(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ケーシング本体に前記カバーを固定する構造として、前記爪部を用いた構造とは別の係合構造を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の送風機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2に記載の構造では、係合部に爪部分を係合させ、カバーをケーシング本体に結合させる。この構造において、爪部が樹脂で構成されている場合、爪部が弾性変形するので、カバーをケーシング本体に押し付けるだけで両者の結合を行うことができる。
【0005】
例えば、送風機は、各種の電子機器の冷却用に利用されるが、近年各種の電子機器の小型化および高実装密度化が要求されており、送風機の設置スペースも制限されている。上述した爪部を樹脂で構成する場合、強度を確保するために爪部の厚みをある程度(例えば1mm以上)確保する必要がある。また補強構造とする必要から、実際には、更に厚みを持った形状とする必要がある。これらのことは、送風機の設置スペースが制限されているなかで余分なスペースを必要とし、好ましくない。
【0006】
また、爪部を樹脂で構成し、カバーに爪部を設けた場合、カバーを樹脂で構成しなくてはならないが、そうすると、カバーを射出成型で形成しなくてはならず、金型費用の点でコスト高となり、更に生産性の点でもコスト高となる。
【0007】
ところで、カバーを板金で作製すると、爪部の強度が得られるので、上記の厚み寸法の点で有利となる。また、爪部を有したカバーをプレス成型で製造することができるので、樹脂を用いた場合に比較して低コスト化が図れる。しかしながら、爪部を金属で構成した場合、カバーをケーシング本体に押し付けた際に爪部が塑性変形し易く、カバーの装着作業の後に、爪部の変形を元に戻す追加の作業が必要となる。
【0008】
このような背景において、本発明は、爪部を有する金属板で構成されたカバーをケーシング本体に結合させた際に、金属製の爪部が塑性変形せずに爪部の係合が行われる送風機の構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、内部に回転する羽根が収められ、底面および側面を有し、前記側面に排気口が設けられたケーシング本体と、吸気口が設けられ、前記ケーシング本体の前記底面と前記羽根を挟んで対向するように配置された金属製のカバーとを備え、前記ケーシング本体は、前記側面に設けられた突起および該突起から周方向に離間したガイド部を有し、前記カバーは、当該カバーの縁から前記回転する羽の軸方向に延長する根元部および該根元部から周方向に延長し、先端が束縛されていない爪部を有し、前記根元部が前記ガイド部に係合
すると共に前記爪部が前記突起に軸方向において引っ掛かった状態で係合することで前記ケーシング本体
に前記カバー
が装着されていることを特徴とする送風機である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、片持ち構造の爪部が根元部を支点として弾性変形しつつ突起を乗り越え、突起に係合する。この構造によれば、爪部を薄い金属板で構成することができる。また、爪部を金属で構成することで、強度を得るための厚みのある補強構造を採用する必要がない。また、爪部は弾性変形しつつ突起を乗り越えるので、突起を乗り越えた後、変形が元に戻り、突起への爪部の係合が生じる。このため、塑性変形が生じた場合に必要な変形を元に戻す作業が必要とされない。なお、周方向とは、ケーシング本体の外周に沿った方向であり、その方向には、直線方向および直線でない曲線方向の両方が含まれる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ガイド部は、前記軸方向に延長するガイド溝を有し、前記根元部は、前記ガイド溝に嵌ることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、ガイド溝に嵌った根元部の部分が支点となり、爪部の先端が変位するように爪部が撓って変形するので、爪部の弾性変形を効果的に生じさせることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記突起は、前記カバーから離れるにしたがって上がる形状の斜面を有していることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記爪部の
軸中心側の面は、前記斜面に沿った方向に傾斜していることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記根元部には、軸方向に延長する切り込みが設けられていることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、爪部の弾性変形がより生じ易くなる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、前記ケーシング本体に前記カバーを固定する構造として、前記爪部を用いた構造とは別の係合構造を更に有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ケーシング本体にカバーを結合させた際に、爪部が塑性変形せずに係合が行われる送風機の構造が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1の実施形態
(送風機の構造)
図1には、実施形態の送風機10が示されている。送風機10は、遠心ファンであり、ケーシング本体20とカバー40によりケーシング70が構成されている。ケーシング本体20は、射出成型法で製造された樹脂製であり、軸方向における長さの短い略筒状の形状を有している(
図2(A)参照)。ケーシング本体20は、底面20aと側面20bを備えている。底面20aには、吸気口21が設けられている。側面20bは、湾曲した構造を有し、また閉じておらず、排気口となる符号23で示される開口部を有している。ケーシング本体20の底面20aと対向する部分、すなわち図の上方の部分は、開放された構造の開放部とされている。この開放部の部分、すなわちケーシング本体20の底面20aと後述する羽根31を挟んで対向する位置にカバー40が取り付けられている。
【0019】
カバー40は、厚さ0.35mm〜0.5mmの金属板(例えば鋼鈑)をプレス加工したもので、吸気口22を有し、ケーシング本体20上方の開放部に蓋をする略平板状の形状を有している(
図3(A)参照)。
図1に示すように、ケーシング本体20とカバー40とは、2カ所の係合部40および60において係合し、互いに結合している。係合部40および60の詳細については後述する。
【0020】
ケーシング70は、下面に吸気口21、上面に吸気口22が設けられ、側面に排気口23が設けられている。内部のファンが回転することで、吸気口21,22から気体が吸い込まれ、排気口23から気体が排出される。ケーシング本体20の底面20aには、筒形状のベース部24が一体に形成されている。ベース部24には、ステータコア25が固定されている。ステータコア25は、ラジアル方向に突出した複数の突極を有した環状に加工された電磁鋼鈑を複数枚積層した構造を有している。
図1には、ステータコア25の突極の断面の部分が見えている。ステータコア25には、樹脂製のインシュレータ26が装着されている。ステータコア25の複数の突極のそれぞれには、インシュレータ26を介してステータコイル(駆動コイル)27が巻回されている。
【0021】
ステータコア25の突極の外周面(突極面)に対向し、そこから隙間を有した位置にロータマグネット28が配置されている。ロータマグネット28は、筒形状を有した永久磁石であり、周方向にそってSNSN・・と極性が交互に反転するように着磁されている。ロータマグネット28は、磁性材料で構成された筒形状のロータヨーク29の内側に固定されている。
【0022】
ロータヨーク29は、カップ形状のロータ部材30の内側に固定されている。ロータ部材30は、樹脂を原料とした射出成型法により形成されている。ロータ部材30には、遠心ファンを構成する羽根31が一体に成形されている。ロータ部材30の中心には、シャフト32が固定されている。シャフト32は、軸受33によってベース部24に対して回転自在な状態で保持されている。シャフト32の下端は、受板34に接触し、受板34は、ケーシング本体20に固定された蓋材35に固定されている。
【0023】
複数の駆動コイル27に流す駆動電流の極性を特定のタイミングで切り替えることで、駆動コイル27(ステータコア25の突極)とロータマグネット28の磁極との間に働く磁気反発力と磁気吸引力とが順次切り替わり、ロータマグネット28がステータコア25に対して回転する。この回転により、羽根31が回転する。羽根31が回転することで、吸気口21および22から気体が吸い込まれ、排気口23から気体が排出される。
【0024】
(ケーシングとカバーの係合構造)
図2には、ケーシング本体20の斜視図(A)とその一部拡大図(B)が示され、
図3には、カバー40の斜視図(A)とその一部拡大図(B)が示されている。
図2には、ケーシング本体20の側の係合部が示され、
図3には、カバー40の側の係合部が示されている。
【0025】
まず、
図1の係合部50について説明する。2カ所ある係合部50は、同じ構造である。
図2には、ケーシング本体20の側の係合部50aが示されている。ケーシング本体20の側の係合部50aは、突起51とガイド部52を備えている。
図2(B)に示すように、突起51は、周方向から見て略三角形状を有し、カバー40の側から離れる方向に向かって上る形状の斜面51aを備えている。ガイド部52は軸方向から見て、フック形状を有し、軸方向に延長するガイド溝52aを有している。ガイド溝52aの径方向における寸法(軸に垂直な方向における溝幅の寸法)は、カバー40(
図3参照)の板厚、すなわち爪部55の厚みよりも若干大きく(例えば、0.05mm〜0.2mm大きく)設定されている。また、ガイド部52上部のガイド溝52aに臨む縁の部分には、テーパー部(斜面)52bが形成されている。
【0026】
突起51とガイド部52とは、周方向から見て重なった位置にあり、また周方向において離間している。ケーシング本体20の側の係合部60aは、開口部61を有した枠部62を有している。枠部62は、コの字型の枠構造を有し、その内側が開口部61とされている。なお、符号36は、ステータコイル27からの引き出し配線(図示省略)をガイドするガイド用フックである。
【0027】
図3(B)および(C)に示すように、カバー40の側の係合部50bは、根元部54と爪部55とにより構成されている。根元部54は、カバー40の縁の部分から軸方向に延長した構造を有している。爪部55は、根元部54の先端の部分から周方向(この場合は、接線方向)に直線状に延長しており、その延長した先端の部分は他の部材に接触したり固定されたりされておらず束縛されていない。爪部55は、周方向から見て、外側(軸中心から離れる側)に向かって開くように傾斜(この例では、軸方向から約10°)している。爪部55の傾斜は、斜面51aに合わせた傾きの方向とされている。根元部54と爪部55は、カバー40と一体であり、カバー40と同じ板金を用いてプレス加工により形成されている。
【0028】
図3(A)に示すように、カバー40の側の係合部60bは、爪部56を有している。爪部56は、軸中心から離れる方向に延長し、
図2に示すケーシング本体20の側の開口部61に嵌合する。
【0029】
図4には、ケーシング本体20にカバー40を取り付け、両者を結合させた状態が示されている。
図4において、(A)は斜視図であり、(B)は(A)の一部拡大図であり、(C)は、(B)を周方向から見た断面図である。なお、
図4では、内部のファン構造およびその駆動構造(モータ部分)を取り外した状態が記載されている。
【0030】
以下、ケーシング本体20にカバー40を取り付ける手順、すなわちケーシング本体20の開放された部分をカバー40によって蓋をする作業の手順について説明する。まず、
図4では、枠部62の影に隠れている
図3の爪部56を
図2の開口部61に嵌合させる。この際、斜め上の方向から爪部56を開口部61に挿入する。そして、爪部56と開口部61とが嵌合した部分を支点として、爪部56と開口部61の係合を継続した状態でカバー40を当接させ、
図3の係合部50bを
図2の係合部50aに係合させる。この際、まずガイド部52のガイド溝52a(
図2参照)に、根元部54の縁の部分を嵌合させ、また斜面51aに爪部55の下側を接触させる。
【0031】
この状態において、更に爪部55を斜面51aに押し付けると、爪部55が斜面51aに乗り上げ、根元部54のガイド溝52aに拘束された部分を支点として、爪部55の先端の部分55aが外側(軸中心から離れる方向)に変位するように爪部55が撓る。爪部55は、金属製であるが、根元部54の部分がガイド部52に拘束され、更に爪部55の先端の部分55aまでの長さが確保され、またその先端の部分55aは束縛されていない。このため、爪部55が斜面51aに乗り上げることで、符号の部分55aが外側に変位するように撓る弾性変形が容易に生じる。すなわち、爪部55は、一端が固定され、他端55aが束縛されておらず自由であり、両者間の距離が確保されているので、上述した弾性変形が容易に生じる。またこの変形は、板材の厚み方向における変形であるので、塑性変形とならず弾性変形となり易い。
【0032】
そして、先端の部分が外側に変位するように爪部55が撓って変形した状態において、更に爪部55を斜面51aに押し付けてゆくと、斜面51aに沿って爪部55が下方に変位する。この際、上記の撓りが更に大きくなり、最終的に爪部55が突起51の頂部を乗り越える。爪部55が突起51の頂部を乗り越えた後、弾性変形していた爪部55は元に戻り、
図4の状態、つまり爪部55が突起51の下側に引っ掛かって係合した状態が得られる。なお、この過程において、爪部55が
図3(C)に示すように外側に傾いているので、斜面51aに接触した爪部55の変形がスムーズに進行する。
【0033】
また、カバー40の縁には、
図3に示す凸部41が設けられ、この凸部41がケーシング本体20の縁に設けられた
図2に示す切り欠き部(凹部)57に嵌合する。すなわち、爪部55が突起51の頂部を乗り越え、爪部55が突起51の下側(斜面51aの裏側)に引っ掛かって係合した状態において、凸部41が切り欠き部57に嵌合する。
【0034】
なお、上述したケーシング本体20にカバー40を取り付ける過程において、爪部55とガイド部52とが干渉しないようにするため、根元部54がガイド溝52aに嵌った状態において、爪部55とガイド部52との周方向における位置が重ならないよう爪部55の根元部54側の端部55bの位置が決められている。
【0035】
(優位性)
以上述べたように、送風機10は、ケーシング本体20と、ケーシング本体20の開口に蓋をするカバー40とを備え、ケーシング本体20は、その外周に設けられた突起51および突起51から周方向に離間したガイド部52を有し、カバー40は、その縁から軸方向に延長する根元部54および周方向に延長し、先端が束縛されていない爪部55を有し、根元部54がガイド部52に係合した状態において、爪部55が弾性変形しつつ突起51を乗り越え、爪部55の突起51への係合が行われている。
【0036】
この構造によれば、ケーシング本体20にカバー40を結合させる際、爪部55が斜面51aに接触すると、根元部54のガイド溝52aに拘束された部分を支点として、爪部55の先端の部分が外側に変位するように弾性変形する。そして、爪部55が突起51を乗り越えた段階で、変形が元に戻ることで爪部55の突起51への係合が行われる。この際、爪部55が塑性変形しないので、塑性変形を元に戻す作業が必要とされない。
【0037】
また、カバー側の爪部55は、約10度の傾斜角度で傾いているので突起51を乗り越え易い。また、ケーシング側の係合部52の部分に形成されるガイド溝52aの径方向における寸法を爪部55の厚みよりも若干大きく(0.05〜0.2mm位大きく)することで、根元部54をガイド溝52aに挿入しやすい構造としている。
【0038】
また、ガイド溝52aに根元部54を挿入し、カバー40をケーシング本体20に押し付けるだけの簡単な作業で、カバー40を確実にケーシング本体20に固定ができる。このため、生産性良く送風機10を組み立てることができる。
【0039】
(その他)
図5には、変形例が示されている。
図5の例では、根元部54に軸方向に延長する切り込み58を形成し、爪部55の弾性変形がより生じ易くしている。他は、既に説明した構造と同じである。
【0040】
なお、カバー40が浮く虞があるので、係合部は3カ所以上とすることが好ましい。また、係合部を3カ所以上設けた場合、1カ所を係合部60の構造とし、他の係合部を係合部50の構造とすることが好ましい。
【0041】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。