【実施例】
【0011】
〔実施例1〕
〔実施例1の構成〕
実施例1のバルブ装置1を、
図1〜4を用いて説明する。
まず、本実施例のバルブ装置1が適用されるコモンレール式燃料噴射装置2について説明する。
コモンレール式燃料噴射装置2は、ディーゼルエンジン(以下、エンジンEと呼ぶ)の燃焼室に燃料を供給するために用いられるものである。
【0012】
コモンレール式燃料噴射装置2は、高圧ポンプ3から吐出された燃料を高圧状態で蓄圧するコモンレール4、コモンレール4に蓄圧された燃料をエンジンの気筒内に噴射するインジェクタ5等を備える。
【0013】
高圧ポンプ3は、コモンレール4の燃料がエンジンの状態に応じた目標圧力で蓄圧されるように、燃料タンク6の燃料を吸入して加圧し吐出するものである。
【0014】
コモンレール4は、高圧ポンプ3の吐出口と高圧配管7を介して接続され、加圧された燃料の供給を受けて燃料を高圧状態で蓄圧するとともに、インジェクタ5と高圧配管8を介して接続され、燃料をインジェクタ5に供給する。すなわち、コモンレール4は、高圧の燃料を蓄圧する蓄圧容器として機能するとともに、高圧の燃料をインジェクタ5に分配する分配容器として機能する。
【0015】
コモンレール4には、減圧弁を介してコモンレール4から燃料タンクへ燃料を戻す低圧配管9が接続されている。
減圧弁は、コモンレール内の圧力の減圧を行う電磁弁であって、本実施例のバルブ装置1である。以下、バルブ装置1を減圧弁1と呼ぶ。
【0016】
次に、減圧弁1の構成を説明する。減圧弁1の断面図においては、図示右側を軸方向一端側もしくは後端側、図示左側を軸方向他端側もしくは先端側という。
【0017】
減圧弁1は、ハウジング11内で軸方向に摺動自在に支持されるロッド12と、ロッド12に軸方向の変位力を与えるアクチュエータ13と、ロッド12の先端に設けられ、ロッド12の変位力が付与される弁体14と、弁体14を収容するバルブ室15と、バルブ室15に開口し、弁体14により開閉される第1ポート16と、バルブ室15に開口し、第1ポート16が開放された際にバルブ室15を介して第1ポート16と連通する第2ポート17と、ロッド12を摺動自在に支持する軸受部材18とを備える。
【0018】
ハウジング11は、内部に貫通穴21を有するスリーブ部22と、スリーブ部22の軸方向一端側で貫通穴21に連通すると共に貫通穴21よりも径大な貫通穴23を有する径大筒部24と、径大筒部24の軸方向一端(後端)の開口を塞ぐカバー25と、スリーブ部22の軸方向他端(先端)に嵌め込まれるシート部材26とを備える。
【0019】
スリーブ部22にはロッド12が収容され、径大筒部24には主にアクチュエータ13が収容される。
スリーブ部22はコモンレール4の端部に形成された凹部4aに挿入され、螺子締結される。
【0020】
シート部材26は、スリーブ部22とは別体であり、略円盤形状を呈している。そして、その中心部は、スリーブ部22側に開口しており、スリーブ部22の軸方向他端部とともに弁体14を収容するバルブ室15を形成している。
シート部材26には、後に詳述する第1ポート16が開口しており、第1ポート16の開口縁には、弁体14が着座する弁座26aが形成されている。
【0021】
ロッド12は、例えば、ステンレス鋼等の非磁性材料によって形成された円柱棒状のシャフトであり、スリーブ部22に挿通されて、スリーブ部22内に配される軸受部材18によって軸方向に摺動自在に支持される。ロッド12の先端部12aには、先端に向かうほど小径となるテーパ面12bが形成されるとともに、ロッド12の先端は軸方向に垂直な平面12cが形成されている。
【0022】
弁体14は、例えば、ロッド12の軸方向他端側に配置されたボール弁であり、ロッド12の先端に形成された平面12c(ボール押圧面)により、軸方向他端側へ押し付けられて、弁座26aに着座するものである。なお、本実施例では、ロッド12の先端に配置した弁体14が第1ポート16を開閉するものであるが、ロッド12の先端に直接弁体を形成し、ロッド12が直接、第1ポート16を開閉する構成であってもよい。
【0023】
バルブ室15は、上述のように、シート部材26とスリーブ部22の軸方向他端部とで形成されており、内部には弁体14及び弁体14を押圧するロッド12の先端部12aが収容される。
具体的には、後述する軸受部材18によってロッド12が支持されている位置よりも先端側で、弁体14及びロッド12の回りに流体が自由に流れることのできる空間をバルブ室15と呼ぶ。
【0024】
第1ポート16は、シート部材26にロッド12と同軸に貫通して形成されている。第1ポート16は、バルブ室15とコモンレール4内とを連通する開口である。
【0025】
第2ポート17は、バルブ室15を形成するスリーブ部22の側壁に開口している。第2ポート17は、バルブ室15と低圧配管9との間を連通する開口である。
なお、本実施例では、凹部4aの内周面と凹部4a内に挿入されたスリーブ部22の外周面との間に空間28が形成されており、この空間28が低圧配管9に連通している。そこで、第2ポート17はこの空間28に連通するように設けられている。
【0026】
軸受部材18は、例えば、ステンレス鋼等の非磁性材料によって円筒状に形成されており、貫通穴21内に例えば圧入固定されている。軸受部材18は、ロッド12を所定の摺動クリアランス30を介して軸方向に摺動自在に支持する(
図3参照)。
【0027】
本実施例では、軸受部材18は、ロッド12の軸方向中央よりも先端側(軸方向他端側)に配される第1軸受18Aと、ロッド12の軸方向中央よりも後端側(軸方向一端側)に配されてロッド12の後端部12dを支持する第2軸受18Bとを有している。
【0028】
アクチュエータ13は、ロッド12を介して弁体14を駆動するものであり、電磁アクチュエータである。
アクチュエータ13は、通電時に磁界を形成するソレノイドコイル35と、ソレノイドコイル35への通電により励磁されて軸方向一端側に磁気吸引されるアーマチャ36と、アーマチャ36の軸方向一端側に配されて、アーマチャと共に磁気回路を形成するアッパーステー37と、アーマチャ36を開弁方向(軸方向一端側)に付勢するスプリング38とを備える。ソレノイドコイル35、アーマチャ36、及びアッパーステー37は径大筒部24の内周に収容される。
【0029】
アーマチャ36は、磁性部材(例えば、鉄などの強磁性材料)で形成されており、ロッド12に固定されている。
【0030】
アッパーステー37は、磁性部材(例えば、鉄などの強磁性材料)で形成されており、軸方向他端側に開口する有底円筒状を呈しており、ソレノイドコイル35内に配されている。アッパーステー37の筒内周には、アーマチャ36が配され、アーマチャ36の軸方向一端面はアッパーステー37の底部37aと軸方向に対向している。
なお、貫通穴21と貫通穴23の間に形成されるハウジング11の段部11aは、アーマチャ36の軸方向他端面に軸方向に対向しており、ソレノイドコイル35、ハウジング11、アーマチャ36、アッパーステー37によって磁気回路が形成される。
【0031】
〔減圧弁の作動〕
この減圧弁1は、ノーマリオープンタイプであって、ソレノイドコイル35に通電されていない状態では、スプリング38によって、アーマチャ36が開弁方向に付勢されている。このとき、弁体14にはロッド12からの押圧力を受けないので、弁体14は弁座26aから離座しており、第1ポート16が開放されている。そして、第1ポート16から流入する燃料は、バルブ室15、第2ポート17を通って、低圧配管9へと流れる。これにより、コモンレール圧が低下する。
【0032】
そして、ソレノイドコイル35に通電されると、スプリング38の付勢力に抗してアーマチャ36が軸方向他端側へ吸引され、アーマチャ36と共にロッド12が軸方向他端側へ移動して、弁体14がロッド12に押圧されて、着座する。これにより、第1ポート16が閉鎖されて、低圧配管9への燃料の流出が停止する。これにより、コモンレール圧が上昇する。
【0033】
〔本実施例の特徴〕
減圧弁1は、軸受部材18の先端側で、ロッド12との間に摺動クリアランス30よりも大きい所定のクリアランス41を有してロッド12外周に配される筒状部材40を備える。
【0034】
筒状部材40は、例えば、ステンレス鋼等の非磁性材料によって筒状に形成されており、第1軸受18Aよりも軸方向他端側の貫通穴21内に圧入固定されて、ロッド12の周囲を囲う。
筒状部材40は、バルブ室15を形成する貫通穴21の軸方向他端部内に装着されている。本実施例では、筒状部材40の軸方向他端が第2ポート17の開口の軸方向一端よりも軸方向他端側に位置しており、筒状部材40の軸方向他端部は第2ポート17の開口との干渉を防ぐ形状を呈している。例えば、軸方向他端部に径小にして、第2ポート17の開口と筒状部材40の外周との間に流路を形成できるようにしている。
【0035】
筒状部材40の内径は、軸受部材18の内径よりも大きく、ロッド12との間の径方向のクリアランス41の大きさは、摺動クリアランス30よりも大きい。すなわち、この筒状部材40は、軸受部材18としては機能しない。このため、筒状部材40は、摺動性を考慮する必要がないため、摺動性に劣る高硬度材料を使用することもできる。高硬度材料を使用するなら、高流速且つ高温燃料に晒される環境下でも、耐久性を向上させることができる。
【0036】
〔実施例1の効果1〕
本実施例では、筒状部材40によって、第1軸受18Aよりも先端側のロッド12の先端部12aが覆われる。
また、ロッド12の先端部12aには、先端に向かうほど小径となるテーパ面12bが形成されるとともに、ロッド12の先端は軸方向に垂直な平面12cが形成されている。さらに、テーパ面12bが形成される部分は、アクチュエータ13の動作、および、筒状部材40の内周に収まっているか否かの点で次の2つの部分に分かれる。すなわち、テーパ面12bが形成される部分の内、軸方向他端側(先端側)の部分は、アクチュエータ14の動作にかかわらず、常時、筒状部材40の内周から先端側に突き出ている。また、この部分の軸方向一端側(後端側)の部分は、アクチュエータ13の動作により、筒状部材40の内周から先端側に突き出たり、筒状部材40の内周に戻ったりする。そして、これら2つの部分は、ロッド12の内、軸受部材18によって支持される部分よりも、外径が小さい。そして、筒状部材40は、第1ポート16から第2ポート17へ燃料が流れることによって生じるバルブ室15内の流れからロッド12の先端部12aを保護する保護壁の役割を果たす。
【0037】
この筒状部材40の存在によって、バルブ室15内に形成される流れが直接ロッド12に衝突しにくくなる。すなわち、筒状部材40でロッド12を覆うことによって、バルブ室内の流れに晒されるロッド12の側面積を小さくすることが可能となり、結果として、ロッド12に作用する横力を低減することができる。
なお、本実施例では、テーパ面12bがバルブ室内の流れに晒されるが、テーパ面12bであるため、受ける横力は小さく、摺動抵抗に影響を与える程のものではない。
【0038】
なお、
図5に示すように、従来の減圧弁1Jでは、筒状部材40が設けられていないため、バルブ室15内の流れに晒されるロッドの側面積が大きく、ロッド側面に横力が大きく作用してしまう。横力によりバランスが崩れると、ロッド12が径方向のいずれかの方向に変位して、ロッド12が軸受部材18の内周面に当接してしまう(
図5の二点鎖線参照)。この状態でソレノイドコイル35に通電されると、摺動抵抗が大きい状態でロッド12がアーマチャ36と共に動くことになるため、同じ通電量でも、変位速度等が正常な場合とは変化してしまう。このため、
図6に示すように、減圧弁作動時の電流−コモンレール圧特性のヒステリシスを生じてしまう。
【0039】
本実施例では、筒状部材40を設けることで、横力を低減できるため、バルブ室15内の流れの影響で軸受部材18とロッド12との摺動抵抗が大きくなることはない。そのため、
図4に示すように、減圧弁作動時の電流−コモンレール圧特性のヒステリシスを改善することができる。
【0040】
〔実施例1の効果2〕
本実施例では、ロッド12、軸受部材18、筒状部材40が非磁性材料である。
ソレノイドコイル35への通電時にアーマチャ36を吸引するための磁気回路が形成される際、ロッド12、軸受部材18、筒状部材40を通過する磁気回路が形成されてしまうと、磁気吸引力が低下してしまう。そこで、ロッド12、軸受部材18、筒状部材40を非磁性材料とするならば、ロッド12、軸受部材18、筒状部材40を通過する磁気回路が形成されない。
なお、ロッド12、軸受部材18、筒状部材40の全てが非磁性材料でなくてもよく、ロッド12のみ非磁性材料であってもよい。また、軸受部材18と筒状部材40のみ非磁性材料であってもよい。
【0041】
〔実施例2〕
実施例2の減圧弁1を、実施例1とは異なる点を中心に、
図7、8を用いて説明する。
本実施例では、筒状部材40は設けられておらず、ロッド12のバルブ室15に露出する部分の外径が、軸受部材18によって支持されるロッド12の後端部12dの外径よりも小さい。
すなわち、アクチュエータ13の動作により、軸受部材18の内周から先端側に突き出たり、軸受部材18の内周に戻ったりする部分、および、アクチュエータ13の動作にかかわらず、常時、軸受部材18の内周から先端側に突き出ている部分は、後端部12dよりも、外径が小さい。
【0042】
なお、
図7に示すロッド12は、第1軸受18Aに支持される部分と第2軸受18Bに支持される部分が同一の外径であり、バルブ室15に露出する部分のみ細くされている。
また、
図8に示すロッド12は、第2軸受18Bに支持される後端部12dよりも先端側が全て、後端部12dの外径よりも小さくなっている。
いずれの場合も、バルブ室15内の流れに晒されるロッド12の側面積を小さくすることができるので、ロッド12に作用する横力を低減することができる。
【0043】
〔変形例〕
実施例1では、軸受部材18が、第1軸受18Aと第2軸受18Bとを有してしたが、
図9に示すように、軸受部材18が1つ円筒部材からなっていてもよい。
また、
図10に示すように、軸受部材18と筒状部材40とがハウジング11と一体に形成されていてもよい。
【0044】
また、実施例1と実施例2とを組み合わせて、筒状部材40を設けるとともに、ロッド12のバルブ室15に露出する部分の外径を細くしてもよい。
【0045】
また、実施例では、減圧弁1はノーマリオープンタイプであったが、ノーマリクローズタイプであってもよい。
また、アクチュエータは、ソレノイドコイル35を利用したものに限らず、例えば、ピエゾ素子を用いたピエゾアクチュエータであってもよい。
【0046】
また、実施例では、減圧弁1に本発明を適用した例を示したが、これに限らず、ロッド12が軸方向に摺動することによって開閉される構造の様々なバルブ装置に適用することができる。