特許第6034960号(P6034960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6034960フッ素置換(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−アセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸、そのエステル及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034960
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】フッ素置換(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−アセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸、そのエステル及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 279/18 20060101AFI20161121BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20161121BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20161121BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C07C279/18CSP
   A61K31/215
   A61K31/196
   A61P43/00 111
   A61P11/00
   A61P31/16
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-512601(P2015-512601)
(86)(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公表番号】特表2015-521186(P2015-521186A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】RU2013000384
(87)【国際公開番号】WO2013172741
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】2012119272
(32)【優先日】2012年5月12日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】513016895
【氏名又は名称】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
(73)【特許権者】
【識別番号】514288657
【氏名又は名称】アサヴィ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・バシリエビッチ・イワシェンコ
【審査官】 井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−501908(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/070118(WO,A1)
【文献】 国際公開第95/020583(WO,A1)
【文献】 JOURNAL OF COMPUTER-AIDED MOLECULAR DESIGN,2006年,VOL.20,No.9,PP.549-566
【文献】 JOURNAL OF COMPUTATIONAL CHEMISTRY,2009年,VOL.30,NO.2,PP.295-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式1:
【化1】

[式中:
Rは、水素、C−Cアルキルである]
の(3R、4R、5S)−4−フルオロアセトアミド−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸及びそのエステル並びに医薬的に受容可能なその塩及び/又は水和物。
【請求項2】
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸 1.1、
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸メチル 1.2、
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル 1.3
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに対する活性を示し、そして請求項1、2のいずれか1項に記載の化合物である活性成分。
【請求項4】
抗ウイルス性活性を示し、そして治療的に有効な量の請求項3に記載の活性成分を含んでなる、インフルエンザ及びインフルエンザウイルスによって起こされる同時疾病を治療することを意図する医薬組成物。
【請求項5】
医薬的に受容可能な包装に入れられた錠剤、カプセル、又は注射の形態の、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
有効な量における、インフルエンザウイルスによって起こされた肺炎の治療のための、請求項4又は5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1、2のいずれか1項に記載の化合物を含有する、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ活性の阻害のための医薬
【請求項8】
治療的に有効な量の請求項3に記載の活性成分を含有する、インフルエンザウイルスによって起こされるインフルエンザ及び疾病の予防或いは治療のための医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物−フッ素置換(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−アセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸及びそのエステル−ノイラミニダーゼ活性の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイラミニダーゼを含んでなる多くの微生物は、ヒト及び動物、例えば家禽、ウマ、ブタ及びアザラシに対して病原性である。これらの病原性微生物は、インフルエンザウイルスを含む。ノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスの病原性に関連する。
【0003】
これに関連して、新規なフッ素置換(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−アセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸及びそのエステルは、インフルエンザの予防及び治療を意図する薬剤のための薬物物質として第一の関心事である。既知のノイラミニダーゼ阻害剤は、(3R、4R、5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−アルキルオキシ−シクロヘキセン−1−カルボン酸A1であり、更に、これらの最も活性なものは、(3R、4R、5S)−4−アセトアミド−5−アミノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸A2であり、これは、そのインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼとの複合体のX線回折データによって示されるように、酵素の活性中心に有効に結合する(オセルタミビルカルボン酸塩)[C.U.Kim,W.Lew,M.A.Williams,et al.J.Am.Chem.Soc.1997,119,681−690.]。
【0004】
オセルタミビルリン酸塩又はタミフル(オセルタミビルリン酸塩、タミフル)[J.C.Rohloff,K.M.Kent,M.J.Postich,et al.J.Org.Chem.1998,63,4545.]として知られるオセルタミビルカルボン酸塩A3のエチルエステルは、オセルタミビルカルボン酸塩A2の医薬前駆体である。
【0005】
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−トリフルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸A4が、インフルエンザウイルスH5N1のノイラミニダーゼに対して活性を示すことも更に知られている[Q.−S.Du,R.−B.Huang,Y.−T.Wei,Z.−W.Pa,L.−Q.Du,K.−C.Chou.Fragment−Based Quantitative Structure−Activity Relationship(FB−QSAR)for Fragment−Based Drug Design.J.Comput.Chem.2008,30(2),295−304]。
【0006】
(2R、3R、4S)−3−アセトアミド−4−グアニジノ−2−((1R,2R)−1,2,3−トリヒドロキシプロピル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−カルボン酸(ザナミビル)は、インフルエンザウイルスA及びBのノイラミニダーゼに、そして更にインフルエンザウイルスH1N1のノイラミニダーゼ対して活性であることが知られている[J.M.Woods,R.C.Bethell,J.A.Coates,et al.4−Guanidino−2,4−dideoxy−2,3−dehydro−N−acetylneuraminic acid is a highly effective inhibitor both of the sialidase(neuraminidase)and of growth of a wide range of influenza A and B viruses in vitro.Antimicrob Agents Chemother.1993,37(7),1473−1479]。
【0007】
【化1】
【0008】
高度に有効な、特に耐性インフルエンザウイルスに対して向上した活性を示す抗インフルエンザ薬に対する探求は、インフルエンザを治療するための新規な医薬的療法の開発における主要な傾向の一つのままである。この状況において、新規な抗インフルエンザ成分、医薬組成物及び薬剤、並びにその調製及び使用のための方法の設計は、現時点の関心事である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.U.Kim,W.Lew,M.A.Williams,et al.J.Am.Chem.Soc.1997,119,681−690.
【非特許文献2】J.C.Rohloff,K.M.Kent,M.J.Postich,et al.J.Org.Chem.1998,63,4545.
【非特許文献3】Q.−S.Du,R.−B.Huang,Y.−T.Wei,Z.−W.Pa,L.−Q.Du,K.−C.Chou.Fragment−Based Quantitative Structure−Activity Relationship(FB−QSAR)for Fragment−Based Drug Design.J.Comput.Chem.2008,30(2),295−304
【非特許文献4】J.M.Woods,R.C.Bethell,J.A.Coates,et al.4−Guanidino−2,4−dideoxy−2,3−dehydro−N−acetylneuraminic acid is a highly effective inhibitor both of the sialidase(neuraminidase)and of growth of a wide range of influenza A and B viruses in vitro.Antimicrob Agents Chemother.1993,37(7),1473−1479。
【発明の概要】
【0010】
本発明の文脈において、用語は、一般的に以下のとおりに定義される:
“アルケニル”は、2−7個の炭素原子を含んでなり、そして少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を含む脂肪族の直鎖又は分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。分枝は、アルケニル直鎖が、一つ又はそれより多い低級アルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピルを含有することを意味する。アルキル基は、一つ又はそれより多い置換基、例えば、ハロゲン、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルキニルオキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルキルチオ、ヘテロアラルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルオキシ、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、Rk+1NSO−を有することができ、ここで、R及びRk+1は、互いに独立にその意味がこの項で定義される“アミノ基置換基”、例えば水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールであるか、或いは、R及びRk+1は、これらが接続している窒素原子と一緒に、R及びRk+1を通る4−7員のヘテロシクリル又はヘテロシクレニルを形成する。好ましいアルキル基は、メチル、トリフルオロメチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、メトキシエチル、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルメチル及びピリジルメチルオキシカルボニルメチルである。好ましいアルケニル基は、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、イソ−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル及びシクロヘキシルブテニルである。
【0011】
“アルキル”は、1−12個の炭素原子を持つ直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素を意味する。分枝は、少なくとも一つ又はそれより多い“低級アルキル”置換基を持つアルキル鎖を意味する。アルキル基は、ハロゲン、アルケニルオキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アロイル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、アルキニルオキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アリールスルホニル、アルキルスルホニルヘテロアラルキルオキシ、環縮合ヘテロアリールシクロアルケニル、環縮合ヘテロアリールシクロアルキル、環縮合ヘテロアリールヘテロシクレニル、環縮合ヘテロアリールヘテロシクリル、環縮合アリールシクロアルケニル、環縮合アリールシクロアルキル、環縮合アリールヘテロシクレニル、環縮合アリールヘテロシクリル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、Rk+1NC(=S)−、Rk+1NSO−を含む、同一又は異なった構造の一つ又はそれより多い置換基(“アルキル置換基”)を有することができ、ここでR及びRk+1は、互いに独立にその意味がこの項で定義される“アミノ基置換基”、例えば水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールを表すか、或いは、R及びRk+1は、これらが接続しているN−原子と一緒に、R及びRk+1を通る4−7員のヘテロシクリル又はヘテロシクレニルを形成する。好ましいアルキル基は、メチル、トリフルオロメチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、メトキシエチル、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルメチル及びピリジルメチルオキシカルボニルメチルである。好ましい“アルキル置換基”は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アラルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=О)−、環縮合アリールヘテロシクレニル及び環縮合アリールヘテロシクリルである。
【0012】
“アルキニル”は、2−12個の炭素原子を持ち、そして少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分枝鎖の脂肪族の炭化水素を意味する。分枝は、アルキニル直鎖が、少なくとも一つ又はそれより多い低級アルキル基、例えばメチル、エチル又はプロピルを含有することを意味する。アルキル基は、一つ又はそれより多い置換基、例えば、ハロゲン、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキニルオキシ、アラルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アルキルチオ、ヘテロアラルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルオキシ、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、ヘテロアラルキルオキシカルボニル又はRk+1N−、Rk+1NC(=O)−、Rk+1NSO−を有することができ、ここで、R及びRk+1は、互いに独立にその意味がこの項で定義される“アミノ基置換基”、例えば水素、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリル又はヘテロアリールであるか、或いは、R及びRk+1は、これらが接続しているN−原子と一緒に、R及びRk+1を通る4−7員のヘテロシクリル又はヘテロシクレニルを形成する。好ましいアルキル基は、メチル、トリフルオロメチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、3−ペンチル、メトキシエチル、カルボキシメチル、メトキシカルボニルメチル、ベンジルオキシカルボニルメチル及びピリジルメチルオキシカルボニルメチルである。好ましいアルキニル基は、エチニル、プロピニル、n−ブチニル、イソ−ブチニル、3−メチルブタ−2−イニル、n−ペンチニル、ブタ(bute)−1,3−ジイニル及びヘキサ−1,3,5−トリイニルである。
【0013】
“水和物”は、化合物又はその塩の、水との化学量論的或いは非化学量論的組成を意味する。
【0014】
“活性成分”(薬物物質)は、薬理学的活性を示す合成又は他の(生物工学的、植物、動物、微生物等)起源の生理学的に活性な化合物を意味し、これは、薬剤の製造及び調製において使用される医薬組成物の活性成分である。
【0015】
“薬剤”は、ヒト及び動物における生理学的機能の回復、改良又は改変を意図し、そして疾病の治療及び予防のための、診断、麻酔、避妊、美容術等のための錠剤、カプセル、注射、軟膏の形態、及び他の準備完了形態の化合物(又は医薬組成物としての化合物の混合物)である。
【0016】
“ノイラミニダーゼ”(シアリダーゼ、アシルノイラミニル(acylneuraminile)ヒドロラーゼ及びEC3.2.1.18)は、動物及び多くの微生物に共通の酵素である。これは、糖タンパク質、糖脂質及びオリゴ糖中のノイラミン酸のグリコシド結合を開裂するグリコヒドロラーゼである。ノイラミニダーゼを含んでなる多くの微生物は、ヒト並びに家禽、ウマ、ブタ及びアザラシのような動物に対して病原性である。これらの病原性生物体は、インフルエンザウイルスを含む。ノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスの病原性に関連する。恐らく、これは、感染された細胞から新しく合成されるウイルス粒子の溶出及び気道粘膜被膜を通るウイルスの運動(そのヒドロラーゼ活性のため)に寄与する。
【0017】
“医薬組成物”は、一般式Iの化合物、並びに医薬的に受容可能な、そして薬理学的に適合性の充填剤、溶媒、希釈剤、担体、補助剤、分散及び賦形剤、供給剤、例えば保存剤、安定剤、充填剤、崩壊剤、加湿剤、乳化剤、懸濁剤、増粘剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、抗細菌剤、殺真菌剤、潤滑剤、及び持続性供給制御剤からなる群から選択される、少なくとも一つの成分を含んでなる組成物を意味し、その選択及び適した比率は、種類及び投与の種類及び方法並びに投与量に依存する。適した懸濁剤の例は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエテン、ソルビトール及びソルビトールエーテル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントゴム並びに同様にこれらの混合物である。微生物の作用に対する保護は、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、及び類似の化合物のような各種の抗細菌剤及び抗真菌剤によって提供されることができる。組成物は、更に、例えば、糖、塩化ナトリウム、及び類似の化合物のような等張剤を含んでなることができる。組成物の持続性作用は、活性成分の吸収を減速する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンによって達成することができる。適した担体、溶媒、希釈剤及び供給剤の例は、水、エタノール、ポリアルコール及びこれらの混合物、天然油(例えば、オリーブ油)、並びに注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)を含む。充填剤の例は、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等である。崩壊剤及び分散剤の例は、デンプン、アルギン酸、その塩、及びケイ酸塩である。適した潤滑剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク及び高分子量のポリエチレングリコールである。単独で或いはもう一つの活性化合物との組合せにおける活性成分の経口、舌下、経皮、筋肉内、静脈内、皮下、極腫又は直腸投与のための医薬組成物は、標準的な投与形態、又は伝統的な医薬的担体との混合物中でヒト及び動物に投与することができる。適した標準的な投与形態は、経口形態、例えば錠剤、ゼラチンカプセル、丸薬、粉末、顆粒、チューインガム及び経口溶液又は懸濁液;舌下及び経頬投与形態;エアゾール;インプラント;局所、経皮、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内又は眼内形態及び直腸投与形態を含む。
【0018】
“医薬的に受容可能な塩”は、本発明中に開示される比較的非毒性の酸及び塩基の有機又は無機塩の両方を意味する。これらの塩は、化合物の合成、単離又は精製の過程中にin situで調製することができるか、或いはこれらは、特別に調製することができた。特に、塩基の塩は、開示される化合物の精製された塩基及び適した有機又は無機酸から調製することができた。この様式で調製される塩の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩(valeriates)、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、スルファミン酸塩等を含む(このような塩の特性の詳細な説明は:Berge S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts”J.Pharm.Sci.,1977,66:1−19中に与えられている)。開示される酸の塩は、更に精製された酸の、特に適した塩基との反応によって調製することができる;更に、金属塩及びアミン塩も同様に合成することができる。金属塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム、リチウム及びアルミニウムの塩である;ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。金属塩を調製することができる適した無機塩基は、水酸化、炭酸、重炭酸及び水素化ナトリウム;水酸化、炭酸及び重炭酸カリウム;水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛である。開示される酸塩の調製のために適した有機塩基は、医薬目的の使用のために適した安定した塩(特に、これらは低い毒性のものである)を産生するために十分な強度の塩基のアミン及びアミノ酸である。このようなアミンは、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン、エチルピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等を含む。一方、塩は、幾つかの水酸化テトラアルキルアンモニウム、例えばコリン(holine)、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、等を使用して調製することができる。リシン、オルニチン及びアルギニンは、高い塩基性のアミノ酸として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本執筆者等は、以下の一般式1:
【0020】
【化2】
【0021】
[式中:
Rは、水素、所望により置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cアルケニル又はC−Cアルキニルであり;
Rfは、CHF又はCHFである]
の、以前には未知のフッ素置換(3R、4R、5S)−4−アセトアミド−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸及びそのエステル、並びに医薬的に受容可能なその塩及び/又は水和物である新規なノイラミニダーゼ阻害剤を見出している。
【0022】
オセルタミビルカルボン酸塩A2の有効性との比較において、一般式1の新規な化合物は、本執筆者等が予期せずに見出したように、5−259の係数で、幾つかの他のインフルエンザ株の遥かに有効なノイラミニダーゼ阻害剤である(表1)。
【0023】
【表1】
【0024】
一般式1の新規な化合物は、本執筆者等が見出したように、既知のザナミビル(Zan)と比較して、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼの更に有効な阻害剤であることが判明した(表2)。
【0025】
【表2】
【0026】
最後に、本執筆者等は、オセルタミビルカルボン酸塩及びザナミビルの両者と比較して、新しい化合物が、インフルエンザウイルス株Ia/California/07/09(H1N1)及び高度に病原性であるIa/duck/MN/1525/81(H5N1)株に対するMDCK細胞培養において更に有効であることを見出した(表3)。特に、(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1は、オセルタミビル(A2)より13の係数で、そしてザナミビル(Zan)より20の係数で、Ia/California/07/09(H1N1)株に対して更に活性であり、そして高度に病原性のIa/duck/MN/1525/81(H5N1)株に対するその活性は、オセルタミビルカルボン酸塩及びザナミビル(Zan)のそれより、それぞれ24及び16倍高い。
【0027】
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2−トリフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸A4は、ウイルスA/California/04/09に対してIC50=80nMの、そしてウイルスA/Vladivostok/16/09に対してIC50>1000nMのノイラミニダーゼ活性を示した。以前には未知であった(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1は、ウイルスA/California/04/09に対して、A4の活性より400倍大きいノイラミニダーゼ活性を有し、そしてウイルスA/California/04/09に対して、新規な酸1.1は、IC50=4nMを有し、即ち、これは、その既知の4−(2−トリフルオロアセトアミド)類似体より、250の係数で更に活性である。(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.4も、更にA4類似体より活性である:ウイルスA/California/04/09に対するそのノイラミニダーゼ活性は、IC50=0.3nMに対応し(即ち、これは、A2より2.7倍活性であり、そしてA4より267倍活性である);ウイルスA/Vladivostok/16/09に対して−新規な酸1.4は、IC50=7nMを示す(言い換えれば、これは、A2より118の係数で、そしてA4より140の係数で更に活性である)。
【0028】
【表3】
【0029】
本発明によれば、好ましい化合物は、Rが水素、メチル又はエチルである一般式1の化合物である。
【0030】
本発明によれば、一般式1の更に好ましい化合物は:(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−フルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸 1.1 並びにそのメチル(1.2)及びエチル(1.3)エステル;(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−ジフルオロアセトアミド−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸 1.4 並びにそのメチル(1.5)及びエチル(1.6)エステルである。
【0031】
【化3】
【0032】
一般式1のインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ阻害剤は、一般式2の4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸アルキルから出発して、以下に示すスキームによって調製することができた。
【0033】
【化4】
【0034】
一般式1の以前は未知であった(3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−及び(3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸であるインフルエンザウイルスの新規なノイラミニダーゼ阻害剤及びそのエステル並びに医薬的に受容可能なその塩は、更にインフルエンザウイルス肺炎の動物モデルにおいて高い抗インフルエンザ活性を示した。
【0035】
開示される化合物の抗ノイラミニダーゼ活性は、[Who Collaborating Centre for Reference & Research on Influenza,Australia,Standard Operating Procedure WHO−025.Reviewed by:Aeron Hurt,Senior Scientist Review Date:13/3/2009]中に記載された方法によって決定された。
【0036】
本発明によれば、一般式1の新規な化合物は、温血動物及びヒトのインフルエンザの予防並びに治療のための、医薬組成物及び最終剤形の調製のための活性成分である。
【0037】
本発明の対象は、活性成分として一般式1の化合物又は医薬的に受容可能なその塩を治療的に有効な量で含んでなる医薬組成物である。
【0038】
医薬組成物は、医薬的に受容可能な賦形剤を含むことができる。医薬的に受容可能な賦形剤は、薬剤学の分野で適用される希釈剤、補助剤及び/又は担体を意味する。本発明によれば、一般式1の化合物又は医薬的に受容可能なその塩及び/又は水和物と一緒の医薬組成物は、抗インフルエンザ活性を持つものを含む他の活性成分を、これらが好ましくない効果を起こさないことを条件に含むことができる。
【0039】
必要な場合、本発明によれば、医薬組成物は、前記組成物を伝統的な医薬的担体と混合することによって調製される各種の形態で、臨床治療で使用することができる。
【0040】
本発明によれば、医薬組成物中で使用される担体は、普通に使用される形態の調製のために薬剤学の分野において使用される担体である:結合剤、潤滑剤、崩壊剤、溶媒、希釈剤、安定剤、懸濁剤、着色剤、味覚風味剤は、経口形態のために使用される;防腐剤、可溶化剤、安定剤は、注射のための形態に使用される;基剤物質、希釈剤、潤滑剤、防腐剤は、局所形態で使用される。
【0041】
本発明の対象は、治療的に有効な量の少なくとも一つの一般式1の活性成分又は医薬的に受容可能なその塩を、不活性な充填剤及び/又は溶媒と混合することによる医薬組成物の調製のための方法である。
【0042】
本発明の対象は、更に、医薬的に受容可能な包装に入れられ、そしてヒト及び温血動物のインフルエンザの予防及び治療を意図し、そして治療的に有効な量の一般式1の新規な活性成分或いは一般式1の新規な活性成分を含んでなる医薬組成物を含んでなる、錠剤、カプセル又は注射の形態の抗インフルエンザ活性を示す薬剤である。
【0043】
本発明の対象は、更に、要素の一つとして、少なくとも一つの一般式1の化合物又は医薬的に受容可能なその塩及び/又は水和物を活性成分として含んでなる、新規な薬剤或いは新規な医薬組成物を含むインフルエンザを治療するための治療キットである。
【0044】
本発明によれば、インフルエンザを治療するための治療キットは、新規な薬剤と一緒に、インフルエンザの治療を意図する他の既知の薬剤、又は患者の免疫系を強化する薬剤を含むことができる。
【0045】
本発明によれば、ヒト及び動物のインフルエンザの予防並びに治療のための方法は、患者への新規な薬剤、新規な医薬組成物又は新規な治療キットの投与にある。
【0046】
開示される薬剤は、経口的に又は非経口的に(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は直腸的に)、或いは吸入器によって投与することができる。一般式1の活性成分の臨床投与量は:患者の器官中の活性成分の治療効率及び生体到達性、器官からのその交換及び除去の速度、並びに年齢、性別、及び患者の症状の重篤度によって修正することができる。従って、成人のための毎日の摂取量は、通常10〜500mg、好ましくは50〜300mgである。医薬組成物から投与量単位として薬剤を調製する場合、上記の有効な投与量を考慮しなければならず、ここにおいて、薬剤のそれぞれの投与単位は、10〜500mg、好ましくは50〜300mgを含有しなければならない。医師又は薬剤師の指示に従い、薬剤は、規定された時間にわたって数回(好ましくは、1ないし6回)摂取することができる。
【0047】
本発明の対象は、更に、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを含むin vivoのノイラミニダーゼ活性の阻害のための方法であり、これは、ノイラミニダーゼを、一般式1の化合物と接触させる段階を含んでなる。
【0048】
以下に、本発明は、具体的な実施例によって説明され、これらは、本発明の範囲を例示するが、しかしそれを制約するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1. (3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチルメシル酸塩 1.6・CHSOHの調製。 2,2−ジフルオロ酢酸3b(0.624g、0.0065mol、1.2当量)を、(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル(2g、0.0054mol、1当量)、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール−1−オール(0.867g、0.0065mol、1.2当量)、N−((エチルイミノ)メチレン)−N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミン塩酸塩(1.239g、0.0065mol、1.2当量)及びジイソプロピルエチルアミン(2.212g、0.0178mol、3.3当量)の、THF(20ml)中の溶液に滴下により加えた。反応混合物を室温で4時間撹拌した。次いで溶媒を真空中で蒸発し、残留油を酢酸エチル中に溶解し、5%NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発した。(3R、4R、5S)−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル4bの収率は、89%(2.15g)である。LCMS(M+H):実測値449;計算値448.51。調製された生成物4b(2.15g、0.0048mol)を、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸の10%溶液(20ml)中に溶解し、そして室温で12時間撹拌した。次いで溶媒を真空中で蒸発し、残留油を酢酸エチル中に溶解し、5%NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発した。生成物の収率は、96%(1.605g)である。更なる精製を、溶出剤としての酢酸エチル/THFによるカラムクロマトグラフィーによって、又はヘキサンからの生成物の再結晶化によって行った。これにより、(3R、4R、5S)−5−アミノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル5bを得て、これを塩化メチレン中に溶解し、そして当量のメタンスルホン酸を加えた。10分以内に溶媒を蒸発し、得られた生成物をヘキサンで洗浄し、そして真空中で蒸発した。メシル酸塩5b・CHSOHの収率は、90%である。LCMS(M+H):実測値349;計算値348.39。H NMR(DMSO−d),400MHz:8.91(d,J=13.2Hz,1H),7.83(br,3H),6.74(s,1H),6.22(t,J=54Hz,1H),4.31(d,J=8.4Hz,1H),4.16(q,J=7.2Hz,2H),3.45(m,1H),3.15(dd,J=11.2Hz,J=8.8Hz,1H),2.59(dd,J=18Hz,J=6Hz,1H),2.38(m,1Н),2.31(s,3Н),1.66(m,1Н),1.57(m,1Н),1.47(m,1Н),1.39(m,1Н),1.22(t,J=7.6Hz,3H),0.891(t,J=7.2Hz,3H),0.842(t,J=7.2Hz,3H)。氷浴中で冷却された(3R、4R、5S)−5−アミノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル5b(1.6g;0.004598mol;1当量)のDMF(16ml)中の溶液に、その後トリエチルアミン(2.57g;0.0253mol;5.5当量)、N,N’−ジ−boc−チオ尿素(0.00505mol;1.35g;1.1当量)及び塩化水銀(II)(0.0055mol;1.49g;1.2当量)を加えた。得られた混合物を氷浴で冷却しながら1.5時間撹拌した。反応が完結した後、固体をセライトを通して濾過し、DMFを真空中で蒸発し、残留油を酢酸エチル中に溶解し、5%NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発した。これにより、1.82g(67%)の(3R、4R、5S)−5−((Z)−2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル6bを得た。LCMS(M+H):実測値591;計算値590.67。(3R、4R、5S)−5−((Z)−2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル6b(1.82g;0.00308mol)の、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸の10%溶液(20ml)中の溶液を、室温で12時間撹拌した。次いで溶媒を真空中で蒸発し、残留油を酢酸エチル中に溶解し、5%NaHCOで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして真空中で蒸発した。これにより、1.1g(92%)の(3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル1.6を得た。調製した生成物の塩化メチレン中の溶液に、当量のメタンスルホン酸を加えた。10分以内に溶媒を蒸発し、生成物をヘキサンで洗浄し、そして真空中で乾燥した。これにより、(3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチルのメシル酸塩1.6・CHSOHを得て、収率は95%である。LCMS(M+H):実測値391;計算値390.43。H NMR(DMSO−d),400MHz:8.67(d,J=8.4Hz,1H),7.63(d,J=9.6Hz,1H),6.65(s,1H),6.27(t,J=53.6Hz,1H),4.14(q,J=7.2Hz,2H),4.12(m,7H),3.54(m,1H),3.41(m,1H),2.6(m,1H),2.36(s,3H),1.66(m,1H),1.44(m,4H),1.22(t,J=7.2Hz,3H),0.856(t,J=7.6Hz,3H),0.795(t,J=7.6Hz,3H)。
【0050】
類似の方法で、化合物1.7−(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸アリル(LCMS(M+H):実測値354;計算値353.44、(A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM)及び化合物1.8−(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸プロパ−2−イニル(LCMS(M+H):実測値352;計算値351.42、(A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM)が、出発物質として(化合物2として)、それぞれ(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸アリル及び(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸プロパ−2−イニルを使用した場合に調製された。
【0051】
対応する(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸塩を出発物質(化合物2)として使用して、以下の化合物を調製した:
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸2−シクロヘキシル1.9(LCMS(M+H):実測値460;計算値459.55、A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM;
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸2−フェニルエチル1.10(LCMS(M+H):実測値454;計算値453.51、A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM;
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸2−ピリジン−3−イルエチル1.11(LCMS(M+H):実測値455;計算値454.49、A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM);
(3R、4R、5S)−5−グアニジノ−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸2−メトキシエチル1.12(LCMS(M+H):実測値422;計算値421.46、A/California/04/09ウイルスに対してIC50<1nM)。
【0052】
実施例2. (3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチルのメシル酸塩1.3・CHSOHを、アシル化剤としてモノフルオロ酢酸を使用して、実施例1に与えた方法によって調製した。LCMS(M+H):実測値373;計算値372.44。
【0053】
実施例3. (3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.4。 水酸化リチウムの5%溶液(2.5ml)を、(3R、4R、5S)−5−((Z)−2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸エチル6b(250mg)の、ジオキサン(5ml)中の溶液に加え、そして反応混合物を室温で45分間撹拌した。次いで、酢酸(30mcl)を加えることによって水酸化リチウムを不動態化し、そして溶媒を真空中で蒸発した。得られた固体をイソプロピルアルコールで抽出し、抽出物をNaSOで乾燥し、そして真空中で蒸発した。これにより、(3R、4R、5S)−5−((Z)−2,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)グアニジノ)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸8b(200mg、84%)を得た。LCMS(M+H):実測値563;計算値562.62。得られた酸8b(200mg)を、塩化メチレン中のトリフルオロ酢酸の10%溶液(2ml)中に溶解し、そして室温で12時間撹拌した。次いで溶媒を真空中で蒸発した。(3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.4を、HPLC法によって分離した。LCMS(M+H):実測値363;計算値362.28。H NMR(DMSO−d),400MHz:8.68(d,J=8.4Hz,1H),7.6(d,J=10Hz,1H),7.26(br,2H),6.91(br,2H),6.63(s,1H),6.27(t,J=53.6Hz,1H),4.18(d,J=8Hz,2H),4.09(m,1H),3.54(q,J=10Hz,1H),3.39(m,2H),2.57(dd,J=18Hz,J=6Hz,1H),2.31(m,1H),1.44(m,4H),0.85(t,J=8Hz,3H),0.795(t,J=7.6Hz,3H)。
【0054】
実施例4. (3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1を、実施例3に与えた方法によって調製した。LCMS(M+H):実測値345;計算値345。H NMR(DMSO−d),400MHz:8.16(d,J=10Hz,1H),7.56(d,J=9.6Hz,1H),6.64(s,1H),4.80(d,J=47.3Hz,2H),4.21(d,J=8.4Hz,1H),3.89(q,J=10.4Hz,1H),3.71(m,1H),2.67(m,1H),2.25(m,1H),1.42(m,4H),0.85(t,J=7.2Hz,3H),0.78(t,J=7.2Hz,3H)。
【0055】
実施例5. (3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルのメシル酸塩1.2・CHSOHを、(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルを出発物質として、そしてモノフルオロ酢酸をアシル化剤として使用して、実施例1に与えた方法によって調製した。LCMS(M+H):実測値359;計算値358.42。
【0056】
実施例6. (3R、4R、5S)−4−(2,2−ジフルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルのメシル酸塩1.5・CHSOHを、(3R、4R、5S)−4−アミノ−5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸メチルを出発物質として、そしてジフルオロ酢酸をアシル化剤として使用して、実施例1に与えた方法によって調製した。LCMS(M+H):実測値373;計算値372.44。
【0057】
実施例7. 錠剤の形態の医薬組成物の調製。
【0058】
デンプン(1600mg)、顆粒化ラクトース(1600mg)、タルク(400mg)及び(3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1(1000mg)を、注意深く一緒に混合し、そして塊状に圧縮した。調製した塊を顆粒に粉砕し、そして篩を通して篩にかけ、14−16番メッシュの大きさの顆粒を収集した。得られた顆粒をそれぞれ560mgの重量の適した形態の錠剤にペレット化した。
【0059】
実施例8. カプセルの形態の医薬組成物の調製。 (3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1を、ラクトースの粉末と2:1の比で注意深く混合した。調製した粉末の混合物を、適した大きさのゼラチンカプセルに、それぞれ300mg充填した。
【0060】
実施例9. 筋肉内、腹腔内又は皮下注射のための注射の形態の医薬組成物の調製。 (3R、4R、5S)−4−(2−フルオロアセトアミド)−5−グアニジノ−3−(ペンタン−3−イルオキシ)シクロヘキセン−1−カルボン酸1.1(500mg)を、クロロブタノール(30mg)、プロピレングリコール(2ml)及び注射用水(100ml)と混合した。得られた溶液を、濾過し、そして1mlのアンプルに入れ、これを密封した。
【0061】
実施例10. 一般式1の化合物のインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに対する活性の決定。 予備的な実験において、インフルエンザのA/California/07/09(H1N1)及びA/Aichi/2/69(H3N2)ウイルス、並びにオセルタミビル細胞培養液中で調製された耐性インフルエンザウイルスA/Vladivostok/16/09(H1N1)の尿膜ウイルスの株に対する実験希釈度を決定した。この目的のために、丸底の96ウェルプレート中で、反応緩衝混合物(RBM、50mMのMES、5mMのCaCl、pH6.5)で2倍に希釈された60μlのそれぞれのウイルスを調製した。このプレートから、50μlの2倍希釈されたウイルスを、蛍光測定(FluoroNunc,black,kat.No.237105)のために、平底の96ウェルプレートに移し、次いで等体積の基質緩衝液(SB、12.5mMの2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミン酸、Sigma、40mMの酢酸緩衝液pH=5.8)をこれに加えた。対照として、このウェルが使用され、これにはウイルスの代わりに50μlのRBMがそのそれぞれに加えられた。37°で1時間、穏やかに振盪しながらプレートをインキュベーションした後、100μlの停止溶液(2.225mLの11.0mLのエタノール中の0.824MのNaOH)をそれぞれのウェルに加え、これに続いて、Varioskan Flach(Thermo Scientific)装置を使用して、λex=360nm及びλem=448nmで蛍光を測定した。更なる実験のために、蛍光の値に対するウイルス希釈度の影響曲線の直線部分の中間に対応するこれらのウイルス希釈度を選択した。抗ノイラミニダーゼ活性の決定のために、開示された化合物並びにその誘導体の式A2及びA4の希釈物(50μl、RBMで調製)を、蛍光測定(FluoroNunc,black,kat.No.237105)のための平底の96ウェルのBからHまでの列のウェルに加えた(使用した濃度−0.03;0.3;3;30;300;3000;30000nM−列のそれぞれの濃度)。A列のウェルをウイルスの対照として使用し、これにはウイルスの代わりに等体積(50μl)のRBMを加えた。次いで対応するウェルに、50μlの選択された実験希釈度のそれぞれのウイルス(RBM)を加えた。対照としてこのウェルを使用し、これにはウイルスの代わりに等体積のRBMを加えた。45分間の室温における撹拌及びインキュベーション後、全てのウェルに等体積のRBMを加えた。繰返しの1時間の37°におけるプレートの撹拌及びインキュベーション後、100μlの量の停止溶液をそれぞれのウェルに加えた。蛍光の測定を、Varioskan Flach(Thermo Scientific)装置を使用して、λex=360nm及びλem=448nmで行った。全ての決定は、少なくとも二重(プレートの二つのウェル)で行った。一般式1の試験化合物によるノイラミニダーゼ活性の阻害のパーセントを、式:阻害%=100−(SUF実験−SUF対照/化合物の非存在のSUFウイルス対照−SUF対照)によって計算し、ここにおいて、SUFは、蛍光の基準単位である)。SUF値が50%減少される化合物の濃度を、阻害濃度50(IC50)として採用した。
【0062】
実施例11. マウスのインフルエンザ肺炎のモデルに対する一般式1の化合物(1.1.、1.3.、1.4及び1.6)の抗インフルエンザ活性の調査。 事前秤量されたマウス(メス、非線形(non−linear)、平均体重12−15g)を、インフルエンザウイルスA/Aichi/2/69(H3N2)(50μl中の10×LD50)で、軽いエーテル麻酔下の鼻腔内導入によって感染した。LD50の決定は、その後の主実験において使用されるものと同じマウスを使用して尿膜ウイルス滴定による予備実験において行った。次のスキームによる処置を使用した:マウスに:感染の24時間及び1時間前に2回、感染後24時間目に、そして次いで続く5日間に一日1回注射した。経口投与のために、特別な針(洗浄)を持つ使い捨てのインスリンシリンジを使用した;次の投与量:100μlの体積中の25mg/kg/日のそれぞれの化合物の効果を調査した。参照化合物として、5mg/kg/日から30mg/kg/日までの範囲の投与量のタミフルを使用した。“ウイルス対照”の群、並びに一般式1の化合物又は式A3のタミフルで“化合物で処置された”マウスのそれぞれの群に、10匹のマウスが存在した。“処置された”及び対照のマウスは、毎日観察された;感染後の最初の5日間、これらは、毎日、更に1日−秤量された。マウスのインフルエンザ肺炎のモデルにおける化合物の化学療法活性を、致死性ウイルス感染に対する保護の指数、及び対照群のマウスの体重と比較した、試験化合物で処置されたマウスの群の体重の損失によって推定した。体重の低下又は増加を、それぞれのマウスに対して個々に計算し、そしてパーセントで表示した。感染の前のマウスの体重を100%として採用した。一つの群の全てのマウスに対して、体重損失並びに体重獲得の平均パーセントを決定した。
【0063】
予備実験において、100μlの体積中に10×LD50を含有するウイルスの投与量を決定した。次いで群の全てのマウスをこの投与量で感染した。マウスのインフルエンザ肺炎のモデルに対する一般式1の化合物の有効性を、ウイルス感染後に生存したマウスの数によって、感染されたマウスの平均生存時間及び体重の変化の平均によって推定した。
【0064】
観察の7日目に、ウイルスで感染し、そして試験化合物で処置されなかった(“ウイルス対照”群)全てのマウスが死亡したことが見いだされた。
【0065】
実験は、“ウイルス対照”群の最後のマウスが死んだ時点までに、一般式1の化合物及びタミフルで処置された(“化合物で処置された”)マウスの死が、完全に防止されたことを示した。
【0066】
一般式1の試験化合物及び式A3のタミフルの抗インフルエンザ作用は、“ウイルス対照”の群と比較して“処置されたマウス”の群の体重損失を減速することである。マウスの体重損失は、インフルエンザ肺炎の臨床的暗示の一つである。疾病の更に重篤な経過は、常にマウスのより大きい体重損失によって伴われる。マウスの秤量は、感染後1、2、3、4及び5日目に、次いで一日おきに観察の15日目まで行われた。“ウイルス対照”群のマウスにおいて、最大の体重損失は、感染後5日目に観察されたことが見いだされた(約10%)。“ウイルス対照”群のマウスとは対照的に、一般式1の化合物及びタミフルで処置されたマウスは、平均的に体重を損失しなかった。“処置された群”の全てのマウスは、9日目から始まって大幅に、そして着実に体重を獲得した。
【0067】
従って、マウスのインフルエンザ肺炎の治療における式1.1、1.3、1.4、及び1.6の化合物の高い効率が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、医学及び獣医学において使用することができる。