(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記料金制データ自動選択部は、前記車両が営業運行を開始する時に、前記時計回路部から出力される現在の日時と、前記事前指定情報保持部が保持している前記事前指定情報とを比較し、その結果に応じて前記第1の料金制データと第2の料金制データのいずれか一方を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用運賃通知装置。
前記料金制データ自動選択部は、前記車両が営業運行を開始する時に、現在の日時と前記第1の事前指定情報とを比較し、更に現在の車両位置と、前記第2の事前指定情報とを比較する
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用運賃通知装置。
【背景技術】
【0002】
タクシーの営業を行う場合には、一般にタクシーメータと呼ばれる車両用運賃通知装置(車載装置)を使用する。そして、運転者はタクシーメータの操作部(ボタンなど)を操作することにより、タクシーの様々な運行状態の違いを区別できるように状態を切り替える。一般にタクシーメータは、次に示すような複数種類の運行状態を区別できるようになっている。
【0003】
「空車」:顧客が乗車しておらず、任意の顧客に対して営業運行可能な状態を表す。
「迎車」:事前に予約した顧客を指定地まで迎えに行く場合の営業運行状態を表す。
「賃走(又は実車)」:運賃を計算しながら営業運行している状態(通常は乗客有)を表す。「割増」:営業時間等の関係で割増料金制を適用して営業運行している状態を表す。「支払」:目的地に到着したときに、運賃の更新を止めて運賃を精算する状態を表す。
【0004】
タクシーメータは、予め定められた料金体系と、状態の変化や走行距離、運行時間などに応じて運賃を算出する。また、算出した運賃を表示する機能や運賃に基づいて領収書を発行する機能などを搭載している場合が多い。また、タクシーメータが表示する運賃については、通常の賃走や深夜早朝割増の料金制の他にも、様々な料金制が適用される場合がある。例えば、時間を指定してタクシーを予約した時に乗車料金に加算する時間指定予約料金や、予約先への到着から乗客が乗車するまでに標準時間を超える待時間が発生した時に、超過時間に応じて乗車料金に加算する無線待料金等の追加料金制がある。また、前記追加料金制以外の新規料金制としては、前記通常乗車料金に対応して設定される標準所要時間よりも実際の所要時間が短い時に、通常乗車料金をその時間差に応じて割引する快速走行割引や、通常乗車料金が一定の基準額を超える時に、通常乗車料金のうち基準額を超える料金を一定の率で割引する遠距離割引等の割引料金制がある。
【0005】
ところで、タクシーの運賃は認可制であり、タクシー事業者は認可申請を国土交通大臣に対して行い認可を受けてから当該運賃の料金制を適用する。また、一定の地域(運賃ブロック)ごとに上限運賃と下限運賃が事前に決定され、これらの範囲内(自動認可運賃)の運賃であれば、認可申請は細かい審査を受けることなく自動的に認可される。
【0006】
従って、前記上限運賃や下限運賃が改正された場合や、各タクシー事業者が機動的に新しい料金制を採用しようとする場合には、タクシー料金の計算に適用される料金体系がある日時を境にして改正される。この場合、タクシーメータは、現在適用される料金体系に従って計算を行いタクシー料金を算出する必要がある。
【0007】
一般的なタクシーメータは、それに内蔵されている読み出し専用メモリ上に、予め決定された料金制のデータを保持している。従って、料金制が変更になった場合には、各タクシーメータ内部の読み出し専用メモリを交換するか、もしくはその内容を新しい料金制のデータに書き換える必要がある。
【0008】
このような料金制の改正は、通常は改正日の直前に集中的に行う必要があり様々な問題が発生する。このような問題を解決するための技術が特許文献1に開示されている。特許文献1においては、改正前の料金制データと改正後の料金制データとの両者をタクシーメータ上に予め保持しておき、現在の日時が改正日時より前であれば改正前の料金制データを採用して計算を行い、改正日時を過ぎた時には、使用する料金制データを改正後の料金制データに自動的に更新して計算を行うことについて開示している。これにより、料金制の改正作業が改正日の直前に集中するのを避けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、タクシー事業者においては、顧客のタクシー利用促進を図るために、戦略的な料金体系を採用したいと考える場合がある。例えば、毎月の特定の期日、あるいは特定の曜日には通常と比べて料金の安い割引料金の料金制を適用する場合や、ある特定の期間については通常と比べて料金の安い割引料金の料金制を適用する場合が想定される。
【0011】
しかしながら、例えば特許文献1の技術を採用したタクシーメータであっても、改正前の料金制と改正後の料金制を現在の日時に応じて自動的に切り替えることはできるが、改正日時の後で改正前の料金制に戻すことができない。従って、上記のように、特定の期日や特定の曜日だけ、あるいは特定の期間だけ一時的に特別な割引料金の料金制を適用する場合には、タクシーメータ上で料金を計算したり表示することができない。その結果、割引の計算や払い戻しの作業を乗務員が手作業で行わざるを得ず、乗務員の負担が大きくなってしまう。
【0012】
また、上述のように、地域ごとに上限運賃と下限運賃が事前に決定され、これらの範囲内で料金制が決定されるので、適用可能な料金制の内容は地域ごとに異なる。従って、1台のタクシーメータだけでは、複数の地域を跨いでタクシーの運行業務を行うことができない。すなわち、タクシー車両が通常の営業地域とは異なる別の地域に移動した場合には、移動先の地域で認可されている別の料金制にタクシーメータが対応していないので、正規の料金を自動的に算出して表示することができない。その結果、正規の料金の計算や料金の精算を乗務員が手作業で行わざるを得ず、乗務員の負担が大きくなってしまう。また、営業地域の区分が異なる場所に移動したにもかかわらず、もしも乗務員がタクシーメータの誤っている表示運賃を信じてそのまま乗客に支払いを求めると、意図的な行為でなくても乗務員と乗客との間でトラブルになる可能性がある。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗務員の負担を増やすことなく、様々な料金制に対応し、正規の運賃を自動的に表示することが可能な車両用運賃通知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用運賃通知装置は、下記(1)〜(
5)を特徴としている。
(1) 車両に搭載され、前記車両の営業走行に伴って変化する乗客の運賃の金額を算出して出力する機能を備えた車両用運賃通知装置であって、
前記運賃の算出の条件を定める料金制データとして、第1の料金制データと第2の料金制データとを保持し、前記第2の料金制データが、前記第1の料金制データに比べて、割引された料金体系である料金制データ保持部と、
現在の日時に関する情報を出力する時計回路部と、
事前に決定し
た月単位で規則的に発生する特定の日を表す事前指定情報を保持する事前指定情報保持部と、
所定の条件を満たす時に、前記時計回路部から出力される現在の日時と、前記事前指定情報保持部が保持している前記事前指定情報とを比較して、前記現在の日時が前記事前指定情報に該当しない時には前記第1の料金制データを選択し、該当する時には前記第2の料金制データを選択する料金制データ自動選択部と、
前記料金制データ自動選択部により選択された前記第1の料金制データ又は第2の料金制データの内容と前記車両の運行状態とに基づいて運賃の金額を算出する運賃計算処理部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車両用運賃通知装置であって、
前記事前指定情報は
、月単位で規則的に発生する特定の日について、始まりの条件を表す開始情報と、終了の条件を表す終了情報とを含み、
前記料金制データ自動選択部は、前記第2の料金制データを選択している状態で、前記終了情報により前記事前指定情報に該当しないことを検出すると、選択する料金制データを、前記第2の料金制データから前記第1の料金制データに切り替える
こと。
(3) 上記(1)に記載の車両用運賃通知装置であって、
前記料金制データ自動選択部は、前記車両が営業運行を開始する時に、前記時計回路部から出力される現在の日時と、前記事前指定情報保持部が保持している前記事前指定情報とを比較し、その結果に応じて前記第1の料金制データと第2の料金制データのいずれか一方を選択する
こと。
(4) 車両に搭載され、前記車両の営業走行に伴って変化する乗客の運賃の金額を算出して出力する機能を備えた車両用運賃通知装置であって、
前記運賃の算出の条件を定める料金制データとして、第1の料金制データと第2の料金制データと第3の料金制データとを保持し、前記第2の料金制データが、前記第1の料金制データに比べて、割引された料金体系である料金制データ保持部と、
現在の日時に関する情報を出力する時計回路部と、
現在の車両の位置に関する情報を出力する車両位置検出部と、
事前に決定し
た月単位で規則的に発生する特定の日を表す第1の事前指定情報、および事前に決定した特定の地域の範囲を表す位置情報である第2の事前指定情報を保持する事前指定情報保持部と、
所定の条件を満たす時に、前記時計回路部から出力される現在の日時と、前記事前指定情報保持部が保持している第1の事前指定情報とを比較し、更に前記車両位置検出部から出力される現在の車両位置と、前記事前指定情報保持部が保持している第2の事前指定情報とを比較し、前記特定の地域の範囲内に該当する時には前記第3の料金制データを選択し、前記特定の地域の範囲内に該当せず、かつ前記現在の日時が前記第1の事前指定情報に該当する時には前記第2の料金制データを選択し、いずれの条件にも該当しない時には前記第1の料金制データを選択する料金制データ自動選択部と、
前記料金制データ自動選択部により選択された前記第1の料金制データ
、第2の料金制データ
、及び第3の料金制データのうちの何れか1つの内容と前記車両の運行状態とに基づいて運賃の金額を算出する運賃計算処理部と
を備えること。
(5) 上記(4)に記載の車両用運賃通知装置であって、
前記料金制データ自動選択部は、前記車両が営業運行を開始する時に、現在の日時と前記第1の事前指定情報とを比較し、更に現在の車両位置と、前記第2の事前指定情報とを比較する
こと。
【0015】
上記(1)の構成の車両用運賃通知装置によれば、通常は前記第1の料金制データの料金制を適用して運賃を算出し、前記特定の日付、又は特定の期間に該当する時のみ前記第2の料金制データの料金制を適用して運賃を算出することができる。従って、例えば毎月の第2水曜日のような特定の期日を指定したり、10年8月1日から10年9月30日までのような特定の期間を指定できる。そして、該当する条件でのみ特別な割引料金を適用するような営業戦略を実施する場合であっても、乗務員が手作業で特別な操作を行う必要はなく、タクシーメータ上で自動的に割引を処理できる。
また、上記(2)の構成の車両用運賃通知装置によれば、前記第2の料金制データの料金制を適用する期日等の始まりの条件と終了の条件とを個別に指定できるので、期日や期間を細かく指定することができる。
また、上記(3)の構成の車両用運賃通知装置によれば、前記事前指定情報の条件に該当する時に確実に前記第1の料金制データから第2の料金制データに切り替えることができ、該当しない時は確実に通常の料金制(第1の料金制データの条件)に戻すことができる。また、短い周期で頻繁に比較処理を行う必要がないので、コンピュータの処理の負担が小さくなる。
また、上記(4)の構成の車両用運賃通知装置によれば、特別な料金制を適用すべき特定の期日になった時や、適用可能な料金制の内容が異なる別の地域に移動してその地域で一時的な営業運行を行う場合であっても、自動的に適切な料金制を適用して料金を計算するので、通常とは異なる料金の計算などの特別な作業を乗務員が行う必要がなくなる。
また、上記(5)の構成の車両用運賃通知装置によれば、前記事前指定情報の条件に該当する時に確実に適切な料金制データに切り替えることができ、該当しない時は確実に通常の料金制(第1の料金制データの条件)に戻すことができる。また、短い周期で頻繁に比較処理を行う必要がないので、コンピュータの処理の負担が小さくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用運賃通知装置によれば、様々な条件において適切な料金制を採用し、正規の運賃を自動的に表示できる。従って、事前に指定した期日等に割引料金を適用する場合や、通常とは異なる地域で一時的に営業運行を行うような場合であっても、運賃の計算等に関し乗務員の負担が増えることがない。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の車両用運賃通知装置に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0020】
本実施形態の車両用運賃通知装置を含むタクシーメータ本体のハードウェア構成例が
図1に示されている。
図1に示すように、このタクシーメータ本体10には演算部11、プログラム格納部12、設定値データ格納部13、メモリカードI/O部14、時間計測部15、操作部16、表示部17、車両情報格納部18、インタフェース(I/F)19が備わっている。
【0021】
演算部11は、マイクロコンピュータ(CPU)で構成されている。この演算部11は、プログラム格納部12上に保持されているプログラムを実行することにより、タクシーメータとして動作するための後述するような各種機能を実現する。
【0022】
プログラム格納部12は、読み出し専用メモリ(ROM)で構成されており、演算部11が実行すべきプログラムや必要なデータを予め保持している。設定値データ格納部13は、読み出し専用メモリ(EEPROM)で構成されており、
図2に示すような各種の定数データを保持している。なお、設定値データ格納部13が保持するデータについては、特別な電気的な処理により内容を書き換えることが可能である。
【0023】
メモリカードI/O部14は、乗務員のデータや営業履歴データなどを格納するための記録媒体(メモリカード)を接続するためのインタフェースである。
【0024】
時間計測部15は、時計用の集積回路(IC)であり、現在時刻を管理する時計やカレンダやタイマの機能を搭載している。時間計測部15は、現在日時として、時、分、秒、年、月、日、曜日などの情報を出力することができる。
【0025】
操作部16は、乗務員が操作できるようにタクシーメータ本体10の前面パネル上に配置された多数の操作ボタンを備えている。例えば、タクシー車両の現在の状態を識別するための「空車ボタン」、「迎車ボタン」、「賃走(実車)ボタン」、「割増ボタン」、「支払ボタン」などが操作部16に含まれている。
【0026】
表示部17は、液晶表示器(LCD)であり、タクシー車両の現在の状態として「空車」、「迎車」、「賃走(実車)」、「割増」、「支払」などを表示したり、現在の運賃の金額を表示するために利用される。
【0027】
車両情報格納部18は、データの読み書きが自在のメモリ(RAM)であり、一時的に使用する各種データを保持するために利用される。例えば、営業運行を開始してからの走行距離のデータや、現在の運賃の算出の基礎となる料金体系を表すデータなどが車両情報格納部18上に保持される。
【0028】
インタフェース(I/F)19は、予め用意された様々な機器をタクシーメータ本体10に接続するために利用される。例えば、領収書を発行するための印刷に用いるプリンタや、車両の現在位置を検出するGPS受信機などをインタフェース19を介してタクシーメータ本体10に接続できる。
【0029】
本発明の車両用運賃通知装置について説明する前に、理解を容易にするために、タクシーメータを使用する場合の一般的な動作について説明する。
【0030】
タクシーが乗客を乗せて運行を開始する時には、タクシー乗務員の操作によってタクシーメータの「実車」ボタンが押下される。これによりタクシーメータはその表示部に所定の実車画面を表示する。すなわち、「賃走」であることを表示すると共に、最新のタクシー運賃を計算してその運賃を表示する。タクシー運賃を計算するための料金体系に関する情報は料金制データとしてタクシーメータの内部に予め保持されている。
【0031】
タクシー運賃の料金体系については、一般的に、所定の算出条件(料金制と呼ばれる)に基づき、基本料金(基本運賃)と走行距離や走行時間に応じて算出される加算料金(後続料金と呼ばれる)との合計として算出される。
【0032】
ここでは、具体例として次のような料金制が適用される場合を想定する。
基本運賃:710円
基本距離(基本運賃の範囲内で走行な可能な距離):2000m
後続運賃(一定の距離又は時間毎に加算する運賃):90円
後続距離(後続運賃を適用する距離の長さ):200m
後続時間(後続運賃を適用する時間の長さ):105秒
【0033】
この場合、2000mまでの走行については基本運賃の710円だけが適用される。また、走行距離が2000mを超えると後続運賃の90円が加算される。更に、2000mを超えてから更に後続距離の200mを走行するか、又は後続時間の105秒を経過すると後続運賃の90円が再び加算される。従って、例えば2500mを走行した場合には、次のように合計運賃が算出される。合計運賃=710円(基本運賃)+90円(後続運賃)×3
【0034】
従って、タクシーメータは乗客の乗車時間を計測する必要がある。そこで、「実車」ボタンが押下されると、この時点で時間計測を開始する。タクシー車両が目的地に到着して停車した後、タクシー乗務員の操作によってタクシーメータの「支払」ボタンが押下される。これにより、今回の営業運転の終了が確定する。従って、この場合の乗客の乗車時間は、時間計測を開始してから「支払」ボタン押下を検出するまでの経過時間として算出される。
【0035】
従って、タクシーメータは確定した走行距離および乗車時間を利用して、料金制データに基づきタクシー運賃の計算を行う。なお、上述のような走行中に表示する運賃の他に、割増料金(高速道路の料金、迎車料金等)や料金割引に関する計算も行う。
【0036】
次に、
図1に示したタクシーメータ本体10の構成および動作について説明する。設定値データ格納部13上には、
図2に示すように定数データとして、第1の料金制データ51、第2の料金制データ52、事前指定情報53が保持されている。第1の料金制データ51は設定値データ格納部13の記録領域「エリア1」に保持されており、第2の料金制データ52及び事前指定情報53は設定値データ格納部13の記録領域「エリア2」に保持されている。
【0037】
第1の料金制データ51は、通常の営業時に利用する料金制データであり、事前にタクシー事業者が認可申請を行って認可を受けた料金制と一致する内容になっている。
図2に示すように、第1の料金制データ51には、これに予め割り当てた料金制コード(BCD4桁)、基本運賃、後続運賃などのデータが含まれている。
【0038】
また、第2の料金制データ52は、特定の条件下の営業時にのみ使用する料金制データであり、これも事前にタクシー事業者が認可申請を行って認可を受けた料金制と一致する内容になっている。第2の料金制データ52には、これに予め割り当てた料金制コード、基本運賃、後続運賃などのデータが含まれている。
【0039】
但し、第1の料金制データ51と第2の料金制データ52とは内容が多少異なっている。例えば、第2の料金制データ52は、第1の料金制データ51の料金制と比べて値引きされた割安な料金体系になるように決定される。
【0040】
事前指定情報53は、第2の料金制データ52を適用する条件を決定する情報であり、第2の料金制データ52と対応付けて前記「エリア2」に保持されている。
図2に示した事前指定情報53は、事前に指定した特定日時の情報として、開始条件の情報と終了条件の情報とを含んでいる。また、開始条件の情報は、「開始年」、「開始月」、「開始日」、「開始時」、「開始週」、「実施曜日」の各項目を含んでいる。終了条件の情報は、「終了年」、「終了月」、「終了日」、「終了時」の各項目を含んでいる。
【0041】
つまり、通常の営業時は第1の料金制データ51を利用して運賃の計算が実施され、事前指定情報53で指定された条件を満たす時にのみ料金制が第2の料金制データ52に切り替わる。
【0042】
例えば、毎月第2水曜のみ第2の料金制データ52を適用したい場合には次の内容に定める。すなわち、開始条件の各項目を、「開始年:未設定(FF:16進数表記)」、「開始月:毎月(AA:16進数表記)」、「開始日:未設定」、「開始時:未設定」、「開始週:02」、「実施曜日:04」に定め、終了条件の各項目は、いずれも未設定(FF)に定める。この場合、終了条件の各項目がいずれも未設定であるため、毎月の特定日のみ条件を満たすと認識されて第2の料金制データ52が選択され、それ以外の時は第1の料金制データ51が選択される。
【0043】
また、特定期間(09年6月1日10時から09年7月31日10時まで)のみ第2の料金制データ52を適用したい場合には次の内容に定める。すなわち、開始条件の各項目を、「開始年:09」、「開始月:06」、「開始日:01」、「開始時:10」、「開始週:未設定」、「実施曜日:未設定」に定め、終了条件の各項目を、「終了年:09」、「終了月:07」、「終了日:31」、「終了時:10」に定める。この場合、開始条件と終了条件の両方が指定されているので、期間が指定されていると認識され、指定された期間内のみ第2の料金制データ52が選択される。
【0044】
図1に示したタクシーメータ本体10の機能上の主要な構成要素が
図3に示されている。なお、
図3に示す料金制データ保持部121及び事前指定情報保持部122は
図1の設定値データ格納部13に相当する。
【0045】
図3に示すように、演算部(CPU)11が実行する処理110の中には、入力操作検出部111、車両状態検出部112、料金制データ自動選択部113、運賃計算処理部114、出力制御部115の各機能が含まれている。
【0046】
入力操作検出部111は、操作部16に対する乗務員の入力操作の内容を読み取り、「空車ボタン」、「迎車ボタン」、「賃走(実車)ボタン」、「割増ボタン」、「支払ボタン」等の操作入力を受け付ける。
【0047】
車両状態検出部112は、車両に搭載されたセンサから出力される所定の走行パルスを計数して営業運行状態になってからの走行距離を把握する。
料金制データ自動選択部113は、所定の条件において時間計測部15から出力される現在の日時の情報と、事前指定情報保持部122に保持されている事前指定情報53の日時とを比較し、その結果に応じて第1の料金制データ51と第2の料金制データ52のいずれか一方を自動的に選択する。
【0048】
運賃計算処理部114は、料金制データ自動選択部113が選択した料金制データに基づき、車両状態検出部112が検出した走行距離や、時間計測部15が検出した走行時間を考慮して現在の乗客に適用すべき運賃を算出する。
【0049】
出力制御部115は、運賃計算処理部114が算出した運賃等の情報を適宜出力する。例えば、表示部17に現在の運賃を表示したり、プリンタを用いて領収書を発行したり、メモリカードI/O部14に接続されるメモリカード上に営業の履歴等を書き込むための処理を行う。
【0050】
図3に示した料金制データ自動選択部113に関連する動作の内容が
図4に示されている。
図4に示す動作について以下に説明する。
【0051】
ステップS11では、このタクシーメータを搭載したタクシー車両の営業立ち上がりのタイミングかどうかを演算部11が識別する。すなわち、車両が「空車」状態で、「賃走(実車)ボタン」が押されたことを検出した場合に営業立ち上がりとして認識し、ステップS12に進む。
【0052】
ステップS12では、演算部11が時間計測部(時計回路部)15から現在日時(年、月、日、時、曜日)の情報を取得する。
【0053】
ステップS13では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア2」から料金制の特定日情報、すなわち前述の事前指定情報53の内容を取得する。
【0054】
ステップS14では、演算部11がステップS12で取得した現在日時とステップS13で取得した事前指定情報53とを比較して条件を満たすか否かを識別する。すなわち、指定された期日(例えば毎月第2水曜)あるいは「特定期間」内であれば条件を満たすが、指定された期日以外、あるいは「特定期間」以外であれば条件を満たさないと認識する。条件を満たす場合はステップS19に進み、条件を満たさない場合はステップS15に進む。
【0055】
なお、タクシーメータ本体10に電源が投入された後で実行される所定の初期化処理において、第1の料金制データ51と第2の料金制データ52のいずれか一方の内容が選択的に取得され料金制データとして車両情報格納部(RAM)18上に展開されその後の料金計算の際に使用される。
【0056】
ステップS15では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードを取得する。また、次のステップS16では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア1」から第1の料金制データ51の料金制コードを取得する。
【0057】
ステップS17では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードと第1の料金制データ51の料金制コードとを比較して一致するか否かを識別する。一致する場合にはそのままステップS11に戻り、一致しない場合はステップS18に進む。
【0058】
ステップS18では、演算部11は設定値データ格納部13の「エリア1」から第1の料金制データ51の全体を取得し、この内容を現在の料金制データとして展開し車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。
【0059】
ステップS19では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードを取得する。また、次のステップS20では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア2」から第2の料金制データ52の料金制コードを取得する。
【0060】
ステップS21では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードと第2の料金制データ52の料金制コードとを比較して一致するか否かを識別する。一致する場合にはそのままステップS11に戻り、一致しない場合はステップS22に進む。
【0061】
ステップS22では、演算部11は設定値データ格納部13の「エリア2」から第2の料金制データ52の全体を取得し、この内容を現在の料金制データとして展開し車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。
【0062】
すなわち、
図3に示した料金制データ自動選択部113は、ステップS11で営業立ち上がりを検出する毎に、現在日時と事前指定情報53とを比較してその結果に応じて第1の料金制データ51、第2の料金制データ52のいずれか一方を選択し、選択した料金制データを車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。運賃計算処理部114は車両情報格納部18上に書き込まれた現在の料金制データを使用して運賃を算出する。
【0063】
従って、通常は第1の料金制データ51の料金制に基づいて運賃を算出し、特定日の条件に適合する時には一時的に第2の料金制データ52の料金制に基づいて運賃を算出し、特定日の条件を満たさなくなると、再び第1の料金制データ51の料金制に基づいて運賃を算出する。そのため、例えば、毎月第2水曜のみ第2の料金制データ52を適用したり、特定期間(09年6月1日10時から09年7月31日10時まで)のみ第2の料金制データ52を適用するような場合であっても、タクシーメータ本体10が適切な料金制データを自動的に選択して正規の運賃を自動的に表示でき、乗務員が手作業等で特別な処理を行う必要はなくなる。
【0064】
次に、上述の車両用運賃通知装置の変形例について説明する。タクシーメータ本体の機能上の構成に関する変形例1が
図5に示されている。また、変形例1における設定値データ格納部上のデータの構成例が
図6に示されている。更に、
図5に示した料金制データ自動選択部に関連する動作が
図7に示されている。
【0065】
図5に示すように、変形例1においてはGPS受信機20が追加されている。このGPS受信機20は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信することにより、受信地点である車両の位置(緯度、経度)を算出することができる。
【0066】
また、
図5に示すタクシーメータ本体10には、料金制データ保持部121B及び事前指定情報保持部122Bが備わっている。料金制データ保持部121Bは、第1の料金制データ51及び第2の料金制データ52Bを保持しており、事前指定情報保持部122Bは事前指定情報53Bを保持している。
【0067】
変形例1においては、
図6に示すような第1の料金制データ51、第2の料金制データ52B、事前指定情報53Bを保持している。第1の料金制データ51については前述のタクシーメータ本体10の場合と同様のデータである。
【0068】
第2の料金制データ52Bについては、これに予め割り当てた料金制コード、基本運賃、後続運賃などのデータが含まれているが前述の第2の料金制データ52とは少し異なる。すなわち、第2の料金制データ52Bは通常の営業地域とは異なる特定の地域内で適用可能な特別な料金制を表すデータである。なお、第2の料金制データ52Bについても、事前にタクシー事業者が認可申請を行って認可を受けた料金制と一致する内容になっている。
【0069】
事前指定情報53Bは、第2の料金制データ52Bを適用する条件を決定する情報であり、第2の料金制データ52Bと対応付けて前記「エリア2」に保持されている。
図6に示した事前指定情報53Bは、事前に指定した特定地域の情報として、前記特定地域を含む矩形の領域の左上座標を表す緯度、経度と、右下座標を表す緯度、経度の情報を保持している。
【0070】
つまり、通常の営業時は第1の料金制データ51を利用して運賃の計算が実施され、事前指定情報53Bで指定された条件を満たす特定の地域で営業する時にのみ料金制が第2の料金制データ52Bに切り替わる。
【0071】
図5に示した料金制データ自動選択部113Bは、所定の条件において、GPS受信機20から得られる現在の車両位置の情報と、事前指定情報保持部122Bが保持している事前指定情報53Bの特定地域の範囲とを比較し、その結果に応じて第1の料金制データ51と第2の料金制データ52Bのいずれか一方を自動的に選択する。
【0072】
図5に示した料金制データ自動選択部113Bの動作について、
図7を参照しながら以下に説明する。
ステップS31では、このタクシーメータを搭載したタクシー車両の営業立ち上がりのタイミングかどうかを演算部11が識別する。すなわち、車両が「空車」状態で、「賃走(実車)ボタン」が押されたことを検出した場合に営業立ち上がりとして認識し、ステップS32に進む。
【0073】
ステップS32では、演算部11がGPS受信機20から車両の現在位置を表す緯度、経度の情報を取得する。
【0074】
ステップS33では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア2」から料金制の特定日情報、すなわち前述の事前指定情報53Bの内容を取得する。
【0075】
ステップS34では、演算部11がステップS32で取得した現在位置とステップS33で取得した事前指定情報53Bの範囲とを比較して条件を満たすか否かを識別する。すなわち、車両の現在位置が指定された地域の範囲内であれば条件を満たすが、その範囲外の座標にある場合は条件を満たさないと認識する。条件を満たす場合はステップS39に進み、条件を満たさない場合はステップS35に進む。
【0076】
ステップS35では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードを取得する。また、次のステップS36では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア1」から第1の料金制データ51の料金制コードを取得する。
【0077】
ステップS37では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードと第1の料金制データ51の料金制コードとを比較して一致するか否かを識別する。一致する場合にはそのままステップS31に戻り、一致しない場合はステップS38に進む。
【0078】
ステップS38では、演算部11は設定値データ格納部13の「エリア1」から第1の料金制データ51の全体を取得し、この内容を現在の料金制データとして展開し車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。
【0079】
ステップS39では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードを取得する。また、次のステップS40では、演算部11が設定値データ格納部13の「エリア2」から第2の料金制データ52Bの料金制コードを取得する。
【0080】
ステップS41では、演算部11が車両情報格納部(RAM)18上の料金制データの料金制コードと第2の料金制データ52Bの料金制コードとを比較して一致するか否かを識別する。一致する場合にはそのままステップS11に戻り、一致しない場合はステップS42に進む。
【0081】
ステップS42では、演算部11は設定値データ格納部13の「エリア2」から第2の料金制データ52Bの全体を取得し、この内容を現在の料金制データとして展開し車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。
【0082】
すなわち、
図5に示した料金制データ自動選択部113Bは、ステップS31で営業立ち上がりを検出する毎に、車両の現在位置と事前指定情報53Bの地域の範囲とを比較してその結果に応じて第1の料金制データ51、第2の料金制データ52Bのいずれか一方を選択し、選択した料金制データを車両情報格納部(RAM)18上に書き込む。運賃計算処理部114は車両情報格納部18上に書き込まれた現在の料金制データを使用して運賃を算出する。
【0083】
従って、通常は第1の料金制データ51の料金制に基づいて運賃を算出し、特定地域内で営業する時には一時的に第2の料金制データ52Bの料金制に基づいて運賃を算出し、その条件を満たさない位置に移動すると、再び第1の料金制データ51の料金制に基づいて運賃を算出する。
【0084】
次に、変形例2について説明する。
図3に示した機能と
図5に示した機能とを組み合わせて構成した変形例2の構成要素が
図8に示されている。
図8を参照すると、料金制データ保持部121C上には第1の料金制データ51、第2の料金制データ52、第3の料金制データ52Bの3組が保持されている。
【0085】
図8における第1の料金制データ51および第2の料金制データ52は、それぞれ
図3に示した第1の料金制データ51および第2の料金制データ52と同等のデータである。また、
図8の第3の料金制データ52Bは、
図5に示した第2の料金制データ52Bと同等のデータである。
【0086】
また、
図8に示した事前指定情報保持部122Cは、事前指定情報53、53Bを保持している。
図8の事前指定情報53は
図3における事前指定日時(53)の情報と同等の内容であり、
図8の事前指定情報53Bは
図5における事前指定情報(53B)の情報と同等の内容である。
【0087】
図8に示した料金制データ自動選択部113Cは、営業の立ち上がりを検出した時に、時間計測部15から出力される現在の日時の情報と、事前指定情報保持部122Cに保持されている事前指定情報53の日時とを比較すると共に、GPS受信機20から出力される車両の現在位置と、事前指定情報保持部122Cに保持されている事前指定情報53Bの指定地域の範囲とを比較する。そして、現在の日時の情報と事前指定情報53の日時との比較結果が条件を満たす時には第2の料金制データ52を選択し、車両の現在位置と事前指定情報53Bの指定地域の範囲との比較結果が条件を満たす時には第3の料金制データ52Bを選択し、それ以外の時には第1の料金制データ51を自動的に選択する。
【0088】
従って、特定の日時や期間だけ特別な料金体系を適用する場合や、通常の営業範囲以外の他の地域で一時的に営業運行を行うような場合であっても、正規の運賃をタクシーメータ本体10で自動的に算出し表示することができる。そのため、乗務員が手作業などで特別な操作を行う必要がなくなる。
【0089】
以上のように、本発明の車両用運賃通知装置は、タクシーメータのように予め決められた料金制に従って運賃を算出する必要のある用途に利用することが想定される。そして、本発明を採用することにより、特定の日時や期間だけ特別な料金体系を適用したいような場合や、通常の営業範囲以外の他の地域で一時的に営業運行を行う必要がある場合であっても、正規の運賃を自動的に表示することができ、運賃の処理に関する乗務員の負担が軽減される。