(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035116
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】円形状製品の検査装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20161121BHJP
【FI】
G01N21/95 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-246046(P2012-246046)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-95579(P2014-95579A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】川波 麻世
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豊和
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2005/040775(WO,A1)
【文献】
特開平06−288928(JP,A)
【文献】
特開平04−198846(JP,A)
【文献】
特開平10−239243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状製品を検査するための検査装置であって、
前記円形状製品を回転可能に載置するための回転治具と、
前記円形状製品は回転方向に沿って繰り返しパターンからなる複数のスリットを有し、
前記円形状製品を一方から照らすためのコリメート照明手段と、
前記円形状製品のスリットからの透過光による検査画像を取り込むためのテレセントリックレンズを用いた撮像手段とを備え、
前記回転治具にて円形状製品を回転させながら、前記撮像手段にて取得した検査画像をマスター画像と照合する照合手段を有し、
前記照合手段は、繰り返しパターンのマッチング処理手段を有することを特徴とする円形状製品の検査装置。
【請求項2】
円形状製品を検査するための検査方法であって、
前記円形状製品を回転可能に載置するための回転治具と、
前記円形状製品は回転方向に沿って繰り返しパターンからなる複数のスリットを有し、
前記円形状製品を一方から照らすためのコリメート照明手段と、
前記円形状製品のスリットからの透過光による検査画像を取り込むためのテレセントリックレンズを用いた撮像手段とを備え、
前記回転治具にて円形状製品を回転させながら前記撮像手段を用いて当該円形状製品の検査画像を帯状に展開取得するステップと、
帯状に展開したマスター画像に、検査基準位置をパターンマッチング処理により基準合せするステップと、前記検査画像とマスター画像とを照合するステップとを、有することを特徴とする円形状製品の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理により製品の良否を検査する装置及び方法に関し、特に略円盤状の円形状製品の検査に係る。
【背景技術】
【0002】
円筒形状容器,円筒体の製品を外観検査する方法として特許文献1,2が公知である。
特許文献1は円筒形状容器の側面1回転分の画像を検査画像として、ブロック毎に設定してある領域内でテンプレートマッチングを行って位置補正をする検査方法を開示する。
特許文献2は円筒体の側面画像を平坦に展開した変換画像にするとともに回転を複数回繰り返した合成画像を基準画像とするものである。
上記いずれの公報に開示する検査方法も対象製品を回転させて検査画像を取り込むものではあるが、検査に用いる基準画像を平準化しており、必ずしも個々の製品の検査精度が高いものではない。
特許文献3は円板状の対象物を回転させ、1回転分の画像データを複数の順次画像データとして一旦メモリ18に記憶格納し、基準となる硬貨の1番目の画像データと上記検査画像データと順次比較することで両硬貨の回転角度を対応させる技術を開示する。
しかし、表面状態像をリニアセンサにて電気信号に変換する撮像範囲を集光レンズにて取り込んでデータに基づいているために検査精度が充分に高いものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−047618号公報
【特許文献2】特許第4907330号公報
【特許文献3】特開平6−288928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は検査精度が高く、作業性に優れた円形状製品の検査装置及びその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、円形状
製品を検査するための検査装置であって、前記円形状製品を回転可能に載置するための回転治具と、
前記円形状製品は回転方向に沿って繰り返しパターンからなる複数のスリットを有し、前記円形状製品を
一方から照らすためのコリメート照明手段と、
前記円形状製品のスリットからの透過光による検査画像を取り込むためのテレセントリックレンズを用いた撮像手段とを備え、前記回転治具にて円形状製品を回転させながら、前記撮像手段にて取得した
検査画像をマスター画像と照合する照合手段を有
し、前記照合手段は、繰り返しパターンのマッチング処理手段を有することを特徴とする。
ここでコリメート照明手段とは、照らす光の方向を平行光化したものをいう。
また、テレセントリックレンズとは、主光線が焦点を通るように配列された光学系をいい、主光線が光軸に対して平行なレンズ、つまり画角が0°となるレンズをいう。
【0006】
本発明の検査対象となる製品は、略円盤状の外形を有する円形状製品全般に適用できるが、特に円形状製品を中心廻りに回転させた場合に回転方向に沿って繰り返しパターンを有し、パターン毎に製品検査するのに有用である。
【0007】
また、本発明に係る
検査方法は、円形状
製品を検査するための検査方法であって、前記円形状製品を回転可能に載置するための回転治具と、
前記円形状製品は回転方向に沿って繰り返しパターンからなる複数のスリットを有し、前記円形状製品を
一方から照らすためのコリメート照明手段と、
前記円形状製品のスリットからの透過光による検査画像を取り込むためのテレセントリックレンズを用いた撮像手段とを備え、前記回転治具にて円形状製品を回転させながら前記撮像手段を用いて当該円形状製品の検査画像を帯状に展開取得するステップと、帯状に展開したマスター画像に、検査基準位置をパターンマッチング処理により基準合せするステップと、前記検査画像とマスター画像とを照合するステップとを、有することを特徴とする。
【0008】
本発明において対象製品が複数の型番からなる等、複数の製品群が存在する場合には予め、対象商品に附されている印字、該印等をカメラで読取り、製品の種別を特定するのが好ましい。
【0009】
製品の良否の検査において傾向に特徴がある部位で領域分けをし、それぞれで良否判定のためのしきい値を設定すると高精度で安定性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る検査装置及び方法は、円形状製品の検査画像及び基準画像(マスター画像)を取り込む際にコリメート照明手段とテレセントリックレンズ系の撮像手段を用いたので、撮像時に深さ方向に画像歪みが生じにくく、検査精度が高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明に係る検査装置10の構成例を示す。
検査対象となる円形状のワーク1を載置し、回転制御する回転治具11を有する。
ワーク1を照明するコリメート照明12を有し、ワーク1の1回転分の外観をテレセントリックレンズ13を介して撮像するラインセンサカメラ14を有する。
本発明はワーク1の画像を取り込む際に、ラインセンサカメラ14を用いて直接光のみ取り込むようにし、太陽光等の外乱光を防ぐとともにコリメート照明手段とテレセントリックレンズ系の撮像手段の組み合せを用いてワークの形状の周囲からの廻り込み光を防ぎ、深度の高い画像を得ることができる。
本実施例ではワークの大きさ等により複数の品番を有するので、リング照明15にてワーク1を照らし、ワーク1の中央よりに刻印した文字を読み取るフレームカメラ16を備えた構成例になっている。
ワーク1から取得した画像データに基づいて、品番及び製品の良否を判定するための照合手段としての画像処理手段17を有する。
【0013】
本実施例で検査対象とした製品の外観を
図2に示す。
この製品は車両のオートマチックトランスミッションに使用されているトルクコンバーター用の部品であるステーターホイールである。
ステーターホイールは回転体であり、回転廻りに沿って概ね等間隔に複数のブレード3A,3B,3C,・・・が配置され、その間に複数のスリット3a,3b,3c,・・・が形成されている。
本発明に係る検査対象品は円形状の製品全般に適用できるが、このようなステーターホイールのように周廻りにブレード等が繰り返し有するものに特に適している。
本実施例におけるステーターホイールは、アルミニウム合金を用いたダイカスト鋳造にて製造されるものであり、鋳造時のバリ残りや欠肉の有無をマスター画像と照合判定する。
【0014】
図3に
図1に示した検査装置を用いたフロー図を示す。
検査を行うために、検査対象物(ステーターホイール)が回転治具11にセットされる(#1)。
図示されていない測定開始ボタンが操作されると測定が開始される(#2)。
まず、フレームカメラ16の撮像位置まで移動し(#3)、リング照明15がONされフレームカメラ16によって検査対象物の刻印部の撮影を実施する(#4)。
刻印部撮影画像にてあらかじめ準備しておく刻印部マスター画像を用いてパターンマッチング処理を実施して、セットされた測定対象物の刻印から測定対象物の品番を判別する(#5)。
刻印部の画像処理後にリング照明15をOFFし、結果より刻印部が読取り可の場合(#6Yes分岐)は次の処理へ、刻印部の読取りが不可の場合(#6分岐No)は読取不可フラグをONする(#7)。
刻印部の処理が終了したら、ラインセンサカメラ14を撮像位置まで動作させる(#8)。
動作完了後にコリメート照明12をONし回転治具11を回転させて検査対象部位の撮像を実施する(#9)。
撮像完了後にコリメート照明12をOFFする。
撮像実施後、読取不可フラグがONの場合(#10分岐No)、取得した画像とマスター画像を用いて品番判別処理を実施する(#11)。
品番判別処理(#11)終了後、もしくは読取フラグ(#10分岐Yes)の場合は対応する品番のマスター画像を読み出す(#12)。
測定対処物はダイカスト素形材であるため、繰り返しパターン毎(ブレード毎)に固体差が発生する傾向がある。
従って、本システムにおいては測定対象物の繰り返しパターン一つに対して一つのマスター画像を保有させる。
また、測定対象物は丸物であるため装置へのセット姿勢が毎回異なる。
測定対象物のセット姿勢を毎回固定することでも対応可能であるが、作業性悪化の要因となることより、マスター画像内と撮影画像撮内の繰り返しパターンを用いて撮像ズレ量を算出して撮影画像上にてセット姿勢補正処理を実施する(#13)。
本実施例の場合は具体例を段落(0015)に示す。
セット姿勢の補正処理実施後にマスター画像と照合(#14)し判定処理を実施するが、測定対象物の形状特性により判定領域を分割して、それぞれの領域においてバリ,欠肉に対するしきい値処理(#15)を実施する。
本実施例では、
図5,6に示す。
しきい値処理を実施後に総合判定を実施(#16)し、欠陥未検査(#17分岐Yes)の場合は処理を終了し、欠陥を検出(#17分岐No)した場合は欠陥部をモニタ上にマッピング(#18)後に処理を終了する。
【0015】
上記のフロー図に基づいてステーターホイールを検査する場合、マスター画像をブレード3A,3B,3C,・・・に対応したスリット部3a,3b,3c,・・・毎に準備し、透過光の検査画像をブレード間のスリット部毎に取り込むことで各ブレードのパターンマッチング処理し、検査画像のブレードとマスター画像のブレードを対応させる。
これにより、検査対象製品を回転治具11に載置する際にワーク1の載置角度を合せる必要がない。
【0016】
本実施例に係るステーターホイールの場合に円形状の中心に中心孔4を有し、外周よりに複数のブレード3A,3B,3C,・・・を有するとともにブレードの端部をリング状に連結した外形が円形状のリング部2を有している。
そこで、回転治具11にワークをセットした後に撮像する際に各ブレードの半径方向の中心(重心)とリング部2との間の各寸法を計測し、この寸法(差分座標)を用いてアフィン変換することでワークの中心ずれを補正してもよい。
【0017】
ブレード部のバリ残り及び欠肉を判定するのに
図4に示すようにブレード部間のスリット部から透過した光より、ブレード部の外形形状の検査画像の特徴的な領域に分けて、しきい値を定めた。
図5は、スリット部の上側と下側に表れるブレードの外形(部位A)のバリ残り、欠肉の判定しきい値を定めた例を示す。
図6は、スリット部の半径方向両側に表れる部位Bのバリ残り、欠肉の判定しきい値を定めた例を示す。
【符号の説明】
【0018】
1 ワーク
10 検査装置
11 回転治具
12 コリメート照明
13 テレセントリックレンズ
14 ラインセンサカメラ
15 リング照明
16 フレームカメラ
17 画像処理手段