特許第6035123号(P6035123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035123
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/36 20060101AFI20161121BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20161121BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20161121BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F23R3/36
   F23R3/28 B
   F23R3/28 F
   F02C7/22 A
   F02C7/22 B
   F02C7/22 C
   F02C7/28 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-257033(P2012-257033)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-105887(P2014-105887A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】林 明典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 俊文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−193878(JP,A)
【文献】 特開2012−047408(JP,A)
【文献】 特開平08−240129(JP,A)
【文献】 特開2005−345095(JP,A)
【文献】 特開平08−296851(JP,A)
【文献】 特開2011−075173(JP,A)
【文献】 特開2012−241982(JP,A)
【文献】 特開平02−213605(JP,A)
【文献】 特開2009−109180(JP,A)
【文献】 米国特許第05983642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C1/00−9/58
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から導入される燃焼空気に気体燃料を混合して燃焼し、生成した燃焼ガスをガスタービンに供給するガスタービン燃焼器であって、
燃焼空気と気体燃料とを燃焼して燃焼ガスを生成する内筒と、該内筒を収納した外筒と、該外筒の上流に位置するエンドカバーと、該エンドカバーに固定され内筒内部に設置されるバーナとを備え、
前記バーナが、気体燃料を噴射するための複数の気体燃料噴孔と、前記複数の気体燃料噴孔に気体燃料を分配するためのマニホールドと、前記バーナを前記エンドカバーに固定するためのバーナフランジと、前記マニホールドと前記バーナフランジとを接続するバーナボディとを有し、
前記エンドカバーと前記バーナフランジ、前記バーナボディの内部に気体燃料が流下する気体燃料流路が設けられ、該気体燃料流路が前記マニホールドと連絡するように構成され、
前記バーナフランジの内部に第二のマニホールドが設けられ、前記第二のマニホールドと前記マニホールドとを連絡するように前記気体燃料流路がバーナボディに設けられ、
前記エンドカバー内部に第三のマニホールドが設けられ、前記バーナフランジに設けた前記第二のマニホールドと連絡するように前記気体燃料流路が設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記エンドカバーと前記バーナフランジとの間に、気体燃料が外部に漏れるのを防止するためのシール部品が設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項又はに記載のガスタービン燃焼器において、
前記マニホールドと前記第二のマニホールドとを連絡する前記気体燃料流路、または前記第二のマニホールドと前記エンドカバーに設けた前記第三のマニホールドとを連絡する前記気体燃料流路のうち、少なくともいずれか一方が、前記バーナの周方向に複数設けられていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第二のマニホールドまたは前記第三のマニホールドのうち、少なくともいずれか一方が、燃料が流入する入口と燃料が流出する出口が前記バーナの周方向に対向する位置に配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記ガスタービン燃焼器の軸中心上流部に位置し、前記エンドカバーを介して前記バーナに固定され、液体燃料を前記内筒内部に噴射するための液体燃料ノズルが配置されたことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
未利用燃料の有効活用の観点から多様な燃料をガスタービン発電装置に使用するニーズが増えている。このような観点から燃料選択肢の自由度拡大に対応できる燃焼器として、液体燃料、気体燃料の何れにも対応可能なデュアル燃料対応燃焼器がある。デュアル燃料対応の燃焼器は、その内部に液体燃料を噴射するための液体燃料ノズル、気体燃料を噴射するための気体燃料ノズル、燃料と空気の混合を促進するための混合機構などを備えるため、燃焼器を構成する部品数が増え、その構造も複雑化している。
【0003】
このような燃焼器の一例として、特開2009-109180号公報記載のものなど多数提唱されている。一般に、燃焼器を構成する部品は、構成部品が経時劣化などによって損傷した場合、損傷した部品のみを交換できるように、複数の部品を組み合わせた構造とすることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-109180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、ガスタービン燃焼器では、多種多様な燃料に対応するため、燃焼器構造が複雑化し、それに伴って多数の部品から構成される。このため、燃焼器に供給される空気や燃料の通路は複数の部品と組み合って形成される。通常、複数の部品によって構成される燃料通路は、外部への燃料の漏れ出しが発生しないようにするため、連結部は溶接などによって固着させることが多い。しかし、この場合、例えば部品が経時劣化などによって損傷した時には、部品単体での交換ができなくなるため、燃焼器全体を交換することとなりコストが増大する。
【0006】
一方、燃焼器部品間をボルトなどによって機械的に組み立てる構造にすることで、上述した問題は解決できるが、この場合、燃料通路の連結部には燃料の漏洩を防止するため、シール部品を設置することが多い。このような場所に設けるシール部品はガスケットやメタルOリングなどを使用するのが一般的である。これらシール部品は、その機能を発揮するためにシール面間を均等に接面する必要がある。しかし、ガスタービン燃焼器では、空気の温度が数百度まで上昇するため、燃焼器部品もその温度に近い温度まで加熱される。このような高温部に数十度の燃料が供給されると、燃料が通過する部分は局部的に冷やされ、温度差が発生する。この温度差によって燃焼器部品には熱伸び差が発生するため、部品には歪みが生じ、部品のシール面間が均等に接面できなくなってシール性が損なわれる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、部品間の接続部などから燃料が外部へ漏洩することを防止でき、より信頼性の高い燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
圧縮機から導入される燃焼用空気に気体燃料を混合して燃焼し、生成した燃焼ガスをガスタービンに供給するガスタービン燃焼器であって、前記燃焼器は燃焼空気と気体燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する内筒と、該内筒を収納した外筒と、該外筒の上流に位置するエンドカバーと、該エンドカバーに固定され内筒内部に穿設されるバーナで構成され、前記バーナは、燃料と燃焼空気を混合するための混合器と、燃料を噴射するための複数の気体燃料ノズルと、複数の気体燃料ノズルに気体燃料を分配するためのマニホールドと、前記エンドカバーに固定するためのバーナフランジと、該マニホールドとバーナフランジを接続するバーナボディで構成され、前記エンドカバーとバーナフランジ、バーナボディの内部には気体燃料流路が設けられ、該気体燃料流路が前記マニホールドと連絡するように構成された燃焼器において、前記バーナフランジの内部に第二のマニホールドを設け、該第二のマニホールドと前記マニホールドとを連絡する気体燃料流路をバーナボディに設け、前記エンドカバー内部に第三のマニホールドを設け、前記第三のマニホールドと前記第二のマニホールドを連絡する気体燃料流路を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品間の接続部などから燃料が外部へ漏洩することを防止でき、より信頼性の高い燃焼器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1参考例におけるガスタービン全体構成図である。
図2】従来構造のバーナ周囲の部分縦断面図である。
図3参考例におけるバーナ周囲の部分縦断面図である。
図4】第の実施形態におけるバーナ周囲の部分縦断面図である。
図5】第の実施形態におけるバーナ周囲の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に示す本発明の各実施形態によれば、エンドカバーとバーナなどの複数部品の組合せによって気体燃料流路が形成される燃焼器においても、部品間の接続部などから燃料が外部へ漏洩することを防止でき、より信頼性の高い燃焼器を提供することができる。
【0012】
以下、本発明を用いたガスタービン燃焼器の実施形態について図面を参照し説明する。本発明の実施形態を説明する前に本発明の実施形態の前提となる参考例を説明する。
(参考例)
【0013】
本発明の参考例について、図1乃至図3を参照しつつ以下に説明する。図1は、本発明の参考例のガスタービン燃焼器の構成を縦断面図で示すと共に、これを備えるガスタービンプラントの全体構成を概略的に示す概略構成図である。ガスタービンプラントの全体構成は本発明の実施形態でも同様である。
【0014】
図1に示すガスタービンプラントは、主として、空気を圧縮して高圧の燃焼用空気を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される燃焼空気100と燃料とを混合して燃焼ガス102を生成する燃焼器3と、この燃焼器3で生成された燃焼ガス102が導入されるタービン2とから構成されている。なお、圧縮機1とタービン2、発電機4の軸は連結されている。
【0015】
上記燃焼器3は、燃焼空気100と燃料を燃焼して燃焼ガス102を生成する内筒7と、内筒7を収納した外筒5と、エンドカバー6およびエンドカバー6にボルト19で固定されたバーナ200によって構成される。バーナ200の外周にはバーナカバー13が設置され、バーナカバー13は内筒7の内部に挿入して固定される。
【0016】
バーナ200は、燃料と燃焼空気を混合するための混合器8と、燃料を噴射するための複数の気体燃料ノズル9と、複数の気体燃料ノズル9に気体燃料を分配するためのマニホールド17と、エンドカバー6にバーナ200を固定するためのバーナフランジ11と、マニホールド17とバーナフランジ11を接続するバーナボディ10で構成されている。また、バーナ200の軸中心位置には液体燃料を内筒7の内部に噴射するための液体燃料ノズル12が設置されている。
【0017】
気体燃料101は、エンドカバー6に設けられた気体燃料連絡管14からエンドカバー内部に形成した気体燃料流路15を通過し、バーナフランジ11、バーナボディ10の内部に設けた気体燃料流路18を通って、マニホールド17内部に送り込まれ、マニホールド17から複数の気体燃料ノズル9に燃料を分配して混合器8に向かって噴射する。
【0018】
ここで、エンドカバー6とバーナフランジ11間はボルト19によって固定されているため、図1のA部に示すようにエンドカバー6とバーナフランジ11面間の気体燃料流路周囲には、気体燃料101が外部へ漏洩するのを防止する目的で、例えば、ガスケットやOリングなどのシール部品を挟みこむのが一般的である。本参考例では、その一例としてOリング20を用いた例で示している。
【0019】
このように構成した燃焼器3における本発明の参考例は、バーナ200をエンドカバー6に固定するバーナフランジ11の内部に環状の第二のマニホールド16を設けたことである。
【0020】
上記のように構成した本発明の参考例の詳細事象について説明する。図2は比較対象の従来技術、図3は本発明の参考例のバーナ200周囲の縦断面図を示している。図2に示すように従来技術では、エンドカバー6内部に形成された気体燃料流路16から出た気体燃料101は、バーナフランジ11および、バーナボディ10の内部に設けられた気体燃料流路18を通ってマニホールド17に供給される。この時、エンドカバー6とバーナフランジ11の面間にはOリング20が設置されており、外部への気体燃料の漏洩を防止する構成となっている。燃焼器3に供給される燃焼空気は最高で数百℃まで上昇するのに対し、例えば、LNGなどの気体燃料の温度は数十℃と低い温度となる。このため、エンドカバー6やバーナ200を構成する複数の部品は、燃焼空気の温度に近い温度まで加熱されることになるが、気体燃料101が供給された場合には、燃料流路の周囲が部分的に冷やされることとなり、バーナ200の各部には大きな温度差が生じる。
【0021】
この温度差によって、例えば、図2のバーナフランジ11は、気体燃料流路から離れた位置では高温化による熱伸びで、L2は大きくなる。一方、気体燃料流路18に近い位置では、気体燃料101によって冷やされることでL1が小さくなるため、バーナフランジ11には歪みが生じる。このため、エンドカバー6とバーナフランジ11の面間には間隙が生じ、Oリングの塑性量を超えた間隙が生じると気体燃料103が外部へ漏洩する可能性がある。この場合、混合器8以外の部分に気体燃料103が流れることとなるため、本来火炎を形成すべき位置以外に火炎が付着し、燃焼器3を損傷させる可能性がある。
【0022】
このような、従来技術の構成に対し本発明の参考例では、図3に示す通りバーナフランジ11の内部に環状の第二のマニホールドを設けている。このような第二のマニホールドを設けることで、気体燃料101がバーナフランジ11に設けた第二のマニホールド内を通過し、バーナフランジ全体が冷やされる。そのため、バーナフランジ11には大きな温度差が発生し難くなり、歪みや間隙を生じることがないため、上記の課題を解決することができる。
【0023】
また、本参考例の効果をより発揮するため、第二のマニホールド16の入口と出口を周方向に対向する位置にすることで、第二のマニホールド16内全域に気体燃料を通過させることができるため、バーナフランジ11の温度をより均一にすることができ、信頼性の高い燃焼器を提供できる。
(第の実施形態)
【0024】
本発明の第の実施形態について、図4を参照しつつ以下に説明する。図4は本発明の第の実施形態を備えたバーナ200周囲の縦断面図を示したものである。本実施形態の基本的な構成は参考例と同様である。
【0025】
本実施形態では、参考例で形成したバーナフランジ11の第二のマニホールド16に加え、エンドカバー6内に環状の第三のマニホールド21を形成し、第二のマニホールド16と第三のマニホールド21を連絡する燃料流路22を形成したことである。
【0026】
上記のように構成した本発明の第の実施形態であれば、バーナ200が固定されるエンドカバー6についても、気体燃料101によって均等に冷やされるため、エンドカバー6には大きな温度差が発生し難くなり、参考例と同様の理由で、気体燃料の外部への漏洩を防止でき、参考例より信頼性の高い燃焼器3を提供することができる。
【0027】
また、本実施形態においても参考例と同様に、第三のマニホールド21の入口燃料流路23と出口燃料流路22、第二のマニホールド16の入口燃料流路22と出口燃料流路18を夫々周方向に対向する位置に設けることで、第三のマニホールド21、第二のマニホールド16内全域に気体燃料を通過させることができ、温度をより均一にすることが可能となる。
(第の実施形態)
【0028】
本発明の第の実施形態について、図5を参照しつつ以下に説明する。図5は本発明の第の実施形態を備えたバーナ200周囲の縦断面図を示したものである。本実施形態の基本的な構成は第の実施形態と同様である。
【0029】
本実施形態では、第2の燃料マニホールド16と、マニホールド17を連絡するバーナボディ10内部に設けた燃料流路18を周方向に複数設けている。
【0030】
参考例及び第1の実施形態では、燃料流路18、22を周方向1カ所に設けている。この場合、例えばバーナボディ10の周方向には温度差が発生し、熱伸び差が生じることになる。この熱伸び差によって熱応力が発生し、バーナボディなどのバーナ200構成部品を損傷させる可能性がある。
【0031】
上述した課題に対し、本発明の第の実施形態であれば、バーナボディ10内部の周方向に複数形成した気体燃料流路18を気体燃料101が通過するため、バーナボディ10の周方向の温度差を小さくすることができ、熱応力を低減できるため、バーナ200の構成部品の信頼性を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態では、燃料流路18を周方向に複数設けているが、環状の流路にしてもその効果を何ら損なうことはない。さらに、第二、三のマニホールド16、21を連絡する燃料流路22についても、複数設けることで前述した効果は同様に得られる。
【0033】
なお、以上に示した参考例及び本発明の各実施例では、液体燃料ノズル12を備えた燃焼器を想定し、環状の第二、第三のマニホールド16,21を設ける例を説明したが、必ずしも環状である必要は無く、種々の形状が考えられる。また、気体燃料101が外部へ漏洩するのを防止するためのシール部品として、Oリング20を設けた例を示したが、ガスケットなどの他のシール部品を適用しても良い。さらに、溶接によって部品を接続した場合にも、溶接部にかかる熱伸び差に起因した力が低減できるため、燃焼器の信頼性向上効果が見込める。
【符号の説明】
【0034】
1 圧縮機
2 タービン
3 燃焼器
4 発電機
6 エンドカバー
7 内筒
8 混合器
9 気体燃料ノズル
11 バーナフランジ
12 液体燃料ノズル
16、17、21 マニホールド
20 Oリング
100 燃焼空気
101 気体燃料
200 バーナ
図1
図2
図3
図4
図5