特許第6035141号(P6035141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035141
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】架橋ゴムのクラックの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20161121BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   G01N3/56 G
   B60C19/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-280941(P2012-280941)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-126370(P2014-126370A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(72)【発明者】
【氏名】坂井 豊英
(72)【発明者】
【氏名】河村 幸伸
【審査官】 渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−264881(JP,A)
【文献】 特開平04−109142(JP,A)
【文献】 特開平06−027046(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0189370(US,A1)
【文献】 特開2002−318195(JP,A)
【文献】 特開2009−168741(JP,A)
【文献】 特開2008−026228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N3/00−3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ゴムからなるタイヤの観察表面を拡大して撮影した複数箇所の画像を得る撮影工程と、
この複数箇所の画像から上記観察表面の面積に占める微少クラックのクラック面積率を算出する算出工程と、
この算出工程の後に、算出されたクラック面積率に基づいて上記タイヤの耐クラック性が判定される判定工程とを含み、
上記微少クラックがオゾン劣化によって生じる目視確認可能なものであり、
上記撮影工程において上記タイヤの周方向に撮影位置を変えて複数箇所が撮影される微少クラックの評価方法。
【請求項2】
上記観察表面が、上記タイヤのバットレス、サイドウォール又はクリンチの軸方向外側の表面である請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
上記微少クラックの長さが0.5mm以上5mm以下であり、上記微少クラックの幅が0.5mm以上3mm以下であり、上記微少クラックの深さが0.5mm以上3mm以下である請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
上記撮影工程において、上記観察表面に対して垂直方向に照明があてられる請求項1から3のいずれかに記載の評価方法。
【請求項5】
上記撮影工程の複数箇所の画像の数が3以上5以下である請求項1から4のいずれかに記載の評価方法。
【請求項6】
上記撮影工程において、上記観察表面が10倍以上50倍以下で拡大されて撮影される請求項1から5のいずれかに記載の評価方法。
【請求項7】
上記タイヤが空気入りタイヤの一部を構成する架橋ゴムであり、
この空気入りタイヤに空気が充填された状態でこの架橋ゴムの耐クラック性が判定される請求項1から6のいずれかに記載の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋ゴムのクラックの評価方法に関する。詳細には、本発明は、架橋ゴムの表面に発生する微少クラックの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場古品の空気入りタイヤでは、そのサイドウォール、バットレス、クリンチ等の表面に微少クラックが発生することがある。この微少クラックは、空気入りタイヤの周方向に延びる。この微少クラックは、空気入りタイヤの外観を損ねる。
【0003】
この微少クラックの評価は、例えば、JIS規格の加硫ゴムのオゾン劣化試験方法(JIS K6259)に準拠して実施されている。具体的には、タイヤ表面がルーペ等で観察される。微少クラックの数が、A、B、Cのアルファベット記号で評価される。微少クラックの大きさが1から5の数字で評価される。微少クラックの数と大きさとがアルファベット記号と数字との組み合わせで評価される。この評価に基づき、そのタイヤの耐クラック性が評価されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格「加硫ゴムのオゾン劣化試験方法」(JIS K6259−1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この評価方法では、アルファベット記号と数字との組み合わせで分類されるものであり、この評価方法は定量的評価と異なる。また、この微少クラックの数や大きさは、観察者が目視で評価するため、観察者の主観的判断を排除することは困難である。基準となる標準サンプルを準備して、標準サンプルとの相対評価をしたとしても、観察者の主観的判断を排除できない。この評価方法では、場所と時間と観察者とが異なる評価結果を互いに比較することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、定量的で且つ客観的な微少クラックの評価方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る微少クラックの評価方法は、架橋ゴムからなる被試験体の観察表面を拡大して撮影した複数箇所の画像を得る撮影工程と、この複数箇所の画像から観察表面の面積に占めるクラック面積率を算出する算出工程と、この算出工程の後に、算出されたクラック面積率に基づいて被試験体の耐クラック性が判定される判定工程とを含む。
【0008】
好ましくは、上記撮影工程の複数箇所の画像の数が3以上5以下である。
【0009】
好ましくは、上記撮影工程において、観察表面が10倍以上50倍以下で拡大されて撮影される。
【0010】
好ましくは、上記撮影工程において、観察表面に対して垂直方向に照明があてられる。
【0011】
好ましくは、この評価方法では、上記被試験体は、空気入りタイヤの一部を構成する架橋ゴムである。この空気入りタイヤに空気が充填された状態で、この架橋ゴムの耐クラック性が判定される。
【0012】
好ましくは、この評価方法では、上記被試験体が架橋ゴムからなる試験片である。この試験片に、その観察表面に平行な方向の張力が負荷された状態で、試験片の耐クラック性が判定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る微少クラックの評価方法では、微少クラックの評価結果が、客観的に算出されている。この微少クラックの評価結果が、面積率として定量的に得られている。この評価方法は、客観的且つ定量的な評価結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る評価方法に使用される評価装置が示された概念図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る評価方法で評価される空気入りタイヤが示された断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る評価方法が示されたフローチャートである。
図4図4は、図3の評価方法で撮影された画像が例示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示された評価装置2は、マイクロスコープ4、制御装置6及び情報処理装置8を備えている。
【0017】
マイクロスコープ4は、被写体を拡大して撮影するカメラである。この拡大倍率は、例えば、10倍以上50倍以下である。このマイクロスコープ4では、例えば、レンズ表面から被写体の表面までの距離を10mm以上30mm以下で、撮影がされる。
【0018】
制御装置6は、マイクロスコープ4及び情報処理装置8と接続されている。制御装置6は、マイクロスコープ4で得られた撮影画像の信号を受信しうる。制御装置6は、撮影画像の信号から画像データを得る。制御装置6は、得られた画像データを情報処理装置8に出力しうる。
【0019】
情報処理装置8は、外部入力部としてのキーボード10及びマウス12と、出力部としてのディスプレイ14と、本体16とを備えている。図示されないが、この本体16は、インターフェースボードと、メモリと、CPUと、ハードディスクとを備えている。この情報処理装置8は、汎用のコンピューターがそのまま用いられてもよい。
【0020】
CPUが、制御装置6を制御している。ディスプレイ14は、各種の情報を表示する。出力部は、評価結果等を表示するものであればよい。出力部は、ディスプレイ14に限られず、図示されないが、例えば、プリンターが用いられてもよい。
【0021】
情報処理装置8のインターフェースボードは、撮影画像の信号を受け取るデータ入力部である。このインターフェースボードに、制御装置6から画像データが入力される。この画像データは、CPUに出力される。メモリは、書き換え可能なメモリである。ハードディスクは、プログラムやデータ等を記憶している。例えば、複数の架橋ゴムの耐クラック性の評価結果がデータベースとして記憶されている。メモリは、ハードディスクから読み出されたプログラムや画像データ等の格納領域や作業領域等を構成する。CPUは、ハードディスクに記憶されているプログラムを読み出しうる。CPUは、そのプログラムをメモリの作業領域に展開しうる。CPUは、そのプログラムに従って各種の処理を実行しうる。
【0022】
図2に示されたタイヤ18は、空気入りタイヤである。この図2において、上下方向がタイヤ18の半径方向であり、左右方向がタイヤ18の軸方向であり、紙面に垂直な方向がタイヤ18の周方向である。
【0023】
このタイヤ18は、トレッド20、サイドウォール22、ビード24、バットレス26及びクリンチ28を備えている。
【0024】
トレッド20は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド20は、路面と接地するトレッド面30を形成する。
【0025】
サイドウォール22は、トレッド20の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール22の半径方向外側端は、トレッド20及びバットレス26と接合されている。このサイドウォール22の半径方向内側端は、クリンチ28と接合されている。
【0026】
ビード24は、クリンチ28の軸方向内側に位置している。ビード24は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス34は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0027】
バットレス26は、半径方向において、トレッド20とサイドウォール22との間に位置する。バットレス26は、トレッド20のショルダー36とサイドウォール22との間のタイヤ18の外周面を構成している。
【0028】
クリンチ28は、サイドウォール22の半径方向略内側に位置している。クリンチ28は、軸方向において、ビード24よりも外側に位置している。クリンチ28は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ28は、リムのフランジと当接する。
【0029】
この評価方法で評価される微少クラックは、バットレス26、サイドウォール22及びクリンチ28の軸方向外側の表面に発生する。この微少クラックの長さは、例えば、0.5mm以上5mm以下である。この幅は、例えば0.5mm以上3mm以下である。この深さは、例えば0.5mm以上3mm以下である。この微少クラックは、特に、バットレス26やクリンチ28の凹部表面に発生し易い。砂漠のようにオゾン濃度の高い地域や寒冷地のようにタイヤ表面に老化防止剤が析出し難い地域で使用されたタイヤに、微少クラックが発生し易い。この微少クラックは、深く進行するものでないが、外観を損ねる。
【0030】
図3には、本発明の一実施形態に係る評価方法のフローチャートが示されている。この評価方法では、評価装置2を用いてタイヤ18の耐クラック性が評価されている。図1から図3を参照しつつ、この評価方法が説明される。ここでは、タイヤ18のバットレス26の表面を観察表面として、バットレスに発生する微少クラックを例に説明がされる。
【0031】
図2のタイヤ18が準備される。このタイヤ18は、前処理工程で処理されている。この前処理工程では、タイヤ18に正規の空気圧になるように空気が充填される。空気が充填された状態で、例えば、タイヤ18がオゾンの雰囲気内で放置される。若しくは、空気が充填された状態で、タイヤ18がオゾンの雰囲気内でドラム試験機で走行させられる。又は、タイヤ18を屋外に所定の日数放置して、屋外曝露処理がされる。このオゾン雰囲気処理や屋外曝露処理等は、前処理工程の例示である。この前処理は、タイヤ18の表面に微少クラックが発生させられるものであればよく、このオゾン雰囲気処理や屋外曝露処理に限られない。このタイヤ18として、微少クラックが発生している、市場の古品タイヤが準備されてもよい。
【0032】
図3に示される様に、この微少クラック評価方法は、表面処理工程、撮影工程、面積率算出工程、判定工程及び出力工程を備えている。
【0033】
表面処理工程では、タイヤ18のバットレス26の軸方向外側表面がクリーニングされる。例えば、布でバットレス26の表面が拭き取られる。バットレス26の表面に付着している異物などが除去される。バットレス26の表面の汚れが落とされる。この表面処理工程のクリーニングは、布での拭き取りに限られず、バットレス26の表面の異物が除去できればよく、他の方法でバットレス26の表面がクリーニングされてもよい。
【0034】
撮影工程では、タイヤ18は正規内圧になるように空気が充填されている。この空気の充填は、バットレス表面の微少クラックが識別できる程度にされればよく、正規内圧より高圧でもよく、低圧でもよい。
【0035】
空気が充填されたタイヤ18のバットレス26の表面が照明で照らされる。この照明の光が、例えば、バットレス26の表面に対して垂直方向からあてられるようにされる。このバットレス26の表面が、マイクロスコープ4で撮影される。このマイクロスコープ4は、バットレス26の表面を例えば、10倍以上50倍以下に拡大して撮影する。このバットレス26の表面が、周方向に撮影位置を変えて撮影される。この様にして、複数箇所が撮影される。例えば、周方向に位置を変えて4箇所が撮影される。この制御装置6は、撮影画像の信号を画像データに変換する。4箇所の画像データが情報処理装置8に送信される。情報処理装置8は、この画像データを受信する。
【0036】
面積率算出工程では、情報処理装置8が画像データを画像解析する。例えば、バットレス26の表面において一辺が15mmの正方形の面の画像データが得られる。この画像データの画素毎に輝度分布が解析される。画像データの各画素が輝度に基づきヒストグラム分布で層別にされる。この画像データが、所定の閾値により二値化される。図4は、この二値化がされた画像データを例示している。図4のおいて、左右方向がタイヤ18の半径方向であり、上下方向がタイヤ18の周方向である。図4において、二値化されて黒く示された画素部分は、微少クラックを示している。白く示された画素部分は、微少クラック以外のバットレス26の表面を示している。
【0037】
情報処理装置8は、微少クラックの面積を算出する。情報処理装置8は、全画像面積に占める微少クラックの面積の比率を算出する。この比率が微少クラックの面積率である。この例では、4つの画像データの微少クラックの面積が算出される。4つの画像面積の和と、4つの微少クラックの面積の和との比率が算出される。この微少クラックの面積率の算出方法は例示であって、この面積率は他の方法で算出されてもよい。例えば、4つの画像データ毎に微少クラックの面積率が計算されて、得られる4つの微少クラックの面積率の平均値が算出されてもよい。
【0038】
判定工程では、面積率算出工程で得られた面積率が基準値と比較されて良否判定がされる。この情報処理装置8は、予め基準値を記憶している。タイヤ18の面積率が、この基準値より大きければ不良判定がされる。タイヤ18の面積率が、この基準値以下であれば良好判定がされる。例えば、基準タイヤが準備される。この基準タイヤでタイヤ18と同じ様にして求められた面積率が、基準値として用いられる。
【0039】
出力工程では、例えば、情報処理装置8のディスプレー14に、面積率と共に良否判定の判定結果が表示される。この判定結果と共に、図4に示されたような画像が表示されてもよい。
【0040】
この評価方法によれば、観察者の主観によらない、客観的な評価ができる。この評価方法では、微少クラックの面積率として定量化された評価結果が得られる。定量化されているので、評価結果の対比が容易にできる。
【0041】
例えば、基準タイヤを準備して、この基準タイヤでの測定結果を得る。その測定結果を、記憶された基準タイヤの基準値と比較して、補正式を求める。試験タイヤであるタイヤ18での測定結果を得る。タイヤ18の測定結果を、求めた補正式に基づき、補正する。この補正したタイヤ18の測定結果を、記憶された他のタイヤの測定結果と比較する。これにより、時間や場所を変えて測定した微少クラックの面積率を互いの更に精度良く対比しうる。
【0042】
この評価方法では、バットレスの表面が拡大されて撮影されている。これにより、微少クラックの面積の算出が容易にされている。拡大して撮影することで、基準タイヤの面積率とタイヤ18の面積率との差が明確に算出される。これにより良否判定が容易にされている。この観点から、観察表面の拡大倍率は、好ましくは10倍以上であり、更に好ましくは20倍以上である。
【0043】
一方で、この拡大倍率が大きすぎると、撮影箇所毎に算出される面積率の値のバラツキが大きくなる。撮影箇所が異なると、面積率が大きく異なる。このバラツキを考慮して相当数の撮影箇所で、微少クラックの面積率を算出する必要が生じる。拡大倍率が大きすぎると、この評価方法の評価工数が大きくなる。この観点から、観察表面の拡大倍率は、好ましくは100倍以下であり、更に好ましくは50倍以下である。
【0044】
この評価方法では、複数箇所の画像から微少クラックの面積率を算出している。これにより、測定箇所による、面積率のバラツキが抑制されている。この観点から、撮影される複数箇所の画像の数は、3以上が好ましい。一方で、撮影画像の数が多すぎると、評価工数が大きくなる。この観点から、撮影される複数箇所の画像の数は5以下が好ましい。
【0045】
この評価方法では、バットレス26の表面に対して垂直方向に照明があてられているので、表面の凹凸形状のよる影の発生が抑制されている。微少クラックの面積の測定が容易にされている。この評価方法では、微少クラックの面積比の測定精度が向上している。
【0046】
この評価方法では、空気が充填された状態で、この架橋ゴムの耐クラック性が判定されているので、撮影画像において微少クラックの識別が容易にされている。これにより、微少クラックの面積率の算出が容易にしうる。
【0047】
この評価方法では、タイヤ18が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ18に空気が充填された状態で、耐クラック性が評価される。本明細書において正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0048】
この評価方法でのタイヤ18の空気圧は、タイヤ18に微少クラックの発生が確認できる程度の内圧であればよく、正規内圧に限られない。正規内圧がP(kPa)であるとき、この微少クラックの発生ができる程度の内圧は、例えば、正規内圧P(kPa)の0.1倍以上1.3倍以下であってもよい。
【0049】
この評価方法では、タイヤ18のバットレス26を例に説明がされたが、タイヤ18のクリンチの表面が評価されてもよい。サイドウォール22の表面が評価されてもよい。
【0050】
更には、タイヤ18に代えて、被試験体として、架橋ゴムから試験片が用いられてもよい。試験片の観察表面に平行な方向の張力が負荷された状態で、試験片がオゾン雰囲気処理や屋外曝露処理がされる。前処理された試験片が表面処理される。この試験片の観察表面に前処理工程と同じ方向に張力が負荷された状態で、その観察表面が撮影される。この撮影により、タイヤ18と同様に、微少クラックの面積率の算出が容易にされうる。この試験片は、タイヤ18から切り出されたものであってもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0052】
[比較試験1]
タイヤAからEの5本の市場古品タイヤが準備された。これらのタイヤは、いずれも車両に取り付けられて使用された後に、回収されたものである。このタイヤAからEに正規内圧の空気が充填されている。タイヤAからEでは、バットレスの表面に微少クラックが確認できた。このタイヤAからEでは、その微少クラックの大きさと数とがそれぞれ異なっている。
【0053】
熟練の観察者が、タイヤAからEについて、JIS規格(JIS K6259)に準拠して、バットレスの表面の微少クラックの評価をした。観察者が10倍のルーペで観察して、微少クラックの数と大きさとが評価された。A、B、Cのアルファベット記号は、AからCに向かってその数が多いことをし示す。1から5の数字は、1から5に向かってその大きさが大きいことを示す。その結果が比較試験1の欄に記載されている。
【0054】
[比較試験2−3]
観察者が代わった他は、比較テスト1と同様にして、タイヤAからEについて、パットレスの表面の微少クラックが評価された。比較試験2及び3においても、いずれも熟練の観察者が評価した。それぞれの結果が比較試験2と比較試験3との欄に記載されている。
【0055】
[試験1]
タイヤAからEについて、図1に示された評価装置を用いて、バットレスの微少クラックの評価がされた。タイヤAからEについて、クラックの面積率が算出された。算出された面積率(%)が、表1の試験1の欄に記載されている。
【0056】
[試験2−3]
場所と時間とがそれぞれ変えられた他は、試験1と同様にして、タイヤAからEについて、パットレスの表面に微少クラックが評価された。タイヤAからEについて、クラックの面積率が算出された。算出された面積率(%)が、表1の試験2及び試験3の欄にそれぞれ記載されている。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されるように、試験1から3の評価方法では、定量的に評価がされている。試験1から3の評価方法では、客観的な評価が得られている。この試験1から3の結果から明らかなように、耐クラック性について、場所と時間とを変えても、タイヤ間の比較が容易にできる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明された方法は、架橋ゴムの微少クラックの評価方法として広く適用されうる。
【符号の説明】
【0060】
2・・・評価装置
4・・・マイクロスコープ
6・・・制御装置
8・・・情報処理装置
10・・・キーボード
12・・・マウス
14・・・ディスプレイ
16・・・本体
18・・・タイヤ
20・・・トレッド
22・・・サイドウォール
24・・・ビード
26・・・バットレス
28・・・クリンチ
30・・・トレッド面
32・・・コア
34・・・エイペックス
36・・・ショルダー
図1
図2
図3
図4