特許第6035105号(P6035105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035105
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】画像記録装置および画像記録方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/02 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
   G03F9/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-222985(P2012-222985)
(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-74837(P2014-74837A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 雄樹
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−135420(JP,A)
【文献】 特開2003−075762(JP,A)
【文献】 特開2003−241395(JP,A)
【文献】 特開2004−133483(JP,A)
【文献】 特開2004−354611(JP,A)
【文献】 特開2006−261607(JP,A)
【文献】 特開2012−015916(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/001416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
H01L 21/027
B01J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射することにより記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、
前記記録媒体を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記記録媒体に光を照射するとともに、出射する光の焦点位置が可変であり、鏡筒を有する光学ユニットと、
前記光学ユニットが載置されるベース部と、
前記光学ユニットを覆う筐体と、
前記光学ユニットを前記保持部に対して相対的に移動させることで、前記光学ユニットからの光が照射される記録媒体上における照射位置を走査方向に移動させる移動機構と、
前記鏡筒の外側かつ前記筐体の内部に設けられ、前記鏡筒の周辺の環境温度を検出する温度検出部と、
前記記録媒体への画像記録が行われている間、前記温度検出部が検出する前記環境温度に基づき、前記光学ユニットの熱膨張に対する前記焦点位置のシフト量を取得して、前記焦点位置を補正する制御部と、
を備える、画像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像記録装置において、
前記制御部は、前記シフト量を、前記環境温度を変数とする一次式に基づいて取得する、画像記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像記録装置において、
前記光学ユニットと前記保持部との間の距離を計測する距離計測部、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記距離計測部により計測された距離に基づいて、前記焦点位置をさらに変更する、画像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像記録装置において、
前記ベース部に取り付けられているとともに、前記距離計測部を前記筐体から離間させた状態で支持する支持部材と、
を備えている、画像記録装置。
【請求項5】
光を照射することにより記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、
(a) 前記記録媒体を保持部により保持する工程と、
(b) 前記(a)工程にて前記保持部に保持された前記記録媒体に対して、出射する光の焦点位置が可変であり、ベース部に載置されるとともに筐体に覆われ、鏡筒を有する光学ユニットから光を照射する工程と、
(c) 前記(b)工程において、前記光学ユニットを前記記録媒体に対して移動させることで、前記光学ユニットからの光が照射される前記記録媒体上の照射位置を走査方向に移動させる工程と、
(d) 前記鏡筒の外側かつ前記筐体の内部において、前記鏡筒周辺の環境温度を検出する工程と、
(e) 前記(c)工程にて、前記記録媒体への画像記録が行われている間、前記(d)工程にて検出された前記環境温度に基づき、前記光学ユニットの熱膨張に対する前記焦点位置のシフト量を取得して、前記焦点位置を補正する工程と、
を含む、画像記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷用刷版等の基材に光を照射することによって、画像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、変調された光を印刷用刷版等の基材に塗布された感光材料上にて露光することにより、画像を形成する画像形成装置が利用されている。このような装置では、変調された光を感光材料上に導いて集光する光学系が設けられている。
【0003】
画像形成装置は、一般的に、例えば数時間〜数日の単位で連続稼働されることが多いが、稼働開始時から画像形成装置の各部位の温度は、常に一定ではなく、変動する。また、装置を稼働する日によって、温度が変動する場合もある。さらに、近年では、画像形成速度を向上するために、露光光学系内に照射される光の光量が大きくなっている。このため、レンズ等の光学ユニットを含む装置の各部位の温度が大きく変動する虞がある。
【0004】
このように画像形成装置の各部位の環境温度が変化すると、光学ユニットのレンズが膨張するとともに、屈折率が変化することで、焦点位置の変動による結像位置のズレ等が生じてしまう場合がある。そこで、特許文献1では、レンズの部分的な温度上昇による結像位置の変動を抑制するべく、最適なレンズの材質、特性等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−93695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、レンズ自体の膨張および屈折率の変動による焦点位置の変動を抑制することが考慮されているが、レンズを支持する支持体(鏡筒等)の膨張による、焦点位置の変動について考慮されていない。このため、温度変化によりレンズの位置がずれることで、焦点位置が変動してしまう虞がある。また、光学ユニット以外にも、印刷用刷版を支持する部材や、光学ユニットを支持する部材などが、熱膨張することで、焦点位置が変動してしまう虞もあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、熱膨張による光学ユニットからの光の焦点位置の変動を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、光を照射することにより記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、前記記録媒体を保持する保持部と、前記保持部に保持されている前記記録媒体に光を照射するとともに、出射する光の焦点位置が可変であり、鏡筒を有する光学ユニットと、前記光学ユニットが載置されるベース部と、前記光学ユニットを覆う筐体と、前記光学ユニットを前記保持部に対して相対的に移動させることで、前記光学ユニットからの光が照射される記録媒体上における照射位置を走査方向に移動させる移動機構と、前記鏡筒の外側かつ前記筐体の内部に設けられ、前記鏡筒の周辺の環境温度を検出する温度検出部と、前記記録媒体への画像記録が行われている間、前記温度検出部が検出する前記環境温度に基づき、前記光学ユニットの熱膨張に対する前記焦点位置のシフト量を取得して、前記焦点位置を補正する制御部とを備える。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様に係る画像記録装置において、前記制御部は、前記シフト値を、前記環境温度を変数とする一次式に基づいて算出する。
【0010】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る画像記録装置において、前記光学ユニットと前記保持部との間の距離を計測する距離計測部、をさらに備え、前記制御部は、前記距離計測部により計測された距離に基づいて、前記焦点位置をさらに変更する。
【0011】
また、第4の態様は、第3の態様に係る画像記録装置において前記ベース部に取り付けられているとともに、前記距離計測部を前記筐体から離間させた状態で支持する支持部材とを備えている。
【0012】
また、第5の態様は、光を照射することにより記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、(a)前記記録媒体を保持部により保持する工程と、(b)前記(a)工程にて前記保持部に保持された前記記録媒体に対して、出射する光の焦点位置が可変であり、ベース部に載置されるとともに筐体に覆われ、鏡筒を有する光学ユニットから光を照射する工程と、(c)前記(b)工程において、前記光学ユニットを前記記録媒体に対して移動させることで、前記光学ユニットからの光が照射される前記記録媒体上の照射位置を走査方向に移動させる工程と、(d)前記鏡筒の外側かつ前記筐体の内部において、前記鏡筒周辺の環境温度を検出する工程と、(e)前記(c)工程にて、前記記録媒体への画像記録が行われている間、前記(d)工程にて検出された前記環境温度に基づき、前記光学ユニットの熱膨張に対する前記焦点位置のシフト量を取得して、前記焦点位置を補正する工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
第1から第5の態様によると、環境温度に依存した光学ユニットの熱膨張による焦点位置の変動を補正により取り除くことができる。これにより、画像記録を高精度に行うことができる。
【0014】
また、第2の態様によると、一次式に基づいて補正値を算出するため、補正値の計算が容易となる。
【0015】
また、第3の態様によると、光学ユニットと保持部との間の距離の変動に合わせて、焦点位置を適切に変更することができる。これにより、画像記録を高精度に行うことができる。
【0016】
また、第4の態様に係る画像記録装置によると、環境温度による筐体の変形によって、距離計測部の位置が変動することを抑制することができる。これにより、光学ユニットと保持部との間の距離を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る画像記録装置の全体図である。
図2】画像記録装置が備える制御部のハードウエア構成を示すブロック図である。
図3】ズームレンズからの光の焦点位置を制御するための構成を示すブロック図である。
図4】異なる環境温度における、ズームレンズの焦点面の位置を示すグラフである。
図5】比較例に係る画像記録装置を示す図である。
図6】比較例に係る画像記録装置稼働時における、距離計測部による距離の測定結果を示すグラフである。
図7】実施形態に係る画像記録装置稼働時における、距離計測部による距離の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。さらに、図面においては、XY平面を水平面とし、Z軸方向を鉛直方向とするXYZ直交座標系が付されている場合がある。
【0019】
<1. 実施形態>
図1は、実施形態に係る画像記録装置1の全体図である。画像記録装置1は、光を照射して、対象物を加熱することにより、対象物上にパターンの形成を行う、CTP(Computer to Plate)出力装置として構成されている。
【0020】
画像記録装置1は、不図示のモータによりX軸方向に延びる回転軸J1周りに回転するドラム部11を備えている。該ドラム部11の外周面上には、画像記録の対象物である、感光材料9が保持されている。つまり、ドラム部11は、保持部の一例である。また、感光材料9は、本発明に係る記録媒体の一例である。
【0021】
ドラム部11の−Y側には、感光材料9に光を照射するヘッド部12が設けられている。ヘッド部12は、ヘッド本体部120、光源部121および円筒カム機構125を備えている。ヘッド本体部120の内部には、円筒カム機構125により駆動されるズームレンズ2が設けられている。ズームレンズ2は、本発明に係る光学ユニットの一例である。
【0022】
光源部121は、レーザ光源126、該レーザ光源126からの光を線状光(光束断面が線状の光)に成形する光源光学系127、該光源光学系127に導かれた線状光を変調する空間光変調デバイス128を備えている。なお、図1においては、レーザ光源126、光源光学系127および空間光変調デバイス128の形状や配置が模式的に示されており、実際の形状および配置とは異なる。
【0023】
空間光変調デバイス128により変調された光は、ズームレンズ2により、感光材料9へと導かれる。画像記録装置1では、レーザ光源126および光源光学系127が、空間光変調デバイス128に向けて線状光を出射する光出射部を構成している。レーザ光源126は、具体的には波長808nmの光(近赤外領域の光)を出射する。ただし、レーザ光源126が出射する光の波長は、780〜850nmの範囲で適宜変更することができる。
【0024】
空間光変調デバイス128は、レーザ光源126および光源光学系127で構成される光出射部からの線状光を、空間変調する回折格子型のデバイスである。空間光変調デバイス128としては、具体的には、特許文献1に記載されているように、例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標))を採用することができる。
【0025】
ズームレンズ2は、所定の間隔を空けて配置される複数の凹レンズおよび凸レンズ等により構成されている。各レンズは、アルミ製等の金属で形成された鏡筒の内部に収納されている。ズームレンズ2の構成としては、例えば特許文献1に開示されているズームレンズ、または、これに類似する構成を採用することができる。
【0026】
ズームレンズ2の周辺部には、ズームレンズ2周辺の環境温度を検出する、サーミスター等で構成された温度センサー31が設けられている。温度センサー31は、本発明に係る温度検出部の一例である。温度センサー31は、ズームレンズ2を構成する鏡筒の外側であって、ヘッド本体部120の内部に設けられている。このため、温度センサー31は、鏡筒周辺の温度を検出する。
【0027】
なお、温度センサー31が温度を検出する部位は、鏡筒周辺に限定されるものではない。温度センサー31が検出した温度に関する情報は、後述するように、温度依存的に変動するズームレンズ2の焦点位置の補正に利用される。このため、温度センサー31は、ズームレンズ2に近接する部位の温度を検出すればよい。したがって、例えば、ズームレンズ2の鏡筒自体または鏡筒内部、または、ズームレンズ2を構成するレンズ自体の温度を検出するように、温度センサー31が設けられていてもよい。また、温度センサー31は、少なくとも、ヘッド部12を保護する筐体53の内部とすることが望ましい。
【0028】
図1に示されるように、ヘッド部12は、略直方体状のベース部41の上面に載置されている。このベース部41は、図1中のX軸方向に沿って延びる一対のガイド部43およびガイド部43上をスライド移動する不図示のスライダーを介して、エンジンベース51に支持されている。一対のガイド部43は、エンジンベース51の上面に固定されており、不図示のスライダーは、ヘッド部12の底面に固定されている。エンジンベース51は、ヘッド部12やベース部41の他、ドラム部11を支持する支持部材である。
【0029】
ベース部41は、ヘッド移動機構13に接続されている。ヘッド移動機構13は、図示しないボールねじ等で構成されている直動機構であり、ヘッド部12を、ガイド部43に沿う方向(図1中のX軸方向)に移動させる。画像記録装置1では、ヘッド移動機構13がヘッド部12からの感光材料9上における照射位置Pos1を移動させる移動機構を構成する。
【0030】
ベース部41における、ドラム部11側(+Y側)の側面には、レンズガード45が固定されている。レンズガード45は、+Y方向に突出する突出部451と、該突出部451から+Z方向に起立して延びる起立部453とで構成されている。起立部453は、ヘッド部12のズームレンズ2が収納されている部分を通す孔が形成されており、主に、ズームレンズ2を保護する機能を備えている。この起立部453の上部には、距離計測部47が設置されている。
【0031】
距離計測部47は、図示を省略するが、ドラム部11に向けて光を出射する出射部と、ドラム部11にて反射した光を検出する検出部とで構成されている。検出部は、例えば、ラインセンサーで構成されている。画像記録装置1では、このラインセンサーにおける検出位置の変位量に基づき、ズームレンズ2とドラム部11の間の距離が計測される。距離計測部47は、その測定精度が1μm以下であることが好ましい。
【0032】
図1に示されるように、ヘッド部12は、底が開口した略直方体状の筐体53に覆われることにより保護されている。レンズガード45の起立部453は、突出部451が設けられているため、筐体53からは、+Y側に離間している。距離計測部47についても、起立部453と同様に、筐体53から離間している。本実施形態では、レンズガード45が距離計測部47を支持する支持部材を構成している。
【0033】
図2は、画像記録装置1が備える制御部60のハードウエア構成を示すブロック図である。制御部60は、画像記録装置1が備える各要素と電気的に接続されている。制御部60は、各種の演算処理を実行しつつ、画像記録装置1の各要素の動作を制御する。図2に示されるように、制御部60は、CPU61、ROM62、RAM63、記憶部64等がバスライン65を介して相互接続された一般的なコンピュータで構成されている。ROM62は基本プログラム等を格納している。RAM63はCPU61が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶部64は、フラッシュメモリ、または、ハードディスク装置等の不揮発性の補助記憶装置によって構成されている。
【0034】
記憶部64にはプログラムPG1が格納されており、このプログラムPG1に記述された手順に従って、主制御部としてのCPU61が演算処理を行うことにより、各種機能が実現されるように構成されている。
【0035】
プログラムPG1は、通常、予め記憶部64等に格納されて使用されるものである。しかしながら、プログラムPG1は、例えば、光学メディア(CD−ROM等)、磁気メディア、半導体メモリ(フラッシュメモリ等)といった、可搬の記録媒体に記録された形態(プログラムプロダクト)で提供され、あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロード等により提供され、記憶部64等に適宜格納されるものであってもよい。
【0036】
また、制御部60では、入力部66、表示部67、通信部68がバスライン65に接続されている。入力部66は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータから各種の入力設定指示を受け付ける。表示部67は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU61による制御の下、各種情報を表示する。通信部68は、LAN等を介したデータ通信機能を有する。
【0037】
図3は、ズームレンズ2からの光の焦点位置を制御するための構成を示すブロック図である。図3に示されるように、制御部60においては、プログラムPG1に記述された手順に従って主制御部としてのCPU61が演算処理を行うことにより、第一制御部601および第二制御部603が実現される。なお、制御部60において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
【0038】
第一制御部601は、距離計測部47によって測定された距離の測定結果から、ヘッド部12とドラム部11との間の距離の変動量を測定し、該変動を吸収するように、円筒カム機構125を制御して、ヘッド部12からの光の焦点位置を制御する。
【0039】
第二制御部603は、温度センサー31が検出した温度に基づいて、温度変化によるヘッド部12(特に、ズームレンズ2)の膨張に対する、焦点位置の補正値を取得し、該補正値に基づいて、前記焦点位置を変更する。
【0040】
温度変動が起こると、特に鏡筒が熱膨張することで、ズームレンズ2を構成する各レンズの位置関係が、僅かに変化する。また、ズームレンズ2以外にも、感光材料9を保持するドラム部11またはヘッド部12を支持するエンジンベース51なども、熱膨張しうる。これらの部材の熱膨張により、ヘッド部12からの光の焦点位置に変動が生じてしまう。このため、本実施形態では、第二制御部603が円筒カム機構125を制御することによって、この焦点位置の変動を補正する。これにより、ヘッド部12からの光の焦点位置が最適となるように制御される。
【0041】
図4は、異なる環境温度における、ズームレンズ2の焦点面の位置を示すグラフである。図4において、横軸は、光軸方向における位置を示しており、縦軸は、焦点面の高さ方向における位置を示している。なお、図4のグラフは、光学設計ソフト(CODE V:サイバネット社製)を使って、環境温度を変えたときの、ズームレンズ2を構成する各レンズの曲率と厚みの変化、および、材質がアルミ(AL6061:膨張係数234.0×10−7 m/℃)の鏡筒の熱膨張をシミュレーションすることで、得たものである。
【0042】
ズームレンズ2は、一般的なレンズと同様に、球面収差を有している。このため、ズームレンズ2から出射された光は、図4に示されるように、焦点面が湾曲する。図4では、環境温度(ズームレンズ2の鏡筒周辺の温度、すなわち、温度センサー31が検出する部位の温度。)が10℃、20℃および30℃のときの、それぞれの焦点面の位置が図示されている。
【0043】
このシミュレーション結果によると、ズームレンズ2からの光の焦点位置は、環境温度に依存して変動することが明らかとなった。より具体的には、ズームレンズ2の場合、焦点位置の変動量は、環境温度に略比例することが分かった。例えば、図4に示されるように、焦点面の高さ位置「0」における、光軸方向の位置に着目すると、環境温度が10℃から20℃へ変化したとき(=温度が10℃変化したとき)の焦点面のフォーカスシフト量(ΔY1)と、環境温度が20℃から30℃へ変化したとき(温度が10℃変化したとき)のフォーカスシフト量(ΔY2)とが、略一致している。すなわち、少なくとも一般的な環境温度(例えば、10℃〜30℃)下では、像面の焦点面のフォーカスシフト量TAは、下記の式(1)のように、環境温度TPを変数と1次式で表すことができる。
【0044】
TA=α・(TP−TP0)・・・式(1)
【0045】
この式(1)において、TP0は、フォーカスシフト量を0とするときの基準の環境温度である。また、αは定数であり、環境温度が1℃変化したときのフォーカスシフト量に一致する。この式(1)によると、基準の環境温度からの温度差が発生したときの、フォーカスシフト量TAを、容易に算出することができる。
【0046】
画像記録装置1において画像記録が行われている間、第二制御部603は、この式(1)によって取得されるフォーカスシフト量を相殺するように、円筒カム機構125を制御する。つまり、第二制御部603は、温度センサー31から取得された環境温度TPを、式(1)に代入して、フォーカスシフト量TAを取得する。そして、第二制御部603は、ヘッド部12からの光の焦点位置を、フォーカスシフト量TAの分、シフトした方向とは反対側に戻すことで、補正を行う。つまり、第二制御部603は、式(1)を補正式として、算出されるフォーカスシフト量TAを補正値として取得する。
【0047】
このようにして取得した補正値に応じて、ズームレンズ2からの光の焦点位置を制御することにより、環境温度TPの変化によって生じる、焦点位置の変動を相殺することができる。このため、画像記録装置1における画像の記録を高精度に行うことができる。
【0048】
なお、上記説明では、第二制御部603が、式(1)に環境温度TPを代入することにより、補正値を取得している。しかしながら、補正値を取得する方法は、このようなものに限定されない。例えば、いくつかの環境温度TPと、それに対応するフォーカスシフト量TAとを記録したテーブルを予め用意しておき、第二制御部603が、検出された環境温度TPに対応するフォーカスシフト量TAを当該テーブルから取得して、該フォーカスシフト量TAから補正値を決定するようにしてもよい。このようなテーブルは、上記式(1)を用いることで容易に作成可能であるが、各環境温度TPにおけるフォーカスシフト量TAを逐一実測することでも作成可能である。
【0049】
図5は、比較例に係る画像記録装置1Aを示す図である。画像記録装置1Aは、図1に示される画像記録装置1とほぼ同様の構成を備えている。しかしながら、距離計測部47を支持するレンズガード45Aは、突出部451を備えておらず、ヘッド部12を覆う筐体53Aの+Y側の側面に取り付け固定されている。
【0050】
図6は、比較例に係る画像記録装置1A稼働時における、距離計測部47による距離の測定結果を示すグラフである。同図において、横軸は時間を示しており、左側の縦軸は温度を、右側の縦軸は距離をそれぞれ示している。また、同図中、実線で示されるグラフは、ベース部41の温度TP3を示しており、一点鎖線で示されるグラフは、ズームレンズ2の温度TP4を示しており、二点鎖線で示されるグラフは、ヘッド部12内の温度TP5を示している。
【0051】
図6に示されるように、画像記録装置1の稼働開始直後から4〜5時間の間は、各部位の温度TP3〜TP5がいずれも上昇することが判る(温度過渡状態)。また、稼働開始から4〜5時間が経過すると、各部位の温度TP3〜TP5は、ほとんど変化せずに、ほぼ一定の平衡状態に達することが判る(温度平衡状態)。
【0052】
一方、距離計測部47による距離の計測結果は、グラフDP1で示されるように、グラフDP1は、一旦距離が大きくなった後、徐々に下降していることが判る。なお、同条件で、繰り返し距離の計測を行ったところ、測定結果について、再現性が乏しい結果となった。また、グラフDP1に示されるように、短い間隔で計測結果が大きく揺らいでいることが判る。計測結果が変動し、かつ、揺らぐ原因としては、様々な理由が考えられるが、その一つとして、筐体53Aの変形が原因であると考えられる。つまり、筐体53Aが、環境温度の変化等により、捩れ変形して、筐体53Aに取り付けられているレンズガード45Aおよび距離計測部47が、押されたり引っ張られたりすることで、距離計測部47自体が+Y方向または−Y方向に変位したと考えられる。その結果、距離計測部47による、ズームレンズ2とドラム部11との間の距離の測定結果に不安定な変動が起こったものと考えられる。
【0053】
図7は、実施形態に係る画像記録装置1稼働時における、距離計測部47による距離の測定結果を示すグラフである。なお、図7に示されるグラフおいて、距離のスケール(1目盛り辺りの距離)は、図6に示されるグラフにおける、距離のスケールと一致している。本実施形態に係る画像記録装置1では、上述したように、レンズガード45が突出部451を有していることによって、レンズガード45の起立部453および距離計測部47が、筐体53の側面から離されている。
【0054】
図7に示されるグラフGP2によると、画像記録装置1稼働時における、ズームレンズ2とドラム部11との間の距離は、装置稼働直後において若干変動するが、2〜3時間経過した後は、ほぼ平衡状態に達していることが判る。また、図6に示されるグラフGP1において観察された揺らぎは、グラフGP1ではほとんど発生していないことが判る。
【0055】
以上の計測結果から、距離計測部47およびこれを支持する支持部材(レンズガード45)を、筐体53から離間させることによって、距離計測部47により計測される距離の変動および揺らぎを抑制することができる。
【0056】
筐体53Aの変形により、計測される距離に変動および揺らぎが生じた場合、ズームレンズ2とドラム部11との間の距離に変動がないにも関わらず、第一制御部601によって焦点位置が変更されることとなる。このため、焦点が合っていない状態で画像記録が行われてしまい、画像記録の精度が極めて低くなってしまう。これに対して、本実施形態の画像記録装置1では、距離計測部47による距離の計測結果において、変動および揺らぎが発生することを抑制することができる。このため、ズームレンズ2とドラム部11との間の距離を正確に計測することができる。したがって、第一制御部601により、ズームレンズ2からの光の焦点位置を適切に制御することができるため、画像記録を高精度に行うことができる。
【0057】
<2. 変形例>
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態に係る画像記録装置1は、ドラム部11に保持された感光材料9に光を照射して、画像形成するように構成されている。本発明は、感光材料9をドラム部11で支持する代わりに、平面状の支持体に固定して、該平面上の支持体を副走査方向に移動させながら、画像の記録が行う場合にも有効である。この場合において、例えば、感光材料9を定位置に固定した状態で、ヘッド部12自体を走査方向および副走査方向の双方に移動させてもよい。
【0059】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A 画像記録装置
11 ドラム部
12 ヘッド部
120 ヘッド本体部
121 光源部
125 円筒カム機構
126 レーザ光源
127 光源光学系
128 空間光変調デバイス
13 ヘッド移動機構(移動機構)
2 ズームレンズ(光学ユニット)
31 温度センサー(温度検出部)
41 ベース部
43 ガイド部
45,45A レンズガード
451 突出部
453 起立部
47 距離計測部
53,53A 筐体
60 制御部
601 第一制御部
603 第二制御部
9 感光材料(記録媒体)
Pos1 照射位置
TA フォーカスシフト量
TP 環境温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7