特許第6034909号(P6034909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034909
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】異方性導電物質の電磁界解析方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20161121BHJP
   G06F 17/17 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G06F17/50 612H
   G06F17/17
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-62483(P2015-62483)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-181225(P2016-181225A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2015年8月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度経済産業省「航空機用先進システム基盤技術開発(耐雷・帯電特性解析技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】津端 裕之
【審査官】 合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−275403(JP,A)
【文献】 特開2004−239736(JP,A)
【文献】 特開2003−337919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06F 17/17
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第一の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる一の層と、前記第一の方向とは異なる第二の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる他の層とが積層されてなる異方性導電物質の電磁界解析方法であって、
コンピュータが、
前記第一の方向に沿った辺を有する第一の計算格子により前記一の層を格子分割するとともに、前記第二の方向に沿った辺を有する第二の計算格子により前記他の層を格子分割し、
前記第一の格子における電界及び磁界のうちの一方の電磁界成分の分布から前記第二の格子における当該一方の電磁界成分を補間計算し、
前記第二の格子における電界及び磁界のうちの他方の電磁界成分の分布から前記第一の格子における当該他方の電磁界成分を補間計算することを特徴とする異方性導電物質の電磁界解析方法。
【請求項2】
コンピュータが、
解析空間の周縁境界を滑らかな面状に構成しつつ、当該解析空間の周縁部に前記第一の格子及び前記第二の格子のいずれか一方のみを配列することを特徴とする請求項1に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法。
【請求項3】
前記一の層及び前記他の層は、いずれもxy平面内に配置されるとともに、z軸方向に互いに積層され、
前記第一の格子は、xyzの直交3軸に沿った立方体状の計算格子であり、
前記第二の格子は、前記第一の格子に内接する大きさのものであって、xy平面内で±45°方向に沿った2辺とz軸に沿った1辺とからなる直方体状の計算格子であることを特徴とする請求項1または2に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法。
【請求項4】
前記異方性導電物質は、前記第一の方向及び前記第二の方向に沿った導電性の繊維で樹脂が強化された繊維強化プラスチックであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電率を有する異方性導電物質の電磁界解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体設計においては、雷撃によるスパーク発生に起因する燃料引火などを防止すべく、落雷対策が必要とされている。この落雷対策を講じるうえでは、雷撃時における機体中の電流分布を明らかにすることが重要であり、そのための高精度な電磁界解析手法が望まれている。
【0003】
この種の電磁界解析では、FDTD法(Finite-difference time-domain method;時間領域差分法)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。FDTD法は、直交する3軸の電磁界成分(電界と磁界)を、Yee格子と呼ばれる立方体の計算格子によって計算する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−183404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、航空機の機体構造材においては、比強度等に優れる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの複合材料の適用が進んでいる。なかでも、例えば図9に示すように、繊維方向が互いに45°異なる複数の繊維層を積層させた擬似等方積層材が広く用いられてきている。
このような複合材料の電磁界解析では、各繊維が導電性を有するため、繊維方向に沿った導電率の設定が必要となる。つまり、0°方向や90°方向だけでなく、45°方向に沿った異方性導電率も模擬する必要がある。
【0006】
しかしながら、Yee格子を単純に用いたFDTD法では、直交3軸に沿った導電率しか設定できないため、0°(90°)方向に沿ってYee格子を配列させた場合に、45°方向に沿った異方性導電率を設定することができない。そのため、この異方性導電率を有する異方性導電物質の電磁界解析を精度良く行うことは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、異方性導電率を有する異方性導電物質の電磁界解析を高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定の第一の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる一の層と、前記第一の方向とは異なる第二の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる他の層とが積層されてなる異方性導電物質の電磁界解析方法であって、
コンピュータが、
前記第一の方向に沿った辺を有する第一の計算格子により前記一の層を格子分割するとともに、前記第二の方向に沿った辺を有する第二の計算格子により前記他の層を格子分割し、
前記第一の格子における電界及び磁界のうちの一方の電磁界成分の分布から前記第二の格子における当該一方の電磁界成分を補間計算し、
前記第二の格子における電界及び磁界のうちの他方の電磁界成分の分布から前記第一の格子における当該他方の電磁界成分を補間計算することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法において、
コンピュータが、
解析空間の周縁境界を滑らかな面状に構成しつつ、当該解析空間の周縁部に前記第一の格子及び前記第二の格子のいずれか一方のみを配列することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法において、
前記一の層及び前記他の層は、いずれもxy平面内に配置されるとともに、z軸方向に互いに積層され、
前記第一の格子は、xyzの直交3軸に沿った立方体状の計算格子であり、
前記第二の格子は、前記第一の格子に内接する大きさのものであって、xy平面内で±45°方向に沿った2辺とz軸に沿った1辺とからなる直方体状の計算格子であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の異方性導電物質の電磁界解析方法において、
前記異方性導電物質は、前記第一の方向及び前記第二の方向に沿った導電性の繊維で樹脂が強化された繊維強化プラスチックであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、第一の方向に沿った辺を有する第一の計算格子により一の層が格子分割されるとともに、第一の方向とは異なる第二の方向に沿った辺を有する第二の計算格子により他の層が格子分割される。これにより、一の層における第一の方向に沿った導電率と、他の層における第二の方向に沿った導電率とを個別に設定することができる。
また、第一の格子における電界及び磁界のうちの一方の電磁界成分の分布から第二の格子における当該一方の電磁界成分が補間計算され、第二の格子における電界及び磁界のうちの他方の電磁界成分の分布から第一の格子における当該他方の電磁界成分が補間計算される。これにより、第一の格子と第二の格子との間での電磁波伝搬計算をシームレスに実行することができる。
したがって、異方性導電率を有する一の層と他の層とが積層されてなる異方性導電物質の電磁界解析を、高精度に行うことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、解析空間の周縁境界が滑らかな面状に構成されつつ、当該解析空間の周縁部に第一の格子及び第二の格子のいずれか一方のみが配列される。
これにより、計算実行時における周縁境界での発散や反射の発生を抑え、有限空間である解析空間を無限空間として取り扱う吸収境界の計算を成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電磁界解析方法の解析モデルを示す図である。
図2】(a)90度格子を示す図であり、(b)45度格子を示す図である。
図3】解析空間の周縁部での格子分割を説明するための図である。
図4】90度格子と45度格子の間での電界及び磁界の変換計算を説明するための概念図である。
図5】(a)電界の変換計算を説明するための図であり、(b)磁界の変換計算を説明するための図である。
図6】z軸方向の電界の格子間に亘る伝搬態様を例示したイメージ図である。
図7】格子間での補間計算を説明するための図である。
図8】解析例の結果を示す図である。
図9】擬似等方積層材を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
まず、本実施形態における異方性導電物質の電磁界解析方法(以下、単に「電磁界解析方法」という)の解析モデルについて説明する。
図1は、本実施形態における電磁界解析方法の解析モデルを示す図であり、図2は、計算格子である後述の90度格子M1及び45度格子M2を示す図であり、図3は、後述の解析空間Sの周縁部での格子分割を説明するための図である。
【0017】
本実施形態における電磁界解析方法は、異方性導電率を有する物質(本実施形態では複合材料CM)における電流分布等の電磁的特性を、FDTD法(Finite-difference time-domain method;時間領域差分法)を用いた電磁界解析ソフトにより算出するものである。
【0018】
その解析対象である複合材料CMは、本実施形態においては、樹脂を導電性の炭素繊維で強化した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。より詳しくは、図1に示すように、複合材料CMは、繊維方向が互いに45°異なる4層の繊維層を2セット(すなわち合計8層)積層させた略平板状の擬似等方積層材であり、本実施形態では、8つの繊維層(第1層L1〜第8層L8)が解析空間Sにおけるxy平面内に配置されつつz方向に互いに積層されている。
【0019】
本実施形態における電磁界解析方法では、複合材料CMとその周囲の十分に広い空間とを含む解析空間S全体がモデル化される。
具体的には、図2(a),(b)に示すように、90度格子M1と45度格子M2との2種類の計算格子を用いて解析空間S内が格子分割される。
このうち、90度格子M1は、各辺がxyzの直交3軸に沿った立方体状の計算格子であり、つまり、当該90度格子M1では、xy平面内の2辺が、x軸を基準とする0°(x軸)及び90°(y軸)の2方向に沿っている。
一方、45度格子M2は、90度格子M1に内接する大きさのものであって、xy平面内で±45°方向に沿った2辺とz軸に沿った1辺とからなる直方体状の計算格子である。
【0020】
この格子分割では、複合材料CMの各層L1〜L8に対し、その繊維方向に沿って導電率を設定できるように、当該繊維方向に沿った辺を有する計算格子で格子分割する。つまり、複合材料CMのうち、繊維方向が0°または90°である第2,4,5,7層L2,L4,L5,L7を90度格子M1で格子分割し、繊維方向が45°または−45°である第1,3,6,8層L1,L3,L6,L8を45度格子M2で格子分割する。
【0021】
またこの格子分割では、解析空間Sのうち、複合材料CMの周囲の空間を、複合材料CMと連なる計算格子で格子分割する。つまり、例えば複合材料CMの第1層L1とxy平面内で連なる周囲の空間は、当該第1層L1と同じ45度格子M2で格子分割される。
但し、解析空間Sの周縁部では、図3に示すように、xyzいずれの方向においても90度格子M1が所定列数(本実施形態では3列)だけ配列されている。このとき、90度格子M1と45度格子M2との境界(以下、「格子境界」という)B1では、45度格子M2の各節点が90度格子M1の各辺の中点に位置するように、互いの一部が重複している。
【0022】
そのため、解析空間Sの周縁部では90度格子M1が一様に配列され、当該解析空間Sの周縁部の境界(以下、「周縁境界」という)B2が、xyzの各軸に沿った滑らかな面状に構成される。これにより、周縁境界B2における吸収境界の計算が成立する,すなわち、有限空間である解析空間Sをあたかも無限空間であるかのように取り扱うことができる。
xy平面における解析空間Sの周縁部に45度格子M2を単純に配列してしまうと、周縁境界B2が滑らかな面状に構成されず(ギザギザになる)、周縁境界B2に電磁波が垂直に入射しなくなるため、計算実行時に当該周縁境界B2で発散や反射が発生してしまう。そこで、本実施形態では、45度格子M2で格子分割された領域の周囲に90度格子M1を配列させて周縁境界B2を滑らかな面状に構成することで、このような発散や反射の発生を抑え、吸収境界の計算を成立させている。
【0023】
続いて、90度格子M1と45度格子M2との間での電界及び磁界の変換計算方法について説明する。
図4(a),(b)は、この変換計算を説明するための概念図であり、図5(a)は、電界の変換計算を説明するための図であり、図5(b)は、磁界の変換計算を説明するための図である。
【0024】
図4(a)に示すように、本実施形態では、90度格子M1から45度格子M2へ磁界が不可逆的に伝搬するものとして、90度格子M1での磁界分布から、45度格子M2での磁界が補間計算される。また、各格子M1,M2では、電界及び磁界が可逆的に伝搬するものとする。
一方、45度格子M2から90度格子M1へは、図4(b)に示すように、電界が不可逆的に伝搬するものとして、45度格子M2での電界分布から、90度格子M1での電界が補間計算される。また、各格子M1,M2では、電界及び磁界が可逆的に伝搬するものとする。
【0025】
より詳しくは、図5(a)に示すように、格子間での電界の変換計算は、以下のように行われる。
90度格子M1と45度格子M2とが重複した格子境界B1では、45度格子M2の電界が90度格子M1の磁界と45度格子M2の磁界から計算される(ア部)とともに、90度格子M1の電界が45度格子M2の電界から補間計算される(イ部)。
但し、z軸に沿った45度格子M2の電界や、x軸に沿った90度格子M1の電界は、各格子の磁界から計算される(ウ,エ部)。また、格子境界B1以外の部分における電界も、各格子の磁界から計算される(オ部)。
【0026】
また、格子間での磁界の変換計算は、図5(b)に示すように、以下のように行われる。
90度格子M1と45度格子M2とが重複した格子境界B1では、45度格子M2の磁界が90度格子M1の磁界から補間計算される(カ部)。
但し、z軸に沿った45度格子M2の磁界や、90度格子M1の磁界は、各格子の磁界から計算される(キ,ク部)。このうち、z軸に沿った90度格子M1の磁界は、45度格子M2の磁界としても利用される(ケ部)。また、格子境界B1以外の部分における磁界は、各格子の電界から計算される(コ部)。
【0027】
図6は、z軸方向の電界Ezの格子間に亘る伝搬態様を例示したイメージ図である。
本実施形態における電磁界解析方法では、90度格子M1での電界Ezの電磁波は、図6に示すように45度格子M2へ伝搬する。
このとき、格子境界B1では、z軸に沿った45度格子M2の電界が、補間計算で求められた45度格子M2の磁界から計算される(サ部)。また、45°方向に沿った45度格子M2の磁界は、90度格子M1の磁界から補間計算され、45度格子M2の電界からは計算されない(シ部)。また、z軸に沿った90度格子M1の電界は、45度格子M2の電界から補間計算される(ス部)。
【0028】
図7は、格子間での補間計算を説明するための図である。
90度格子M1の磁界分布から45度格子M2の磁界を求める補間計算では、90度格子M1内で磁界が直線的に分布するものと仮定して、以下の式1〜式4により線形補間を行う。
【数1】
ここで、図7(a)に示すように、Hp,Hqは、45度の座標系をpqrの直交3軸とする45度格子M2の磁界であり、Hx,Hyは、90度格子M1の磁界である。
【0029】
また、45度格子M2の電界分布から90度格子M1の電界を求める補間計算では、45度格子M2内で電界が直線的に分布するものと仮定して、以下の式5及び式6により線形補間を行う。
【数2】
ここで、図7(b)に示すように、Ey,Ezは、90度格子M1の電界であり、Ep,Eq,Erは、45度の座標系をpqrの直交3軸とする45度格子M2の電界である。
【0030】
続いて、格子境界B1を跨ぐ電磁波の伝搬態様について、解析例を示して説明する。
この解析例では、中心部を45度格子M2で格子分割し、その周囲を90度格子M1で格子分割した解析モデルの中心に電磁波パルスを印加し、この電磁波が格子境界B1を跨いで伝搬する様子を確認した。
【0031】
図8は、この解析例の結果を示す図であって、電磁波パルス印加から10ns後,50ns後,100ns後におけるxy平面での電界強度を示す図である。
この図に示すように、本解析例では、印加された電磁波パルスによる電磁波が、二点鎖線で示す格子境界B1を跨いで45度格子M2から90度格子M1へ滑らかに伝搬していることが分かる。
また、解析空間の周縁境界B2においても、発散や反射が発生することなく、好適に吸収境界の計算を実行できていることが分かる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、xy平面内で0°方向及び90°方向に沿った辺を有する90度格子M1により、複合材料CMのうちの第2,4,5,7層が格子分割されるとともに、xy平面内で±45°方向に沿った辺を有する45度格子M2により、残りの第1,3,6,8層が格子分割される。これにより、第2,4,5,7層における0°方向及び90°方向に沿った導電率と、第1,3,6,8層における±45°方向に沿った導電率とを個別に設定することができる。
また、90度格子M1における磁界分布から45度格子M2における磁界が補間計算され、45度格子M2における電界分布から90度格子M1における電界が補間計算される。これにより、90度格子M1と45度格子M2との間での電磁波伝搬計算をシームレスに実行することができる。
したがって、異方性導電率を有する第2,4,5,7層と第1,3,6,8層とが積層されてなる複合材料CMの電磁界解析を、高精度に行うことができる。
【0033】
また、解析空間Sの周縁境界B2が滑らかな面状に構成されつつ、当該解析空間Sの周縁部に90度格子M1のみが配列される。
これにより、計算実行時における周縁境界B2での発散や反射の発生を抑え、有限空間である解析空間Sを無限空間として取り扱う吸収境界の計算を成立させることができる。
【0034】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、90度格子M1における磁界分布から45度格子M2における磁界が補間計算され、45度格子M2における電界分布から90度格子M1における電界が補間計算されることとしたが、これらの補間計算における電界と磁界を入れ替えてもよい。つまり、90度格子M1における電界分布から45度格子M2における電界が補間計算され、45度格子M2における磁界分布から90度格子M1における磁界が補間計算されることとしてもよい。
【0036】
また、解析空間Sの周縁部には、90度格子M1及び45度格子M2のいずれか一方のみが配列されればよく、周縁境界B2が滑らかな面状に構成可能であれば、当該周縁部には、90度格子M1でなく、45度格子M2のみが配列されることとしてもよい。
【0037】
また、格子間での電界及び磁界の補間計算では、各格子内で電界及び磁界が直線的に分布するものと仮定して線形補間することとしたが、各格子内での分布状況に応じて線形補間以外の補間方法を用いてもよい。
【0038】
また、本発明に係る異方性導電物質は、所定の第一の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる一の層と、第一の方向とは異なる第二の方向に沿った導電率が他の方向のものとは異なる他の層とが積層されたものであれば、特に限定されず、擬似等方積層材でなくともよいし、繊維強化プラスチックでなくともよい。
【0039】
また、本実施形態では、解析モデルとして、図1に示すような繊維方向が互いに45°異なる4層の繊維層を2セット(すなわち合計8層)積層させた略平板状の擬似等方積層材を用いたが、本発明の解析モデルとしては、積層数が何層であってもよく、また繊維方向は0°、90°、45°、−45°がどのような順番で積層されていてもよい。
さらに当該解析モデルは、互いに異なる繊維方向の複数の繊維層が積層されたものであればよく、複数の繊維層の繊維方向が45°以外の角度で異なっていてもよい。但し、この場合に、繊維方向に沿った辺を有する計算格子を用いることや、繊維方向間の角度に対応した計算式を用いて格子間での電磁界成分の補間計算を行うことなどは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
CM 複合材料
L1〜L8 第1層〜第8層
M1 90度格子
M2 45度格子
B1 格子境界
B2 周縁境界
S 解析空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9