(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034852
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】(半)自動で歯科インプラントを設計する方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20161121BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C19/04 Z
【請求項の数】23
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-254591(P2014-254591)
(22)【出願日】2014年12月16日
(62)【分割の表示】特願2008-520811(P2008-520811)の分割
【原出願日】2006年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-77431(P2015-77431A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】0514554.5
(32)【優先日】2005年7月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508012127
【氏名又は名称】デントスプリー インプランツ ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ファディ,グロール
(72)【発明者】
【氏名】リュック,フリーリンク
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−168518(JP,A)
【文献】
特開平08−215192(JP,A)
【文献】
特表2003−521014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための方法であって、当該方法はシステムに含まれている手段によって行われるものであり、生体力学的、審美的および機能的な考慮に基づく自動的な歯科インプラントの設計を含んでおり、当該手段が、
上記顎の骨の一部分の3Dモデルを生成する工程と、
加工でき、かつ表示できる画像から情報を抜き取る画像分析を利用することによって、上記顎の骨の3Dモデルにおける解剖学的、および人工的な対象物を自動的に検出する工程と、
上記顎の骨の3Dモデルにおいて、インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を、パノラマ曲線を分析することによって自動的に選択する工程と、
システムに含まれている、インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定するための決定手段を用いることによって、インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する工程と、
インプラントのプランを複数取得する工程と、
インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程と、
インプラントのプランを選択する工程と、を行い、
上記顎の一部分の3Dモデルを生成する工程は、
上記顎の3Dモデルを2Dスライス画像のセットにスライスする工程と、
上記2Dスライス画像のそれぞれに対して、パノラマ曲線を生成する工程と、
上記パノラマ曲線に沿って存在している2D外観(feature)を各スライス画像において識別する工程と、
複数のスライスの情報を組み合わせて、歯の存在を確認する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記顎の骨の3Dモデルにおける解剖学的、および人工的な対象物を検出する工程は、上記顎の一部分の画像情報からの濃淡値に基づいていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための方法であって、当該方法はシステムに含まれている手段によって行われるものであり、生体力学的、審美的および機能的な考慮に基づく自動的な歯科インプラントの設計を含んでおり、当該手段が、
歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程と、
加工でき、かつ表示できる画像から情報を抜き取る画像分析を利用することによって、上記歯のセットアップの3Dモデルにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する工程と、
システムに含まれている、インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定するための決定手段を用いることによって、インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する工程と、
インプラントのプランを複数取得する工程と、
インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程と、
インプラントのプランを選択する工程と、を行い、
上記歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程は、
位置合わせによって上記顎に対して正確に位置決めした、所望の上記歯のセットアップをデジタル化する工程をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
上記歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する工程は、上記歯のセットアップの画像情報からの濃淡値に基づいていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記手段が、
上記顎の一部分の3Dモデルを生成する工程と、
上記顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づいて、上記顎の骨における解剖学的、および人工的な対象物を検出し、かつ、上記顎において、インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する工程と、
インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する工程と、
インプラントのプランを取得する工程と、
インプラントのプランを、互いに、または所定の判断基準と比較する工程と、
インプラントのプランを選択する工程と、
をさらに行うことを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
上記歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程は、ボリューム画像における上記患者の顎に対する、デジタルライブラリー由来の1つまたは複数の歯のアーチ形の位置決めおよびスケーリングを行う工程をさらに含むことを特徴とする請求項3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
上記顎の一部分の3Dモデルを生成する工程では、上記顎における生来の、または人工的な複数の歯に相当する画像オブジェクトを検出することを特徴とする請求項1、2または5に記載の方法。
【請求項8】
パノラマ曲線を生成する工程において、パノラマ曲線が、上記顎のスライスにおける輪郭の中線として算出されることを特徴とする請求項1、2または5に記載の方法。
【請求項9】
識別する工程は、歯または歯根の生じ得る断面形状を表している2Dマトリクスまたは2D外観(feature)と、パノラマ曲線に沿う2Dスライス画像の局部領域における濃淡との間の相関値を算出する工程を含むことを特徴とする請求項1、2、5、7または8に記載の方法。
【請求項10】
上記顎の一部分の3Dモデルを生成する工程は、個々の歯の位置に相当する上記顎の領域を識別する工程と、歯の幅の平均値および上記顎の既知の寸法に基づいて、それら領域をそれぞれの歯の番号に帰属させる工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1、2、5、7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
上記歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する工程は、上記歯のセットアップの3Dモデルの局部表面曲率を算出する工程と、得られた曲率値に基づいたウォーターシェッドアルゴリズムを用いて、上記歯のセットアップをより複雑ではない領域または区画に細分化する工程と、を含むことを特徴とする請求項3、4、5または6に記載の方法。
【請求項12】
上記歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する工程は、生じ得る歯の形を表している外観と、3Dの歯のセットアップモデルにおける局部表面領域との相関値を算出する工程と、上記相関値が所定の閾値を超える表面領域を区分する工程と、を含むことを特徴とする請求項3、4、5または6に記載の方法。
【請求項13】
上記インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する工程は、
復元する対象物の切縁/咬合側および根尖側それぞれにおいてポイントグリッドを規定する工程と、
各対象物について、根尖側グリッドの全てのポイントと、切縁/咬合側グリッドの全てのポイントとを結ぶ工程と、
得られた軸と骨の3Dモデルとの交点を決定する工程と、
骨における軸の入り口点から所定の距離にインプラントのショルダーがあるように、デジタルインプラントライブラリーに由来する上記インプラントを各軸に沿って設置する工程と、を含むことを特徴とする請求項6から8および10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
上記インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する工程では、インプラントの設置に対して複数の基準を保持する専門システムが、取り扱うインプラント事例のタイプを識別するため、および、当該専門システムにおける解の「適合度」に基づいて、典型的に一致するインプラントのプランを提案するために用いられることを特徴とする請求項6から8および10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記インプラントのプランを取得する工程は、上記患者のボリューム画像に対して、または上記歯のセットアップの3Dモデルもしくは上記顎の一部分の3Dモデルを作製する工程において作製された3Dモデルに対して行われた測定の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含むことを特徴とする請求項6から8および10から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
上記インプラントのプランを取得する工程は、上記顎、上記インプラントおよび補綴物の生体力学的または限定された対象物モデルを用いて、上記インプラントにおいて予測される負荷の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含むことを特徴とする請求項6から8および10から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
上記インプラントのプランを取得する工程は、個々のインプラントについて達成可能なエマージェンスプロファイルの関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含むことを特徴とする請求項6から8および10から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
上記インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程は、設計スコアが所定の閾値に到達するまで、予め定められた方針により、それぞれのインプラントの寸法、位置および向きを増加的に調整する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6から8および10から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するためのシステムであって、生体力学的、審美的および機能的な考慮に基づく自動的な歯科インプラントの設計を含んでおり、
上記顎の骨の一部分の3Dモデルを生成する手段と、
上記顎の骨の3Dモデルにおいて解剖学的、および人工的な対象物を検出する手段と、加工でき、かつ表示できる画像から情報を抜き取る画像分析を利用することによって、上記顎の骨の3Dモデルにおいて、インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する手段と、
インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する手段と、
インプラントのプランを複数取得する手段と、
インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する手段と、
インプラントのプランを選択する手段と、を備えており、
上記顎の骨の一部分の3Dモデルを生成する手段は、
上記顎の3Dモデルを2Dスライス画像のセットにスライスする手段と、
上記2Dスライス画像のそれぞれに対して、パノラマ曲線を生成する手段と、
1つ以上の2D外観(feature)が上記パノラマ曲線に沿って存在しているか否かを、各スライス画像において識別する手段と、
複数のスライスの情報を組み合わせ、歯の存在を確認する手段と、を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するためのシステムであって、生体力学的、審美的および機能的な考慮に基づく自動的な歯科インプラントの設計を含んでおり、
歯のセットアップの3Dモデルを生成する手段と、
加工でき、かつ表示できる画像から情報を抜き取る画像分析を利用することによって、上記歯のセットアップの3Dモデルにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する手段と、
インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する手段と、
インプラントのプランを複数取得する手段と、
インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する手段と、
インプラントのプランを選択する手段と、を備えており、
上記歯のセットアップの3Dモデルを生成する手段は、
位置合わせによって上記顎に対して正確に位置決めした、所望の上記歯のセットアップをデジタル化する手段をさらに備えていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1または2に記載の方法に含まれる工程をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム製品。
【請求項22】
請求項3または4に記載の方法に含まれる工程をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム製品。
【請求項23】
請求項21または22に記載のコンピュータプログラム製品を記録している、コンピュータにより読取可能である記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、(半)自動で歯科インプラントを設計する(例えば、生体力学的、審美的および/または機能的な考慮に基づく)方法および装置、ならびに、本発明に係る方法を実行するためのコンピュータ方法、コンピュータシステムおよびソフトウェアに関する。
【0002】
〔背景技術〕
歯科インプラントは、差し歯を維持するため、または補綴物を支持するために歯周治療専門医が顎の中に取り付ける人工歯根である。歯科インプラントを用いた治療は、広く受け入れられており、また、取り外し可能な部分入れ歯、ブリッジ、または取り外し式の補綴物のような他の技術に対して多くの利点を有する。歯科インプラントは、近くの健康な歯を犠牲にすることなく、歯の状態の復元を可能にする。インプラントを介して伝達される負荷は骨を刺激し、骨の再吸収を防ぎ、置き換えられた歯の成分の周囲における歯肉の後退に歯止めをかけ、結果として、さらなる審美的な復元をもたらす。また、インプラントを用いた治療は、従来の入れ歯より、自然な咬合および咀嚼能力を保証していながら、従来の入れ歯より快適で安定した解決策ももたらす。
【0003】
従来、歯科インプラントを設置するための外科的な設計には、骨質量および骨質を検証するために、オルトパントグラム(orthopantogram)(すなわち、顎の骨および歯を画像化するX線技術)または、コンピュータ断層撮影(CT)のようなひとつ以上の医療画像撮影装置を用いている。実際に、米国口腔顎顔面放射線技師連盟(AAOMR)は断層像のいくつかの形態をインプラント治療に用いることを勧めている。しかしながら、従来の治療によれば、インプラント位置についての最終的な判断は、軟組織の周囲の開口部が骨を露出している外科手術の際になされる。その後、3〜6ヶ月間で骨が接合し、次に、主に、復元の審美性を最適にするように、インプラントの方向を角度補正する。さらに、インプラントに支持された最終的な補綴物のデザインは、審美的、機能的、および生体力学的な観点から最適であり得る当初のインプラントの位置までの広い範囲から決定される。
【0004】
従来の解決法は、インプラントを直接装着することに向かって発展する場合、もはや有効ではない。インプラントを直接装着することは、完璧な設計および正確な外科移植を必要とする。この方法では、生体力学的な診断に加えて、審美的および/または機能的な考慮を取り入れることが好ましい。また、従来のインプラント方法の使用は、インプラント治療における実際の補綴段階の中でのみ重要である。
【0005】
近年、いくつかのツールが、CTスキャンのような容積測定スキャン、またはMRIのようなその他の容積測定スキャンの多数の異なった指向性のスライスにおける、患者の骨を評価する手段、および多様な長さ、直径および銘柄(マテリアライズ、ルーバン、ベルギーにより提供されるSimPlant
TM参照)の市販のインプラントにおける画像標本に図式的に重ね合わせる手段を歯周治療専門医に提供するために商業的に利用されてきた。ベンジャミンは「多角的平面に再改良されたCTは、インプラント治療計画にとって、最も広範囲であり、的確な補助となっている」と記載している(Benjamin LS、The evolution of multiplanar diagnostic imaging: predicatable transfer of preoperative analysis to the surgical site. J Oral Implantol. 2002; 28(3): 135-44参照)。
【0006】
現在の技術では、歯科インプラントによる患者の治療は、多くの工程で構成されている。まず、治療前に、咬合された石膏型が、咬合の高さを算定するために用いられる。その後、診察用ワックスアップが、所望の補綴物の最終物を表すために作製される(
図1参照)。ワックスアップは、適切な咬合、形態、美観、および音声を得るために最適化される。次の工程では、スキャン鋳型またはスキャン補綴物が作製される(
図2参照)。これは、典型的には、一定の割合の硫酸バリウムと共に混合された寒冷重合樹脂である、放射線不透過性の材料から作られるワックスアップの正確な複製である。スキャン補綴物の不透過率の水準は、構成部品によって変えてもよい:例えば、歯は義歯床より高い不透過率であってもよい。望まれれば、いくつかの部分は放射線透過性にできる。患者が口の中にスキャン補綴物を入れた状態でスキャンされる場合、放射線不透過性の部分は、CT画像においてはっきりと見える(
図3参照)。時として、例えば歯のような、それぞれの復元する対象物の主軸は、円筒系の穴を開けることによって、印をつけられる。CT画像でのスキャン鋳型の組み込みは、目的とする補綴物の作用において設計する外科医の能力を高める。
【0007】
スキャン鋳型の製造に続いて、患者はCT画像のために放射線技師のもとへ送られる。スキャン鋳型は、患者の口中に取り付けられ、スキャン撮影される。スキャンの画像は、3次元“データセット”を形成している2Dスライスの積み重ねである。
【0008】
いったん、CTスキャンされ、3Dモデルが構築されれば(
図4参照)、外科医はコンピュータプログラムを用いてインプラント治療を計画する。おもに、上記プログラムは、少しも情報を変えずに、放射線科側によって与えられるデータセットを取り込む。
【0009】
画像処理技術(例えば、画像分割)を用いることによって、骨の3次元モデルがデータセットから導き出される。放射線不透過性の歯群が2D軸スライスにおいて十分に表されるならば、所望の補綴物のセットアップの3Dモデルも作図できる。
【0010】
放射線不透過性のスキャン補綴物を用いる代わりに、時には、診察用ワックスアップまたは取り外し式の補綴物が(CT、光学式スキャンまたは機械的スキャンによって)別にデジタル化され、後に、体積データにおいて可視な解剖学的構造に登録される。また、このように所望の歯の状態に関する情報は、顎との補正関係において得られる。コンピュータプログラム(
図5参照)により、個々の患者のCT画像が3次元法において評価され、歯科インプラントを理想的に取り付けることができる場所を決定することができる。インプラントは、デジタルインプラントライブラリーから選択されてもよい(さまざまなインプラント銘柄、長さ、直径など)。
【0011】
次に、施術者は、軸画像におけるパノラマ曲線を定義する(
図6参照)。当該曲線は、典型的には顎のアーチ形に沿う。複数の断面(
図7参照)が、パノラマ曲線と軸方向のスライスとの両方に垂直であるように選択され得る。典型的には、インプラント受容体部位は、これら断面において選択される。施術者は、図(軸方向、パノラマ、3D、または断面)のいずれかの中で、必要に応じ、各インプラントの位置および傾きを修正できる。微調整は、インプラントの図における移動および傾けること、またはそれらの寸法を変えることによってなされる。それぞれ個々のインプラントの位置は、Ganzにより“骨のトライアングル”と表現される(Ganz SD、A-formula for successful Implant Placement and Restoration、The implant society, Inc、1995、Vol.(5);pp2-6)、利用可能な骨の量に関して評価することができる。骨質は、例えば、骨密度の測定としてハウンズフィールドユニットを用いているコンピュータプログラムにおいて視覚化される。
【0012】
いったん、インプラントの設計が固定されると、外科医は患者に対してできる限り正確に移し換える必要がある。上記移し換えは、例えば、SurgiGuide
TMという名でベルギーのルーバン、マテリアライズによって提供されるような特注のガイド鋳型を用いることによって、または、ナビゲーションの代替的手段を用いることによって、精神的になされ得る。
【0013】
歯科インプラントの設計のための従来のコンピュータプログラムは、異なるインプラント治療をシミュレートするために必要な情報を完全に視覚化し、範囲評価手段を完全に提供するけれども、生体力学的、機能的、および審美的な観点からインプラントの最適な位置を決定することにおいて、自動化または、半自動化された補助を何ら提供していない。
【0014】
〔本発明の概要〕
本発明の第1の目的は、ボリュームデータ(例えば、スキャン容積測定から得られる)を用いた、生体力学的、審美的および機能的な考慮に基づく(半)自動的な歯科インプラントの設計に関して改良された方法を提供することである。本発明による効果は、従来技術における、少なくともいくつかの問題点を克服することにある。
【0015】
この第1の目的における第1の実施形態によれば、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための方法は、
(a)歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程、および
(b)歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する工程
を含む。
【0016】
歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出することは、歯のセットアップの3Dモデルにおける濃淡値に基づくような画像分析をもとになされてもよい。あるいは、歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出することは、セットアップの3Dモデル、および表面屈曲分析に基づいた検出を用いることによってなされてもよい。復元する対象物は、人工の歯およびそれと同等のものである。“画像分析”という表現は、画像処理技術、好ましくはデジタル画像処理技術を用いて、表示でき、加工できる画像、好ましくはデジタル画像から、役に立つ情報を抜き取ることとして理解されてもよい。物体の画像は、物体の空間的な積層における見識を提供する任意の3D表示だけでなく、濃淡値情報を含む物体の2Dスライスを含んでもよい。
【0017】
この第1の目的における第2の実施形態によれば、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための方法は、
(a)顎の一部分の3Dモデルを生成する工程、
(b1)顎の骨における解剖学的、および人工的な対象物を検出する工程、および
(b2)上記顎において、インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する工程
を含む。
【0018】
上記選択は、顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づくような画像分析によって行われてもよい。検出される解剖学的対象物は、神経、血管、嚢胞、歯茎に埋没した歯、骨髄、罹患骨、または類似の対象物であり得る。
人工的な対象物は、歯冠、ブリッジインプラント、充填剤、移植片、チタニウム膜などであり得る。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によると、上記方法は、
(c)インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する工程、
(d)インプラントのプランを複数取得する工程、
(e)インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程、および、(f)インプラントのプランを選択するか、または改良する工程
をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によると、上記方法は、
・顎の一部分の3Dモデルを生成する工程、
・顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づいて顎の骨における解剖学的および人工的な対象物を検出する工程、および、上記顎においてインプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する工程、
・インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する工程、
インプラントのプランを複数取得する工程、
・インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程、および
インプラントのプランを選択するか、または改良する工程
をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によると、歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程は、所望の歯のセットアップを別にデジタル化し、位置合わせによって顎に対して正確に位置決めする工程をさらに含んでもよい。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によると、歯のセットアップの3Dモデルを生成する工程は、ボリューム画像または3Dにおける患者の顎に対する、デジタルライブラリー由来の1つまたは複数の歯のアーチ形の位置決めおよびスケーリングを行う工程をさらに含んでもよい。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する工程において、顎における、生来の、または人工的な歯に対応する画像オブジェクトが、検出されてもよい。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する工程は、
・顎の3Dモデルを多数の2Dスライス画像にスライスする工程、
・2Dスライス画像のそれぞれに対して、パノラマ曲線を生成する工程、
・1つ以上の2D外観(feature)がパノラマ曲線に沿って存在しているか否かを、各スライス画像において評価する工程、および、
・複数のスライスの情報を組み合わせ、歯の存在を確認する工程
を含んでもよい。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によると、パノラマ曲線を生成する工程では、パノラマ曲線は顎のスライスにおける輪郭の中線として算出されてもよい。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によると、評価する工程は、歯または歯根の生じ得る断面形状を表している2Dマトリクスまたは外観と、パノラマ曲線に沿う2Dスライス画像の局部領域における濃淡との間の相関値を算出する工程を含んでもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する工程は、個々の歯の位置に相当する顎の領域を識別する工程、および、歯の幅の平均値および既知の顎の寸法に基づいて、識別した領域をそれぞれの歯の番号に帰属させる工程をさらに含んでもよい。または、識別された領域は、生来の、または人工的な歯の既知の位置に基づいて補正されてもよい。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する工程は、上記歯のセットアップの3Dモデルの局部表面曲率を算出する工程と、得られた曲率値に基づいたウォーターシェッドアルゴリズムを用いて、歯のセットアップをより複雑ではない領域または区画に細分化する工程を含んでもよい。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によると、歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する工程は、生じ得る歯の形状を表している3Dマトリクスまたは外観と、3Dの歯のセットアップモデルにおける局部表面領域との間の相関値を算出する工程、および相関値が所定の基準値を超える表面領域を区分する工程を含んでもよい。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する工程は、
・復元する対象物の切縁/咬合側および根尖側それぞれにおいてポイントグリッドを規定する工程、
・各対象物について、根尖側グリッドの全てのポイントと、切縁/咬合側グリッドの全てのポイントとを結ぶ工程、
・得られた軸と骨の3Dモデルとの交点を決定する工程、
・骨における軸の入り口点から任意の距離にインプラントのショルダーがあるように、デジタルインプラントライブラリーに由来するインプラントを各軸に沿って設置する工程、および、
・最小で、歯のセットアップ全体に対して一つのインプラントを目的とした1セットの代替物から、最大で、歯のセットアップにおいて復元する対象物それぞれに対するインプラントを目的とした全ての代替物まで、全ての可能な組み合わせをリストアップする工程
を含んでもよい。
【0031】
あるいは、本発明のいくつかの実施形態によると、ポイントグリッドを規定する工程において、所望する補綴物の金属ベース構造の3D立体標本を作製するために、復元する対象物において中空操作が用いられてもよい。これら立体は、切縁/咬合側および根尖側の前記ポイントグリッドの輪郭を得るために復元する対象物の3Dモデル上に投影されてもよい。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポイントグリッドを規定する工程において、上記復元する対象物の投影した輪郭は、復元する対象物とそれらのそれぞれの根尖−切縁軸との交点において規定される切縁面/咬合面および根尖面において決定されてもよく、当該投影した輪郭は内側に補正されて補正輪郭を与え、2Dにおける補正輪郭の囲まれた表面領域は、投影輪郭領域の元の表面の任意の一部分である。その後、補正輪郭は、上記ポイントグリッドの輪郭を得るために、復元する対象物の後方に投影される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、投影は、それぞれの根尖−切縁軸の方向においてなされてもよい。本発明のいくつかの実施形態によると、復元する対象物の根尖−切縁軸は、その慣性の主軸として決定されてもよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する工程において、専門システムが、取り扱うインプラント事例のタイプを識別するため、および、当該専門システムにおける解の「適合度」に基づいて、典型的に一致するインプラントのプランを提案するために用いられる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントのプランを複数取得する工程は、患者のボリューム画像に対して、または歯のセットアップの3Dモデルもしくは顎の一部分の3Dモデルを作製する工程において作製した3Dモデルに対して行われた測定の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含む。本発明のいくつかの実施形態によると、最も短い距離は、インプラントと神経、血管および顎の3Dモデルとの間で算出されてもよく、インプラントによって占有されているボクセルの平均濃淡値およびインプラントの近傍のボクセルにおける平均濃淡値がインプラント軸に沿って決定されて算出されてもよい。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントのプランを複数取得する工程は、顎、インプラント、および補綴物の生体力学的または限定された対象物モデルを用いて、インプラントにおいて予測される負荷の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含んでもよい。あるいは、本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントのプランを複数取得する工程は、個々のインプラントについて達成可能なエマージェンスプロファイルの関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける工程を含んでもよい。あるいは、達成可能なエマージェンスプロファイルは、上記インプラントのショルダーにおける最も頬面の点と、断面における根尖のポイントグリッドの最も頬面の点および当該点から根尖側および切縁側へ所定量の間隔を置いて位置する点を通る軸との間の、断面図における距離の関数により示されてもよく、根尖側および切縁側への距離は、好ましくは、前歯に対してそれぞれ3mmおよび2mmであり、かつ奥歯に対してそれぞれ1mmおよび2mmであってもよい。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によると、前歯と奥歯との区別は、ボリューム画像または3Dモデルにおいてスマイルラインを表示することによってなされてもよい。
本発明のいくつかの実施形態によると、インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する工程は、設計スコアが所定の閾値に到達するまで、予め定められた方針により、それぞれのインプラントの寸法、位置および向きを増加的に調整する工程をさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によると、自動的または半自動的な歯科インプラントの設計は、患者の骨における歯科インプラントの最適な量、寸法、位置、向き、および形状を決定する、または確認するための一つ以上の自動化された方法を利用することを含む。これらの方法は、コンピュータで行われ、好ましくは曖昧でない(unequivocal)。前記方法は、生体力学的な考慮(例えば、骨量、骨質等)および審美的な考慮(例えば、歯の形および、エマージェンスプロファイル等)に関する既定義の規定に基づいている。
【0039】
本発明によれば、(半)自動的な手術計画およびシミュレーションは、コンピュータを用いて達成されてもよい。したがって、患者は3Dボリューム画像データを得るために、スキャンされてもよい。コンピュータ化された自動的または半自動的なバーチャルなインプラントの設置は、コンピュータ化された顎のモデルにおいて行われてもよい。その後、前記計画はサージカルガイドにより患者に移されてもよい。
【0040】
歯(例えば、生来のまたは人工的な)の存在および位置が、患者のボリューム画像データまたは顎の3次元モデルにおいて自動的に認識されることが本発明の特徴である。このとき、歯が見出され得る場所は明確である。反対に、欠損している歯は、ただちに特定され、インプラントによって置き換えられる。
【0041】
本発明の別の特徴は、インプラントの寸法、位置および向きが、患者の骨に対して、既知の補綴対象物の位置に基づいて自動的または半自動的に提案され、および/または確認されることである。
【0042】
また、インプラントの寸法、位置、向きおよび形状(すなわち、インプラント間の関係)は、患者の骨における既知の3Dジオメトリーから、および/または、患者のボリューム画像データにおける濃淡値として可視の測定された骨の質を考慮に入れている数学的、および生体力学的計算から、自動的に提案およびまたは確認されることも、本発明の特徴である。
【0043】
本発明の著しい効果は、臨床医が、患者固有の基準に基づいて行われる明白なガイドラインを有することによって、治療計画における決定において十分に補助されるということである。また、本発明は、多くの判断基準により、もし手動でなされる場合に要するであろうことがたちまちのうちに確認することができれば、時間をかなり節約することもできる。
【0044】
本発明の第2の目的は、ボリュームデータ(例えば、容積測定スキャンからの)を用いて、生体力学的、審美的、および機能的な考慮に基づいた(半)自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するシステムを提供することである。
【0045】
本発明の第2の目的における第1の実施形態によると、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するためのシステムは、
(a)歯のセットアップの3Dモデルを生成するための手段、および、
(b)画像分析に基づいて、歯のセットアップにおいて復元する対象物を自動的に検出するための手段
を備えている。
【0046】
歯のセットアップにおいて復元する対象物を自動的に検出するための手段は、歯のセットアップの3Dモデルにおける濃淡値に基づいて、歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出してもよい。あるいは、歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する手段は、セットアップの3Dモデルおよび表面曲率分析に基づく検出を用いて、歯において構成を復元する対象物を自動的に検出してもよい。
【0047】
本発明の第2の目的における第1の実施形態によると、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するためのシステムは、
(a)顎の一部分の3Dモデルを生成するための手段、および
(b)顎の骨における解剖学的、および人工的な対象物を検出し、画像分析に基づいて、インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する手段
を備えている。
【0048】
検出は、顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づいてもよい。
【0049】
本発明の実施形態によると、上記システムは、
(c)インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する手段、
(d)インプラントのプランを複数取得する手段、
(e)インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する手段、および、(f)インプラントのプランを選択するか、または改良する手段
をさらに備えていてもよい。
【0050】
本発明の実施形態によると、上記システムは、
顎の一部分の3Dモデルを生成する手段、
顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づいて、顎の骨における解剖学的、および人工的な対象物を検出し、顎においてインプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する手段、
歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する手段、
インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定する手段、
インプラントのプランを複数取得する手段、
インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する手段、および
インプラントのプランを選択するか、または改良する手段、
をさらに備えていてもよい。
【0051】
本発明の実施形態によると、歯のセットアップ3Dモデルを生成する手段は、所望の歯のセットアップを別にデジタル化し、位置合わせにより顎に対してそれを正確に位置決めする手段をさらに備えていてもよい。
【0052】
本発明の実施形態によると、歯のセットアップ3Dモデルを生成する手段は、ボリューム画像または3Dにおける上記患者の顎に対する、デジタルライブラリー由来の1つまたは複数の歯のアーチ形の位置決めおよびスケーリングを行う手段をさらに備えていてもよい。
【0053】
本発明の実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する手段は、顎における生来のまたは人工的な歯に相当する画像オブジェクトを検出することを特徴としてもよい。
【0054】
本発明の実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する手段は、
顎の3Dモデルを多数の2Dスライス画像にスライスする手段、
2Dスライス画像のそれぞれに対して、パノラマ曲線を生成する手段、
1つ以上の2D外観がパノラマ曲線に沿って存在しているか否かを、各スライス画像において評価する手段、および
複数のスライスの情報を組み合わせ、歯の存在を確認する手段、
をさらに備えていてもよい。
【0055】
本発明の実施形態によると、パノラマ曲線を生成する手段は、顎の上記スライスにおける輪郭の中線として上記パノラマ曲線を算出してもよい。
【0056】
本発明の実施形態によると、評価する手段は、歯または歯根の生じ得る断面形状を表している2Dマトリクスまたは外観と、パノラマ曲線に沿うCTスライス画像の局部領域における濃淡との間の相関値を算出する手段を含んでもよい。
【0057】
本発明の実施形態によると、顎の一部分の3Dモデルを生成する手段は、個々の歯の位置に相当する顎の領域を識別し、歯の幅の平均値および既知の顎の寸法に基づいて、識別した領域をそれぞれの歯の番号に帰属させる手段をさらに含んでもよい。上記識別された領域は、生来の、または人工的な歯の既知の位置に基づいて、補正されてもよい。
【0058】
本発明の実施形態によると、歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する手段は、上記歯のセットアップの3Dモデルの局部表面曲率を算出する手段と、得られた曲率値に基づいたウォーターシェッドアルゴリズムを用いて、上記歯のセットアップをより複雑ではない領域または区画に細分化する手段を備えていてもよい。
【0059】
本発明の実施形態によると、歯のセットアップにおける復元する対象物を検出する手段は、生じ得る歯の形を表している3Dマトリクスまた外観と、3Dの歯のセットアップモデルにおける局部表面領域との間の相関値を算出する手段と、上記相関値が所定の閾値を超える表面領域を区分する手段と、を備えていてもよい。
【0060】
本発明の実施形態によると、インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する手段は、
上記復元する対象物の切縁/咬合側および根尖側それぞれにおいてポイントグリッドを規定する手段と、
各対象物について、根尖側グリッドの全てのポイントと、切縁/咬合側グリッドの全てのポイントとを結ぶ手段と、
得られた軸と骨の3Dモデルとの交点を決定する手段と、
骨における軸の入り口点からの任意の距離にインプラントのショルダーがあるように、デジタルインプラントライブラリーに由来する上記インプラントを各軸に沿って設置する手段と、
最小で、歯のセットアップ全体に対して単一のインプラントを目的とした1セットの代替物から、最大で、歯のセットアップにおいて復元する対象物それぞれに対するインプラントを目的とした全ての代替物まで、全ての可能な組み合わせをリストアップする手段と、を備えていてもよい。本発明の実施形態によると、ポイントグリッドを規定する手段は、上記復元する対象物に対して中空操作を行い、所望の補綴物の金属ベース構造の3D立体標本を作製する手段と、上記復元する対象物の3Dモデル上に立体を投影して、上記切縁/咬合側および根尖側それぞれにおけるポイントグリッドの輪郭を得る手段を備えていてもよい。あるいは、復元する対象物のポイントグリッド投影輪郭を規定する手段は、上記復元する対象物とそれらのそれぞれの根尖−切縁軸との交点において規定される切縁面/咬合面および根尖面において決定されてもよく、当該投影した輪郭は内側に補正されて補正輪郭を与え、2Dにおける補正輪郭の囲まれた表面領域は、投影輪郭領域の元の表面の任意の一部分である。その後、補正輪郭は、上記ポイントグリッドの輪郭を得るために、復元する対象物の後方に投影される。または、投影はそれぞれの根尖−切縁軸の方向においてなされてもよい。復元する対象物の根尖−切縁軸は、その慣性の主軸として決定されてもよい。
【0061】
本発明の実施形態によると、インプラントの寸法、位置、向き、および形状の候補を決定する手段は、専門システムを、取り扱うインプラント事例のタイプを識別するため、および、当該専門システムにおける解の「適合度」に基づいて、典型的に一致するインプラントのプランを提案するために含んでもよい。あるいは、インプラントのプランを複数取得する手段は、患者のボリューム画像に対して、または上記歯のセットアップの3Dモデルもしくは顎の一部分の3Dモデルを作製する工程において作製した3Dモデルに対して行われた測定の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける手段を備えている。最も短い距離は、インプラントと神経、血管および顎の3Dモデルとの間で算出されてもよく、インプラントによって占有されているボクセルの平均濃淡値およびインプラントの近傍のボクセルにおける平均濃淡値がインプラント軸に沿って決定されて算出されてもよい。
【0062】
本発明の実施形態によれば、顎、インプラントおよび補綴物の生体力学的または限定された対象物モデルを用いて、インプラントにおいて予測される負荷の関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける手段を備えていてもよい。
【0063】
本発明の実施形態によれば、インプラントのプランを複数取得する手段は、個々のインプラントついて達成可能なエマージェンスプロファイルの関数として、インプラントの組み合わせにスコアをつける手段を備えていてもよい。達成可能なエマージェンスプロファイルは、上記インプラントのショルダーにおける最も頬面の点と、断面における根尖のポイントグリッドの最も頬面の点および当該点から根尖側および切縁側へ所定量の間隔を置いて位置する点を通る軸との間の、断面図における距離の関数により示されてもよい。根尖側および切縁側への距離は、前歯に対してそれぞれ3mmおよび2mmであり、かつ奥歯に対してそれぞれ1mmおよび2mmであってもよい。前歯と奥歯との区別は、ボリューム画像または3Dモデルにおいてスマイルラインを表示することによってなされてもよい。
【0064】
本発明の実施形態によれば、インプラントのプランを互いに、または所定の判断基準と比較する手段は、設計スコアが所定の閾値に到達するまで、予め定められた方針により、それぞれのインプラントの寸法、位置および向きを増加的に調整する手段をさらに備えていてもよい。
【0065】
本発明の上記方法の実施形態は、例えば、
図30に示すような処理システム100のようなシステムで実施されてもよい。
図30は、少なくとも1つの形態のメモリ(例えば、RAM、ROMなど)を含むメモリサブシステム105と連結された、少なくとも1つのプログラム可能な処理装置103を備えている処理システム100の一形態を示している。処理装置103またはその他の処理装置は、一般的な目的または特別な目的の処理装置であってもよく、例えば、他の機能を行う他の構成要素を備えるチップのようなデバイスに含まれてもよいことに注意しなければならない。このように、本発明の1つ以上の態様は、デジタルエレクトロニック回路、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせでも実施することができる。処理システムは、少なくとも一つのディスクドライブおよび/またはCD−ROMドライブおよび/またはDVDドライブを有する記憶サブシステム107を含んでもよい。いくつかの実施形態において、表示システム、キーボード、およびポインティングデバイスが、情報を手動で入力する利用者に提供するために、ユーザー・インターフェイスサブシステム109の一部として含まれてもよい。また、入力および出力データの端子が含まれてもよい。さらに、
図30には図示されていないが、ネットワーク接続、様々なデバイスとのインターフェイスなどのさらなる要素が含まれてもよい。処理システム100の様々な要素は、様々な方法において接続されてもよく、単一のバスのように簡素にするために、
図30において示されるバス・サブシステム113を経由して含まれてもよいが、少なくとも1つのバスのシステムを含むことが当業者に理解されるであろう。メモリサブシステム105のメモリは、時には(at some time)本明細書中において記載された方法の実施形態の工程が処理システム100装置において、いつ実行されるかという一連の指示の一部または全て(111として示されるどちらの場合において)を保持してもよい。このように、
図30に示されるような処理システム100は従来技術であるけれども、情報を得るため、または基板のリソグラフ処理の最適化のための方法の態様を実行するための命令を含むシステムは、従来技術ではなく、したがって、
図30は従来技術と呼ばれない。
【0066】
また、本発明は、コンピュータ・デバイスで実行される場合において、本発明に係るいずれかの方法を機能的に実行させるコンピュータプログラム製品も含む。上記コンピュータプログラム製品は、プログラム可能な処理装置で実行するための機械可読コードを保持している、コンピュータにより読取可能である記録媒体において、明白に具体化することができる。したがって、本発明は、演算手段で実行される場合に、上述のいかなる方法を実行するための指示を与える、コンピュータプログラム製品を保持している、コンピュータにより読取可能である記録媒体に関する。「コンピュータにより読取可能である記録媒体」という表現は、実行するための処理装置に指示を与えることに関与する任意の媒体を指す。上記媒体は、これらに限定されないが、不揮発性メディアおよび通信メディアを含む、多くの形態をとってよい。不揮発性メディアとしては、例えば、大容量記憶装置の一部である記憶装置のような光学または磁気のディスクが挙げられる。コンピュータが読取可能なメディアの一般的な形態は、CD−ROM、DVD、フレキシブル・ディスクまたはフロッピー(登録商標)ディスク、テープ、メモリーチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取りできる他のどんな媒体をも含む。コンピュータが読取可能なメディアの多様な形態は、実行のため処理装置への一つ以上の指示から成る一つ以上の数列を保持することに関してもよい。また、コンピュータプログラム製品は、LAN、WANまたはインターネットのようなネットワークにおいて、搬送波を介して送信することができる。通信メディアは、電波および赤外線データ通信の間に発生されるような音波または光波の形態をとることができる。通信メディアは、コンピュータ内のバスを含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、およびファイバーオプティクスを含む。
【0067】
本発明の第3の目的によれば、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラント設計に用いる情報を準備するためのコードを含むコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムにおいて実行されるとき、
(a)歯のセットアップの3Dモデルを生成する手段、および
(b)画像分析に基づいて、歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する手段
を備えている。
【0068】
歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出する手段は、歯のセットアップの3Dモデルにおける濃淡値に基づいて歯のセットアップにおいて構成を復元する対象物を自動的に検出してもよい。あるいは、歯のセットアップにおいて復元する対象物を自動的に検出する手段は、セットアップの3Dモデルおよび表面屈曲分析に基づく検出を用いることによって、歯において構成を復元する対象物を自動的に検出してもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラント設計に用いる情報を準備するためのコードを含むコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステムにおいて実行されるとき、
(a)上記顎の一部分の3Dモデルを生成する手段、および
(b)上記顎の骨における解剖学的、および人工的な対象物を検出し、かつ、上記顎における上記インプラントを設置することができる領域、またはできない領域を自動的に選択する手段、
を備えている。
【0070】
画像分析は、検出が顎の一部分の3Dモデルにおける濃淡値に基づいているようなものであってもよい。状況に応じて、コンピュータプログラム製品は、本発明の第2の目的に係る任意のシステムにおいて規定された任意の手段を提供するためのコードを含んでもよい。
【0071】
本発明の第4の目的によれば、本発明の第3の目的に係るコンピュータプログラム製品を記録している、コンピュータにより読取可能である記録媒体が提供される。
【0072】
本発明の、このようなおよびその他の目的、特徴、および効果は、参照が添付図面中の図になされている以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0073】
〔図面の簡単な説明〕
記載された図面は、概略的なだけであり、非制限的である。図面において、いくつかの要素の大きさは、大げさであるかもしれないし、また例証のための倍率は描かれていないかもしれない。
【0074】
図1は、所望の歯のセットアップを表すために製造された診断用ワックスアップを示す図である。
【0075】
図2は、CTスキャンの間、患者の口に置かれ、かつ複数の放射線不透過性対象物を有するスキャン補綴物を示す図である。
【0076】
図3は、画像において可視的である放射線不透過性の歯のセットアップに対して軸方向のCTスライスを示す図である。
【0077】
図4は、複数の補綴対象物(7)を有する歯のセットアップ(1)に対応する歯を失った顎(2)の3Dモデル、および神経(3)の3Dモデルを示す図であり、ここには、複数の設計したインプラントの修復される空間(5)も示されている。
【0078】
図5は、インプラント歯科学におけるデジタル設計環境を示す図である。
【0079】
図6は、軸方向のCTスキャン画像において描かれたパノラマ曲線を示す図である。
【0080】
図7は、顎およびスキャン補綴物の複数の断面図を示す図である。
【0081】
図8は、患者にデジタル設計を移すために用いる外科用鋳型(SurgiGuide
TM)を示す図である。
【0082】
図9は、患者の顎(2)に対する単一の補綴対象物(7)を示す図であり、インプラント可能である位置の限界である空間的な境界(4)は、補綴対象物(7)の切縁/咬合および根尖側表面における2つのポイントグリッド(8)によって示されている。
【0083】
図10は、対象物の内部補正(9)を貫通する根尖−切縁軸(10)における、補綴対象物(7)および顎(2)の断面を示す図である。
【0084】
図11は、下顎(2)に対する補綴対象物(7)の最も小さい限界ボックス(11)を示す図である。
【0085】
図12は、補綴対象物の切断面および断面図を示しており、根尖−切縁軸(10)は、2点(12)で対象物と交差しており、2つの平面(13)は、根尖−切縁軸(10)に対して垂直であると定義されており、これらの平面(13)における対象物の輪郭(14)は、補正(15)されているとともに、対象物の表面に投影され、ポイントグリッド(8)の3D輪郭となっている。
【0086】
図13は、補綴対象物の断面および断面図を示しており、複数の放射状に方向付けられた平面における最も切縁/咬合側の点(18)は、歯の尖端を貫通する輪郭(19)となり、輪郭(19)は、ポイントグリッド(8)の輪郭(20)を得るために、内部側に補正され得る。
【0087】
図14は、補綴対象物(7)および顎(2)の断面を示しており、可能なインプラント軸(21)は、根尖側ポイントグリッド(23)の点と、切縁/咬合側ポイントグリッド(22)の点とを結ぶことにより定義されており、これらの軸(21)と顎(2)との交点は、入り口点(24)および出口点(25)となり、インプラントライブラリー(26)は、可能なインプラント(6)をリストアップする。
【0088】
図15は、単一の皮質に固定されているとともに、神経(3)から距離fの位置に位置しており、かつ、顎(2)における入り口点からの距離がeである、インプラントのショルダー(27)を有するインプラント(6)を示す図である。
【0089】
図16は、2つの皮質に固定されているインプラント(6)を示す図である。
【0090】
図17は、インプラントによる開窓部(28)を有する顎を示す図である。
【0091】
図18は、CTスキャンにおける軸方向の画像に重ね合わせたスマイルライン(29)を示す図である。
【0092】
図19は、補綴対象物(7)およびインプラント(6)の断面を示しており、インプラントのショルダーの最も頬面の点(30)は、所定の断面におけるポイントグリッドの最も頬面の点(32)とgmmさらに根尖側かつhmmさらに切縁側に位置している点(33)とを通る直線(31)上に位置している。
【0093】
図20aおよび20bは、インプラントおよび上部構造物を有する、または有しない顎の生体力学モデルを示す図である。
【0094】
図21は、拡大縮小が可能である歯のアーチ形を示す図である。
【0095】
図22は、対応するパノラマ曲線(35)を有する顎の断面輪郭(34)を示す図である。
【0096】
図23は、歯根および歯の形をした複数の2D外観(36)を示す図である。
【0097】
図24は、複数の外観が認識され、結果として、歯の位置に帰属され得るいくつかの部位(37)に分割された顎を示す図である。
【0098】
図25は、スキャッタ(38)を伴う軸方向のCTスライスを示す図である。
【0099】
図26は、歯の形をしたパッチまたは表面領域(39)を有する顎(2)の3Dモデルを示す図である。
【0100】
図27は、歯の形をした3D外観を示す図である。
【0101】
図28は、本発明の実施形態における方法の概略を示すフローチャートである。
【0102】
図29は、本発明の実施形態におけるコンピュータシステムの概要を示す図である。
【0103】
図30は、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための処理システムの構成を示す図である。
【0104】
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明は、特定の実施形態に関しておよび特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定される。
【0105】
〔最適なインプラント位置の検出〕
本発明の好ましい実施形態によれば、所望の歯のセットアップ(1)および顎(2)ならびに任意の神経(3)または血管の三次元表示が必要となり、取得される(
図4参照)。本発明の被験者としての患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計のための情報を準備する方法は、患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計のための情報を準備するためのコンピュータに基づく方法として理解されるべきである。
【0106】
本発明にしたがった方法の図式的概観が、
図28に示されている。この流れに示されているステップは、以下により詳細に説明される。
【0107】
顎の一部分の3Dモデル、および/または歯のセットアップの3Dモデルが利用可能になると本方法が開始され、そのようなものとしては、例えば、患者の顎の容積測定(volumetric)スキャン、および所望の歯のセットアップ(1)ならびに顎(2)ならびに任意の神経(3)または血管の三次元表示などである。開始して最初のステップ(
図9参照)において、インプラントの復元される空間(5)が理想的には審美的に許容可能となるよう限定されるべき空間の境界線(4)を決定するために、歯のセットアップ(1)の3Dモデルが使用される。復元される空間(5)は、歯の復元の方向におけるインプラント(6)の仮想の伸長(
図14から16参照)によって占領されるであろう空間の容積として規定される。空間の境界線(4)は、セットアップ(1)における各対象物(例えば、歯)(7)について特定され得る。それらは、個々に、対象物7(表面に投影されている対象物または投影されていない対象物)の切縁/咬合側および根尖側における空間的なポイントグリッド(8)の関数において規定することができる。グリッド(8)を規定するために、いくつかの技術を用いることができる。いくつかの実例となる技術をこれより先に記載する。
・一つの選択肢としては、歯(7)の3Dモデルの内部の3D容積(9)(
図10参照)を作りだすための、オフセット操作または中空操作の使用である。この3D容積(9)は、歯のエナメルを擬態するために陶材層が蒸着している、身体の義歯の金属基部を表している。3D歯モデルの表面にあるグリッドの外形は、得られた容積をその上に投影することにより得られる。好ましくは、投影の方向は、補綴対象物(7)の根尖−切縁軸(10)によって定められる。たとえば、補綴対象物をその後も支えるための最も小さい限界ボックス(11)(
図11参照)を算出し、限界ボックスの3つの主軸それぞれに沿って、補綴対象物から顎骨までの距離を決定することによって、軸を求めることができる。最も短い距離を生み出す軸は、対象物の根尖−切縁軸である。または、補綴対象物の慣性の主軸を算出することができる。根尖−切縁軸は、軸に沿った対象物から骨までの距離が最も短い軸であろう。
【0108】
・グリッドを規定する第二の選択肢として、対象物の根尖−切縁軸(
図12参照)と対象物の表面との二つの交点(12)を決定することがある。これらの交点面(13)において、切縁/咬合面および根尖面は、根尖−切縁軸に直交するものと規定される。これらの面において、対象物は軸方向に投影され、各面に、閉2D曲線(14)または投影輪郭を生み出す。次に、これらの曲線に囲まれた全表面が算出され、曲線は、囲まれた表面が元の値の任意のパーセンテージに達するまで内側に向かって補正される。それにより得られた2D曲線(15)または補正輪郭は、対象物の背後に投影され、それぞれのポイントグリッドの輪郭が描かれる。
・ポイントグリッド(8)を規定する別の任意の方法は、スキャンの鋳型(16)のデザインを修正することによるものである。この場合には、スキャンの鋳型を作製するために使用されるX線不透過性の歯(17)は、限られた壁の厚みを有する正規な形状または不均整な形状の管である。CT画像から歯のセットアップの3Dモデルを算出するときに、空間の境界線(4)は、3Dモデル内において、歯のセットアップの異なる対象物内にある穴として、すぐに識別できるものである。根尖側および切縁/咬合側におけるこれらの穴の境界線は、ポイントグリッドのための輪郭として使用され得る。グリッド表面は、この輪郭を満たす穴として規定される。
・対象物の切縁/咬合側のポイントグリッド(8)の外形を規定するためのさらに別の方法は、対象物の切縁/咬合側における、対象物と根尖−切縁軸(10)との交点(12)(
図12参照)を算出することである。次に、交点に対して最も切縁/咬合部にある場所(d)に位置しているこれらの点(18)(
図13参照)について、根尖−切縁軸の全ての放射方向において、系統だった探索が実行される。それゆえ、3D曲線は、対象物の表面に規定され、その対象物は、歯尖に結びついている。これらの歯尖は穴の開いていないままに保たれるべきであるので、3D曲線(19)は、対象物の表面上で内側に向かって補正される。補正曲線(20)を、これで、ポイントグリッド(8)のための外形として使用することができる。
後者の技術は、とりわけ、臼歯および小臼歯を取り扱うときに有用である。
【0109】
第2のステップにおいて、ポイントグリッド(8)は、歯のセットアップ(1)の異なる対象物(7)上に特定されており、可能なインプラント軸(21)を特定するために用いられる(
図14参照)。歯のセットアップ(1)の各対象物(7)について、切縁/咬合グリッド(22)の全ての点が、任意で根尖側グリッド(23)の全ての点に結びつけることができる。その結果、インプラント軸(21)の有限数のセットが、各対象物について得られる。全ての軸は、審美的に許容できる。ガイドラインは、切縁/咬合側と比較した歯の根尖側におけるポイントグリッドのサイズを規定するために用いられてもよい。例えば、根尖側におけるポイントグリッドの表面は、切縁/咬合側と比較して、全体的に、およそ1.5mm小さくてもよい。その結果、実験技術者が復元の加工を行う際の、金属と陶材のための十分なスペースを得ることができる。臼歯においては、根尖ポイントグリッドは、形状が卵形のようであり、一方、門歯においては、たった一つの中心点まで減らしてもよい。
【0110】
第3のステップとして、3Dの骨モデルと各軸との交点を算出する。その結果、骨における入り口点(24)および出口点(25)が分かる(
図14参照)。次に、例えばインプラントライブラリー(26)から入手可能であるインプラント(6)が、各軸の方向に沿って、インプラントの中心線がそれぞれの入り口点を通るように、それぞれ配置される。例えば、インプラントのショルダー(27)は、入り口点(24)から任意の距離(e)に位置している(
図15参照)。この距離は、インプラントのデザインに依存して異なる。インプラントのそれぞれについて、各位置において、解のスコアをつけるために、チェックが行われる。解のスコアをつけるとは、この/これらの、基準/複数の基準に、一つまたは複数の適合度の基準の良さ、および、一つまたは複数の適合度の値の良さを提供することである。
【0111】
本発明の一実施形態において、提案されている解の全スコアは、いくつかのまたは各チェックにおける個々のスコアの加重平均とみることができる。このようなチェックとして:
・神経または血管の3Dモデルに対するインプラントモデルの近さ(f)(
図15参照);
・インプラントが骨の中心に位置している範囲(
図17参照)。これは、例えば、せん孔が生じているかどうかのチェック、すなわち、入り口点以外の場所にある骨の抜き打ち穴のチェックを含む;
・たとえば、CT画像といった容積測定画像における、インプラント(6)の近くおよびすぐ隣を占めるボクセルの平均濃淡値によって表される、インプラント周囲の骨の質;
・切縁/咬合ポイントグリッドの外形においてインプラントの軸が中心に位置している範囲であり、インプラントの長軸は、好ましくは、歯のかみ合わせ表面の中心に出ているべきである;
・一つの皮質または二つの皮質(
図16参照)における固定の存在;例えば、骨の最大容積でもってインプラントを取り囲むこと;
・骨の表面に対するインプラントのショルダーの位置(理想的には、骨の水平面から上方に1.5から2mmの間);
・かみ合わせ力の方向に対するインプラントの方向。ストレス分配のために、かみ合わせ力が、インプラント軸に対して斜めではなく、インプラント軸に沿った方向に向いていることが最もよいと考えられる;
・インプラントの表面仕上げの形式(粗い/つや出しされている)
・インプラントの結合の形式(内部にあるか外部にあるか;六角形か八角形か、など)。
【0112】
患者または治療する医者により好まれる復元の形式の機能によって、スコアが異なることは明らかである。二つの主要な選択肢として、ネジによって維持される義歯、およびセメントにより固定化される義歯がある。ネジによって維持される義歯は、小さいネジを用いて、インプラント上に直接取り付けられる。そのため、インプラントは、復元する対象物の切縁/咬合表面のできる限り中心に出ているべきであり、決して、歯の頬の側(すなわち、目に見える側)ではない。
【0113】
セメントにより固定される義歯は、インプラント上に直接は、設置されない。その代わりに、アバットメントして知られる仲介部品が、インプラント上にネジで取り付けられ、義歯は、アバットメント上にセメントで固定される。インプラントへの取り付けの元の方向または設計した方向を45°まで変化させるためにアバットメントを用いることが可能である。そのため、例えば、骨の質および量といった生体力学的な検討事項に純粋に基づいて、インプラントを設計することが可能である。復元の間、インプラントを出す方向は、審美的な目的のために修正されなければならない。
【0114】
いくつかのチェックは、対象物の特定の型(前歯か奥歯か;門歯か犬歯か、など)に特異的であってよく、または、規定することができる。これらの場合、チェックが行われている対象物の型を知ることが重要である。代表的な例として、患者が笑ったときに見えるであろう対象物と見えないであろう対象物との間の区別がある。
【0115】
最良のインプラント治療を決定するために用いることができる、患者のスマイルライン(29)(
図18参照)を表す方法を設計環境に組み込むことは、本発明の一態様である。スマイルライン(29)を表す実例的な方法は、例えばCT画像などの軸方向の容積測定画像に重ね合わせられた範囲からなり、この範囲は、見える領域を表示するように医者によって動かされ得る。別の例としては、見える部分と見えない部分とに分けるために、歯のセットアップの3Dモデルを医者が切り分けることができるツールがある。
【0116】
歯のタイプに依存するチェックの実例は、インプラント位置の関数としての達成可能であるエマージェンスプロファイルの評価(すなわち、歯肉からの歯の突出における様式を表している)と関連している。チェックを行うために用いる基準は、評価下にある、復元する対象物(歯)(7)およびインプラント(6)の横断面図に基づいている(
図19参照)。インプラントのショルダーの最も頬側の点(30)が、断面とポイントグリッドの輪郭との頬側の交点(32)と、この交点からの既定の根尖距離(g)および舌の距離(h)にある第2の点(33)とを通過する軸(31)上に位置しているときに、インプラントが理想的なエマージェンスプロファイルを有していることを表す。
【0117】
第4ステップは、インプラントの配置(すなわち、インプラントのお互いに対する位置と傾き)の評価からなる。一人の患者の治療に用いる、異なるインプラントのブランド、長さおよび/または直径の全体的な量に対して、制限をつけることができる。インプラント同士の距離は、自動的に算出され、異なるインプラントシステムにおいては異なり得る既定の最小距離と比較される。さらに、生体力学的(例えば、分析的)モデル(
図20aおよび
図20b参照)を、咀嚼の結果によるインプラントへの負荷(例えば、りんご、チューイングガムなどをかむといった、例えばいくつかのシナリオが用いられる)を予測するのに用いることができる。このモデルは、負荷を加えたときの顎(1)のゆがみ、ならびに/またはインプラントに取り付けられるであろう補綴物の型およびデザイン(例えば、使用される物質のE係数といった剛性値、および/または、各区域の慣性モーメント、またはこの二つの組み合わせ)などを考慮に入れることができる。この予測は、必要なインプラントの量、および、可能なインプラント部位にインプラントが分配される手段を決定するために用いられる。さらなる態様としては、全てのインプラントが最も高い個々のスコアを有するインプラントの配置から始めて、この配置は、全ての配置基準の条件が合うまで、インプラントの一つを二番目に良い代替物(例えば、個々のスコアに基づく)に置き換えることにより、体系的に修正され得る。
【0118】
本発明の別の実施形態によれば、所望の歯のセットアップの3次元表示は、容積測定スキャン、例えばCTスキャン画像に利用することができない。その代わりに、拡大縮小可能な1つ以上の歯のアーチ形表示(
図21)のライブラリーを、復元する対象物の表示に用いることができる。ライブラリーの1つ以上の歯のアーチ形は、それらを/それを、顎骨の位置に合わせるために、容積測定、例えばCTスキャン画像に重ね合わせることができる。ライブラリーの1つ以上の歯のアーチ形は、また、顎(2)、神経(3)および血管の3D表示に対する3Dの図において見ることができる。さらに、ライブラリーの1つ以上の歯のアーチ形は、顎に沿った利用可能なスペースの関数として、自動的に拡大縮小することができる。例えば、所定のアーチに沿った各ライブラリーの歯の幅は、全ての歯の幅の合計が、投影によって測定した顎の長さに一致するような手法により、修正することができる。
【0119】
部分的に歯を失っている場合には、ライブラリーから入手可能な1つ以上の歯のアーチ形を、患者の残っている歯に対応する3D表示に登録することができる。その結果、最良の適合を得ることができる。残っている歯の間のギャップは、歯のライブラリーから生ずる、提案された復元する対象物によって補充される。これらのライブラリーの歯は、治療計画を実行するためにさらに用いられ、例えば、それらは、自動的に組み込まれ得る。このアプローチは、インプラントの復元スペースのための空間の境界、あるいは、可能なインプラント軸がライブラリーの一部として予め定められ得るという利点を有する。状況に応じて自動化される、適切なインプラント設計を決定するこの工程は、それゆえ、かなり急速に進展することが可能である。
【0120】
あるいは、補綴物またはワックスアップを、光学的にスキャンし、顎の画像または3Dに登録することができ、その結果、所望の歯のセットアップについての必要情報を提供することができる。
【0121】
〔許容されるインプラント位置の検出〕
本発明のさらに別の実施形態によれば、顎(2)および任意の神経(3)または血管の3次元表示のみが用いられる。設計環境は、例えば、インプラントの設置に対して複数の明瞭なまたは不明瞭な基準を保持する専門システムを組み込んでおり、この専門システムは、インプラント治療における専門の知識と結びついている標本インプラント設計事例のデータベースの解析に基づいている。いくつかの基準は、識別の基準であり、典型的な事例タイプ(例えば、二つの隣り合う歯の間にある一つのインプラント、完全なアーチ形の復元、根尖領域においてなくなっている二つの臼歯)間を識別するために用いられ、いくつかの基準は、事例の所定のタイプの治療(例えば、二つの隣り合う歯の間にある一つのインプラントにおいて、インプラントの位置は、通常は、歯の間の中間部に一致する)に典型的な、インプラントの形式および配置を提案するために用いられるインプラントの配置基準である。計画している事例の初めに、専門システムは、事例の形式を識別するため、および、専門システムにおける“最良の適合”解に一致する予備的なインプラントの配置を提案するために、顎の3D表示を使用する。
【0122】
次のステップにおいて、特定の事例(例えば、インプラントを埋めようとしている部位における利用可能な骨の質および量、神経または血管との近接さ、骨のせん孔の存在、など)が課せられた制限に対して、予備的な配置が評価される。個々のインプラントは、許容されるために、必要条件のセットに適合することが必要である(例えば、最も近い神経に対して少なくとも2mmの距離、患者の頭尾軸に対して最大の傾き、など)。
【0123】
本実施形態の限定した実施においては、システムはユーザに対して、提案している設計の容認の可能性についてのフィードバックを提供するのみである。フィードバックは、例えば、インプラントを再検討すべきであるメッセージをユーザに伝える内容である、テキストであってもよい。または、容認できるインプラント(緑)または拒絶されるインプラント(赤)のいずれかを表示するために、色コードを用いるものであってもよい。この実施形態によれば、治療計画を微調整するために、ユーザの相互関係が必要となる。
【0124】
より発展した本実施形態の実施においては、システムは、個々の必要条件に適合するまで、個々のインプラントの位置、向き、長さおよび直径を増加的に修正する。これは、全体の最適化の問題を構成し、このような問題としては例えば、離散コスト関数といったコスト関数を用いて解が得られる、複数のパラメータの最適値の識別がある。個々のパラメータ、例えば、位置、長さ、角度、距離、向きなどは、スコア値と関連している。パラメータが修正されると、例えば、インプラントの角度が1°変化すると、パラメータのスコアが更新される。インプラントに関係する範囲における変化の有利点の増加に対するパラメータの寄与に基づいて、スコア値を決定することができる。異なるスコアの加重平均値を、提案したインプラント設計の容認性の評価に用いることができる。
【0125】
本発明は、患者のボリューム画像データにおいて歯の存在と位置を自動的に検出する方法を、組み込んでいる。この自動化された検出方法の実例となる実施形態においては、ボリュームデータそのものに加えて、顎(2)の3Dモデルをインプットとして用いている。はじめに、3Dモデルは、複数の2Dスライス画像、すなわち、既定のスライス間の距離を有する輪郭(34)のセット、を得るために、デジタル処理によりスライスされる(
図22参照)。次いで、輪郭のそれぞれについて、パノラマ曲線(35)が自動的に生成される。これらパノラマ曲線は、例えば、輪郭の中線として算出することができる。パノラマ曲線の形成の後に、各容積データスライス、例えばCTスライスにおいて、“外観(feature)(36)”がパノラマ曲線に沿ってあるかどうかの評価をするためのチェックが行われる(
図23参照)。仮にCTスライスが3Dモデルのスライスと一致していない場合には、補間された画像を用いることができる。外観(36)は、歯または歯根の切断面の可能な形状を表している2Dマトリックスである。外観(36)は、例えば、既定の相関値が、ある一定の値よりも大きくなったときに認識される。または、外観の対象物に関する生成物(element-wise product of the feature)およびCTスライスにおける濃淡がある一定の値を超えたときに、外観を認識することができる。
【0126】
外観が認識されたとき、例えば、歯の幅の平均値に基づいて、歯の番号を割り当てることができる(
図24aおよび24b参照)。顎骨(37)上の領域は、通常はそこを占領している歯に帰する。これらの領域は、パノラマ曲線の中央から開始して、歯の幅の平均値を合算することにより識別される。既知の顎のアーチの長さ、または、すでに識別した歯に基づいて、補正をおこなうことができる。
【0127】
上述した作業の結果が、例えばCTスライスなどの容積測定データスライスのそれぞれにおける、自動化された歯の識別である。全てのスライドに集められた情報を用いて、歯が複数のCTスライスにおいて識別されているかを検証することにより、歯の存在が確認されるか、または確認されない。
【0128】
さらに、例えばCTスライスである各容積測定データスライスを、スキャッタ(scatter)(38)の存在の観点からチェックする(
図25参照)。代表的なチェックは、CTスライスにおけるハウンズフィールド値に注目し、所定の曲線に沿った濃淡値のフーリエスペクトルを算出することを伴ってもよい(例えば、パノラマ曲線の2D補正)。一般的にスキャッタに関連している白および黒のパターンは、スペクトルにおいて、より多くの周波数ピークの一つとなる。または、CTスライスの中に、ある一定の閾値を超えた、平均したハウンズフィールドユニット値を含む(所定の大きさの)領域があるかどうかを見ることによってチェックを行ってもよい。歯があるかどうかを決定したときに、スキャッタを含んでいるスライスは、特定の目的のための様式により(例えば、確実さの因子を評価することにより)取り扱われる。
【0129】
また、本発明は、スキャン補綴物(16)の3Dモデルまたは顎(2)の3Dモデルにおける個々の歯を自動的に識別する方法を組み込んでいる。この方法の実例となる実施形態において、顎(2)またはスキャン補綴物(16)の複合3Dモデルは、連続的に分割され、より複雑でなく、より識別しやすい領域または区画(39)に細分化される(
図26、27参照)。これは、例えば、曲率演算に基づくウォーターシェッドアルゴリズム(MohandasS., Henderson M.,有機形状における3D特性の単離を介した機械部分の特性認識の探求、IMECE2002-DE-34419, ASME 2002 - 国際機械工学会議および博覧会 11月17日−22日、ニューオーリンズ、ルイジアナ)を用いることにより実行可能である。区画は、その後で、歯(40)を表している所定の3D外観のセットと比較される。外観は、例えば、既定の相関値がある一定の値よりも大きくなったときに認識することができる。
【0130】
上述した方法の一部を、顎の領域を自動的にナンバリングする方法、歯のセットアップにおいて歯を認識する方法、などのように、分けて用いることができることが本発明の特徴である。
【0131】
図29は、本発明に従った方法およびシステム、例えば
図28に示す方法、に活用することができるコンピュータシステムの概略を表している。ビデオディスプレイ端末54、キーボード56などのデータ入力手段、およびマウス58などのグラフィックユーザインターフェース表示手段を含んでもよいコンピュータ50が描かれている。コンピュータ50は、例えば、UNIX(登録商標)ワークステーションまたはパーソナルコンピュータなどの、汎用のコンピュータとして与えられてもよい。
【0132】
コンピュータ50は、米国インテル社によって供給されるペンティアム(登録商標)IVプロセッサが唯一の例である従来のマイクロプロセッサなどの中央演算処理装置(“CPU”)55、および、バスシステム62を介して相互に接続している複数のほかのユニットを有している。バスシステム62は、任意の適したバスシステムを用いればよく、
図29は概略に過ぎない。コンピュータ50は、少なくとも一つのメモリを有している。メモリは、ランダムアクセスメモリ(“RAM”)、リードオンリーメモリ(“ROM”)、ハードディスクなどの当業者に公知の不揮発性読み出し/書き込みメモリなどの、当業者に公知の様々なデータ記憶装置の任意のものを含んでいてもよい。例えば、コンピュータ50は、さらに、ランダムアクセスメモリ(“RAM”)64、リードオンリーメモリ(“ROM”)66、システムバス62をビデオディスプレイ端末54に接続するディスプレイアダプタ67、および周辺装置(例えば、ディスクおよびテープ装置63)をシステムバス62に接続するための任意の入力/出力(I/O)アダプタ69を含んでいてもよい。ビデオディスプレイ端末54は、コンピュータ50の視覚出力であることができ、例えば、コンピュータハードウェアの技術分野において周知のCRTビデオディスプレイなどの任意の適したディスプレイ装置であることができる。しかしながら、デスクトップ型コンピュータ、ポータブルコンピュータまたはノートブック型コンピュータにおいて、ビデオディスプレイ端末54は、LCD型またはガスプラズマ型フラットパネルディスプレイに置き換えることができる。コンピュータ50は、キーボード56、マウス58、任意のスピーカー65を接続するための、また、外部システム60の医療画像機器70などの身体量捕捉装置から任意の身体量の入力が可能となる、ユーザインターフェースアダプター59を、さらに含んでいる。システム60は、インターネット、イントラネット、ローカルあるいはワイドエリアネットワーク(LANまたはWAN)、またはCANなどのデータネットワークであるバス62に接続されていてもよい。医療画像機器70は、CTまたはMRIといった患者の骨格の容積測定3−Dデータを捕捉することに適している任意の機器であってよい。この医療画像機器は、患者の関連のある容積測定画像データを捕捉するための任意の装置を有していてもよい。システム60のデータ捕捉装置70により、電気通信網によって送信されるべき患者の身体情報に関するデータを送信することが可能となり、例えば、遠隔地において患者の骨格の容積測定記載を入力し、それを、例えばインターネットを介して、本発明に係る方法をプロセッサが実行する近接地に送信することが可能となる。
【0133】
本発明は、また、その目的において、関連した容積測定データが、キーボード56を用いて直接コンピュータに入力され、または、63などの記憶装置から、例えば、ディスケット、交換式ハードディスク、CD−ROMあるいはDVD−ROMといった光学記憶装置、磁気テープまたはこれに類するものから、直接コンピュータに入力されるということも含んでいる。
【0134】
コンピュータ50は、また、コンピュータ50の操作を導くために、コンピュータが読み取り可能な媒体内にあるグラフィカルユーザインターフェースを有している。コンピュータが読み取り可能な任意の適切な媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)64、リードオンリーメモリ(ROM)66、磁気ディスケット、磁気テープ、または光学ディスク(後者の3つは、ディスクおよびテープ装置63内に置かれている)などの、グラフィカルユーザインターフェースを保持していてもよい。任意の適切なオペレーティングシステムおよび関連したグラフィカルユーザインターフェース(例えば、マイクロソフトウィンドウズ(登録商標)、Linux(登録商標)など)が、CPU55に命令してもよい。さらに、コンピュータ50は、コンピュータメモリ記憶68内にある制御プログラム61を有している。制御プログラム61は、CPU15において実行されたときに、コンピュータ10が、本発明の方法のいずれに関しても記載されている演算を実行できる命令を含んでいる。
【0135】
当業者は、
図29に示されているハードウェアが、特定のアプリケーションによって異なるものであってよいことを理解するだろう。例えば、光学ディスク媒体、オーディオアダプター、または、PALあるいはEPROMといったコンピュータハードウェアの技術分野において周知の半導体素子プログラミング装置、といったほかの周辺装置および同等のものが、既に述べたハードウェアに加えてまたは置き代えて、利用されてもよい。
【0136】
図29に描かれている例において、本発明の方法を実行するためのコンピュータプログラム製品は、任意の適したメモリ内にあることができる。しかしながら、本発明は、本発明の機構が様々な形態のコンピュータプログラム製品として配布されることが可能であり、かつ、配布を実際に実行するために用いる信号保持媒体の特定の型に関わらず同等に適合するものであり、また、これからもありつづける一方で、当業者が上記のことを十分理解するであろうことが重要である。
【0137】
コンピュータが読み取り可能な信号保持媒体の例として:フロッピーディスクおよびCD ROMといった記録可能型媒体、ならびにデジタルおよびアナログ通信回線といった通信型媒体、がある。
【0138】
したがって、本発明は、また、適切なコンピュータ装置において実行されるときに、本発明のいかなる方法も実施するソフトウェア製品を含んでいる。とりわけ、コードは、(a)歯のセットアップの3Dモデルを生成する手段(b)および/または顎の一部分の3Dモデルを生成する手段、(c)インプラント可能(または状況に応じて取り付け不可能)な顎の領域を検出する手段、(d)歯のセットアップにおいて復元する対象物を検出する手段、(e)インプラントの寸法、位置、向きおよび形状の候補を決定するための手段、(f)インプラントのプランを複数取得するための手段、(g)インプラントのプランを、互いに、または、所定の判断基準と比較するための手段、(h)一つのインプラントのプランを選択する、または改良する手段、のいずれも含んでいる。さらに、コードは、例えば、添付した特許請求の範囲に詳細に述べられているような、本発明による方法または手段のいずれも実行するために提供される。
【0139】
本発明は、また、上記に定義したように、コンピュータにより読取可能である媒体または複数の媒体に保持されているコンピュータ製品も含む。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】所望の歯のセットアップを表すために製造された診断用ワックスアップを示す図である。
【
図2】CTスキャンの間、患者の口に置かれ、かつ複数の放射線不透過性対象物を有するスキャン補綴物を示す図である。
【
図3】画像において可視的である放射線不透過性の歯のセットアップに対して軸方向のCTスライスを示す図である。
【
図4】複数の補綴対象物(7)を有する歯のセットアップ(1)に対応する歯を失った顎(2)の3Dモデル、および神経(3)の3Dモデルを示す図であり、ここには、複数の設計したインプラントの修復される空間(5)も示されている。
【
図5】インプラント歯科学におけるデジタル設計環境を示す図である。
【
図6】軸方向のCTスキャン画像において描かれたパノラマ曲線を示す図である。
【
図7】顎およびスキャン補綴物の複数の断面図を示す図である。
【
図8】患者にデジタル設計を移すために用いる外科用鋳型(SurgiGuide
TM)を示す図である。
【
図9】患者の顎(2)に対する単一の補綴対象物(7)を示す図であり、インプラント可能である位置の限界である空間的な境界(4)は、補綴対象物(7)の切縁/咬合および根尖側表面における2つのポイントグリッド(8)によって示されている。
【
図10】対象物の内部補正(9)を貫通する根尖−切縁軸(10)における、補綴対象物(7)および顎(2)の断面を示す図である。
【
図11】下顎(2)に対する補綴対象物(7)の最も小さい限界ボックス(11)を示す図である。
【
図12】補綴対象物の切断面および断面図を示しており、根尖−切縁軸(10)は、2点(12)で対象物と交差しており、2つの平面(13)は、根尖−切縁軸(10)に対して垂直であると定義されており、これらの平面(13)における対象物の輪郭(14)は、補正(15)されているとともに、対象物の表面に投影され、ポイントグリッド(8)の3D輪郭となっている。
【
図13】補綴対象物の断面および断面図を示しており、複数の放射状に方向付けられた平面における最も切縁/咬合側の点(18)は、歯の尖端を貫通する輪郭(19)となり、輪郭(19)は、ポイントグリッド(8)の輪郭(20)を得るために、内部側に補正され得る。
【
図14】補綴対象物(7)および顎(2)の断面を示しており、可能なインプラント軸(21)は、根尖側ポイントグリッド(23)の点と、切縁/咬合側ポイントグリッド(22)の点とを結ぶことにより定義されており、これらの軸(21)と顎(2)との交点は、入り口点(24)および出口点(25)となり、インプラントライブラリー(26)は、可能なインプラント(6)をリストアップする。
【
図15】単一の皮質に固定されているとともに、神経(3)から距離fの位置に位置しており、かつ、顎(2)における入り口点からの距離がeである、インプラントのショルダー(27)を有するインプラント(6)を示す図である。
【
図16】2つの皮質に固定されているインプラント(6)を示す図である。
【
図17】インプラントによる開窓部(28)を有する顎を示す図である。
【
図18】CTスキャンにおける軸方向の画像に重ね合わせたスマイルライン(29)を示す図である。
【
図19】補綴対象物(7)およびインプラント(6)の断面を示しており、インプラントのショルダーの最も頬面の点(30)は、所定の断面におけるポイントグリッドの最も頬面の点(32)とgmmさらに根尖側かつhmmさらに切縁側に位置している点(33)とを通る直線(31)上に位置している。
【
図20】
図20aおよび20bは、インプラントおよび上部構造物を有する、または有しない顎の生体力学モデルを示す図である。
【
図21】拡大縮小が可能である歯のアーチ形を示す図である。
【
図22】対応するパノラマ曲線(35)を有する顎の断面輪郭(34)を示す図である。
【
図23】歯根および歯の形をした複数の2D外観(36)を示す図である。
【
図24】複数の外観が認識され、結果として、歯の位置に帰属され得るいくつかの部位(37)に分割された顎を示す図である。
【
図25】スキャッタ(38)を伴う軸方向のCTスライスを示す図である。
【
図26】歯の形をしたパッチまたは表面領域(39)を有する顎(2)の3Dモデルを示す図である。
【
図28】本発明の実施形態における方法の概略を示すフローチャートである。
【
図29】本発明の実施形態におけるコンピュータシステムの概要を示す図である。
【
図30】患者の顎に関する画像情報から自動的または半自動的な歯科インプラントの設計に用いる情報を準備するための処理システムの構成を示す図である。