(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸を有するモータ及び前記回転軸の回転によりリニア移動するクロスヘッドを有する固定部分、並びに、前記クロスヘッドに接続されたトグルリンク及び前記トグルリンクに接続された移動対象物を有し、前記移動対象物が前記クロスヘッドの移動により前記トグルリンクを介してリニア移動する変化部分を具備する装置の、前記モータを駆動することで前記固定部分に発生する第1慣性モーメント及び前記モータを駆動することで前記変化部分に発生する第2慣性モーメントから、前記モータの駆動により前記装置に発生する慣性モーメントを算出する慣性モーメントの算出方法であって、
前記回転軸の位置情報を検出し、
前記回転軸の前記位置情報から前記クロスヘッドの位置情報を求め、
前記クロスヘッドの前記位置情報から前記移動対象物の位置情報を求め、
前記クロスヘッドの前記位置情報及び前記移動対象物の前記位置情報から、前記クロスヘッド及び前記移動対象物の速度比を求め、
前記トグルリンクの速度比と前記モータを駆動することで前記変化部分に発生する基礎慣性モーメントとの積から、前記移動対象物の移動により前記変化部分に発生する第2慣性モーメントを求め、
求めた前記第2慣性モーメントを、前記第1慣性モーメントと積算することで、前記モータを駆動することで前記装置に発生する慣性モーメントを求める、
ことを特徴とする慣性モーメントの算出方法。
【背景技術】
【0002】
射出成形機やダイカストマシン等に用いられる型締装置として、固定型を保持する固定ダイプレートに対して、移動型を保持する移動ダイプレートを移動させることで、金型を開閉させる技術が知られている。また、型締装置は、トグル機構をサーボモータで電気的に制御することで、移動ダイプレートを移動させる技術が知られている。
【0003】
このような型締装置は、サーボモータ、トグル機構及び移動金型を保持する移動ダイプレートの移動によって慣性モーメント(イナーシャ)が発生する。このため、型締装置は、電気的に制御する制御指令値を、型締装置の構成及び金型の構成に基づいて設定し、当該制御指令値に基づいて移動ダイプレートを移動させる技術が知られている。
【0004】
このような型締装置では、金型を変更すると、移動ダイプレートを移動する際に発生する慣性モーメントが変化することから、制御指令値を、金型の変更毎に設定する。そこで、金型の質量に応じて制御指令値を設定可能な技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、型締装置の制御方法として、モータの回転数、モータのイナーシャ、モータの軸換算の負荷イナーシャ、モータのストールトルク、モータの軸にかかる負荷トルク、移動金型の質量、移動ダイプレートの質量、移動ダイプレートの摩擦係数、及び、駆動系の効率から、最短の加速時間、最短の減速時間及び負荷トルクを求める技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献1には、モータのイナーシャ、モータの軸換算の負荷イナーシャ、モータのストールトルク、移動ダイプレートの質量、移動ダイプレートのベースに対する摩擦係数、及び、駆動系の効率が、型締装置の製造者によって制御装置に入力されることで、予め記憶される技術が記載されている。
【0007】
特許文献2には、立ち上がり時間を従来方式と同じか、又は、若干増加するにとどめた状態で、射出速度を2倍にアップすることが可能な技術が開示されている。また、特許文献2には、モータ容量が2倍のサーボモータは、モータイナーシャが約3倍となる構成、及びボールねじを2個にした場合に、モータ軸換算イナーシャが定数増加する構成が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る型締装置1を、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る型締装置1の構成を示す説明図、
図2は型締装置1に用いられる制御装置17の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、型締装置(装置)1は、固定型5a及び移動型5bを有する金型5を保持可能、且つ、金型5を開閉可能に形成されている。型締装置1は、支持部10と、固定盤(固定物)11と、可動盤(可動物)12と、開閉機構13と、タイバー14と、押出機構15と、制御装置17と、を備えている。
【0021】
また、型締装置1は、金型5の開閉時において、後述する第1サーボモータ31の一部の慣性モーメント(イナーシャ)は固定値であり、他部の慣性モーメント(イナーシャ)は変動値となる。
【0022】
即ち、型締装置1は、第1サーボモータ31の駆動により発生する慣性モーメントに関し、移動対象物である移動型5b及び可動盤12が移動しても変化しない固定値である固定部分18と、移動対象物である移動型5b及び可動盤12の移動により値が変化する(変動値となる)変化部分19と、を備えている。なお、固定部分18の慣性モーメントを第1慣性モーメントとし、変化部分19の慣性モーメントを第2慣性モーメントとして、以下説明する。
【0023】
支持部10は、固定盤11、可動盤12、開閉機構13を支持する、所謂ベース又はフレームである。固定盤11は、所謂固定ダイプレートであって、支持部10に固定されている。固定盤11は、固定型5aを固定可能に形成されている。
【0024】
可動盤12は、所謂移動ダイプレートであって、固定盤11に対向して支持部10に配置される。可動盤12は、固定盤11に対して近接及び離間する方向に移動可能に形成されている。具体的には、可動盤12は、開閉機構13又は図示しない型厚調整機構により、タイバー14を介して、固定盤11に対して前進及び後進方向に直線的な移動(リニア移動)が可能に形成されている。可動盤12は、金型5の移動型5bを固定可能に形成されている。
【0025】
開閉機構13は、トグル機構により可動盤12をリニア移動させることで、金型5を開閉可能、換言すると、可動盤12に固定された移動型5bを固定型5aに対して離接可能に形成されている。開閉機構13は、リンクハウジング(圧受盤)21と、トグルリンク22と、クロスヘッド23と、第1ボールねじ24と、回転機構25と、を備えている。
【0026】
リンクハウジング21は、トグルリンク22、及びクロスヘッド23の支点となる。リンクハウジング21は、支持部10に支持されている。
【0027】
トグルリンク22は、可動盤12、リンクハウジング21及びクロスヘッド23に接続されている。トグルリンク22は、トグル機構を構成する複数のリンク、ブシュ及びピンにより構成される。トグルリンク22は、クロスヘッド23により操作されることで、可動盤12を固定盤11に対してリニア移動可能に形成されている。
【0028】
クロスヘッド23は、第1ボールねじ24と接続され、第1ボールねじ24の回転により、第1ボールねじ24の軸心方向に沿って移動可能に形成されている。また、クロスヘッド23は、第1ボールねじ24の軸心方向に移動することで、トグルリンク22を操作可能に形成されている。
【0029】
回転機構25は、第1サーボモータ31と、一対の第1プーリー32と、第1タイミングベルト33と、エンコーダ34と、を備えている。また、回転機構25は、開閉機構13を駆動する駆動装置として機能する。
【0030】
第1サーボモータ(モータ)31は、第1回転軸31aを有し、第1回転軸31aを回転可能に形成されている。第1サーボモータ31は、信号線S等を介して、制御装置7に電気的に接続されている。第1サーボモータ31は、変化部分19を駆動する駆動源である。一対の第1プーリー32は、一方が第1サーボモータ31の第1回転軸31aに、他方が第1ボールねじ24に、それぞれ固定されている。
【0031】
第1タイミングベルト33は、一対の第1プーリー32間に設けられ、第1プーリー32、具体的には、第1サーボモータ31の第1回転軸31aに固定された第1プーリー32の回転運動を、第1ボールねじ24に固定された第1プーリー32に伝達可能に形成されている。
【0032】
エンコーダ(検出器)34は、第1回転軸31aの回転数を検出可能に形成されている。エンコーダ34は、制御装置7に信号線Sを介して接続され、検出した第1回転軸31aの回転数又は回転位置等の情報を、制御装置7に送信可能に形成されている。
【0033】
このような開閉機構13は、第1回転軸31aの回転運動を、一対の第1プーリー32及び第1タイミングベルト33を介して第1ボールねじ24に伝達し、当該第1ボールねじ24の回転運動を、クロスヘッド23のリニア移動に変換する。また、開閉機構13は、当該クロスヘッド23のリニア移動を、トグルリンク22を介して可動盤12に伝達させる。これにより、開閉機構13は、可動盤12を固定盤11に対してリニア移動させることが可能に形成されている。
【0034】
タイバー14は、例えば、固定盤11及びリンクハウジング21に固定して複数設けられる。タイバー14は、固定盤11及びリンクハウジング21を連結して形成され、可動盤12の移動を案内可能に形成されている。タイバー14は、例えば、4本が、固定盤11及びリンクハウジング21の四隅に配置される。
【0035】
押出機構15は、可動盤12に接続され、押出盤45を移動させることで、押出ピン46を移動型5bから突出させ、成形品を押し出す。また、押出機構15は、可動盤12に接続されているため、型開閉時においては、可動盤12や移動型5bと同様に、変化部分19の変化に影響を与える。例えば、押出機構15は、第2サーボモータ41と、一対の第2プーリー42と、第2タイミングベルト43と、第2ボールねじ44と、押出盤45と、押出ピン46と、を備えている。
【0036】
図1において二点鎖線で示すように、第1サーボモータ31の駆動により発生する慣性モーメントにおいて、慣性モーメントが固定(一定)である固定部分18は、例えば、クロスヘッド23、第1ボールねじ24、第1サーボモータ31、一対の第1プーリー32、第1タイミングベルト33、及び、エンコーダ34によって構成される。
【0037】
図1において二点鎖線で示すように、第1サーボモータ31の駆動により発生する慣性モーメントにおいて、慣性モーメントが変化する(変動する)変化部分19は、例えば移動型5b、可動盤12、押出機構15、及び、クロスヘッド23の移動に伴って可動盤12のスライド方向に、可動盤12と共に移動するトグルリンク22の一部によって構成される。
【0038】
制御装置7は、第1サーボモータ31、エンコーダ34及び第2サーボモータ41と、信号線Sを介して電気的に接続される。制御装置7は、型締装置1の各構成品の情報を記憶する記憶部51を備えている。
【0039】
記憶部51は、固定部分18の重量及び形状等に基づく、固定部分18の慣性モーメント(第1慣性モーメント)Jsと、変化部分19の重量及び形状等に基づく、変化部分19の開閉機構13の移動に伴い変化する第2慣性モーメントを求めるために基準となる慣性モーメントJm(以下、「基礎慣性モーメントJm」として説明する。)と、が記憶されている。
【0040】
なお、固定部分18の慣性モーメントJs及び変化部分19の基礎慣性モーメントJmは、各構成に基づく固定値である。また、記憶部51は、例えば、型締装置1に用いられるすべての移動型5bに基づく(対応した)変化部分19の基礎慣性モーメントJmがそれぞれ記憶されている。
【0041】
また、記憶部51は、第1サーボモータ31の回転に対するクロスヘッド23の移動量、及び、クロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報が記憶されている。
【0042】
第1サーボモータ31の回転に対するクロスヘッド23の移動量とは、例えば、第1サーボモータ31の回転軸31aの一回転当りの第1ボールねじ24により移動されるクロスヘッド23の移動量である。
【0043】
クロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報とは、型締装置1に用いられる開閉機構13の形状等により予め求められた、クロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報から求められる所謂トグルカーブ又はテーブル等である。具体的には、クロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報は、例えば、エンコーダ34で検出されたクロスヘッド23の移動量から、可動盤12の移動量を導出することが可能に形成されている。また、可動盤12の位置情報に関しては、エンコーダ34とは別の検出装置(検出器)を取り付け、可動盤12の位置情報を検出するようにしてもよい。
【0044】
制御装置7は、エンコーダ34で検出された第1回転軸31aの回転数から、予め記憶部51に記憶された第1ボールねじ24の回転数に対するクロスヘッド23の移動量に基づいて、クロスヘッド23の位置情報を導出可能に形成されている。
【0045】
また、制御装置7は、導出されたクロスヘッド23の位置情報、及び、記憶部51に記憶されたクロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報から、クロスヘッド23と可動盤12との速度比rを算出可能に形成されている。また、速度比rは、予め記憶部51に記憶されていてもよい。
【0046】
なお、速度比rとは、クロスヘッド23の各位置において、クロスヘッド23の移動量に対する可動盤12の移動量の比である。さらに言えば、速度比rは、クロスヘッド23の各位置においてトグルリンク22がクロスヘッド23の移動量を可動盤12の移動量に変換する変換値である。
【0047】
制御装置7は、算出した速度比r及び変化部分19の基礎慣性モーメントJmの積から、開閉機構13の動作により変化する第2慣性モーメントJm×rを算出可能に形成されている。
【0048】
また、制御装置7は、第1慣性モーメントJs及び第2慣性モーメントJm×rから、第1サーボモータ31の駆動により型締装置1に発生する慣性モーメントJ(変動値)を算出可能に形成されている。
【0049】
なお、慣性モーメントJは、以下の式により求められる。
【0050】
J=Js+Jm×r
即ち、慣性モーメントJは、変動値であり、固定値である第1慣性モーメントJsに、開閉機構13の動作により変化する(変動する、可変する)第2慣性モーメントJm×rの値を加えることで求められる。
【0051】
また、制御装置7は、算出した慣性モーメントJに基づいて、第1サーボモータ31を制御可能に形成されている。
【0052】
具体的には、制御装置7は、例えば、
図2に示すブロック図に示すように、第1減算器61と、第1増幅器62と、第2減算器63と、ローパスフィルタ64と、積分要素65と、加算器66と、第2増幅器67と、トルク換算手段68と、サーボアンプ69と、速度算出手段70と、を備えている。
【0053】
第1減算器61は、制御装置7に入力されたクロスヘッド23の位置指令値からエンコーダ34で検出された第1回転軸31aの回転数から求められたクロスヘッド23の移動量(位置情報)を減算可能に形成されている。即ち、第1減算器61は、クロスヘッド23の位置指令値と現在のクロスヘッド23の位置との差(偏差)を出力可能に形成されている。なお、ここで、制御装置7に入力されたクロスヘッド23の位置指令値とは、例えば、クロスヘッド23が、待機する基準位置から、移動型5bが固定型5aに当接する当接位置までの移動の情報である。
【0054】
第1増幅器62は、第1減算器61から出力されたクロスヘッド23の位置指令値と現在のクロスヘッド23の位置との差(偏差)から、位置ループゲインω0に基づいて速度指令値を出力可能に形成されている。
【0055】
第2減算器63は、第1増幅器62からの速度指令値から速度算出手段70で算出されたクロスヘッド23の速度値を減算可能に形成されている。即ち、第2減算器63は、速度偏差を算出可能に形成されている。
【0056】
ローパスフィルタ64は、第2減算器63から出力された速度偏差の信号から不要な高周波成分を遮断可能に形成されている。
【0057】
積分要素65は、ローパスフィルタ64から出力された速度偏差を積分可能に形成されている。加算器66は、ローパスフィルタ64から出力された速度偏差及び積分要素65から出力された積分値を加算可能に形成されている。第2増幅器67は、加算器66から出力された速度偏差を速度ループゲインωcに基づいて出力可能に形成されている。この第2増幅器67から出力された値がフィードバック制御で求められた制御入力となる。
【0058】
トルク換算手段68は、第2増幅器67で出力された制御入力をトルク値に換算するように形成されている。また、トルク換算手段68は、当該速度比rから慣性モーメントJを算出し、この慣性モーメントJからトルク換算係数(換算値)Kaを算出可能に形成されている。
【0059】
なお、トルク換算係数Kaは、
Ka=2×π×J
の式から求められる。トルク換算手段68は、求めたトルク換算係数Kaと第2増幅器67で出力された制御入力とを掛け合わせることで、制御入力をトルク値に換算し、そのトルク値に換算されたものを、サーボアンプ69に出力可能に形成されている。
【0060】
また、トルク換算手段68は、開閉機構13の初動時、換言すると、開閉機構13の停止時から開閉機構13を駆動する場合においては、慣性モーメントJを慣性モーメントJs(固定値)として算出する。即ち、トルク換算手段68は、開閉機構13の停止時から駆動した場合の、トグルリンク22のブシュ及びリンクピンの隙間を考慮して、第2慣性モーメントJm×rはない(Jm×r=0)ものとして慣性モーメントJを算出する。
【0061】
サーボアンプ69は、第1サーボモータ31に接続され、トルク換算手段68で出力されたトルク値に基づいて、第1サーボモータ31への制御指令である、電流指令値を導出可能に形成されている。サーボアンプ69は、電流指令値に基づいて、第1サーボモータ31に電力を供給可能に形成されている。
【0062】
速度算出手段70は、エンコーダ34で検出された第1回転軸31aの回転数から求められたクロスヘッド23の位置情報から、クロスヘッド23の速度を算出可能に形成されている。
【0063】
このように構成された型締装置1は、外部から入力された指令に基づいて制御装置7が開閉機構13を駆動して可動盤12を前進又は後進させ、型締装置1の型締め又は型開きを行う。
【0064】
開閉機構13を駆動して可動盤12を前進させて移動型5bを固定型5aに当接させる場合、又は、可動盤12を後退させて移動型5bを固定型5aから離間させる場合には、変化部分19の移動により変化する慣性モーメントJが発生する。型締装置1は、制御装置7により、この可変する慣性モーメントJに基づいて第1サーボモータ31を駆動する。
【0065】
具体的には、先ず、外部から可動盤12を駆動させる指令が制御装置7に入力されると、制御装置7は、第1減算器61において、クロスヘッド23の位置指令値とエンコーダ34で検出された現在のクロスヘッド23の位置情報との偏差を求める。
【0066】
次に、制御装置7は、第1増幅器62において、クロスヘッド23の位置指令値とエンコーダ34で検出された現在のクロスヘッド23の位置情報との偏差から速度指令値が求められる。また、制御装置7は、速度算出手段70において、クロスヘッド23の速度値を算出する。
【0067】
次に、制御装置7は、第2減算器63において、第1増幅器62から出力された速度指令値と速度算出手段70から出力された速度値との差分の速度指令値(速度偏差)を求める。制御装置7は、第2減算器63から出力された速度指令値(速度偏差)をローパスフィルタ64でフィルタリングをおこない、ローパスフィルタ64から出力された速度指令値(速度偏差)及び積分要素65から出力された積分値を加算器66により加算する。制御装置7は、加算器66から出力された速度指令値を、第2増幅器67において速度ループゲインに基づいて制御入力を出力する。
【0068】
制御装置7は、トルク換算手段68において、制御入力をトルク値に換算する。具体的には、現在のクロスヘッド23の位置情報及び現在の可動盤12の位置情報を基に速度比rを求める。そして、その速度比rを用いて、第2慣性モーメントJm×rを求め、トルク換算に必要な型締装置1の第1サーボモータ31に対する慣性モーメントJを求める。なお、開閉機構13が停止した状態から駆動されるときは、制御装置7は、慣性モーメントJを記憶部51に記憶された第1慣性モーメントJsとして設定する。次に、制御装置7は、求めた慣性モーメントJを用いて、第2増幅器67から出力された制御入力をトルク値に換算し、そのトルク値に換算されたものを出力する。
【0069】
制御装置7は、サーボアンプ69にて、制御入力のトルク値から第1サーボモータ31への電流指令値を求め、この電流指令値に基づいて第1サーボモータ31を駆動する。この第1サーボモータ31の駆動により、可動盤12が、所定の速度で固定盤11に接近する方向、又は、離間する方向に移動する。
【0070】
また、継続してエンコーダ34において、第1回転軸31aの回転数が検出され、制御装置7は、当該検出された第1回転軸31aの回転数を受信する。制御装置7は、受信した第1回転軸31aの回転数等から可動盤12の位置情報を求め、可動盤12の位置情報をフィードバックする。即ち、制御装置7は、第1減算器61に当該位置情報を入力するとともに、速度算出手段70において可動盤12の速度値を算出し、第2減算器63に入力する。制御装置7は、これらの工程を繰り返すことで、移動型5bが固定型5aに当接するまで、又は、移動型5bが固定型5aから離間して所定の位置(例えば、型開限位置)に移動するまで、可動盤12を移動させる。型開限位置(型開限界位置)とは、トグルリンク22が最も畳まれた(縮められた)状態の時の可動盤12の位置である。
【0071】
このように構成された型締装置1によれば、トグル機構である開閉機構13の動作及び開閉機構13の動作に基づく移動型5bを有する可動盤12の動作に伴って変化する、第1サーボモータ31に対する第2慣性モーメントJm×rを算出することができる。これにより、型締装置1は、開閉機構13の動作に則した第1サーボモータ31の制御が可能となり、最適な応答性を得ることが可能となる。
【0072】
具体的に説明すると、開閉機構13は、クロスヘッド23により駆動するトグルリンク22により、可動盤12を駆動する構成であり、クロスヘッド23の移動量と可動盤12の移動量は、トグルリンク22の位置により変化する。
【0073】
このため、クロスヘッド23の移動量が一定であっても、クロスヘッド23の位置によって可動盤12の移動量が変化することから、即ち、クロスヘッド23の動作状態に応じて可動盤12の移動量が変化することから、第2慣性モーメントJm×rが変化する。即ち、クロスヘッド23の位置によって、変化部分19の第2慣性モーメントJm×rの変化量が異なり、慣性モーメントが変化する。
【0074】
型締装置1の制御装置7は、記憶部51に記憶されたクロスヘッド23の位置情報に対する可動盤12の位置情報から速度比rを求め、当該速度比rと変化部分19の基礎慣性モーメントJmとの積(Jm×r)を求めることで、クロスヘッド23の移動時の第2慣性モーメントJm×rを算出する。
【0075】
これにより、制御装置7は、開閉機構13の動作に応じた慣性モーメントJを求めることが可能となり、この変化する第2慣性モーメントJm×rを考慮した慣性モーメントJに基づいて第1サーボモータ31を制御することが可能となる。
【0076】
型締装置1は、変化する慣性モーメントJに基づいて第1サーボモータ31を制御することで、第1サーボモータ31の応答性を向上させることが可能となる。
【0077】
また、制御装置7は、開閉機構13の停止時において、第1サーボモータ31を制御する場合に、慣性モーメントJを第1慣性モーメントJsとし、第2慣性モーメントJm×rを除いて第1サーボモータ31の制御を行う。即ち、トグルリンク22は、ブシュ及びリンクピンの隙間があることから、開閉機構13が停止時から動作する場合には、当該隙間によって変化部分19の慣性モーメントは発生しないとみなす。
【0078】
このため、制御装置7は、開閉機構13の停止時において、第2慣性モーメントJm×rを考慮せずに、第1慣性モーメントJsに基づいた慣性モーメントJ(J=Js)により第1サーボモータ31の制御を行う。これにより、停止時からの駆動時において、第1サーボモータ31を適切な慣性モーメントJにより制御することが可能となり、慣性モーメントJを過大に設定して第1サーボモータ31を制御することで発生する第1サーボモータ31の発振を抑制することが可能となる。
【0079】
これらのように、型締装置1は、制御装置7により、変化部分19の動作に伴って変化する慣性モーメントJを算出し、この慣性モーメントJに基づいて第1サーボモータ31を制御することで、第1サーボモータ31の応答性を向上させることが可能となる。これにより、型締装置1は、サイクルタイムが向上し、結果、型締装置1を用いた金型5による成形品の生産性を向上することが可能となる。
【0080】
上述したように本発明の一実施の形態に係る型締装置1によれば、変化部分19の動作に伴って変化する慣性モーメントJを算出することが可能で、且つ、この慣性モーメントJにより第1サーボモータ31を制御することが可能となる。
【0081】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、制御装置7の構成として、第1減算器61と、第1増幅器62と、第2減算器63と、ローパスフィルタ64と、積分要素65と、加算器66と、第2増幅器67と、トルク換算手段68と、サーボアンプ69と、速度算出手段70と、を備える構成を説明したがこれに限定されない。
【0082】
即ち、制御装置7は、トグル機構である開閉機構13の駆動により変化する慣性モーメントJを算出するとともに、当該算出した慣性モーメントJに基づいて、第1サーボモータ31を制御し、可動盤12及び移動型5bを移動させる構成であれば、詳細な構成は適宜設定可能である。
【0083】
また、上述した例では、型締装置1の、第2慣性モーメントを変動値として慣性モーメントJを求める構成を説明したが、これに限定されない。即ち、トグル機構を有し、開閉機構13の動作に依存せず慣性モーメントが変化しない固定部分18及び開閉機構13の動作に連動して慣性モーメントが変化する変化部分19を有する装置、即ち、トグル機構を有し、第1慣性モーメント及び第2慣性モーメントを有する装置であればよく、型締装置1に限らず、本発明は、例えば、プレス装置やダイカスト装置等も用いることが可能である。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 回転軸を有するモータ及び前記回転軸の回転によりリニア移動するクロスヘッドを有する固定部分、並びに、前記クロスヘッドに接続されたトグルリンク及び前記トグルリンクに接続された移動対象物を有し、前記移動対象物が前記クロスヘッドの移動により前記トグルリンクを介してリニア移動する変化部分を具備する装置の、前記モータを駆動することで前記固定部分に発生する第1慣性モーメント及び前記モータを駆動することで前記変化部分に発生する第2慣性モーメントから、前記モータの駆動により前記装置に発生する慣性モーメントを算出する慣性モーメントの算出方法であって、
前記移動対象物の移動に応じて、前記第2慣性モーメントを可変させ、
可変させた前記第2慣性モーメントを求め、前記第1慣性モーメント及び前記第2慣性モーメントを積算することで、前記モータを駆動することで前記装置に発生する慣性モーメントを求める、
ことを特徴とする慣性モーメントの算出方法。
[2] 前記回転軸の位置情報を検出し、
前記回転軸の前記位置情報から前記クロスヘッドの位置情報を求め、
前記クロスヘッドの前記位置情報から前記移動対象物の位置情報を求め、
前記クロスヘッドの前記位置情報及び前記移動対象物の前記位置情報から、前記クロスヘッド及び前記移動対象物の速度比を求め、
前記トグル機構の速度比と前記モータを駆動することで前記変化部分に発生する基礎慣性モーメントとの積から、前記移動対象物の移動により前記変化部分に発生する第2慣性モーメントを求め、
求めた前記第2慣性モーメントを、前記第1慣性モーメントと積算することで、前記モータを駆動することで前記装置に発生する慣性モーメントを求めることを特徴とする[1]に記載の慣性モーメントの算出方法。
[3] 固定型が固定される固定盤と、
前記固定型と一体の金型を形成する移動型が固定される、前記固定盤に対して離接する方向に移動可能に形成された可動盤と、
前記可動盤に接続され、駆動することで、前記可動盤を前記固定盤に対して移動させる開閉機構と、
前記開閉機構を駆動する駆動装置と、
前記駆動装置を駆動することで、前記駆動装置及び前記開閉機構の一部に発生する第1慣性モーメント並びに前記開閉機構の他部及び前記可動盤に発生する、可変する第2慣性モーメントを積算することで、前記駆動装置の駆動により発生する慣性モーメントを求め、前記慣性モーメントに基づいて前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする型締装置。
[4] 前記駆動装置に設けられた、回転軸を有するモータと、
前記駆動装置に設けられた、前記回転軸の回転を伝達する伝達手段と、
前記伝達手段に接続され、前記伝達手段により前記回転軸の回転が伝達されることでリニア移動する、前記開閉機構に設けられたクロスヘッドと、
前記クロスヘッド及び前記可動盤に接続され、前記クロスヘッドのリニア移動により前記可動盤をリニア移動させる、前記開閉機構に設けられたトグルリンクと、
前記回転軸の位置情報を検出する検出器と、
前記モータを駆動することで前記モータ、前記伝達手段及び前記クロスヘッドに発生する第1慣性モーメント並びに前記モータを駆動することで前記トグルリンク及び移動型が固定された前記可動盤に発生する基礎慣性モーメントが記憶された記憶部と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記検出器で検出された前記回転軸の位置情報から前記クロスヘッドの位置情報を求め、前記クロスヘッドの前記位置情報から前記可動盤の位置情報を求め、前記クロスヘッドの前記位置情報及び前記可動盤の前記位置情報から、前記クロスヘッド及び前記可動盤の速度比を求め、前記速度比と前記記憶部に記憶された前記基礎慣性モーメントの積から、前記トグルリンク及び前記移動型が固定された前記可動盤に発生する前記第2慣性モーメントを求め、前記第1慣性モーメント及び前記第2慣性モーメントを積算することで、前記モータの駆動により発生する前記慣性モーメントを求め、前記モータの駆動により発生する前記慣性モーメントに基づいて、前記モータを制御する、
ことを特徴とする[1]に記載の型締装置。