特許第6035131号(P6035131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035131
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20161121BHJP
   B60K 17/06 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   F16H57/04 J
   B60K17/06 D
   B60K17/06 G
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-265242(P2012-265242)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109353(P2014-109353A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅也
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−046856(JP,U)
【文献】 実開昭60−084857(JP,U)
【文献】 実開昭56−119053(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B60K 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(4)の駆動力をメインのギヤボックス(3a)とサブのギヤボックス(15)に内装する走行変速装置を介して車輪を伝動するように構成した作業車両(1)において、前記メインのギヤボックス(3a)と前記サブのギヤボックス(15)に内装される歯車を、サブのギヤボックス(15)の軸装部(47)に内装する伝動軸(20)を介して連結すると共に、前記軸装部(47)に前記メインのギヤボックス(3a)と前記サブのギヤボックス(15)に亘る貫通孔(56)を穿設し、前記メインのギヤボックス(3a)に貯留されるオイルと前記サブのギヤボックス(15)に貯留されるオイルを、前記サブのギヤボックス(15)の軸装部(47)と前記伝動軸(20)との間の隙間、及び前記軸装部(47)に穿設した前記貫通孔(56)の両者を介して相互に流通可能に構成し、前記貫通孔(56)の前記サブのギヤボックス(15)側の開口を、前記サブのギヤボックス(15)に内装された複数の歯車(51)(52)の噛合位置近傍に設け、前記複数の歯車(51)(52)の回転により前記メインのギヤボックス(3a)に貯留されるオイルが前記サブのギヤボックス(15)に流入し、或いは前記サブのギヤボックス(15)に貯留されるオイルが前記メインのギヤボックス(3a)に流入するように構成することを特徴とする
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインのギヤボックスとサブのギヤボックスを介して車輪を駆動する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの駆動力をメインのギヤボックスとサブのギヤボックスに内装する走行変速装置を介して変速し、走行を行なうように構成したトラクタは既に公知である(例えば特許文献1)。
上記トラクタは、エンジンの駆動力をメインのギヤボックス(後ミッションケース)に内装する走行変速装置を介して後輪を駆動すると共に、メインのギヤボックスにカバーフレームを介して設けられるサブのギヤボックス(前ミッションケース)に前輪伝動機構を内装して前輪を駆動するようにしている。そして、メインのギヤボックスとサブのギヤボックスは、各ギヤボックス内に個別に貯留されているオイルによって、走行変速装置や前輪伝動機構のギヤ及びベアリングの潤滑を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4960938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるトラクタは、前後に配設されるサブのギヤボックスとメインのギヤボックスに、潤滑に用いるオイルを個別に貯留しなければならず、また各ギヤボックスに対するオイル交換等の作業も個別に行わなければならない等の課題がある。
そこで、図3に示すように、サブのギヤボックスをメインのギヤボックスの前方に設けて、メインのギヤボックスに貯留するオイルによってサブのギヤボックスの潤滑を行うことが考えられ、この場合には、サブのギヤボックスの潤滑をスムーズにするため、サブのギヤボックスとメインのギヤボックスとをパイプを介して連通させることにより、パイプ内を流通するオイルによって潤滑を促進させてギヤ室内の油温の上昇を抑制することができる。然しながら、上記パイプを用いた潤滑構造では、パイプをサブのギヤボックスの外側に沿って取付けねばならず、このための部品コスト及び取付部等の加工コストが大きくなると共に、ケース外に露出するパイプに泥土等が付着する等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、エンジン(4)の駆動力をメインのギヤボック(3a)とサブのギヤボックス(15)に内装する走行変速装置を介して車輪を電動するように構成した作業車両(1)において、前記メインのギヤボックス(3a)と前記サブのギヤボックス(15)に内装される歯車を、サブのギヤボックス(15)の軸装部(47)に内装する伝動軸(20)を介して連結すると共に、前記軸装部(47)に前記メインのギヤボックス(3a)と前記サブのギヤボックス(15)に亘る貫通孔(56)を穿設し、前記メインのギヤボックス(3a)に貯留されるオイルと前記サブのギヤボックス(15)に貯留されるオイルを、前記サブのギヤボックス(15)の軸装部(47)と前記伝動軸(20)との間の隙間、及び前記軸装部(47)に穿設した前記貫通孔(56)の両者を介して相互に流通可能に構成し、前記貫通孔(56)の前記サブのギヤボックス(15)側の開口を、前記サブのギヤボックス(15)に内装された複数の歯車(51)(52)の噛合位置近傍に設け、前記複数の歯車(51)(52)の回転により前記メインのギヤボックス(3a)に貯留されるオイルが前記サブのギヤボックス(15)に流入し、或いは前記サブのギヤボックス(15)に貯留されるオイルが前記メインのギヤボックス(3a)に流入するように構成することを特徴とする
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、メインのギヤボックスとサブのギヤボックスに内装される歯車を、サブのギヤボックスの軸装部に内装する伝動軸を介して連結すると共に、当該軸装部にメインのギヤボックスとサブのギヤボックスに亘る貫通孔を穿設し、メインのギヤボックスに貯留されるオイルとサブのギヤボックスに貯留されるオイルを、サブのギヤボックスの軸装部と伝動軸との間の隙間、及び軸装部に穿設した貫通孔の両者を介して相互に流通可能に構成したことにより、軸装部内の間隙と貫通孔によってサブのギヤ室とメインのギヤ室を結ぶオイルの循環路が形成され、サブのギヤボックス内のギヤ及びベアリング等を確実に潤滑することができると共に、ギヤ室内のオイルの油温の上昇を抑制することができる。また軸装部の側壁内に貫通孔を穿設するので、ギヤボックスの潤滑構造を簡潔で廉価な構成にすることができ、サブのギヤボックス側の貫通孔の開口を、サブのギヤボックスに内装された歯車の噛合位置近傍に設け、当該歯車の回転によりメインのギヤボックスに貯留されるオイルがサブのギヤボックスに流入し、或いはサブのギヤボックスに貯留されるオイルがメインのギヤボックスに流入するように構成することにより、ギヤ室内で噛合回転する歯車のギヤポンプ作用によって、オイルを効率的に循環させて潤滑を確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】トラクタの全体側面図である。
図2】トラクタの伝動装置を示すギヤボックスの概略構成図である。
図3】HSTケースとセンタケースとサブのギヤボックスの構造及び伝動装置を示す図4におけるA−A線断面図である。
図4】センタケースとサブのギヤボックスの構造を示す正面図である。
図5図4におけるB−B線断面図である。
図6図4におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1は農業用のトラクタ(作業車両)であり、トラクタ1は前輪2と後輪2aとを前後左右に有する車体3に、前側からエンジン4を配設してボンネット5で覆い、その後方にハンドル及び座席等からなる操縦部6をキャビン7で覆い、機体後部に耕耘装置等の作業機を装着して耕耘作業等を行なう。このトラクタ1は図2に示すように、車体3の本体部を、エンジン4に連結するクラッチハウジング9とHSTケース10とセンタケース11とベアリングホルダ12とトランスミッションケース13とで構成し、これらを一連に連結して構成している。
【0009】
また、上記センタケース11とベアリングホルダ12とトランスミッションケース13とで本発明のメインのギヤボックス3aを構成し、これらのケース内に走行変速装置A及びPTO伝動装置Bを内装している。またクラッチハウジング9とHSTケース10とセンタケース11の上部には操縦部6を設置している。そして、後部のトランスミッションケース13にリヤアクスルケースを介して軸架される左右の後輪2aは走行変速装置Aによって駆動され、エンジン4の下部に固設される前部フレーム3bにフロントアクスルケースを介して軸架される左右の前輪2は、ギヤボックス3aの前部に連結されるサブのギヤボックス15内に設けた前輪伝動機構Cを介して駆動するようにしている。
【0010】
上記サブのギヤボックス15は、内部に後述する前輪入力軸20をカップリング21を介してセンタケース11側の走行駆動軸22と接続可能に軸支した状態で、HSTケース10の下方において、センタケース11の前壁11aに取付けられている。そして、前輪伝動機構Cへの潤滑は、センタケース11側に貯留されるオイルで行うようにしている。尚、オイルはメインのギヤボックス3a内において図3に2点鎖線で示すように、サブのギヤボックス15より高い油面レベルLを形成するようにメインギヤ室3cに貯留されている。
【0011】
次に、図2図4を参照しトラクタ1の走行伝動装置について説明する。先ず、クラッチハウジング9内には、エンジン出力軸4aから主クラッチ4bを介して回転駆動されるクラッチ軸16を軸支しており、該クラッチ軸16は軸後端を、HSTケース10の内部に設置される油圧式無段変速装置(HST)17の入力軸18に接続している。油圧式無段変速装置17は、入力軸18を後方に向け貫通させた状態で有する可変容量型の油圧ポンプ17aと、変速した回転を出力するモータ軸19を有する油圧モータ17bとによって構成している。
【0012】
またセンタケース11内には、前記入力軸18に一方向クラッチ18aを介して接続されるPTO伝動装置Bの作業伝動軸25を、ホルダ12及びミッションケース13に軸支していると共に、その下方に走行伝動用の第1ギヤ26を有する第1軸27をモータ軸19に係合軸支している。また第1軸27の下方には、第2軸(前記走行駆動軸)22をベアリングホルダ12とによって軸支している。この第2軸22には、一体化された径大な第2ギヤ28と径小の第3ギヤ29とを遊転自在に軸支していると共に、後部に前輪クラッチギヤ30を前後方向に移動自在に係合軸支している。上記第2ギヤ28は第1ギヤ26と噛合させている。
【0013】
そして、第2軸22の上方(伝動下流側)には、上記第3ギヤ29と噛合する第4ギヤ31を固設した筒軸状の第3軸32をセンタケース11とホルダ12とで軸支しており、該第3軸32には、前記前輪クラッチギヤ30と噛合自在な前輪伝動ギヤ33と、後述する第5軸(後輪駆動軸)42に軸支される前輪駆動ギヤ(図示せず)と噛合する第5ギヤ35とを一体化させて遊転自在に軸支している。また第3軸32の後部内には、低速ギヤ36と中速ギヤ37と高速ギヤ39とを固設する第4軸40を係合軸支し、該第4軸40の後端をトランスミッションケース13の軸支壁13aに軸支している。
そして、第4軸40の上方には、図示しない複数の変速ギヤ及び前輪駆動ギヤを有する第5軸42を軸支しており、トランスミッションケース13の後部に設置されるデフ装置41にピニオンギヤを介して伝動し左右の後輪2aを駆動するようにしている。
【0014】
上記のように構成される走行変速装置Aは、油圧式無段変速装置17の出力軸19から出力される正転及び逆転動力を、第1ギヤ26から第2ギヤ28を回転し同時回転する第3ギヤ29から、第4ギヤ31を回転し同時に第3軸32と第4軸40を介し低速ギヤ36と中速ギヤ37と高速ギヤ39とを回転し、これら各ギヤに択一的に噛合する第5軸の変速ギヤの回転によりピニオンギヤを介してデフ装置41に伝動し、後輪2aを低速回転(1速)又は中速回転(2速)又は高速回転(3速)させることができる。
【0015】
このとき第5軸42に固設される前輪駆動ギヤは前記第5ギヤ35を常時噛合によって回転させており、同時回転している前輪伝動ギヤ33に前輪クラッチギヤ30が噛合操作されるとき、第2軸22から前輪伝動機構Cの前輪入力軸20に伝動する。
これにより前輪入力軸20は前輪出力軸20aを回転させて、該前輪出力軸20aからプロペラシャフト2bを介して、前輪2は駆動されトラクタ1は4輪駆動状態になる。
一方、入力軸18から一方向クラッチ18aを介して伝動される作業伝動軸25の回転動力はPTO伝動装置Bに伝動されて、ミッションケース13の後部に突設されるPTO軸25aに伝動される。
【0016】
次に、図4図6を参照しサブのギヤボックス15及びその潤滑構造について説明する。このサブのギヤボックス15は、センタケース11の前側壁11aに取付自在なフランジ部46と、前記軸装空間部15aを形成する筒状の軸装部47と、該軸装部47の前端でギヤ室48を形成するギヤボックス部49とを一体化させて、内部に前輪伝動機構Cを内装している。
【0017】
上記軸装部47の軸装空間部15a内には、前輪入力軸20と第2軸(前輪出力軸)22とをカップリング21で接続した状態で挿入することにより、軸周りにオイルを流通させる隙間(上方貫通孔)15bを前後方向に形成している。またギヤボックス部49の開口は、前輪出力軸20aを軸支して突出させるケース蓋50によって覆うことにより、ギヤ室48を液密構造にしている。これにより前輪出力軸20aは、ケース蓋50から突出する軸端にプロペラシャフト2bが着脱自在に接続される。
【0018】
この構成において、前輪入力軸20と前輪出力軸20aとは、それぞれ軸端側に入力ギヤ51と出力ギヤ52を一体的に設けており、各ギヤ51,52の前後にベアリング53を軸装している。そして、前輪入力軸20と前輪出力軸20aは、後側のベアリング53をギヤ室48内に嵌合させた状態で、前部側のベアリング53をケース蓋50に嵌合させて、図5で示すように入力ギヤ51と出力ギヤ52を噛合せて軸支することにより前輪伝動機構Cを構成している。
【0019】
また図4図5で示すように前輪出力軸20aは、前輪入力軸20の下方で一側に偏寄させた前輪伝動位置に配設されて、前端部をケース蓋50から突出させている。尚、上記前輪出力軸20aの突出位置は、ギヤボックス部49がHSTケース10等に接当しない範囲において、必要により前輪入力軸20の軸周りの所望位置に配設して構成することができる。
【0020】
一方、軸装部47は、その外周の下部側に厚肉の突条をなして突出する突起部55を前後方向に設けて、該突起部55とフランジ部46とギヤボックス部49とを一体的に接続形成している。そして、軸装部47の突起部55内には、ギヤ室48とセンタケース11内とを連通させる貫通孔56を、前記軸装空間部15aと略平行状をなすように穿設している。これによりサブのギヤボックス15は油面レベルLの下方で、内部に間隙15bとギヤ室48と貫通孔56とメインギヤ室3cとによるループ状の循環路を形成し、メインのギヤボックス3a内のオイルをギヤ室48に流通させるようにしている。
尚、軸装部47の側壁が厚肉である場合には、貫通孔56は突起部55を設けることなく側壁内に形成することができる。
【0021】
また貫通孔56は図4図5に示すように、サブのギヤボックス15側の開口をギヤ室48に内装される歯車(入力ギヤ51又は出力ギヤ52)の歯先近傍に設け、且つ後開口部を前輪入力軸20を軸支するベアリング57の下方でセンタケース11内に臨ませている。これにより両ギヤ51,52の回転によりメインのギヤボックス3aに貯留されるオイルがサブのギヤボックス15に流入し、或いはサブのギヤボックス15に貯留されるオイルがメインのギヤボックス3aに流入するようにしている。
【0022】
即ち、上記潤滑構造によれば図4に矢印で示すように、前輪入力軸20が左回転(前進回転)し且つ入力ギヤ51と噛合する出力ギヤ52が右回転するとき、両ギヤ51,52は液密のギヤ室48内でギヤポンプ作用を行い、ギヤ室48内のオイルを歯先近傍に開口する貫通孔56からセンタケース11内に送り込み、同時にセンタケース11内のオイルを間隙15bを介してギヤ室48内に吸込む。
【0023】
また前輪入力軸20が反矢印方向に右回転(後進回転)するときは、入力ギヤ51と噛合する出力ギヤ52が左回転することに基づき、上記とは逆向きのギヤポンプ作用を行い、貫通孔56からセンタケース11内のオイルをギヤ室48内に吸込むと共に、ギヤ室48内のオイルを間隙15bを介してセンタケース11内に送り出す。従って、上記潤滑構造を備えるサブのギヤボックス15は、前輪入力軸20の前後進回転時にメインのギヤボックス3a内のオイルをギヤ室48に強制循環させることができる。
【0024】
以上のように構成されるトラクタ1は、エンジン4の駆動力を油圧式無段変速装置17のモータ軸19bから出力される前進回転を、メインのギヤボックス3a内の走行変速装置Aを介して選択された変速回転によってデフ装置41を介して後輪2aを駆動する。このとき図示する前輪2の伝動切り状態から、前輪クラッチギヤ30を前輪伝動ギヤ33に噛合操作することにより、サブのギヤボックス15内で第5軸42の変速回転を第2軸22から前輪入力軸20に伝動し、入力ギヤ51と出力ギヤ52の噛合を介して、前輪出力軸20aを前進回転させ前輪2を駆動して後輪2aと共に4輪駆動状態にすることができる。
【0025】
そして、上記サブのギヤボックス15は、軸装部47にメインのギヤボックス3aとサブのギヤボックス15に亘る貫通孔56を隙間15aとは別に穿設しループ状の循環路を形成するため、メインのギヤボックス3a内のオイルをギヤ室48に流通させて潤滑することができると共に、オイルの供給や交換等の作業をメインのギヤボックス3a側から行うことができる。また貫通孔56のサブのギヤボックス15側の開口を、内装する入力ギヤ51又は出力ギヤ52の歯先近傍に設けているため、当該ギヤ51,52の前進回転時には、メインのギヤボックス3aに貯留されるオイルをサブのギヤボックス15に流入させ、且つギヤ51,52の後進回転時には、サブのギヤボックス15に貯留されるオイルをメインのギヤボックス3aに流入させる。
【0026】
従って、ギヤ室48と貫通孔56及び間隙15bとメインのギヤボックス3aとを循環するオイルは、入力ギヤ51と出力ギヤ52及び各ベアリング53に常時強制的に供給されるため、サブのギヤボックス15内に多量のオイルを貯留させる無駄を無くしながら、前輪入力軸20及び前輪出力軸20aのスムーズな回転を促進すると共に、ギヤ室48内のオイルの昇温を抑制し前輪2を駆動することができる。
【0027】
また上記貫通孔56は軸装部47の側壁内に穿設しているため、サブのギヤボックス15の潤滑構造を簡潔で廉価な構成にすることができる。即ち、ギヤ室48とセンタケース11とを連通させてオイルを流通させる油路形成手段としては、上記貫通孔56の代わりにパイプを軸装部47の外側に取付ける手段によっても行うことができるが、この場合にはパイプ油路を構成するための、パイプと取付け用の部品数が多くなると共に、取付加工及び取付作業コストが増大すると共に、軸装部47の外側に突出するパイプに、耕耘作業時等に飛散する泥土が付着し易い等の欠点を生ずる。
【0028】
これに対し実施形態の潤滑構造は、サブのギヤボックス15の鋳造時に貫通孔56の形成も同時的に行なうことができるので、油路構成コストを低くすることができると共に、サブのギヤボックス15をシンプルな形状にすることができる。また上記のようにギヤ室48内への潤滑を確実に行なうことができるサブのギヤボックス15は、軸装部47の長さ或いはギヤ室48の形状等の変更が容易であるため、各種大きさ等の異なるトラクタ1に対しメインのギヤボックス3a側の兼用化を図りながら、サブのギヤボックス15を下方に大きく突出させることなく取付けることができる。また前輪2とサブのギヤボックス15の間の機体腹部のスペースを十分に確保することもできるので、モアー等の作業機の設置を行い易くすることができる等の特長がある。
【符号の説明】
【0029】
1 トラクタ(作業車両)
2 前輪
2a 後輪
3 車体
3a メインのギヤボックス
4 エンジン
11 センタケース
15 サブのギヤボックス
15a 軸装空間部
15b 間隙
20 前輪入力軸
47 軸装部
48 ギヤ室
51 入力ギヤ
52 出力ギヤ
56 貫通孔
A 走行変速装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6