(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最初の体重および/または体脂肪の減少を誘発するためのGLP−1受容体アゴニストの投与、それに続く体重および/または体脂肪の減少を維持するためのDPP−4阻害剤の逐次投与を含む、糖尿病を有する、または有さない過体重または肥満症患者における、体重および/または体脂肪を減少および維持する方法においてGLP−1受容体アゴニストと組み合わせて使用するための、リナグリプチンであるDPP−4阻害剤を含む医薬。
GLP−1受容体アゴニストが、エキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リキシセナチドおよびデュラグルチドから選択される、請求項1または2に記載の医薬。
GLP−1受容体アゴニストによる体重減少治療の後にリナグリプチンであるDPP−4阻害剤を投与するステップを含む、糖尿病を有する、または有さない過体重または肥満症患者における、最初の体重減少治療の後に、体重および/もしくは体脂肪の増加の予防、または減少した体重および/もしくは体脂肪の管理、安定化もしくは維持する方法において使用するための、リナグリプチンであるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物。
GLP−1受容体アゴニストが、エキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リキシセナチドおよびデュラグルチドから選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
リナグリプチンであるDPP−4阻害剤、ならびにエキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リキシセナチドおよびデュラグルチドから選択されるGLP−1受容体アゴニストの投与を含み、前記投与が、体重の減少および/または体脂肪の減少を誘発するためのGLP−1受容体アゴニストに続く、減少した体重および/または体脂肪を維持するためのリナグリプチンであるDPP−4阻害剤の逐次投与である、2型糖尿病、及び、肥満症の両方を治療する方法において使用するための、リナグリプチンであるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物。
GLP−1受容体アゴニストおよびリナグリプチンであるDPP−4阻害剤投与を含み、前記投与が、体重の減少および/または体脂肪の減少を誘発するためのGLP−1受容体アゴニストに続く、減少した体重および/または体脂肪を維持するためのリナグリプチンであるDPP−4阻害剤の逐次投与である、2型糖尿病、及び、肥満症の両方を治療する方法において使用するための、エキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リキシセナチドおよびデュラグルチドから選択されるGLP−1受容体アゴニストを含む医薬組成物。
1種もしくは複数の他の治療剤と組み合わせてもよい、GLP−1受容体アゴニストによる体重減少治療に続いてリナグリプチンであるDPP−4阻害剤を投与するステップを含む、体重減少治療の中断の後に、体重および/もしくは脂肪増加のリバウンドを減退または予防する方法において使用するための、リナグリプチンであるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物。
【背景技術】
【0004】
2型真性糖尿病は、インスリン抵抗性および障害されたインスリン分泌の二重の内分泌作用が関与する複雑な病態生理から生じる一般的な慢性および進行性疾患であり、血漿グルコースレベルを正常範囲に維持するという必要とされる要求を満たさないという結果を伴う。これによって、慢性高血糖症ならびにその関連する微小血管および大血管合併症、または慢性損傷、例えば、糖尿病性腎症、網膜症またはニューロパシー、または大血管性(例えば、心血管もしくは脳血管)の合併症がもたらされる。血管性疾患という要素は重要な役割を果たしているが、糖尿病関連障害の領域における唯一の要因ではない。高頻度の合併症は、平均余命の有意な減少をもたらす。糖尿病は現在、糖尿病が誘発する合併症のために工業化した世界において成人発症型視力喪失、腎不全、および切断の主な原因であり、心血管疾患の危険性の2〜5倍の増加と関連する。
さらに、糖尿病(特に、2型糖尿病)は、肥満症と共存し、相互関係を有することが多く、これらの2つの状態は一緒になって特に複雑な治療上の難題を生じさせる。インスリン抵抗性に対する肥満症の作用のために、体重減少およびその維持は、糖尿病前症、代謝症候群または糖尿病を有する過体重または肥満の個体において重要な治療上の目的である。2型糖尿病を有する対象における体重減少は、インスリン抵抗性の低下、血糖症および脂肪血症の尺度の改善、ならびに血圧の低下と関連することが研究によって示されてきた。より長い期間にわたる体重減少の維持は、血糖コントロールを改善させ、糖尿病性合併症を予防する(例えば、心血管疾患または事象の危険性を減少させる)と考えられている。したがって、体重減少は、糖尿病を有するか、もしくは危険性のある全ての過体重または肥満の個体のために推奨される。しかし、2型糖尿病を有する肥満患者は、一般の糖尿病ではない集団よりも、体重を減少させ、減少した体重を維持することが非常により困難である。
【0005】
過体重は、個体が25kg/m2以上および30kg/m2未満の肥満度指数(BMI)を有する状態であると定義し得る。「過体重」および「前肥満」という用語は、互換的に使用される。
肥満症は、個体が30kg/m2以上のBMIを有する状態であると定義し得る。WHOの定義によると、肥満症という用語は、下記のように分類し得る。肥満症度Iは、BMIが30kg/m2以上であるが、35kg/m2未満の状態である。肥満症度IIは、BMIが35kg/m2以上であるが40kg/m2未満である状態である。肥満症度IIIは、BMIが40kg/m2以上である状態である。肥満症には、例えば、内臓肥満または腹部肥満が含まれてもよい。
【0006】
内臓肥満は、男性において1.0以上、および女性において0.8以上のウエスト−ヒップ比が測定される状態であると定義し得る。これは、インスリン抵抗性、および糖尿病前症の進展の危険性を定義する。
腹部肥満は通常、胴囲が男性において40インチ超または102cm超であり、女性において35インチ超または94cm超である状態であると定義し得る。日本人の民族性または日本人の患者に関して、腹部肥満は、男性において胴囲85cm以上、および女性において90cm以上と定義し得る(例えば、代謝症候群の診断のための調査委員会(日本)を参照されたい)。
【0007】
本発明の意味内の糖尿病患者には、肥満症または過体重の患者が含まれてもよい。
本発明の意味内の肥満症患者には、一実施形態において、糖尿病(特に、2型糖尿病)を有する患者が含まれてもよい。
本発明の意味内の肥満症患者には、別の実施形態において、糖尿病(特に、1型または2型糖尿病)を有さない患者が含まれてもよい。
2型糖尿病の治療は典型的には、食事および運動から始め、続いて経口の抗糖尿病剤の単独療法を行い、従来の単独療法は、最初は一定の患者において血中グルコースを調節し得るが、これは高率の二次的失敗と関連する。血糖コントロールを維持するための単剤療法の限界は、単剤による長期間の治療の間に持続させることができない血中グルコースの減少を達成するために複数の薬物を併用することによって、少なくとも一定の患者において、限定された期間克服し得る。利用可能なデータは、2型糖尿病を有する大部分の患者において、現在の単独療法が失敗し、複数の薬物による治療が必要とされるという結論を支持する。
しかし、2型糖尿病は進行性疾患であるため、従来の併用療法に対して良好な最初の反応を有する患者でさえ、血中グルコースレベルは長期間安定を維持するのが非常に困難であるため、投与量の増加またはインスリンによるさらなる治療を結局必要とする。現存する併用療法は血糖コントロールを増強する可能性を有するが、(特に、長期間の有効性に関して)制限がないことはない。さらに、伝統的な治療は、低血糖症または体重増加などの副作用についての危険性の増加を示し得、これは、伝統的な治療の有効性および認容性を損ない得る。
【0008】
したがって、多くの患者について、これらの現存する薬物療法は、治療にも関わらず代謝調節において進行性の悪化をもたらし、特に長期間にわたって代謝状態を十分に調節せず、したがって進行または後期2型糖尿病(従来の経口または非経口の抗糖尿病医薬品にも関わらず不適切な血糖コントロールを伴う糖尿病を含めた)における血糖コントロールの達成および維持に失敗する。
したがって、高血糖症の集中治療は、慢性損傷の発生率を減少させることができるが、2型糖尿病を有する多くの患者は、従来の抗高血糖療法の長期間の有効性、耐容性および投与の不便さにおける制限もあって、不適切に治療されているままである。
さらに、(例えば、いくつかの従来の抗糖尿病医薬品の副作用または有害作用として)肥満症、過体重または体重増加は、糖尿病およびその微小血管または大血管合併症の治療をさらに複雑化する。
【0009】
この治療失敗の高発生率は、高率の2型糖尿病を有する患者における長期間の高血糖症が関連する合併症または慢性損傷(微小血管および大血管合併症、例えば、糖尿病性腎症、網膜症またはニューロパシー、または心血管合併症を含めた)の主要な一因となる。
治療(例えば、一次または二次、および/あるいは単独療法または(最初もしくは追加の)併用療法など)において従来使用される経口抗糖尿病薬には、これだけに限定されないが、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニドおよびα−グルコシダーゼ阻害剤が含まれる。
治療(例えば、一次または二次、および/あるいは単独療法または(最初もしくは追加の)併用療法など)において従来使用される非経口(典型的には、注射用)抗糖尿病薬には、これだけに限定されないが、GLP−1またはGLP−1類似体、およびインスリンまたはインスリン類似体が含まれる。
【0010】
しかし、これらの従来の抗糖尿病剤または抗高血糖剤の使用は、様々な有害作用と関連し得る。例えば、メトホルミンは、乳酸アシドーシスまたは胃腸の副作用と関連し得る。スルホニル尿素、グリニドおよびインスリンまたはインスリン類似体は、低血糖症および体重増加と関連し得る。チアゾリジンジオンは、浮腫、骨折、体重増加および心不全/心臓の作用と関連し得る。α−グルコシダーゼ遮断剤およびGLP−1またはGLP−1類似体は、胃腸の有害作用(例えば、消化不良、鼓腸もしくは下痢、または悪心もしくは嘔吐)および最も重度には(しかしまれには)膵臓炎と関連し得る。
したがって、特に、肥満または過体重の糖尿病患者のために、当技術分野で効果的であり、安全で、耐容性のある抗糖尿病療法を提供することが求められている。
さらに、このような患者における体重減少治療の休止の後に、特に、体重を減少させ、減少した体重を維持するため、および体重増加のリバウンドを予防するための、糖尿病を有する、または有さない肥満症患者のために、当技術分野で効果的であり、安全で、耐容性のある治療を提供することが求められている。
2型糖尿病および肥満症(「糖尿肥満」)の二重の流行病の管理の範囲内で、特に、長期間の体重減少の達成および血糖コントロールの改善において、これらの状態を一緒に治療または予防することにおいて安全で、耐容性があり、有効な治療を見出すことが目的である。
さらに、2型糖尿病、肥満症または両方の治療内で、効果的に状態を治療し、状態に固有の合併症を回避し、疾患の悪化を遅延させることが求められている。
さらに、抗糖尿病治療が、糖尿病疾患の進行した段階において見出されることが多い長期間の合併症を予防するだけでなく、腎機能障害などの合併症が進展したそれらの糖尿病患者における治療法の選択肢があることが依然として求められている。
さらに、従来の抗糖尿病療法に伴う有害作用の危険性の予防または減少を実現することが求められている。
【0011】
CD26としてもまた公知である酵素DPP−4(ジペプチジルペプチダーゼIV)は、それらのN末端にプロリンまたはアラニン残基を有するいくつかのタンパク質のN末端からのジペプチドの切断をもたらすことが公知であるセリンプロテアーゼである。この特性のために、DPP−4阻害剤は、ペプチドGLP−1を含めた生理活性ペプチドの血漿レベルを妨げ、真性糖尿病の治療のための有望な薬物であると考えられる。
例えば、DPP−4阻害剤およびそれらの使用は、WO2002/068420、WO2004/018467、WO2004/018468、WO2004/018469、WO2004/041820、WO2004/046148、WO2005/051950、WO2005/082906、WO2005/063750、WO2005/085246、WO2006/027204、WO2006/029769、WO2007/014886;WO2004/050658、WO2004/111051、WO2005/058901、WO2005/097798;WO2006/068163、WO2007/071738、WO2008/017670;WO2007/128721、WO2007/128724、WO2007/128761、またはWO2009/121945に開示されている。
【0012】
グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)は、食物に反応して腸の腸内分泌L細胞から分泌されるホルモン(hormon)である。薬理学的用量での外因性GLP−1の投与は、2型糖尿病の治療のために有益である作用をもたらす。しかし、未変性GLP−1は、急速な酵素分解に供される。GLP−1の作用は、GLP−1受容体(GLP−1R)によって媒介される。
真性糖尿病の治療のモニタリングにおいて、ヘモグロビンB鎖の非酵素的グリケーションの産物であるHbA1c値は、例外的に重要である。その形成は赤血球の血糖レベルおよび寿命によって本質的に決まるため、「血糖記憶」という意味でのHbA1cは、直前の4〜12週間の平均血糖レベルを反映する。より集中した糖尿病治療によってそのHbA1cレベルが長期間にわたり良好に管理されてきた糖尿病患者(すなわち試料中の総ヘモグロビンの6.5%未満)は、糖尿病性微小血管障害から有意により良好に保護される。糖尿病についての利用可能な治療は、糖尿病患者に1.0〜1.5%程度のHbA1cレベルの平均的改善を与え得る。HbA1Cレベルのこの減少は、全ての糖尿病患者において7.0%未満、好ましくは、6.5%未満、より好ましくは、6%未満のHbA1cの所望の標的範囲にさせるのに十分ではない。
【0013】
本発明の意味内で、不適切または不十分な血糖コントロールは、特に、患者が6.5%超、特に7.0%超、さらにより好ましくは7.5%超、特に8%超のHbA1c値を示す状態を意味する。不適切または不十分な血糖コントロールを有する患者の一実施形態には、これらだけに限定されないが、7.5〜10%(または、別の実施形態において、7.5〜11%)のHbA1c値を有する患者が含まれる。不適切に管理された患者の特別の下位実施形態は、これらだけに限定されないが、9%以上のHbA1c値を有する患者を含めた、血糖コントロールが乏しい患者を指す。
血糖コントロール内で、HbA1cレベルの改善に加えて、2型真性糖尿病患者のための他の推奨される治療目標は、正常またはできるだけ正常と殆ど変わらない程度への空腹時血漿グルコース(FPG)および食後血漿グルコース(PPG)レベルの改善である。摂食前(空腹時)血漿グルコースの推奨される所望の標的範囲は、70〜130mg/dL(もしくは90〜130mg/dL)または110mg/dL未満であり、食後2時間の血漿グルコースの推奨される所望の標的範囲は、180mg/dL未満または140mg/dL未満である。
【0014】
一実施形態において、本発明の意味内の糖尿病患者には、抗糖尿病薬で以前に治療を受けてこなかった患者(薬物未処置患者)が含まれてもよい。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されている治療は、未処置患者において使用し得る。別の実施形態において、本発明の意味内の糖尿病患者には、進行または後期2型真性糖尿病を有する患者(従来の抗糖尿病療法に失敗した患者を含めて)、例えば、1つ、2つ、またはそれを超える従来の経口および/または非経口の本明細書に定義されている抗糖尿病薬に対して不適切な血糖コントロールを有する患者など、例えば、メトホルミン、チアゾリジンジオン(特に、ピオグリタゾン)、スルホニル尿素、グリニド、GLP−1もしくはGLP−1類似体、インスリンもしくはインスリン類似体、またはα−グルコシダーゼ阻害剤による(単独)療法にも関わらず、あるいはメトホルミン/スルホニル尿素、メトホルミン/チアゾリジンジオン(特に、ピオグリタゾン)、メトホルミン/インスリン、ピオグリタゾン/スルホニル尿素、ピオグリタゾン/インスリン、またはスルホニル尿素/インスリンによる2剤併用療法にも関わらず、不十分な血糖コントロールを有する患者などを含めてもよい。したがって、一実施形態において、本明細書に記載されている治療は、治療を経験した、例えば、本明細書において言及したような従来の経口および/または非経口の抗糖尿病の1剤または2剤または3剤の組合せ医薬品を経験した患者において使用し得る。
【0015】
本発明の意味内の糖尿病患者のさらなる実施形態は、
−メトホルミン療法が禁忌である患者、例えば、ラベルによってメトホルミン療法に対して1つまたは複数の禁忌を有する患者、例えば、腎疾患、腎機能障害または腎機能不全(例えば、局所的に承認されたメトホルミンの製品情報によって特定されたもの)、脱水症状、不安定性または急性うっ血性心不全、急性または慢性代謝性アシドーシス、および遺伝性ガラクトース不耐症から選択される少なくとも1つの禁忌を有する患者、
ならびに
−1つまたは複数のメトホルミンによって起こる耐えられない副作用、特に、メトホルミンと関連する胃腸の副作用を患っている患者、例えば、悪心、嘔吐、下痢、腸内ガス、および重度の腹部不快感から選択される少なくとも1つの胃腸の副作用を患っている患者
を含めたメトホルミン療法に不適格な患者を指す。
【0016】
本発明の治療を受け入れられる糖尿病患者のさらなる実施形態には、これらだけに限定されないが、通常のメトホルミン療法が適当でないそれらの糖尿病患者、例えば、メトホルミンに対する耐容性の低下、不耐容性もしくは禁忌によって、または(軽度に)障害された/低下した腎機能によって、減少した用量のメトホルミン療法を必要とするそれらの糖尿病患者など(例えば、60〜65歳以上などの高齢患者を含めた)を含めてもよい。
本発明の意味内の糖尿病患者のさらなる実施形態は、例えば、血清クレアチニンレベルの上昇(例えば、年齢の割に正常上限を超える血清クレアチニンレベル、例えば、男性において130〜150μmol/l以上、もしくは1.5mg/dl以上(≧136μmol/l)、および女性において1.4mg/dl以上(≧124μmol/l))、または異常なクレアチニンクリアランス(例えば、糸球体濾過量(GFR)≧30〜60ml/分)によって示唆されるような、腎疾患、腎機能不全、または腎機能の不全もしくは障害(軽度、中等度および重度の腎機能障害を含めた)を有する患者を指す。
このような状況において、より詳細な例のために、軽度の腎機能障害は、例えば、50〜80ml/分のクレアチニンクリアランス(男性において1.7mg/dL以下、および女性において1.5mg/dL以下の血清クレアチンレベルに概ね相当する)によって示唆し得る。中等度の腎機能障害は、例えば、30〜50ml/分のクレアチニンクリアランス(男性において1.7超〜3.0mg/dL以下、および女性において1.5超〜2.5mg/dL以下の血清クレアチニンレベルに概ね相当する)によって示唆し得る。重度の腎機能障害は、例えば、30ml/分未満のクレアチニンクリアランス(男性において3.0mg/dL超、および女性において2.5mg/dL超の血清クレアチニンレベルに概ね相当する)によって示唆し得る。末期腎疾患を有する患者は、透析(例えば、血液透析または腹膜透析)を必要とする。
他のより詳細な例について、腎疾患、腎機能不全または腎機能障害を有する患者には、慢性腎機能不全または機能障害を有する患者が含まれ、これは糸球体濾過量(GFR、ml/分/1.73m
2)によって、5つの疾患段階に階層化することができる。正常なGFR90以上、および持続性のアルブミン尿または公知の構造的もしくは遺伝性腎疾患によって特徴付けられるステージ1;軽度の腎機能障害を表すGFRの軽度の減少(GFR60〜89)によって特徴付けられるステージ2;中等度の腎機能障害を表すGFRの中等度の減少(GFR30〜59)によって特徴付けられるステージ3;重度の腎機能障害を表すGFRの激しい減少(GFR15〜30)によって特徴付けられるステージ4;および透析を必要とすること、または確立した腎不全(末期腎疾患、ESRD)を表すGFR15未満によって特徴付けられる末期ステージ5。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一実施形態において、本発明は、i)体重および/もしくは体脂肪の減少を誘発するステップ(例えば、食事、運動および/または本明細書に記載の抗肥満剤もしくは体重減少剤による治療によって、特に、有効量のGLP−1受容体アゴニストを患者に投与することによって)と、ii)有効量の特定のDPP−4阻害剤を患者に投与するステップとを含む、それを必要としている患者(特に、肥満または過体重である2型糖尿病患者)において、体重および/もしくは体脂肪を減少および維持する方法に関し、任意選択で、前記DPP−4阻害剤は、体重および/もしくは脂肪減少治療i)の置き換えとして、あるいは体重および/もしくは脂肪減少治療i)の追加または最初の併用療法として使用してもよい。
特定の実施形態において、本発明は、それを必要としている患者において、最初の体重減少治療(例えば、食事、運動および/または本明細書に記載の抗肥満剤もしくは体重減少剤による治療など)の後、特に、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)による最初の治療の中断の後、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防し、または減少した体重および/もしくは体脂肪を管理、安定化もしくは維持する方法において使用するための、1種もしくは複数の他の治療剤と組み合わせてもよい、本明細書に定義されているDPP−4阻害剤に関する。
【0026】
特定の実施形態において、本発明は、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)と本明細書に定義されているDPP−4阻害剤との併用(例えば、別々、同時または逐次)投与を含む、それを必要としている患者(特に、肥満または過体重である2型糖尿病患者)において体重および/もしくは体脂肪を減少および維持する方法に関し、好ましくは、前記方法は、GLP−1受容体アゴニスト、それに続くDPP−4阻害剤の逐次投与を含む。
特定の実施形態において、本発明は、それを必要としている患者(特に、肥満または過体重である2型糖尿病患者)において体重および/もしくは体脂肪を減少および維持する方法に関し、前記方法は、i)体重および/もしくは体脂肪の減少を誘発するステップと(例えば、有効量のGLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)を患者に投与することによって)、ii)体重および/もしくは体脂肪の減少を維持するために有効量の本明細書に定義されているDPP−4阻害剤を患者に投与するステップとを含む。
【0027】
特定の実施形態において、本発明は、それを必要としている患者(特に、肥満または過体重である2型糖尿病患者)において体重および/もしくは体脂肪を減少および維持する方法に関し、前記方法は、i)最初の体重および/もしくは体脂肪の減少を誘発するステップと(例えば、有効量のGLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)を患者に投与することによって)、続いてii)有効量の本明細書に定義されているDPP−4阻害剤を患者に投与し、好ましくは、それによってGLP−1受容体アゴニストを置き換えるステップとを含む。
特定の実施形態において、本発明は、それを必要としている患者(例えば、本明細書に記載の患者など)において、体重減少治療(例えば、食事、運動および/または本明細書に記載の抗肥満剤もしくは体重減少剤などによる治療)の中断の後、特に、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)による治療の中断の後、体重および/もしくは体脂肪の増加の予防、または減少した体重および/もしくは体脂肪の管理、安定化もしくは維持において使用するための、本明細書に定義されているDPP−4阻害剤に関する。
【0028】
特定の実施形態において、本発明は、最初の体重減少治療(例えば、食事、運動および/または本明細書に記載の抗肥満剤もしくは体重減少剤による治療を使用するなど)の後、特に、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)による最初の治療の後、体重および/もしくは体脂肪の増加の予防、または減少した体重および/もしくは体脂肪の管理、安定化もしくは維持において使用するための、医薬の製造のための本明細書に定義されているDPP−4阻害剤の使用に関する。
特定の実施形態において、本発明は、最初の体重減少治療(例えば、食事、運動および/または本明細書に記載の抗肥満剤もしくは体重減少剤による治療を使用するなど)の後、特に、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)による最初の治療の後、体重および/もしくは体脂肪増加を予防し、または減少した体重および/もしくは体脂肪を管理、安定化もしくは維持する方法に関し、前記方法は、有効量の本明細書に定義されているDPP−4阻害剤を、それを必要としている患者に投与するステップを含む。
特定の実施形態において、本発明は、特に、糖尿病を有する、または有さない肥満症患者において、体重減少治療の中断の後に(特に、GLP−1受容体アゴニストによる治療の中断の後に)、体重および/もしくは体脂肪を減少および維持し、または体重増加および/もしくは体脂肪増加のリバウンドを減退させ、予防もしくは治療する方法において使用するための、特定のDPP−4阻害剤に関し、前記方法は、体重減少治療に続いて(特に、GLP−1受容体アゴニストによる治療に続いて)、1種もしくは複数の他の治療剤と組み合わせてもよい、特定のDPP−4阻害剤(特に、リナグリプチン)を投与するステップを含む。
【0029】
GLP−1受容体アゴニスト(例えば、本明細書に定義されているGLP−1またはGLP−1類似体)の使用に代わるものにおいて、最初の体重および/または脂肪減少はまた、食事、運動、ならびに/あるいは抗肥満剤もしくは体重減少剤(例えば、シブトラミン、テトラヒドロリプスタチン(オルリスタット)、アリザイム(セチリスタット)、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト(例えば、リモナバント)、MC4受容体アゴニスト、NPY受容体アゴニスト、例えば、NPY2アンタゴニスト(例えば、ベルネペリット)、5HT2c受容体アゴニスト(例えば、ロルカセリン)、グレリンアンタゴニスト、Pyy3−36、レプチン、DGAT−1阻害剤、ノルアドレナリン−ドパミン−5HT再取込み阻害剤(例えば、テソフェンシン)、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラマート/フェンテルミンおよびプラムリンチド/メトレレプチン;あるいはMCHアンタゴニスト、CCK阻害剤、FAS阻害剤、ACC阻害剤、SCD阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、MTP阻害剤(例えば、ロミタピド)またはアミリンまたはアミリン類似体(例えば、ダバリンチドまたはプラムリンチド)から選択される1種もしくは複数の薬剤など)による治療を使用することによって誘発し得る。
【0030】
本発明の併用療法(例えば、2型糖尿病、肥満症もしくは両方を治療するため、または体重を減少および維持するため)の一実施形態内で、GLP−1受容体アゴニストは、(最初の)体重減少を誘発するために使用してもよく、かつ/またはDPP−4阻害剤は、体重減少を維持するために使用してもよい。
本発明の併用療法(例えば、2型糖尿病、肥満症もしくは両方を治療するため、または体重および/もしくは体脂肪を減少および維持するため)の別の実施形態は、
i)特に、患者において体重および/もしくは体脂肪の減少を誘発するために、有効量のGLP−1受容体アゴニストを患者に投与するステップと、
ii)特に、体重および/もしくは体脂肪が、患者において減少した後、患者からGLP−1受容体アゴニストを中止するステップと、
iii)特に、患者において体重および/もしくは体脂肪の増加の遅延、ならびに/または体重および/もしくは体脂肪の減少を維持するために、有効量のDPP−4阻害剤を患者に投与するステップと
を含む方法を指す。
【0031】
本発明の併用療法の別の実施形態は、体重減少に続いて、特に、GLP−1受容体アゴニストに続いて、1種もしくは複数の他の治療剤と組み合わせてもよい、特定のDPP−4阻害剤(特に、リナグリプチン)の使用を指す。
本発明の他の態様は、上記および下記(例および特許請求の範囲を含めた)から当業者には明らかとなる。
本発明の態様、特に、医薬化合物、組成物、組合せ、方法および使用は、本明細書の上記および下記に定義されているDPP−4阻害剤および/またはGLP−1受容体アゴニストを指す。
本発明の意味内のDPP−4阻害剤には、これらだけに限定されないが、本明細書の上記および下記で言及しているそれらのDPP−4阻害剤のいずれか、好ましくは、経口的に活性なDPP−4阻害剤が含まれる。
本発明の一実施形態は、2型糖尿病患者において代謝性疾患(特に、2型真性糖尿病)の治療および/または予防において使用するためのDPP−4阻害剤を指し、前記患者は、腎疾患、腎機能不全または腎機能障害をさらに患っており、特に、前記DPP−4阻害剤は、正常な腎機能を有する患者に対するものと同じ用量レベルで前記患者に投与され、したがって、例えば、前記DPP−4阻害剤は、障害された腎機能のために投与量の下方への調節を必要としないことに特徴付けられる。
【0032】
例えば、本発明によるDPP−4阻害剤(特に、障害された腎機能を有する患者のために適し得るもの)は、活性代謝物が、好ましくは、相対的に広範な(例えば、約100倍超)治療濃度域を有し、かつ/または、特に肝代謝もしくは胆汁中排泄によって主に除去されるこのような経口DPP−4阻害剤でよい。
より詳細な例において、本発明によるDPP−4阻害剤(特に、障害された腎機能を有する患者に適し得るもの)は、相対的に広範な(例えば、100倍超)治療濃度域を有し、かつ/または(好ましくは、その治療的経口用量レベルで)下記の薬物動態特性の1つまたは複数を満たすこのような経口的に投与されるDPP−4阻害剤でよい。
−DPP−4阻害剤は、肝臓によって実質的または主に排泄され(例えば、投与された経口用量の80%超またはさらに90%超)、かつ/あるいはこのために腎排泄は、実質的でないまたはほんの軽微な除去経路を表す(例えば、放射性標識された炭素(
14C)物質の経口用量の除去をフォローすることによって測定した投与された経口用量の、例えば、10%未満、好ましくは、7%未満);
−DPP−4阻害剤は、親薬剤として主に未変化で排泄され(例えば、放射性標識された炭素(
14C)物質の経口投与後に、尿および糞中の排泄される放射能の平均で70%超、または80%超、または好ましくは、90%)、かつ/あるいは非実質的または軽微な程度のみ代謝によって除去される(例えば、30%未満、または20%未満、または好ましくは、10%);
−DPP−4阻害剤の(主要な)代謝物(複数可)は、薬理学的に不活性である。例えば、主要な代謝物は標的酵素DPP−4に結合せず、かつ任意選択で、親化合物と比較して主要な代謝物は急速に除去されるなどである(例えば、20時間以下、または好ましくは、約16時間以下、例えば、15.9時間などの代謝物の終末半減期を有する)。
【0033】
一実施形態において、3−アミノ−ピペリジン−1−イル置換基を有するDPP−4阻害剤の血漿中の(主要な)代謝物(薬理学的に不活性であり得る)は、3−アミノ−ピペリジン−1−イル部分のアミノ基がヒドロキシル基によって置き換えられ、3−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル部分(例えば、キラル中心の立体配置の反転によって形成される3−(S)−ヒドロキシ−ピペリジン−1−イル部分)を形成するこのような誘導体である。
【0034】
本発明によるDPP−4阻害剤のさらなる特性は、下記の1つまたは複数でよい。定常状態への急速な到達(例えば、治療的経口用量レベルによる治療の第2日目と第5日目との間に定常状態血漿レベルに達する(定常状態血漿濃度の90%超))、僅かな蓄積(例えば、治療的経口用量レベルで平均蓄積率R
A,AUC≦1.4)、ならびに/あるいは好ましくは、1日1回使用したときに、DPP−4阻害に対して長期にわたって作用を保つこと(例えば、経口用量レベルで殆ど完全な(90%超)DPP−4阻害、治療的経口薬物用量の1日1回の摂取後24時間の間隔にわたって80%阻害超)、治療用量レベルで食後2時間の血中グルコース変動の有意な減少(≧80%)(治療の第1日目に既に)、ならびに第1日目に尿中に排泄される未変化の親化合物の累積量が、定常状態において投与された用量の1%未満であり、約3〜6%以下に増加すること。
したがって、例えば、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記DPP−4阻害剤が腎臓によって非実質的または軽微な程度のみ排泄されることを特徴とし得る(例えば、投与される経口用量の10%未満、好ましくは、7%未満)(例えば、放射性標識された炭素(
14C)物質の経口用量の除去をフォローすることによって測定)。
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記DPP−4阻害剤が肝臓または糞によって実質的または主に排泄されることを特徴とし得る(例えば、放射性標識された炭素(
14C)物質の経口用量の除去をフォローすることによって測定)。
【0035】
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、
前記DPP−4阻害剤は、親薬剤として主に未変化で排泄される(例えば、放射性標識された炭素(
14C)物質の経口投与後の尿および糞中の排泄された放射能の平均で70%超、または80%超、または好ましくは、90%)、
前記DPP−4阻害剤は、非実質的または軽微な程度のみ代謝によって除去され、かつ/あるいは
前記DPP−4阻害剤の主要な代謝物は薬理学的に不活性であり、または相対的に広範な治療濃度域を有する
ことを特徴とし得る。
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、
前記DPP−4阻害剤は、慢性腎機能不全(例えば、軽度、中等度もしくは重度の腎機能障害または末期腎疾患)を有する2型糖尿病患者の糸球体および/または尿細管機能を有意に障害せず、かつ/あるいは
前記DPP−4阻害剤は、障害された腎機能(例えば、軽度、中等度もしくは重度の腎機能障害または末期腎疾患)を有する2型糖尿病患者において用量を調節することを必要としない
ことを特徴とし得る。
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、
前記DPP−4阻害剤は、トラフ(最後の投与の24時間後)において80%超の患者で、DPP−4活性の50%超阻害をもたらす用量においてその最小の有効用量を実現し、かつ/または
前記DPP−4阻害剤は、トラフ(最後の投与の24時間後)において80%超の患者で、DPP−4活性の80%超阻害をもたらす用量においてその完全な治療用量を実現する
ことを特徴とし得る。
【0036】
第1の実施形態(実施形態A)において、本発明の状況においてDPP−4阻害剤は、
式(I)
【0040】
【化4】
[式中、R1は、([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル、(キナゾリン−2−イル)メチル、(キノキサリン−6−イル)メチル、(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル、2−シアノ−ベンジル、(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル、(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル、(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル、または(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチルを意味し、R2は3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル、(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノまたは(2−(S)−アミノ−プロピル)−メチルアミノを意味する。]
の任意のDPP−4阻害剤またはその薬学的に許容される塩である。
第2の実施形態(実施形態B)において、本発明の状況におけるDPP−4阻害剤は、
シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、ゲミグリプチン、
(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、
(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン、
(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オン、
(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリル、
5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミド、
3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン、
[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸、
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリル、
6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル)−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオン、および
(S)−2−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(primidine)−6−カルボン酸{2−[(2−シアノピロリジン−1−イル)−2−オキソエチルアミノ]−2−メチルプロピル}アミド、
またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるDPP−4阻害剤である。
【0041】
第1の実施形態(実施形態A)に関して、好ましいDPP−4阻害剤は、下記の化合物および薬学的に許容されるその塩のいずれかまたは全てである。
・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2004/018468、例2(142)を比較されたい):
【0042】
【化5】
・1−[([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2004/018468、例2(252)を比較されたい):
【0043】
【化6】
・1−[(キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2004/018468、例2(80)を比較されたい):
【0044】
【化7】
・2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−(ブタ−2−イニル(yinyl))−5−(4−メチル−キナゾリン−2−イルメチル)−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−d]ピリダジン−4−オン(WO2004/050658、例136を比較されたい):
【0045】
【化8】
・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチイン(butyin)−1−イル)−8−[(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(WO2006/029769、例2(1)を比較されたい):
【0046】
【化9】
・1−[(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(30)を比較されたい):
【0047】
【化10】
・1−(2−シアノ−ベンジル−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(39)を比較されたい):
【0048】
【化11】
・1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(S)−(2−アミノ−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(WO2006/029769、例2(4)を比較されたい):
【0049】
【化12】
・1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(52)を比較されたい):
【0050】
【化13】
・1−[(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(81)を比較されたい):
【0051】
【化14】
・1−[(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(82)を比較されたい):
【0052】
【化15】
・1−[(キノキサリン−6−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO2005/085246、例1(83)を比較されたい):
【0053】
【化16】
これらのDPP−4阻害剤は、例外的な効力および長期にわたる作用と、都合よい薬理学的特性、受容体選択性および都合よい副作用プロファイルとを合わせ、または他の医薬活性物質と合わせたときに、予想外の治療上の利点もしくは改善を生じさせるために、構造的に比較できるDPP−4阻害剤と区別される。それらの調製は、言及した公開資料に開示されている。
【0054】
本発明の実施形態Aの上記で言及したDPP−4阻害剤の中でより好ましいDPP−4阻害剤は、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、特に、その遊離塩基(リナグリプチンまたはBI1356としてまた公知である)である。
さらなるDPP−4阻害剤として、下記の化合物に言及することができる。
−下記の構造式Aを有するシタグリプチン(MK−0431)は、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンとまた称される(3R)−3−アミノ−1−[3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−5H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7−イル]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−1−オンである。
【0055】
【化17】
一実施形態において、シタグリプチンは、その二水素リン酸塩、すなわち、シタグリプチンリン酸塩の形態である。さらなる実施形態において、シタグリプチンリン酸塩は、結晶性無水物または一水和物の形態である。この実施形態の1クラスは、シタグリプチンリン酸塩一水和物を指す。シタグリプチン遊離塩基および薬学的に許容されるその塩は、米国特許第6,699,871号およびWO03/004498の例7に開示されている。結晶性シタグリプチンリン酸塩一水和物は、WO2005/003135およびWO2007/050485に開示されている。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
シタグリプチンについての錠剤製剤は、商品名Januvia(登録商標)で市販されている。シタグリプチン/メトホルミンの組合せについての錠剤製剤は、商品名Janumet(登録商標)で市販されている。
−下記の構造式Bを有するビルダグリプチン(LAF−237)は、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンとまた称される、(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}ピロリジン−2−カルボニトリルである。
【0057】
ビルダグリプチンは、米国特許第6,166,063号およびWO00/34241の例1に特に開示されている。ビルダグリプチンの特定の塩は、WO2007/019255に開示されている。ビルダグリプチンの結晶形態、およびビルダグリプチン錠剤製剤は、WO2006/078593に開示されている。ビルダグリプチンは、WO00/34241またはWO2005/067976に記載されているように製剤することができる。調節放出ビルダグリプチン製剤は、WO2006/135723に記載されている。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
ビルダグリプチンについての錠剤製剤は、商品名Galvus(登録商標)で市販される予定である。ビルダグリプチン/メトホルミンの組合せについての錠剤製剤は、商品名Eucreas(登録商標)で市販されている。
−下記の構造式Cを有するサクサグリプチン(BMS−477118)は、(S)−3−ヒドロキシアダマンチルグリシン−L−cis−4,5−メタノプロリンニトリルとまた称される、(1S,3S,5S)−2−{(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル}−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルである。
【0058】
【化19】
サクサグリプチンは、米国特許第6,395,767号およびWO01/68603の例60に特に開示されている。
一実施形態において、サクサグリプチンは、WO2004/052850に開示されているように、そのHCl塩またはそのモノ安息香酸塩の形態である。さらなる実施形態において、サクサグリプチンは、遊離塩基の形態である。またさらなる実施形態において、サクサグリプチンは、WO2004/052850に開示されているような遊離塩基の一水和物の形態である。サクサグリプチンのHCl塩および遊離塩基の結晶形態は、WO2008/131149に開示されている。サクサグリプチンを調製する方法はまた、WO2005/106011およびWO2005/115982に開示されている。サクサグリプチンは、WO2005/117841に記載されているように錠剤で製剤することができる。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−下記の構造式Eを有するアログリプチン(SYR−322)は、2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリルである。
【0060】
アログリプチンは、US2005/261271、EP1586571およびWO2005/095381に特に開示されている。
一実施形態において、アログリプチンは、WO2007/035629に各々開示されているようなその安息香酸塩、その塩酸塩またはそのトシレート塩の形態である。この実施形態の1クラスは、アログリプチン安息香酸塩を指す。アログリプチン安息香酸塩の多形は、WO2007/035372に開示されている。アログリプチンを調製する方法は、WO2007/112368、および具体的には、WO2007/035629に開示されている。アログリプチン(すなわち、その安息香酸塩)は、WO2007/033266に記載されているように、錠剤で製剤し、投与することができる。アログリプチン/ピオグリタゾンの固体調製物ならびにその調製および使用は、WO2008/093882に記載されている。アログリプチン/メトホルミンの固体調製物ならびにその調製および使用は、WO2009/011451に記載されている。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは薬学的に許容されるその塩、好ましくは、メシル酸塩、または
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは薬学的に許容されるその塩:
【0061】
これらの化合物およびそれらの調製方法は、WO03/037327に開示されている。
前者の化合物のメシル酸塩、およびその結晶性多形は、WO2006/100181に開示されている。後者の化合物のフマル酸塩、およびその結晶性多形は、WO2007/071576に開示されている。これらの化合物は、WO2007/017423に記載されているように医薬組成物に製剤することができる。
例えば、これらの化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン(カルメグリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
【0063】
この化合物およびその調製方法は、WO2005/000848に開示されている。この化合物(特に、その二塩酸塩)を調製する方法はまた、WO2008/031749、WO2008/031750およびWO2008/055814に開示されている。この化合物は、WO2007/017423に記載されているように医薬組成物に製剤することができる。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン(ゴソグリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/116014およびUS7291618に開示されている。
例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オンまたは薬学的に許容されるその塩:
【0064】
【化22】
この化合物およびその調製方法は、WO2007/148185およびUS20070299076に開示されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(メログリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
【0065】
【化23】
この化合物およびその調製方法は、WO2006/040625およびWO2008/001195に開示されている。特に特許請求されている塩には、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリルまたは薬学的に許容されるその塩:
【0066】
【化24】
この化合物ならびにその調製および使用のための方法は、WO2005/095381、US2007060530、WO2007/033350、WO2007/035629、WO2007/074884、WO2007/112368、WO2008/033851、WO2008/114800およびWO2008/114807に開示されている。特に特許請求されている塩には、コハク酸塩(WO2008/067465)、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、(R)−マンデル酸塩および塩酸塩が含まれる。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミドまたは薬学的に許容されるその塩:
【0067】
【化25】
この化合物およびその調製方法は、WO2006/116157およびUS2006/270701に開示されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン(テネリグリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
【0068】
この化合物およびその調製方法は、WO02/14271に開示されている。(とりわけ、塩酸塩、臭化水素酸塩を含めた)特定の塩は、WO2006/088129およびWO2006/118127に開示されている。この化合物を使用する併用療法は、WO2006/129785に記載されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸(デュトグリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
【0069】
この化合物およびその調製方法は、WO2005/047297、WO2008/109681およびWO2009/009751に開示されている。(クエン酸塩、酒石酸塩を含めた)特定の塩は、WO2008/027273に開示されている。この化合物の製剤は、WO2008/144730に記載されている。メトホルミンを有するデュトグリプチン(その酒石酸塩として)の製剤は、WO2009/091663に記載されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクタ−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(ビセグリプチンとまた称される)または薬学的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/075421、US2008/146818およびWO2008/114857に開示されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリルまたは薬学的に許容されるその塩、あるいは6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオンまたは薬学的に許容されるその塩:
【0070】
これらの化合物およびそれらの調製方法は、各々、WO2009/084497およびWO2006/068163に開示されている。これらの2つの化合物の後者を使用する併用療法は、WO2009/128360に記載されている。例えば、これらの化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
−(S)−2−メチルピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(primidine)−6−カルボン酸{2−[(2−シアノピロリジン−1−イル)−2−オキソエチルアミノ]−2−メチルプロピル}アミド(アナグリプチンとまた称される)または薬学的に許容される塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2004/067509に開示されている。この化合物を使用した併用療法は、WO2009/139362に記載されている。例えば、この化合物またはその塩を製造、製剤または使用する方法の詳細については、このようにこれらの文献を参照する。
好ましくは、本発明のDPP−4阻害剤は、リナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、サクサグリプチン、テネリグリプチンおよびデュトグリプチン、または本明細書において言及したDPP−4阻害剤の1つの薬学的に許容される塩、もしくはそのプロドラッグからなる群(群G1)から選択される。
【0071】
別の実施形態において、本発明のDPP−4阻害剤は、リナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、サクサグリプチン、テネリグリプチン、アナグリプチン、ゲミグリプチンおよびデュトグリプチン、または本明細書において言及したDPP−4阻害剤の1つの薬学的に許容される塩、もしくはそのプロドラッグからなる群(群H1)から選択される。
本発明内の特に好ましいDPP−4阻害剤は、リナグリプチンである。「リナグリプチン」という用語は、本明細書において用いられると、その水和物および溶媒和物、ならびにその結晶形態を含めた、リナグリプチンまたは薬学的に許容されるその塩を指し、好ましくは、リナグリプチンは、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンを指す。結晶形態は、WO2007/128721に記載されている。リナグリプチンを製造する方法は、例えば、特許出願第WO2004/018468号および同第WO2006/048427号に記載されている。リナグリプチンは、例外的な効力および長期にわたる作用と、都合よい薬理学的特性、受容体選択性および都合よい副作用プロファイルとを合わせ、あるいは単剤または2剤または3剤併用療法において予想外の治療上の利点または改善を生じさせるために、構造的に比較できるDPP−4阻害剤と区別される。
【0072】
疑義を避けるために、特定のDPP−4阻害剤に関連する上記で引用した上記および下記の文献の各々の開示は、特に参照により本明細書中にその全体が組み込まれている。
GLP−1受容体アゴニストには、これらだけに限定されないが、外因性GLP−1(天然または合成)、GLP−1類似体(DPP−4およびNEP24.11によって、酵素分解に耐性であるか、または低下した感受性を有する、より長時間作用する類似体を含めた)、ならびにGLP−1受容体によるシグナル伝達を促進する他の物質(ペプチド性または非ペプチド性の、例えば小分子)が含まれる。
GLP−1類似体の例には、(群G2):エキセナチド(合成エキセンディン−4、例えば、Byettaによって製剤);エキセナチドLAR(エキセナチドの長時間作用型放出製剤、例えば、Bydureonによって製剤);リラグルチド(例えば、Victozaとして製剤);タスポグルチド;セマグルチド;アルビグルチド(例えば、Syncriaとして製剤);リキシセナチド;デュラグルチド;およびWO2006/124529(この開示は、本明細書において組み込まれている)による式Iのペグ化化合物のアミノ酸配列(配列番号1)を含むジペグ化GLP−1化合物(Xaa
8は、Valであり、Xaa
22は、Gluであり、Xaa
33は、Ileであり、Xaa
46は、Cys−NH
2であり、1つのPEG分子はCys
45に共有結合しており、1つのPEG分子はCys
46−NH
2に共有結合しており、ペグ化反応のために使用されるPEG分子の各々は、20,000ダルトンの線状メトキシPEGマレイミドである)(好ましくは、GLP−1誘導体は、Val
8−Glu
22−Ile
33−Cys−NH
246−GLP−1のアミノ酸配列からなる(その開示が本明細書に組み込まれているWO2009/020802の配列番号21を参照されたい)が含まれてもよい。
【0073】
本発明のGLP−1受容体アゴニスト(GLP−1類似体)の好ましい例は、エキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、リキシセナチドおよびデュラグルチドである。
GLP−1類似体は典型的には、GLP−1に対する有意な配列相同性(例えば、50%、75%、90%または95%超)を有し、例えば、他のタンパク質(例えば、アルブミンもしくはIgG−Fc融合タンパク質)への結合によって、または化学修飾によって誘導体化し得る。
他に断らない限り、本発明によって、本明細書の上記および下記で言及した活性剤(DPP−4阻害剤およびGLP−1受容体アゴニストを含めた)の定義はまた、その薬学的に許容される塩、およびプロドラッグ、水和物、溶媒和物および多形形態を意図し得ることを理解すべきである。特に、本明細書において示す治療剤という用語は、各々の活性薬物を指す。その塩、水和物および多形形態に関して、本明細書において言及したものに対して特に参照を行なう。
【0074】
一実施形態において、本発明による組合せ、組成物、方法および使用は、DPP−4阻害剤およびGLP−1受容体アゴニストが、好ましくは、表1におけるエントリーによって選択される組合せに関する。
【0075】
表1
特定の実施形態(実施形態E)において、本発明による組合せ、組成物、方法および使用は、DPP−4阻害剤がリナグリプチンである組合せに関する。この特定の実施形態(実施形態E)によると、GLP−1受容体アゴニストは好ましくは、表2におけるエントリーE1からE8によって選択される
【0077】
本発明内で、本発明による組合せ、組成物または併用使用は、活性構成成分または成分の同時、逐次または別々の投与を想定し得ることを理解すべきである。
この状況において、本発明の意味内の「組合せ」または「併用」は、これらだけに限定されないが、構成成分または成分の固定されたおよび固定されていない(例えば、自由な)形態(キットを含めた)、ならびに使用(例えば、同時、逐次または別々の使用など)を含んでもよい。
【0078】
本発明はまた、
a)1種または複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と任意選択で一緒の、本明細書に定義されているDPP−4阻害剤を含む医薬組成物と、
b)本明細書に定義されているGLP−1受容体アゴニストを含む医薬組成物と
を含む、キットオブパーツまたは組合せ治療生成物を提供する。
本発明はまた、
a)本明細書に定義されているDPP−4阻害剤と、
b)本明細書に定義されているGLP−1受容体アゴニストと、
任意選択で、例えば、本発明の目的のために、例えば、2型糖尿病、肥満症および/または過体重の治療のため、ならびに/あるいは(ヒト)患者において体重を減少および維持するためになど、組合せ(例えば、同時に、別々に、逐次的にまたは経時的にずらした)中のDPP−4阻害剤およびGLP−1受容体アゴニストの使用を指示する説明書と
を含むキットを提供する。
【0079】
本発明の併用投与は、例えば、1つの単一の製剤もしくは剤形で、または2つの別々の製剤もしくは剤形で同時に投与することによるなど、活性構成成分または成分を一緒に投与することによって行い得る。代わりに、投与は、活性構成成分または成分を逐次的に(例えば、2つの別々の製剤または剤形で連続的になど)投与することによって行い得る。
本発明の併用療法のために、活性構成成分または成分は、別々に投与(これらが別々に製剤されることを意味する)、または全体で製剤(これらが同じ調製物または同じ剤形で製剤されることを意味する)し得る。したがって、本発明の組合せの1つの要素の投与は、組合せの他の要素の投与の前、同時、または後でよい。好ましくは、本発明による併用療法について、DPP−4阻害剤およびGLP−1受容体アゴニストは、異なる製剤で投与される。
他に断らない限り、併用療法は、一次、二次もしくは三次治療、あるいは最初もしくは追加の併用療法または補充療法を指してもよい。
【0080】
実施形態Aに関して、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤についての合成方法は、当業者に公知である。有利なことには、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤は、文献に記載されているような合成法を使用して調製することができる。したがって、例えば、式(I)のプリン誘導体は、これらの開示が本明細書において組み込まれているWO2002/068420、WO2004/018468、WO2005/085246、WO2006/029769またはWO2006/048427に記載されているように得ることができる。
式(II)のプリン誘導体は、例えば、これらの開示が本明細書において組み込まれているWO2004/050658またはWO2005/110999に記載されているように得ることができる。
式(III)および(IV)のプリン誘導体は、例えば、これらの開示が本明細書において組み込まれているWO2006/068163、WO2007/071738またはWO2008/017670に記載されているように得ることができる。本明細書の上記で特に言及したこれらのDPP−4阻害剤の調製は、これと関連する公開資料に開示されている。特定のDPP−4阻害剤の多形結晶の変形形態および製剤は、各々、それらの開示のその全体が本明細書中に組み込まれているWO2007/128721およびWO2007/128724に開示されている。メトホルミンまたは他の組合せパートナーを有する特定のDPP−4阻害剤の製剤は、その開示内容がその全体が本明細書中に組み込まれているWO2009/121945に記載されている。
【0081】
リナグリプチン/メトホルミンIR(即時放出)の2剤の固定された組合せ(錠剤)の典型的な有効性成分含量は、2.5/500mg、2.5/850mgおよび2.5/1000mgであり、これは1日1〜3回、特に、1日2回投与し得る。
リナグリプチン/メトホルミンXR(持続放出)の2剤の固定された組合せ(錠剤)の典型的な有効性成分含量は、5/500mg、5/1000mgおよび5/1500mg、または2.5/500mg、2.5/750mgおよび2.5/1000mg(各々の2つの錠剤)であり、これは1日1〜2回、特に、1日1回投与してもよく、好ましくは、食事と共に夕方に摂取する。
本発明は、メトホルミンとの(追加または最初の)併用療法において使用するための、本明細書に定義されているDPP−4阻害剤をさらに提供する(例えば、500〜2000mgのメトホルミン塩酸塩の1日の総量、例えば、500mg、850mgまたは1000mgなどを1日1回または2回)。
実施形態Bに関して、実施形態BのDPP−4阻害剤についての合成方法は、科学文献および/または公開された特許文献、特に、本明細書において引用したものに記載されている。
DPP−4阻害剤の適切な用量および剤形は当業者が決定してもよく、本明細書または関連する参照文献に記載されているものが含まれてもよい。
【0082】
温血脊椎動物、特に、ヒトにおける医薬品用途のために、本発明の化合物は通常、0.001〜100mg/kg体重、好ましくは、0.1〜15mg/kg体重の投与量で使用される(いずれの場合にも1日1〜4回)。この目的のために、任意選択で他の活性物質と合わされる化合物は、1種もしくは複数の不活性な従来の担体および/または希釈剤と一緒に、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、グルコース、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロースまたは脂肪物質(ハードファットなど)または適切なこれらの混合物と一緒に、従来のガレヌス調製物(プレーンもしくはコーティング錠剤、カプセル剤、散剤、懸濁剤または坐剤など)に組み込み得る。
したがって、本明細書に定義されているDPP−4阻害剤を含む本発明による医薬組成物は、当技術分野で記載するように、薬学的に許容される製剤賦形剤を使用して当業者によって調製される。このような賦形剤の例には、これらだけに限定されないが、希釈剤、結合剤、担体、充填剤、滑沢剤、流動促進剤、結晶化遅延剤、崩壊剤、可溶化剤、着色剤、pH調節剤、界面活性剤および乳化剤が含まれる。
【0083】
実施形態Aによる化合物のための適切な希釈剤の例には、セルロースパウダー、リン酸水素カルシウム、エリトリトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、アルファ化デンプンまたはキシリトールが含まれる。
実施形態Aによる化合物のための適切な滑沢剤の例には、タルク、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水添ヒマシ油またはステアリン酸マグネシウムが含まれる。
実施形態Aによる化合物のための適切な結合剤の例には、コポビドン(ビニルピロリドンと他のビニル誘導体との共重合物)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、アルファ化デンプン、または低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)が含まれる。
実施形態Aによる化合物のための適切な崩壊剤の例には、トウモロコシデンプンまたはクロスポビドンが含まれる。
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の医薬製剤を調製する適切な方法は、
・適切な打錠賦形剤を有する粉末混合物中の活性物質の直接打錠;
・適切な賦形剤との顆粒化、適切な賦形剤とのそれに続く混合、およびそれに続く打錠、およびフィルムコーティング;あるいは
・カプセル剤への粉末混合物または顆粒のパッキング
である。
【0084】
適切な顆粒化方法は、
・強力ミキサーでの湿式造粒、それに続く流動床乾燥;
・ワンポット顆粒化;
・流動床顆粒化;あるいは
・適切な賦形剤との乾式造粒(例えば、ローラー圧縮による)およびそれに続く打錠またはカプセル剤へのパッキング
である。
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の例示的な組成(例えば、錠剤コア)は、第1の希釈剤のマンニトール、さらなる結合剤特性を伴う第2の希釈剤としてアルファ化デンプン、結合剤であるコポビドン、崩壊剤であるトウモロコシデンプン、および滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含み、コポビドンおよび/またはトウモロコシデンプンは、任意選択でよい。
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の錠剤は、フィルムコーティングしてもよく、好ましくは、フィルムコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、タルク、二酸化チタンならびに酸化鉄(例えば、赤色および/または黄色)を含む。
【0085】
本発明のDPP−4阻害剤および/または本発明のGLP−1受容体アゴニストの剤形、製剤および投与についての詳細については、科学文献および/または公開された特許文献、特に、本明細書において引用したものを参照する。
好ましい実施形態において、本発明による組合せの要素であるDPP−4阻害剤は好ましくは、経口的に投与される。別の好ましい実施形態において、組合せの構成成分であるGLP−1受容体アゴニストは好ましくは、注射によって投与される。
本発明のGLP−1受容体アゴニストの注射用製剤は、公知の製剤技術によって、例えば、注射可能な溶液剤または懸濁剤を得るために、通常、滅菌水と、任意選択で例えば、溶解性を助長するためまたは保存などのためのさらなる添加物とを含む、適切な液体担体を使用して調製し得る。
【0086】
医薬組成物(または製剤)は、種々の方法でパッケージし得る。一般に、分配のための物品には、適当な形態の医薬組成物を含有する容器が含まれる。錠剤は典型的には、容易な取扱いのため、分配および貯蔵のため、ならびに貯蔵の間の環境との長期の接触において組成物の適切な安定性を確実にするため、適当な一次パッケージ中でパックされる。錠剤のための一次容器は、ボトルまたはブリスターパックでよい。
例えば、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せのための適切なボトルは、ガラスまたはポリマー(好ましくは、ポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HD−PE))から作製され、ねじ蓋で密封されてもよい。ねじ蓋は、小児による内容物へのアクセスを予防または妨害するための、小児がいたずらできない安全にできたクロージャー(例えば、押してねじる型のクロージャー)を備えていてもよい。必要な場合(例えば、高湿度の領域において)、乾燥剤(例えば、ベントナイトクレイ、分子篩、または好ましくはシリカゲルなど)をさらに使用することによって、パッケージされた組成物の保存寿命は延長することができる。
【0087】
例えば、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せのための適切なブリスターパックは、トップホイル(錠剤によって破ることができる)およびボトム部分(錠剤のためのポケットを含有する)を含み、またはこれらで形成される。トップホイルは、その内側(シーリング側)上がヒートシールポリマー層でコーティングされている金属ホイル、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金ホイル(例えば、20μm〜45μm、好ましくは、20μm〜25μmの厚さを有する)を含有し得る。ボトム部分は、ポリ(塩化(choride)ビニリデン)(PVDC)でコーティングされた多層ポリマーホイル(例えば、ポリ(塩化(choride)ビニル)(PVC);もしくはポリ(クロロトリフルオロエチレン(chlorotriflouroethylene))(PCTFE)など)で積層したPVCホイル、または多層ポリマー−金属−ポリマーホイル(例えば、冷間成形可能な積層PVC/アルミニウム/ポリアミド組成物など)を含有してもよい。
特に、熱く湿潤な気候条件下で長い貯蔵期間を確実にするために、多層ポリマー−金属−ポリマーホイル(例えば、積層ポリエチレン/アルミニウム/ポリエステル組成物)でできているさらなるオーバーラップまたはパウチを、ブリスターパックのために使用し得る。このパウチパッケージ中の補足の乾燥剤(例えば、ベントナイトクレイ、分子篩、または好ましくは、シリカゲルなど)は、このような厳しい条件下で保存寿命をさらに延長し得る。
【0088】
物品は、治療生成物の市販のパッケージ中に通常含まれる説明書を指す、ラベルまたは添付文書をさらに含んでもよく、これは、このような治療生成物の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含有し得る。一実施形態において、ラベルまたは添付文書は、組成物が本明細書に記載されている目的のいずれかのために使用することができることを示す。
第1の実施形態(実施形態A)に関して、本明細書において実施形態Aにおいて言及するDPP−4阻害剤に典型的に必要な投与量は、静脈内に投与されるとき、0.1mg〜10mg、好ましくは、0.25mg〜5mgであり、経口的に投与されるとき、0.5mg〜100mg、好ましくは、2.5mg〜50mgまたは0.5mg〜10mg、より好ましくは、2.5mg〜10mgまたは1mg〜5mgである(いずれの場合にも、1日1〜4回)。したがって、例えば、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンの投与量は、経口的に投与されるとき、患者毎に1日当たり0.5mg〜10mg、好ましくは、患者毎に1日当たり2.5mg〜10mgまたは1mg〜5mgである。
【0089】
本明細書の実施形態Aにおいて言及するDPP−4阻害剤を含む医薬組成物で調製される剤形は、0.1〜100mgの投与量範囲で活性成分を含有する。したがって、例えば、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチンの特定の有効性成分含量は、0.5mg、1mg、2.5mg、5mgおよび10mgである。
第2の実施形態(実施形態B)に関して、哺乳動物、例えば概ね70kgの体重の、例えばヒトに投与される、本明細書において実施形態Bにおいて言及するDPP−4阻害剤の用量は一般に、1人毎に1日当たり約0.5mg〜約350mg、例えば、約10mg〜約250mg、好ましくは、20〜200mg、より好ましくは、20〜100mgの活性部分、あるいは好ましくは、例えば、同じサイズでよい1〜4つの単回用量に分割された、1人毎に1日当たり約0.5mg〜約20mg、好ましくは、2.5〜10mgでよい。単一の有効性成分含量は、例えば、10mg、25mg、40mg、50mg、75mg、100mg、150mgおよび200mgのDPP−4阻害剤の活性部分を含む。
DPP−4阻害剤であるシタグリプチンの有効性成分含量は通常、25〜200mgの活性部分である。シタグリプチンの推奨される用量は、1日1回の活性部分(遊離塩基無水物)について計算して100mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物(活性部分)の単位有効性成分含量は、25mg、50mg、75mg、100mg、150mgおよび200mgである。シタグリプチン(例えば、錠剤毎)の特定の単位有効性成分含量は、25mg、50mgおよび100mgである。シタグリプチン遊離塩基無水物に対して当量のシタグリプチンリン酸塩一水和物、すなわち各々、32.13mg、64.25mg、96.38mg、128.5mg、192.75mg、および257mgを、医薬組成物中で使用する。25mgおよび50mgのシタグリプチンの調節された投与量は、腎不全を有する患者のために使用される。シタグリプチン/メトホルミンの2剤の組合せの典型的な有効性成分含量は、50/500mgおよび50/1000mgである。
DPP−4阻害剤であるビルダグリプチンの投与量範囲は通常、毎日10〜150mg、特に、毎日25〜150mg、25〜100mgまたは25〜50mgまたは50〜100mgである。毎日の経口投与量の特定の例は、25mg、30mg、35mg、45mg、50mg、55mg、60mg、80mg、100mgまたは150mgである。より特定の態様において、ビルダグリプチンの毎日の投与は、25〜150mgまたは50〜100mgでよい。別のより特定の態様において、ビルダグリプチンの毎日の投与は、50mgまたは100mgでよい。活性成分の適用は、1日3回まで、好ましくは、1日1回または2回行い得る。特定の有効性成分含量は、50mgまたは100mgのビルダグリプチンである。ビルダグリプチン/メトホルミンの2剤の組合せの典型的な有効性成分含量は、50/850mgおよび50/1000mgである。
【0090】
アログリプチンは、5mg/日〜250mg/日、任意選択で10mg〜200mg、任意選択で10mg〜150mg、任意選択で10mg〜100mgのアログリプチンの1日用量で患者に投与し得る(どの場合にも、アログリプチンの遊離塩基の形態の分子量に基づいて)。したがって、使用し得る特定の投与量には、これらに限定されないが、1日当たり10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mgおよび100mgのアログリプチンが含まれる。アログリプチンは、その遊離塩基の形態でまたは薬学的に許容される塩として投与し得る。
サクサグリプチンは、2.5mg/日〜100mg/日、任意選択で2.5mg〜50mgの1日用量で患者に投与し得る。使用し得る特定の投与量には、これらに限定されないが、1日当たり2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、50mgおよび100mgのサクサグリプチンが含まれる。サクサグリプチン/メトホルミンの2剤の組合せの典型的な有効性成分含量は、2.5/500mgおよび2.5/1000mgである。
【0091】
本発明のDPP−4阻害剤の特別の実施形態は、低い用量レベルで、例えば、患者毎に1日当たり100mg未満または70mg未満、好ましくは、患者毎に1日当たり50mg未満、より好ましくは、30mg未満または20mg未満、さらにより好ましくは、1mg〜10mg、特に、1mg〜5mg(より特定すると、5mg)の経口用量レベルで治療的に効果的なそれらの経口的に投与されるDPP−4阻害剤を指す(必要な場合、同じサイズでよい1つ〜4つの単回用量、特に、1つまたは2つの単回用量に分割され、優先的に、経口的に1日1回または2回(より優先的には、1日1回)投与され、有利なことには、1日の任意の時点で、食物と共にもしくは伴わず投与される。したがって、例えば、毎日の経口量である5mgのBI1356は、1日の任意の時点で、または食物と共にもしくは伴わず、1日1回の投与計画(すなわち、5mgのBI1356、1日1回)または1日2回の投与計画(すなわち、2.5mgのBI1356、1日2回)で与えることができる。
【0092】
GLP−1受容体アゴニストは典型的には、皮下注射、例えば、1日3回、1日2回、1日1回から週1回の範囲の注射によって投与される。GLP−1受容体アゴニストの適切な用量および剤形は、当業者が決定し得る。
例えば、エキセナチドは、メインの食事の前に、皮下注射によって1日2回投与される(Byetta、5〜30μg、特に、5〜20μg、好ましくは、5〜10μg、特定の有効性成分含量は、5μgまたは10μgである)。
エキセナチドLARは、皮下注射によって週1回投与される(0.1〜3mg、特に、0.5mg〜2.0mg、特定の有効性成分含量は、0.8mgまたは2.0mgである)。
リラグルチドは、皮下注射によって1日1回投与される(Victoza、0.5〜3mg、特に、0.5mg〜2mg、特定の有効性成分含量は、0.6mg、0.9mg、1.2mgまたは1.8mgである)。
タスポグルチドは、皮下注射によって週1回投与される(1〜30mg、特定の有効性成分含量は、1mg、8mg、10mg、20mgまたは30mgである)。
セマグルチドは、皮下注射によって週1回投与される(0.1〜1.6mg)。
アルビグルチドは、皮下注射によって週1回投与される(4〜30mg、特定の有効性成分含量は、4mg、15mgまたは30mgである)。
リキシセナチドは、皮下注射によって1日1回投与される(10〜20μg、特定の有効性成分含量は、10μg、15μgまたは20μgである)。
デュラグルチドは、皮下注射によって週1回投与される(0.25〜3mg、特定の有効性成分含量は、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.5mg、2.0mgまたは3.0mgである)。
【0093】
注射による送達に加えて、GLP−1受容体アゴニストの他の投与経路を意図してもよく、例えば、本発明の意味内の併用療法において使用するためのGLP−1受容体アゴニストにはまた、これらだけに限定されないが、経口送達、連続(皮下)送達、肺(例えば、吸入による)もしくは経鼻送達、または経皮的送達(例えば、パッチによる)のために適した、ならびに/あるいはこれらのために製剤されたものが含まれ、皮下注射が好ましい。
【0094】
本発明による組合せおよび組成物中の活性成分の投与量は変化し得るが、活性成分の量は、適切な剤形が得られるような量であるべきである。したがって、選択された投与量および選択された剤形は、所望の治療効果、投与経路および治療期間によって決まる。組合せに適した投与量範囲は、単一の薬剤についての最大耐用量からより低い用量、例えば、最大耐用量の十分の1である。
【0095】
本発明の意味において強調される特に好ましいDPP−4阻害剤は、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(BI1356またはリナグリプチンとしても公知である)である。BI1356は、高い効力、24時間の作用持続時間、および広範な治療濃度域を示す。1mg、2.5mg、5mgまたは10mgのBI1356の複数の経口用量を1日1回12日間投与されている2型糖尿病を有する患者において、BI1356は、定常状態への急速な到達(例えば、全ての用量群において処理の第2日目と第5日目との間に定常状態血漿レベル(13日目に投与前血漿濃度の90%超)に達する)、僅かな蓄積(例えば、1mg超の用量で平均蓄積率R
A,AUC≦1.4)、ならびにDPP−4阻害に対して長期にわたって作用を保つこと(例えば、5mgおよび10mgの用量レベルで殆ど完全な(90%超)DPP−4阻害、すなわち定常状態で、各々、92.3%および97.3%阻害、ならびに薬物摂取後24時間の間隔にわたって80%超阻害)、ならびに用量2.5mg以上で食後2時間の血中グルコース変動の有意な減少(≧80%)(1日目に既に)、ならびに尿中に排泄される未変化親化合物の累積量が1日目に投与された用量の1%未満および12日目に約3〜6%以下に増加すること(腎クリアランスCL
R,ssは、投与された経口用量について約14〜約70mL/分であり、例えば、5mgの用量について、腎クリアランスは、約70ml/分である)を伴い、都合よい薬力学的および薬物動態学的プロファイルを示す(例えば、下記の表iを参照されたい)。2型糖尿病を有するヒトにおいて、BI1356は、プラセボ様の安全性および耐容性を示す。約5mg以上の低用量で、BI1356は、完全な24時間の期間のDPP−4阻害を伴い真の1日1回の経口薬物として作用する。治療的経口用量レベルで、BI1356は、肝臓によって主に排泄され、腎臓によって軽微な程度のみ(投与された経口用量の約7%未満)排泄される。BI1356は、胆汁によって未変化で主に排泄される。腎臓によって除去されるBI1356の画分は、時間と共におよび用量の増加と共に極めて僅かにのみ増加し、その結果、患者の腎機能に基づいてBI1356の用量を変更する必要性はない可能性がある。低い蓄積の可能性および広範な安全域と組み合わせたBI1356の腎臓によらない除去は、腎機能不全および糖尿病性腎症の罹患率が高い患者集団において有意な利益となり得る。
【0096】
表i: 定常状態におけるBI1356の薬物動態パラメーターの幾何平均(g平均)および幾何変動係数(gCV)(12日目)
【0097】
異なる代謝機能障害は同時に起こることが多いため、いくつかの異なる活性要素を互いに合わせることが示されることが非常に多い。したがって、診断される機能障害によって、DPP−4阻害剤を、各々の障害には通例の活性物質(例えば、他の抗糖尿病物質から選択される1種もしくは複数の活性物質、特に、血液中の血糖レベルもしくは脂質レベルを低下させ、血液中のHDLレベルを上昇させ、血圧を低下させ、またはアテローム性動脈硬化症もしくは肥満症の治療において適応となる活性物質など)と合わせた場合、改善された治療成果を得ることができる。
【0098】
上記のDPP−4阻害剤はまた、単独療法におけるそれらの使用に加えて、他の活性物質と併せて使用してもよく、これによって改善された治療結果を得ることができる。このような併用治療は、物質の自由な組合せとして、または固定された組合せの形態、例えば、錠剤またはカプセル剤で与えてもよい。これに必要とされる組合せパートナーの医薬製剤は、医薬組成物として商業的に得てもよく、または従来の方法を使用して当業者が製剤してもよい。医薬組成物として商業的に得ることができる活性物質は、従来技術において多数の場所において、例えば、連邦製薬工業連合の「Rote Liste(登録商標)」に毎年掲載される薬物の一覧において、または「Physicians’ Desk Reference」として公知の処方薬についてのメーカー情報の毎年更新されている編纂物に記載されている。
【0099】
抗糖尿病の組合せパートナーの例は、メトホルミン;スルホニル尿素(グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン(gliquidon)、グリボルヌリドおよびグリクラジドなど);ナテグリニド;レパグリニド;ミチグリニド、チアゾリジンジオン(ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなど);PPARγモジュレーター(メタグリダセン(metaglidases)など);PPAR−γアゴニスト(ミトグリタゾン、INT−131、バラグリタゾンまたはリボグリタゾンなど);PPAR−γアンタゴニスト;PPAR−γ/αモジュレーター(テサグリタザル、ムラグリタザル、アレグリタザル、インデグリタザルおよびKRP297など);PPAR−γ/α/δモジュレーター(例えば、ロベグリタゾンなど);AMPK活性化剤(AICARなど);アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC1およびACC2)阻害剤;ジアシルグリセロール−アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤;膵臓β細胞GCRPアゴニスト、例えば、SMT3−受容体−アゴニストおよびGPR119、例えば、GPR119アゴニストである5−エチル−2−{4−[4−(4−テトラゾール−1−イル−フェノキシメチル)−チアゾール−2−イル]−ピペリジン−1−イル}−ピリミジンまたは5−[1−(3−イソプロピル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−ピペリジン−4−イルメトキシ]−2−(4−メタンスルホニル−フェニル)−ピリジン;11β−HSD−阻害剤;FGF19アゴニストまたは類似体;α−グルコシダーゼ遮断剤(アカルボース、ボグリボースおよびミグリトールなど);α2−アンタゴニスト;インスリンおよびインスリン類似体(ヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリングルリジン(glusilin)、r−DNA−インスリンアスパルト、NPHインスリン、インスリンデテミル、インスリンデグルデク、インスリントレゴピル、インスリン亜鉛懸濁液およびインスリングラルギンなど);胃抑制ペプチド(GIP);アミリンおよびアミリン類似体(例えば、プラムリンチドまたはダバリンチド);GLP−1およびGLP−1類似体(エキセンディン−4、例えば、エキセナチド、エキセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド(AVE−0010)、LY−2428757(GLP−1のペグ化バージョン)、デュラグルチド(LY−2189265)、セマグルチドまたはアルビグルチドなど);SGLT2−阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、セルグリフロジン(KGT−1251)、アチグリフロジン、カナグリフロジンまたは(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[3−(1−ベンゾチオフェン−2−イルメチル)−4−フルオロフェニル]−D−グルシトール、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジンなど);タンパク質チロシン−ホスファターゼの阻害剤(例えば、トロズスクエミン);グルコース−6−ホスファターゼの阻害剤;フルクトース−1,6−ビスホスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリラーゼモジュレーター;グルカゴン受容体アンタゴニスト;ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤;ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)阻害剤;チロシン−キナーゼ(50mg〜600mg)、例えば、PDGF−受容体−キナーゼの阻害剤(EP−A−564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976を参照されたい)、またはセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤;グルコキナーゼ/調節タンパク質モジュレーター(グルコキナーゼ活性化剤を含めた);グリコーゲンシンターゼキナーゼ阻害剤;SH2ドメイン含有イノシトール5−ホスファターゼ2型(SHIP2)の阻害剤;IKK阻害剤(高用量サリチレートなど);JNK1阻害剤;タンパク質キナーゼC−θ阻害剤;β3アゴニスト(リトベグロン、YM178、ソラベグロン、タリベグロン、N−5984、GRC−1087、ラファベグロン、FMP825など);アルドースレダクターゼ阻害剤(AS3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ−314、CP−744809、およびCT−112など);SGLT−1またはSGLT−2阻害剤;KV1.3チャネル阻害剤;GPR40モジュレーター(例えば、[(3S)−6−({2’,6’−ジメチル−4’−[3−(メチルスルホニル)プロポキシ]ビフェニル−3−イル}メトキシ)−2,3−ジヒドロ−1−ベンゾフラン−3−イル]酢酸など);SCD−1阻害剤;CCR−2アンタゴニスト;ドパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンメシレート[Cycloset]);4−(3−(2,6−ジメチルベンジルオキシ)フェニル)−4−オキソブタン酸;サーチュイン刺激剤;ならびに他のDPP IV阻害剤である。
【0100】
メトホルミンは通常、約100mg〜500mgもしくは200mg〜850mg(1日1〜3回)、または約300mg〜1000mg(1日1回もしくは1日2回)の様々な投与計画、あるいは約100mg〜1000mg、または好ましくは、500mg〜1000mg(1日1回もしくは2回)、または約500mg〜2000mg(1日1回)の用量の遅延放出メトホルミンを使用して、1日当たり約500mgから2000mgの変化する用量で2500mgまで与えられる。特定の有効性成分含量は、250mg、500mg、625mg、750mg、850mgおよび1000mgのメトホルミン塩酸塩でよい。
【0101】
10〜16歳の小児について、メトホルミンの推奨される開始用量は、1日1回与えられる500mgである。この用量が適切な結果を生じない場合、用量を1日2回、500mgに増加してもよい。さらなる増加は2000mgの最大1日用量まで毎週500mgずつで行ってもよく、分割用量(例えば、2つまたは3つの分割用量)で与えられる。メトホルミンは、悪心を減少させるために食物と共に投与し得る。
ピオグリタゾンの投与量は通常、1日1回、約1〜10mg、15mg、30mg、または45mgである。
ロシグリタゾンは通常、1日1回、4〜8mgの用量(または2回に分割される)で与えられる(典型的な有効性成分含量は、2mg、4mgおよび8mgである)。
【0102】
グリベンクラミド(グリブリド)は通常、1日1回、2.5〜5mgから20mgの用量(または2回に分割される)で(典型的な有効性成分含量は、1.25mg、2.5mgおよび5mgである)、あるいは微粒子化グリベンクラミドは、1日1回、0.75〜3mgから12mgの用量(または2回に分割される)で与えられる(典型的な有効性成分含量は、1.5mg、3mg、4.5mgおよび6mgである)。
グリピジドは通常、1日1回、2.5mgから10〜20mgの用量(または2回に分割されて40mgまで)で(典型的な有効性成分含量は、5mgおよび10mgである)、あるいは持続放出グリベンクラミドは、5〜10mg(20mgまで)の用量(1日1回)で与えられる(典型的な有効性成分含量は、2.5mg、5mgおよび10mgである)。
グリメピリドは通常、1日1回、1〜2mgから4mgの用量(8mgまで)で与えられる(典型的な有効性成分含量は、1mg、2mgおよび4mgである)。
グリベンクラミド/メトホルミンの2剤の組合せは通常、1日1回、1.25/250mgから1日2回、10/1000mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、1.25/250mg、2.5/500mgおよび5/500mgである)。
【0103】
グリピジド/メトホルミンの2剤の組合せは通常、1日2回、2.5/250mg〜10/1000mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、2.5/250mg、2.5/500mgおよび5/500mgである)。
グリメピリド/メトホルミンの2剤の組合せは通常、1日2回、1/250mg〜4/1000mgの用量で与えられる。
ロシグリタゾン/グリメピリドの2剤の組合せは通常、1日1回または2回、4/1mgから1日2回4/2mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、4/1mg、4/2mg、4/4mg、8/2mgおよび8/4mgである)。
ピオグリタゾン/グリメピリドの2剤の組合せは通常、1日1回、30/2mg〜30/4mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、30/4mgおよび45/4mgである)。
ロシグリタゾン/メトホルミンの2剤の組合せは通常、1日2回、1/500mg〜4/1000mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、1/500mg、2/500mg、4/500mg、2/1000mgおよび4/1000mgである)。
ピオグリタゾン/メトホルミンの2剤の組合せは通常、1日1回または2回、15/500mgから1日3回、15/850mgの用量で与えられる(典型的な有効性成分含量は、15/500mgおよび15/850mgである)。
非スルホニル尿素インスリン分泌促進剤であるナテグリニドは通常、60〜120mgの用量で食事と共に与えられる(360mg/日まで、典型的な有効性成分含量は、60mgおよび120mgである)。レパグリニドは通常、0.5〜4mgの用量で食事と共に与えられる(16mg/日まで、典型的な有効性成分含量は、0.5mg、1mgおよび2mgである)。レパグリニド/メトホルミンの2剤の組合せは、1/500mgおよび2/850mgの有効性成分含量で利用可能である。
アカルボースは通常、25〜100mgの用量で食事と共に与えられる。ミグリトールは通常、25〜100mgの用量で食事と共に与えられる。
【0104】
血液中の脂質レベルを低下させる組合せパートナーの例は、HMG−CoA−レダクターゼ阻害剤(シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチンおよびロスバスタチンなど);フィブラート(ベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、エトフィブラートおよびエトフィルリンクロフィブラートなど);ニコチン酸およびその誘導体(アシピモクスなど);PPAR−αアゴニスト;PPAR−δアゴニスト(例えば、{4−[(R)−2−エトキシ−3−(4−トリフルオロメチル−フェノキシ)−プロピルスルファニル]−2−メチル−フェノキシ}−酢酸など);アシル−コエンザイムAの阻害剤:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT;EC2.3.1.26)(アバシミブなど);コレステロール再吸収阻害剤(エゼチミブなど);胆汁酸に結合する物質(コレスチラミン、コレスチポールおよびコレセベラムなど);胆汁酸輸送の阻害剤;HDL調節活性物質(D4F、リバースD4F、LXR調節活性物質およびFXR調節活性物質など);CETP阻害剤(トルセトラピブ、JTT−705(ダルセトラピブ)またはWO2007/005572からの化合物12(アナセトラピブ)など);LDL受容体モジュレーター;MTP阻害剤(例えば、ロミタピド);ならびにApoB100アンチセンスRNAである。
アトルバスタチンの投与量は通常、1日1回、1mg〜40mgまたは10mg〜80mgである。
【0105】
血圧を低下させる組合せパートナーの例は、β遮断薬(アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、メトプロロールおよびカルベジロールなど);利尿剤(ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン(chlortalidon)、キシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロリドおよびトリアムテレンなど);カルシウムチャネル遮断薬(アムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミルおよびジルチアゼムなど);ACE阻害剤(ラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリルおよびトランドラプリルなど);ならびにアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)(テルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、アジルサルタンおよびエプロサルタンなど)である。
テルミサルタンの投与量は通常、1日当たり20mg〜320mgまたは40mg〜160mgである。
【0106】
血液中のHDLレベルを増加させる組合せパートナーの例は、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤;内皮リパーゼの阻害剤;ABC1の調節因子;LXRαアンタゴニスト;LXRβアゴニスト;PPAR−δアゴニスト;LXRα/β調節因子、ならびにアポリポタンパク質A−Iの発現および/または血漿濃度を増加させる物資である。
肥満症の治療のための組合せパートナーの例は、シブトラミン;テトラヒドロリプスタチン(オルリスタット);アリザイム(セチリスタット);デキスフェンフルラミン;アキソキン;カンナビノイド受容体1アンタゴニスト(CB1アンタゴニストであるリモナバント(rimonobant)など);MCH−1受容体アンタゴニスト;MC4受容体アゴニスト;NPY5およびNPY2アンタゴニスト(例えば、ベルネペリット);β3−ARアゴニスト(SB−418790およびAD−9677など);5HT2c受容体アゴニスト(APD356(ロルカセリン)など);ミオスタチン阻害剤;Acrp30およびアディポネクチン;ステアロイル(steroyl)CoAデサチュラーゼ(SCD1)阻害剤;脂肪酸シンターゼ(FAS)阻害剤;CCK受容体アゴニスト;グレリン受容体モジュレーター;Pyy3−36;オレキシン受容体アンタゴニスト;ならびにテソフェンシン;ならびに2剤の組合せであるブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラマート/フェンテルミンおよびプラムリンチド/メトレレプチンである。
【0107】
アテローム性動脈硬化症の治療のための組合せパートナーの例は、ホスホリパーゼA2阻害剤;チロシン−キナーゼの阻害剤(50mg〜600mg)、例えば、PDGF−受容体−キナーゼ(EP−A−564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976を参照されたい);oxLDL抗体およびoxLDLワクチン;apoA−1Milano;ASA;ならびにVCAM−1阻害剤である。
【0108】
本明細書に記載されている特定の実施形態によって、本発明の範囲は限定されない。本発明の様々な変形形態は、本明細書に記載されているものに加えて、本開示から当業者には明らかになり得る。このような変形形態は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。
本明細書において引用した全ての特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
本発明のさらなる実施形態、特徴および利点は、下記の例から明らかとなり得る。下記の例は、例示として、本発明の原理を制限することなく例示する役割を果たす。
【実施例】
【0109】
この研究の目的は、GLP−1受容体アゴニスト、例えば、皮下ミニポンプによる10日間または28日間のエキセナチド(30μg/kg/日、sc)、および経口的に与えられる10日間のエキセナチド(30μg/kg/日、sc)、それに続くビヒクルまたはBI1356(3mg/kg、po)などの反復投与の、食餌により誘発された肥満(DIO)Wistar系雌性ラット(すなわち、肥満症の動物モデル)における体重に対する作用を評価することである。BI1356は、肥満症/糖尿病の治療のための可能性を有する新規な化合物である。
実験動物の使用に関する全ての実験手順は、Home Office Certificate of Designation下で行なう。
【0110】
方法論:
Wistar系雌性ラットにおいて、動物に常に、粉末化した高脂肪食(VRF1および20%ラード)、粉末のチョコレート、粉末のピーナッツおよび水道水に自由に摂取させることによって20週間肥満を誘発する。ベースライン読取りの開始前の2週間、動物を単独で、ワイヤーのグリッド床を有するポリプロピレンケージに収容し、各ラットの食物摂取量の記録を可能にする。5日のベースライン期間に続いて、ビヒクルまたはエキセナチドを送達する浸透圧ミニポンプ(2ML2)を、麻酔剤下で皮下に(sc)インプラントする。手術を2日にわたり行い、その結果研究を2つの研究群に分割し(1日ずらす)、データを集める。11日目に、浸透圧ミニポンプを全ての動物から除去し、ビヒクルまたはエキセナチドを含有する新しいポンプ(2ML4)に10日間置き換える。さらに、動物を経口的にビヒクル(0.5%Natrosol)またはBI1356で処理し、
図1に示すように体重を毎日記録する。
浸透圧ミニポンプが創傷クリップを通して出現し始めるとき、動物毎に1回のみ動物を再びクリップする。ラットを飼養研究施設から概ね30分間取り出し、短時間(約10分)の麻酔下で創傷を再び閉じる。創傷が再び開いた場合、ラットを死亡させる。
結果:エキセナチドは、最初の11日間に有意な体重減少をもたらす。動物が11日目からビヒクル+ビヒクルを投与されるとき、再び体重が増える。しかし、DPP4阻害剤であるBI1356でさらに処理された動物は新しい体重レベルでこれらの体重が安定し、ビヒクル処理対照動物より有意により軽い(
図1を参照されたい)。
特定の外科手技:ガス麻酔(イソフルラン)を使用して動物を麻酔する。具体的には、麻酔を、イソフルラン(5%)、O
2(2l/分)、N
2O(2l/分)によって誘発する。この間に、インプラント部位を剪毛する。全ての手術は無菌技術を使用する。手術の間、2%のイソフルラン、O
2(1l/分)およびN
2O(1l/分)で麻酔を維持する。脇腹を切開し、適切なサイズのポケットを生じさせ、ポンプを挿入する。インプラントの直前に、ポンプにビヒクルまたはエキセナチドを充填する。1つまたは複数の創傷クリップ(VetTech Solutions)を使用して創傷を閉じる。BetadineスプレーおよびOpsiteドレッシングを、創傷に付着させる。手術の直後に、N
2Oガス流を除去し、O
2を2l/分の流量に増加させる。概ね1分後、イソフルランを遮断する。動物が回復の兆候(例えば、より速い呼吸速度、尾および/または肢の動き)を示し始めると、加熱ランプを備えた加熱マット上のホームケージに入れる。動物を手術の後2時間までおよび完全に回復するまで注意深くモニターする。ラットが麻酔剤から回復すると直ぐに、食物および水を自由に摂取させる。
【0111】
図1:体重の進展
図1:結果は、調節された平均+semである。n=5〜51(括弧内のn値は、21日目に残っている数である)。SEMは、統計学的モデルの残差から計算する。データは、1日目の体重を共変数としてANCOVAによって分析する。ビヒクル対照群に対する多重比較は、多重t検定による。ビヒクル対照からの有意差:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。エキセナチド30μg/kg/日(1〜10日目)+ビヒクル(11日目から)からの有意差:#p<0.05、##p<0.01(多重t検定)。パーセント値は、21日目のビヒクルと比較した体重減少である。
【0112】
エキセナチド処理動物は、皮膚の変質についてより高い発生率を示し、これは各々の動物の安楽死をもたらすことが多い。リナグリプチン処理動物は、より良好な生存を示す(
図2を参照されたい、例えば、約22〜23日の処理後、ビヒクル処理動物(A)は、約65%生存を示し、エキセナチド+ビヒクル処理動物(B)は、約67%生存を示し、エキセナチド+BI1356処理動物(E)は、約75%生存を示し、エキセナチド処理動物(F)は、約45%生存を示す)。
図2:生存プロット
図3:リナグリプチンは、GLP−1Rアゴニスト(例えば、エキセンディン−4)処理の中断後の体重(体脂肪を含めた)増加のリバウンドを減退させる。
図3:結果は、10日または21日の期間エキセナチドで処理された肥満Wistar系雌性ラットの体重における平均変化である(n=5〜11;エキセナチドによる1〜11日目のデータを集め、この期間にわたりエキセナチドで処理された動物についての全てのデータを含む)。平均は、ベースライン(1日目)における異なる処理群の体重の間の差異に応じて調節する。SEMは、統計学的モデルの残差から計算する。11日目に、ミニポンプを除去し、第2のミニポンプと置き換えた。エキセナチドで10日間処理された動物は、研究の残りの間、ビヒクル処理に切り換えた。エキセナチドを中止した、DPP−4阻害剤であるリナグリプチン(3mg/kg、po)で処理された動物の体重の変化を、図に例示する(右から1番目のバー:エキセナチド;右から2番目のバー:エキセナチド、続いてリナグリプチン;右から3番目のバー:エキセナチド、続いてビヒクル)。ビヒクル対照群に対する多重比較は、多重t検定によった。ビヒクル対照からの有意差:
*p<0.05;
**p<0.01。エキセナチド30μg/kg/日(1〜10日目)+ビヒクル、s.c.およびp.o.からの有意差(11日目から):#p=0.07(多重t検定)。
【0113】
図4:GLP−1Rアゴニスト(例えば、エキセンディン−4)の休止およびリナグリプチンによる置き換えは、体脂肪質量の再増加を予防する。
【0114】
表(a): 研究の終了時における動物の死骸の組成および最終体重(組織解剖の前)
高脂肪カフェテリア食を概ね20週
間与えられた肥満Wistar系雌性(DIO)ラットの体重、死骸の組成および関連する血漿マーカーに対する、単独または低用量のエキセナチド(3μg/kg/日、sc)と組み合わせたリナグリプチン(BI1356、3mg/kg、po、28日間1日1回)の作用を評価する。リナグリプチンは、ビヒクル処理対照と比較して、DIOラットにおける体重、毎日の食物摂取量、血漿グルコース、インスリンまたは死骸の脂肪に対して作用を有さず、組み合わせて投与したとき、低用量のエキセナチド(皮下にインプラントした浸透圧ミニポンプによって送達)の作用を増強しない。
【0115】
追加の研究(21日の期間)において、高用量のエキセナチド(30μg/kg/日、sc)は、DIOラットにおいて、ビヒクル処理対照と比較して体重(6%;p<0.001)および体脂肪(16%p<0.05)を減少させることが示される。死骸のタンパク質(p=0.8)および水(p=0.7)は、影響を受けない。エキセナチドを送達する浸透圧ミニポンプを除去し(10日目)、食塩水を送達する浸透圧ミニポンプに置き換えたDIOラットにおいて、これらの動物の体重が21日後に対照に対して有意差があるとはいえない(p=0.239)ように、体重の再増加が観察される。対照的に、リナグリプチン(3mg/kg、po)は、対照からの有意差が明白である(p<0.05)ように、エキセナチドの中止後に体重の再増加を減少させる。この体重の再増加は、脂肪の沈着によって主に特徴付けられ、リナグリプチン処理動物は、エキセナチドの中止の間にビヒクル処理のカウンターパートより10.6%より少ない脂肪を増加させる(p=0.07)。このような状況において、また
図3、
図4および表(a)を参照されたい。
リナグリプチンは、未処理DIOラットまたはエキセナチドで処理されたDIOラットにおいてそれ自体は体重減少作用を有さないが、高用量のGLP−1受容体アゴニストまたはエキセナチドによって体重減少が誘発され、次いでそれらが中止されたDIOラットにおいて、リナグリプチンは、それに続く体重の再増加を減少または遅延させることをこれらのデータは示す。したがって、リナグリプチンは、GLP−1受容体アゴニストまたはエキセナチドによる処理の断続的コースの間に、体重リバウンドの管理に使用することができる。
糖尿病患者は、GLP−1受容体アゴニストまたはエキセナチドによる治療において報告されることが多い悪心などの不快な副作用を避けるために1つの治療から別の治療に切り換えてもよい。
【0116】
結論として、本研究は、リナグリプチン(BI1356)が、確立され、かつ確認された肥満症の動物モデル、すなわち、顕著な肥満症、インスリン抵抗性(例えば、高インスリン血症)および/または耐糖能異常を進展させるために簡易化した3種の構成成分のカフェテリア食に連続的に曝露された薬物未処理のWistar系雌性ラットにおいて、体重、食物摂取量または死骸の組成を有意に変化させないことを示す。
【0117】
本研究において使用するラットは、食餌により誘発された肥満症を示すが、糖尿病表現型を示さず、したがって、それらの血漿グルコースおよびHbA1cレベルは、正常な範囲内である。
したがって、他の薬物クラス(例えば、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、インスリンなど)と対照的に、リナグリプチンは、糖尿病の進展における主要な原因となる要因である体重増加を促進する可能性は低いため、リナグリプチンによる治療が、体重に対して中立的な糖尿病の治療のために有用な戦略であることを本データは示す。
さらに、本データは、エキセナチドで処理された食餌により誘発された肥満ラットが、ビヒクル対照と比較して体重を減らすが、薬物を中止するとこの体重が元に戻ることを示す最初のデータである。重要なことに、この体重増加は、ビヒクル処理対照のレベルを超えて増加せず、この体重増加、特に、脂肪の増加は、リナグリプチンによる処理によって減少し得るという証拠が存在する。したがって、本発明は、例えば、GLP−1受容体アゴニズムによる最初の体重減少を誘発し、続いてDPP−4阻害剤(好ましくは、リナグリプチン)処理に置き換える、または切り換えることを含む治療計画を提供し、これは、体重減少後のそれに続く体重の再増加、特に、体脂肪の同時の増加を減少させ、予防し、または遅延させるのに都合よい。
【0118】
リナグリプチンおよび低用量のGLP−1受容体アゴニスト(エキセナチド)の直接の組合せは、各々の単一の薬剤よりも大きな、体脂肪に対する好ましい作用を有することがまたさらに示される(表(b)を参照されたい)。
【0119】
表(b): DIOラットにおける血漿パラメーターおよび体組成に対するリナグリプチンおよびエキセナチドの組合せの作用
【0120】
リナグリプチンをGLP−1受容体アゴニスト(例えば、エキセナチド)に加えることは、GLP−1受容体アゴニストの使用に対して用量節減作用を与えることをこれらのデータは示す。
さらなる研究において、食欲抑制剤シブトラミン(subutramine)と比較した、食事により誘発される肥満症(DIO)の非糖尿病性モデルにおける体重、総体脂肪、筋細胞内脂肪、および肝脂肪に対するリナグリプチンによる慢性処理の有効性を調査する。
ラットに高脂肪食を3カ月間与え、高脂肪食を続けながらビヒクル、リナグリプチン(10mg/kg)、またはシブトラミン(5mg/kg)をさらに6週間投与する。総体脂肪、筋肉脂肪、および肝脂肪の磁気共鳴分光法(MRS)分析を、処理の前、および研究の終わりに行なう。
【0121】
シブトラミンは、対照に対して体重の有意な減少(−12%)をもたし、一方リナグリプチンは、有意な作用を有さない(−3%)。総体脂肪はまた、シブトラミンによって有意に減少し(−12%)、一方リナグリプチン処理動物は、有意な減少を示さない(−5%)。しかし、リナグリプチンおよびシブトラミンは両方とも、筋細胞内脂肪の強力な減少をもたらす(各々、−24%および−34%)。さらに、リナグリプチンによる処理は、肝脂肪の激しい減少(−39%)をもたらし、一方シブトラミンの作用(−30%)は、有意性に達しない(表(c)を参照されたい)。したがって、リナグリプチンは体重に対して中立的であるが、筋細胞内および肝臓の脂質の蓄積を改善する。
【0122】
表(c):体重、総体脂肪、肝脂肪および筋細胞内脂肪に対するリナグリプチンの作用
【0123】
結論として、リナグリプチンによる治療は、筋細胞内脂質および肝脂肪の強力な減少を引き起こし、これは両方とも体重減少と無関係である。筋肉および肝脂肪に対するシブトラミンの作用は、この化合物によって誘発される公知の体重減少に主に帰する。