特許第6035156号(P6035156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035156
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】成形用包装材及び成形ケース
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20161121BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20161121BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B32B15/08 F
   B65D65/40 D
   H01M2/02 K
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-15192(P2013-15192)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2013-224014(P2013-224014A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-61726(P2012-61726)
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】南堀 勇二
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
(72)【発明者】
【氏名】倉本 哲伸
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/034337(WO,A1)
【文献】 特開2004−292745(JP,A)
【文献】 特開2011−054563(JP,A)
【文献】 特開2004−152655(JP,A)
【文献】 特開2011−096552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/08
B65D 65/40
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層と、該金属箔層と前記耐熱性樹脂層との間に配設された黒インキ層とを含む成形用包装材であって、
前記黒インキ層は、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール及び硬化剤を含有してなり、
前記黒インキ層における、前記カーボンブラック、前記ジアミン及び前記ポリオールの合計量100質量部あたりの前記硬化剤の含有量が2質量部〜20質量部であり、
前記黒インキ層において、前記カーボンブラックの含有率が15質量%〜60質量%であり、前記ジアミン、ポリオール及び硬化剤の合計の含有率が40質量%〜85質量%であることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記黒インキ層の厚さは、1μm〜4μmである請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記ポリオールとして、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上が用いられている請求項1または2に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記ジアミンとして、エチレンジアミン、ダイマージアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミンからなる群より選ばれる1種または2種以上のジアミンが用いられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項5】
前記硬化剤として、イソシアネート化合物が用いられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項6】
前記耐熱性樹脂層の外面に積層されたマットコート層をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。
【請求項8】
電池ケースとして用いられる請求項7に記載の成形ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材及び成形ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、装着対象の電気機器等の機器の外観と色彩を統一させるために、着色することを要求されることが多くなってきている。重厚感、高級感の付与のために、機器を黒色とすることが多く、この場合には電池も黒色にすることが多くなってきている。
【0003】
電池を黒色等に着色するには、電池包材に使用されている樹脂層を着色する、基材樹脂層の下に印刷層を設ける、等の手段がある。
【0004】
例えば、着色層を有する電池用包装材としては、基材層、接着剤層、金属箔層、熱接着性樹脂層がこの順に積層された構造を有し、基材層、接着剤層、金属箔層のいずれかの層に顔料が添加されたもの(特許文献1参照)の他、炭素材料等の黒体材料を含有する層を備えた電池用外装材(特許文献2参照)、電池外装材の表面に白色樹脂フィルム基材が積層され、該白色樹脂フィルム基材の表面に白インキ層が積層された構成のもの(特許文献3参照)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−054563号公報
【特許文献2】特開2011−096552号公報
【特許文献3】特開2009−289533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電池を黒色に着色するべく、電池包装材を構成する外側樹脂層の内面にカーボンブラックを顔料として含む印刷層を設けた場合には次のような問題があった。
【0007】
即ち、上記黒色包装材を深絞り成形や張り出し成形により容器(ケース)形状に成形する際に、カーボンブラック含有印刷層が部分的に割れて剥離してしまい、下地層(黒色ではない)が外観されることにより、均一な黒着色が損なわれるという問題があった。
【0008】
このような印刷層の部分的剥離は、電極や電解液を封入した後の黒色包装材のシール時や、黒色包装材で包装された電池が高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時にも発生する。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形時及びシール時において、また高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、黒インキ層が部分的に割れて剥離することのない成形用包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層と、該金属箔層と前記耐熱性樹脂層との間に配設された黒インキ層とを含む成形用包装材であって、
前記黒インキ層は、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール及び硬化剤を含有してなり、
前記黒インキ層における、前記カーボンブラック、前記ジアミン及び前記ポリオールの合計量100質量部あたりの前記硬化剤の含有量が2質量部〜20質量部であることを特徴とする成形用包装材。
【0012】
[2]前記黒インキ層(乾燥後の固形分)において、
前記カーボンブラックの含有率が15質量%〜60質量%であり、
前記ジアミン、ポリオール及び硬化剤の合計の含有率が40質量%〜85質量%である前項1に記載の成形用包装材。
【0013】
[3]前記ポリオールとして、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上が用いられている前項1または2に記載の成形用包装材。
【0014】
[4]前記ジアミンとして、エチレンジアミン、ダイマージアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミンからなる群より選ばれる1種または2種以上のジアミンが用いられている前項1〜3のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0015】
[5]前記硬化剤として、イソシアネート化合物が用いられている前項1〜4のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0016】
[6]前記耐熱性樹脂層の外面に積層されたマットコート層をさらに備える前項1〜5のいずれか1項に記載の成形用包装材。
【0017】
[7]前項1〜6のいずれか1項に記載の成形用包装材を深絞り成形または張り出し成形してなる成形ケース。
【0018】
[8]電池ケースとして用いられる前項7に記載の成形ケース。
【発明の効果】
【0019】
[1]の発明では、金属箔層と耐熱性樹脂層との間に黒インキ層が設けられ、該黒インキ層は、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール及び硬化剤を含有する組成であって、且つ、カーボンブラック、ジアミン及びポリオールの合計量100質量部あたり硬化剤を2質量部〜20質量部含有する構成であるから、この包装材に深絞り成形、張り出し成形等の成形を行った時、封止のために包装材をシールした時に、黒インキ層が部分的に割れて剥離することがない。また、高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、黒インキ層が部分的に割れて剥離することがない。
【0020】
[2]の発明では、黒インキ層(乾燥後の固形分)において、カーボンブラックの含有率が15質量%〜60質量%であり、ジアミン、ポリオール及び硬化剤の合計の含有率が40質量%〜85質量%であるから、成形時、シール時、やや苛酷な環境下での使用時等において、黒インキ層が部分的に割れて剥離することを十分に防止できる。
【0021】
[3]の発明では、ポリオールとして、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上が用いられているから、硬化剤との反応によって得られるウレタン結合により、強固で柔軟な黒インキ層を形成できる。
【0022】
[4]の発明では、特定のジアミンが用いられているから、硬化剤と素早く反応してウレア結合を形成し、黒インキ層を速く形成することができる利点がある。
【0023】
[5]の発明では、硬化剤としてイソシアネート化合物が用いられているから、該イソシアネート化合物が、ポリオールと反応してウレタン結合を形成すると共に、ジアミンと反応してウレア結合を形成し、耐熱性樹脂層の上に密着力の高い黒インキ層を形成することができる。
【0024】
[6]の発明では、耐熱性樹脂層の外面に積層されたマットコート層をさらに備えるから、表面に良好な滑り性を付与でき、成形性に優れた包装材が提供される。
【0025】
[7]の発明では、シール時は勿論のこと、高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、黒インキ層が部分的に割れて剥離することのない成形ケースが提供される。
【0026】
[8]の発明では、シール時は勿論のこと、高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、黒インキ層が部分的に割れて剥離することのない電池ケースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る成形用包装材の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る成形用包装材の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る成形用包装材1の一実施形態を図1に示す。この成形用包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。即ち、前記成形用包装材1は、深絞り成形等の成形に供されて2次電池ケースとして用いられるものである。
【0029】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。前記耐熱性樹脂層2の下面には黒インキ層10が積層されている(図1参照)。即ち、前記金属箔層4と前記耐熱性樹脂層2との間に黒インキ層10が配置されている。本実施形態では、前記耐熱性樹脂層2の下面に印刷により前記黒インキ層10が積層されている。また、前記耐熱性樹脂層2の上面(外面)にマットコート層20が積層されている。
【0030】
前記耐熱性樹脂層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記耐熱性樹脂層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂層2は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0031】
前記耐熱性樹脂層2の厚さは、12μm〜50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは12μm〜50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm〜50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0032】
前記熱可塑性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0033】
前記熱可塑性樹脂層3としては、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂未延伸フィルム層であるのが好ましい。前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層3は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。
【0034】
前記熱可塑性樹脂層3の厚さは、20μm〜80μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂層3の厚さは30μm〜50μmに設定されるのが特に好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0035】
前記金属箔層4は、成形用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、20μm〜100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。
【0036】
前記金属箔層4は、少なくとも内側の面4a(第2接着剤層6側の面)に、化成処理が施されているのが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解液、食品、医薬品等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。例えば次のような処理をすることによって金属箔に化成処理を施す。即ち、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、
1)リン酸、クロム酸及びフッ化物の金属塩の混合物からなる水溶液
2)リン酸、クロム酸、フッ化物金属塩及び非金属塩の混合物からなる水溶液
3)アクリル系樹脂又は/及びフェノール系樹脂と、リン酸と、クロム酸と、フッ化物金属塩との混合物からなる水溶液
のいずれかを塗工した後乾燥することにより化成処理を施す。
【0037】
本発明において、前記黒インキ層10は、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール及び硬化剤を含有してなる。
【0038】
前記黒インキ層(乾燥後のインキ層)10において、カーボンブラックの含有率は15質量%〜60質量%であり、前記ジアミン、ポリオール及び硬化剤の合計の含有率は40質量%〜85質量%であるのが好ましい。中でも、カーボンブラックの含有率は20質量%〜50質量%であるのが特に好ましい。
【0039】
カーボンブラックの含有率が15質量%未満では、金属箔層4による金属光沢感が残ってしまって重厚感が損なわれるし、成形をした時に部分的な色ムラを生じる。一方、カーボンブラックの含有率が60質量%を超えると、黒インキ層10が硬く、脆くなるため、金属箔層4に対する接着力が低下して、成形時に金属箔層4と黒インキ層10との間で剥離を生じる。
【0040】
前記黒インキ層10は、前記カーボンブラック、前記ジアミン及び前記ポリオールの合計量100質量部あたり前記硬化剤を2質量部〜20質量部含有する構成であるのが好ましい。硬化剤が2質量部未満では、成形時に金属箔層4と黒インキ層10との間で剥離を生じやすくなり、硬化剤が20質量部を超えると、巻き取り状態の包装材1を繰り出す(巻き出す)際にブロッキングが発生し、耐熱性樹脂層2や熱可塑性樹脂層3の外面に転写、付着が発生する等の不具合を生じる。
【0041】
前記黒インキ層10の厚さは、1μm〜4μmであるのが好ましい。1μm以上であることで、黒インキ層10の色調に透明感が残ることがなく、金属箔層4の色、光沢を十分に隠蔽できる。また、4μm以下であることで、成形時に黒インキ層10が部分的に割れてしまうことを十分に防止できる。
【0042】
前記黒インキ層10の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷法、リバースロールコート法、リップロールコート法等が挙げられる。
【0043】
前記黒インキ層10は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、ジアミン、ポリオール、硬化剤及び有機溶媒を含有するインキ組成物をグラビア印刷法で前記耐熱性樹脂層2の下面(裏面)に印刷する(塗布する)ことによって、形成することができる。前記有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン等が挙げられる。
【0044】
前記カーボンブラックとしては、平均粒子経が10μm〜500μmのものを用いるのが好ましい。
【0045】
前記ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、ダイマージアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン等が挙げられる。中でも、前記ジアミンとして、エチレンジアミン、ダイマージアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン及びジシクロヘキシルメタンジアミンからなる群より選ばれる1種または2種以上のジアミンを用いるのが好ましい。
【0046】
前記ジアミンは、ポリオールより硬化剤(イソシアネート等)との反応速度が速く、短時間での硬化を実現できる。即ち、前記ジアミンは、前記ポリオールと共に前記硬化剤と反応し、インキ組成物の架橋硬化を促進する。
【0047】
前記ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上を用いるのが好ましい。
【0048】
前記ポリオールの数平均分子量は、1000〜8000の範囲であるのが好ましい。1000以上であることで硬化後の接着強度を増大させることができると共に、8000以下であることで硬化剤との反応速度を増大させることができる。
【0049】
前記硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、イソシアネート化合物等が挙げられる。前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物を使用できる。具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
前記第1接着剤層5としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液反応型接着剤により形成された接着剤層等が挙げられる。前記2液反応型接着剤としては、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及びポリエーテル系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液反応型接着剤などが挙げられる。前記第1接着剤層5は、例えば、前記2液反応型接着剤等の接着剤が、前記金属箔層4の上面に又は/及び前記耐熱性樹脂層2の下面(例えば黒インキ層10の下面)に、グラビアコート法等の手法により塗布されることによって形成される。
【0051】
前記第2接着剤層6としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤、フッ素系接着剤等により形成された接着剤層が挙げられる。中でも、アクリル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤を用いるのが好ましく、この場合には、包装材1の耐電解液性及び水蒸気バリア性を向上させることができる。
【0052】
前記マットコート層20は、耐熱性樹脂成分中に無機微粒子が分散含有された樹脂組成物からなるマットコート層である。中でも、前記マットコート層20は、二液硬化型の耐熱性樹脂に、平均粒径が1μm〜10μmの無機微粒子が0.1質量%〜1質量%含有された樹脂組成物からなる構成であるのが好ましい。前記耐熱性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられるが、耐熱性、耐薬品性に優れる点で、テトラフルオロエチレン又はフルオロエチレンビニルエーテルをベースにしたフッ素系樹脂を用いるのが好ましい。前記無機微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられ、中でもシリカを用いるのが好ましい。このようなマットコート層20が設けられていることにより、表面に良好な滑り性が付与され、成形性に優れた包装材1を得ることができる。前記マットコート層20の表面のグロス値は、1%〜15%に設定されるのが好ましい。前記グロス値は、BYK社製のグロス測定器「micro−TRI−gloss−s」により60°反射角で測定して得られた値である。
【0053】
なお、上記実施形態では、第1接着剤層5と第2接着剤層6を設けた構成を採用しているが、これら両層5、6は、いずれも必須の構成層ではなく、これらを設けない構成を採用することもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、耐熱性樹脂層2の上面にマットコート層20が積層された構成を採用しているが、このマットコート層20は、必須の構成層ではなく、例えば図2に示すように、マットコート層20を有しない構成を採用してもよい。
【0055】
本発明の成形用包装材1を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、成形ケース(電池ケース等)を得ることができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
平均粒子径150μmのカーボンブラック50質量部、エチレンジアミン5質量部、ポリエステル系ポリオール(数平均分子量:2500)45質量部を配合して、主剤を得た。前記主剤100質量部に対して硬化剤であるトリレンジイソシアネート(TDI)3質量部を配合し、さらにトルエンを50質量部配合して良く撹拌することによって、インキ組成物を得た。
【0058】
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(耐熱性樹脂層)2の一方の面に、前記インキ組成物をグラビア印刷法により印刷した(塗布した)後、40℃環境下で1日間放置することによって、乾燥と共に架橋反応を進行させて、厚さ3μmの黒インキ層10を形成した。
【0059】
一方、厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が10mg/m2となるようにした。
【0060】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、ポリエステル系ポリウレタン接着剤5を介して前記二軸延伸ナイロンフィルム2をその黒インキ層10側で貼り合わせ、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、ポリアクリル接着剤6を介して厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層)3を貼り合わせた後、40℃環境下で5日間放置することによって、積層体を得た。
【0061】
更に、前記積層体の二軸延伸ナイロンフィルム2の上に(未積層面に)、フルオロエチレンビニルエステル80質量部、硫酸バリウム10質量部、粉状シリカ10質量部からなるコート組成物を塗布することによって、厚さ2μmのマットコート層20を形成して、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0062】
<実施例2>
トリレンジイソシアネート3質量部に代えて、トリレンジイソシアネート10質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0063】
<実施例3>
トリレンジイソシアネート3質量部に代えて、トリレンジイソシアネート15質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0064】
<実施例4>
トリレンジイソシアネート3質量部に代えて、トリレンジイソシアネート20質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0065】
<実施例5>
ポリエステル系ポリオール45質量部に代えて、ポリウレタン系ポリオール(数平均分子量:3000)45質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0066】
<実施例6>
ポリエステル系ポリオール45質量部に代えて、ポリエーテル系ポリオール(数平均分子量:2500)45質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0067】
<実施例7、8>
インキ組成物の組成を表1に示す組成とした以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0068】
<実施例9>
エチレンジアミン5質量部に代えて、エチレンジアミン3質量部及び2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン2質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0069】
<実施例10>
エチレンジアミン5質量部に代えて、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン5質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0070】
<実施例11>
トリレンジイソシアネート(TDI)10質量部に代えて、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)10質量部を配合した以外は、実施例2と同様にして、図1に示す成形用包装材1を得た。
【0071】
<比較例1>
トリレンジイソシアネート3質量部に代えて、トリレンジイソシアネート1質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0072】
<比較例2>
トリレンジイソシアネート3質量部に代えて、トリレンジイソシアネート25質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0073】
<比較例3>
インキ組成物の組成を表2に示す組成(ジアミンを含有しない組成)とした以外は、実施例1と同様にして、成形用包装材を得た。
【0074】
上記のようにして得られた各成形用包装材について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表1、2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
<剥離の有無の評価法>
各実施例毎、各比較例毎に、それぞれ30個の成形用包装材を製造し、これらについて、黒インキ層の剥離の有無等を肉眼で、下記a)、b)の2つの状態時において調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…黒インキ層が割れて剥離したものが、30個中0個である
「○」…黒インキ層が割れて剥離したものが、30個中、1個又は2個である
「△」…黒インキ層が割れて剥離したものが、30個中、3個又は4個である
「×」…黒インキ層が割れて剥離したものが、30個中、5個〜30個である。
【0078】
a)深絞り成形した直後の成形用包装材(黒インキ層の剥離のないことを確認した成形用包装材を、パンチとダイス等を用いて、内側のポリプロピレン層3をパンチと接触させる態様で、縦50mm×横35mm×深さ5.5mmの直方体形状に深絞り成形を行って得られた成形直後の成形ケース)
b)高温高湿試験を適用した後の成形用包装材(黒インキ層の剥離のないことを確認した成形用包装材を、60℃×95%RHの高温高湿試験機の中に72時間入れ続けた後、取り出して常温で5日経過後の成形用包装材)。
【0079】
表1、2から明らかなように、本発明の実施例1〜11の成形用包装材は、深絞り成形を行った時でも、黒インキ層が部分的に割れて剥離することがないし、高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時でも、黒インキ層が部分的に割れて剥離することがない。
【0080】
これに対し、硬化剤の含有量が本発明の規定範囲を逸脱する比較例1、2の成形用包装材では、深絞り成形を行った時及び高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された後では、黒インキ層が部分的に割れて剥離を生じていた。また、ジアミンを含有しない比較例3の成形用包装材では、深絞り成形を行った時及び高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された後では、黒インキ層が部分的に割れて剥離を生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る成形用包装材は、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型のリチウムイオンポリマー二次電池等の電池のケースとして好適に用いられ、これ以外にも、食品の包装材、医薬品の包装材として好適であるが、特にこれらの用途に限定されるものではない。中でも、電池ケース用として特に好適である。
【符号の説明】
【0082】
1…成形用包装材
2…耐熱性樹脂層(外側層)
3…熱可塑性樹脂層(内側層)
4…金属箔層
10…黒インキ層
20…マットコート層
図1
図2