特許第6035172号(P6035172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6035172
(24)【登録日】2016年11月4日
(45)【発行日】2016年11月30日
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/04 20130101AFI20161121BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20161121BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20161121BHJP
【FI】
   B60R25/04
   E05B83/00 G
   E05B49/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-45142(P2013-45142)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-172459(P2014-172459A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨一
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−111800(JP,A)
【文献】 特開平09−209624(JP,A)
【文献】 特開2007−090907(JP,A)
【文献】 特開平10−331493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00−25/40
E05B 49/00
E05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー部と、作業者が把持する摘み部と、を有するキーを備え、キーシリンダに前記キー部が挿入・回し操作されて主電源やエンジンが入切される作業車輌において、
前記摘み部が嵌入する嵌入部を有するキーキャップと、
前記キーシリンダに固設されるイモビライザーアンテナと、前記キーキャップに固設されるトランスポンダと、を有するイモビライザーシステムと、を備え、
前記キーキャップは、略半球形状に形成された覆い部と、前記覆い部の内部に配置され、前記摘み部の平面に沿って形成されて前記嵌入部を構成する1対の壁部と、を有し、
前記トランスポンダは、前記壁部と前記覆い部とによって形成されるスペース内において、前記壁部に固設されてなる、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記トランスポンダは、前記嵌入部に前記摘み部が嵌入し、かつ前記キー部が前記キーシリンダに挿入された状態で、前記キーの回転中心に対して前記イモビライザーアンテナ側に配置されてなる、
請求項1記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機やトラクタなどの作業車輌に係り、詳しくは、そのイモビライザーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、合鍵等による乗用田植機やトラクタなどの作業車輌の盗難が多発しており、イモビライザーシステムによる盗難防止が提唱されている。イモビライザーシステムは、車両側に設けたアンテナからトランスポンダに指令信号を電波送信し、トランスポンダからの暗証番号をアンテナで電波受信し、この受信した暗証番号とコントローラに設定記憶された暗証番号とを照合して、暗証番号が合致しない場合にはエンジンの始動回路が解除せず、また暗証番号が一致する場合にはエンジンを始動可能とするものである。
【0003】
一般には、予めキーにトランスポンダを内蔵し、車両のキーシリンダにアンテナを配置して、イモビライザーシステムを構築するが、従来、イモビライザーシステムを後付けするものとして、タグ型トランスポンダをキーに係着すると共に垂下させ、上斜め向きに設けたキーシリンダの傾斜方向下方側にアンテナを設けたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のものは、タグ型トランスポンダがキーとリングで接続されているため、タグ型トランスポンダが落下して紛失する虞があると共に、タグ型トランスポンダがキーに対して揺動し、キーシリンダの傾斜方向下方側に設けたアンテナとの距離が不安定になって、確実に信号の送受信が行われないことがある。また、作業者の乗降時等にキー又はタグ型トランスポンダに足が当たり、誤操作や故障の原因となる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、キーを嵌入するキーキャップを備えると共に、該キーキャップにトランスポンダを配置して、もって上述した課題を解決した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、キー部(26a)と、作業者が把持する摘み部(26b)と、を有するキー(26)を備え、キーシリンダ(22)に前記キー部(26a)が挿入・回し操作されて主電源やエンジンが入切される作業車輌(1)において、
前記摘み部(26b)が嵌入する嵌入部(29)を有するキーキャップ(27)と、
前記キーシリンダ(22)に固設されるイモビライザーアンテナ(25)と、前記キーキャップ(27)に固設されるトランスポンダ(37)と、を有するイモビライザーシステムと、を備え
前記キーキャップ(27)は、略半球形状に形成された覆い部(30)と、前記覆い部(30)の内部に配置され、前記摘み部(26b)の平面に沿って形成されて前記嵌入部(29)を構成する1対の壁部(29b)と、を有し、
前記トランスポンダ(37)は、前記壁部(29b)と前記覆い部(30)とによって形成されるスペース(S)内において、前記壁部(29b)に固設されてなる、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば図3及び図4を参照して、前記トランスポンダ(37)は、前記嵌入部(29)に前記摘み部(26b)が嵌入し、かつ前記キー部(26a)が前記キーシリンダ(22)に挿入された状態で、前記キー(26)の回転中心に対して前記イモビライザーアンテナ(25)側に配置されてなる。
【0010】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明は、キーキャップにトランスポンダを固設したので、イモビライザーシステム専用のキーでないものにトランスポンダを容易に取付けることができ、かつキーからトランスポンダが外れて紛失するのを防止することができる。また、イモビライザーアンテナとトランスポンダとを近接かつ安定して配置することができ、信号の送受信を確実に行うことができる。さらに、キーキャップが全体として略半球形状に形成されるので、キーへの衝撃を逃がし、例えば作業者がキーに足をぶつけた際のキーの誤操作を防止すると共に、空きスペースにトランスポンダを配置することで、イモビライザーシステムを取付ける空間を改めて設ける必要がなく、イモビライザーシステムを容易に取付けることができる。
【0012】
請求項2に係る本発明は、トランスポンダをキーの回転中心に対してイモビライザーアンテナ側に配置したので、キーを回転操作してもトランスポンダをイモビライザーアンテナに近接して配置することができ、信号の送受信を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した乗用田植機を示す全体側面図。
図2】その平面図。
図3】本発明を適用したキーシリンダ及びキーを示す斜視図。
図4】本発明を適用したキーキャップを示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図、(f)は背面図。
図5】本発明を適用したキーキャップを示す図であって、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)はA−A断面図、(d)はB−B断面図。
図6】キーにキーキャップを取付けた状態を示す図であって、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)はC−C断面図、(d)はD−D断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本発明を適用した乗用田植機1(作業車輌)は、図1及び図2に示すように、左右一対の前輪2及び後輪3に支持される走行機体5と、該走行機体5の後部に昇降リンク機構6を介して昇降自在に連結される植付作業機7と、を備えて構成されている。
【0016】
上記植付作業機7は、上記走行機体5の進行方向である前後方向の軸回りに回動自在(ローリング自在)に上記リンク機構6に支持されたフレーム部9を有している。該フレーム部9は、前高後低状の傾斜姿勢で苗載台10を支持しており、該苗載台10には、その載置面10aに載置されるマット苗を下方搬送する縦送り機構11が設置されている。上記フレーム部9の後方には、植付部12が一体的に延設されており、該植付部12の移植杆13が回転することで、上記載置面10aに載置されて下端に搬送されたマット苗から一株分の苗を掻き取って、圃場に連続的に移植できるようになっている。
【0017】
上記走行機体5は、前部にエンジン等が収納されるボンネット15が配置され、後部に作業者が上記乗用型田植機1を運転操作する運転操作部16が配置されている。該運転操作部16は、作業者が着座する運転座席17と、上記走行機体5の旋回操作を行なうステアリングハンドル19と、前進後進の切替等を行なう主変速レバー20と、等を備えており、作業者が上記運転座席17に着座した時の足元正面部分は、リアパネル21で覆われている。
【0018】
該リアパネル21には、図1及び図3に示すように、主電源やエンジンの入切のスイッチとなるキーシリンダ22が突出して設けられており、該キーシリンダ22は、その底面22aにキー穴23を有し、側面22bにイモビライザーアンテナ25が固設されている。該イモビライザーアンテナ25は、上記側面22bの上側面から右側面に沿って円弧状に形成されており、該円弧の中心角は、上記キー穴23の回動角に対応して設定されている。上記キー穴23には、キー26が挿入されて、該キー26を所定方向に回し操作することで、主電源やエンジンを入切することができる。本実施の形態では、上記キー穴23が略鉛直方向に開口している状態(図3参照)又はやや反時計回りに傾いた状態で乗用田植機1の主電源及びエンジンは停止するようになっており、そこからキー穴23にキー26を挿入し、時計回りに回し操作することで、段階的に主電源、エンジンが始動するようになっている。上記キー26は、上記キー穴23に挿入される部分であるキー部26aと、作業者が把持する部分である摘み部26bと、を有しており、上記キー穴23に対する抜き挿し操作や回し操作は、上記摘み部26bを指で摘みながら行われる。
【0019】
上記摘み部26bには、射出成形された樹脂部品であるキーキャップ27が取付けられ、該キーキャップ27は、図4ないし図6に示すように、上記摘み部26bが嵌入する嵌入部29と、該嵌入部29を覆い、かつ略半球形状に形成された覆い部30を備えている。上記嵌入部29は、上記キーキャップ27の底面に穴状に形成され、該嵌入部29内には、係合爪29aが一体形成されている。該係合爪29aは、上記摘み部26bに形成されたキーホルダ挿通用の孔31に係合して、上記嵌入部29に嵌入した上記摘み部26bを抜き止めすることができ、キー26及びキーキャップ27の紛失を防止できる。
【0020】
上記覆い部30の外周面には、指標部32と、左右一対の凹部33,33と、通し孔35と、が形成されている。上記指標部32は、上記嵌入部29に沿うように、上記覆い部30の外周面から突出して形成された凸部であり、直線状に形成されている。すなわち、上記指標部32は、半球状の上記覆い部30の外周面の端部から上記通し孔35まで直線的に形成され、上記キーキャップ27が取付けられた上記キー26の回し位置を示すものである。
【0021】
左右一対の上記凹部33,33は、上記嵌入部29に嵌入した上記摘み部26bに沿うように、上記覆い部30の外周面の凹部として形成され、例えば最も凹み量が大きい部分で数[mm]程度に形成される。上記凹部33は、複数の並列する線状の滑り止め部36を備えている。これら凹部33及び滑り止め部36は、作業者が上記覆い部30を指で摘んでキー26を回し操作する際の操作性を向上すると共に、該キー26の回し位置を直感的に認識することを可能とする。
【0022】
上記通し孔35は、略半球形状の上記覆い部30の頂部近傍に形成されており、上記摘み部26bと係合爪29aとの係合状態を目視で確認する係合確認用の孔や、上記摘み部26bと係合爪29aとの係合を解除する際に、精密ドライバ等の差し込み用の孔として利用されると共に、キーホルダやストラップ等の取付け孔として利用される。
【0023】
上記嵌入部29と上記覆い部32とによって形成されるスペースS内には、上記イモビライザーアンテナ25と共にイモビライザーシステムを構成するトランスポンダ37が配置されており、具体的には、該トランスポンダ37は、上記嵌入部29を構成する壁部29bの一側に固設され、正面視において上記指標部32が上位置にある状態(図4(a)参照)で、上記円形状のキーキャップ27の右上の四半円内に配置される。該トランスポンダ37には、乗用田植機毎に設定された暗証番号が記憶されており、該トランスポンダ37は、上記イモビライザーアンテナ25からの指令信号に応じて暗証番号を送信するようになっている。該暗証番号を受信した上記イモビライザーアンテナ25は、不図示のコントローラに受信した暗証番号を出力し、その暗証番号とコントローラに予め設定記憶された暗証番号とを照合して、暗証番号が合致しない場合には主電源やエンジンの始動回路が解除せず、また暗証番号が一致する場合には主電源やエンジンを始動可能とする。
【0024】
本実施の形態は以上のような構成からなるので、作業者は、キー26の摘み部26bを、キーキャップ27の嵌入部29に嵌入すると共に上記係合爪29aによって抜き止めし、キー26とキーキャップ27とを一体として持ち運び使用する。作業者は、乗用田植機1で走行及び作業を行う場合、上記キーキャップ27の指標部32が上方側となるように、キー部26aをキーシリンダ22のキー穴23に挿入する。すると、キーキャップ27のスペースS内に固設されたトランスポンダ37は、キー26の回転中心に対してイモビライザーアンテナ25側に配置され、キーシリンダ22の上側面から右側面にかけて円弧状に形成されたイモビライザーアンテナ25の形状と相俟って、キー26を回転操作してもトランスポンダ37が常にイモビライザーアンテナ25に近接して配置される。これにより、例えばイモビライザーアンテナとトランスポンダとの通信可能距離が30[mm]のイモビライザーシステムにおいても、信号の送受信を確実に行うことができる。
【0025】
また、イモビライザーアンテナ25及びトランスポンダ37が固設されたキーキャップ27は、イモビライザーシステムを具備していない既存の乗用田植機にも容易に後付け可能であり、イモビライザーシステムの搭載にあたってキーやキーシリンダの変更を伴わず、コストダウンできる。更に、キーキャップ27の覆い部30は、略半球形状に形成されるので、車両の乗り降り等の際に作業者の足がキーキャップ27に当たったとしても、力を逃がしてキー26の誤操作を防止することができる。
【0026】
また、イモビライザーアンテナは円弧形状に限らずチップ形状等でもよく、またその取付場所も限定されず、例えば小型チップとしてキーシリンダ22の底面22aに取付けてもよく、キーキャップに固設したトランスポンダとの位置関係において、信号の送受信が安定して可能なようにイモビライザーアンテナとトランスポンダが適宜近接して配置されればよい。
【0027】
なお、本実施形態では、乗用型田植機を例にして説明したが、キーシリンダとキーによってエンジンの始動/停止を行う他の作業機、例えばトラクタやコンバイン、管理機やハーベスタ等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 作業車輌
22 キーシリンダ
25 イモビライザーアンテナ
26 キー
26a キー部
26b 摘み部
27 キーキャップ
29 嵌入部
30 覆い部
37 トランスポンダ
S スペース

図1
図2
図3
図4
図5
図6