特許第6035133号(P6035133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035133
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】油圧シリンダ式拡大ヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/32 20060101AFI20161121BHJP
   E21B 10/44 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   E21B10/32
   E21B10/44
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-269192(P2012-269192)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-114587(P2014-114587A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】594014580
【氏名又は名称】大和基工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061619
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 武文
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】安達 勝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一雄
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−332253(JP,A)
【文献】 特開昭57−140491(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0193250(US,A1)
【文献】 特開2008−045350(JP,A)
【文献】 特開2005−315053(JP,A)
【文献】 特開2006−194022(JP,A)
【文献】 米国特許第02116903(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−19/24
E21B 44/00−44/10
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に掘削用ヘッド4を有するヘッド本体1の外筒2に、油圧シリンダ10により拡縮する拡大翼5を設け、前記油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は前記外筒2内に上下に分割した状態で内装し、該シリンダチューブ12内には前記拡大翼5を拡縮させるピストン11を設けた油圧シリンダ式拡大ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14とに上下に分割して構成し、上側チューブ13と下側チューブ14内に単体のピストン11を上下動のみ自在に嵌合させ、上側チューブ13と下側チューブ14との間を、前記拡大翼5を拡縮させるピストン11の係合溝31が移動する構成とした油圧シリンダ式拡大ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記外筒2は、上側チューブ13の上方所定位置で、上部部材35と下部部材36とに上下に分割する分割部37を設け、下部部材36内に上側チューブ13と下側チューブ14を設けた油圧シリンダ式拡大ヘッド。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、前記シリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方から何れか他方へピストン11が移動しても、ピストン11は上側チューブ13と下側チューブ14の両者に跨って嵌合する構成とした油圧シリンダ式拡大ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削作業ロッドの下端部に接続される、油圧シリンダのピストンの移動により拡大翼を拡開、閉縮させる油圧シリンダ式拡大ヘッドに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッド本体の内側部分を、油圧シリンダ構造のシリンダチューブとし、シリンダチューブ内に設けたピストンの移動により、拡大翼を拡開させる構成は、公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−140491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、油圧シリンダの油密構造の重要部分であるピストンの摺動面への土砂の進入を防止することは構造上不可能であり、摺動面が傷つく大きな要因となる。
ピストンの摺動面の損傷により、油密構造に齟齬が生じた場合、ヘッド本体を廃棄することになり、不経済である。
また、損傷部分の修正加工する場合には、スクリュー羽根と掘削用ヘッドと一体のヘッド本体の内面を再加工しなければならず、特殊な大型加工機械が必要になる等、長期間使用する際の整備・修理コストが多大に掛かり不経済であるという課題がある。
本願は、拡大翼の油圧シリンダの構成を工夫し、油圧シリンダのメンテナンスおよび交換を容易にして整備・修理コストの低減を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、下端に掘削用ヘッド4を有するヘッド本体1の外筒2に、油圧シリンダ10により拡縮する拡大翼5を設け、前記油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は前記外筒2内に上下に分割した状態で内装し、該シリンダチューブ12内には前記拡大翼5を拡縮させるピストン11を設けた油圧シリンダ式拡大ヘッドとしたものである。
請求項2の発明は、前記油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14とに上下に分割して構成し、上側チューブ13と下側チューブ14内に単体のピストン11を上下動のみ自在に嵌合させ、上側チューブ13と下側チューブ14との間を、前記拡大翼5を拡縮させるピストン11の係合溝31が移動する構成とした油圧シリンダ式拡大ヘッドとしたものである。
請求項3の発明は、前記外筒2は、上側チューブ13の上方所定位置で、上部部材35と下部部材36とに上下に分割する分割部37を設け、下部部材36内に上側チューブ13と下側チューブ14を設けた油圧シリンダ式拡大ヘッドとしたものである。
請求項4の発明は、前記シリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方から何れか他方へピストン11が移動しても、ピストン11は上側チューブ13と下側チューブ14の両者に跨って嵌合する構成とした油圧シリンダ式拡大ヘッドとしたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、上下に分割したシリンダチューブ12のうち、損傷した部分のシリンダチューブ12を分割した状態で取り外し、メンテナンスまたは交換すればよく、作業コストの上昇を抑制することができ、また、シリンダチューブ12を上下に分割できるので、旋盤加工機等の汎用加工機械を使用でき、より安価な修正加工が可能になる。
請求項2の発明では、油圧シリンダ10のシリンダチューブ12を、上側チューブ13と下側チューブ14とに上下に分割して構成しているので、シリンダチューブ12の分割構成を簡素に実現でき、また、上側チューブ13と下側チューブ14との間を拡大翼5を拡縮させるピストン11の係合溝31が移動する構成としているので、シリンダチューブ12を軽量にし、ヘッド本体1全体の軽量化を図ることができる。
請求項3の発明では、外筒2の上側チューブ13の上方所定位置で、上部部材35と下部部材36とに上下に分割する分割部37を設けているので、上側チューブ13と下側チューブ14との選択的な着脱作業を容易にできる。
請求項4の発明では、シリンダチューブ12を上下に分割した構成でありながら、油圧シリンダ10の作動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】拡大翼が閉縮状態のヘッド本体の縦断側面図。
図2】拡大翼が拡開状態のヘッド本体の縦断側面図。
図3】拡大翼が最大拡開状態のヘッド本体の縦断側面図。
図4】A−A断面図。
図5】拡大翼が閉縮状態の外筒の縦断側面図。
図6】拡大翼が拡開状態の外筒の縦断側面図。
図7】拡大翼が最大拡開状態の外筒の縦断側面図。
図8】ヘッド本体の他の実施例の縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例を図により説明する。1は、掘削スクリューロッド、掘削撹拌ロッド等の掘削作業ロッドの下端部に接続される拡大ヘッドのヘッド本体であり、拡大球根の造成に使用され、中空の外筒2を有する。外筒2の外周にはスクリュー羽根3を設ける。外筒2の下端に掘削用ヘッド4を設ける。
【0009】
前記掘削用ヘッド4の上方の外筒2には一対の拡大翼5を設ける。拡大翼5は外筒2の外周面に設けたブラケット6に軸7により回動自在に取付ける。拡大翼5は、前記掘削用ヘッド4の外径より内側で前記外筒2に沿った位置に位置する閉縮位置と掘削用ヘッド4の外径より外側に位置する拡開位置の間前記軸7を中心に回動する構成とする。
前記拡大翼5は、前記外筒2内に設けた油圧シリンダ10により拡開位置と閉縮位置の間移動する。
【0010】
油圧シリンダ10は、ピストン11を収容するシリンダチューブ12を有して構成する。シリンダチューブ12は上側チューブ13と下側チューブ14との上下に分割して構成し、上側チューブ13と下側チューブ14内を単体のピストン11が摺動のみ自在にヘッド本体1の軸心方向に移動する構成とする。
15は上側チューブ13の上側シリンダ室、16は下側チューブ14の下側シリンダ室、17は上側シリンダ室15に送油する送油管、18は同下側シリンダ室16に送油する送油管、19はピストン11に設けた下側シリンダ室16に送油するピストン内送油管、20は地盤固化液の供給管、21は外筒2の下部に設けた下部閉塞部材、25は下部閉塞部材21を固定するボルトである。
【0011】
前記上側チューブ13と下側チューブ14とは互いに分割して着脱可能に構成する。
そのため、油圧シリンダ10は、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方または両方が損傷したときには、分割した状態で取り外し、メンテナンスまたは交換する。
前記外筒2の上下方向における前記ブラケット6の近傍所定位置には、開口部30を形成する。開口部30には、前記ピストン11の外周に設けた係合溝31を臨ませる。係合溝31には係合アーム32の先端を係合させ、係合アーム32の基部は前記軸7に固定する。
【0012】
したがって、ピストン11がシリンダチューブ12内を下降すると、係合アーム32が軸7中心に下方回動し、係合アーム32の回動により、拡大翼5は拡開する。
反対に、ピストン11をシリンダチューブ12内で上動させると、係合アーム32が軸7中心に上方回動し、係合アーム32の回動により、拡大翼5は閉縮する。
それゆえ、外筒2の開口部30内を、係合アーム32が軸方向に移動して拡大翼5を拡縮させる構成となる。
また、前記シリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方から何れか他方へピストン11が移動しても、ピストン11は上側チューブ13と下側チューブ14の両者に跨って嵌合する構成とする。
【0013】
なお、図示は省略するが、前記係合アーム32の基部を拡大翼5の中間部に取付けてリンク機構を構成し、このリンク機構によりピストン11の移動を伝達させて、拡大翼5を拡開と閉縮させる構成でもよい。
図8は、ヘッド本体1の他の実施例を示し、前記外筒2は、前記上側チューブ13の上方所定位置で、上部部材35と下部部材36とに上下に分割する分割部37を設け、下部部材36内に上側チューブ13と下側チューブ14を設ける構成とする。
即ち、上側チューブ13は上部部材35と下部部材36との分割部37から着脱可能な構成とし、下側チューブ14は外筒2の下部部材36の下部閉塞部材21を外して着脱可能な構成とする。
【0014】
換言すると、外筒2の下部部材36の上側に上側チューブ13を、下部部材36の下側に下側チューブ14を夫々設け、下部部材36の上下側から上側チューブ13と下側チューブ14とを着脱する構成としている。
そのため、上側チューブ13と下側チューブ14との一方の着脱作業を一層容易にしている。
40は分割部37のフランジ、41は上部部材35のフランジ40と下部部材36のフランジ40とを固定するボルトである。
前記上部部材35と下部部材36との分割部37の分割方法の一例を示すと、前記上側シリンダ室15に送油する送油管17および下側シリンダ室16に送油する送油管18を設けた閉塞ブロック42を上側チューブ13の上方に設け、この閉塞ブロック42の上方部分の外筒2に前記分割部37を形成している。
【0015】
(作用)
本発明は上記構成のため、拡大翼5を閉縮した状態で、ヘッド本体1を正回転させ、その下端の掘削用ヘッド4により地盤に縦孔掘削を開始する。
所定深さまで掘削し、そこで拡大掘削を行う場合は、送油管17から上側シリンダ室15に送油して油圧シリンダ10のピストン11を下降させ、ピストン11の係合溝31に係合している係合アーム32を軸7中心に回動させ、係合アーム32の回動により軸7が回転して拡大翼5を拡開させる。
【0016】
拡大翼5が拡開した状態で、ヘッド本体1の正回転により拡大掘削を行い、拡大掘削孔へ供給管20により地盤固化液を注入して、撹拌することにより拡大球根の造成を行う。
拡大翼5を閉縮してヘッド本体1を引き抜く場合は、送油管18とピストン11のピストン内送油管19からシリンダチューブ12の下側シリンダ室16に送油し、ピストン11を上昇させ、ピストン11の上昇により係合アーム32を介して拡大翼5を閉縮する。拡大翼5が所定位置に閉縮したらヘッド本体1を地上に引き上げる。
拡大翼5は、油圧シリンダ10のピストン11の移動により拡開位置と閉縮位置との間移動する。
【0017】
ピストン11の移動力を伝達して拡大翼5を移動させるので、シリンダチューブ12内をピストン11が移動する際に、ピストン11と拡大翼5との間にある連動機構を介してピストン11とシリンダチューブ12の間の油密構造部分に土砂が進入することがあり、土砂の進入は、油密構造部分に損傷を与える大きな要因になる。
本願は、油圧シリンダ10のシリンダチューブ12を上下に分割した状態で外筒2内に内装し、該シリンダチューブ12内には前記拡大翼5を拡縮させるピストン11を設けているので、上下に分割したシリンダチューブ12のうち、損傷したシリンダチューブ12を取り外し、メンテナンスまたは交換すればよい。
【0018】
そのため、シリンダチューブ12のメンテナンスおよび交換の作業コストの上昇を抑制する。
本願では、シリンダチューブ12を上下に分割できるので、旋盤加工機等の汎用加工機械を使用でき、より安価な修正加工が可能になる。
具体的には、油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14とに上下に分割して構成し、上側チューブ13と下側チューブ14内に単体のピストン11を上下動のみ自在に嵌合させ、上側チューブ13と下側チューブ14との間を、前記拡大翼5を拡縮させるピストン11の係合溝31が移動する構成としているので、上側チューブ13と下側チューブ14とは互いに分割して着脱可能な構成となる。
【0019】
なお、油圧シリンダ10のピストン11の外周の係合溝31に、係合アーム32の先端を係合させているので、係合アーム32をブラケット6から外してピストン11の係合溝31から外し、外筒2の下部の下部閉塞部材21を外して、シリンダチューブ12を取り外し、上下に分割したシリンダチューブ12のうち、損傷したシリンダチューブ12を取り外し、メンテナンスまたは交換すればよい。
また、油圧シリンダ10のシリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14との間を、前記拡大翼5を拡縮させるピストン11の係合溝31が移動する構成としているので、上側チューブ13と下側チューブ14との間に間隔を設けることができ、シリンダチューブ12を軽量にし、ヘッド本体1全体の軽量化を図れる。
【0020】
また、シリンダチューブ12は、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方から何れか他方へピストン11が移動しても、ピストン11は上側チューブ13と下側チューブ14の両者に跨って嵌合する構成としているので、油圧シリンダ10の作動を安定させられる。
【0021】
図8のヘッド本体1の他の実施例では、油圧シリンダ10を内装した外筒2を、上側チューブ13より上方の所定位置で、上部部材35と下部部材36とに上下に分割する分割部37を設けているので、上側チューブ13は外筒2の分割部37から着脱し、下側チューブ14は外筒2の下部部材36の下部閉塞部材21を外して着脱でき、上側チューブ13と下側チューブ14の着脱作業を容易にしている。
即ち、上側チューブ13が損傷した場合には、上部部材35を分割部37で分割し、下部部材36の上側から上側チューブ13を着脱すればよく、下側チューブ14が損傷した場合には、外筒2の分割部37で分割することなく、下部部材36の下部閉塞部材21を外して下側チューブ14を着脱すればよく、上側チューブ13と下側チューブ14の何れか一方の着脱が可能となる。
【0022】
また、上側チューブ13の上方に位置する、上側シリンダ室15に送油する送油管17を設けた閉塞ブロック42の、上方に分割部37を設けているので、油圧シリンダ10へ送油する油圧回路機構に与える影響を最小限にして、外筒2を上下に分割できる。
【符号の説明】
【0023】
1…ヘッド本体、2…外筒、3…スクリュー羽根、4…掘削用ヘッド、5…拡大翼、6…ブラケット、7…軸、10…油圧シリンダ、11…ピストン、12…シリンダチューブ、13…上側チューブ、14…下側チューブ、15…上側シリンダ室、16…下側シリンダ室、17…送油管、18…送油管、19…ピストン内送油管、20…供給管、21…下部閉塞部材21、30…開口部、31…係合溝、32…係合アーム、35…上部部材、36…下部部材、37…分割部、40…フランジ、42…閉塞ブロック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8