(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁ハウジング(44)内に設けられた孔(42)の中に配置された弁部材(46)を備える、燃料噴射器(30)の制御室(34)内の燃料圧力を制御するための制御弁組立体(36)であって、前記弁部材(46)および前記弁ハウジング(44)のうちの少なくとも一方が、他方に対して移動可能で、前記弁部材(46)が、前記弁部材(46)の少なくとも一部分を変形させて、その外側寸法を増大させる燃料を受け入れるように配置された燃料受入れ空洞(78)を備えており、
前記燃料受入れ空洞(78)が穿孔された空洞であり、
前記穿孔された空洞(78)が挿入具(82)によって塞がれる、制御弁組立体(36)。
前記弁部材(46)および前記弁ハウジング(44)のうちの少なくとも一方が、前記制御室(34)内の燃料圧力を制御するように弁座(58)と係合可能であり、前記燃料受入れ空洞(78)内の燃料圧力は、前記弁部材(46)が前記弁座(58)と係合しているか否かに応じて可変である、請求項1に記載の制御弁組立体(36)。
前記弁部材(46)が、前記燃料受入れ空洞(78)を取り囲む環状壁(76)を備えており、前記燃料受入れ空洞(78)内に受け入れられた燃料が、前記環状壁(76)の少なくとも一部分に半径方向外向きの力を加えてその外径を増大させる、請求項1または2に記載の制御弁組立体(36)。
前記弁部材(46)が、前記孔(42)内を密接して摺動するように嵌合した状態で配置された弁体(72)を備え、前記燃料受入れ空洞(78)の少なくとも一部分が前記弁体(72)内に延在する、請求項1から3のいずれかに記載の制御弁組立体(36)。
前記孔(42)が高圧燃料供給部(48)からの燃料を受け入れるように配置され、前記孔(42)に受け入れられた燃料が、前記弁ハウジングおよび/または前記弁部材(46)を変形させて、前記弁体(72)と前記孔(42)の壁(56)との間に画定された半径方向隙間(74)を増大させるように作用する、請求項4に記載の制御弁組立体(36)。
前記孔(42)が、前記高圧燃料供給部(48)からの燃料を受け入れるための燃料溜め(54)を画定し、前記燃料溜め(54)内に受け入れられた燃料が、前記弁ハウジング(44)および/または前記弁部材(46)を変形させて、前記半径方向隙間(74)を増大させるように作用する、請求項5に記載の制御弁組立体(36)。
前記燃料受入れ空洞(78)内に受け入れられた燃料が、前記弁体(72)を変形させて、前記孔(42)内に受け入れられた前記燃料によって引き起こされる前記半径方向隙間(74)の増大を少なくとも部分的に相殺するように作用する、請求項6に記載の制御弁組立体(36)。
前記燃料受入れ空洞(78)が前記燃料溜め(54)と流体連通しており、前記燃料受入れ空洞(78)内の燃料圧力が、前記燃料溜め(54)内の燃料圧力と実質的に同じである、請求項6または7に記載の制御弁組立体(36)。
燃料が前記孔(42)および前記燃料受入れ空洞(78)に存在しないとき、前記弁体(72)が実質的に一定の外径を有する、請求項4から9のいずれかに記載の制御弁組立体(36)。
前記制御室(34)、前記燃料受入れ空洞(78)、および高圧燃料供給部(48)が相互に流体連通して配置される第1の位置と、前記制御室(34)が低圧燃料排出部と流体連通する第2の位置との間を、前記弁部材(46)および前記弁ハウジング(44)のうちの少なくとも一方が他方に対して移動可能である、請求項1から10のいずれかに記載の制御弁組立体(36)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような制御弁では、流路24内の燃料は漏れやすく、それは燃料の損失につながり、したがって、エネルギーの損失につながる。このエネルギーの損失は、エンジン効率を低下させ、その結果、CO
2排出を増加させるので、望ましくない。
【0006】
漏れは、弁10が開動作および/または閉動作中に生じる場合があり、これは動的漏れとして知られ、かつ/または、制御弁10が閉位置のときは、静的漏れとして知られている。制御弁10はそのほとんどの使用時間で閉位置にあるので、静的漏れは特に重大である。静的漏れが生じる主な源は、弁部材14とその周りのハウジング16との間の隙間26である。弁部材14がハウジング16に対して摺動可能とするために、隙間26は存在しなければならないが、隙間26は、高圧燃料が制御弁10の流路22から漏れ出る可能性がある望ましくない経路となる。
【0007】
制御弁10が閉位置にあるとき、制御弁内の流路22には高圧燃料が入っていることが理解されよう。今日の燃料噴射器の高い作動圧が意味することは、流路22内の燃料は典型的には少なくとも200メガパスカル(2000バール)の圧力で、流路22内の燃料が周りの構成部品に圧力をかけるのに大きく、したがって重体な変形を引き起こすには十分に高いということである。
【0008】
詳細には、流路22内の高圧燃料はハウジング16に半径方向外向きの力をかけ、弁部材14に半径方向内向きの力をかける。変形は、流路22の領域で、2つの構成部品を引き離す。流路22から離れると、歪みは小さくなる。しかしながら、歪みは徐々に小さくなるので、弁部材14とハウジング16との間の隙間26の領域においては、ハウジング16と弁部材14は依然として変形を受ける。この変形は、弁部材14とハウジング16との間の隙間26の寸法を増大させ、したがって、漏れの傾向を増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の不都合な点に対処する観点で、本発明は、内燃機関の燃料噴射システム用の改良された制御弁組立体を提供する。
【0010】
この背景に対して、本発明の第1の態様は、弁ハウジング内に設けられた孔の中に配置された弁部材を備える、燃料噴射器の制御室内の燃料圧力を制御するための制御弁組立体であって、弁部材および弁ハウジングのうちの少なくとも一方が、他方に対して移動可能で、弁部材が、弁部材の少なくとも一部分を変形させて、その外側寸法を増大させる燃料を受け入れるように配置された燃料受入れ空洞を備える、制御弁組立体にある。
【0011】
本発明は、制御弁内の孔の中の燃料によって引き起こされる望ましくない変形の影響を相殺することができる制御弁組立体を提供する。望ましくない変形の影響は、孔の直径を増大させようとし、それは弁部材と弁ハウジングとの間の漏れを生じさせる。本発明の制御弁では、これらの影響は、弁部材に設けられた燃料受入れ空洞によって打ち消される。燃料受入れ空洞内に受け入れられた燃料によって弁部材を意図的に変形させ、それによって、弁部材の外径を増大させて、孔の直径の増大を補償する。変形の影響を打ち消すことによって、弁部材と弁ハウジングとの間での、制御弁からの燃料の漏れは低減される。これによって、エネルギー消費は減少し、したがって本制御弁組立体を備えたエンジンの効率が増大する。
【0012】
弁部材および弁ハウジングのうちの少なくとも一方が、制御室内の燃料圧力を制御するように弁座と係合可能であり、燃料受入れ空洞内の燃料圧力は、弁部材が弁座と係合しているか否かに応じて可変であることが好ましい。このようにして、燃料受入れ空洞内の圧力は制御弁内の圧力に釣り合うように変えることができ、その結果、弁部材は、必要とする程度だけ意図的に変形される。
【0013】
好ましい実施形態では、弁部材は、燃料受入れ空洞を取り囲む環状壁を備えており、燃料受入れ空洞内に受け入れられた燃料が、環状壁の少なくとも一部分に半径方向外向きの力をかけてその外径を増大させる。環状壁は、燃料受入れ空洞内の燃料によって、容易に、かつ均一に変形され、それは、意図的な変形の結果として弁部材および弁ハウジングにかかる応力を低減する。
【0014】
弁部材は、孔内に密接して摺動するように嵌合した状態で配置された弁体を備えることができ、燃料受入れ空洞の少なくとも一部分は弁体内に延在することができる。弁部材と弁ハウジングとの間の漏れは、密接に摺動するように嵌っている領域では特に顕著である、したがって、燃料受入れ空洞の少なくとも一部分を弁体内に延在させることは、この領域の変形を相殺し、それによってさらに漏れを低減することを確実にすることを都合よく助ける。
【0015】
孔は高圧燃料供給部からの燃料を受け入れるように配置されるのが好ましい。この場合、孔に受け入れられた燃料は、弁ハウジングおよび/または弁部材を変形させて、弁体と孔の壁との間に画定された半径方向隙間を増大させるように作用する。この実施形態では、孔は、高圧燃料供給部からの燃料を受け入れるための燃料溜めを画定することができ、燃料溜め内に受け入れられた燃料は、弁ハウジングおよび/または弁部材を変形させて、半径方向隙間を増大させるように作用する。
【0016】
この場合、燃料受入れ空洞内に受け入れられた燃料は、弁体を変形させて、孔内に受け入れられた燃料によって引き起こされる半径方向隙間の増大を少なくとも部分的に相殺するように作用するのが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態では、燃料受入れ空洞は燃料溜めと流体連通しており、燃料受入れ空洞内の燃料圧力は、燃料溜め内の燃料圧力と実質的に同じである。燃料溜めおよび燃料受入れ空洞の燃料圧力が確実に同じであることは、例えば、燃料受入れ空洞内の圧力が低すぎて、その結果、弁部材の外径が十分に増大せず、隙間が大きくなりすぎたままとなって著しい漏れを生じさせるという状態を防止し、かつ、燃料受入れ空洞内の圧力が高すぎて、その結果、弁部材の外径が増大しすぎて、弁部材と弁ハウジングとの間の摩擦が許容できない程度になる状態もまた防止する。
【0018】
燃料受入れ空洞は、燃料受入れ空洞と燃料溜めを流体連通する交差穴などの入口によって、燃料溜めと流体連通して配置されるのが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、燃料が孔および燃料受入れ空洞に存在しないとき、弁体は実質的に一定の外径を有する。
【0020】
製造を容易にするため、燃料受入れ空洞は穿孔された空洞であるのが好ましい。燃料が燃料受入れ空洞から逃げるのを防ぐために、穿孔された空洞は挿入具によってふさぐことができる。
【0021】
噴射弁の制御室の圧力を制御するために、制御室、燃料受入れ空洞、および高圧燃料供給部が相互に流体連通して配置される第1の位置と、制御室が低圧燃料排出部と流体連通する第2の位置との間を、弁部材および孔のうちの少なくとも一方が他方に対して移動可能であることが好ましい。例えば、弁部材は弁ハウジングに対して移動可能であってもよい。これに代えて、弁ハウジングが弁部材に対して移動可能であってもよい。
【0022】
本発明はまた、第2の態様において、上記の制御弁組立体、制御室、および噴射ノズルを備える燃料噴射器であって、制御室が、弁ニードルの動きを制御して噴射ノズルからの燃料の噴射を制御するように配置された、燃料噴射器に拡張する。
【0023】
本発明の第1の態様の好ましい特徴および/または任意に選択した特徴が、単独で、または適切に組み合わされて本発明の第2の態様に組み入れることができることが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書の残り部分を通じて、「上で(above)」、「下で(below)」、「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」などの用語は、添付の図面の制御弁の配向に関して使用される。しかしながら、本発明による制御弁はいかなる配向でも使用することができることが理解されよう。「上流(upstream)」および「下流(downstream)」などの用語は、制御弁の使用時、制御弁が開弁または閉弁している間の燃料流の方向に関して使用される、あるいは、文脈で要求される場合に使用される。
【0026】
図2を参照すると、内燃機関のエンジンシリンダ(図示せず)へ燃料を送達するのに使用するための燃料噴射器30は、噴射ノズル32、制御室34、および、本発明による制御弁36を備える。噴射ノズル32は、燃料をエンジンシリンダ内に送達することができる開位置と燃料の送達が止められる閉位置との間を、噴射弁座(図示せず)に対して移動可能な弁ニードル38を備える。
【0027】
制御室34には弁ピン38の端部40に閉弁力をかける燃料が入っており、それは、弁ピン38を噴射弁座に押し付けるように働く。制御弁36は制御室34内の燃料の圧力を制御して、閉弁力を制御し、弁ピン38を開位置と閉位置との間を移動させる。
【0028】
図3は、本発明による制御弁36を、燃料噴射器30の残りの部分から離して示す。制御弁は、ここでは制御弁ブロックとして例示された弁ハウジング44内に画定される孔42、およびここでは弁ステムとして例示され、孔42内に摺動可能に受け入れられる弁部材46を備える。
【0029】
弁ハウジング内の穿孔48は、高圧燃料を制御弁36の孔42および制御室34に供給する高圧燃料供給部を画定する。主穿孔50は高圧燃料を制御弁36の孔42に送達し、副穿孔52は、制御弁36の下流で主穿孔から分岐して、燃料を制御室34に送達する。孔42は、弁ステム46と孔42の壁56との間に設けられた空間によって画定される環状の燃料溜め(換言すれば、燃料通路)54を経由して、高圧燃料供給部48から高圧燃料を受け入れるように配置される。
【0030】
孔42の壁56は、燃料溜め54の上に、全体として58で示される円錐台形面60の形態の弁座を備える。弁ステム46は、これに対応する、相補的な形状と寸法の円錐台形面62を備えており、その結果、弁ステム46は弁座58と係合可能である。
【0031】
上方に動くと、孔42は、弁座58の上で、孔42の壁の出口開口64を経由して低圧燃料排出部(図示せず)と連通する。低圧燃料排出部は、燃料を孔42から排出する弁ハウジング44内のさらなる穿孔66と連通し、その結果、燃料の体積を増大させ、したがって、制御弁36内の燃料の圧力を下げる。
【0032】
上方に動き続けると、弁ステム46の最上部68は、ソレノイドまたは圧電アクチュエータなどのアクチュエータ70と接触するように配置される。アクチュエータ70は、弁ステム46の最上部68に作用して、弁ステム46を下方に動かして弁座58と係合させるか、または上方に動かして弁座58と係合させないかいずれかにする。
【0033】
このようにして、弁ステム46は、詳細を後述するように、
図3に示す、弁ステム46が弁座58と当接する第1すなわち閉位置と、
図4に示す、弁ステム46が弁座58から離間する第2すなわち開位置との間で、孔42内を移動可能である。
【0034】
次に弁ステム46をさらに詳細に考察すると、燃料溜め54の下に位置する弁ステム46の下部は弁ステム46の弁体72を画定する。弁体72は、実質的に円筒形で、実質的に一定の半径である。弁体72は、孔42内を密接して摺動するように嵌った状態で配置される。詳細には、弁体72を取り囲む孔42の部分は、実質的に一定の半径で、その半径は弁体72の半径よりもわずかに大きい。このようにして、狭い隙間74が弁ステム46の弁体72と孔42の壁56との間に設けられ、その結果、弁ステム46と弁ハウジング72との間の相対的な摺動が可能となる。典型的には、隙間74は数ミクロン程度である。
【0035】
弁ステム46の弁体72は実質的に中空である。詳細には、弁ステム46の弁体72は、燃料受入れ空洞78を取り囲む環状壁76を備える。内部空洞の直径は、弁ステムの直径のほぼ30%とほぼ60%との間である。
【0036】
燃料受入れ空洞78は、例えば、弁体72の最下端80を穿孔し、最下端を挿入具82でふさぐことによって形成される。挿入具82は、例えば溶接によって、環状壁76の内側表面84に対して漏れのないように封止される。
【0037】
弁体72の最下端80から上に移ると、燃料受入れ空洞78は弁体72の長さにわたって長手方向に延在する。燃料受入れ空洞78は弁ステム46の弁体72を通り越して続き、孔42の燃料溜め54によって囲まれる弁ステム46の小さな半径の領域にまで延在する。燃料受入れ空洞78はこの小さな半径の領域で終端し、その結果、燃料受入れ空洞78は燃料溜め56を越えては延在しない。
【0038】
燃料受入れ空洞78の最上端86には、1つまたは複数の入口88が交差穴の形態で設けられる。入口88は、燃料受入れ空洞78と燃料溜め54との間を延在するように配置されており、その結果、燃料は燃料溜め54から燃料受入れ空洞78の中に流れることができる。弁ステム46の最下端80に設けられた挿入具82によって、燃料は燃料受入れ空洞78から流れ出ることが防止されることが理解されよう。
【0039】
交差穴88から上方に弁ステム46の中央部が続き、それは、弁ステム46の円錐台形面62につながり、その領域で、弁ステム46の半径は徐々に増大して、弁体72の半径と実質的に同じになる。円錐台形面62の上で、低圧通路66の領域および弁ステム46の最上部の領域で、弁ステム46には非貫通穿孔90が設けられる。この非貫通穿孔90は、本出願人の公開特許出願WO2004/005702に記述されているように、低圧排出部への流れを制限する。
【0040】
次に、それぞれ閉位置および開位置にある制御弁36を示す
図3および4を特に参照して、制御弁36への燃料の流れ、制御弁36からの燃料の流れ、および制御弁36内の燃料の流れを説明する。
【0041】
まず、
図3を参照すると、制御弁36が閉位置にあるとき、弁ステム46の円錐台形面62は弁座58の円錐台形面60に当接する。このようにして、燃料溜め54と低圧通路66との間の燃料経路はふさがれる。したがって、高圧燃料供給部48、制御室34、燃料溜め54、および燃料受入れ空洞78は相互に連通しており、高圧燃料はそれらの間を流れることはできるが、排出部への低圧通路66の流体連通は遮断される。したがって、制御弁36内の燃料は、排出されて低圧になることはできない。それゆえ、制御弁36内の燃料、したがって制御室34内の燃料は比較的高圧のままである。
【0042】
制御弁36が閉位置にあるとき、燃料溜め54および燃料受入れ空洞78には高圧燃料が入っていることが理解されよう。燃料溜め54内の高圧燃料は、燃料溜め54の領域では、弁ステム46に半径方向内向きの力をかけ、孔42の壁56に半径方向外向きの力をかける。これは、弁ステム46および孔42の壁56に弾性変形を生じさせ、弁ステム46の外径を縮小させ、孔42の内径を増大させようとする。
【0043】
説明したように、この弾性変形は燃料溜め54から離れると小さくなるが、それは非常に漸進的であり、歪みは弁ステム46および孔42の壁56に残る。したがって、弁ステム46の弁体72では、弾性歪みは弁ステム46の外径を縮小し、孔42の内径を増大させようとし、それによって、弁体72の領域で弁ステム46と孔42との間の隙間74を増大させる。この歪みは燃料溜め54の近くで最も大きく、弁ステム46の最下端80へ向かって徐々に小さくなる。
【0044】
しかしながら、制御弁36が閉位置にあるとき、弁ステム46内の燃料受入れ空洞78もまた、入口88を経由して燃料溜め54から高圧燃料を受け入れる。燃料受入れ空洞78内のこの高圧燃料は、弁ステム46の弁体72の環状壁76に半径方向外向きの力をかける。
【0045】
燃料受入れ空洞78内の燃料によってかけられた半径方向外向きの力は、弁ステム46の環状壁76を外向きに変形させる。詳細には、半径方向外向きの力は環状壁76を弾性的に変形させ、その結果、その外寸をかなり増大させる。環状壁76は均一の厚さで、燃料によって加えられた圧力は均一であるので、変形の結果、弁ステム46の弁体72の外径を明らかに増大させる。
【0046】
したがって、燃料溜め54内の高圧燃料が弁ステム46の外径を縮小させ、孔42の直径を増大させる傾向は、燃料受入れ空洞78内の燃料が弁ステム46の外径を増大させる傾向によって相殺される。最終的な結果としては、本発明による制御弁36では、弁ステム46と制御弁36の孔42との間の隙間74は、高圧燃料の存在によってもそれほど増大しない。したがって、本発明による制御弁36の弁ステム46と孔42との間の漏れのおそれは、公知の制御弁よりもかなり低い。
【0047】
前述したように、制御弁36は、そのほとんどの使用時間で閉位置にある。したがって、制御弁36が閉位置にあるときの、弁ステム46と孔42の壁56との間からの漏れやすさを低減することは、制御弁36の全体の動作時の漏れに大きな効果がある。
【0048】
次に、
図4を参照して、制御弁36が開位置にあるとき、弁ステム46は弁座58から離間し、その結果、燃料は燃料溜め54と低圧排出部66との間を流れることができる。したがって、制御弁36が開位置にあるとき、高圧燃料供給部48、制御室34、燃料溜め42、燃料受入れ空洞78、および低圧燃料排出部66は相互に流体連通している。したがって、燃料は低圧燃料排出部66へ流れることができ、制御弁36内の燃料および制御室34内の燃料は比較的低い圧力である。
【0049】
したがって、制御弁36が開位置にあるとき、燃料溜め42および燃料受入れ空洞78内の燃料は比較的低い圧力である。燃料溜め42内の燃料は、孔42の壁56に半径方向外向きの比較的低い力を、かつ弁ステム46に半径方向内向きの比較的低い力をかけ、それは比較的低いレベルの変形を生じさせる。同様に、燃料受入れ空洞78内の燃料は、弁ステム46の環状壁76に半径方向外向きの比較的低い力をかけ(制御弁36が閉じているときに比べて)、それは対応する小さな変形を生じさせ、燃料溜め42内の燃料によって生じる変形と相殺する。
【0050】
燃料溜め54と燃料受入れ空洞78との間に交差穴88があることは、燃料溜め54内の燃料圧力が、燃料受入れ空洞78内の燃料圧力と常に平衡状態にあることを意味することが理解されよう。このようにして、燃料受入れ空洞78内の燃料圧力は燃料溜め54内の圧力とともに変動し、したがって、制御弁36が開いているか、閉じているかに応じて変化する。したがって、燃料受入れ空洞78内の燃料は、弁ステム46の弁体72と孔42の壁56との間の隙間74を実質的に一定に保つのに必要な程度に弁体の環状壁76を変動させるだけである。
【0051】
燃料溜め54と燃料受入れ空洞78との間が平衡状態にあることは、例えば、燃料受入れ空洞78内の圧力が低すぎて、その結果、弁ステム46の外径が十分に増大せず、弁ステム46と孔42との間の隙間74が大きくなりすぎたままとなって著しい漏れを生じさせるという状態を防止する。この平衡状態はまた、燃料受入れ空洞78内の圧力が高すぎて、その結果、弁ステム46の外径が増大しすぎて、弁ステム46と孔42の壁56との間の摩擦が許容できない程度になる、または弁ステム46および/またはハウジング44に損傷を引き起こすという状態を防止する。
【0052】
噴射弁30の使用時、制御弁36は最初、弁ステム46を弁座58に当てるよう機械的に偏倚させるばね(図示せず)によって閉位置に偏倚される。この閉位置では、制御室34と低圧排出部66との間の流体連通は遮断されている。高圧燃料供給部48、制御室34、燃料溜め54、および燃料受入れ空洞78は相互に流体連通しており、その結果、それらにはすべて高圧燃料が入っている。
【0053】
燃料溜め54内の高圧燃料は、孔42の壁56および弁ステム46に比較的高い半径方向の力をかけ、孔42の壁56と弁ステム46の弁体72との間の隙間74を増大させようとするが、これは、燃料受入れ空洞78内の高圧燃料が弁ステム46の弁体72の環状壁76に比較的高い半径方向外向きの力をかけ、それによって外径を比較的大きな量だけ増大させることによって補償される。このようにして、燃料受入れ空洞78を設けることは、制御弁36が閉位置にあるとき、隙間74を狭くし、孔42の壁56と弁ステム46との間の漏れを防止する。
【0054】
閉位置にある制御弁36では、制御室34内の高圧燃料は噴射ノズル32の弁ピン38に比較的高い閉弁力をかけ、それによって、弁ピン38を噴射弁座に当てて保持する。したがって、噴射ノズル32は閉位置に保持され、その結果、燃料がエンジンシリンダに入るのを防ぐ。
【0055】
噴射事象をトリガするために、アクチュエータ70は、電流または電圧の印加によって作動させられる。アクチュエータ70は、ばねの付勢に対抗して制御弁36の弁ステム46を上方に上げて、開位置になるように作用し、その結果、弁ステム46は上がって弁座58との係合が解かれる。開位置では、高圧燃料供給部、制御室34、燃料溜め54、燃料受入れ空洞78、および低圧排出部は相互に流体連通するように配置され、その結果、それらにはすべて比較的低圧の燃料が入る。
【0056】
開位置では、燃料溜め54内の比較的低い圧力の燃料が、孔42の壁56および弁ステム46に比較的低い半径方向の力をかけ、孔42の壁56と弁ステム46の弁体72との間の隙間74を比較的小さな量だけ増大させようとする。これは、燃料受入れ空洞78内の比較的低い圧力の燃料が弁ステム46の弁体72の環状壁76に比較的低い半径方向外向きの力をかけ、それによって外径をそれに応じた小さな量だけ増大させることによって補償される。このようにして、燃料受入れ空洞78を設けることは、制御弁36が開位置にあるとき、孔42の壁56と弁ステム46との間の漏れを防止する。
【0057】
開位置にある制御弁36では、制御室34内の比較的低い圧力の燃料は噴射ノズル32の弁ピン38に比較的低い閉弁力をかける。この低い閉弁力は、弁ピン38を噴射弁座に当てて保持するには不十分である。したがって、噴射ノズル32は開位置に動き、その結果、燃料はエンジンシリンダ内に噴射される。
【0058】
噴射が完了すると、電流または電圧は制御弁36のアクチュエータ70から取り除かれる。ばねは制御弁36を付勢してもう一度閉位置にし、制御弁36は次の噴射事象まで閉位置にとどまる。
【0059】
図5および6は、本発明による制御弁36の第2の実施形態を示し、ここでは、同様の番号は同様の部品に対応する。この代替の実施形態では、制御弁36は、弁ピンの形態の弁部材46を備え、弁部材46は、弁ステム44の形態のハウジング44内に設けられた孔に受け入れられる。弁ステム44は、弁ブロック94内に設けられたさらなる孔92内に配置される。弁ステム44は、さらなる孔92内で摺動可能であり、その結果、弁ステム44は、弁ピン46に対して、かつ弁ブロック94に対して移動可能である。
【0060】
第1の実施形態では、弁部材46(弁ステムの形態)は移動可能で、一方、弁ハウジング44(制御弁ブロックの形態)は静止したままであったが、第2の形態では、第1の実施形態とは対照的に、弁部材46(弁ピンの形態)は静止したままであるが、弁ハウジング44(弁ステムの形態)は移動可能である。両実施形態とも、弁部材46とハウジング44との間で相対的な摺動が生じることが理解されよう。両実施形態とも、別の言い方をすれば、弁部材46およびハウジング44のうちの少なくとも一方は他方に対して移動可能である。
【0061】
さらに
図5および6を参照すると、弁ステム44の移動は、弁ステム44の最上端に配置されたアクチュエータ70によって作動させられる。弁ステム44は、第1すなわち閉位置において、
図5に示すように、ばね96によって下方に付勢されて弁座58と係合し、また、アクチュエータ70は、
図6に示すように、ばね96に対抗して弁ステム44を上方に動かすように作用して開位置にする。
【0062】
アクチュエータ70から離れた、制御弁36の最下端において、さらなる孔92は、円錐台形面60の形態の弁座58を備える。弁座58の領域では、弁ステム44は、これに対応する、相補的な形状と寸法の円錐台形面62を備えており、その結果、弁ステム44は弁座58と係合可能である。
【0063】
弁座58の下で、高圧燃料供給部48は、弁ステム44内の孔42内に通じている。高圧燃料は、入口97を経由して弁ステム44にその最下端から入る。弁座58の上では、低圧燃料通路66によって、孔42からの燃料は低圧排出部(図示せず)に流れることができる。
図7に示すように、低圧経路99が、弁ステム44と弁ブロック94との間に追加される。この低圧燃料経路99を設けるために、弁ステム44は、
図7に示すような三葉形態とすることができる、または、
図8aおよび8bに示すように、弁ステム44の外面に線形または曲がりくねった溝100を設けることができる。
【0064】
このように、弁座58は高圧燃料供給入口96と低圧燃料通路66の間にある。したがって、
図5に示すように、弁ステム44が閉位置にあるとき、高圧燃料供給部48と低圧排出部との間の流体連通は遮断される。
図6に示すように、弁ステム44が開位置にあるとき、高圧燃料供給部48と低圧排出部との間の流体連通は開通状態にある。
【0065】
次に、弁ピン46をさらに詳細に考察すると、弁ピン46の下部は、弁ピン46の弁体72を画定し、それは実質的に円筒形で、実質的に一定の半径である。弁体72は、弁ステム44の孔92内を密接して摺動するように嵌った状態で配置され、狭い隙間74が弁ピン46の弁体72と周囲の孔42の壁56との間に設けられ、その結果、弁ピン46と周囲の孔92との間の摺動が可能となる。典型的には、隙間74は数ミクロン程度である。
【0066】
弁ピン46には、弁体72の長さにわたって延在する燃料受入れ空洞78が設けられる。詳細には、弁ピン46の弁体72は、燃料受入れ空洞78を取り囲む環状壁76を備える。この実施例では、燃料受入れ空洞78は、弁ピン46の最下端に通じており、その結果、弁ピン46の端部は、燃料が燃料受入れ空洞78内に流れることができる入口98の形態の燃料溜めを画定する。このようにして、燃料受入れ空洞78は弁ステム44の孔42と流体連通している。
【0067】
弁ステム44が
図5に示す閉位置に配置されるとき、弁ステム44の孔42および燃料受入れ空洞78には共に高圧燃料が入っている。孔42内の高圧燃料は、孔42の壁56に半径方向外向きの力を、かつ弁ピン46に半径方向内向きの力をかけ、すでに第1の実施例を参照して説明したように、それらの間の隙間74を増大させようとする。しかしながら、燃料受入れ空洞78内の高圧燃料は、弁ピン46の環状壁76に半径方向外向きの力をかけて、その外径を増大させ、それによって隙間74が増大する傾向を相殺する。
【0068】
弁ステム44が
図6に示す開位置に配置されるとき、弁ステム44の孔42および燃料受入れ空洞78には共に低圧燃料が入っている。孔42内の低圧燃料は、孔42の壁56に半径方向外向きの比較的小さな力を、かつ弁ピン46に半径方向内向きの比較的小さな力をかけ、それらの間の隙間74をわずかに増大させようとする。燃料受入れ空洞78内の低圧燃料は、弁ピン46の環状壁76に半径方向外向きの比較的低い力をかけて、その外径をそれに応じてより小さな程度に増大させ、それによって隙間74が増大する傾向を相殺する。
【0069】
第1の実施形態に関して説明したのと同様に、孔42と燃料受入れ空洞78との間に入口98があることは、孔42内の燃料圧力が、燃料受入れ空洞78内の燃料圧力と常に平衡状態にあることを意味することが理解されよう。このようにして、燃料受入れ空洞78内の燃料圧力は孔42内の圧力とともに変動し、したがって、制御弁36の開閉のサイクル全体を通じて変動する。燃料受入れ空洞78内の燃料は、弁ステム44の弁体72と孔42の壁56との間の隙間74を一定に保つのに必要な程度に弁体72の環状壁76を変形させるだけである。
【0070】
したがって、両実施形態で、本発明は、弁部材46と弁ハウジング44との間の静的漏れを低減させ、それによって、燃料およびエネルギーの損失を低減して、エンジンの効率を増大させるための有効な手段を提供する。
【0071】
上記の第1の実施形態では、弁ステム44の弁体72は、弁ステム44の残りの部分と一体化され、空洞78は挿入具82によってふさがれた穿孔された空洞であるが、空洞は弁ステムに任意の適切な手段によって導入することができることが理解されよう。例えば、弁体は、一端が閉じた円筒の形態の弁ステムの残りの部分とは別に形成することができる。次いで、弁体は弁ステムの残りの部分に、例えば、溶接によって取り付けることができ、その結果、弁ステム内に内部空洞を設けることができる。
【0072】
燃料は、必ずしも燃料溜めを経由して孔の中に受け入れられる必要はなく、制御弁内の流路の任意の適切な配置によって孔の中に受け入れることができる。制御弁内の流路のうちの任意の流路内の燃料は、弁体と孔の壁との間の半径方向隙間を増大させるように作用する場合がある。燃料溜めが存在する場合は、任意の適切な形状とすることができ、任意の適切な位置に配置することができる。
【0073】
説明した実施形態では、燃料供給は高圧燃料供給であるが、より低い燃料圧力においても変形の影響が生じ、したがって燃料は周囲圧力を超える任意の圧力で供給される場合があることが理解されよう。
【0074】
特許請求の範囲で規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく様々な他の修正および改良を行うことができることを理解すべきである。