形態に係わる第一の封止シートにも、エポキシ基含有シランカップリング剤(B)が含まれていることが好ましい。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)を含むことにより、金属配線およびハンダへの接着性に優れ、前記接着性の高温高湿下での長期信頼性にも優れる。
【0066】
本実施形態の第一の封止シート中のエポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して、好ましくは0.05〜2.0重量部であり、より好ましくは0.05〜1.5重量部であり、とくに好ましくは0.05〜1.0重量部である。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量が0.05重量部以上であると、十分な受酸性能を得られる。エポキシ基含有シランカップリング剤(B)の含有量が2.0重量部以下であると、金属電極への接着性が保たれ好ましい。
【0067】
受酸剤(C)
本実施形態に係わる第二の封止シートは、さらに、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物および複合金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の受酸剤(C)を含有している。受酸剤(C)は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、四酸化三鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)、炭酸カルシウム、およびハイドロタルサイト化合物および該ハイドロタルサイトの焼成物からなる群から選択される少なくとも1種の受酸剤(C)を含有していることがより好ましい。特に、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛が好ましい。該受酸剤(C)を含むことにより、エチレン・極性モノマー共重合体から、高温高湿下または、高温下、耐候性試験下で発生する遊離酸を捕獲し、電極、配線材などの腐食を防止することができる。さらに、金属配線およびハンダへの接着性を向上させることができ、高温高湿下でも接着性を長期間維持することができる。
第二の封止シートに、受酸剤(C)のみが添加された場合では、初期の接着性が低下する場合があったが、前記シランカップリング剤(B)と併用することにより、受酸性能の向上が認められる。
【0068】
既述のように、第二の封止シートは受光面側保護部材と裏面側保護部材との間、すなわち、受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間(以下の説明では、単に「受光面側」と略称する場合がある)および裏面側保護部材と前記太陽電池素子との間(以下の説明では、単に「裏面側」と略称する場合がある)のいずれにも配置されうる。
第二の封止シートが裏面側保護部材と前記太陽電池素子との間に配置された場合、本実施形態の第二の封止シート中の受酸剤(C)の含有量は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、好ましくは0.6〜2.0重量部である。下限値のより好ましくは0.62重量部であり、とくに好ましくは0.65重量部である。上限値のより好ましくは1.5重量部であり、とくに好ましくは1.0重量部である。
【0069】
第二の封止シートの受酸剤(C)の含有量が上記下限値以上であると、受酸剤による受酸性能が得られる。第二の封止シートの受酸剤の含有量が上記上限値以下であると、接着性が保たれ好ましい。
第二の封止シートが、受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間で使用された場合では、第二の封止シート中の受酸剤(C)の含有量は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.3重量部である。下限値のより好ましくは0.02重量部であり、とくに好ましくは0.05重量部である。上限値のより好ましくは0.25重量部であり、とくに好ましくは0.2重量部である。第二の封止シートの受酸剤(C)の含有量が上記上限値以下であると、透明性が良好である。
【0070】
本実施形態の第一の封止シート中にも、受酸剤(C)を含有することが好ましい。受酸剤(C)を含有することにより、金属配線およびハンダへの接着性を向上させることができ、高温高湿下でも接着性を長期間維持することができる。
【0071】
受酸剤(C)の含有量は、エチレン・α―オレフィン共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.3重量部である。下限値のより好ましくは0.02重量部であり、とくに好ましくは0.05重量部である。より好ましい上限値は0.25重量部であり、特に好ましくは0.2重量部である。
【0072】
第一の封止シートの受酸剤(C)の含有量が上記下限値以上であると、受酸剤(C)による十分な受酸性能が得られる。第一の封止シートの受酸剤(C)の含有量が上記上限値以下であると、第一の封止シートの透明性を維持でき、受酸性能と透明性のバランスが良好である。
【0073】
なお、例えば、マスターバッチのような受酸剤(C)が高濃度に配合された第一の封止シートまたは第二の封止シート用樹脂組成物を製造する場合は、1〜100重量部用いることが好ましい。マスターバッチを用いて第一の封止シートまたは第二の封止シートを製造することは、受酸剤(C)の分散やハンドリングの面から好ましい。
【0074】
本実施形態の第一の封止シートおよび/または第二の封止シートに含まれる受酸剤(C)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布におけるメディアン径は、好ましくは0.1〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜1.5μmである。ただし、第二の封止シートが裏面側で用いられる場合においては、受酸剤のメディアン径は、特に制限は無い。
【0075】
第一の封止シートおよび第二の封止シートは太陽電池用セルへの入射光を多く入射させるため高い透明性を有していることが望ましく、特に高い透明性を有することが求められる。そこで、第一の封止シートおよび第二の封止シートの高い透明性を向上させて発電開始初期から長期にわたり高い発電性能を確保するとともに、受酸剤(C)による高い受酸性能を得るためには、第一の封止シートおよび第二の封止シートに含ませる受酸剤(C)のメディアン径を上記した範囲内にするのが特に効果的である。
【0076】
上記受酸剤(C)のメディアン径を上記上限値以下とすることにより、高い受光積を有することから受酸剤による高い受酸性能が得られるとともに、上記受酸剤(C)を高分散させて第一の封止シートおよび第二の封止シートの高い透明性を確保することができる。また、上記受酸剤(C)のメディアン径を上記下限値以上とすることにより、上記受酸剤の凝集を抑制して、上記第一の封止シートおよび第二の封止シートにおいて上記受酸剤(C)を高分散させることができる。
【0077】
本実施形態において、上記第一の封止シートおよび/または第二の封止シートに含有させる受酸剤(C)の組成は、酸を吸収および/または中和する機能を有するものであれば特に制限されない。
【0078】
本実施形態の第一の封止シートおよび/または第二の封止シートに含有させる受酸剤(C)としては、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物または複合金属水酸化物が用いられ、発生する酸の量、および用途に応じ適宜選択することができる。上記受酸剤(C)として、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硼酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸バリウムなどの周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、亜燐酸塩、メタホウ酸塩など;酸化錫、塩基性炭酸錫、ステアリン酸錫、塩基性亜燐酸錫、塩基性亜硫酸錫、四酸化三鉛、酸化ケイ素、ステアリン酸ケイ素などの周期律表第14族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜燐酸塩、塩基性亜硫酸塩など;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II);ハイドロタルサイト化合物などの複合金属水酸化物;水酸化アルミニウムゲル化合物;などが挙げられる。これらは一種単独で用いられてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、四酸化三鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト化合物および/またはその焼成物が好ましく、ハイドロタルサイト化合物および/またはその焼成物がより好ましい。
【0079】
本実施形態において、ハイドロタルサイト化合物とその焼成物とは、層間イオン交換性と、酸との中和反応性とを有する層状の形態をした化合物である。そして太陽電池モジュールに用いられたときに、第一の封止シートおよび第二の封止シート中に浸入した水や、フラックスより発生した酸や、エチレン・極性モノマー共重合体から発生する酸を層間へ取り込み、また、中和によって太陽電池封止シートや発電素子の劣化を防止する効果を奏する(以下、酸・水捕捉効果ともいう)。そして酸・水捕捉効果は、層間に入り込むイオンの電荷密度の大小により決まり、価数が高く、イオン半径の小さい陰イオンの方が層間に取り込まれやすい。本実施形態においてハイドロタルサイト化合物は、一般の天然のハイドロタルサイトや、合成されたハイドロタルサイトを用いることが好ましい。
【0080】
本実施形態において、ハイドロタルサイト化合物の焼成物は、ハイドロタルサイト化合物を焼成することで製造できる。この焼成物は、ハイドロタルサイト化合物より高い酸・水捕捉効果を発揮する。また、焼成物は酸や水を捕捉することで、化学組成が変化し、屈折率が下がり、エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン・極性モノマー共重合体との屈折率差が小さくなるため、経時で透明性が向上する傾向にある。
【0081】
本実施形態で用いられるハイドロタルサイト化合物は、以下の一般式(A)で表されるハイドロタルサイト化合物であることが好ましい。
M
2+1−a・M
3+a(OH)
2・An
n−a/n・mH
2O (A)
(0.2≦a≦0.35、0≦m≦5、M
2+:Mg
2+、Zn
2+、Ni
2+、Ca
2+などより選ばれる少なくとも1種の2価金属イオン、M
3+:Al
3+、Fe
3+などより選ばれる少なくとも1種の3価金属イオン、An:n価の陰イオン)
【0082】
一般式(A)において、M
3+含有量割合aは0.2〜0.35が好ましい。0.2以上の場合、ハイドロタルサイト化合物を製造するのが容易であり、0.35以下の場合、エチレン・α−オレフィン共重合体との屈折率差が小さく、透明性がより良好な第一の封止シートおよび/または第二の封止シートが得られる。また、M
3+としては、Al
3+がより好ましい。水分含有量mは0≦m≦5が好ましく、0≦m≦1がより好ましい。また、アニオンAn
n−の種類は、特に限定されるものではないが、例えば水酸イオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、有機カルボン酸イオン、有機スルフォン酸イオン、有機リン酸イオンなどが挙げられる。なお、一般式(A)における指数aは、層状複合金属化合物を酸で溶解し、「プラズマ発光分光分析装置 SPS4000(セイコー電子工業社製)」で分析して求めることができる。
【0083】
一般式(A)で示されるハイドロタルサイト化合物は、平均板面径が0.02〜0.9μmが好ましい。そして分散性と透明性の観点から、0.02〜0.65μmがより好ましい。上記上限値以下であると、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートの透明性をより向上させることができる。上記下限値以上であると、ハイドロタルサイト化合物の工業的生産性を向上させることができる。
なお、ハイドロタルサイト化合物の板面径は、走査型電子顕微鏡により観測し、ハイドロタルサイト化合物の面積円相当径を求めた数平均値である。
【0084】
一般式(A)で示されるハイドロタルサイト化合物の屈折率は、1.48〜1.6が好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン・極性モノマー共重合体との屈折率差による透明性の観点から、1.48〜1.55がより好ましい。上記下限値以上であると、ハイドロタルサイト化合物の工業的生産性を向上させることができる。一方、上記上限値以下であると、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートの透明性、酸・水捕捉効果の持続性をより向上させることができる。なお、屈折率は、JIS−K0062に基づいて測定することができる。例えば、α−ブロモナフタレンとDMFを溶媒として23℃にて「アッベ屈折計:3T(アタゴ社製)」を用いベッケ法により測定することができる。
【0085】
焼成物は、平均板面径が0.02〜0.9μmが好ましい。そして分散性と透明性の観点から、0.02〜0.65μmがより好ましい。上記上限値以下であると、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートの酸捕捉能が良好である。上記下限値以上であると、ハイドロタルサイト化合物の工業生産が可能である。
【0086】
焼成物の屈折率は、1.58〜1.72が好ましい。1.58以上であると、焼成が十分となり、結晶欠陥が発生しにくく、第一の封止シートおよび第二の封止シートの劣化を抑制できる。また1.72以下であると、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートの透明性をより向上させることができる。
【0087】
一般式(A)で表されるハイドロタルサイト化合物とその焼成物は、酢酸の吸着量0.1〜0.8μmol/gが好ましい。0.1μmol以上であると、酸補足能が十分発揮される。一方、0.8μmol以下であると、フィラーの触媒活性を抑制し、樹脂の加水分解を抑制できる。なお、酢酸の吸着量は、上記層状複合金属化合物1gに0.02mol/Lの酢酸のエチレングリコールモノメチルエーテル溶液30mlを加え、1時間半超音波洗浄し、層状複合金属化合物に吸着させ、遠心分離により得られた上澄みを0.1規定の水酸化カリウム溶液で、電位差滴定による逆滴定法により求めることができる。
【0088】
ハイドロタルサイト化合物とその焼成物は、BET比表面積が1〜200m
2/gであることが好ましく、1〜160m
2/gがより好ましい。上記下限値以上であると、UVAなどの他の添加剤との化学的結合が起こりにくく、他の添加剤のへの影響を抑制できる。上記上限値以下であると、ハイドロタルサイト化合物の塩基性を抑制でき、第一の封止シートおよび/または第二の封止シートの劣化を抑制することができる。
【0089】
ハイドロタルサイト化合物の製造法について説明する。
マグネシウム塩水溶液、亜鉛塩水溶液、ニッケル塩水溶液、カルシウム塩水溶液の少なくとも1種の金属塩水溶液と、アニオンを含有したアルカリ性水溶液と、アルミニウム塩水溶液とを混合し、pHが8〜14の範囲の混合溶液とした後、該混合溶液を80〜100℃の温度範囲で熟成することにより得ることができる。
【0090】
熟成反応中のpHは10〜14が好ましく、11〜14がより好ましい。pHが上記下限値以上であると、板面径が小さく、適度な厚みを有したハイドロタルサイト化合物を得ることができる。
熟成温度が80℃〜100℃の範囲では、適度な板面径を有するハイドロタルサイト化合物を得ることが可能である。より好ましい熟成温度は85〜100℃である。
【0091】
ハイドロタルサイト化合物の熟成反応のエージング時間は特に限定されないが、例えば2〜24時間程度である。2時間以上であると、板面径が小さく、適度な厚みを有した層状複合金属化合物を得ることができる。24時間以下であると、熟成が経済的である。
【0092】
上記アニオンを含むアルカリ性水溶液としては、アニオンを含む水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液が好ましい。アニオンを含む水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、有機カルボン酸塩、有機スルフォン酸塩、有機リン酸塩などの水溶液が好ましい。また水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素水溶液などが好ましい。
【0093】
本実施形態における金属塩水溶液としては、硫酸金属水溶液、塩化金属水溶液または硝酸金属水溶液などを使用することができ、好ましくは塩化マグネシウム水溶液である。また、酸化金属粉末や水酸化金属粉末のスラリーを代用しても良い。
【0094】
本実施形態におけるアルミニウム塩水溶液としては、硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液及び硝酸アルミニウム水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液である。また、酸化アルミニウム粉末や水酸化アルミニウム粉末のスラリーを代用しても良い。
【0095】
アニオンを含有するアルカリ水溶液と、マグネシウム塩水溶液、亜鉛塩水溶液、ニッケル塩水溶液、カルシウム塩水溶液の少なくとも1種の金属塩水溶液と、アルミニウム塩水溶液との混合順序は、特に限定されるものではなく、各水溶液あるいはスラリーを同時に混合してもよい。好ましくは、アニオンを含有するアルカリ水溶液に、あらかじめマグネシウム塩水溶液、亜鉛塩水溶液、ニッケル塩水溶液、カルシウム塩水溶液の少なくとも1種の金属塩水溶液と、アルミニウム塩水溶液とを混合した水溶液若しくはスラリーを添加する。
【0096】
また、各水溶液を添加する場合には、該水溶液を一度に添加する場合、又は連続的に滴下する場合のいずれで行ってもよい。
一般式(A)で示されるハイドロタルサイト化合物のpHは8.0〜10.0が好ましい。pHが8.0以上であると、酸との中和効率が良好である。pHが10.0以下であると、金属の溶出による、第一の封止シートおよび第二の封止シートの劣化を抑制することができる。なお、ハイドロタルサイト化合物のpHは、以下の方法により測定することができる。まず、試料5gを300mlの三角フラスコに秤り取り、煮沸した純水100mlを加え、加熱して煮沸状態を約5分間保持する。次いで、栓をして常温まで放冷し、減量に相当する水を加えて再び栓をして1分間振り混ぜ、5分間静置する。その後、得られた上澄み液のpHをJIS Z8802−7に従って測定し、得られた値をハイドロタルサイト金属化合物のpHとすることができる。
【0097】
焼成物の製造は、ハイドロタルサイト化合物を200〜800℃で焼成することが好ましく、250〜700℃で焼成することがより好ましい。焼成時間は焼成温度に応じて調整すればよく特に限定されないが、1〜24時間が好ましく、1〜10時間がより好ましい。また、焼成時の雰囲気は酸化雰囲気、非酸化雰囲気いずれでも構わないが、水素のような強い還元作用を持つガスは使用しない方が好ましい。
【0098】
着色剤(D)
本実施形態に係わる第二の封止シートは、着色剤(D)を含有することも好ましい。着色剤を含むことにより、光反射能による太陽電池モジュールの変換効率の向上、意匠性の向上、熱伝導性の向上などが期待できる。特に白の着色剤であれば、光反射能による太陽電池モジュールの変換効率の向上が期待できる。
【0099】
着色剤(D)としては、従来公知のものが使用できる。例えば、有機顔料、染料、無機充填剤である。無機充填剤としては特に、天然マイカ(雲母)、合成マイカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、カオリナイト、珪藻土からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。中でも、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウムが好ましく、さらに、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムが好ましい。
第二の封止シート中の着色剤(D)の含有量の上限は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、8重量部以下であることが特に好ましい。また、第二の封止シート中の着色剤の含有量の下限は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、1重量部以上であることが好ましく、2重量部以上であることがより好ましい。
【0100】
第二の封止シートが着色剤(D)を含む場合、第二の封止シートの430〜800nm波長域における全光線透過率は通常10%以下、好ましくは8%以下である。前記全光線透過率は、日立製作所社製の分光光度計(商品名「U−3010」)にφ150mmの積分球を取り付けたものを使用し、430〜800nmの波長域における、厚み0.5mmの封止シートサンプルの分光全光線透過率を測定し、測定結果に、標準光D65および標準視感効率V(λ)を乗じ、可視光の全光線透過率(Tvis)を算出した。
【0101】
なお、第一の封止シートを裏面側で用いる場合においては、第一の封止シートは第二の封止シート同様に着色剤(D)を含有することが好ましい。
着色剤(D)は、直接エチレン・極性モノマー共重合体とブレンドしてもいいが、予め高濃度のマスターバッチ化してブレンドしてもよい。
【0102】
有機過酸化物
第一の封止シートおよび第二の封止シートを構成する樹脂組成物には、従来公知の有機過酸化物を含有させることが好ましい。ただ、本発明の第一の封止シートおよび第二の封止シートに好ましく用いられる有機過酸化物は、押出シート成形での生産性と太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度のバランスから、有機過酸化物の1分間半減期温度が100〜170℃であるものが好ましい。有機過酸化物の1分間半減期温度が100℃以上であると、シート成形を容易にし、かつ、シートの外観を良好にすることができる。また、絶縁破壊電圧の低下を防ぐことができ、透湿性の低下も防止でき、更に接着性も向上する。有機過酸化物の1分間半減期温度が170℃以下であると、太陽電池モジュールのラミネート成形時の架橋速度の低下を抑制できるため、太陽電池モジュールの生産性の低下を防ぐことができる。また、太陽電池封止シートの耐熱性、接着性の低下を防ぐこともできる。
【0103】
1分間半減期温度が100〜170℃の範囲にある有機過酸化物の好ましい具体例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、などが挙げられる。好ましくは、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0104】
第一の封止シートおよび第二の封止シートは、有機過酸化物を含有することで優れた架橋特性を有しているため、真空ラミネーターと架橋炉の二段階の接着工程を経る必要はなく、高温度で短時間に完結することができる。
【0105】
第一の封止シートおよび第二の封止シート中の有機過酸化物の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、0.1〜1.2重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0重量部であり、更に好ましくは0.2〜0.8重量部とすることができる。有機過酸化物の含有量が0.1重量部以上であると、第一の封止シートおよび第二の封止シートの架橋特性の低下を抑制し、シランカップリング剤のエチレン系共重合体の主鎖へのグラフト反応を良好にして、耐熱性、接着性の低下を抑制することができる。また、有機過酸化物の含有量が1.2重量部以下であると、例えば、押出成形時のゲルの発生を防止することができる。
【0106】
その他の添加剤
第一の封止シートおよび第二の封止シートを構成する樹脂組成物には、紫外線吸収剤、光安定化剤、及び耐熱安定剤からなる群より選択される少なくとも一種の添加剤が含有されることが好ましく、少なくとも二種の添加剤を含有することがより好ましく、上記三種の全てが含有されていることが更に好ましい。
【0107】
これら三種の添加剤の含有量は、第一の封止シートおよび第二の封止シート中、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、0.005〜5重量部であることが好ましい。この範囲とすることで、高温高湿への耐性、ヒートサイクルの耐性、耐候安定性、及び耐熱安定性を向上する効果を十分に確保し、かつ、シートの透明性や接着性の低下を防ぐことができる。
【0108】
紫外線吸収剤としては、具体的には、2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系;フェニルサルチレート、p−オクチルフェニルサルチレートなどのサリチル酸エステル系のものが用いられる。
【0109】
光安定化剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などのヒンダードアミン系、ヒンダードピペリジン系化合物などのものが好ましく使用される。
【0110】
耐熱安定剤としては、具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイト、及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのホスファイト系耐熱安定剤;3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物などのラクトン系耐熱安定剤;3,3',3",5,5',5"−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a"−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのヒンダードフェノール系耐熱安定剤;硫黄系耐熱安定剤;アミン系耐熱安定剤などを挙げることができる。また、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤、及びヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
【0111】
第一の封止シートおよび第二の封止シートは、架橋助剤を含有する樹脂組成物からなるものであってもよい。第一の封止シートおよび第二の封止シート中、架橋助剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、0.05〜5重量部であると、適度な架橋構造を有することができ、耐熱性、機械物性、接着性を向上できるため好ましい。
【0112】
架橋助剤としては、分子内に二重結合を二個以上有する化合物を用いることができ、具体的には、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレートなどのモノアクリレート;t−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートなどのモノメタクリレート;1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;ジビニルベンゼン、ジ−i−プロペニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのシアヌレート;ジアリルフタレートなどのジアリル化合物;トリアリル化合物:p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのオキシム:フェニルマレイミドなどのマレイミドが挙げられる。これらの架橋助剤の中でより好ましいのは、ジアクリレート、ジメタクリレート、ジビニル芳香族化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのシアヌレート、ジアリルフタレートなどのジアリル化合物;トリアリル化合物:p−キノンジオキシム、p−p'−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのオキシム:フェニルマレイミドなどのマレイミドである。中でも、トリアリルイソシアヌレートが、太陽電池封止シート中の気泡発生や架橋特性のバランスが優れるため、より好ましい。
【0113】
第一の封止シートおよび第二の封止シートを構成する樹脂組成物には、以上詳述した成分以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜含有させることができる。例えば、エチレン系共重合体以外の各種ポリオレフィン、スチレン系やエチレン系ブロック共重合体、プロピレン系重合体などが挙げられる。これらは,第一の封止シートおよび第二の封止シート中、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対して、0.0001〜50重量部、好ましくは0.001〜40重量部含有させることができる。また、ポリオレフィン以外の各種樹脂、及び/又は各種ゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、及び分散剤などから選ばれる一種以上の添加剤を適宜含有することができる。
【0114】
本発明に係わる第一および第二の封止シートが備えるその他の特性
<体積固有抵抗>
本発明は、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられる、第一の封止シートと第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートである。第一の封止シートの体積固有抵抗は、第二の封止シートの体積固有抵抗よりも高くなるように構成されていることも、好ましい態様の一つである。
【0115】
本発明において「体積固有抵抗」は、JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定したものである。第一の封止シート及び第二の封止シートの体積固有抵抗は、150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理したものを用いて測定される。
【0116】
具体的には、加熱加圧処理された第一の封止シートの体積固有抵抗R
1(Ωcm)と、加熱加圧処理された第二の封止シートの体積固有抵抗R
2(Ωcm)との比(R
1/R
2)は、1×10
1〜1×10
10が好ましく、1×10
1〜1×10
5である事がより好ましい。こうすることで、太陽電池モジュールにおいてPIDの発生を抑制し、かつ気泡の発生を低減することが出来る。
【0117】
加熱加圧処理された第一の封止シートの体積固有抵抗(R
1)は、好ましくは1×10
13〜1×10
18Ωcmであり、より好ましくは1×10
14〜1×10
16Ωcmである。また、加熱加圧処理された第二の封止シートの体積固有抵抗(R
2)は、好ましくは1×10
8〜1×10
15Ωcmであり、より好ましくは1×10
12〜1×10
15Ωcmである。R
1及びR
2をこの範囲とすることで、太陽電池モジュールにおけるPIDの発生の抑制をより長期化することができる。
【0118】
<アセトン吸収率>
本発明は、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられる、第一の封止シートと第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートである。第二の封止シートのアセトン吸収率は、第一の封止シートのアセトン吸収率よりも高くなるように構成されていることも、好ましい態様の一つである。
【0119】
150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより、加熱加圧処理された第二の封止シートのアセトンの吸収率(A
2)は、アセトンに浸漬する前の加熱加圧処理した第二の封止シートの重量に対して7〜400重量%であることが好ましく、8〜200重量%であることがより好ましい。こうすることで、有機過酸化物の分解物を十分に吸収することができ、太陽電池モジュールに気泡が発生しにくくすることができ、かつ、100℃での体積固有抵抗が向上し、PID現象の発生を抑制することができる。加熱加圧処理された第二の封止シートのアセトンの吸収率(A
2)は、より好ましくは10〜50重量%であり、15〜30重量%であると更に好ましい。アセトンの吸収率を50重量%以下にすることで、モジュールのラミネート時の冷却過程における気泡の発生をいっそう確実に抑制することができる。
【0120】
本発明においてアセトンの吸収率とは、太陽電池封止シートの加熱加圧処理(架橋処理)により生じる有機過酸化物の分解物を、どの程度太陽電池封止シート中に吸収(溶解)できるかを表す指標である。この加熱加圧処理後のアセトンの吸収率を求めるには、第一の封止シートおよび第二の封止シートを150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理し、例えば、100mlの密閉容器にアセトンを10ml入れ、精密天秤で秤量した加熱加圧処理後の第一の封止シートおよび第二の封止シート約1gをそれぞれアセトンに十分浸漬するように切断して入れる。試験片の厚みは0.3〜1.2mmにすることが好ましい。次いで、第一の封止シートおよび第二の封止シートを含む密閉容器をインキュベーターなどの恒温槽に30℃で1時間入れておく。その後、キムワイプなどでシート表面に付着しているアセトンをふき取り、ふき取り後5分以内に精密天秤で試験後のシートを秤量し、アセトン浸漬前後の重量差から、各シートのアセトン吸収量を算出する。加熱加圧処理後アセトン吸収前の第一の封止シートおよび第二の封止シートの各重量に対する、算出したアセトン吸収量の百分率をアセトンの吸収率とする。
【0121】
上記の加熱加圧処理された第二の封止シートのアセトンの吸収率(A
2)は、150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理された第一の封止シートのアセトンの吸収率(A
1)よりも高いことが好ましい。具体的には、加熱加圧処理された第二の封止シートのアセトンの吸収率(A
2)と、加熱加圧処理された第一の封止シートのアセトンの吸収率(A
1)との差(A
2−A
1)は、10〜170であることが好ましく、12〜120であることがより好ましく、15〜100であることが更に好ましい。
【0122】
<t−ブチルアルコール吸収率>
本発明は、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられる、第一の封止シートと第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートである。第二の封止シートのt−ブチルアルコールの吸収率は、第一の封止シートのt−ブチルアルコールの吸収率よりも高くなるように構成されていることも、好ましい態様の一つである。
【0123】
150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理された第二の封止シートのt−ブチルアルコールの吸収率(B
2)は、t−ブチルアルコールに浸漬する前の加熱加圧処理した第二の封止シートの重量に対して4〜30重量%であることが好ましい。こうすることで、有機過酸化物の分解物を十分に吸収することができ、太陽電池モジュールに気泡が発生しにくくすることができ、かつ、100℃での体積固有抵抗が向上し、PID現象の発生を抑制することができる。加熱加圧処理された第二の封止シートのt−ブチルアルコールの吸収率(B
2)は、より好ましくは4〜25重量%であり、7.5〜20重量%であると更に好ましい。t−ブチルアルコールの吸収率を25重量%以下にすることで、モジュールのラミネート時の冷却過程における気泡の発生をいっそう確実に抑制することができる。
【0124】
本発明においてt−ブタノールの吸収率も、アセトンの吸収率と同様に、太陽電池封止シートの加熱加圧処理により生じる有機過酸化物の分解物を、どの程度太陽電池封止シート中に吸収(溶解)できるかを表す指標である。この加熱加圧処理後のt−ブタノールの吸収率を求める場合も、アセトンの吸収率と同様に、第一の封止シートおよび第二の封止シートを150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理し、例えば、100mlの密閉容器にt−ブタノールを10ml入れ、精密天秤で秤量した加熱加圧処理後の第一の封止シートおよび第二の封止シート約1gをそれぞれt−ブタノールに十分浸漬するように切断して入れる。試験片の厚みは0.3〜1.2mmにすることが好ましい。t−ブタノールの吸収率を測定する場合は、第一の封止シートおよび第二の封止シートを含む密閉容器を恒温機などに入れて、30℃で1時間保温する。その後、キムワイプなどでシート表面に付着しているt−ブタノールをふき取り、ふき取り後5分以内に精密天秤で試験後のシートを秤量し、t−ブタノール浸漬前後の重量差から、各シートのt−ブタノール吸収量を算出する。加熱加圧処理後t−ブタノール吸収前の第一の封止シートおよび第二の封止シートの各重量に対する、算出したt−ブタノール吸収量の百分率を、t−ブタノールの吸収率とする。
【0125】
上記の加熱加圧処理された第二の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
2)は、150℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより加熱加圧処理された第一の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
1)よりも高いことが好ましい。具体的には、加熱加圧処理された第二の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
2)と、加熱加圧処理された第一の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
1)との差(B
2−B
1)は、5〜40であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、7〜20であることが更に好ましい。
【0126】
第一の封止シートは、実質的にエチレン・α−オレフィン共重合体から構成されるが、本発明の目的を損なわない範囲において、エチレン・極性モノマー共重合体を適宜含有させることができる。エチレン・極性モノマー共重合体としては本実施形態に係わる第二の封止シートを構成するエチレン・極性モノマー共重合体を制限なく用いることができ、またその含有量はエチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン・極性モノマー共重合体との合計100重量部に対して、エチレン・α−オレフィン共重合体が50〜99重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が1〜50重量部であることが好ましく、より好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が50〜98重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が2〜50重量部であり、更に好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が50〜95重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が5〜50重量部であり、特に好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が75〜95重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が5〜25重量部である。
【0127】
第二の封止シートは、実質的にエチレン・極性モノマー共重合体から構成されるが、本発明の目的を損なわない範囲において、エチレン・α−オレフィン共重合体を含有することができる。エチレン・α−オレフィン共重合体としては本実施形態に係わる第一の封止シートを構成するエチレン・α−オレフィン共重合体を制限なく用いることができ、またその含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン・極性モノマー共重合体との合計100重量部に対して、エチレン・α−オレフィン共重合体が1〜50重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が50〜99重量部であることが好ましく、より好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が2〜50重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が50〜98重量部であり、更に好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が5〜50重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が50〜95重量部であり、特に好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体が5〜25重量部、エチレン・極性モノマー共重合体が75〜95重量部である。
【0128】
本発明の太陽電池封止用シートには、受光面側に第一の封止シートを、裏面側に第二の封止シートをそれぞれ一つずつ備えていることが好ましい態様である。また、受光面側に第一の封止シートと第二の封止シートが任意の順番で積層されたシートセットも本発明の好ましい態様の一つである。また、本発明の目的を損なわない範囲において、裏面側に第二の封止シートと、さらに、第一の封止シートが積層されていてもよい。上記積層体は、1つずつでもよいし、複数の積層体でもよい。
【0129】
第一の封止シートおよび第二の封止シートの厚みは、0.01〜2mmが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mm、中でも0.25〜0.6mmが好ましい。厚みがこの範囲内であると、ラミネート工程における、受光面側保護部材、太陽電池素子、薄膜電極などの破損が抑制でき、かつ、十分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができる。さらには、低温での太陽電池モジュールのラミネート成形ができるので好ましい。
【0130】
第一の封止シートおよび第二の封止シートの製造方法としては通常用いられている方法が利用できるが、カレンダーロール、ニーダー、バンバリミキサー、押出機などにより溶融ブレンドすることにより製造することが好ましい。とくに、連続生産が可能な押出機、カレンダーロールでの製造が好ましい。
【0131】
第一の封止シートおよび第二の封止シートの成形方法にはとくに制限は無いが、公知の各種の成形方法(キャスト成形、押出シート成形、インフレーション成形、射出成形、圧縮成形など)を採用することが可能である。とくに、押出機中でエチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体と、シランカップリング剤(A)、エポキシ基含有シランカップリング剤(B)、有機過酸化物、紫外線吸収剤、光安定化剤、耐熱安定剤、及び必要に応じてその他添加剤を、例えば、ポリ袋などの袋の中で人力でのブレンドや、ヘンシェルミキサー、タンブラー、スーパーミキサーなどの攪拌混合機を用いて、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体と各種添加剤を配合した組成物を、押出シート成形のホッパーに投入し、溶融混練を行いつつ押出シート成形を行い、太陽電池封止シートを得ることが、接着性を向上させることができ、かつ、光安定剤の劣化を防いで耐候性や耐熱性などの長期信頼性が低下できるため、より好ましい。
【0132】
押出温度範囲としては、100〜130℃が好ましい。この範囲にすることで、シートの生産性を向上させつつ、外観が良好で接着性に優れた太陽電池封止シートを得ることができる。
【0133】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRが例えば10g/10分以下の場合は、溶融樹脂を加熱した金属ロール(カレンダーロール)で圧延することによって所望の厚さのシートやフィルムを作製するカレンダー成形機を使用し、エチレン・α−オレフィン共重合体と、必要に応じてシランカップリング剤、有機過酸化物、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、およびその他添加剤と、の溶融混練を行いつつカレンダー成形を行い、第一の封止シートおよび第二の封止シートを得ることもできる。カレンダー成形機としては、公知の各種カレンダー成形機を用いることができ、ミキシングロール、三本カレンダーロール、四本カレンダーロールを用いることができる。四本カレンダーロールとしては、とくに、I型、S型、逆L型、Z型、斜Z型などを用いることができる。また、カレンダーロールに掛ける前に、エチレン系樹脂組成物を適度な温度まで熱しておくことも好ましく、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機などを設置することも好ましい実施形態の一つである。カレンダー成形の温度範囲は、ロール温度を、通常40〜100℃とすることが好ましい。
【0134】
第一の封止シートおよび第二の封止シートの製造方法の一例として、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・極性モノマー共重合体を、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサーで、有機過酸化物を含む添加剤と共に混合して押出機に供給し、シート状に成形する方法が挙げられる。架橋性樹脂及び添加剤を、別々に押出成形機に供給し、成形機中で溶融混合しても良い。さらには、架橋性樹脂を、一度溶融混錬して混合ペレットを作成し、このペレットを再度押出機に供給してシート成形しても良い。
【0135】
また、第一の封止シートおよび第二の封止シートの表面には、エンボス加工が施されてもよい。エンボス加工は、第一の封止シートおよび第二の封止シートの片面に施されていても、両面に施されていてもよい。第一の封止シートおよび第二の封止シートのシート表面を、エンボス加工によって装飾することで、太陽電池封止シート同士又は太陽電池封止シートと他のシートなどとのブロッキングを防止しうる。さらに、エンボスが、太陽電池封止シートの貯蔵弾性率を低下させるため、太陽電池封止シートと太陽電池素子とをラミネートする時に太陽電池素子などに対するクッションとなって、太陽電池素子の破損を防止することができる。
【0136】
太陽電池封止シートの単位面積当りの凹部の合計体積V
Hと、太陽電池封止シートの見掛けの体積V
Aとの百分比V
H/V
A×100で表される空隙率P(%)が、10〜50%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましく、15〜40%であることがさらに好ましい。なお、太陽電池封止シートの見掛けの体積V
Aは、単位面積に太陽電池封止シートの最大厚みを乗じることにより得られる。
【0137】
空隙率Pが10%以上であると、太陽電池封止シートの弾性率を十分低下させることができるため、十分なクッション性を得ることができる。このため、ラミネート加工時に、例えばシリコンセルなどに対して局所的に大きな圧力が加わったとしてもシリコンセルが割れてしまうのを防止することができる。また、空隙率Pが80%以下であると、ラミネート加工の加圧時に空気を良好に脱気できるため、太陽電池モジュールの外観の悪化や電極の腐食を防ぎ、太陽電池封止シートと被着体との接着面積が増えて、十分な接着強度を得ることができる。
【0138】
空隙率Pは、次のような計算により求めることができる。エンボス加工が施された太陽電池封止シートの、見掛けの体積V
A(mm
3)は、太陽電池封止シートの最大厚みt
max(mm)と単位面積(例えば1m
2=1000×1000=10
6mm
2)との積によって、下記式(1)のようにして算出される。
V
A(mm
3)=t
max(mm)×10
6(mm
2) (1)
【0139】
一方、この単位面積の太陽電池封止シートの実際の体積V
0(mm
3)は、太陽電池封止シートを構成する樹脂の比重ρ(g/mm
3)と単位面積(1m
2)当りの太陽電池封止シートの実際の重さW(g)と、を下記式(2)に当てはめることにより算出される。
V
0(mm
3)=W/ρ (2)
【0140】
太陽電池封止シートの単位面積当りの凹部の合計体積V
H(mm
3)は、下記式(3)に示されるように、「太陽電池封止シートの見掛けの体積V
A」から「実際の体積V
0」を差し引くことによって算出される。
V
H(mm
3)=V
A−V
0=V
A−(W/ρ) (3)
したがって、空隙率(%)は次のようにして求めることができる。
空隙率P(%)=V
H/V
A×100
=(V
A−(W/ρ))/V
A×100
=1−W/(ρ・V
A)×100
=1−W/(ρ・t
max・10
6)×100
【0141】
空隙率(%)は、上記の計算式によって求めることができるが、実際の太陽電池封止シートの断面やエンボス加工が施された面を顕微鏡撮影し、画像処理などすることによって求めることもできる。
【0142】
第一の封止シートおよび第二の封止シートは、それぞれ太陽電池モジュールサイズに合わせて裁断された枚葉形式、又は太陽電池モジュールを作製する直前にサイズに合わせて裁断可能なロール形式にて用いることもできる。
【0143】
本発明の太陽電池封止シートセット、すなわち受光面側保護部材と裏面側保護部材の間に配置される、本願発明に係わる第一の封止シートおよび第二の封止シートは、各々が一層のみであってもよいし、各々が二層以上の複数層であってもよいが、構造を単純にしてコストを下げる観点、及び層間での界面反射を極力小さくし、光を有効に活用する観点などからは、各々が一層であることが好ましい。また、第一の封止シートが受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間に配置され、第二の封止シートが裏面側保護部材と前記太陽電池素子との間に配置された封止用シートセット、または、受光面側保護部材と前記太陽電池素子との間に、前記第一の封止シートと前記第二の封止シートとが任意の順番で積層されて配置される封止用シートセットが好ましい態様である。
【0144】
第一の封止シートおよび第二の封止シートは、各々第一の封止シートおよび第二の封止シートのみからなる構成されていてもよいし、第一の封止シートおよび第二の封止シート以外の層(以下、「その他の層」とも記す)を有していてもよい。その他の層の例としては、目的で分類するならば、受光面又は裏面保護のためのハードコート層、接着層、反射防止層、ガスバリア層、防汚層などを挙げることができる。材質で分類するならば、紫外線硬化性樹脂からなる層、熱硬化性樹脂からなる層、ポリオレフィン樹脂からなる層、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層、フッ素含有樹脂からなる層、環状オレフィン(共)重合体からなる層、無機化合物からなる層などを挙げることができる。
【0145】
このようにして製造された第一の封止シートと第二の封止シートとを備える太陽電池封止用シートセットは、受光面側保護部材と裏面側保護部材との間に配置させて、太陽電池素子を封止させるために用いられる。第一の封止シートと第二の封止シートとは、モジュールの用途に照らして種々組み合わせることができる。
【0146】
PID発生の抑制の観点からは、少なくとも受光面側が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる第一の封止シートを含むことが好ましく、気泡発生の抑制の観点からは裏面側が、エチレン・極性モノマー共重合体にエポキシ基含有シランカップリング剤(B)を含む第二の封止シートを含むことが好ましい。このような太陽電池封止用セットを加熱加圧することによって架橋硬化させることによって、受光面側封止層(I)が、前記第一の封止シートを架橋させてなるシートを含み、裏面側封止層(II)が、前記第二の封止シートを架橋させてなるシートを含む太陽電池モジュールが製造される。
【0147】
本発明の封止用セットには、例えば、下記例1〜5のものが挙げられる。
(例1)
この例は、受光面側として1枚の第一の封止シートと、裏面側として1枚の第二の封止シートとからなる一対のシートセットである。第一の封止シートを受光面側保護部材と太陽電池素子との間に配置させ、第二の封止シートを太陽電池素子と裏面側保護部材との間に配置させる。第一の封止シートは受光面側保護部材と太陽電池素子とそれぞれ接していることが好ましく、第二の封止シートは、裏面側保護部材と太陽電池素子とそれぞれ接していることが好ましい。第一の封止シート及び第二の封止シートの厚みは、それぞれ0.01〜2mmが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。
【0148】
(例2)
この例は、受光面側に相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートと、裏面側に相対的に厚みの厚い第二の封止シートとからなる3枚のシートセットである。この例において相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートは、受光面側保護部材と太陽電池素子との間に積層して配置されるためのものである。この場合において、相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートが互いに接して配置されることが好ましい。また、相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートがあらかじめ積層されたものを用いると、モジュールの製造時間を短くできるため好ましい。相対的に厚みの厚い第二の封止シートは太陽電池素子と裏面側保護部材との間に配置される。相対的に厚みの厚い第二の封止シートの厚みは、0.01〜2mmが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートは、積層したときの厚みが、0.01〜2mmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.15〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。
【0149】
例2のシートセットでは、第一の封止シートが受光面側保護部材に接して配置され、第二の封止シートが太陽電池素子の表面に接して配置されてもよいし、第二の封止シートが受光面側保護部材に接して配置され、第一の封止シートが太陽電池素子の表面に接して配置されてもよい。この例では、第二の封止シートが太陽電池素子の受光面側に設けられているため、受光面側に発生したガスを第二の封止シートに吸収させることができ、特に大型の太陽電池素子を用いた場合において受光面側における気泡の発生をより確実に抑制することができる。
【0150】
(例3)
この例は、受光面側に相対的に厚みの厚い第一の封止シートと、裏面側に相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートとからなる3枚のシートセットである。この例において、相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートは、太陽電池素子と裏面側保護部材との間に積層して配置されるためのものである。相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートは互いに接して配置されることが好ましい。また、相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートはあらかじめ積層されたものを用いると、モジュールの製造時間を短くできるため好ましい。相対的に厚みの厚い第一の封止シートは受光面側保護部材と太陽電池素子との間に配置される。相対的に厚みの厚い第一の封止シートの厚みは、0.01〜2mmが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。相対的に厚みの薄い第一の封止シート、第二の封止シートは、積層したときの厚みが、0.01〜2mmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.15〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。
例3のシートセットでは、第一の封止シートが裏面側保護部材に接して配置され、第二の封止シートが太陽電池素子の裏面に接して配置されることが好ましい。
【0151】
(例4)
この例は、1枚の第一の封止シートと2枚の第二の封止シートからなる3枚のシートセットである。このシートセットは、少なくとも受光面側がこのように構成されていればよく、任意の太陽電池封止シートを第二の封止シートとして組み合わせても良いし、この3枚のシートセット2組から構成されるシートセットとし、2組のうち一方を第一の封止シートとし、他方を第二の封止シートしても良い。この例において、これら3枚のシートセットは、受光面側保護部材と太陽電池素子との間に、第二の封止シート、第一の封止シート、第二の封止シートの順で積層して配置されるものである。この場合において、3枚のシートは互いに接して配置されることが好ましい。また、受光面保護部材及び太陽電池素子は、それぞれ第二の封止シートに接していることが好ましい。また、3枚のシートはあらかじめ積層されたものを用いると、モジュールの製造時間を短くできるため好ましい。第一、第二の封止シートの厚みは、3枚積層したとき0.01〜2mmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5mm、更に好ましくは0.1〜1.2mm、より更に好ましくは0.2〜1mm、特に好ましくは0.2〜0.8mmが好ましい。この例においては、上記例2と同様に第二の封止シートが太陽電池素子の受光面側に設けられているため、受光面側に発生したガスを第二の封止シートに吸収させることができ、特に大型の太陽電池素子を用いた場合において受光面側における気泡の発生をより確実に抑制することができる。
【0152】
本発明の他の態様は、太陽電池モジュールである。
図1は、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1で示す太陽電池モジュール10は、上記例1で示す太陽電池封止用シートを用いて形成されるものである。受光面側保護部材14と裏面側保護部材15との間に封止層1を有し、該封止層1内に太陽電池素子13が封止されてなる。封止層1は、受光面側封止層11と、裏面側封止層12とを有する。受光面側封止層11及び裏面側封止層12の体積固有抵抗をJIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定したとき、受光面側封止層11の体積固有抵抗は、裏面側封止層12の体積固有抵抗よりも高い。また、裏面側封止層12は、カルボキシル基、エステル基、水酸基、アミノ基及びアセタール基から選択される少なくとも一種の極性基を含んでいる。また、受光面側封止層11が受光面側保護部材14と太陽電池素子13との間に設けられている。
【0153】
受光面側封止層11(受光面側封止層11とも呼ぶ。)と、裏面側封止層12(裏面側封止層12とも呼ぶ。)の体積固有抵抗は、具体的には次のようにして測定することができる。すなわち、図示するように複数の太陽電池素子13を複数備える場合は、一つの太陽電池素子13を含む試験片を、ウォータージェットカッターなどを用いて切り出す。ついで裏面側保護部材15を剥離する。こうして受光面側保護部材14/受光面側封止層11/太陽電池素子13/裏面側封止層12の構成を有する試験片が得られる。
【0154】
抵抗測定器の一方の電極を太陽電池素子13に接続し、もう片方を裏面側封止層12に接触することにより、裏面側封止層12の体積固有抵抗を測定することができる。太陽電池素子13への接続は、測定値が安定しない場合には、太陽電池素子13の表面(受光面側)と裏面を短絡して接続する。
【0155】
抵抗測定器の一方の電極を、上記と同様に太陽電池素子13に接続し、もう片方を受光面側保護部材14に電極サイズに合わせた導電性ゴムを介して接触することにより、受光面側封止層11の体積固有抵抗を測定することができる。この場合厳密には受光面側保護部材14と受光面側封止層11とをあわせた抵抗を測定していることになるが、受光面側保護部材14として通常用いられているソーダガラスの体積固有抵抗は10
10Ωcmオーダー程度であり、本発明において好適に用いられる受光面側封止層11の抵抗は10
13Ωcmオーダー以上であるから、測定値は実質的に受光面側封止層11の抵抗と等しい。
【0156】
ただし、受光面側封止層11及び裏面側封止層12いずれの測定も電圧印加した後、測定値が安定せず抵抗値が増加傾向が続く場合には、1000秒後の値を用いる。
【0157】
また体積抵抗を算出する際には、受光面側封止層11及び裏面側封止層12の膜厚に関しては、それぞれ太陽電池素子13から剥がして、接触式の厚み測定し、5点測定の平均値とする。剥がせない場合には、レーザ変位計を用いて封止層の2つの反射面の光学膜厚を測定し、封止層の実測屈折率を用いて、膜厚換算により求めても良い。また、受光面側封止層11の場合には、同様に、ガラスなど受光面側保護部材14ごしに、レーザ変位計を用いて封止層の2つの反射面を同様に計測して、屈折率は別に封止層を剥がして測定し、膜厚換算してもよい。用いるレーザ変位計はそれぞれ、封止層の2つの反射面間の距離が測定できる装置であれば特に指定しないが、例えばキーエンス社製レーザ変位計LT−9000などを用いてもよい。
【0158】
図1の例では、第一の封止シートを受光面側保護部材14と太陽電池素子13との間に配置させて、受光面側封止層11が形成されている。また、第二の封止シートを太陽電池素子13と裏面側保護部材15との間に配置させて、裏面側封止層12が形成されている。
【0159】
図2は、本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図2で示す太陽電池モジュール20は、上記例2で示す太陽電池封止用シートを用いて形成されるものである。
図2の例では、第一の封止シートを受光面側保護部材14に接して配置させて受光面側封止層11を形成し、相対的に薄い第二の封止シートを太陽電池素子13の受光面に接して配置させて裏面側封止層12Aを形成している。相対的に厚い第二の封止シートは、太陽電池素子13と裏面側保護部材15との間に配置させて、裏面側封止層12Bが形成されている。その他は、
図1で示す太陽モジュール10と同じである。
【0160】
図3は、本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3で示す太陽電池モジュール30は、上記例2で示す太陽電池封止用シートを用いて形成されるものである。
図3の例では、相対的に薄い第二の封止シートを受光面側保護部材14に接して配置させて裏面側封止層12Aを形成し、相対的に薄い第一の封止シート11を太陽電池素子13の受光面に接して配置させている。その他は、
図2で示す太陽モジュール20と同じである。
【0161】
図4は、本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図4で示す太陽電池モジュール40は、上記例3で示す太陽電池封止用シートを用いて形成されるものである。
図4の例では、相対的に厚い第一の封止シートを受光面側保護部材14と太陽電池素子13との間に配置させて受光面側封止層11Aを形成し、相対的に薄い第二の封止シートを太陽電池素子13の裏面に接して配置させて裏面側封止層12を形成し、相対的に薄い第一の封止シートを裏面側保護部材15に接して配置させて受光面側封止層11Aが形成されている。その他は、
図1で示す太陽モジュール10と同じである。
【0162】
図5は、本発明の太陽電池モジュールの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5で示す太陽電池モジュール50は、上記例4で示す太陽電池封止用シートを2組用いて形成されるものである。
図5の例では、裏面側、第一、第二の封止シートをこの順で積層し、受光面側保護部材14と太陽電池素子13との間に配置させて、裏面側封止層12A、受光面側封止層11A、裏面側封止層12Bを形成する。また、太陽電池素子13と裏面側保護部材15との間にも、裏面側、第一、第二の封止シートをこの順で積層したものを配置させて、裏面側封止層12C、受光面側封止層11B、裏面側封止層12Dを形成する。その他は、
図1で示す太陽モジュール10と同じである。
【0163】
受光面側封止層11(11A〜B)の体積固有抵抗R
1(Ωcm)と、裏面側封止層12(12A〜D)の体積固有抵抗R
2(Ωcm)との比(R
1/R
2)は、1×10
1〜1×10
10が好ましく、1×10
1〜1×10
5であることがより好ましい。こうすることで、太陽電池モジュール10〜50において、PIDの発生を抑制し、かつ気泡の発生を低減することができる。
【0164】
受光面側封止層11(11A〜B)の体積固有抵抗(R
1)は、好ましくは1×10
13〜1×10
18Ωcmであり、より好ましくは1×10
14〜1×10
17Ωcmである。また、裏面側封止層12の体積固有抵抗(R
2)は、好ましくは1×10
8〜1×10
15Ωcmであり、より好ましくは1×10
12〜1×10
15Ωcmである。R
1及びR
2をこの範囲である。ここで受光面側の第1層と第2層を直列接続と考えた体積固有抵抗が、1×10
12〜1×10
17Ωcmであり、より好ましくは1×10
12〜1×10
15Ωcmであることで、太陽電池モジュール10〜50において、PIDの発生の抑制をより長期化することができる。
【0165】
前述のとおり、受光面側封止層11は第一の封止シートから形成し、裏面側封止層12は第二の封止シートから形成させることができるが、架橋後の第一の封止シートの体積固有抵抗が第二の封止シートよりも大きくなるように第一の封止シートと第二の封止シートとを組み合わせて封止層1を形成することで、受光面側封止層11の体積固有抵抗が裏面側封止層12の体積固有抵抗よりも高い封止層1を形成させることができる。
【0166】
なお、体積固有抵抗を測定する際の第一の封止シート及び第二の封止シートの加熱加圧処理は、50℃、250Paで3分間加熱減圧した後、150℃、100kPaで15分間加熱加圧することにより行う。また、前述のとおり、本明細書において体積固有抵抗は、JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定したものである。
【0167】
裏面側封止層12(12A〜D)は、カルボキシル基、エステル基、水酸基、アミノ基、及び、アセタール基から選択される少なくとも一種の極性基を含んでいればよく、前述した第二の封止シートを架橋させて形成させたものであればよい。
【0168】
図1〜5で示す太陽電池モジュール10〜50は、具体的には、結晶シリコン系の太陽電池モジュールの一例である。太陽電池素子13は、インターコネクタ16により電気的に接続された複数の結晶シリコン系の太陽電池素子であり、受光面側保護部材14と裏面側保護部材15とで挟持されている。太陽電池素子13の受光面及び裏面には、電極(集電部材)がそれぞれ形成されており、太陽電池素子13の受光面及び裏面に形成された電極と封止層1とが接している。集電部材には、後述する集電線、タブ付用母線、及び裏面電極層などが含まれる。
【0169】
図1で示す太陽電池モジュール10は、具体的には、結晶シリコン系の太陽電池モジュールの一例である。太陽電池素子13は、インターコネクタ16により電気的に接続された複数の結晶シリコン系の太陽電池素子であり、受光面側保護部材14と裏面側保護部材15とで挟持されている。受光面側保護部材14と複数の太陽電池素子13との間に、受光面側封止層11が充填されており、裏面側保護部材15と複数の太陽電池素子13との間に、第二の封止シートから形成された裏面側封止層12が充填されている。受光面側封止層11及び裏面側封止層12は、JIS K6911に準拠し、温度100℃、印加電圧500Vで測定した体積固有抵抗が、裏面側封止層12よりも受光面側封止層11が高くなっていればよいが、受光面側封止層11は、前述した第一の封止シートを架橋させて形成させることが好ましく、裏面側保護部材15は、前述した第二の封止シートを架橋させて形成させることが好ましい。太陽電池素子13の受光面に形成された電極と受光面側封止層11が接しており、太陽電池素子13の裏面に形成された電極と裏面側封止層12とが接している。電極とは、太陽電池素子13の受光面及び裏面にそれぞれ形成された集電部材であり、後述する集電線、タブ付用母線、及び裏面電極層などを含む。
【0170】
図6は、太陽電池素子の受光面と裏面の一構成例を模式的に示す平面図である。
図6においては、太陽電池素子13の受光面13Aと裏面13Bの構成の一例が示されている。
図6(A)に示されるように、太陽電池素子13の受光面13Aには、ライン状に多数形成された集電線32と、集電線32から電荷を収集するとともに、インターコネクタ16(
図1〜5)と接続されるタブ付用母線(バスバー)34Aと、が形成されている。また、
図6(B)に示されるように、太陽電池素子13の裏面13Bには、全面に導電層(裏面電極)36が形成され、その上に導電層36から電荷を収集するとともに、インターコネクタ16(
図1〜5)と接続されるタブ付用母線(バスバー)34Bが形成されている。集電線32の線幅は、例えば0.1mm程度であり;タブ付用母線34Aの線幅は、例えば2〜3mm程度であり;タブ付用母線34Bの線幅は、例えば5〜7mm程度である。集電線32、タブ付用母線34A及びタブ付用母線34Bの厚みは、例えば20〜50μm程度である。
【0171】
集電線32、タブ付用母線34A、及びタブ付用母線34Bは、導電性が高い金属を含むことが好ましい。このような導電性の高い金属の例には、金、銀、銅などが含まれるが、導電性や耐腐食性が高い点などから、銀や銀化合物、銀を含有する合金などが好ましい。導電層36は、導電性の高い金属だけでなく、受光面で受けた光を反射させて太陽電池素子の光電変換効率を向上させるという観点などから、光反射性の高い成分、例えばアルミニウムを含むことが好ましい。集電線32、タブ付用母線34A、タブ付用母線34B、及び導電層36は、太陽電池素子13の受光面13A又は裏面13Bに、上記導電性の高い金属を含む導電材塗料を、例えばスクリーン印刷により50μmの塗膜厚さに塗布した後、乾燥し、必要に応じて例えば600〜700℃で焼き付けすることにより形成される。
【0172】
受光面側保護部材14は、受光面側に配置されることから、透明である必要がある。表面側保護部材14の例には、透明ガラス板や透明樹脂フィルムなどが含まれる。一方、裏面側保護部材15は透明である必要はなく、その材質はとくに限定されない。裏面側保護部材15の例にはガラス基板やプラスチックフィルムなどが含まれる。プラスチックフィルムの材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などからなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0173】
樹脂フィルムは、好ましくは、透明性、強度、コストなどの点で優れたポリエステル樹脂、とくにポリエチレンテレフタレート樹脂や、耐侯性のよいフッ素樹脂などである。フッ素樹脂の例としては、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)がある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性及び機械的強度の両立では四フッ化エチレン−エチレン共重合体が優れている。また、他の層を構成する材料との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を受光面側保護部材に行うことが望ましい。また、機械的強度向上のために延伸処理が施してあるシート、例えば2軸延伸のポリプロピレンシートを用いることも可能である。
【0174】
表面側保護部材14としてガラス基板を用いる場合、ガラス基板は、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。かかるガラス基板としては、赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングをしてもよい。
【0175】
太陽電池モジュール10〜50に用いられる裏面側保護部材15は、とくに制限はないが、太陽電池モジュール10〜50の最表層に位置するため、上述の受光面側保護部材14と同様に、耐候性、機械強度などの諸特性を求められる。したがって、受光面側保護部材14と同様の材質で裏面側保護部材15を構成してもよい。すなわち、受光面側保護部材14として用いられる上述の各種材料を、裏面側保護部材15としても用いることができる。とくに、ポリエステル樹脂、及びガラスを好ましく用いることができる。また、裏面側保護部材15は、太陽光の通過を前提としないため、受光面側保護部材14で求められる透明性は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュール10の機械的強度を増すために、あるいは温度変化による歪、反りを防止するために、補強板を張り付けてもよい。補強板は、例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板などを好ましく使用することができる。
【0176】
裏面側保護部材15は、本発明の太陽電池封止シートのうち第二の封止シートと一体化していてもよい。第二の封止シートと裏面側保護部材15とを一体化させることにより、モジュール組み立て時に第二の封止シート及び裏面側保護部材15をモジュールサイズに裁断する工程を短縮できる。また、第二の封止シートと裏面側保護部材15とをそれぞれレイアップする工程を、一体化したシートでレイアップする工程にすることで、レイアップ工程を短縮・省略することもできる。第二の封止シートと裏面側保護部材15とを一体化させる場合における、第二の封止シートと裏面側保護部材15の積層方法は、とくに制限されない。積層方法には、キャスト成形機、押出シート成形機、インフレーション成形機、射出成形機などの公知の溶融押出機を用いて共押出して積層体を得る方法や、予め成形された一方の層上に、他方の層を溶融あるいは加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。
【0177】
太陽電池モジュール10〜50に用いられる電極の構成及び材料は、とくに限定されないが、具体的な例では、透明導電膜と金属膜の積層構造を有する。透明導電膜は、SnO
2、ITO、ZnOなどからなる。金属膜は、銀、金、銅、錫、アルミニウム、カドミウム、亜鉛、水銀、クロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、バナジウムなどの金属からなる。これらの金属膜は、単独で用いられてもよいし、複合化された合金として用いられてもよい。透明導電膜と金属膜とは、CVD、スパッタ、蒸着などの方法により形成される。
【0178】
太陽電池素子13は、
図1〜5では、結晶シリコン系のものを例示したが、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば、とくに制限はなく、例えば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)太陽電池、化合物半導体(III−III族、II−VI族、その他)太陽電池、湿式太陽電池、有機半導体太陽電池などを用いることができる。これらの中では、発電性能とコストとのバランスなどの観点から、多結晶シリコン太陽電池が好ましい。
図1の太陽電池モジュールは、結晶シリコン系の太陽電池素子13を薄膜太陽電池素子に換えて、薄膜シリコン系の太陽電池モジュールとすることもできる。
【0179】
本発明の太陽電池封止用シートを用いた太陽電池モジュールの製造方法について、
図1に示す太陽電池モジュール10を例に挙げて以下に説明する。この製造方法は、例えば、
(i)裏面側保護部材15、第二の封止シート、複数の太陽電池素子13、第一の封止シート、及び受光面側保護部材14をこの順に積層した積層体を得る工程;
(ii)該積層体を、ラミネーターなどにより加圧し貼り合わせ、同時に必要に応じて加熱する工程;
(iii)(ii)の工程の後、さらに必要に応じて積層体を加熱処理し、第一、第二の封止シートを硬化して、第一の封止シートから受光面側封止層11、第二の封止シートから裏面側封止層12を得る工程;
により製造することができる。
【0180】
工程(i)において、第一、第二の封止シートに凹凸形状(エンボス形状)が形成されている場合は、凹凸面が太陽電池素子13側になるように配置することが好ましい。
【0181】
工程(ii)においては、工程(i)で得られた積層体を、常法に従って真空ラミネーター、又は熱プレスを用いて、加熱及び加圧して一体化(封止)する。
【0182】
真空ラミネーターを用いる場合、例えば、温度125〜160℃、真空圧300Pa以下の条件で3〜6分間真空・加熱し、次いで、100kPaで加圧を1〜15分間程度行う。その後に、例えば、トンネル式の連続式架橋炉又は棚段式のバッチ式架橋炉を用いて、130〜155℃で20〜60分程度で、第一、第二の封止シートの架橋処理を行っても良い。又は、真空ラミネーターにおける加熱温度を145〜170℃とし、大気圧による加圧時間を6〜30分として、真空ラミネーターで架橋処理も行うこともできる。さらに、この後に、上記と同様にして架橋処理を行っても良い。この架橋処理工程は、工程(ii)と同時に行ってもよいし、工程(ii)の後に行ってもよい。
【0183】
第一、第二の封止シートの架橋処理工程を工程(ii)の後に行う場合、工程(ii)において温度125〜160℃、真空圧1.33kPa以下の条件で3〜6分間真空・加熱し、次いで、大気圧による加圧を1〜15分間程度行い、上記積層体を一体化する。工程(ii)の後に行う架橋処理は、一般的な方法により行うことができ、例えば、トンネル式の連続式架橋炉を用いてもよいし、棚段式のバッチ式架橋炉を用いてもよい。また、架橋条件は、通常、130〜155℃で20〜60分程度である。
【0184】
一方、架橋処理工程を工程(ii)と同時に行う場合、工程(ii)における加熱温度を145〜170℃とし、大気圧による加圧時間を6〜30分とすること以外は、架橋処理工程を工程(ii)の後に行う場合と同様にして行うことができる。
【0185】
太陽電池モジュール10の製造は、架橋剤が実質的に分解せず、かつ本発明の第一、第二の封止シートが溶融するような温度で、太陽電池素子13及び受光面側保護部材14に第一の封止シートを仮接着し、太陽電池素子13及び裏面保護部材15に第二の封止シートを仮接着し、次いで昇温して十分な接着と封止シートの架橋を行えばよい。諸条件を満足できるような添加剤処方を選べばよく、例えば、上記架橋剤及び上記架橋助剤などの種類及び含浸量を選択すればよい。
【0186】
このようにして製造した太陽電池モジュール10の外枠にアルミフレームなどを設けて強度を保持してもよい。また、安全上の観点からアルミフレームはアース(接地)させることが好ましい。前述の太陽電池モジュールは、数台から数十台を直列につなぎ、住宅用の小規模な太陽電池システムや、メガソーラーと呼ばれる大規模な太陽電池システムを構築することもできる。
【0187】
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の部材を適宜有してもよい。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層などを設けることができるが、これらに限定されない。これらの層を設ける位置にはとくに限定はなく、そのような層を設ける目的、及び、そのような層の特性を考慮し、適切な位置に設けることができる。
【0188】
また、適当な接着剤(例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(三井化学社製の商品名「アドマー(登録商標)」、三菱化学社製の商品名「モディック(登録商標)」など)、不飽和ポリオレフィンなどの低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸三元共重合体(住化シーディエフ化学社製の商品名「ボンダイン(登録商標)」など)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体、又はこれらを含む接着性樹脂組成物など)を用いたドライラミネート法、あるいはヒートラミネート法などにより積層してもよい。
【0189】
接着剤としては、120〜150℃程度の耐熱性があるものが好ましく、具体的にはポリエステル系又はポリウレタン系接着剤などが好ましい。また、二つの層の接着性を向上させるために、少なくとも一方の層に、例えばシラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理などを施してもよい。
【0190】
本発明の太陽電池モジュールは、生産性、発電効率、寿命などに優れている。このため、この様な太陽電池モジュールを用いた発電設備は、コスト、発電効率、寿命などに優れ、実用上高い価値を有する。上記の発電設備は、家屋の屋根に設置する、キャンプなどのアウトドア向けの移動電源として利用する、自動車バッテリーの補助電源として利用するなどの、屋外、屋内を問わず長期間の使用に好適である。
【0191】
この太陽電池モジュールによれば、極性基を有する封止層を有するため、使用時に温度上昇することで発生するガスを封止層で吸収することができるため、封止層が変形したりするようなトラブルを回避することができ、太陽電池の外観を損なうこともなく、セルの割れを防止することができ、コストなどの経済性にも優れる。また、この太陽電池モジュールによれば、受光面側に抵抗の高い封止層を有するため、太陽電池アレイとした際に、フレームと太陽電池素子間に高電圧を印加した状態を維持しても、PIDの発生を大幅に抑制することがきる。
【0192】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例1】
【0193】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0194】
(1)各種の測定方法
[MFR]
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件にて測定した。
【0195】
[アルミニウム元素の含有量]
エチレン・α−オレフィン共重合体を湿式分解した後、純水にて定容し、ICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−8100)により、アルミニウムを定量し、アルミニウム元素の含有量を求めた。
【0196】
[ショアA硬度]
エチレン・α−オレフィン共重合体を190℃、加熱4分、10MPaで加圧した後、10MPaで常温まで5分間加圧冷却して3mm厚のシートを得た。得られたシートを用いて、ASTM D2240に準拠してエチレン・α−オレフィン共重合体のショアA硬度を測定した。
【0197】
[密度]
ASTM D1505に準拠して、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度を測定した。
【0198】
[体積固有抵抗]
太陽電池封止シートの第一、第二の封止シートをそれぞれ10cm×10cmのサイズに裁断した後、150℃、真空圧250Paで3分、150℃、加圧圧力100kPaで15分の条件下、ラミネート装置(NPC社製、LM−110X160S)でラミネートして測定用の架橋シートを作製した。作製した架橋シートの体積固有抵抗(Ω・cm)を、JIS K6911に準拠し、印加電圧500Vで測定した。なお、測定時、高温測定チャンバー「12708」(アドバンスト社製)を用いて温度100±2℃とし、微小電流計「R8340A」(アドバンスト社製)を使用した。
【0199】
[アセトン、t−ブタノールの吸収率]
太陽電池封止シートの第一、第二の封止シートをそれぞれ10cm×10cmのサイズに裁断した後、150℃、真空圧250Paで3分、加圧圧力100kPaで15分の条件下、ラミネート装置(NPC社製、LM−110X160S)でラミネートして測定用の厚さ0.5mmの架橋シートを作製した。得られた架橋処理後のシートを密閉容器の入るように切断し、精密天秤で約1gを秤量した。秤量後、シートを100mlの密閉容器にアセトンを10mlに、23℃、1時間浸漬した。1時間後、キムワイプなどでシート表面に付着しているアセトンをふき取り、試験後のシートを精密天秤で秤量した。この試験前後の重量差より、アセトンの吸収率を算出した。t−ブタノールについては、t−ブタノールの浸積温度を30℃に変更した以外は同様にして、t−ブタノールの吸収率を算出した。
【0200】
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体の合成
(合成例1)
撹拌羽根を備えた内容積50Lの連続重合器の一つの供給口に、共触媒としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液を8.0mmol/hr、主触媒としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドのヘキサンスラリーを0.025mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を0.5mmol/hrの割合で供給し、触媒溶液と重合溶媒として用いる脱水精製したノルマルヘキサンの合計が20L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給した。同時に重合器の別の供給口に、エチレンを3kg/hr、1−ブテンを15kg/hr、水素を5NL/hrの割合で連続供給し、重合温度90℃、全圧3MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、重合器の底部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液が150〜190℃となるように、ジャケット部が3〜25kg/cm
2スチームで加熱された連結パイプに導いた。なお、連結パイプに至る直前には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約0.75L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液に合流させた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約190℃に保温されたエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、約4.3MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液された。なお、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.1MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定が行われた。その後、ダイス温度を180℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。収量は2.2kg/hrであった。物性を表1に示す。
【0201】
(合成例2)
主触媒としてビス(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンズ(b,h)−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサン溶液を0.003mmol/hr、共触媒としてのメチルアルミノキサンのトルエン溶液を3.0mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を0.6mmol/hrの割合でそれぞれ供給したこと;エチレンを4.3kg/hrの割合で供給したこと;1−ブテンの代わりに1−オクテンを6.4kg/hrの割合で供給したこと;1−オクテンと触媒溶液と重合溶媒として用いる脱水精製したノルマルヘキサンの合計が20L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給したこと;水素を60NL/hrの割合で供給したこと;及び重合温度を130℃にしたこと以外は、合成例1と同様にしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。収量は4.3kg/hrであった。物性を表1に示す。
【0202】
(合成例3)
水素を1.8NL/hrの割合で供給したこと以外は、合成例1と同様にしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。収量は2.1kg/hrであった。物性を表1に示す。
【0203】
【表1】
【0204】
(3)第一、第二の封止シート
(製造例1)
合成例1のエチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤(A)としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部、有機過酸化物として1分間半減期温度が166℃のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを1.0重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを1.2重量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4重量部、ラジカル捕捉剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.2重量部、及び耐熱安定剤1としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部、耐熱安定剤2としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1重量部を配合した。サーモ・プラスチック社製の単軸押出機(スクリュー径20mmφ、L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状:270×0.8mm)を装着し、ダイス温度100℃の条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで、第1冷却ロールにエンボスロールを用いて成形を行い、厚み0.5mmのエンボス加工された封止シートを得た。得られたシートの空隙率は28%であった。体積固有抵抗率、アセトン吸収率、t−ブタノール吸収率を表2に示す。
【0205】
(製造例2)
表2示す配合とした以外は製造例1と同様にしてエンボス加工された封止シートを得た。得られたシートの空隙率はいずれも28%であった。体積固有抵抗率、アセトン吸収率、t−ブタノール吸収率を表2に示す。
【0206】
(製造例3)
合成例3のエチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し、シランカップリング剤(A)としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部、有機過酸化物として1分間半減期温度が166℃のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを0.6重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを1.2重量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4重量部、ラジカル捕捉剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.2重量部、耐熱安定剤1としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部、耐熱安定剤2としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.1重量部、シランカップリング剤(B1)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2重量部を配合した。
【0207】
表面温度を100℃に調整した、東洋精機社製のミキシングロール(二本ロール、ロール径:5インチ、回転数:18,15rpm)に、上記で配合したエチレン系組成物を100g仕込み、カレンダーロールでの成形を行い、厚み500μmのカレンダーシート(太陽電池封止シートシート)を得た。体積固有抵抗率、アセトン吸収率、t−ブタノール吸収率を表2に示す。
【0208】
(製造例4)
ビニル酢酸を26重量%含有し、MFRが15g/10分であるエチレン・ビニル酢酸重合体100重量部に対し、下記に示す添加剤を配合し、100℃で5分間、30rpmの条件で、ラボプラストミル(東洋精機社製)で混練し、エチレン・ビニル酢酸重合体を含む樹脂組成物(表2中EVA)を得た。真空ラミネーターを用いて、得られた組成物を厚み0.5mmの25×25センチの開口部をもつSUS製の金属枠を用いて枠の内部のシートをセットし、熱盤温度100℃で真空時間3分、加圧時間10分にて、厚み0.5μmの平坦な封止シートを作製した。体積固有抵抗率、アセトン吸収率、t−ブタノール吸収率を表2に示す。
<有機過酸化物> 2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 1.3重量部
<架橋助剤> トリアリルイソシアヌレート 1.5重量部
<シランカップリング剤(A)> γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.3重量部
<ラジカル捕捉剤> ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート 0.1重量部
<紫外線吸収剤> 2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン 0.2重量部
<耐熱安定剤3> ブチルヒドロキシトルエン 0.01重量部
<シランカップリング剤(B1)> 3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.25重量部
<受酸剤2> 水酸化マグネシウム 0.62重量部
<着色剤>酸化チタン 5重量部
【0209】
(製造例5〜12)
表2示す配合とした以外は製造例4と同様にして平坦な封止シートを得た。体積固有抵抗率、アセトン吸収率、t−ブタノール吸収率を表2に示す。
【0210】
【表2】
【0211】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
製造例1〜13の封止シートを表3で示すように組み合わせて一対の太陽電池封止シートを用意し、下記で示すようにモデルのモジュールを作製して、「PID評価」、「気泡」、「太陽電池素子の割れ」について評価した。結果を表3に示す。また、第一の封止シートの体積固有抵抗R
1と第二の封止シートの体積固有抵抗R
2との比(R
1/R
2)、第二の封止シートのアセトンの吸収率(A
2)と第一の封止シートのアセトンの吸収率(A
1)との差(A
2−A
1)、及び、第二の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
2)と第一の封止シートのt−ブタノールの吸収率(B
1)との差(B
2−B
1)も合わせて表3に示した。
【0212】
(5)評価
[PID評価]
第一の封止シートを受光面側保護部材と太陽電池素子との間にセットし、太陽電池素子と裏面側保護部材との間には、第二の封止シートをセットして、真空ラミネータを用いて太陽電池モジュールを作製し、PID評価を実施した。評価用モジュールに用いた構成は、太陽電池素子として単結晶セルを用い18セル直列接続した小モジュールとした。受光面側保護部材には、24×21cmにカットした旭硝子ファブリテック社製の白板フロートガラス3.2mm厚みのエンボス付き熱処理ガラスを用いた。太陽電池素子は、受光面側のバスバー銀電極を中央にして5×3cmにカットしたセル(Shinsung Solar社製の単結晶セル)を用いた。このセルを銅箔に共晶ハンダを表面コートされた銅リボン電極を用いて18セル直列接続した。裏面側保護部材として、シリカ蒸着PETを含むPET系バックシートを用い、バックシートの一部にセルからの取り出し部位にカッタ−ナイフで約2cm切り込みを入れ18セル直列接続したセルのプラス端子とマイナス端子を取り出し、真空ラミネータ(NPC社製:LM−110x160−S)を用いて熱盤温度150℃、真空時間3分、加圧時間15分にてラミネートした。その後、ガラスからはみ出した封止シート、バックシートをカットし、ガラスエッジには端面封止シートを付与して、アルミフレームを取り付けた後、バックシートから取り出した端子部分の切れ込み部位はRTVシリコーンを付与して硬化させた。このミニモジュールのプラス端子とマイナス端子を短絡し、電源の高圧側ケーブルを接続した。また電源の低圧側のケーブルはアルミフレームに接続し、アルミルレームは接地した。このモジュールを85℃、85%rhの恒温恒湿槽内にセットし、温度上昇を待った後、−600Vを印加し、240時間電圧を印加したまま保持した。高圧電源には、松定プレシジョン社製HARb−3R10−LFを用い、恒温恒湿槽にはエタック社製FS−214C2を用いた。試験後、このモジュールをAM(エアマス)1.5クラスAの光強度分布を有するキセノン光源を用いIV特性を評価した。IV評価には日清紡メカトロニクス社製のPVS−116i−Sを用いた。
評価結果は、以下の通りに分類した。
PID試験後のIV特性の最大出力電力Pmaxが初期値と比べて
出力電力の低下が5%以下 :○
出力電力の低下が5%超過 :×
【0213】
[PCT試験]
上記、PID試験と同様にミニモジュールを作成後、温度121℃、湿度100%RHのプレッシャークッカー(PCT)試験層に、ミニモジュールを1000時間放置した。試験前後のミニモジュールを上記PID試験と同様にIV特性を評価した。
評価結果は、以下の通りに分類した。
PCT試験後のIV特性の最大出力電力Pmaxが初期値と比べて
出力電力の低下が10%以下 :○
出力電力の低下が10%超過 :×
【0214】
[気泡]
青色ガラス(3mm厚み×12cm×7.5cm)の上に、第一の封止シートを置き、ついでその上に、3cm角に切った厚さ0.2mmのアルミ板を2cmの間隔をおいて2枚置き、1cm幅×3cm長さのポリテトラフルオロエチレン基材製の粘着テープで止めた。次いでその上に、第二の封止シートをさらに置き、最後にPET系バックシートを重ねて、150℃、真空圧250Paで3分、加圧圧力100kPaで15分の条件下、ラミネート装置(NPC社製、LM−110X160S)で貼り合わせを行い架橋・接着をした後の外観を観察した(初期膨れ)。さらに、130℃のオーブンに入れ、1時間の耐熱試験を実施した後の外観を観察した(耐熱試験後膨れ)。以下の基準に従って気泡発生を評価した。
○:とくに外観変化無し
△:粘着テープを貼った箇所にわずかな形状変化が発生
×:粘着テープを貼った箇所に膨れが発生
【0215】
[太陽電池素子の割れ]
厚さ150μmのシリコン型太陽電池素子をインゴットより切削採取し、白板ガラス/第一の封止シート/シリコン型太陽電池素子/第二の封止シート/PET製バックシートの構成で、150℃、真空圧250Paで3分、加圧圧力100kPaで15分の条件下、ラミネート装置(NPC社製、LM−110X160S)で張り合わせを行い積層体を得た。得られた積層体内のシリコン型太陽電池素子を目視観察し、割れを評価した。
【0216】
[接着強度]
太陽電池用の表面側透明保護部材である透明ガラス板と、厚さ500μmのシートサンプルと、0.5cm幅の銅板に水溶性フラックス(NH−120KM、(株)アサヒ化学研究所製)を塗布し120℃のオーブンで30分間乾燥してハンダを塗布した擬似金属電極と、シリカ蒸着PETを含むPET系バックシートとを、透明ガラス板/第一の封止シート/擬似金属電極/第二の封止シートシートサンプル/PET系裏面保護部材の順に積層して真空ラミネーター(NPC社製、LM−110X160S)内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて3分間減圧、15分間加熱した。その後、150℃のオーブンにて30分架橋し、透明ガラス板/シートサンプル/擬似金属電極/シートサンプル/PET系裏面保護部材の積層体である接着強度用サンプルを作製した。
【0217】
この接着強度用サンプルより擬似金属電極に沿ってシートサンプル層を0.5cm幅に切り、第二の封止シート/PET系裏面保護部材を引張り、第二の封止シートと擬似金属電極との接着強度を180度ピールにて測定した。測定には、インストロン社製の引張試験機(商品名「Instron1123」)を使用した。180度ピールにて、スパン間30mm、引張速度30mm/分で23℃にて測定を行い、3回の測定の平均値を採用した。
【0218】
[恒温恒湿(DH)試験後の接着強度]
上記の得られた積層体を、JIS C8917に準拠し、ヤマト科学社製の恒温恒湿槽「IW241」にて、試験槽内温度95℃、湿度95%の条件下で積層体の促進試験を100時間行った。
得られた促進試験サンプルを、上記と同様にして接着強度を測定した。
【0219】
【表3】
【0220】
実施例1〜5は、図面中の〔
図1〕に示すモジュールについての評価である。本発明者らは、実施例3の封止用シートセット(すなわち、製造例3を第一の封止シートとし、製造例4を第二の封止シートとするシートセット)について、〔
図2〕〜〔
図5〕で示された構造を有する太陽電池モジュールを作製した場合であっても、〔
図1〕のモジュールと同様にPID現象がみられず、PCT試験後においても出力変化が10%以下であり、気泡の発生や素子の割れもないことを確認している(なお、第二の封止シートを受光面側に用いる場合には、酸化チタンを抜いた配合で実施した)。また、〔
図3〕および〔
図5〕のモジュールの場合では、ガラスと封止層との接着性が特に優れていることも確認している。