(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下りリンク上での不連続信号受信に関し、受信期間と非受信期間を交互反復的に設け、前記下りリンク上での受信信号品質に基づいて第1の基地局からのハンドオーバーの開始の可否を判断する移動端末であって:
第1の基地局および前記第1の基地局の近隣セルに位置する一つ以上の第2の基地局からのダウンリンク信号の受信品質を測定する手段であって、前記受信期間においては第1の頻度で前記測定を実行し、前記非受信期間においては第1の頻度よりも低い第2の頻度で前記測定を実行する、手段;
前記受信品質が所定の条件を充足する時点を識別する手段;
前記所定の条件の充足状態が維持されるか否かを監視する監視動作を前記識別された時点から開始する手段であって、前記監視動作は、前記非受信期間においては、前記第2の頻度よりも高い第3の頻度で反復実行される、手段;および、
前記監視動作の反復実行により、所定の反復回数に渡って前記所定の条件の充足状態が維持されたと判定された場合に、前記第1の基地局に対して前記第2の基地局の中の一つへのハンドオーバー開始を要求する信号を送信する手段;
を備える、移動端末。
前記所定の条件は、前記第1の基地局から受信したダウンリンク信号の受信品質が、前記第1の基地局に関してハンドオーバー開始の条件として指定された閾値条件を満たすときに充足されることを特徴とする、
請求項1記載の移動端末。
前記ハンドオーバーの開始を前記要求する信号は、前記第1の基地局と前記一つ以上の第2の基地局からのダウンリンク信号の受信品質を測定した結果を前記第1の基地局へ報告するための測定報告信号であり、
当該移動端末のハンドオーバー先となる基地局は、前記第1の基地局が前記測定報告信号に基づいて、前記一つ以上の第2の基地局の中から選択した基地局である、
ことを特徴とする、請求項2記載の移動端末。
前記非受信期間において、前記第2の頻度よりも高い第3の頻度で前記監視動作を実行する動作は、前記監視動作の反復実行のペースを速めることにより、前記ハンドオーバーの失敗率を軽減するのに十分な時間幅だけ前記ハンドオーバー開始を要求する信号の送信タイミングを早める動作を備える、請求項2記載の移動端末。
前記ダウンリンク信号を受信するために当該移動端末が備える無線受信回路は、ダウンリンク信号の受信品質を測定する動作を実行すると共に、前記受信したダウンリンク信号に対する復調処理とチャネル復号化処理の実行を前記非受信期間において抑制する
ことを特徴とする、請求項2記載の移動端末。
下りリンク上での不連続信号受信に関し、受信期間と非受信期間を交互反復的に設け、前記下りリンク上での受信信号品質に基づいて第1の基地局からのハンドオーバーの開始の可否を判断する移動端末により実行される方法であって:
第1と第2の基地局からのダウンリンク信号の受信品質を測定するステップであって、前記受信期間においては第1の頻度で前記測定を実行し、前記非受信期間においては第1の頻度よりも低い第2の頻度で前記測定を実行する、ステップ;
前記受信品質が所定の条件を充足する時点を識別するステップ;
前記所定の条件の充足状態が維持されるか否かを監視する監視動作を前記識別された時点から開始する手段であって、前記監視動作は、前記非受信期間においては、前記第2の頻度よりも高い第3の頻度で反復実行される、ステップ;および、
前記監視動作の反復実行により、所定の反復回数に渡って前記所定の条件の充足状態が維持されたと判定された場合に、前記第1の基地局に対して前記第2の基地局へのハンドオーバーの開始を要求する信号を送信するステップ;
を備える、方法。
前記所定の条件は、前記第1の基地局から受信したダウンリンク信号の受信品質が、前記一つ以上の第2の基地局から受信したダウンリンク信号の受信品質を下回るときに充足されることを特徴とする、
請求項6記載の方法。
前記ハンドオーバーの開始を前記要求する信号は、前記第1の基地局と前記一つ以上の第2の基地局からのダウンリンク信号の受信品質を測定した結果を前記第1の基地局へ報告するための測定報告信号であり、
当該移動端末のハンドオーバー先となる基地局は、前記第1の基地局が前記測定報告信号に基づいて、前記一つ以上の第2の基地局の中から選択した基地局である、
ことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
現在、LTEの基地局間ハンドオーバー制御とDRX制御をいかに組み合わせるかに関して検討がはじまったばかりである。このため、その制御の組み合わせ等において、移動端末、ソース・セルおよびターゲット・セルの間の連係動作によるハンドオーバー制御の円滑化に関する具体的な方策等の検討はなされていないというのが実情である。基地局間ハンドオーバー制御とDRX制御を組み合わせた制御方式においては、移動端末(UE)がダウンリンク上でDRX伝送を実行中であっても、ハンドオーバー開始の可否判断のためにダウンリンク信号受信品質を持続的に監視する必要が有る。そこで、本実施の形態においては、DRXスリープ期間中に移動端末の無線受信回路が低電力動作または電源オフを余儀なくされることを考慮し、上述したような受信信号品質の持続的な監視を遅滞させるDRXスリープ期間の介在に起因するハンドオーバー開始判断の遅延を防止する仕組みを具体的に説明する。
<1>ハンドオーバー制御システムの概要
まず、
図1および
図2を使用して、本実施の形態に係るネットワーク構成および当該ネットワーク構成の内部において、ソース・セルからターゲット・セルへと移動端末が通信を切り替える際のハンドオーバーの基本動作を説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に従い、移動端末のダウンリンク上でのDRX伝送時においてハンドオーバー動作を開始するハンドオーバー制御システムのネットワーク構成を示す図である。
図1において、基地局201は移動端末100がハンドオーバーする前に在圏していたセル(ソース・セル)をカバーする基地局であり、ハンドオーバー前の状態においては、移動端末100に対するサービング基地局である。基地局202は、移動端末100がハンドオーバーする先のセル(ターゲット・セル)をカバーする基地局である。移動端末103は、セルラー電話、スマートフォンまたはラップトップ型PCなどであっても良く、UEとも呼ばれる。以下において具体的に後述するとおり、移動端末100がハンドオーバー動作を実行する際、移動端末100は、基地局201との間で、ダウンリンク信号測定レポートやHO Commandなどの制御信号を通信し、基地局202との間で、HO Confirmなどの制御信号を通信する。また、以下において具体的に後述するとおり、移動端末100がハンドオーバー動作を実行する際、ハンドオーバー元の基地局201とハンドオーバー先の基地局102とは、Context ConfirmやHO Completedなどの制御信号を通信する。
【0021】
以下、
図2に記載されたシーケンス図を参照しながら、従来技術において、DRX制御中の移動端末が実行する基地局間のハンドオーバー手順を示す。以下に例示するハンドオーバー手順は、3GPPによって標準化が進められているE−UTRAN標準と互換性のある手順である。
【0022】
まず、ターゲット・セルの基地局202から上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation)が移動端末100に送信される(
図2のS1)。基地局間ハンドオーバーを行う移動端末100は、滞在するソース・セルの周辺セルに関するダウンリンク受信信号品質の測定レポートをソース・セルの基地局201へ送信する(
図2のS2)。
【0023】
ソース・セルの基地局201は、ターゲット・セルの基地局202に対して、移動端末のRAN Context Data(QoS Profile、 AS configuration)を転送する(
図2のS3)。なお、ターゲット・セル側基地局202は、ソース・セルの近隣に位置する一つ以上の周辺セルをカバーする一つ以上の周辺基地局の中からソース・セル側基地局201が選択した基地局とすることが出来る。この場合、ソース・セル側基地局201は、周辺基地局の中からターゲット・セル側基地局202を選択する動作を、移動端末100から受信したダウンリンク受信信号品質の測定レポートと所定の評価基準に基づいて実行することが出来る。
【0024】
ソース・セルの基地局201は、移動端末100に対して、DRX(間歇受信)から連続的な受信動作へと移ること(あるいはDRXサイクルの非受信期間を短縮する)を指示する信号(DRX Control Signaling)を送信し、移動端末100のDRX制御を停止する(
図2のS4)。
【0025】
ソース・セルの基地局201は、ターゲット・セルの基地局202からハンドオーバー要求の受け入れが可能であることの通知(Context Confirm)を受け取った後、移動端末100に対してハンドオーバー動作の開始を許可するコマンド(HO Command)を送信する(
図2のS5〜S6)。
【0026】
移動端末100は、ソース・セルの基地局201からハンドオーバー開始コマンド(HO Command)を受信した後、ターゲット・セルにおいて、上りチャネルであるRACHにて上りリンク同期(UL Synchronization)を送信し、ターゲット・セルの基地局202から、送信タイミング調整値(Timing Advance:TA)と上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation)を取得する(
図2のS7〜S8)。
【0027】
そして、移動端末100は、ターゲット・セルの基地局202からの送信タイミング調整値(TA)に従って送信タイミングを調整して割り当てられた時間および周波数でHO Confirmを送信し、ターゲット・セルの基地局202へハンドオーバーして来たことを通知する(
図2のS9)。
【0028】
移動端末100からのHO Confirmを受け取ったターゲット・セルの基地局202は、ハンドオーバーの完了を伝える制御信号(HO Completed)を、ソース・セルの基地局201へ送信し、MME(Mobilty Management Entity)/UPE(User Plane Enitity)へ、移動端末100が基地局間ハンドオーバーにより、自分が管理するセルに移動したことを通知し(UE(User Eqipment) update to MME/UPE)、これにより基地局間ハンドオーバー動作が完了する(
図2のS10〜S11)。
【0029】
ターゲット・セルの基地局202は、ハンドオーバーして来た移動端末100が予め定められた期間(ターゲット・セルの基地局202において内蔵するタイマーで判断)データ送受信を行わなかった場合には、移動端末100に対するDRX制御をリスタートする。
【0030】
ターゲット・セルの基地局202から上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation:時間と周波数の割り当て情報)が移動端末100に送信され、移動端末100がデータを送信する(UL data transmission)(
図2のS12)。
【0031】
以上のように、ハンドオーバーとDRX制御を組み合わせた移動端末の制御が行われる。
<2>DRXの概要
以下、
図3を使用してDRXの概念を説明する。DRXとは、移動端末(UE)100の送受信データが無い期間において、移動端末(UE)100が通信状態のままで間歇的に受信データの到来を監視する信号受信態様である。具体的には、基地局は、自局が管理するセル内のすべての移動端末のDRX制御を行い、移動端末100は基地局から指定された周期(「DRXサイクル」あるいは、「DRX期間」ともいう)にしたがって間歇的なダウンリンク受信を行う。DRXサイクル(DRX期間)は、例えば
図3に示すように、ダウンリンク信号の到来を継続的に監視する期間である受信期間(アクティブ期間)と、ダウンリンク信号の当体を監視しない期間である非受信期間(スリープ期間)とを含む。すなわち、1つのDRXサイクルは、1つのDRXアクティブ期間と、このDRXアクティブ期間に後続する1つのDRXスリープ期間とから成り、ダウンリンクに関する時間軸上において、このDRXサイクルが反復される。この時、DRXアクティブ期間においては、ダウンリンク信号を監視するために、移動端末(UE)100内の無線受信回路は通常の電力レベルで動作中(オン状態)であり、逆に、DRXスリープ期間においては、ダウンリンク信号の監視が不要なので、移動端末(UE)100内の無線受信回路は通常の電力レベルよりも低い待機電力レベルで動作中(待機電力動作モード)または電源が完全にオフにされた状態(完全オフ状態)である。
【0032】
図3に示す例において、1つのDRXサイクルの長さは、1280ミリ秒間であり、その内の最初の6ミリ秒間がDRXアクティブ期間であり、残りの期間がDRXスリープ期間である。また、別の例として、3GPPが標準化を進めるLTE網において、インター周波数測定及びインターシステム測定を実行する場合、1つのDRXサイクルは、連続する40個のサブフレームから構成され、DRXアクティブ期間は、連続する10個のサブフレームから構成される。
【0033】
移動端末(UE)のダウンリンク上において上述したようなDRXを実行する第1の理由は、間歇的にのみ無線受信回路の電源を入れて受信データの到来を監視することにより、移動端末(UE)のバッテリ消費を節約するためである。第2の理由は、無線受信回路の電源を所定の周期で規則的にオンにすることにより、データの送受信が突然再開された際に無線送受信器(無線トランシーバ)の立ち上がり遅延を短縮するためである。
<3>ダウンリンク信号測定レポートの送信条件
以下、
図4を参照しながら、基地局間において移動端末のハンドオーバーを開始する条件について説明する。なお、説明を簡単にするために、以下の説明においては、ダウンリンク受信に関して移動端末(UE)100によるDRXの実行はされておらず、ダウンリンク信号の受信とその品質測定は常にアクティブ状態(無線受信回路のオン状態)で実行されるものと仮定する。
【0034】
図2の例において、移動端末(UE)100、基地局201および基地局202が互いに連携してハンドオーバー手順を開始するためには、
図2のハンドオーバー手順中のステップS2において、ダウンリンク信号品質の測定レポートが移動端末(UE)100からソース・セルの基地局201に対して送信されなくてはならない。従って、ハンドオーバー手順を開始するためには、
図4を使用して以下で説明する条件が充足されたことにより、上述したダウンリンク信号品質の測定レポートを送信する必要が有ると移動端末(UE)100が判断する必要がある。
【0035】
そこで、移動端末(UE)100が
図1に示す基地局201から
図1に示す基地局202へのハンドオーバーを開始するのに先立って、移動端末100が基地局201に向けたダウンリンク信号測定レポートの送信をトリガーするために充足されなくてはならない条件を、
図4に示すダウンリンク信号の受信品質に関する時間変動曲線グラフを使用して詳細に説明すると以下のとおりとなる。
【0036】
図4の曲線グラフにおいて、縦軸はダウンリンク信号の受信品質であり、受信品質は、ダウンリンク信号のRSRP(基準信号受信電力)またはRSRQ(基準信号受信品質)等であっても良い。また、
図4の曲線グラフにおいて、横軸は時間軸であり、
図4においてこの時間軸は、区間t1、t2、t3、t4およびt5に分割されて示されている。
図4において、実線で示された曲線は、サービング・セル(
図1の基地局201)から受信したダウンリンク信号の信号品質の時間変化を表し、破線で示された曲線は、サービング・セルに近接する近隣セルから受信したダウンリンク信号の信号品質の時間変化を表す。
【0037】
図4において、以下の条件(C1)および(C2)が共に満たされる場合に、上述したダウンリンク信号品質の測定レポートを基地局201に対して送信する必要が有ると移動端末(UE)100が判断する。
(C1)サービング・セル(基地局201)から受信したダウンリンク信号の受信信号品質が、基地局201おけるハンドオーバー開始の条件として指定された閾値条件を満たすこと。このような閾値条件の一例としては、例えば、実線の曲線で示される基地局201からのダウンリンク信号の受信信号品質が、破線の曲線で示される近隣セルからのダウンリンク信号の受信信号品質を下回ることを要件とするものがある。
(C2)上記(C1)の条件が満たされている状態がTTT(Time to Trigger)で表される時間長以上に渡って持続したこと。
【0038】
従って、
図4において、上記(C1)の条件を満たす時間区間t2は、横軸上で太い双方向の矢印で図示したTTT(Time to Trigger)の途中で途切れてしまっているので、上記(C2)の条件を満たしていない。その結果、
図4の時間区間t2の終端時点において、移動端末100はダウンリンク信号品質の測定レポートを基地局201に対して送信しない。一方、
図4において、上記(C1)の条件を満たす時間区間t4は、横軸上で太い双方向の矢印で図示したTTT(Time to Trigger)の時間幅だけ持続している。その結果、
図4の時間区間t4の終端時点において、移動端末100はダウンリンク信号品質の測定レポートを基地局201に対して送信する。その結果、
図4の時間区間t5において、移動端末100が送信したダウンリンク信号品質の測定レポートが基地局201によって受信され、
図2に示したハンドオーバー手順が開始する。
【0039】
以上から、移動端末(UE)100が、上述した条件(C1)および(C2)に基づいて、ハンドオーバー動作をトリガーするためのダウンリンク信号品質測定レポートを送信することの可否を判定するアルゴリズムは、
図5のフローチャートに示すとおりとなる。
図5のフローチャートでは、まず、ステップS1において、ダウンリンク信号の受信品質測定が実行され、ステップS2において、測定された受信品質が
図4に関して上述した条件(C1)を充足するか否かが判定され、充足されるならば処理はステップS3に進み、充足されないならば、処理はステップS1に戻る。続いて、ステップS3において、ダウンリンク信号の受信品質測定が実行され、ステップS4において、測定された受信品質が
図4に関して上述した条件(C1)を充足するか否かが判定され、充足されるならば処理はステップS5に進み、充足されないならば、処理はステップS1に戻る。ステップS5において、上述した条件(C1)が最初に充足されてからTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過しているか否かが判定され、経過しているならば、処理はステップS6に進み、経過していないならば、処理はステップS3に戻る。続いて、処理はステップS6に進み、
図4に関して上述した条件(C2)が充足されているとして、ハンドオーバー動作をトリガーするためのダウンリンク信号品質測定レポートが送信される。
<4>ダウンリンク信号測定レポートの送信タイミングを決定するための従来の方法
図4に関して上述した説明においては、ハンドオーバー開始のためのダウンリンク信号品質測定レポートの送信をトリガーする条件に関して移動端末(UE)100によるダウンリンク上でのDRXの実行は考慮しなかった。そこで今度は、
図6乃至
図8を参照しながら、従来技術において、移動端末(UE)100がダウンリンク上でDRXを実行している際に、移動端末100がTTT(Time to Trigger)に基づいてダウンリンク信号測定レポートの送信をトリガーするタイミングを決定する方法について説明する。
【0040】
図6および
図7を使用した以下の説明では、移動端末(UE)100がダウンリンク上でDRXを実行中のDRXスリープ状態においては、移動端末(UE)100の無線受信回路は通常電力レベルよりも低い電力レベルで動作する待機電力動作モードで動作中であり、電源が完全にオフとはなっていないとする。
【0041】
従来技術において、移動端末(UE)100がダウンリンク上でDRXを実行している際、現在のダウンリンク受信状態がDRXアクティブ状態(無線受信回路がオン状態)にあるか又はDRXスリープ状態(無線受信回路が待機電力モード)にあるかに応じて、ダウンリンク上での受信信号の受信とその受信信号品質の測定の実行頻度は異なる。DRX状態に応じたダウンリンク上での信号受信と品質測定に関する実行頻度の制御は、移動端末(UE)100によるDRX制御の一部として実行される。具体的には、現在のダウンリンク受信状態がDRXアクティブ状態にある場合、無線受信回路は通常電力レベルで動作しているので、移動端末(UE)100は、高い頻度でダウンリンク信号受信と受信信号品質測定を実行する。これに対し、現在のダウンリンク受信状態がDRXスリープ状態にある場合、無線受信回路は通常電力レベルよりも低い待機電力レベルで動作しているので、移動端末(UE)100は、低い頻度でダウンリンク信号受信と受信信号品質測定を実行する。
【0042】
図6において、横軸はダウンリンク上での時間軸であり、当該時間軸上に並んだ縦方向の矢印の各々は、ダウンリンク信号の受信品質測定動作の各実行を表す。
図6において実線で表された縦方向矢印は、受信品質測定の結果、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されない場合に対応し、点線で表された縦矢印は、上述した(C1)の条件が充足された場合に対応する。
図6は、DRXアクティブ状態の期間内におけるダウンリンク信号品質測定レポートの送信タイミング決定方法を示す。
図6は、DRXアクティブ状態において、高い頻度でダウンリンク信号の受信と当該信号の品質測定が実行されている様子を図示している。
【0043】
今、
図6の(1)で表される時点において、サービング・セル(基地局201)からのダウンリンク信号の受信信号品質が破線の曲線で示される近隣セルからのダウンリンク信号の受信信号品質を下回った(すなわち、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足された)と移動端末(UE)100が判定したとする。これに続いて、移動端末(UE)100は、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されている状態がTTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って持続するか否かの監視動作を開始する。この場合、上記監視動作はダウンリンク信号受信品質測定の結果を使用して実行されるため、上記監視動作の実行頻度は、ダウンリンク上でのDRX制御に応じたダウンリンク信号受信品質測定の実行頻度と同一となる。続いて、
図6に示す(1)の時点からTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過した(2)の時点においては、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されていないので、移動端末(UE)100は、
図4に関して上述した(C2)の条件が成り立たない。従って、移動端末(UE)100は、
図6の(2)の時点においては、ハンドオーバー動作をトリガーするためのダウンリンク信号品質測定レポートの送信を許可しない。続いて、
図6の(3)で表される時点において、
図4に関して上述した(C1)の条件が再度充足されたと移動端末(UE)100が判定したとする。これに続いて、移動端末(UE)100は、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されている状態がTTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って持続するか否かの監視動作を開始する。続いて、
図6に示す(3)の時点からTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過した(4)の時点においては、
図4に関して上述した(C1)の条件が継続的に充足されている。その結果、移動端末(UE)100は、
図6の(4)の時点においては、ハンドオーバー動作をトリガーするためのダウンリンク信号品質測定レポートの送信を実行する。
【0044】
図7において、横軸はダウンリンク上での時間軸であり、当該時間軸上に並んだ縦方向の矢印の各々は、ダウンリンク信号の受信品質測定動作の各実行を表す。
図7は、
図6とは異なりDRXスリープ状態の期間内におけるダウンリンク信号品質測定レポートの送信タイミング決定方法を示す。
図7は、DRXスリープ状態において、DRXアクティブ状態における頻度よりも低い頻度でダウンリンク信号の受信と当該信号の品質測定が実行されている様子を図示している。
【0045】
図7に示す(1)の時点において、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足され、その時点からTTT(Time to Trigger)で表される時間幅以上が経過した(2)の時点において上述した(C1)の条件が充足されていない点、および、これにより、移動端末(UE)100が、ハンドオーバー動作のトリガー動作を許可しないというシナリオは、
図6の時点(1)および時点(2)に関する説明と同様である。しかしながら、
図7においては、上述した(C1)の条件が充足されたと判定された(3)の時点から、TTT(Time to Trigger)で表される時間が経過した直後であるTaの時点では、ダウンリンク信号の受信品質測定動作が実行されず、Taよりも遅いTbの時点で受信品質測定動作が実行される。その理由は、以下のとおりである。すなわち、時点TaはDRXスリープ期間中に位置しているので、上述の(C1)の条件が継続的に満たされているかを時点Taの直後から監視する動作の実行頻度は、
図6に示したDRXアクティブ状態における実行頻度よりも低い頻度で実行される。その結果、上述の(C1)の条件が継続的に満たされているかを時点Taの直後から監視する動作の実行間隔は、TTT(Time to Trigger)で表される時間幅よりもずっと長くなるので、
図7の時点(3)の後に上述の(C1)の条件が継続的に満たされているかを最初に判定する時点は、
図7の時点Taよりも遅い時点Tbとなる。
【0046】
以上より、
図7の時点(3)において充足された(C1)の条件が、実際には時点Taにおいて継続的に充足されていたとしても、移動端末(UE)100はその事実を認識することが出来ない。この場合、移動端末(UE)100は、(C1)の条件が
図7の時点Taよりも遅い時点Tbまで継続的に満たされていた場合に、初めて(C1)の条件がTTT(Time to Trigger)にわたって満たされたことを認識することが可能となる。
【0047】
従って、本来であればTTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って実行しなくてはならない上記監視動作の連続的実行が、上記監視動作の実行頻度が低下した分だけ遅滞することとなる。その結果、
図4に関して上述した(C2)の条件は、
図7に示す時間軸上において、DRXが実行されない場合に上記監視動作を持続すべきTTT(Time to Trigger)の満了時であるTaの時点ではなく、Tbで表される時刻に充足されることとなる。その結果、移動端末(UE)100がダウンリンク信号品質の測定レポートをサービング基地局に送信するのを許可するタイミングは、
図7においてTaで表される時点からTbで表される時点に至るまでの時間幅(Tb−Ta)だけ遅延することとなる。ハンドオーバー動作を開始するための上述したような判断の遅延は、結果としてハンドオーバーの失敗を招く場合がある。
【0048】
次に
図8を使用して、ダウンリンク信号測定レポートの送信をトリガーするタイミングを決定する方法をより詳しく説明する。
図8の時間軸上には、DRXアクティブ区間P1、DRXスリープ区間P2およびDRXアクティブ区間P3の3つの連続する時間区間が図示されている。
【0049】
今、
図8のTeで表される時点において、サービング・セル(基地局201)からのダウンリンク信号の受信信号品質が破線の曲線で示される近隣セルからのダウンリンク信号の受信信号品質を下回った(すなわち、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足された)と移動端末(UE)100が判定したとする。ここで、
図8のTeで表される時点は、DRXスリープ区間P2が開始する直前の時点である。これに続いて、移動端末(UE)100は、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されている状態がTTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って持続するか否かの監視動作を開始する必要がある。しかしこの場合、上記監視動作はダウンリンク信号受信品質測定の結果を使用して実行されるため、DRXスリープ期間P2内においてダウンリンク信号受信品質測定の実行頻度が低下すると上記監視動作の実行頻度も低下する。従って、TTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って、上述した(C2)の条件が充足されるか否かを監視する動作の実行頻度が、DRXスリープ状態の期間P2の満了まで低下することとなる。具体的には、
図8に示す時間軸上において、DRXスリープ状態の期間P2が開始する直前の時点であるTeの時点において、上述した(C1)の条件が充足されたとしても、DRXスリープ期間P2内において最初に実行されるダウンリンク信号品質測定時点である時点Tbまで、上述した(C2)の条件が充足されるか否かを、移動端末(UE)100は監視することが出来ない。その結果、
図8に示す時間軸上において、
図8のTeの時点からTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過するまでの間、上述した(C1)の条件が継続的に満たされていたとしても、移動端末(UE)100はその事実を認識することが出来ない。そのため、移動端末(UE)100は、(C1)の条件が
図8の時点Taよりも遅い時点Tbまで継続的に満たされていた場合に、初めて(C1)の条件がTTT(Time to Trigger)にわたって満たされたことを認識することが可能となる。つまり、移動端末(UE)100は、
図8のTeの時点からTTT(Time to Trigger)経過後の時点Taではなく、それより遅い時点であるDRXスリープ期間P2内のTbの時点において、ハンドオーバー開始可能であると判断することとなる。このようなハンドオーバー開始判断の遅延は、結果としてハンドオーバーの失敗を招く場合がある。
<5>本実施の形態に係るダウンリンク信号品質測定レポートの送信タイミング制御方法
以下、
図9を参照しながら、本実施の形態に従って移動端末100が実行するダウンリンク信号品質測定レポートの送信タイミング制御方法について具体的に説明する。
図9の時間軸上においても、DRXアクティブ区間P1、DRXスリープ区間P2およびDRXアクティブ区間P3の3つの連続する時間区間が図示されている。まず最初に、
図9のTaで表される時点において、サービング・セル(基地局201)からのダウンリンク信号の受信信号品質が破線の曲線で示される近隣セルからのダウンリンク信号の受信信号品質を下回った(すなわち、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足された)と移動端末(UE)100が判定したとする。ここで、
図9のTaで表される時点は、DRXスリープ区間P2内に属する時刻である。これに続いて、移動端末(UE)100は、
図4に関して上述した(C1)の条件が充足されている状態がTTT(Time to Trigger)で表される時間幅に渡って持続するか否かについての監視動作を開始する。
【0050】
しかし、
図7に関して上述したシナリオとは異なり、
図9に関する本実施の形態においては、
図9に示したDRXスリープ区間P2内の時刻Taの直後から開始される上記監視動作の実行頻度は、
図7に示したDRXスリープ区間においては低かった実行頻度よりも高められる。例えば、時刻Taの直後から開始される上記監視動作の実行頻度は、DRXアクティブ状態(区間P1または区間P3)におけるダウンリンク信号受信品質測定の実行頻度と同じ実行頻度とすることが出来る。従って、
図9のTaで表される時点がDRXスリープ期間P2中に位置していた場合には、その直後に開始される上記監視動作は、DRXスリープ状態であるにも関わらず高い頻度で実行される。
【0051】
このようにして、時刻Taの直後から開始される上記監視動作がDRXアクティブ状態(区間P1または区間P3)における受信品質測定と同じ頻度で実行されるので、
図9のTaで表される時点からTbで表される時点までの間に点線の縦矢印で示される追加の監視動作が実行されることとなる。この追加の監視動作は
図7のシナリオ中の対応する時間帯においては実行されなかったものである。つまり、
図9においては、一連の監視動作の実行頻度が増大した分だけ、上記一連の監視動作の実行ペースが早められることとなり、上述した(C2)の条件が充足されるタイミングは、時点TaからTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過した直後の時点である時刻Tb'となる。逆に
図7に示したような従来技術であれば、時点TaからTTT(Time to Trigger)で表される時間が経過した直後の時点である時刻Tb'においては、DRXスリープ期間P2内の点線の縦矢印で示される追加の監視動作が実行されない。従って、
図7に示したような従来技術においては、移動端末(UE)100は、上述した(C2)の条件が満たされたことを
図9におけるDRXスリープ期間P2の満了直後の時点Tbまで認識できない。
【0052】
その結果、
図4に関して上述した(C2)の条件が充足される時期が早まり、移動端末(UE)100が、ダウンリンク信号品質の測定レポートをサービング基地局に送信すべき旨の判断を下すタイミングは、
図9の時刻Tbから時間幅ΔTだけ早められた時刻Tb'となる。このようにして、ハンドオーバー開始判断時点を早めることにより、ハンドオーバーの失敗率を軽減することが出来る。
<6>本実施の形態において使用される無線端末のハードウェア構成
以下、
図10を使用して、本実施の形態に係る移動端末(UE)100のハードウェア構成を説明する。
【0053】
移動端末(UE)100は、送受信アンテナ110、送受信アンテナ110と接続され、送受信アンテナ110から受信信号を受け取る端末受信部120、送受信アンテナ110と接続され、送受信アンテナ110に対して送信信号を渡す端末送信部130、端末受信部120と接続され、端末受信部120からの信号に基づいて、移動端末(UE)100に関してハンドオーバー開始の可否を判定するための受信信号品質を測定する受信品質測定部140、受信品質測定部140と接続され、受信品質測定部140から受け取った受信信号品質の測定結果に基づいて移動端末(UE)100のハンドオーバー開始の可否の判定するハンドオーバー制御部150、受信品質測定部140と接続され、受信品質測定部140から受け取った受信信号品質の測定結果に基づいてDRX制御に関する制御信号を出力する受信条件判定部160およびと、端末受信部120と受信条件判定部160の両者に接続され、受信条件判定部160から受け取ったDRX制御に関する制御信号に基づいて端末受信部120に対するDRX制御を実行するDRX制御部170を備える。
【0054】
送受信アンテナ110は、無線基地局200との間で無線信号を送受信する。
【0055】
端末受信部120は、送受信アンテナ110から受け取った受信信号を基にして無線基地局200により送信されたデジタル・サンプル系列を復元し、復元したデジタル・サンプル系列を受信品質測定部140、DRX制御部170および他のデジタル処理ユニットに渡す。この復元処理には、MIMOチャネル上で受信した受信信号に対する空間フィルター行列を使用した空間処理、OFDM復調により受信信号をベースバンド・シンボルに変換する処理、受信信号から無線チャネル位相タイミング同期に使用するパイロット情報を取り出す処理、当該ベースバンド・シンボルをシンボル逆マッピングし、さらにチャネル復号化する処理などが含まれていても良い。加えて、端末受信部120は、ダウンリンク上で信号を受信する際にDRXを実行する。
【0056】
端末送信部130は、移動端末(UE)100内で生成されたデジタル・サンプル系列を送受信アンテナ110から無線伝送することが可能な形でRF帯域信号に変換し、送受信アンテナ110へ渡す。移動端末(UE)100内で生成されたデジタル・サンプル系列をRF帯域信号に変換する処理は、端末受信部120が受信信号から無線基地局200により送信されたデジタル・サンプル系列を復元するための上述の処理に対して相補的である信号処理を含むことが可能である。
【0057】
受信信号品質測定部140は、移動端末(UE)100がダウンリンク上で受信した信号の信号品質を測定する。当該受信信号品質の測定結果は、移動端末(UE)100に関してハンドオーバー開始の可否を判定するために移動端末(UE)100の他の構成要素によって使用される。
【0058】
ハンドオーバー制御部150は、受信品質測定部140から受け取った受信信号品質がハンドオーバー開始に必要な所定の条件を充足している状態がTTT(Time To Trigger)で表される所定の連続測定回数だけ持続したか否かに基づいて、移動端末(UE)100のハンドオーバー開始の可否を判定する。その結果、ハンドオーバー制御部150がハンドオーバーを開始可能であると判定した場合には、端末送信部130に対して、ハンドオーバー動作を制御するための制御信号の送信を指示する。
【0059】
受信条件判定部160は、
図4に関して上述したハンドオーバー開始に必要な条件(C1)を受信品質測定部140から受け取った受信信号品質測定結果が充足しているならば、DRX制御部170に対して、移動端末(UE)100によるダウンリンク上での信号品質測定動作の実行間隔を調整するように指示する信号を出力する。
【0060】
DRX制御部170は、端末受信部120がDRXを実行中の通常の動作状態においては、DRXアクティブ区間であるかDRXスリープ区間であるかに応じて、信号品質測定のためのダウンリンク信号受信間隔を制御する。そして、
図4に関して上述したハンドオーバー開始に必要な条件(C1)が充足された後は、DRX制御部170は、当該条件充足に応じて受信条件判定部160からダウンリンク上での信号品質測定実行間隔の調整のための指示信号を受け取る。続いて、DRX制御部170は、この指示信号に基づいて端末受信部120に対するDRX制御を実行する。すなわち、DRX制御部170は、受信条件判定部160から入力される指示信号に従って、端末受信部120が基地局からダウンリンク信号の受信品質測定動作のためにキャリア信号を受信する時間間隔を短くして当該受信品質測定動作の連続実行のペースを速める。
<7>
図10に示す移動端末(UE)上で実行される本実施の形態の動作フロー
図9を使用して上述した本実施の形態に係るダウンリンク信号品質測定レポートの送信タイミング制御方法を、
図10に示した移動端末(UE)100の上で実行する際の動作フローを、
図11に示すフローチャートを使用して以下のとおりに説明する。
【0061】
まず、ステップS101において、移動端末(UE)100内の端末受信部120は、ダウンリンク伝送に関してDRXの実行を開始する。これに続いて、DRX制御部170は、端末受信部120に対して、DRXアクティブ区間であるかDRXスリープ区間であるかに応じたダウンリンク信号受信間隔の制御を開始する。この時、以下において後述する反復実行間隔(
図11中の反復待ち時間)は、DRX制御部170が実行する上記制御に従い、DRXアクティブ区間であるかDRXスリープ区間であるかに応じてデフォルト値に初期設定される。
【0062】
続いて、ステップS102において、移動端末(UE)100内の端末受信部120は、サービング基地局(ソース・セル側基地局)およびソース・セルの近隣に位置する周辺セル側基地局の両者からのダウンリンク信号を受信し、当該受信信号を受信信号品質測定部140に出力する。続いて、受信信号品質測定部140は、端末受信部120から入力された当該受信信号の基準信号受信電力(RSRP)や基準信号受信品質(RSRQ)を測定することによってダウンリンク受信品質を測定する。ダウンリンク受信品質を測定するために、受信信号品質測定部140がダウンリンク受信信号の基準信号受信電力(RSRP)を使用する場合、DRXスリープ区間において待機電力レベルで動作中の端末受信部120は、以下のようにして電力消費を抑えることが出来る。すなわち、端末受信部120は、受信したダウンリンク信号に対してシンボル逆マッピングのようなベースバンド・シンボル復調処理やチャネル復号化処理を実行しないようにすることによって消費電力を抑えることが出来る。最後に、受信信号品質測定部140は、サービング基地局(ソース・セル側基地局)および近隣セル側基地局からのダウンリンク信号の受信品質測定結果を受信条件判定部160に対して出力する。
【0063】
続いて、ステップS103において、受信条件判定部160は、受信信号品質測定部140から入力されたダウンリンク信号の受信品質測定結果が、
図4に関して上述したハンドオーバー開始に必要な条件(C1)を充足しているか否かを判定する。具体的には、受信条件判定部160は、サービング基地局(ソース・セル側基地局)からのダウンリンク受信信号品質がサービング基地局に関してハンドオーバー開始の条件として指定された閾値条件を充足するか否かを判定する。その結果、条件(C1)が充足されるならば、処理フローはステップS104に進む。条件(C1)が充足されないならば、処理フローはステップS111に進む。
【0064】
ステップS104において、受信条件判定部160は、DRX制御部170に対して、移動端末(UE)100によるダウンリンク上での信号品質測定動作の実行間隔を調整するように指示する信号を出力する。具体的には、受信条件判定部160は、DRXスリープ状態時において、DRX制御部170に対して、基地局からダウンリンク信号の受信品質測定動作のためにキャリア信号を受信する時間間隔を短くして当該受信品質測定動作の連続実行のペースを速めるように指示する信号を出力する。その結果、DRXスリープ状態時において、端末受信部120および受信信号品質測定部140がダウンリンク信号を受信し、その信号品質を測定して受信条件判定部160に出力する動作の反復実行間隔が上述のデフォルト値からより短い間隔に短縮される。なお、この反復実行間隔は、
図11において、ループ処理における次の反復実行までの待ち時間として示した。なお、DRXアクティブ状態時においては、ステップS104の実行は省略されることが可能である。
【0065】
続いて、処理フローはステップS105に進み、ステップS104において短縮された反復待ち時間だけ待ってからステップS106およびステップS107を実行する。ステップS106においては、ステップS102と同様のダウンリンク受信品質測定処理が実行される。なお、この場合においても、DRXスリープ区間において待機電力レベルで動作中の端末受信部120は、受信したダウンリンク信号に対してシンボル逆マッピングのようなベースバンド・シンボル復調処理やチャネル復号化処理を実行しないようにすることによって消費電力を抑えることが出来る。ステップS107においては、受信条件判定部160は、受信信号品質測定部140から入力されたダウンリンク信号の受信品質測定結果が、
図4に関して上述したハンドオーバー開始に必要な条件(C1)を充足しているか否かを判定する。その結果、条件(C1)が充足されるならば、処理はステップS108に進む。条件(C1)が充足されないならば、処理はステップS110に進む。
【0066】
続いて、処理フローはステップS108に進み、ハンドオーバー制御部150は、S106において測定したダウンリンク信号受信品質測定結果を受信信号品質測定部140から受け取る。続いて、ハンドオーバー制御部150は、受信品質測定部140から受け取った受信信号品質がハンドオーバー開始に必要な条件(C1)を充足している状態が時間幅TTT(Time To Trigger)の長さに相当する所定の連続測定回数だけ持続したか否かに基づいて、移動端末(UE)100のハンドオーバー開始の可否(すなわち、
図4に関して上述した条件(C2)の充足の有無)を判定する。その結果、ハンドオーバー制御部150がハンドオーバーを開始可能であると判定した場合には、処理フローはステップS109に進み、ハンドオーバー制御部150は、端末送信部130に対して、ハンドオーバー動作を制御するための制御信号の送信を指示する。ハンドオーバー制御部150がハンドオーバー開始可能ではない(条件(C2)が充足されない)と判断した場合には、処理フローは、ステップS105に進む。
【0067】
ステップS110においては、反復実行間隔(
図11中の反復待ち時間)がステップS104において上述のデフォルト値からより短い間隔に短縮されていた場合には、反復実行間隔をデフォルト値で表される間隔に戻す。
【0068】
ステップS111においては、デフォルト値に戻された反復待ち時間だけ待った後に、処理フローをステップS102に復帰させ、端末受信部120と受信品質測定部140とは、更なるダウンリンク信号の受信とその受信品質測定を実行する。
<8>本実施の形態が奏する効果
本実施の形態においては、
図9の時刻Taの直後から開始される上記監視動作がDRXスリープ状態(区間P2)における受信品質測定よりも高い頻度で実行されるので、
図9のTaで表される時点からTbで表される時点までの間により多くの監視動作が反復実行されることとなる。その結果、
図7および
図8に示したような従来技術では、TTT(Time to Trigger)の時間幅に渡って持続しなくてはならない上記監視動作の連続実行がDRXスリープ区間P2において遅滞させられた結果、時刻TaからTbに至るまでの時間幅に渡って実行しなくてはならないにもかかわらず、
図9の例においては、一連の監視動作の実行頻度が増大した分だけ、上記一連の監視動作の実行ペースが早められることとなる。その結果、
図4に関して上述した(C2)の条件が充足される時期が早まり、移動端末(UE)100が、ダウンリンク信号品質の測定レポートをサービング基地局に送信すべき旨の判断を下すタイミングは、
図9の時刻Tbから時間幅ΔTだけ早められた時刻Tb'となる。このようにして、ハンドオーバー開始判断時点を早めることにより、ハンドオーバーの失敗率を軽減することが出来る。
【0069】
なお、
図9の例において、
図4に関して上述した条件(C1)が時刻Taにおいて充足されなければ、
図9のDRXスリープ区間P2において、点線の縦方向矢印で表された高い実行頻度での上記監視動作は実行されずに、
図8のDRXスリープ区間P2において示される低い頻度でのダウンリンク信号受信品質測定動作しか実行されない。従って、
図4に関して上述した条件(C1)が時刻Taにおいて充足されなければ、移動端末100の無線受信回路(
図10の端末受信部120)が待機電力レベルで動作中であっても、(
図9の点線の縦方向矢印で表された)上記監視動作の高い頻度での連続実行による電力消耗は生じない。さらに、条件(C1)が時刻Taにおいて充足されるか否かに関係なく、移動端末100が備える無線受信回路(
図10の端末受信部120)は、DRXスリープ区間においては、受信したダウンリンク信号に対してシンボル逆マッピングのようなベースバンド・シンボル復調処理やチャネル復号化処理を実行しないので、これらの信号処理を全て実行するDRXアクティブ区間よりも電力消費を抑えられる。以上から、本実施の形態において、DRXスリープ区間内での上記監視動作の実行頻度を高める制御を行ったとしても、ダウンリンク受信に際してDRXスリープ区間を設けたことによる節電効果は依然として維持される。
【0070】
また、特許文献2は、ハンドオーバー後にDRX実行が再開しないことによる端末省電力性能の低下を防ぐ構成を有しているけれども、本発明のように、ハンドオーバー開始可否判断をDRXの有無に関わらず遅滞なく迅速に実行するための構成を備えていない。具体的には、本発明は、移動端末の無線受信回路が低電力動作または電源オフを余儀なくされるDRXスリープ期間の介在により、ハンドオーバー開始可否判断に必要な信号測定処理が遅滞する欠点を克服するための上述した技術的構成を備えているけれども、特許文献2はそのような構成を備えていない。