特許第6034992号(P6034992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6034992
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】熱膨張性微小球及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20161121BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 220/42 20060101ALI20161121BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   C09K3/00 110B
   C09K3/00 111B
   C08J9/32ZBP
   C08F220/42ZNM
   C08F2/44 B
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-507727(P2016-507727)
(86)(22)【出願日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】JP2015081828
(87)【国際公開番号】WO2016084612
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-238656(P2014-238656)
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−076032(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111688(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/143512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/050863(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123807(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0180995(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/049616(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08F 2/00− 2/60
C08F 12/00−34/04
C08J 9/00− 9/42
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、
前記熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを必須に含有するニトリル系単量体(A)と、カルボキシル基含有単量体(B)と、ニトリル系単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)と共重合可能であって、重合性二重結合を1個有する単量体(C)とを含む重合性成分を重合して得られ、
前記ニトリル系単量体(A)に占める前記アクリルニトリルの重量割合が0.1〜9重量%であり、
前記重合性成分に占める、前記ニトリル系単量体(A)の重量割合が20〜65重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合が25〜75重量%であり、前記単量体(C)の重量割合が0.3〜45重量%である、
熱膨張性微小球。
【請求項2】
前記重合性成分に占める前記ニトリル系単量体(A)及び前記カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合が下記式(1)を満たすものである、請求項1に記載の熱膨張性微小球。
ニトリル系単量体(A)の重量割合<カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合 式(1)
【請求項3】
前記単量体(C)が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)、(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)、スチレン系単量体(C3)及び前記カルボキシル基含有単量体(B)のカルボキシル基と反応する単量体(C4)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱膨張性微小球。
【請求項4】
前記ニトリル系単量体(A)に占める前記アクリロニトリルの重量割合が0.1〜3.5重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項5】
前記単量体(C)が、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)、前記(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)及び前記スチレン系単量体(C3)から選ばれる少なくとも1種と、前記単量体(C4)とを含む、請求項3に記載の熱膨張性微小球。
【請求項6】
最大膨張温度が190℃以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性微小球。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる、中空微粒子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の熱膨張性微小球及び請求項7に記載の中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物を成形してなる、成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性微小球及びその用途に関する。詳細には、熱膨張性微小球、該熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる中空微粒子、該熱膨張性微小球及び該中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と基材成分とを含む組成物、該組成物を成形してなる成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂を外殻とし、内部に膨張剤を内包した微粒子であり、加熱により膨張する特徴を有することから、発泡インク、壁紙等の意匠性付与剤や、樹脂、塗料等の軽量化剤として、幅広い用途に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発泡剤(膨張剤)の存在下に水性懸濁液中でエチレン系不飽和モノマー又はモノマー混合物を重合させることにより製造される発泡性熱可塑性ビーズ(熱膨張性微小球)が開示されている。外殻を形成する熱可塑性樹脂として、ガスバリアー性に優れるビニリデンクロライド及びアクリロニトリルからなる共重合体が例示されている。
しかし、この方法によって得られる熱膨張性マイクロカプセルは100℃程度の比較的低温で熱膨張させることはできるものの、高温に加熱すると膨張粒子が収縮してしまい、使用できる温度が限られていた。
【0004】
特許文献2には、耐熱性、耐溶剤性に優れた熱膨張性マイクロカプセル(熱膨張性微小球)として、ニトリル系モノマー80重量%以上、非ニトリル系モノマー20重量%以下及び架橋剤0.1〜1重量%含有する成分から得られるポリマーを用いて、揮発性膨張剤をマイクロカプセル化することにより製造される熱膨張性微小球が開示されている。
また、特許文献3には、高温領域で安定発泡、高発泡倍率を有する熱膨張性マイクロカプセル(熱膨張性微小球)として、ニトリル系単量体(I)、分子内に1つの不飽和二重結合とカルボキシル基を有する単量体(II)、分子内に2以上の重合性二重結合を有する単量体(III)及び、必要により、単量体(I)、(II)、(III)と異なり且つ共重合可能な単量体(IV)からなる単量体混合物を重合して得られた重合体からなる外殻及び該外殻内に封入された発泡剤からなる熱膨張性微小球が開示されている。
このような特許文献2、3に記載の熱膨張性微小球を用いることにより、ペースト状物、樹脂中への軽量化剤として、更なる用途展開が可能となっている。
【0005】
また、特許文献4には、耐熱性に優れ、発泡倍率が高く、安定した発泡挙動を示す熱発泡性マイクロスフェアー(熱膨張性微小球)として、ポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を形成し得る外殻内に発泡剤が封入された熱膨張性微小球が開示されている。また、ポリメタクリルイミド構造を有する共重合体を形成し得る外殻は、メタクリロニトリルとメタクリル酸から構成されることが開示されている。
【0006】
また、特許文献5には、優れた耐熱性を有し、高い発泡倍率を実現できる熱膨張性マイクロカプセル(熱膨張性微小球)として、シェルが、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる重合性モノマー(I)30〜40重量%、カルボキシル基を有する炭素数3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)30〜50重量%、分子内に二重結合を2つ以上有する重合性モノマー(III)0.1重量%以上、及び、ホモポリマーの溶解度パラメーターが10以下である重合性モノマー(IV)を含有するモノマー組成物を重合させてなる重合体からなり、前記重合性モノマー(I)中のアクリロニトリルの含有量が10〜60重量%であり、かつ、前記モノマー組成物は、更に、カルボキシル基を有する炭素数3〜8のラジカル重合性不飽和カルボン酸モノマー(II)に対してイオン結合可能な金属カチオン塩を全モノマー成分100重量部に対して、0.1〜10重量部を含有する熱膨張性微小球が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特開昭54−163966号公報
【特許文献2】日本国特開昭62−2886534号公報
【特許文献3】日本国国際公開第2003/099955号
【特許文献4】国際公開第2007/072769号
【特許文献5】日本国特開2010−222407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱膨張性微小球は、主に1〜100μm程度の微小球(微粉末)であるため、容器内・貯留槽内の付着、ホッパーでのブリッジ(ホッパーの排出口で粉体の粒子同士がアーチ構造を形成して閉塞し、粉体が排出されない現象)発生、移送配管内での閉塞等、粉体移送の流動性(以下、単に「流動性」という)に関わる問題が発生する場合がある。熱膨張性微小球を含有する組成物を生産する際の作業性や、熱膨張性微小球を樹脂組成物中へ混合する際の分散性を良好とするために、流動性に優れた熱膨張性微小球(微粉末)が望まれる。
【0009】
特許文献1の熱膨張性微小球は、耐熱性が劣り、また粉体の流動性にも劣るものであった。また、耐熱性に優れた特許文献2〜5の熱膨張性微小球も、特許文献1の熱膨張性微小球と同様に、流動性については劣るものであった。また、特許文献1〜5の熱膨張性微小球は、樹脂組成物中への分散においても十分なものとは言えなかった。
【0010】
本発明の目的は、耐熱性及び流動性に優れた熱膨張性微小球及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球の微粉末であれば、耐熱性及び流動性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される熱膨張性微小球であって、前記熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを必須に含有するニトリル系単量体(A)と、カルボキシル基含有単量体(B)と、ニトリル系単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)と共重合可能であって、重合性二重結合を1個有する単量体(C)とを含む重合性成分を重合して得られ、前記ニトリル系単量体(A)に占める前記アクリルニトリルの重量割合が0.1〜9重量%であり、前記重合性成分に占める、前記ニトリル系単量体(A)の重量割合が20〜65重量%であり、前記カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合が25〜75重量%であり、前記単量体(C)の重量割合が0.3〜45重量%である、熱膨張性微小球である。
【0013】
前記重合性成分に占める前記ニトリル系単量体(A)及び前記カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合は、下記式(1)を満たすものであることが好ましい。
ニトリル系単量体(A)の重量割合<カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合 式(1)
【0015】
前記単量体(C)は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)、(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)、スチレン系単量体(C3)及び前記カルボキシル基含有単量体(B)のカルボキシル基と反応する単量体(C4)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0016】
前記ニトリル系単量体(A)に占める前記アクリロニトリルの重量割合は、0.1〜3.5重量%であることが好ましい。
【0017】
前記単量体(C)は、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)、前記(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)及び前記スチレン系単量体(C3)から選ばれる少なくとも1種と、前記単量体(C4)とを含むことが好ましい。
【0018】
熱膨張性微小球の最大膨張温度は、190℃以上であることが好ましい。
【0019】
本発明の中空微粒子は、上記の熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られるものである。
【0020】
本発明の組成物は、上記の熱膨張性微小球及び上記の中空微粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含むものである。
【0021】
本発明の成形物は、上記の組成物を成形してなるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱膨張性微小球は、耐熱性及び流動性に優れる。また、基材成分との分散性にも優れる。
本発明の中空粒子は、上記熱膨張性微小球を原料として得られるので、耐熱性及び流動性に優れる。また、基材成分との分散性にも優れる。
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球及び/又は中空微粒子を含有するので、優れた耐熱性を有する。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、軽量で優れた耐熱性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】熱膨張性微小球の一例を示す概略図である。
図2】中空粒子の一例を示す概略図である。
図3】実施例24で得られる成形物の断面を観察した電子顕微鏡写真である。
図4】比較例11で得られる成形物の断面を観察した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔熱膨張性微小球〕
本発明の熱膨張性微小球は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)11と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア)12とから構成される熱膨張性微小球である。この熱膨張性微小球はコア−シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂は、重合性成分を重合して得られる。
【0025】
重合性成分は、重合することによって、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。単量体成分は、重合性二重結合を1個有するラジカル重合性単量体を意味し、付加重合可能な成分である。また、架橋剤は重合性二重結合を複数有するラジカル重合性単量体を意味し、橋架け構造を熱可塑性樹脂に導入する成分である。
【0026】
重合性成分は、ニトリル系単量体(A)と、カルボキシル基含有単量体(B)と、ニトリル系単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)と共重合可能な単量体(C)とを必須とする。ニトリル系単量体(A)は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを必須に含有し、かつニトリル系単量体(A)に占めるアクリルニトリルの重量割合が0.1〜9重量%である。耐熱性及び流動性に優れた熱膨張性微小球とするためには、ニトリル系単量体(A)に占めるアクリロニトリルの重量割合を所定の範囲にすることが重要である。該重量割合が0.1重量未満の場合、流動性が悪い熱膨張性微小球となる。一方、該重量割合が9重量%超の場合、流動性、崩壊性共に悪い熱膨張性微小球となる。本発明の効果をより発揮させる観点から、該重量割合は、好ましくは0.1〜8重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3.5重量%である。
【0027】
アクリロニトリル及びメタクリロニトリル以外のニトリル系単量体(A)としては、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。
重合性成分に占めるニトリル系単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20〜65重量%、より好ましくは20〜55重量%、さらに好ましくは25〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。該重量割合が20重量%未満の場合、シェルのガスバリアー性が低下し、発泡剤を内包できなくなることがある。一方、該重量割合が65重量%超の場合、耐熱性が低くなることがある。
【0028】
カルボキシル基含有単量体(B)としては、遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有するものであれば特に限定はないが、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、1種又は2種以上を併用してもよい。カルボキシル基含有単量体は、一部又は全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。上記カルボキシル基含有単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びイタコン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がさらに好ましく、得られる熱膨張性微小球の耐熱性が高いためメタクリル酸が特に好ましい。
【0029】
重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体(B)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは25〜75重量%、より好ましくは30〜65重量%、さらに好ましくは35〜60重量%、特に好ましくは40〜60重量%である。該重量割合が25重量%未満の場合、耐熱性が低くなることがある。一方、該重量割合が75重量%超の場合、流動性が悪くなることがある。
【0030】
重合性成分に占めるニトリル系単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)の重量割合が下記式(1)を満たすものであることが好ましい。
ニトリル系単量体(A)の重量割合<カルボキシル基含有単量体(B)の重量割合 式(1)
このような関係を満足することにより、耐熱性及び流動性に一層優れた微小球とすることができる。
【0031】
前記単量体(C)は、ニトリル系単量体(A)及びカルボキシル基含有単量体(B)と共重合可能な単量体であれば、限定はないが、本発明の効果をより発揮させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)、(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)、スチレン系単量体(C3)及びカルボキシル基含有単量体(B)のカルボキシル基と反応する単量体(C4)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
なお、本発明でいう単量体(C1)、単量体(C2)及び単量体(C3)は、分子内にカルボキシル基含有単量体(B)のカルボキシル基と反応する官能基を有しない単量体をいう。従って、単量体(C1)、単量体(C2)及び単量体(C3)は単量体(C4)を除くものである。また、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。

【0032】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体(C1)としては、特に限定はないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸アミド系単量体(C2)としては、特に限定はないが、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
スチレン系単量体(C3)としては、特に限定はないが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、p−ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0035】
カルボキシル基含有単量体(B)のカルボキシル基と反応する単量体(C4)としては、特に限定はないが、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。
【0036】
これらの中でも、単量体(C)としては、単量体(A)及び/又は単量体(B)との反応性比を乗じた値が1より小さい単量体であると、単量体(A)や単量体(B)との共重合性に優れ、微小球の流動性が良好となるため、好ましい。より好ましくは、反応性比を乗じた値が0〜0.7、更に好ましくは0〜0.5の範囲となる単量体である。
単量体の反応性比は、POLYMER HANDBOOK等に記載されているが、単量体(A)及び単量体(B)との反応性比が1より小さいスチレンが、特に好ましく、単量体(A)や単量体(B)との反応性比を考慮し、単量体(C1)、単量体(C2)、単量体(C3)及び単量体(C4)から適宜選択することが好ましい。
【0037】
単量体成分の反応性比は、「POLYMER HANDBOOK,third edition,J.Bradrup and E.H Immergut,Ed.,JOHNWILEY & SONS,Inc. 1989.」によると、例えば、メタクリロニトリルとスチレンとの反応性比は、r1=0.21、r2=0.34であり、乗じた値r1・r2=0.07である。また、メタクリル酸とスチレンとの反応性比はr1=0.55、r2=0.21であり、乗じた値r1・r2=0.12である。
【0038】
重合性成分に占める単量体(C)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.3〜45重量%、より好ましくは1〜35重量%、さらに好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。該重量割合が0.3重量%未満の場合、流動性が悪くなることがある。一方、該重量割合が45重量%超の場合、耐熱性が低く、流動性が悪くなることがある。
【0039】
単量体(C)は、さらに優れた耐熱性及び流動性を付与できる観点から、単量体(C1)、単量体(C2)及び単量体(C3)から選ばれる少なくとも1種と、前記単量体(C4)とを含むことが好ましい。
その際の重合性成分に占める単量体(C4)の重量割合は、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%、特に好ましくは0.3〜1.5重量%である。該重量割合が0.01重量%未満の場合、耐熱性への効果がみられないことがある。一方、該重量割合が5重量%超の場合、膨張性が低下することがある。また、重合性成分に占める、単量体(C1)、単量体(C2)及び単量体(C3)から選ばれる少なくとも1種の重量割合は、好ましくは0.3〜44.9重量%、より好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは2〜35重量%、特に好ましくは4〜25重量%である。
【0040】
単量体(C)において、上記の単量体(C1)、単量体(C2)、単量体(C3)及び単量体(C4)以外のその他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。
塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体は、微小球の流動性が悪化するおそれがあり、実質的に含有しないことが好ましい。詳細には、重合性成分に占めるこれら各単量体の重量割合が、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.03重量%以下、特に好ましくは0重量%である。
【0041】
重合性成分は、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合することにより、得られる熱膨張性微小球では、内包された発泡剤の熱膨張時における保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
架橋剤はなくてもよいが、その量については特に限定はなく、ニトリル系単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)及び単量体(C)の合計量100重量部に対して0〜3.0重量部であると好ましく、さらに好ましくは0.02〜1.5重量部、特に好ましくは0.02重量部〜1.0重量部である。架橋剤が3.0重量部より多いと、得られる熱膨張性微小球が凹みを有し、流動性が悪くなることがある。
【0043】
発泡剤は、加熱することで気化する成分であり、熱膨張性微小球の熱可塑性樹脂からなる外殻に内包されることによって、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示すようになる。
【0044】
発泡剤は特に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン等の直鎖状炭化水素;イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソドデカン、3−メチルウンデカン、イソトリデカン、4−メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン等の分岐状炭化水素;シクロドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、ヘプチルシクロヘキサン、n−オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等の炭化水素;石油エーテル;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
これらの発泡剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されていてもよい。これらのなかでも、炭素数8以上の炭化水素は、熱膨張性微小球の最大膨張温度が向上するために好ましく、炭素数5以下の炭化水素は、熱膨張性微小球を加熱膨張して得られる中空微粒子の耐圧性が良好となり好ましい。
【0045】
本発明の熱膨張性微小球(粉体)は、上記の記載したように、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、発泡剤から構成されることにより、25〜35度の安息角を有することが可能となる。熱膨張性微小球(粉体)の安息角が25〜35度であることにより、ホッパーでのブリッジ発生、移送配管内での閉塞等が起こりにくくなる。ここで、本発明における安息角とは、室温25℃、湿度40%の条件下、含水率が6重量%以下の熱膨張性微小球(粉体)を平面に堆積させたときに、平面と粉末の稜線の作る角度をいう。凝集性の高い熱膨張性微小球(粉体)の場合は、安息角は大きくなり、自然流動しやすい熱膨張性微小球(粉体)ほど安息角は小さくなる。なお、安息角は、JIS R 9301−2−2(アルミナ粉末の物性測定方法:安息角)に準じて、測定可能である。
本発明の効果をより発揮させる点から、熱膨張性微小球の安息角は、25〜35度が好ましく、25〜34度がより好ましく、25〜33度がさらに好ましい。
【0046】
本発明の熱膨張性微小球(粉体)は、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、発泡剤から構成されることにより、安息角に加え、10〜30度の崩壊角を有することが可能となる。熱膨張性微小球(粉体)の崩壊角が10〜30度を有することにより、ホッパーでのブリッジ発生、移送配管内での閉塞等が発生した場合でも、振動あるいは衝撃を与えることで容易に解消することができる。ここで、本発明における崩壊角とは、室温25℃、湿度40%の条件下、前述の安息角を作っている熱膨張性微小球(粉体)に一定の衝撃を与えて、崩れた時の角度を測定したものであり、振動あるいは衝撃によりほぐれ易い熱膨張性微小球(粉体)ほど崩壊角は小さくなる。熱膨張性微小球を樹脂組成物に混合する際、攪拌や混練等による振動が加わるため、ほぐれ易い熱膨張性微小球ほど、分散性が良好となる。
本発明の効果をより発揮させる点から、熱膨張性微小球の崩壊角は、10〜30度が好ましく、10〜28度がより好ましく、10〜25度がさらに好ましい。
【0047】
熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜80μm、さらに好ましくは7〜60μm、特に好ましくは10〜50μmである。平均粒子径が1μmより小さい場合、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。一方、平均粒子径が100μmより大きい場合、充填効率が低下し、樹脂と混合した際に作業性が低下する可能性がある。
【0048】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)で算出される。
【0049】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0050】
発泡剤の内包率は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に内包された発泡剤の重量の百分率で定義される。発泡剤の内包率については、特に限定されないが、熱膨張性微小球の重量に対して、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
【0051】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、特に好ましくは140℃以上、最も好ましくは150℃以上である。一方、膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tm)については、特に限定はないが、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上、最も好ましくは210℃以上である。一方、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。熱膨張性微小球の最大膨張温度が150℃未満であると十分な耐熱性が得られないことがある。一方、熱膨張性微小球の最大膨張温度が350℃を超えると十分な発泡倍率が得られないことがある。
【0052】
本発明で得られる熱膨張性微小球は最大膨張温度が高く、流動性及び耐熱性に優れているので、射出成形、押出成形、混練成形、カレンダー成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成型、熱成形等の成形加工の利用に好適である。また、塩ビペースト等のペースト状物や、EVAエマルション、アクリルエマルション、溶剤型バインダー等の液状組成物に混合して使用することも可能である。
【0053】
熱膨張性微小球の最大膨張倍率は、特に限定されないが、好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上、さらにより好ましくは20倍以上、特に好ましくは30倍以上、さらに好ましくは50倍以上、最も好ましくは70倍以上である。一方、最大膨張倍率の上限値は、好ましくは200倍である。
熱膨張性微小球を加熱膨張して得られる中空微粒子の耐圧性が要求される場合には、中空微小球の外殻の厚みを保持するために、微小球の最大膨張倍率は、好ましくは3倍以上、好ましい上限値は100倍である。最大膨張倍率が3倍未満であると、十分な軽量化効果が得られないことがある。最大膨張倍率が100倍を超えると、耐圧性が不十分となる場合がある。
熱膨張性微小球を樹脂組成物に混合し、該樹脂組成物を加熱により膨張させ、軽量化物を得る場合には、最大膨張倍率は20倍以上が好ましく、上限値は、好ましくは200倍である。最大膨張倍率が20倍未満であると、成形物等に熱膨張性微小球を含有したとき十分な膨張倍率が得られないことがある。最大膨張倍率が200倍を超えると、熱膨張性微小球を含有する成形物等で面荒れの原因になることがある。
【0054】
本発明で得られる熱膨張性微小球は、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻と、発泡剤から構成されることにより、熱黄変が少なく、耐熱黄変性に優れる。
熱膨張性微小球の黄変度(ΔYI)は、熱膨張性微小球等の測定対象を210℃で2分間加熱して黄色度(YI)を測定し、標準試料の黄色度(YI0)を差し引いて計算される。
熱膨張性微小球の黄変度(ΔYI)については、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは20以下、最も好ましくは15以下である。熱膨張性微小球の黄変度が40を超えると、熱膨張性微小球を含有する成形物等が着色することがある。
【0055】
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の熱膨張性微小球の製造方法は、重合性成分と、発泡剤と、重合開始剤とを含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させる工程(以下では、重合工程ということがある。)を含む製造方法である。
【0056】
重合開始剤としては、特に限定はないが、ごく一般に用いられる過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール;クメンハイドロパーキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステルを挙げることができる。
【0057】
アゾ化合物としては、例えば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1‘−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等を挙げることができる。
【0058】
重合開始剤の重量割合については、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量%であり、さらに好ましくは0.1〜8重量%、最も好ましくは0.2〜5重量%である。当該重量割合が0.05重量%未満である場合、重合されない重合性成分が残存し、熱膨張性微小球の流動性が悪くなることがある。当該重量割合が10重量%を超える場合、耐熱性が低下する。
【0059】
本発明の製造方法では、油性混合物を水性分散媒中に分散させた水系懸濁液を調製し、重合性成分を重合させる。
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体であり、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
【0060】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種又は2種以上を併用してもよい。電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒100重量部に対して0.1〜50重量部含有するのが好ましい。
【0061】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類及び水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0062】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加したりすることがある。
【0063】
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物以外に、分散安定剤や分散安定補助剤を含有していてもよい。
分散安定剤としては、特に限定はないが、例えば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
分散安定剤の配合量は、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜20重量部である。
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、例えば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0064】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、水溶性化合物とともに、必要に応じて分散安定剤及び/又は分散安定補助剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、水溶性化合物、分散安定剤、分散安定補助剤の種類によって適宜決められる。
【0065】
本発明の製造方法では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウム及び塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
本発明の製造方法では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に懸濁分散させる。
【0066】
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜懸濁法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
【0067】
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5MPa、さらに好ましくは0.1〜3MPaの範囲である。
【0068】
本発明の製造方法では、重合後のスラリー(熱膨張性微小球含有分散液)に金属塩を添加し、カルボキシル基とイオン架橋を形成させてもよく、金属を含有する有機化合物で表面処理してもよい。
金属塩は、2価以上の金属カチオンが好ましく、例えばAl、Ca、Mg、Fe、Ti、Cu等が挙げられる。添加のしやすさから、水溶性が好ましいが、非水溶性でも構わない。金属含有有機化合物は、表面処理効率より、水溶性であると好ましく、周期表3〜12に属する金属を含有する有機化合物であると、耐熱性がさらに向上するため好ましい。
【0069】
得られたスラリーを遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等により濾過し、含水率10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、更に好ましくは20〜40重量%のケーキ状物とし、ケーキ状物を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、含水率6重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下の乾燥粉体とする。
イオン性物質の含有量を低減させる目的で、ケーキ状物を水洗及び/又は再分散後に再濾過し、乾燥させても構わない。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体を得てもよい。
【0070】
〔中空粒子〕
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球や上記で説明した熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子である。中空粒子は、軽量であり、組成物や成形物に含ませると材料物性に優れる。
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球や上記で説明した熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子であり、特定の重合性成分を重合して得られる熱可塑性樹脂からなる外殻から構成されるため、基材成分と混合した際の分散性に優れる。
【0071】
中空粒子を得る製造方法としては、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等が挙げられ、ホッパー等に充填した熱膨張性微小球を真空搬送、エア搬送、スクリュー搬送等により移送する工程を有する。
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球を使用しているため、ホッパーでの粉体のすべり性に優れ、移送工程における粉体の流動性にも優れる。そのため、ホッパーでのブリッジの発生、移送管内の閉塞等の発生が抑制され、作業効率向上及び得られる中空粒子の品質が安定する。
【0072】
移送管内の閉塞が発生した場合では、作業の中断及び収率の低下となる。また堆積した粉体の状態で加熱工程へ移送された場合、凝集体が発生することがある。凝集体の発生は、得られた中空粒子を篩に通し、篩上の残渣を計測することで確認できる。篩上の残渣量としては、中空粒子の平均粒子径のおよそ10倍程度の目開きの篩を使用し、中空粒子全量に対して、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.8重量%以下、さらにより好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。
【0073】
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球や上記で説明した熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を、好ましくは100〜400℃で加熱膨張させることで得られる。
【0074】
中空粒子の平均粒子径については用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは3〜200μmである。また、中空粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、50%以下が好ましく、さらに好ましくは40%以下である。
【0075】
中空粒子の真比重については特に限定はないが、好ましくは0.005〜0.6、さらに好ましくは0.015〜0.4、特に好ましくは0.020〜0.3である。中空粒子の真比重が0.005より小さい場合は、耐久性が不足することがある。一方、中空粒子の真比重が0.6より大きい場合は、低比重化効果が小さくなるため、中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
【0076】
中空粒子の黄変度(ΔYI)については、特に限定はないが、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらにより好ましくは30以下、特に好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、最も好ましくは15以下である。中空粒子の黄変度が40を超えると、中空粒子を含有する成形物等が着色することがある。なお、中空粒子の黄変度(ΔYI)は、測定対象の黄色度(YI)を測定し、標準試料の黄色度(YI0)を差し引いて計算される。
【0077】
中空粒子(1)は、図2に示すように、その外殻(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)から構成されていてもよく、以下では、微粒子付着中空粒子(1)ということがある。
ここでいう付着とは、単に微粒子付着中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4及び5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、微粒子付着中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。
中空粒子を基材成分と混合し、組成物とする際に、組成物中に混合する微粒子をあらかじめ中空粒子の外表面に付着させてから混合することも可能である。この場合、均一分散しにくい微粒子を容易に分散させることが可能となる。
【0078】
微粒子の平均粒子径については、用いる中空体本体によって適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001〜30μm、さらに好ましくは0.005〜25μm、特に好ましくは0.01〜20μmである。
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
【0079】
微粒子としては特に限定はないが、微粒子が有機物の場合は、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム等の金属セッケン類;ポリエチレンワックス、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、硬化ひまし油等の合成ワックス類;ポリアクリルアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機系充填剤が挙げられる。微粒子が無機物の場合には、例えばタルク、マイカ、ベントナイト、セリサイト、カーボンブラック、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化黒鉛、弗化カルシウム、窒化ホウ素等;その他、シリカ、アルミナ、雲母、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、セラミックビーズ、ガラスビーズ、水晶ビーズ等の無機系充填剤が挙げられる。
微粒子の平均粒子径は、微粒子付着中空粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径とは、一次粒子における平均粒子径を意味する。
【0080】
中空粒子が微粒子付着中空粒子の場合、中空粒子として微粒子付着中空粒子を後述の組成物に配合すると、塗料組成物や接着剤組成物として有用である。
微粒子付着中空粒子は、例えば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0081】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜0.6であり、さらに好ましくは0.03〜0.5、特に好ましくは0.05〜0.4、最も好ましくは0.07〜0.3である。微粒子付着中空粒子の真比重が0.01より小さい場合は、耐久性が不足することがある。一方、微粒子付着中空粒子の真比重が0.6より大きい場合は、低比重化効果が小さくなるため、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
【0082】
〔組成物及び成形物〕
本発明の組成物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。
基材成分としては特に限定はないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、シリコン系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物等が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物は、これらの基材成分と熱膨張性微小球及び/又は中空粒子とを混合することによって調製することができる。また、基材成分と熱膨張性微小球及び/又は中空粒子とを混合して得られた組成物を更に別の基材成分と混合して本発明の組成物とすることもできる。
基材成分100重量部に対する熱膨張性微小球及び/又は中空粒子の重量割合は、好ましくは0.1〜70重量部、より好ましくは0.5〜65重量部、さらに好ましくは1〜60重量部である。
混合方法は、特に限定はないが、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等により混合することが好ましい。
本発明の組成物の用途としては、例えば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物等を挙げることができる。
【0084】
本発明の組成物が、特に、熱膨張性微小球とともに、基材成分として、熱膨張性微小球の膨張開始温度より低い融点を有する化合物及び/又は熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー)を含む場合は、樹脂成形用マスターバッチとして用いることができる。この場合、この樹脂成形用マスターバッチ組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形等に利用され、樹脂成形時の気泡導入に好適に用いられる。樹脂成形時に用いられる樹脂としては、上記基材成分から選択されれば特に限定はないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66等)、変性ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル、アイオノマー樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等、及びそれらの混合物等が挙げられる。また、ガラス繊維、カーボンファイバー、天然繊維等の補強繊維;タルク、酸化チタン、シリカ、無機顔料等の無機粉末;アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、ウレタン系微粒子、シリコン系微粒子等の高分子微粒子や有機顔料等の有機粉末、難燃剤、化学発泡剤等を含有していてもよい。
【0085】
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、例えば、成形品や塗膜等の成形物等を挙げることができる。本発明の成形物では、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
【0086】
また、本発明の成形物において、高温での熱処理による変色が抑制されているとよく、成形物の黄変度(ΔYI)は、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらにより好ましくは25以下、特に好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、最も好ましくは10以下である。
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、セラミックフィルタ等が得られる。
【0087】
本発明の組成物及び成形物は、本発明の熱膨張性微小球、本発明の熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球及び本発明の中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を混合するため、基材成分との均一混合に優れ、分散不良及び凝集物が発生しにくく、外観に優れ、強度に優れる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明の熱膨張性微小球の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味するものである。
以下の実施例及び比較例で挙げた熱膨張性微小球、中空粒子、組成物及び成形物等について、次に示す要領で物性を測定し、さらに性能を評価した。以下では、熱膨張性微小球を簡単のために「微小球」ということがある。
【0089】
[平均粒子径の測定]
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR 日機装社製)を使用した。d50の値を平均値とした。
【0090】
[微小球の含水率の測定]
測定装置として、カールフィッシャー水分計(MKA 510N型 京都電子工業社製)を用いて測定した。
【0091】
[膨張開始温度(Ts)及び最大膨張温度(Tm)の測定]
測定装置として、DMA(DMA Q800型 TA instruments社製)を使用した。微小球0.5mgを直径6.0mm、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、微小球層の上部にアルミ蓋(直径5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備した。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定した。加圧子により0.01Nの力を加えた状態で20℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定した。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(Ts)とし、最大変位量(Dmax)を示した温度を最大膨張温度(Tm)とした。
【0092】
[安息角、崩壊角の測定]
測定装置として、多機能型粉体物性測定器(MULTI TESTER MT−1001 セイシン企業社製)を使用し、室温25℃、湿度40%にて測定を実施した。
【0093】
[分散性1:液中への分散性評価]
500mlのビーカーに水500gを入れた後、得られた微小球25gを静かに加え、90rpm/minの速度で攪拌し、液面に浮いている微小球が液中へ均一に分散するまでの時間を測定した。
[分散性2:樹脂中への分散性評価]
100℃に加温した1Lのニーダーに、エチレン―酢酸ビニル共重合体(ウルトラセン720 東ソー社製)450gを投入し、溶融後、得られた微小球50gを加え1分混練後、ロールで0.5mmのシート状に伸ばし、微小球の分散度合いを目視及び光学顕微鏡にて確認した。
分散状態を以下のように評価した。
○:凝集物は確認されず、微小球は均一に分散している。
△:小さな白点(光学顕微鏡にて白点部は微小球の凝集物と確認)があり、一部不均一である。
×:白い凝集物が確認される。
【0094】
[実施例1]
イオン交換水600gに、塩化ナトリウム150g、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ50g、ポリビニルピロリドン4.0g及びエチレンジアミン四酢酸・4Na塩1.0g加えた後、得られた混合物のpHを2.0〜3.0に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル4g、メタクリロニトリル114g、メタクリル酸153g、メタクリルアミド15g、スチレン15g、1.9−ノナンジオールジアクリレート0.06g、イソペンタン30g、イソオクタン30g及び有効成分50%のジーsec―ブチルパーオキシジカーボネート含有液8gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーで分散し、懸濁液を調整した。この懸濁液を容量1.5Lの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、攪拌しつつ60℃で20時間重合し、得られた生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、膨張開始温度、最大膨張温度、含水率、安息角、崩壊角及び分散性1・2を評価した。その結果を表1に示す。
【0095】
[実施例2]
イオン交換水600gに、塩化ナトリウム150g、有効成分20重量%であるコロイダルシリカ20g、有効成分20重量%であるアルミナゾル20g及びアジピン酸―ジエタノールアミン縮合物3.0gを加えた後、得られた混合物のpHを3.0〜4.0に調整し、水性分散媒を調製した。
油性混合物を表1に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、膨張開始温度、最大膨張温度、含水率、安息角、崩壊角及び分散性1・2を評価した。その結果を表1に示す。
【0096】
[実施例3〜22及び比較例1〜8]
油性混合物を表1〜4に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球をそれぞれ得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、膨張開始温度、最大膨張温度、含水率、安息角、崩壊角及び分散性1・2を評価した。その結果を表1〜4に示す。
【0097】
[比較例9]
水性分散媒において塩化ナトリウムを使用しないこと及び油性混合物を表4に示すものに変更すること以外は実施例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、膨張開始温度、最大膨張温度、含水率、安息角、崩壊角及び分散性1・2を評価した。その結果を表4に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表1〜5では単量体成分及び架橋剤を以下の略号で示す。
AN:アクリロニトリル
MAN:メタクリロニトリル
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
MAM:メタクリルアミド
MMA:メタクリル酸メチル
EMA:メタクリル酸エチル
AAM:アクリルアミド
MA:アクリル酸メチル
IBX:イソボルニルメタクリレート
St:スチレン
HOA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
VCl2:塩化ビニリデンモノマー
1.9ND−A:1.9−ノナンジオールジアクリレート
TMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0103】
[実施例23]
実施例1の分散性2の評価における微小球含有エチレン−酢酸ビニル樹脂シート(微小球含有組成物)を熱風で230℃×1分加熱し、発泡シートを得た。発泡シートの比重は0.33であった。発泡状態を確認したところ、気泡が均一に分散していた。黄変度(ΔYI)は10であり、白度の高い成形品が得られた。
【0104】
[比較例10]
比較例7の分散性2の評価における微小球含有エチレン−酢酸ビニル樹脂シートを熱風で230℃×1分加熱し、発泡シートを得た。発泡シートの比重は0.35であった。しかし、発泡ムラがあり、凝集物が確認された。黄変度(ΔYI)は54であり、黄変がみられた。
【0105】
実施例1〜22の熱膨張性微小球は、190℃以上の高温で良好に膨張し、耐熱性に優れ、安息角の値が35以下であるため、粉の流動性に優れる。また崩壊角の値が30以下であるため、凝集しにくくほぐれ易い粉体であることから、基材成分への分散性に優れる。
基材成分中での分散性に優れることから、実施例23に示されるように、微小球と基材成分から成る組成物を加熱し、軽量成形物を得た際に、気泡が均一に導入され、成形物の外観及び強度に優れた成形物を得ることができる。
それに対して、比較例1〜9の熱膨張性微小球は、安息角が35超であり、流動性に劣る。また崩壊角も29超であり、凝集しやすい粉体である。よって、基材成分への分散に長時間を要し、作業が煩雑となる。また基材成分との混練が不十分であると、比較例10に示されるように、組成物及び成形物中に凝集物を発生しやすく、成形物の外観を損なうとともに、凝集部分を起点とした強度低下が起こりやすくなる。
【0106】
[実施例24]
発泡剤をイソペンタン5g、イソオクタン20gに変更する以外は実施例2と同様にして熱膨張性微小球を得た。熱膨張性微小球を230℃×2分加熱し、中空粒子を得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、中空粒子の平均粒子径、中空粒子の比重を表5に示す。
得られた中空粒子20g、及び基材成分としてのポリピロピレン(融点170℃)380gを、二軸押出機を用いて190℃で溶融混合した。ここで、基材成分と混合した際に作業性が良かった。その後に、得られた混合物を直径3mm×長さ3mmのサイズにペレット化することで、中空粒子を5重量%含有するマスターバッチを作製した。
得られたマスターバッチを、成形温度200℃で射出成形を行い、軽量成形物を得た。
成形物の比重及び中空粒子の分散性を表5に示す。
なお、中空粒子の分散性は、成形物の断面を電子顕微鏡で観察し、分散度合いを確認した。図3に成形物の断面の電子顕微鏡写真を示す。分散度合いは以下のように評価した。
断面を1mm×1mm四方に区切り、1mm×1mm四方に区切った範囲の中に、凝集物が1つ以上確認された場合を分散度合い×、凝集物が確認されない場合を分散度合い○とした。凝集物とは、粒子が5つ以上融着および変形した状態のものをいう。
【0107】
[比較例11]
油性混合物を表5に示すものに変更する以外は実施例24と同様にして熱膨張性微小球、中空粒子、組成物、成形物を得た。得られた熱膨張性微小球の平均粒子径、中空粒子の平均粒子径、中空粒子の比重、成形物の比重、中空粒子の分散度合いを表5に示す。図4に成形物断面の電子顕微鏡写真を示す。
【0108】
【表5】
【0109】
実施例24の熱膨張性微小球及び中空粒子は、高温での基材成分との混練及び加熱成形を実施しても軽量な成形物を得ることが可能であり、耐熱性に優れる。また得られた成形物は、中空粒子が均一に分散しており、理論通りの軽量な成形物を得ることができる。
耐熱性及び膨張性に優れることから、成形時の加熱により再膨張し、理論比重よりも軽量な成形物を得ることもできる。
それに対して、比較例11の熱膨張性微小球及び中空粒子は、分散性に劣り、成形物中に凝集物が確認される(図4の写真左下部付近、左上部付近及び写真中央から右斜め上部付近)。また得られた成形物の比重は、理論比重よりもやや重く、凝集物の発生により、均一に中空粒子(気泡)が分散していないからと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の熱膨張性微小球は、たとえば、パテ、塗料、インク、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器等の軽量化材として用いることができたり、基材成分に配合して、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形を行って、遮音性、断熱性、遮熱性、吸音性等に優れる成形物の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0111】
11 熱可塑性樹脂からなる外殻
12 発泡剤
1 中空粒子(微粒子付着中空粒子)
2 外殻
3 中空部
4 微粒子(吸着された状態)
5 微粒子(めり込み、固定化された状態)
図1
図2
図3
図4