(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非ホウ素化分散剤が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスチルボトムおよびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ポリアミンに由来するポリイソブチレンスクシンイミドである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
前記非ホウ素化分散剤が、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスチルボトムおよびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ポリアミンに由来するポリイソブチレンスクシンイミドである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、上で開示される潤滑組成物およびドライブライン装置を潤滑するための方法を提供する。
【0020】
清浄剤
清浄剤は、過塩基化清浄剤、非過塩基化清浄剤またはそれらの混合物であってよい。
【0021】
清浄剤の調製は、当技術分野で公知である。過塩基化清浄剤の調製を記載する特許には、米国特許第2,501,731号;第2,616,905号;第2,616,911号;第2,616,925号;第2,777,874号;第3,256,186号;第3,384,585号;第3,365,396号;第3,320,162号;第3,318,809号;第3,488,284号;および第3,629,109号が含まれる。
【0022】
本明細書で用いるように、示されるTBN値および関連するTBNの範囲は「現状のもの」であり、すなわち、粘度の扱いで用いられる希釈油の従来の量を含有する。希釈油の従来の量は、清浄剤成分の一般的に30重量%から60重量%(しばしば40重量%から55重量%)の範囲内である。
【0023】
清浄剤は、非過塩基化清浄剤(中性清浄剤と呼ぶこともできる)であってよい。非過塩基化清浄剤のTBNは、20から200未満、または30から100、または35から50mg KOH/gであってよい。非過塩基化清浄剤のTBNは、20から175または30から100mg KOH/gであってもよい。非過塩基化清浄剤がヒドロカルビル置換スルホン酸などの強酸から調製される場合は、TBNはより低くてもよい(例えば0から50mg KOH/gまたは10から20mg KOH/g)。
【0024】
清浄剤は、200mg KOH/gを超える(一般的に250から600、または300から500mg KOH/g)TBNを有することができる過塩基化清浄剤であってよい。
【0025】
表現「金属比」、TBNおよび「せっけん含有量」のより詳細な記載は、当分野の技術者に公知であり、「Chemistry and Technology of Lubricants」という題名の標準教科書、第3版、R. M. MortierおよびS. T. Orszulik編、著作権2010年、小見出し7.2.5.Detergent Classificationの中の219〜220頁で説明されている。
【0026】
清浄剤は、塩基性の金属化合物と酸性の清浄剤基質との反応によって形成することができる。酸性の清浄剤基質には、アルキルフェノール、アルデヒド結合アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキル芳香族スルホン酸(例えば、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルトルエンスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸)、脂肪族カルボン酸、カリックスアレーン、サリキサレーン(salixarene)、アルキルサリチル酸またはそれらの混合物を含めることができる。
【0027】
金属塩基性化合物は、清浄剤に塩基性を供給するために用いられる。塩基性金属化合物は、金属の水酸化物または酸化物の化合物である。金属化合物の中で、金属は一般的にイオンの形である。金属は、一価、二価または三価であってよい。一価のとき、金属イオンMはアルカリ金属であってよく、二価のとき、金属イオンMはアルカリ土類金属であってよく、三価のとき、金属イオンMはアルミニウムであってよい。アルカリ金属には、リチウム、ナトリウムもしくはカリウム、またはそれらの混合物を含めることができ、一般的にナトリウムを含めることができる。アルカリ土類金属には、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはそれらの混合物を含めることができ、一般的にカルシウムまたはマグネシウムを含めることができる。
【0028】
水酸化物官能性を有する金属塩基性化合物の例には、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化アルミニウムが含まれる。酸化官能性を有する金属塩基性化合物の適する例には、酸化リチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化バリウムが含まれる。酸化物および/または水酸化物は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。酸化物または水酸化物は、水和または脱水であってよいが、水和が一般的である。一実施形態では、金属塩基性化合物は水酸化カルシウムであってよく、それは単独で、または他の金属塩基性化合物とのその混合物で用いることができる。水酸化カルシウムは、石灰としばしば呼ばれる。一実施形態では、金属塩基性化合物は、単独でまたは他の金属塩基性化合物とのその混合物で用いることができる、酸化カルシウムであってよい。
【0029】
総合すると、アルキルフェノール、アルデヒド結合アルキルフェノールおよび硫化アルキルフェノールが清浄剤を調製するために用いられる場合は、清浄剤はフェネートと呼ぶことができる。フェネートは、アルキルフェネート、アルデヒド結合アルキルフェネート、硫化アルキルフェネートまたはそれらの混合物であってよい。
【0030】
フェネートのTBNは、中性フェネートの場合、200未満、または30から175(一般的に150から175)mg KOH/gから、過塩基化フェネートの場合200以上から500、または210から400(一般的に230から270)mg KOH/gの範囲内であってよい。
【0031】
フェネート(すなわち、アルキルフェネート)のアルキル基は、4から80個、または6から45個、または8から20個、または9から15個の炭素原子を含有することができる。
【0032】
一実施形態では、清浄剤はスルホネートまたはその混合物であってよい。スルホネートは、モノヒドロカルビル置換ベンゼンまたはジヒドロカルビル置換ベンゼン(またはナフタレン、インデニル、インダニルもしくはビシクロペンタジエニル)スルホン酸から調製することができ、そこで、ヒドロカルビル基は、6から40個、または8から35個、または9から30個の炭素原子を含有することができる。
【0033】
ヒドロカルビル基は、ポリプロピレンまたは少なくとも10個の炭素原子を含有する直鎖状か分枝状のアルキル基に由来することができる。適するアルキル基の例には、分枝状および/もしくは直鎖状のデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル(nonodecyl)、エイコシル、ウンエイコシル、ドエイコシル、トリエイコシル、テトラエイコシル、ペンタエイコシル、ヘキサエイコシルまたはそれらの混合物が含まれる。
【0034】
一実施形態では、ヒドロカルビル置換スルホン酸には、ポリプロペンベンゼンスルホン酸および/もしくはC
16〜C
24アルキルベンゼンスルホン酸またはそれらの混合物を含めることができる。
【0035】
一実施形態では、スルホネート清浄剤は、米国特許出願第2005065045号(US7,407,919として特許付与される)の段落[0026]から[0037]に記載されているように、少なくとも8の金属比を有する主に直鎖状のアルキルベンゼンスルホネート清浄剤であってよい。一部の実施形態では、直鎖状アルキル基は、アルキル基の直鎖に沿ってどこででもベンゼン環に結合することができるが、多くの場合、直鎖の2、3または4位で、一部の例では主に2位で結合する。
【0036】
中性であるかわずかに塩基性である場合は、スルホネート清浄剤は、100未満、または75未満、一般的に20から50mg KOH/gまたは0から20mg KOH/gのTBNを有することができる。
【0037】
過塩基化の場合は、スルホネート清浄剤は、200を超える、または300から550、または350から450mg KOH/gのTBNを有することができる。
【0038】
サリチレート清浄剤は、アルキル置換サリチル酸に由来することができる。中性サリチレートのTBNは、50から200、または75から175mg KOH/gであってよい。過塩基化サリチレートは、150超から400、または175から350mg KOH/gのTBNを有することができる。
【0039】
サリチレートのアルキル基は、4から80個、または6から45個、または8から20個、または9から18個の炭素原子を含有することができる。異なる実施形態では、サリチレートのアルキル基は、12または16個の炭素原子を含有することができる。
【0040】
スルホネート、フェネートおよびサリチレート清浄剤の化学構造は、当分野の技術者に公知である。「Chemistry and Technology of Lubricants」という表題の標準教科書、第3版、R. M. MortierおよびS. T. Orszulik編、著作権2010年、小見出し7.2.6の中の220〜223頁は、前記清浄剤およびそれらの構造の一般的開示を提供する。
【0041】
サリゲニン清浄剤は、米国特許第7,285,516号の第3欄の47行目から第5欄の63行目にかけて記載される。
【0042】
サリキサレート清浄剤は、米国特許第7,285,516号の第5欄の64行目から第7欄の53行目にかけて記載される。一般用語で、サリキサレートは、ホルムアルデヒドの存在下でのヒドロカルビル置換フェノールと(任意選択でヒドロカルビル置換の)サリチル酸とのカップリングに由来する。サリキサレート誘導体およびそれらの調製方法は、米国特許第6,200,936号およびPCT公開第WO01/56968号にも記載される。サリキサレート誘導体は大環状ではなく主に直鎖状の構造を有すると考えられているが、両方の構造が用語「サリキサレート」に包含されるものとする。過塩基化サリキサレートは、170から300mg KOH/gのTBNを有することができる。中性サリキサレートは、50から170のmg KOH/g未満のTBNを有することができる。
【0043】
一実施形態では、清浄剤は、脂肪族カルボン酸に由来するカルボキシレートであってよい。脂肪酸は、6から30個、または7から16個の炭素原子を含有することができる。適するカルボン酸の例には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、デカン酸、ドデカン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、アラキジン酸、ガドレイン酸、エイコサジエン酸、ベヘン酸、エルカ酸、トール油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸またはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、脂肪酸はオレイン酸またはトール油脂肪酸である。
【0044】
カルボキシレートは、0.2から10、または0.5から7、または0.7から5の金属比を有することができる。過塩基化の場合は、金属比は1を超える。
【0045】
一実施形態では、酸性または中和された清浄剤基質は、前記基質の少なくとも2つの混合物を含む。2つ以上の清浄剤基質が用いられる場合は、形成される過塩基化清浄剤は複合体/ハイブリッドと記載することができる。例えば米国特許第6,429,178号;第6,429,179号;第6,153,565号;および第6,281,179号に記載されるように、過塩基化金属含有清浄剤には、フェネートおよび/またはスルホネート成分を含む混合界面活性剤系、例えばフェネート/サリチレート、スルホネート/フェネート、スルホネート/サリチレート、スルホネート/フェネート/サリチレートで形成される「ハイブリッド」清浄剤が含まれてもよい。例えば、ハイブリッドスルホネート/フェネート清浄剤が使用される場合は、ハイブリッド清浄剤は、それぞれ類似した量のフェネートおよびスルホネートせっけんを導入する、別々のフェネートおよびスルホネート清浄剤の量と同等とみなされるであろう。
【0046】
清浄剤は、サリキサレート、サリチレート、サリゲニン、スルホネート、フェネートまたはそれらの混合物であってよい。あるいは、清浄剤はサリキサレート、サリチレートまたはそれらの混合物であってよい。清浄剤は、サリゲニン、フェネートまたはそれらの混合物であってよい。一実施形態では、清浄剤は、スルホネート、フェネートまたはそれらの混合物であってよい。
【0047】
清浄剤は、アルカリ土類金属またはアルカリ金属(一般的にナトリウム、バリウム、カルシウムまたはマグネシウム)、例えばカルシウムまたはマグネシウムを含有することができる。一般的に、清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレートまたはサリチレートの亜鉛、バリウム、ナトリウム、カルシウムまたはマグネシウムの塩であってよい。
【0048】
清浄剤はホウ素化されても、ホウ素化されなくてもよい。
【0049】
清浄剤は、潤滑組成物の0.1重量%から1重量%、または0.2重量%から0.9重量%、または0.1重量%から0.4重量%、または0.4重量%から1.0重量%で存在することができる。
【0050】
非ホウ素化分散剤
本発明の非ホウ素化分散剤は、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、スクシンアミド分散剤、ポリオレフィンコハク酸のエステル、アミドもしくはエステルアミド、またはそれらの混合物であってよい。一実施形態では、非ホウ素化分散剤は、スクシンイミド分散剤であってよい。
【0051】
非ホウ素化分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミド、マンニッヒ塩基またはそれらの混合物であってよい。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例にはポリイソブチレンスクシンイミドが含まれ、そこで、ポリイソブチレン無水コハク酸が由来するポリイソブチレンは350から5000、または500から3000、または750から2200、または750から1150の範囲内の数平均分子量を有する。
【0052】
非ホウ素化分散剤は非ホウ素化スクシンイミドであってよく、非ホウ素化分散剤はホウ素化分散剤(一般的にホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミド)との混合物状態であってよい。
【0053】
非ホウ素化分散剤は、置換アシル化剤とポリアミン(一般的に2つ以上の反応部位を有する)との反応によって形成することができる。例えば、置換アシル化剤は、ポリイソブチレン無水コハク酸およびポリアミンであってよい。
【0054】
ポリアミンは、アルキレンポリアミンであってよい。アルキレンポリアミンには、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミンまたはそれらの混合物を含めることができる。プロピレンポリアミンの例には、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0055】
一実施形態では、ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスチルボトムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
非ホウ素化分散剤は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスチルボトムおよびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ポリアミンに由来するポリイソブチレンスクシンイミドであってよい。
【0057】
非ホウ素化分散剤は、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミンスチルボトムおよびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪族ポリアミンに由来するポリイソブチレンスクシンイミドであってよい。
【0058】
ポリアミンは、α,β−ジアミノアルカンであってもよい。α,β−ジアミノアルカンの例には、ジアミノプロパン、ジアミノブタンまたはそれらの混合物が含まれる。具体的なジアミノアルカンは、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、3,3’−ジアミン−N−メチルジプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−1,2−エタンジイルビス−(1,3−プロパンジアミン)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態では、ポリアミンには、ジ(トリメチレン)トリアミン、ピペラジン、ジアミノシクロヘキサンまたはそれらの混合物を含めることができる。
【0060】
非ホウ素化分散剤は、「直接アルキル化プロセス」と呼ばれる方法により、「エン」または「熱」反応によって無水コハク酸の反応から調製すること/得ること/得ることができることがある。「エン」反応機構および一般反応条件は、「Maleic Anhydride」、147〜149頁、B. C. TrivediおよびB. C. Culbertson編、Plenum Press発行、1982年、に要約されている。「エン」反応を含むプロセスによって調製される非ホウ素化分散剤は、非ホウ素化分散剤分子の50モル%未満、または0から30モル%未満、または0から20モル%未満、または0モル%で存在する炭素環式環を有するポリイソブチレンスクシンイミドであってよい。「エン」反応は、180℃から300℃未満、または200℃から250℃、または200℃から220℃の反応温度を有することができる。
【0061】
非ホウ素化分散剤は、炭素環式連結の形成をもたらすディールス−アルダー化学をしばしば含む、塩素補助プロセスから得ること/得ることができることもある。このプロセスは、当分野の技術者に公知である。塩素補助プロセスは、非ホウ素化分散剤分子の50モル%以上、または60から100モル%に存在する炭素環式環を有するポリイソブチレンスクシンイミドである非ホウ素化分散剤を生成することができる。熱および塩素によって補助されるプロセスの両方は、米国特許第7,615,521号の第4〜5欄ならびに調製例AおよびBでより詳細に記載される。
【0062】
非ホウ素化分散剤は、5:1から1:10、2:1から1:10、または1:1から1:10、または1:1から1:5、または1:1から1:2のカルボニル対窒素の比(CO:N比)を有することができる。一実施形態では、非ホウ素化分散剤は、1:1から1:10、または1:1から1:5、または1:1から1:2のCO:N比を有することができる。
【0063】
一実施形態では、非ホウ素化分散剤は、ヒドロカルビル置換フェノール、アルデヒドおよびアミンまたはアンモニアの反応生成物であってよい。ヒドロカルビル置換フェノールのヒドロカルビル置換基は、10から400個の炭素原子を、別の例では30から180個の炭素原子を、さらなる例では10または40から110個の炭素原子を有することができる。このヒドロカルビル置換基は、オレフィンまたはポリオレフィンに由来することができる。有益なオレフィンには、市販されているα−オレフィン、例えば1−デセンが含まれる。
【0064】
非ホウ素化分散剤は、潤滑組成物の(無油基準で)0.01重量%から2重量%、または0.025重量%から1.5重量%、または0.025重量%から0.4重量%、または0.4重量%から1.2重量%で存在することができる。
【0065】
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物
本発明は、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物を含有する潤滑組成物を提供する。
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、式
【0066】
【化1】
によって表すことができ、式中、
nおよびmは、独立して、1から5の整数であってよく;
Xは、脂肪族もしくは脂環式の基、または炭素鎖に酸素原子を含有する脂肪族もしくは脂環式の基、または上記の型の置換基であってよく、前記基は最大6個の炭素原子を含有し、n+m個の利用可能な結合点を有し(すなわち、例えば1個または複数の水素原子に結合することによって満たされる追加の結合価がXにあってよいが、特定のヒドロキシカルボン酸のためにn+m個の基に結合するのに十分な利用できる結合価が少なくともある);
各Yは、独立して、−O−もしくは>NR
1であるか、または2つのYは2個のカルボニル基の間で形成されるイミド構造R−N<の窒素を一緒に表してもよく;
各RおよびR
1は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であってよく、但し、少なくとも1個のRまたはR
1基はヒドロカルビル基であり;各R
2は、独立して、水素、ヒドロカルビル基またはアシル基であってよく、さらに、但し、少なくとも1個の−OR
2基は、−C(O)−Y−R基の少なくとも1個にαまたはβであるX中の炭素原子に位置する。
【0067】
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、グリコール酸(nおよびmの両方は1に等しい)、リンゴ酸(n=2、m=1)、酒石酸(nおよびmの両方は2に等しい)、クエン酸(n=3、m=1)またはそれらの混合物に由来することができる。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、酒石酸またはクエン酸に由来することができる。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、酒石酸に由来することができる。
【0068】
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、ヒドロキシカルボン酸のアミド、エステルもしくはイミド誘導体、またはそれらの混合物であってよい。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、ヒドロキシカルボン酸のアミド、エステルまたはイミド誘導体であってよい。例えば、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、酒石酸のエステルもしくはイミドであってよく、またはヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、クエン酸のエステルもしくはイミドであってよい。
【0069】
一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、ヒドロキシカルボン酸ジエステル、ヒドロキシカルボン酸ジアミド、ヒドロキシカルボン酸ジイミド、ヒドロキシカルボン酸モノイミド、ヒドロキシカルボン酸エステルアミド、ヒドロキシカルボン酸エステルイミドおよびヒドロキシカルボン酸イミドアミドの少なくとも1つであってよい。一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のアミド、エステルまたはイミド誘導体は、ヒドロキシカルボン酸ジエステル、ヒドロキシカルボン酸ジアミド、ヒドロキシカルボン酸モノイミドおよびヒドロキシカルボン酸エステルアミドからなる群の少なくとも1つから由来することができる。
【0070】
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物の各R、R
1およびR
2基は、各々1から150個、または8から30個、または8から20個の炭素原子を有する直鎖状か分枝状のアルキル基であってよい。ヒドロキシカルボン酸のエステル誘導体は、アルコールとヒドロキシカルボン酸との反応によって形成することができる。アルコールには、一価アルコールおよび多価アルコールが含まれる。アルコールの炭素原子は、直鎖状鎖、分枝状鎖またはそれらの混合物であってよい。
【0071】
適する分枝状アルコールの例には、2−エチルヘキサノール、イソトリデカノール、イソオクチルアルコール、ゲルベアルコールまたはそれらの混合物が含まれる。
【0072】
一価アルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノールまたはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、一価アルコールは8から20個の炭素原子を含有する。
【0073】
一実施形態では、ヒドロキシカルボン酸のイミド誘導体は酒石酸イミド(tartrimide)であってよく、8から20個の炭素原子を一般的に含有する。イミドの調製で用いられるアミンには、アルキルアミン(例えば、n−ヘキシルアミン(カプロイルアミン)、n−オクチルアミン(カプリリルアミン)、n−デシルアミン(カプリルアミン)、n−ドデシルアミン(ラウリルアミン)、n−テトラデシルアミン(ミリスチルアミン)、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、マルガリルアミン、n−オクタデシルアミン(ステアリルアミン))、不飽和アミン(例えば、ドデセニルアミン、ミリストレイルアミン、パルミトレイルアミン、オレイルアミンおよびリノレイルアミン)、またはエーテルアミン(例えば、SURFAM(商標)P14AB(分枝状C14)、SURFAM(商標)P16A(直鎖状C16)およびSURFAM(商標)P17AB(分枝状C17)と識別されるもの)を含めることができる。適する酒石酸イミドを(酒石酸と一級アミンを反応させることによって)調製する方法の詳細な記載は、米国特許第4,237,022号に開示される。
【0074】
米国特許出願第2010−0197536号(2007年5月24日に出願のUS60/939949に対応する)およびUS2010−0093573(2007年5月24日に出願の60/939952に対応する)は、本発明のための有益なヒドロキシカルボン酸化合物をさらに詳細に開示する。
【0075】
カナダ国特許第1183125号;米国特許出願公開第2006/0183647号およびUS−2006−0079413号;米国特許出願第60/867402号;ならびに英国特許第2105743A号の全ては、適する酒石酸誘導体の有益な例を開示する。
【0076】
ヒドロキシカルボン酸に由来する化合物は、潤滑組成物の0.05重量%から1.5重量%、または0.05重量%から1重量%、または0.05重量%から0.8重量%で存在することができる。
【0077】
リン化合物
リン化合物は、リン酸エステルのアミン塩(一般的にリン酸炭化水素エステルのアミン塩)、4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有するホスファイト、4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有する第2のホスファイト、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0078】
一実施形態では、リン化合物は、リン酸エステルのアミン塩(一般的に炭化水素エステルのホスフェート)およびホスファイトであってよく、そこで、ホスファイトは4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有する。
【0079】
一実施形態では、リン化合物は、リン酸エステルのアミン塩(一般的に炭化水素エステルのホスフェート)およびホスファイトであってよく、そこで、ホスファイトは4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有する。
【0080】
一実施形態では、リン化合物は硫黄を含まず、すなわち、リン化合物はチオホスファイトでもチオホスフェートでもない。
【0081】
特定の実施形態では、リン化合物によって潤滑組成物に提供されるリンの量は、潤滑組成物の0.02から0.2重量%、または0.04から0.18重量%、または0.04から0.1重量%、または0.08から0.18重量%であってよい。
【0082】
リン酸エステルのアミン塩
一実施形態では、潤滑組成物は、リン酸エステルのアミン塩(一般的にリン酸の炭化水素エステルのアミン塩)であってよいリン化合物を含有する。ホスフェートのアミン塩は、式
【0083】
【化2】
によって表すことができ、式中、
R
3およびR
4は、独立して、水素であるか、または一般的に4から40個、もしくは6から30個、もしくは6から18個、もしくは8から18個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基(例えば炭化水素基)であってよく、但し、少なくとも1つはヒドロカルビル基であり;R
5、R
6、R
7およびR
8は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であってよく、但し、少なくとも1つはヒドロカルビル基である。しばしば、リン酸エステルのアミン塩は、ジアルキルおよびモノアルキルの1:1の混合物であってよく、すなわち、リン酸エステルのモル数の半分については、R
3またはR
4の1つは水素であってよい。
【0084】
R
3および/またはR
4のヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝状または環状であってよい。
【0085】
R
3および/またはR
4のためのヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルを含む、直鎖型または分枝状のアルキル基が含まれる。
【0086】
R
3および/またはR
4のための環状ヒドロカルビル基の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルエチルシクロペンチル、ジエチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、メチルエチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、ジメチルシクロヘプチル、メチルエチルシクロヘプチルおよびジエチルシクロヘプチルが含まれる。
【0087】
一実施形態では、リン酸エステルのアミン塩は、モノアルキルリン酸エステルおよびジアルキルリン酸エステルの混合物である。モノアルキル基およびジアルキル基は、直鎖状か分枝状であってよい。
【0088】
リン酸エステル(一般的に炭化水素エステル)のアミン塩は、一級アミン、二級アミン、三級アミンまたはそれらの混合物などのアミンに由来することができる。アミンは、脂肪族、または環状、芳香族もしくは非芳香族、一般的には脂肪族であってよい。一実施形態では、アミンには、三級脂肪族一級アミンなどの脂肪族アミンが含まれる。
【0089】
適する一級アミンの例には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、オクチルアミンおよびドデシルアミン、ならびに、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレイルアミン(oleyamine)などの脂肪アミンが含まれる。他の有益な脂肪アミンには、「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals、Chicago、Illinoisから入手可能な製品)、例えば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SDなどの市販脂肪アミンが含まれ、そこで、英字呼称は、ココ、オレイル、タローまたはステアリル基などの脂肪基に関連する。
【0090】
適する二級アミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、N−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、Armeen(登録商標)2Cおよびエチルアミルアミンが含まれる。二級アミンは、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの環状アミンであってよい。
【0091】
三級アミンの例には、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリデシルアミン、トリラウリルアミン、トリヘキサデシルアミンおよびジメチルオレイルアミン(Armeen(登録商標)DMOD)が含まれる。
【0092】
一実施形態では、アミンは混合物の形である。アミンの適する混合物の例には、(i)11から14個の炭素原子を有する三級アルキル一級アミン、(ii)14から18個の炭素原子を有する三級アルキル一級アミン、または(iii)18から22個の炭素原子を有する三級アルキル一級アミンが含まれる。三級アルキル一級アミンの他の例には、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、tert−オクチルアミン(1,1−ジメチルヘキシルアミンなど)、tert−デシルアミン(1,1−ジメチルオクチルアミンなど)、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミンおよびtert−オクタコサニルアミンが含まれる。
【0093】
一実施形態では、アミンの有益な混合物は、「Primene(登録商標)81R」または「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(両方ともRohm&Haasによって生産、販売される)は、それぞれC11からC14の三級アルキル一級アミンの混合物およびC18からC22の三級アルキル一級アミンの混合物である。
【0094】
リン酸エステルのアミン塩は、米国特許第6,468,946号に記載されるように調製することができる。第10欄の15行目から63行目は、リン化合物の反応によって形成されるリン酸エステルと、続くアミンとの反応によってリン酸エステルのアミン塩を形成することを記載する。第10欄の64行目から第12欄の23行目は、五酸化リンとアルコール(4から13個の炭素原子を有する)との間の反応と、続くアミン(一般的にPrimene(登録商標)81−R)との反応によってリン酸エステルのアミン塩を形成する調製例を記載する。
【0095】
リン酸エステルのアミン塩は、潤滑組成物の0.1重量%から2.5重量%、または0.1重量%から1.5重量%、または1重量%から2重量%、または0.1重量%から1重量%で存在することができる。
【0096】
ホスファイト
一実施形態では、潤滑組成物はホスファイトを含有し、そこで、ホスファイトは4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有する。ホスファイトのヒドロカルビル基は、8個以上または12個以上の炭素原子を有することができる。ヒドロカルビル基の炭素原子数の一般的な範囲には、4から30、または10から24、または12から22、または14から20、または16から18が含まれる。ホスファイトは、モノヒドロカルビル置換ホスファイト、ジヒドロカルビル置換ホスファイトまたはトリヒドロカルビル置換ホスファイトであってよい。
【0098】
【化3】
によって表すことができ、式中、R
9、R
10およびR
11の少なくとも1つまたは2つは、少なくとも4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であってよく、他は水素またはヒドロカルビル基であってよい。一実施形態では、R
9、R
10およびR
11の2つ以上は、ヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、非環式またはそれらの混合物であってよい。3つの基R
9、R
10およびR
11の全てを有する式で、化合物はトリヒドロカルビル置換ホスファイトであってよく、すなわち、R
9、R
10およびR
11は全てヒドロカルビル基である。
【0099】
アルキル基は、直鎖状または分枝状、一般的には直鎖状であってよく、飽和または不飽和、一般的には飽和であってよい。R
9、R
10およびR
11のためのアルキル基の例には、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはそれらの混合物が含まれる。
【0100】
アルキル基は、直鎖状または分枝状、一般的には直鎖状であってよく、飽和または不飽和、一般的には飽和であってよい。R
9、R
10およびR
11のためのアルキル基の例には、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オクタデセニル、ノナデシル、エイコシルまたはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、アルキル基R
9およびR
10は、4個の炭素原子(一般的にn−ブチル)を有する。
【0101】
一実施形態では、リン酸炭化水素エステルのアミン塩、および/または4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有するホスファイトは、リンの酸(phosphorus acid)、リン酸、ポリリン酸、リン酸トリアルキルまたはチオリン酸トリアルキルの1つまたは複数との混合物状態であってよい。例えば、一実施形態では、リン酸炭化水素エステルのアミン塩、および/または4個以上の炭素原子を有する少なくとも1個のヒドロカルビル基を有するホスファイトは、リン酸との混合物状態であってよい。
【0102】
ホスファイト化合物は、潤滑組成物の0.05重量%から2.0重量%、または0.05重量%から1.5重量%、または0.1重量%から1.0重量%で存在することができる。
【0103】
潤滑粘度の油
潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。そのような油には、天然および合成の油、水素化分解、水素化および水素化仕上げに由来する油、未精製油、精製油、再精製油、またはそれらの混合物が含まれる。未精製油、精製油、再精製油のより詳細な記載は、国際公開第WO2008/147704号の段落[0054]から[0056]で提供される(類似した開示は、米国特許出願第2010/197536号で提供される、[0072]から[0073]を参照)。天然および合成の潤滑油のより詳細な記載は、WO2008/147704の段落[0058]から[0059]でそれぞれ記載される(類似した開示は、米国特許出願第2010/197536号で提供される、[0075]から[0076]を参照)。合成油はフィッシャー−トロプシュ反応によって生成することもでき、一般的に水素異性化されたフィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。一実施形態では、油は、フィッシャー−トロプシュのGTL(gas−to−liquid)ガスから液体式の合成手法ならびに他のGTL油によって調製することができる。
【0104】
潤滑粘度の油は、「Appendix E − API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils」の2008年4月版、セクション1.3小見出し1.3「Base Stock Categories」に明記されるように定義することもできる。APIガイドラインは、米国特許第US7,285,516号(第11欄の64行目から第12欄の10行目までを参照)でも要約されている。一実施形態では、潤滑粘度の油は、APIグループII、グループIII、グループIVの油、またはそれらの混合物であってよい。
【0105】
潤滑粘度の油の存在量は、一般的に、本発明の化合物および他の性能添加剤の合計量を100重量%から引いた残りである。
【0106】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形であってよい。本発明の潤滑組成物(本明細書に開示される添加剤を含む)が、追加の油と合わせて全体または一部の完成した潤滑剤を形成することができる濃縮物の形である場合は、これらの添加剤と潤滑粘度の油との比および/または希釈油との比には、重量で1:99から99:1、または重量で80:20から10:90の範囲が含まれる。
【0107】
有機硫化物
一実施形態では、潤滑組成物は、有機硫化物またはその混合物をさらに含む。一実施形態では、有機硫化物は、ポリスルフィド、チアジアゾール化合物またはそれらの混合物の少なくとも1つを含む。
【0108】
異なる実施形態では、有機硫化物は、潤滑組成物の0重量%から10重量%、0.01重量%から10重量%、0.1重量%から8重量%、および0.25重量%から6重量%からなる群から選択される範囲内で存在する。
【0109】
チアジアゾール化合物
チアジアゾールの例には、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはそのオリゴマーが含まれる。ヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールのオリゴマーは、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間で硫黄間結合を形成して2つ以上の前記チアジアゾール単位のオリゴマーを形成することによって一般的に形成される。これらのチアジアゾール化合物は、ポリイソブチレンスクシンイミドのジメルカプトチアジアゾール誘導体の形成で、下記の分散剤の後処理で用いることもできる。
【0110】
適するチアジアゾール化合物の例には、ジメルカプトチアジアゾール、2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール、3,5−ジメルカプト−[1,2,4]−チアジアゾール、3,4−ジメルカプト−[1,2,5]−チアジアゾールまたは4,5−ジメルカプト−[1,2,3]−チアジアゾールの少なくとも1つが含まれる。一般的に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどの容易に入手できる物質が通常利用される。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基の炭素原子数には、1から30、2から25、4から20、6から16、または8から10が含まれる。
【0111】
一実施形態では、チアジアゾール化合物は、フェノールとアルデヒドおよびジメルカプトチアジアゾールとの反応生成物である。フェノールには、アルキル基が少なくとも6個、例えば6から24個、または6(もしくは7)から12個の炭素原子を含有するアルキルフェノールが含まれる。アルデヒドには、1から7個の炭素原子を含有するアルデヒド、またはアルデヒドシントン、例えばホルムアルデヒドが含まれる。有益なチアジアゾール化合物には、2−アルキルジチオ−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール、2,5−ビス(アルキルジチオ)−[1,3,4]−チアジアゾール、2−アルキルヒドロキシフェニルメチルチオ−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール(例えば2−[5−ヘプチル−2−ヒドロキシフェニルメチルチオ]−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾール)およびそれらの混合物が含まれる。
【0112】
一実施形態では、チアジアゾール化合物には、2,5−ビス(tert−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールまたは2,5−ビス(tert−デシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールの少なくとも1つが含まれる。
【0113】
ポリスルフィド
一実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも50重量%は、三硫化物または四硫化物の混合物である。他の実施形態では、ポリスルフィド分子の少なくとも55重量%または少なくとも60重量%は、三硫化物または四硫化物の混合物である。
【0114】
ポリスルフィドには、油、脂肪酸もしくはエステル、オレフィンまたはポリオレフィンからの硫化有機ポリスルフィドが含まれる。
【0115】
硫化することができる油には、天然もしくは合成の油、例えば鉱油、ラード油、脂肪族アルコールおよび脂肪酸もしくは脂肪族カルボン酸に由来するカルボン酸エステル(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)ならびに合成不飽和エステルまたはグリセリドが含まれる。
【0116】
脂肪酸には、8から30個、または12から24個の炭素原子を含有するものが含まれる。脂肪酸の例には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびトール油が含まれる。混合不飽和脂肪酸エステルから調製される硫化脂肪酸エステルは、動物脂肪および植物油、例えばトール油、亜麻仁油、ダイズ油、ナタネ油および魚油から得られる。
【0117】
ポリスルフィドには、広範囲のアルケンに由来するオレフィンが含まれる。アルケンは、1つまたは複数の二重結合を一般的に有する。一実施形態では、オレフィンは3から30個の炭素原子を含有する。他の実施形態では、オレフィンは3から16個または3から9個の炭素原子を含有する。一実施形態では、硫化オレフィンには、プロピレン、イソブチレン、ペンテンに由来するオレフィンまたはそれらの混合物が含まれる。しばしば、硫化オレフィンは、硫化水素(H
2S)の存在下で形成することができる。
【0118】
一実施形態では、ポリスルフィドは、公知の技術による前記のオレフィンの重合に由来するポリオレフィンを含む。
【0119】
一実施形態では、ポリスルフィドには、ジブチル四硫化物、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物が含まれる。
【0120】
摩擦調整剤
一実施形態では、潤滑組成物は、摩擦調整剤をさらに含む。異なる実施形態では、摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%から5重量%、0.1重量%から4重量%、0.25重量%から3.5重量%、0.5重量%から2.5重量%、および1重量%から2.5重量%、または0.05重量%から0.5重量%からなる群から選択される範囲で存在する。
【0121】
本明細書で用いるように、摩擦調整剤に関する用語「脂肪アルキル」または「脂肪」は、10から22個の炭素原子を有する炭素鎖、一般的に直線状の炭素鎖を意味する。
【0122】
摩擦調整剤には、脂肪アミン、ホウ素化グリセロールエステル、脂肪酸アミド、非ホウ素化脂肪エポキシド、ホウ素化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、サリチル酸アルキルの金属塩(清浄剤と呼ばれることもある)、スルホネートの金属塩(清浄剤と呼ばれることもある)、カルボン酸もしくはポリアルキレンポリアミンの縮合生成物、またはヒドロキシアルキル化合物のアミドが含まれる。
【0123】
一実施形態では、摩擦調整剤には、グリセロールの脂肪酸エステルが含まれる。最終生成物は、金属塩、アミド、イミダゾリンまたはそれらの混合物の形であってよい。脂肪酸は、6から24個、または8から18個の炭素原子を含有することができる。脂肪酸は、分枝状または直鎖型、飽和または不飽和であってよい。適する酸には、2−エチルヘキサノン酸、デカノン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸およびリノレン酸、ならびに天然生成物であるタロー、パーム油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油および牛脚油由来の酸が含まれる。一実施形態では、脂肪酸はオレイン酸である。金属塩の形である場合は、一般的に、金属には亜鉛またはカルシウムが含まれ;生成物には過塩基化および非過塩基化の生成物が含まれる。例は、過塩基化カルシウム塩および塩基性オレイン酸亜鉛塩複合体であり、それは一般式Zn
4オレエート
6Oによって表すことができる。アミドの形である場合は、縮合生成物には、アンモニア、またはジエチルアミンおよびジエタノールアミンなどの一級アミンもしくは二級アミンで調製されるものが含まれる。イミダゾリンの形である場合は、酸とジアミンまたはポリアミン、例えばポリエチレンポリアミンとの縮合生成物。一実施形態では、摩擦調整剤は、C8からC24原子の脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、特にイソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物である。
【0124】
一実施形態では、摩擦調整剤には、ヒドロキシアルキル化合物とアシル化剤またはアミンとの縮合によって形成されるものが含まれる。ヒドロキシアルキル化合物のより詳細な記載は、WO2007/0044820の段落9および20〜22に記載される。WO2007/044820に開示される摩擦調整剤には、式R
12R
13N−C(O)R
14によって表されるアミドが含まれ、式中、R
12およびR
13は、各々独立して、少なくとも6個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、R
14は1から6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、またはそのヒドロキシル基を通しての、前記ヒドロキシアルキル基とアシル化剤との縮合によって形成される基である。調製例が、実施例1および2(WO2007/044820の段落72および73)に開示される。一実施形態では、ヒドロキシルアルキル化合物のアミドは、グリコール酸、すなわちヒドロキシ酢酸、HO−CH
2−COOHとアミンとを反応させることによって調製される。
【0125】
一実施形態では、摩擦調整剤には、式R
15R
16NR
17によって表される二級アミンまたは三級アミンが含まれ、式中、R
15およびR
16は、各々独立して、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、R
17は、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基またはアミン含有アルキル基である。摩擦調整剤のより詳細な記載は、米国特許出願第2005/037897号の段落8および19から22に記載される。
【0126】
一実施形態では、摩擦調整剤にはジココアルキルアミン(またはジココアミン)とグリコール酸との反応生成物が含まれる。摩擦調整剤には、WO2008/014319の調製例1および2で調製される化合物が含まれる。
【0127】
一実施形態では、摩擦調整剤には、カルボン酸またはその反応性同等物とアミノアルコールとの反応生成物に由来するものが含まれ、そこで、摩擦調整剤は少なくとも2個のヒドロカルビル基を含有し、その各々は少なくとも6個の炭素原子を含有する。そのような摩擦調整剤の例には、イソステアリン酸またはコハク酸アルキル無水物とトリスヒドロキシメチルアミノメタンとの反応生成物が含まれる。そのような摩擦調整剤のより詳細な記載は、米国特許出願第2003/22000号(または国際公開第WO04/007652号)の段落8および9から14に開示される。
【0128】
一実施形態では、摩擦調整剤にはアルコキシル化アルコールが含まれる。適するアルコキシル化アルコールの詳細な記載は、米国特許出願第2005/0101497号の段落19および20に記載される。アルコキシル化アミンが、米国特許第5,641,732号の第7欄15行目から第9欄25行目にも記載されている。
【0129】
一実施形態では、摩擦調整剤には、米国特許第5,534,170号第37欄19行目から第39欄38行目に定義されるヒドロキシルアミン化合物が含まれる。任意選択で、そのような生成物が米国特許第5,534,170号の第39欄39行目から第40欄8行目に記載されているように、ヒドロキシルアミンにはホウ素化されたものが含まれる。
【0130】
一実施形態では、摩擦調整剤には、アルコキシル化アミン、例えば、米国特許第5,703,023号の第28欄30から46行目の実施例Eに記載される、1.8%Ethomeen(商標)T−12および0.90%Tomah(商標)PA−1に由来するエトキシル化アミンが含まれる。他の適するアルコキシル化アミン化合物には、商標「ETHOMEEN」で公知の、Akzo Nobelから入手可能な市販のアルコキシル化脂肪アミンが含まれる。これらのETHOMEEN(商標)物質の代表例は、ETHOMEEN(商標)C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココアミン);ETHOMEEN(商標)C/20(ポリオキシエチレン[10]ココアミン);ETHOMEEN(商標)S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]ソイアミン);ETHOMEEN(商標)T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−タロー−アミン);ETHOMEEN(商標)T/15(ポリオキシエチレン[5]タローアミン);ETHOMEEN(商標)0/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイルアミン);ETHOMEEN(商標)18/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン);およびETHOMEEN(商標)18/25(ポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミン)である。脂肪アミンおよびエトキシル化脂肪アミンは、米国特許第4,741,848号にも記載されている。
【0131】
一実施形態では、摩擦調整剤には、米国特許第5,750,476号の第8欄40行目から第9欄28行目に記載されるポリオールエステルが含まれる。
【0132】
一実施形態では、摩擦調整剤には、米国特許第5,840,662号の第2欄28行目から第3欄26行目に記載される低効力摩擦調整剤が含まれる。米国特許第5,840,662号は、第3欄48行目から第6欄25行目にかけて具体的な物質および低効力摩擦調整剤の調製方法をさらに開示する。
【0133】
一実施形態では、摩擦調整剤には、米国特許第5,840,663号の第2欄18から43行目に記載される、異性化アルケニル置換無水コハク酸およびポリアミンの反応生成物が含まれる。米国特許第5,840,663号に記載される摩擦調整剤の具体的な実施形態は、第3欄23行目から第4欄35行目にさらに開示される。調製例が、米国特許第5,840,663号の第4欄45行目から第5欄37行目にさらに開示される。
【0134】
一実施形態では、摩擦調整剤には、商標Duraphos(登録商標)DMODPの下でRhodiaによって市販されているアルキルホスホネートモノエステルまたはアルキルホスホネートジエステルが含まれる。
【0135】
一実施形態では、摩擦調整剤には、カナダ国特許第1,188,704号から公知の、ホウ素化脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドが含まれる。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、ホウ酸または三酸化ホウ素と少なくとも1つの脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドとを80℃から250℃の温度で反応させることによって調製される。脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドは、エポキシドの脂肪基(またはアルキレンオキシドのアルキレン基)に、少なくとも8個の炭素原子を一般に含有する。
【0136】
ホウ素化脂肪エポキシドには、2つの物質の反応を含むそれらの調製方法によって特徴づけられるものが含まれる。試薬Aは、三酸化ホウ素またはメタホウ酸(HBO
2)、オルトホウ酸(H
3BO
3)および四ホウ酸(H
2B
4O
7)を含む様々な形のホウ酸のいずれか、またはオルトホウ酸が含まれる。試薬Bには、少なくとも1つの脂肪エポキシドが含まれる。試薬Aと試薬Bのモル比は、一般に1:0.25から1:4、または1:1から1:3、または1:1から1:2である。ホウ素化脂肪エポキシドには、2つの試薬をブレンドし、それらを80℃から250℃、または100℃から200℃の温度で反応が起こるのに十分な時間加熱することによって調製される化合物が含まれる。所望により、実質的に不活性の、通常液体の有機希釈剤の存在下で反応を実行することができる。反応の間、水が発生するが、蒸留によって除去することができる。
【0137】
他の性能添加剤
本発明の組成物は、少なくとも1つの他の性能添加剤を任意選択でさらに含む。他の性能添加剤には、金属不活性化剤、分散剤(本発明の非ホウ素化分散剤以外のもの)、粘度調整剤、分散粘度調整剤、抗酸化剤、腐食防止剤、消泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、リン酸およびそれらの混合物が含まれる。
【0138】
異なる実施形態では、他の性能添加化合物の合計量は、潤滑組成物の0重量%から75重量%まで、0.1重量%から50重量%まで、および0.5重量%から30重量%まで、0.5重量%から15重量%までまたは10重量%までからなる群から選択される範囲で存在する。他の性能添加剤の1つまたは複数が存在してもよいが、他の性能添加剤は互いに比較して異なる量で存在することが一般的である。
【0139】
抗酸化剤には、モリブデン化合物、例えばジチオカルバミン酸モリブデン、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、アミン化合物、例えばフェニル−α−ナフチルアミン(PANA)またはアルキル化ジフェニルアミン(一般的にジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミンまたはジオクチルジフェニルアミン)が含まれる。
【0140】
粘度調整剤には、スチレン−ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン、ポリアルキルメタクリレートおよび無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルが含まれる。分散粘度調整剤(しばしばDVMと呼ばれる)には、官能基化ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸およびアミンの反応生成物で官能基化されたエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能基化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応させたスチレン−無水マレイン酸コポリマーが含まれ、本発明の組成物で用いることもできる。
【0141】
腐食防止剤には、1−アミノ−2−プロパノール、アミン、トリルトリアゾールを含むトリアゾール誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくは無水物および/またはオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物が含まれる。
【0142】
本発明の組成物で役立つことができる消泡剤には、ポリシロキサン、アクリル酸エチル、および2−エチルヘキシルアクリレート、および任意選択で酢酸ビニルのコポリマー;フッ化ポリシロキサン、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む抗乳化剤が含まれる。
【0143】
本発明の組成物で役立つことができる流動点降下剤には、ポリαオレフィン、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドが含まれる。
【0144】
抗乳化剤には、リン酸トリアルキル、ならびにエチレングリコール、エチレンオキシド、プロピレンオキシドの様々なポリマーおよびコポリマーまたはそれらの混合物が含まれる。
【0145】
金属不活性化剤には、ベンゾトリアゾール(一般的にトリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾチアゾールの誘導体が含まれる。金属不活性化剤は、腐食防止剤と記載することもできる。
【0146】
シール膨潤剤には、スルホレン誘導体Exxon Necton−37(商標)(FN1380)およびExxon Mineral Seal Oil(商標)(FN3200)が含まれる。
【0147】
異なる実施形態では、本発明の潤滑組成物は、リン酸を含有しても含有しなくてもよい。
【0148】
工業用途
本発明の方法は、様々なドライブライン装置応用体を潤滑するために有益である。ドライブライン装置は、ギア、ギアボックス、車軸ギア、トラクションドライブ変速装置、自動変速装置または手動式変速装置の少なくとも1つを含む。一実施形態では、ドライブライン装置は、手動式変速装置、またはギア、ギアボックスもしくは車軸ギアである。
【0149】
自動変速機には、無段変速機(CVT)、変速比無限大変速機(IVT)、トロイダル変速機、連続スリップトルクコンバータークラッチ(CSTCC)、有段自動変速機または二段クラッチ変速機(DCT)が含まれる。
【0150】
自動変速機は、連続スリップトルクコンバータークラッチ(CSTCC)、ウェットスタートクラッチおよびシフティングクラッチを含むことができ、場合によっては金属または複合材の同期装置を含むこともできる。
【0151】
二段クラッチ変速機または自動変速機は、ハイブリッド駆動を提供するために、電動機ユニットを組み込むこともできる。
【0152】
手動式変速装置用の潤滑剤は、同期されていないか、同期機構を含んでもよい手動ギアボックスで用いることができる。ギアボックスは、独立式であるか、手動式変速装置流体によって潤滑することができる、伝達ギアボックス、遊星歯車系、差動装置、制限スリップ差動装置またはトルクベクタリング装置のいずれかをさらに含むことができる。
【0153】
ギア油または車軸油は、多用途車において遊星歯車式ハブリダクション車軸、機械的ステアリングおよび伝達ギアボックスで、シンクロメッシュギアボックス、動力取出ギア、制限スリップ車軸および遊星歯車式ハブリダクションギアボックスで用いることができる。
【0154】
特に明記しない限り、本明細書で言及される各化学物質または組成物は、異性体、副産物、誘導体および商品グレードに存在すると通常理解される他のそのような物質を含有し得る商品グレードの物質であると解釈するべきである。しかし、特に明記しない限り、各化学成分の量は、市販物質に慣例上存在するかもしれないいかなる溶媒または希釈油を除外して提示される。
【0155】
以下の実施例は、本発明の例示を提供する。これらの実施例は非網羅的であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0156】
以下の各々の量を含有する一連のギア油潤滑剤を調製する:(a)リン酸のアミン塩、(b)ホスファイト、(c)ヒドロキシカルボン酸の誘導体、(d)ポリイソブチレンスクシンイミド(非ホウ素化)、(e)清浄剤、および36.5重量%活性物質の粘度調整剤。これらの潤滑剤は、以下の表に示す量を含有する:
【0157】
【表1】
脚注:
(d)で示された量は、14〜50重量%の希釈油を含む。
実施例1〜10は、マグネシウム清浄剤を含有するSAEグレード75W−90の液であり、示した量は39重量%の希釈油を含む。
実施例11〜18は、カルシウム清浄剤を含有するSAEグレード75W−90の液であり、示した量は42重量%の希釈油を含む。
【0158】
以下の各々の量を含有する一連のギア油潤滑剤を調製する:(a)リン酸のアミン塩、(b)ホスファイト、(c)ヒドロキシカルボン酸の誘導体、(d)ポリイソブチレンスクシンイミド(非ホウ素化)、(e)清浄剤、および5重量%活性物質の粘度調整剤。潤滑剤は、以下の表に示す量を含有する:
【0159】
【表2】
脚注:
(d)で示された量は、14〜50重量%の希釈油を含む。
実施例20〜27は、カルシウム清浄剤を含有するSAEグレード75W−80の液であり、示した量は42重量%の希釈油を含む。
【0160】
全体として、本発明の組成物は、(i)摩耗、(ii)スカッフィング、(iii)疲労、(iv)リッジング、(v)極圧性能、(vi)燃費/効率(一般的に燃費/効率を向上させる)、(vii)酸化制御(一般的に酸化を低減または防止する)、(viii)摩擦性能および(ix)デポジット制御の少なくとも1つにおいて、比較例を超える性能利点を有する。
【0161】
上記の物質のいくつかは最終配合物で相互作用することがあり、そのため、最終配合物の構成成分が最初に加えられるものと異なることがあることが公知である。その使用目的での本発明の潤滑組成物の使用後に形成される生成物を含む、それによって形成される生成物は、容易な記載の対象になり得ないことがある。それにもかかわらず、全てのそのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、上記の構成成分を混合することによって調製される潤滑剤組成物を包含する。
【0162】
上で言及される文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。実施例を除き、またはさもなければ明示的に示されている場合を除いて、物質の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定しているこの記載中の全ての数量は、用語「約」によって修飾されるものと理解するべきである。本明細書に示される量、範囲および比の上限ならびに下限は、独立して組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と一緒に用いることができる。
【0163】
本明細書で用いるように、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」はその通常の意味で用いられ、それは当業者に周知である。具体的には、それは、分子の残りに直接に結合する炭素原子を有し、主に炭化水素の性質を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には、以下のものが含まれる:脂肪族、脂環式および芳香族置換基を含む炭化水素置換基;置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明との関連で、置換基の主に炭化水素の性質を変更しない非炭化水素基を含有する置換基;ならびに、ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の性質を同様に有するが、環または鎖に炭素以外を含有する置換基。用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」のより詳細な定義は、国際公開第WO2008147704号の段落[0118]から[0119]に記載される。
【0164】
本明細書で用いるように、脂肪酸(および、本明細書で用いられる他の表現)におけるような用語「脂肪」は、4から150個、または4から30個、または6から16個の炭素原子を含有するヒドロカルビル鎖を含む。
【0165】
本発明はその好ましい実施形態に関して説明されたが、明細書を読むことによってその様々な改変が当業者に明らかになることを理解すべきである。したがって、本明細書に開示される本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るような改変を網羅するものと理解すべきである。