(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034838
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】キャンディーチップスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20161121BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20161121BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A23G3/00 101
A23G1/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-189641(P2014-189641)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-59330(P2016-59330A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】391029288
【氏名又は名称】仙波糖化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】石川 智代
(72)【発明者】
【氏名】奥田 智子
(72)【発明者】
【氏名】金島 健人
【審査官】
植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−008633(JP,A)
【文献】
特表2002−503490(JP,A)
【文献】
特開2009−278949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
C13B
C13K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂糖を主原料として常圧下の直火で煮詰めたキャンディーを砕いて、その長径が1〜5mmの範囲にあるものを70重量%以上とするカリカリ感のある小片状に形成し、該小片状のキャンディーの表面に融点が30〜38℃の油脂を、上記小片状のキャンディー重量の4〜8重量%の割合となる量で薄くコーティングするキャンディーチップスの製造方法。
【請求項2】
上記キャンディーに、副原料として水あめ、酸味料、呈味料、着色料、香料の少なくとも1つを使用する請求項1に記載のキャンディーチップスの製造方法。
【請求項3】
上記油脂をカカオバター及び/またはその代用脂とする請求項1または2に記載のキャンディーチップスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンディーチップスの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャンディーは、砂糖を主原料とし、必要に応じて水あめ、着色料などを加えて低水分量になるまで煮詰め、これを冷却して固化させた菓子であるが、吸湿性が激しく、そのままに放置しておくと直ぐにべた付いた状態になり、さらに溶けた状態(潮解状態)になることもある。
【0003】
こうしたキャンディーも、最近ではこれを砕いて小片状とし、洋菓子、アイスクリームのトッピングなどに用いたり、菓子の中に練りこんで、そのカリカリとした食感を活かし、味と共にその食感を楽しむようにしたものも見られるようになってきた。
【0004】
しかし、上記したようにキャンディーは元々吸湿性が高い上に、これを小片状としたものでは、表面積が増大することによりキャンディーの吸湿性が一層強くなり、カリカリとした食感が直ぐに無くなってしまうという問題があった。
また、こうしたべと付きは、製菓作業中にも見られ、小片状のキャンディー同士が付着し、円滑な作業が行えないこともあった。
【0005】
また、ドーナッツ、洋菓子などの表面にふりかけて使用するコーティングシュガーも湿気ることを防止するために、比較的高融点の油脂と混合して均一的な混合物として、吸湿性を低下させるようにするものも知られている。(特許文献1)
しかし、こうしたコーティングシュガーは、粒子径が小さな粉体状の糖類を対象とするものであり、キャンディーよりも吸湿性は低いものであり、カリカリとした食感が問題となるようなものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−201166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小片状にしたキャンディーの激しい吸湿性を抑制し、これを使用する場合の作業性を良好とし、カリカリとした食感を保持できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、砂糖を主原料として煮詰めたキャンディーを作り、これを砕いて小片状に形成し、こうした小片状のキャンディーの表面に、融点が30〜38℃の油脂を、小片状のキャンディー重量の4〜8重量%の割合となる量を使用して薄くコーティングすることによって、キャンディーチップスを製造する。
そして、この小片状のキャンディーの大きさは、その長径が1〜5mmのものを70重量%以上含むものを使用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャンディーチップスを菓子などに使用する作業中に、これらが互いに付着して塊になるようなこともなく、また、菓子に使用したものもそのカリカリとした食感が失われず、これを長く保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1〜3及び比較例1〜2の経時的な吸水重量の変化を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
キャンディーは、砂糖を主原料とし、これを煮詰めて製造する。この場合、主原料の砂糖だけを使用することができるが、キャンディーに糖化現象が起きないように、副原料として水あめを使用することがあり、更に、必要に応じて蜂蜜、酸味料、呈味料、着色料、香料その他の副原料を使用することができる。また、副原料によっては、吸湿性が一層増す場合がある。
【0012】
上記キャンディーは、真空釜(減圧釜)を使用して煮詰めて製造することができるし、常圧下で煮詰めて製造することもできる。常圧下で煮詰めた場合には、キャンディーがやや褐色に着色し、良好な焦げ臭が付くようになる。また、上記副原料の一部は煮詰めた後でキャンディーに加えることがある。
【0013】
煮詰めたキャンディーは、冷却し、適度の大きさに砕き、更にクラシャー、ローラーなどの適宜の機械によって砕いて小片状にする。こうした小片状のものは一般に不定形であるが、その長径が10mm程度以下のものとし、1〜5mmの範囲にあるものが70重量%を占めるようにすると好ましい。
この場合、1mmより小さな粉末状のものの量が多くなると、吸湿性が強くなって、下記するコーティング作業前や作業中に塊となることが多く、好ましいキャンディーチップスが得られなくなる。また、5mmを超える大きなものの分量が多くなると、噛むことが難しくなって、好ましいカリカリとした食感が得難くなるし、人によっては歯を痛めることがある。
こうした小片状のキャンディーの大きさの制御は、シフターを用いて分級するなど適宜の方法で行うことができる。
【0014】
上記の小片状のキャンディーは、油脂によってコーティングを行う。使用する油脂は、融点が30〜38℃の範囲のもので、常温(20℃)では通常固体となっているものを、好ましく用いることができる。
融点が30℃より低いと常温で液体となるものが多くてべと付いたりするし、コーティング効果が弱くなる。また、38℃を超えるとコーティングの際の粘度が高くなってコーティングが不均一となったり、口溶けが悪くなって、いわゆる重い風味となる。
【0015】
こうした油脂としては、ヤシ油その他の植物油、動物油、これらの硬化油などがあるが、実験したところカカオバターが吸湿防止作用において優れており、また風味の点においても良好であり、キャンディーとの相性もよかった。このカカオバターには、パーム油、シア油、イリッペ油に由来する代用カカオバターが含まれる。
【0016】
上記小片状のキャンディーには、上記油脂を溶かして加え、ミキサー、レボリングパンその他の混合器によって小片状のキャンディーの表面をコーティングする。コーティングに使用する油脂の量は、小片状のキャンディー重量に対して4〜8重量%程度を使用することが好ましい。こうすることによって、小片状のキャンディーの表面に薄いコーティング膜を形成することができる。
上記油脂の使用量が4重量%より少ないとコーティングが不完全になり易く、吸湿防止効果が不十分になることがある。また、8重量%を超えるとコーティング作業中にコーティングされた小片状のキャンディーが、その油脂同士の結着により大きな塊になるようなことがあるし、キャンディーの風味が害されることもある。
【0017】
こうして得られたキャンディーチップスは、薄いコーティング膜によって覆われており、キャンディーチップスが吸湿することを防止しているので、キャンディーチップス同士が付着することもないし、パラパラとした分散状態で菓子などにトッピングしたり、混ぜ合わせたりして使用することができるようになる。
こうして使用されたキャンディーチップスは吸湿し難いので、良好な風味とカリカリとした食感を保っていることができる。
【実施例】
【0018】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
グラニュー糖30kgを銅鍋に入れ、ガスの直火で加熱して150℃まで煮詰め、これをステンレス製のバットに流し入れて冷却した。30℃以下に冷えたことを確認し、10cm以下の大きさになるように粗粉砕し、更に粉砕機にかけて粉砕し小片状のキャンディーとした。この小片状のキャンディーの大きさを測定したところ、長径が1〜5mmの範囲のものが全体の80重量%を占めていた。
【0019】
この小片状のキャンディー5kgに対して、油脂をそれぞれ表1に示す割合で加えてコーティングした。使用した油脂は融点34℃の硬化油であり、これを50℃に加温して溶解し、小片状のキャンディーに吹き付けながら混合してコーティングを行った。
【0020】
【表1】
【0021】
(試験)
上記表1に示す実施例1〜3、比較例1〜2のキャンディーチップスを、それぞれ蓋のない容器に入れ、湿度59.1%のデシケーター内に保存し、経時的にその重量を測定した。測定した重量は、試験開始時の重量を100として表示した。結果を
図1に示した。
【0022】
(評価)
表1に表されているように、実施例1〜3の油脂量を4〜8重量%にして小片状のキャンディーをコーティングしたものでは、耐吸湿性が良好であった。
一方、比較例1のものは、油脂によるコーティングが為されていないために吸湿の程度が高いし、比較例2のものでは油脂量が少ないために、充分なコーティングが為されていないものと考えられる。
【0023】
(実施例4)
グラニュー糖7kg、トレハロース2kg、水あめ1kgを銅鍋に入れ、ガスの直火で加熱して150℃まで煮詰め、これをステンレス製のバットに流し入れて冷却した。30℃以下に冷えたことを確認し、10cm以下の大きさになるように粗粉砕し、更にロールグラニュレーター(日本グラニュレーター(株)製、1541型)によって小片状に粉砕した。この小片状のキャンディーに、6重量%カカオバターを使用してコーティングを行い、その後品温が25℃以下になるまで冷風にて冷却し、約5kgのキャンディーチップスを得た。
【0024】
(製品実施例1)
実施例4で製造したキャンディーチップス5gを、市販のカップ入りアイスクリーム50gの中に練り込み、キャンディーチップス入りのアイスクリームを得た。このアイスクリームを−24℃の冷凍庫内に保存した。
【0025】
(製品比較例1)
実施例4と同様にして製造した小片状のキャンディーに、カカオバターによるコーティングをしないもの5gを、製品実施例1で使用したものと同じ市販のカップ入りアイスクリーム50gの中に練り込み、小片状のキャンディー入りのアイスクリームを得た。このアイスクリームを−24℃の冷凍庫内に保存した。
【0026】
(試験・評価)
上記製品実施例1及び製品比較例1のものを、上記−24℃の冷凍庫内に2か月保存した後に取り出して喫食して評価した。
製品実施例1のアイスクリームでは、喫食時にアイスクリームの中に混じっているキャンディーチップスから良好な風味とカリカリとした食感が得られた。一方、製品比較例1では、小片状のキャンディーが吸水して半溶解状態となっており、カリカリとした食感は全く感じられなかった。