(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面材上で、フェノール樹脂と、硬化触媒と、炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素又はこれらの組み合わせを含有する発泡剤と、界面活性剤と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、
前記フェノール樹脂に含まれる残留フェノールが1.0重量%以上4.3重量%以下であり、
前記フェノール樹脂に含まれる水分率が1.0重量%以上9.2重量%以下であり、
前記フェノール樹脂の40℃における粘度が5000mPa・s以上100000mPa・s以下である、製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本実施形態に係るフェノール樹脂発泡体積層板1は、
図1に示すように、面材2とフェノール樹脂発泡体3とを有しており、面材2は、第1の面材2aと第2の面材2bとから構成されている。フェノール樹脂発泡体3は、面材2a,2bによって挟まれた板状部材である。面材2a,2bは、フェノール樹脂発泡体3の互いに対向する主面(表面)を被覆しており、フェノール樹脂発泡体3の主面と面材2a,2bの主面とは接触している。
【0014】
(フェノール樹脂発泡体)
まず、フェノール樹脂発泡体3について説明する。フェノール樹脂発泡体3は、フェノール樹脂と、該樹脂の硬化触媒と、炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素又はこれらの組み合わせを含有する発泡剤と、界面活性剤と、を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化させることにより得られる。
【0015】
フェノール樹脂は、例えば、フェノール類とアルデヒド類を原料として、アルカリ触媒により40〜100℃の温度範囲で加熱して上記原料を重合させることによって得られる。また、必要に応じて、レゾール樹脂重合時に尿素等の添加剤を添加してもよい。尿素を添加する場合は、予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をレゾール樹脂に混合することが好ましい。合成後のフェノール樹脂は、通常過剰の水を含んでいるので、発泡可能な水分量まで脱水されることが好ましい。フェノール樹脂中の水分率は1.0重量%以上10.0重量%以下であり、好ましくは1.0重量%以上7.0重量%以下であり、より好ましくは2.0重量%以上5.0重量%以下であり、とりわけ好ましくは2.0重量%以上4.5重量%以下である。フェノール樹脂に含まれる水分率を1.0重量%未満にするためには、脱水時に非常に多くのエネルギーと時間がかかるため、生産性が著しく低下してしまい、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなる。フェノール樹脂に含まれる水分率が10.0重量%を超えると、得られた発泡体中の水分が多くなってしまうため、高温環境下での乾燥収縮量が大きくなってしまい、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなる。
【0016】
フェノール樹脂における、フェノール類対アルデヒド類の出発モル比は、1:1から1:4.5が好ましく、より好ましくは1:1.5から1:2.5の範囲内である。フェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類としては、フェノール、又はフェノール骨格を有する化合物が挙げられる。フェノール骨格を有する化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、o−、m−及びp−クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p−tertブチルフェノール等が挙げられる。2核フェノール類もまた使用できる。
【0017】
フェノール樹脂の製造で用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、又はホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物が挙げられる。ホルムアルデヒド以外のアルデヒド化合物としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド類には、添加剤として、尿素、ジシアンジアミド又はメラミン等を加えてもよい。なお、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは、添加剤を加えた後のものを指す。
【0018】
フェノール樹脂の粘度は、40℃において5000mPa・s以上100000mPa・s以下である。フェノール樹脂の40℃における粘度は、独立気泡率の確保や、製造コストの観点から、好ましくは7000mPa・s以上50000mPa・s以下であり、より好ましくは10000mPa・s以上40000mPa・s以下である。フェノール樹脂の粘度が5000mPa・s未満であると、発泡剤が気化することによって生じる発泡圧に対して、樹脂の粘度が低すぎるために気泡壁が破れ、独立気泡率が低下してしまう。また、フェノール樹脂の粘度が100000mPa・sを超えると、前記発泡圧に対して、樹脂の粘度が高くなりすぎるため、所定の発泡倍率が得られなくなり、発泡成形時に所定の空間を満たすことができなることから、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなると共に、フェノール樹脂発泡体の高密度化や表面の平滑性が損なわれてしまう。
【0019】
フェノール樹脂中に含まれる残留フェノールは、フェノール樹脂の調整の容易性や、発泡性の確保の観点から、1.0重量%以上4.3重量%以下であり、好ましくは2.3重量%以上4.25重量%以下であり、より好ましくは2.7重量%以上4.2重量%以下である。製造されたフェノール樹脂発泡体における残留フェノールが4.3重量%を超えると、可塑化効果によってフェノール発泡体の樹脂部が軟化してしまい、寸法変化を大きくしてしまうと考えられる。残留フェノールが1.0重量%未満であると、フェノール樹脂の反応性が低下することから、発泡成形中のフェノール樹脂の強度の発現が遅れてしまうため、独立気泡率が低下してしまう。
【0020】
フェノール樹脂は、添加剤を含有していてもよく、例えば可塑剤として一般的に用いられているフタル酸エステル類やグリコール類であるエチレングリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができる。また、脂肪族炭化水素、高沸点の脂環式炭化水素又はそれらの混合物を用いてもよい。添加剤の含有量は、フェノール樹脂100重量部に対し0.5重量部以上20重量部以下が好ましい。添加剤の含有量が20重量部を超えると、フェノール樹脂の粘度が著しく低下し、硬化発泡時に破泡を誘発してしまう傾向があり、添加剤の含有量が0.5重量部未満であると、添加剤を含有する意味が薄れる傾向がある。添加剤の含有量は、より好ましくは1.0重量部以上10重量部以下である。
【0021】
発泡剤は、地球温暖化係数の観点から、炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素又はこれらの組み合わせを必須成分とすることができる。発泡剤における炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素又はこれらの組み合わせの重量比率は、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、更に好ましくは70重量%以上であり、とりわけ好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。発泡剤は、炭化水素、塩素化脂肪族炭化水素又はこれらの組み合わせのうち、炭化水素と塩素化脂肪族炭化水素とを組み合わせて用いることが好ましい。炭化水素と塩素化脂肪族炭化水素とを組み合わせて用いると、炭化水素を単独で使用する場合よりも熱伝導率が低下する傾向がある。
【0022】
炭化水素系発泡剤としては、炭素数が3〜7の環状、直鎖状又は分岐状のアルカン、アルケン、アルキンが好ましく、具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、シクロヘキサン等を挙げることができる。その中でも、炭素数が4〜5の環状、直鎖状又は分岐状のアルカン、アルケン、アルキンがより好ましく、炭素数が4〜5の環状、直鎖状又は分岐状のアルカンが更に好ましく、例えばノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンのペンタン類及びノルマルブタン、イソブタン、シクロブタンのブタン類が好適に用いられる。これら炭化水素は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
塩素化脂肪族炭化水素系発泡剤としては、炭素数が2〜5の直鎖状又は分岐状のものが好ましい。結合している塩素原子の数は、限定されるものではないが、1〜4が好適である。塩素化脂肪族炭化水素としては、例えばクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどが挙げられる。これらのうち、プロピルクロリド、イソプロピルクロリドの炭素数が3の直鎖状又は分岐状の塩素化脂肪族炭化水素がより好ましく用いられる。これら塩素化脂肪族炭化水素は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
炭化水素及び塩素化脂肪族炭化水素を含有する発泡剤を用いる場合、例えば、炭素数が4〜5の環状、直鎖状又は分岐状のアルカンと、炭素数が2〜5の直鎖状又は分岐状の塩素化脂肪族炭化水素との組み合わせが好ましく、炭素数が4〜5の環状、直鎖状又は分岐状のアルカンと、炭素数が3の直鎖状又は分岐状の塩素化脂肪族炭化水素との組み合わせがより好ましく、炭素数が5の環状、直鎖状又は分岐状のアルカンと、炭素数が3の直鎖状又は分岐状の塩素化脂肪族炭化水素との組み合わせが更に好ましい。
【0025】
発泡剤の使用量は、フェノール樹脂100重量部に対して1〜25重量部の範囲が好ましく、フェノール樹脂100重量部に対して1〜15重量部がより好ましい。
【0026】
界面活性剤は、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。ノニオン系の界面活性剤としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるアルキレンオキサイド;アルキレンオキサイドとヒマシ油の縮合物;アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物;アルキルエーテル部分の炭素数が14〜22のポリオキシエチレンアルキルエーテル;更には、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物;ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、界面活性剤の使用量は、特に制限はないが、フェノール樹脂100重量部に対して0.3〜10重量部の範囲が好ましい。
【0027】
硬化触媒としては、フェノール樹脂を硬化できる硬化触媒であればよく、酸性の硬化触媒が好ましく、無水酸硬化触媒がより好ましい。無水酸硬化触媒としては、無水リン酸や無水アリールスルホン酸が好ましい。無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。硬化触媒は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化触媒を、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。硬化剤の使用量は、特に制限はないが、フェノール樹脂100重量部に対して3〜30重量部の範囲が好ましい。
【0028】
上記フェノール樹脂、上記硬化触媒、上記発泡剤、及び、上記界面活性剤を混合することにより発泡性フェノール樹脂組成物を得ることができる。上記フェノール樹脂、上記硬化触媒、上記発泡剤、及び、上記界面活性剤は、上述したような割合で混合されることが好ましい。得られた発泡性フェノール樹脂組成物を、後述するようにして発泡及び硬化させることにより、フェノール樹脂発泡体を得ることができる。
【0029】
このフェノール樹脂発泡体中の揮発分含有率は、1.0重量%以上7.0重量%以下であることが好ましく、1.1重量%以上7.0重量%以下であることがより好ましく、1.2重量%以上6.8重量%であることが更に好ましく、1.3重量%以上6.8重量以下であることが最も好ましい。揮発分含有率が7.0重量%を超えると、施工後や高温の環境下でフェノール樹脂発泡体から多くの揮発分が大気中へと気散され、高い独立気泡率を有するフェノール樹脂発泡体の場合、気泡内部の圧力が減圧となるため大きな寸法変化の要因となる傾向がある。一方、揮発分含有率が1.0重量%未満のフェノール樹脂発泡体を製造するには多大のエネルギーと時間が必要となってしまう傾向がある。
【0030】
得られたフェノール樹脂発泡体の密度は、10kg/m
3以上100kg/m
3以下であり、好ましくは15kg/m
3以上80kg/m
3以下であり、より好ましくは15kg/m
3以上40kg/m
3以下であり、更に好ましくは15kg/m
3以上30kg/m
3以下であり、最も好ましくは15kg/m
3以上28kg/m
3以下である。フェノール樹脂発泡体の密度が10kg/m
3未満であると、圧縮強度等の機械的強度が小さくなり、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなると共に、取り扱い時に破損しやすくなるため、実用面での問題を生じやすくなる。また、フェノール樹脂発泡体の密度が100kg/m
3を超えると、樹脂部の伝熱が増加し熱伝導率が悪化すると共に、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなる。フェノール樹脂発泡体の密度は、JIS−K−7222に基づき測定することができる。
【0031】
フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、5μm以上が好ましい。また、フェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、200μm以下が好ましく、190μm以下がより好ましく、185μm以下が更に好ましい。フェノール樹脂の平均気泡径が5μm未満であると、気泡壁の厚さが薄くなってしまい、機械的強度が低下してしまうことから、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなる。フェノール樹脂発泡体の平均気泡径が200μmを超えると、輻射による熱伝導が増加してしまい、熱伝導率が悪化してしまうと共に、寸法安定性が改善されたフェノール樹脂発泡体積層板を充分に得ることが難しくなる。
【0032】
フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。フェノール樹脂発泡体の独立気泡率が85%未満であると、気泡中の発泡剤と空気との置換速度が上がり、断熱性能の経時変化量が大きくなるのみならず、高温環境下での収縮応力に耐えうる機械的強度が損なわれてしまい、寸法変化率が著しく悪化してしまう。フェノール樹脂発泡体の独立気泡率は、ASTM−D−2856に基づき測定することができる。
【0033】
フェノール樹脂発泡体の寸法変化率の絶対値は、フェノール樹脂発泡体を温度70℃で48時間放置した後において、0.49%以下である。フェノール樹脂発泡体の寸法変化率が0.49%を超えると、断熱材を面内方向に圧縮力をかけながらきつくはめ込み施工した後に、フェノール樹脂発泡体積層板同士や他部材との間に隙間が生じるため、別途シーリング等の気密処理を行う必要がある。また、フェノール樹脂発泡体積層板をきつくはめ込んだ後に振動などによる断熱材のずれを防止するために寸法変化率はより小さいほうが望ましく、このような観点から、寸法変化率は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.39%以下である。フェノール樹脂発泡体の寸法変化率は、EN1604に基づき測定することができる。
【0034】
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.0150W/m・K以上が好ましく、0.0170W/m・K以上がより好ましく、0.0190W/m・K以上が更に好ましい。フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、0.0250W/m・K以下が好ましく、0.0230W/m・K以下がより好ましく、0.0210W/m・K以下が更に好ましい。フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、JIS−A−1412の平板熱流計法に基づき測定することができる。
【0035】
(フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法)
次に、フェノール樹脂発泡体積層板1の製造方法について説明する。フェノール樹脂発泡体積層板1は、走行する第1の面材2a上に上述の発泡性フェノール樹脂組成物を連続的に吐出し、発泡性フェノール樹脂組成物の、第1の面材2aと接触する面とは反対側の面を、第2の面材2bで被覆し、発泡及び硬化させることにより得られる。
【0036】
上記フェノール樹脂発泡体3を挟む面材2は、生産効率の観点から、可撓性を有していることが好ましい。可撓性を有する面材としては、合成繊維不織布、合成繊維織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、紙類、金属フィルム又は、これらの組合せが挙げられる。これらの面材は、難燃性を付与するために難燃剤を含有していてもよく、例えば難燃剤として一般的に使用されているテトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルエーテル等の臭素化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、赤リン等のリン又はリン化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いることができる。これらの難燃剤は、面材の繊維中に練りこまれていてもよく、アクリル、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、エポキシ、不飽和ポリエステル等のバインダーに添加されていてもよい。また、面材は、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、ワックスエマルジョン系、パラフィン系、アクリル樹脂パラフィンワックス併用系などの撥水剤やアスファルト系防水処理剤によって表面処理することができる。これらの撥水剤や防水処理剤は、単独で用いてもよいし、上記難燃剤を添加した面材に塗布してもよい。
【0037】
面材は、ガスの透過性が高いことが好ましい。このような面材としては、合成繊維不織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維不織布、紙類が好適に用いられる。このような面材のうち、ガス透過性として、ASTM D3985−95に準拠して測定される酸素透過率が4.5cm
3/24h・m
2以上である面材が特に好ましい。発泡時の熱硬化性樹脂の面材への滲み出しや、熱硬化性樹脂と面材との接着性の観点から、面材に合成繊維不織布を用いる場合には、目付け量は15〜80g/m
2が好ましく、面材にガラス繊維不織布を用いる場合には、目付け量は30〜200g/m
2が好ましい。
【0038】
二枚の面材に挟まれた発泡体フェノール樹脂組成物は、面材上で発泡する。この発泡したフェノール樹脂組成物(発泡体)を硬化させるには、例えば、下記の第1のオーブン及び第2のオーブンを用いることができる。
【0039】
第1オーブンは、60〜110℃の熱風を発生させ、無端スチールベルト型ダブルコンベア又はスラット型ダブルコンベアを有する。このオーブン内で、未硬化の発泡体を板状に成形しながら硬化させ、部分硬化した発泡体を得ることができる。第1オーブン内は、全域に渡って均一な温度であってもよく、複数の温度ゾーンを有していてもよい。
【0040】
第2オーブンは、40〜120℃の熱風を発生させ、第1オーブンで部分硬化した発泡体を後硬化させるものである。部分硬化したボードは、スペーサーやトレイを用いて一定の間隔で重ねてもよい。第2オーブン内の温度が120℃を超えると、発泡体の気泡内部の発泡剤の圧力が高くなりすぎるため破泡を誘発してしまう傾向があり、第2オーブン内の温度が40℃未満であると、フェノール樹脂の反応を進ませるために要する時間がかかりすぎる傾向がある。同様の観点から、第2オーブン内の温度は、80〜110℃がより好ましい。
【0041】
なお、上記発泡及び硬化方法は、上述の方法に限定されない。
【0042】
以上、本実施形態に係るフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法によれば、地球温暖化係数の低い発泡剤用いて、断熱材にとって特に条件の厳しい高温環境下で施工後の高い寸法安定性を有するフェノール樹脂発泡体積層板を提供することができる。前記フェノール樹脂発泡体積層板は、単独で用いることもできるし、フェノール樹脂発泡体積層板の一方の主面側に配置された下地材と、他方の主面に配置された仕上げ材とを有する断熱構造として用いてもよい。また、フェノール樹脂発泡体積層板と下地材とを積層させて断熱構造を形成する場合、通常、下地には不陸があるため、フェノール樹脂発泡体積層板表面にも不陸が発生する。このため、フェノール樹脂発泡体積層板の少なくとも一方の面に接着された面材を除去、又は、主面より最大10mm程度発泡層を除去して不陸の調整を行うこともできる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<フェノール樹脂の合成>
反応器に52重量%ホルムアルデヒド3500kgと99重量%フェノール2510kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50重量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。反応液のオストワルド粘度が60センチストークス(=60×10
−6m
2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg(ホルムアルデヒド仕込み量の15モル%に相当)添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、反応液のpHが6.4になるまでパラトルエンスルホン酸一水和物の50重量%水溶液を加えて中和した。
【0045】
この反応液を60℃で濃縮処理した後、残留フェノールを測定したところ3.1重量%であった。これをフェノール樹脂Aとする。濃縮時間の変更や、濃縮後の加水によって、表2に示すフェノール樹脂B〜Gを得た。フェノール樹脂合成時の反応時間を調整し、得られた反応液を同様に60℃で濃縮処理することによって、フェノール樹脂H〜Jを得た。得られたフェノール樹脂A〜Jの樹脂特性は以下の方法によって求めた。得られたフェノール樹脂A〜Jの各物性を表2に示す。
【0046】
<残留フェノール>
フェノール樹脂中の残留フェノールは以下の方法により求めた。
フェノール樹脂1mgを1mlのメタノールに溶解させ、以下の条件で測定を行った。
装置:(株)島津製作所製LC−VP型高速液体クロマトグラフィー
カラム:Waters社製Xbridge C18 3.5μm (内径3mm×100mm)、カラム温度:40℃
溶離液:水/アセトニトリル
グラジエント条件:水/アセトニトリル=90/10(0分)
水/アセトニトリル=0/100(20分)
水/アセトニトリル=90/10(20.1分)
水/アセトニトリル=90/10(35分)
流速:0.47ml/分
検出:270nm
注入量:5μL
残留フェノールの濃度は、フェノール標品(和光純薬製、試薬特級)の10μg/ml及び100μg/mlの溶液を用いて作成した検量線より算出した。
【0047】
<水分率>
フェノール樹脂中の水分率は、カールフィッシャー水分計MKA−510(京都電子工業(株)製)を用い、測定した。
【0048】
<フェノール樹脂の粘度>
フェノール樹脂の粘度は、回転粘度計(東機産業(株)製、R−100型、ローター部は3°×R−14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値とした。
【0049】
(実施例1)
フェノール樹脂A100重量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドのブロック共重合体(BASF製、プルロニックF−127)を2.0重量部の割合で混合した。混合されたフェノール樹脂100重量部、発泡剤として表1に示す発泡剤Aを7重量部、及び、酸硬化触媒としてキシレンスルホン酸80重量%とジエチレングリコール20重量%との混合物14重量部からなる組成物を、25℃に温調したミキシングヘッドに供給して混合し、マルチポート分配管を通して、移動する面材上に混合物を供給した。使用する混合機(ミキサー)は、特開平10−225993号に開示されたものを使用した。即ち、混合機は、混合機の上部側面に、フェノール樹脂に界面活性剤を添加した樹脂組成物、及び、発泡剤の導入口を備えており、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に硬化触媒の導入口を備えている。攪拌部以降はフォームを吐出するためのノズルに繋がっている。即ち、触媒導入口までを混合部(前段)、触媒導入口〜攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部〜ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は、先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。
【0050】
面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、上記面材と接触した面とは反対側の面が他の面材で被覆されると同時に、発泡性フェノール樹脂組成物が二枚の面材で挟み込まれるようにして、85℃のスラット型ダブルコンベアへ搬送した。15分の滞留時間で硬化した後、110℃のオーブンで2時間キュアしてフェノール樹脂フォームを得た。スラット型ダブルコンベアにより上下方向から面材を介して、発泡性フェノール樹脂発泡体に適度に圧力を加えることで、板状のフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0051】
面材としては、ポリエステル製不織布(旭化成せんい(株)製「スパンボンドE05030」、坪量30g/m
2、厚み0.15mm)を使用した。面材の酸素透過率は、3.7×10
10cm
3/24h・m
2であった。
【0052】
(実施例2)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Bとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0053】
(実施例3)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Cとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0054】
(実施例4)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Dとし、フェノール樹脂に対してイソペンタン50重量%とイソブタン50重量%の混合物8.0重量%する以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0055】
(実施例5)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Eとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0056】
(実施例6)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Hとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0057】
(実施例7)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Iとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0058】
(実施例8)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Bとし、発泡剤を表1に示す発泡剤Bとし、スラット型ダブルコンベアオーブンの温度を80℃、滞留時間を20分に変更する以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0059】
(実施例9)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Bとし、発泡剤を表1に示す発泡剤Cとし、スラット型ダブルコンベアオーブンの温度を80℃、滞留時間を20分に変更する以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0060】
(実施例10)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Bとし、発泡剤を表1に示す発泡剤Dとし、スラット型ダブルコンベアオーブンの温度を80℃、滞留時間を20分に変更する以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0061】
(実施例11)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Bとし、発泡剤を表1に示す発泡剤Eに変更する以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
(比較例1)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Fとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂泡体積層板を得た。
【0064】
(比較例2)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Jとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂泡体積層板を得た。
【0065】
(比較例3)
フェノール樹脂をフェノール樹脂Gとする以外は実施例1と同様にして、フェノール樹脂泡体積層板を得た。
【0066】
実施例及び比較例によって得られたフェノール樹脂発泡体及びフェノール樹脂発泡体積板の特性は以下の方法によって求められる。
【0067】
<揮発分含有率>
揮発分含有率は、フェノール樹脂発泡体の105℃、48時間乾燥後の重量をW
D、乾燥前の重量W
Oとしたとき、以下に示される式によって算出した。なお、乾燥前の予備養生はEN1604の6.4に従い養生した。
揮発分含有率[wt%]=100×(W
O−W
D)/W
D【0068】
<70℃における寸法変化率>
70℃における寸法変化率とは、フェノール樹脂発泡体を縦横200mm角に切り出し、EN1604に示された試験方法によって求められた縦又は横のいずれか一方向の寸法変化率Δε
bのことを指す。なお、縦横とは、それぞれフェノール樹脂発泡体の厚み方向と垂直な方向である。具体的には、縦横200mm角のフェノール樹脂発泡体を、温度70℃で48時間放置した後の値である。Δε
bは、下記の式により算出した。
Δε
b=100×(b
t−b
0)/b
0
式中、b
0は初期の寸法であり、b
tは48時間放置後の寸法である。
【0069】
<独立気泡率>
フェノール樹脂発泡体より、直径35mm〜36mmの円筒試料をコルクボーラーで刳り貫き、高さ30mm〜40mmに切りそろえた後、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1,000型)の標準使用方法により試料容積を測定した。独立気泡率は、その試料容積から、試料重量と樹脂密度とから計算した気泡壁の容積を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの容積で割った値である。測定は、ASTM−D−2856に従い行った。ここで、フェノール樹脂の密度は1.3kg/Lとした。
【0070】
<平均気泡径>
平均気泡径とは、フェノール樹脂発泡体の厚み方向のほぼ中央部を表裏面に平行に切削した試験片の断面の50倍拡大写真上にボイドを避けて9cmの長さの直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数(JIS K6402に準じて測定したセル数)を各直線で求め、それらの平均値で1800μmを割った値である。
【0071】
<フェノール樹脂発泡体の密度>
フェノール樹脂発泡体の密度とは、20cm角のフェノール樹脂発泡体積層板を試料とし、この試料の面材を取り除いて測定した重量と、見かけ容積を測定して求めた値である。測定は、JIS−K−7222に従い行った。
【0072】
<発泡製品の熱伝導率>
発泡製品の熱伝導率は、フェノール樹脂発泡体を縦横200mm角に切り出し、低温板5℃、高温板35℃でJIS−A−1412の平板熱流計法に従い測定した。
【0073】
<発泡性>
発泡性は、得られた発泡体積層板を観察しA,B,Cの3段階で評価した。スラット型ダブルコンベアの上側のスラット及び下側のスラット間の距離と、発泡体積層板の厚みの差とを評価し、その差が0〜2mmのものを「A」とし、2mm超5mm未満のものを「B」とし、5mm以上のものを「C」とした。
【0074】
表2に上記結果を示す。
【0075】
<総合評価>
(総合評価の基準:寸法変化率×発泡性×独立気泡率)
表2に示すように、実施例1〜11に係る発泡体積層板は、いずれも比較例1〜3に係る発泡体積層板に比して、寸法変化率が小さく、高い独立気泡率を有しており、かつ発泡性が良好であるため、寸法安定性に優れ総合評価がいずれも「A」または「B」となった。比較例1は発泡性が悪く、比較例2は寸法変化率が大きく、また、比較例3は発泡体の独立気泡率が著しく悪いため、寸法安定性に劣り総合評価がいずれも「C」となった。
【0076】
【表2】