【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0043】
<ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート系樹脂の共重合体中の各モノマー比率の測定>
乾燥P3HA系樹脂約20mgに、2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(重量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、P3HA系樹脂分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、上清中のP3HA系樹脂分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することにより、共重合樹脂中の各モノマー比率を求めた。
【0044】
ガスクロマトグラフは島津製作所社製「GC−17A」、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製「NEUTRA BOND−1」(カラム長:25m、カラム内径:0.25mm、液膜厚:0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧を100kPaとし、サンプルは1μl注入した。温度条件は、初発温度100℃から200℃まで8℃/分の速度で昇温し、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温した。
【0045】
<ポリ−3−ヒドロキシアルカノエート系樹脂の重量平均分子量の測定>
P3HA系樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(昭和電工社製「Shodex GPC−101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K−804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めた。この際、検量線は重量平均分子量31400、197000、668000、1920000のポリスチレンを使用して作成した。
【0046】
<ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂とエチレン酢酸ビニル共重合樹脂の相溶性確認>
PHA系樹脂組成物またはPHA系樹脂組成物よりなる成形体について、23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製「H−7650」)を用い、RuO
4染色したPHA系樹脂組成物またはPHA系樹脂組成物よりなる成形体を1万〜4万倍で観察することで、PHA系樹脂とEVAが判別できない状態(黒く大きな固まりが全く見えない)まで分散している場合を「相溶」(
図1)とし、PHA系樹脂が連続相でEVAが分散相(黒く大きな固まりとして見える)となった状態である場合を「非相溶」(
図2)とした。
【0047】
<Tダイフィルムの引張降伏点強度および引張破断伸びの測定>
厚み100μmのTダイフィルムを23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、JIS K7113に基づき、MD方向のダンベル(小型試験片2(1/3)号形)を10個打ち抜き、引張試験機(島津製作所製「AUTOGRAPH AG2000A」)を用いて、試験速度100mm/分の条件にて引張降伏点強度および引張破断伸びを10回測定し、平均化した値を引張降伏点強度および引張破断伸びとした。
【0048】
<Tダイフィルムの透明性の評価>
厚み100μmのTダイフィルムを23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、JIS K7105に基づき、PHA系樹脂組成物からなる厚み100μmのTダイフィルムのヘイズ値と、当該PHA系樹脂組成物の原料として使用するPHA系樹脂からなる厚み100μmのTダイフィルムのヘイズ値を測定し、両者を比較して、PHA系樹脂組成物からなる厚み100μmのTダイフィルムのヘイズ値の方が高い場合を「×」、同等の場合を「△」、低い場合を「○」とした。
【0049】
<射出成形体の引張降伏点強度および引張破断伸びの測定>
ダンベルを23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、ASTM D638に基づき、全自動引張試験機(東洋精機社製「ストログラフAP II」)を用いて、試験速度5mm/分の条件にて引張降伏点強度および引張破断伸びを10回測定し、平均化した値を引張降伏点強度および引張破断伸びとした。
【0050】
<射出成形体の透明性の評価>
厚み1/64インチの板を23℃、湿度50%雰囲気下にて1ヶ月保存した後、PHA系樹脂組成物からなる厚み1/64インチの板の透明性と、当該PHA系樹脂組成物の原料として使用するPHA系樹脂からなる厚み1/64インチの板の透明性を目視にて確認し、両者を比較して、PHA系樹脂組成物からなる厚み1/64インチの板の透明性の方が悪い場合を「×」、同等の場合を「△」、良い場合を「○」とした。
【0051】
(製造例1) P3HA−1の作製
国際公開第09/145164号に準拠して、3HH率=5モル%、Mw=75万のP3HB3HH(PHA−1)を作製した。
【0052】
(製造例2) P3HA−2の作製
国際公開第09/145164号に準拠して、3HH率=13モル%、Mw=70万のP3HB3HH(P3HA−2)を作製した。
【0053】
(製造例3) P3HA−3の作製
生産菌株としてC.necatorH16株(ATCC17699)を用い、国際公開第09/145164号に準拠して、Mw=85万のP3HB(PHA−3)を作製した。
【0054】
その他、実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0055】
<P3HA−4>
Ecomann社製EM5400F(ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)、4HB率=14モル%、Mw=105万)を用いた。
【0056】
<ポリ乳酸>
ポリ乳酸として、NatureWorks社製「Ingeo 4060D」を用いた。
【0057】
<エチレン酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂として、以下のものを用いた。
【0058】
EVA−1:LANXESS社製「Levapren900HV」(VA比率90重量%、MFR=5g/10minのEVA)
EVA−2:LANXESS社製「Levapren800HV」(VA比率80重量%、MFR=6g/10minのEVA)
EVA−3:LANXESS社製「Levapren700HV」(VA比率70重量%、MFR=8g/10minのEVA)
EVA−4:LANXESS社製「Levapren600HV」(VA比率60重量%、MFR=6g/10minのEVA)
EVA−5:住友化学社製「エバテートR5011」(VA比率41重量%、MFR=60g/10minのEVA)
EVA−6:住友化学社製「エバテートK3010」(VA比率28重量%、MFR=7g/10minのEVA)
<ポリ酢酸ビニル>
ポリ酢酸ビニルとして、電気化学社製「サクノールSN−04T」(VA比率100重量%)を用いた。
【0059】
(実施例1) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1:80重量部と、VA比率90重量%のEVA(EVA−1、LANXESS社製Levapren900HV):20重量部とを、混合してから二軸押出機(東芝機械社製TEM−26SS、条件:吐出量15kg/hr、スクリュー回転数150rpm、設定温度150℃)を用いて溶融混練してストランド(φ:3.5mm)を押出し、適当な長さにカッティングしてP3HA系樹脂組成物のペレットを得た。この際、二軸押出機のダイス先端から出た溶融混練物の温度は185℃であった。
【0060】
続いて、得られたP3HA系樹脂組成物のペレットを60℃で十分に乾燥させた後、横幅:150mm、リップ幅:0.15mmのT型ダイスを装着した単軸押出機(東洋精機製作所製「20C200型」ラボプラストミル)を用いて、成形温度:165℃、スクリュー回転数:50rpmの条件で押出し、55℃に温調した冷却ロールで3m/minの速度で引き取り、厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例2) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−1をEVA−2に変更した点以外は、実施例1と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0063】
(実施例3) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1を80重量部から90重量部に、EVA−2を20重量部から10重量部に変更した点以外は、実施例2と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0064】
(実施例4) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1を90重量部から60重量部に、EVA−2を10重量部から40重量部に変更した点以外は、実施例2と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0065】
(実施例5) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1をP3HA−2に変更し、EVA−2をEVA−3に変更した点以外は、実施例3と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0066】
(実施例6) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1をP3HA−3に変更し、EVA−2をEVA−1に変更した点以外は、実施例4と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0067】
(実施例7) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1:80重量部をP3HA−4:90重量部に変更し、EVA−1を20重量部から10重量部に変更した点以外は、実施例1と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0068】
(実施例8) フィルムの評価
実施例2で得られたTダイフィルムを23℃、湿度50%雰囲気下にて1年保存した後、引張破断試験を行い、引張降伏点強度と引張破断伸びを評価し、それらの結果は表1に示した。
【0069】
(実施例9) フィルムの評価
実施例3で得られたTダイフィルムを23℃、湿度50%雰囲気下にて1年保存した後、引張破断試験を行い、引張降伏点強度と引張破断伸びを評価し、それらの結果は表1に示した。
【0070】
(比較例1) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1を80重量部から100重量部に、EVA−1を20重量部から0重量部に変更した点以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0071】
(比較例2) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−2をEVA−4に変更した点以外は、実施例3と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0072】
(比較例3) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−2をEVA−5に変更した点以外は、実施例3と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0073】
(比較例4) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−2をEVA−6に変更した点以外は、実施例3と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0074】
(比較例5) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1をP3HA−3に変更し、EVA−1をEVA−6に変更した点以外は、実施例3と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0075】
(比較例6) フィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−1をポリ酢酸ビニルに変更した点以外は、実施例1と同様にしてP3HA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0076】
(比較例7) 特開平9−151310号公報、特開2011−136428号公報準拠のフィルムの作製と評価
表1の配合に従って、P3HA−1をポリ乳酸に変更した点以外は、実施例1と同様にしてPHA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0077】
(比較例8) 特開平9−151310号公報、特開2011−136428号公報準拠のフィルムの作製と評価
表1の配合に従って、EVA−1をEVA−4に変更した点以外は、比較例7と同様にしてPHA系樹脂組成物のペレットおよび厚み100μmのTダイフィルムを得た。得られたTダイフィルムの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表1に示した。
【0078】
(実施例10) 射出成形体の作製と評価
実施例3で得られたP3HA系樹脂組成物のペレットを60℃で十分に乾燥させた後、75t射出成形機(東芝機械社製「IS−75E−2A」)を用いて、成形温度165℃、金型温度55℃の条件で射出成形を行い、ASTM D638に基づいたダンベルおよび、厚み1/64インチの板を得た。得られたダンベルの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、厚み1/64インチの板の透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表2に示した。
【0079】
【表2】
【0080】
(比較例9) 射出成形体の作製と評価
表2の配合に従って、P3HA−1を90重量部から100重量部に、EVA−2を10重量部から0重量部に変更した点以外は、実施例8と同様にしてASTM D638に基づいたダンベルおよび、厚み1/64インチの板を得た。得られたダンベルの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、厚み1/64インチの板の透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表2に示した。
【0081】
(比較例10) 射出成形体の作製と評価
表2の配合に従って、EVA−2をEVA−4に変更した点以外は、実施例8と同様にしてASTM D638に基づいたダンベルおよび、厚み1/64インチの板を得た。得られたダンベルの引張降伏点強度と引張破断伸びおよび、厚み1/64インチの板の透明性と相溶性を評価し、それらの結果は表2に示した。